2.我が国の特色が活きる戦略的な教育協力の推進

1.今後の教育協力の基本的な方向性

開発途上国の教育セクター全般の改善と持続的発展を支える教育協力を進めるためには、以下の方針に基づき、適切なアプローチを取ることが有効である。

基礎教育協力

 基礎教育(注1)協力については、2015年までのEFA等の目標達成という国際潮流を踏まえ、我が国が有する教育上の知見・経験の中でも国際的に比較優位を有する分野や高い効果が見込まれる地域・国を選択し、開発途上国の教育の量的・質的向上や持続的発展を促す各種ノウハウの蓄積・共有化や人的協力・交流を重視した協力体制の整備・充実を進める。
 (注1)人々が生きるために必要な知識・技能を獲得するための教育活動を指す。具体的には、就学前教育、初等教育、前期中等教育、識字教育、地域社会教育などが含まれる。サブ・サハラ・アフリカ等における多くの最貧国では、開発の最重要課題となっている。

高等教育・職業教育協力

 アジア地域を中心に、我が国の知見・経験が活かせる高等教育・職業教育分野における協力に戦略的に取り組む。
 また、協力の有効性を向上させる観点から、大学の国際展開との整合性を図るとともに、大学関係者等の積極的な参画を促す。

共通事項

 教育協力全般にわたり、限られたリソースの中で効果的・効率的な教育協力を進めるため、関係者相互の緊密な連携体制を整備する。

2.取組を期待する具体的な方策

(1)基礎教育分野における質的向上・持続的発展の促進

1.教育関係者を通じた教育ノウハウの提供

 我が国が有する教育ノウハウの提供とともに、開発課題の解決に貢献するため、政策アドバイザー派遣や青年海外協力隊現職教員特別参加制度による教員派遣を一層推進するとともに、豊かな経験を有する退職教員についても積極的な活用方策を検討する。

2.理数科教育などの我が国の教育上の知見・経験のオープンリソース化

 前回懇談会報告を受けて開始した「拠点システム構築事業」について、国際的な援助動向も踏まえつつ、理数科教育や教育行財政、学校改善・校内研修など、我が国が比較優位を有する分野を選択した上で集中的に取り組むとともに、1で述べた派遣教育関係者を含む国内外の援助関係者への情報提供・広報の一層の充実を図る。

3.基礎教育協力に携わる国内関係者相互のネットワークの形成

 基礎教育協力に携わる援助機関、NGO、コンサルタント、教育関係者及び行政機関等において、定期会合の開催や人的交流等を通じた緊密な連携体制を構築する。

4.南南協力への積極的貢献

 我が国が推進している開発途上国相互の協力(南南協力)を支援するため、これまで二国間援助やユネスコ関連活動、大学独自の活動等を通じて教育関係者が形成してきた開発途上国の人的・組織的ネットワークに関する情報や教育上のノウハウの提供など積極的な貢献に努める。

(2)高等教育・職業教育分野における協力の拡充

1.息の長い協力・交流を進める戦略の実現

 高等教育・職業教育協力は大学関係者等による息の長い関与が必要であり、技術協力や留学生借款等のODA協力終了後も継続した人的交流が求められる一方、協力を通じて得られる開発途上国との人的ネットワークは我が国の社会共通の貴重な資産となる。また、人的交流を通じたアジアの知の活用は、少子高齢社会を迎えた我が国の社会発展の原動力ともなり得る。このため、各種ODA予算を有効に活用し、積極的に取り組むことが必要である。
 また、協力効果を高めるため、我が国の大学が実施してきた国際交流・共同研究等の諸活動をODA協力においても有効に活用するとともに、長期的な視点に立ち、将来的にODA協力から大学間交流等へと円滑に移行できるような計画の立案を促す。

2.高等教育・職業教育分野における知見・経験の蓄積・共有化

 高等教育・職業教育分野について、アジア地域を中心に開発途上国から高い関心が寄せられている我が国の大学経営・運営に関するノウハウなど、知見・経験等の蓄積・共有化を進め、情報発信を行う。

3.アジア地域における高等教育に関する相互理解の促進

 我が国との地域的・社会的関連性の深いアジア地域において高等教育に関する相互理解の促進を図るため、例えば、APQN(アジア太平洋質保証ネットワーク)等の既存のネットワークの積極的な活用等による、質保証制度等に関する情報交換を促す。また、現在ユネスコにおいて検討が進められている高等教育に関する情報ポータルの構築に積極的に貢献する。さらに、域内における大学の単位互換制度など共通性向上のための取組を推進する。

(3)我が国教育関係者の連携の促進等

1.協力における連携の促進

 NGO、コンサルタント、教育関係者等が連携し国際開発協力に携わることにより互いの長所を最大限発揮できるよう、情報交換の機会の提供や連携による取組事例の紹介等を実施する。
 また、前回懇談会報告を受けて開始した「国際開発協力サポートセンター」プロジェクト(以下「サポートセンター」)について、NGOを含めた教育関係者の国際協力活動全般に対する支援を活動内容に追加し、関係者相互の連携促進や各種情報の発信等の拠点としての役割を担う。

2.国際開発協力人材の育成のための連携協力

 NGO、援助機関等と大学との連携により、開発現場における学生のインターンシップ受入れや大学における援助関係者の能力開発支援など、相互補完的な役割の下に国際開発協力に係る人材育成の強化を図ることが必要である。また、国際開発協力に対する理解・参加を促進する観点から、大学において、開発協力を主専攻としない学生を対象に広く講義等を提供する等の取組に努める。

3.国際機関との連携の促進

 地震や津波、台風等の災害対策をはじめ我が国が国際的にも比較優位を有する分野については、ユネスコその他の国際機関との連携による取組にも戦略的に参画することにより、我が国の存在感を高めるよう努める。

4.初等中等教育現場における国際理解教育の充実

 我が国の初等中等教育現場のニーズに応えるため、国際理解教育や開発教育等の取組に対し、NGOや援助機関、大学等には、教育委員会や学校現場との連携の下、講師派遣やノウハウ提供といった支援を積極的に行っていくことが期待される。また、青年海外協力隊員として派遣され帰国した教員が実施する開発教育活動について、拠点システム構築事業を通じて、授業計画の立案や教材作成等に関する支援を行う。

5.地域における外国人のための日本語教育の充実

 外国人が仲間として、近隣住民と日本語でもコミュニケーションができるよう、日本語学習支援の積極的な推進が必要である。このため、大学において、NGOとも連携して、地域の外国人向けの日本語教室の開設や、専門的な立場からの指導・助言、学生や留学生を講師として派遣するなど、地域における日本語教育の充実を図る。

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大臣官房国際課国際協力政策室

(大臣官房国際課国際協力政策室)