「もんじゅ」の在り方に関する検討会(第3回) 議事録

1.日時

平成28年2月19日(金曜日) 16時00分~17時30分

2.場所

文部科学省 3階 1特別会議室

3.議題

  1. 「もんじゅ」の運転管理に必要となる技術的能力について
  2. 高速増殖原型炉「もんじゅ」の視察結果について
  3. その他

4.出席者

委員

有馬座長
井川委員
櫻井委員
高橋委員
丸委員
宮崎委員
宮野委員

文部科学省

馳文部科学大臣
冨岡文部科学副大臣
土屋文部科学事務次官
戸谷文部科学審議官
田中研究開発局長
加藤もんじゅ改革監
板倉大臣官房審議官(研究開発局担当)
信濃開発企画課長
岡村原子力課長
髙谷研究開発戦略官(新型炉・原子力人材育成担当)
次田「もんじゅ」の在り方検討対応室次長

(説明者)
日本電気工業会
 多田原子力部長

日本原子力研究開発機構
 児玉理事長
 青砥理事/もんじゅ所長
 荒井もんじゅ運営計画・研究開発センター研究管理部長

5.議事録

【有馬座長】

定刻になりましたので,「もんじゅ」の在り方に関する検討会の第3回を開催いたします。本日は,皆さんお忙しいところを誠にありがとうございます。
第3回の検討会開催に当たり,馳文部科学大臣から御挨拶をお願いいたします。

【馳文部科学大臣】

本日もありがとうございます。検討会も第3回となりました。本日のテーマに沿って,集中的な議論をお願いしたいと思いますし,積極的な発言もお願いしたいと思います。
先日,福井の「もんじゅ」に直接行っていただきました。見ていただくと同時に,若手の職員とも意見交換をしていただいたという報告を受けておりまして,本当にありがとうございます。
今後,原子力規制委員会からは半年をめどにと言われておりますので,精力的にこの検討会を進めていただきたいとお願いを申し上げて,御挨拶に代えさせていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。

【有馬座長】

大臣,ありがとうございました。
それでは,事務局から出席者の紹介をお願いいたします。

【髙谷研究開発戦略官】

本日は,中尾委員,山本委員が所用により御欠席です。
本日,説明者として,一般社団法人日本電機工業会から,多田伸雄原子力部長にお越しいただいております。また,日本原子力開発機構からは,児玉敏雄理事長,青砥紀身理事/もんじゅ所長,荒井眞伸もんじゅ運営計画・研究開発センター計画管理部長にお越しいただいております。

【有馬座長】

それでは,事務局から配付資料の確認をお願いします。

【髙谷研究開発戦略官】

お手元の議事次第に配布資料ということで上げています。資料1「発電用原子炉におけるプラントメーカーの保全活動」,資料2「高速増殖原型炉「もんじゅ」の視察結果について」,資料3「「もんじゅ」の在り方に関する検討会委員の御質問への回答」,資料4「「もんじゅ」に係る課題の検証における論点(例)」です。
その他,机上配付資料として,前回の議事録をお配りしています。委員の先生方には既にメール等を通じて御確認いただいていますが,修正等あれば,2月23日までに事務局にお知らせいただければと思います。その後,ホームページにこの議事録を掲載させていただきますので,よろしくお願いいたします。

【有馬座長】

ありがとうございました。
議題1「もんじゅ」の運転管理に必要となる技術的能力についてに入ります。
検討会の第2回では,「もんじゅ」の運転管理に必要となる技術的能力に係る課題の検証に当たって,電気事業者から軽水炉の保全活動,保守管理等について,また,日本原子力研究開発機構から研究開発段階のナトリウム冷却炉の特徴及びそれに対応する技術的事項について,それぞれ説明を頂きました。
本日は,技術的能力に係る課題の検証の続きとして,「もんじゅ」のような大型プラントにおける保全活動や品質保証について,プラントの設計,建設の主体であるメーカーからその在り方をお伺いしたいと思います。
そこで今回は,一般社団法人日本電機工業会の多田原子力部長にお越しいただいています。
それでは,多田部長,御説明よろしくお願いします。

【多田原子力部長】

日本電機工業会の多田と申します。よろしくお願いします。資料に従い,発電用原子炉におけるプラントメーカーの保全活動について,原子力プラントメーカーを代表して,御説明させていただきます。
タイトルとして,「発電用原子炉」としているのは,研究開発段階発電用原子炉であるところの「もんじゅ」と電力会社が運転している商用発電用原子炉の双方について御説明するためです。
それでは,1ページ,項目と書いてあるところを御覧ください。本日お話しする項目を箇条書にして示しています。まず発電用原子炉の保全業務を行う際の体制について御説明します。次に,発電用原子炉の保全業務における品質保証について,更に三つ目として,発電用原子炉の保全プログラムにおけるプラントメーカーの役割について御説明します。最後にまとめをさせていただきます。
2ページを御覧ください。本ページには二つの図が対比して並べてあります。左側の図は,軽水炉の場合の体制を示したもので,先日の第2回検討会において,電気事業連合会が示した図をそのまま使わせていただいています。ただし,図の下に二つの注記を追加しています。
原子力事業者である電力会社がそれまでの運転・保守経験等から作った保全計画に基づいて発注された保全活動をプラントメーカーは実施しています。また,機器の設計・製造を請け負ったプラントメーカーでないとできないようなノウハウが必要な作業を中心に,プラントメーカーに発注しており,プラントメーカーの所掌範囲以外については,電力会社が直接工事会社などに発注しているものと認識しています。
右側の図は,「もんじゅ」の場合の体制を示したものです。一見してお分かりのとおり,「もんじゅ」の場合においても体制は軽水炉の場合と変わるところはありません。軽水炉と異なっているのは作業範囲だと考えています。すなわち,「もんじゅ」の場合,運転・保守経験が少ない研究開発段階の炉であるため,機器の設計・製造を担当したプラントメーカー4社の作業範囲が多いものと考えています。
軽水炉の場合,運転開始当初に比べ,プラントメーカーの所掌範囲は少しずつ減少して,現在の所掌になってきています。これは何回もの定期検査などを経て,電力会社が経験を積み,自分たちで実施する範囲を増してきたからという,その結果であると考えています。
いずれにしても,プラントメーカーは,運転と保守の責任を有している電力会社や日本原子力研究開発機構から保全業務を発注され,契約に基づいて設備工事や点検・保全業務を実施していることに変わりはありません。
それでは,3ページについて御説明します。2ページで,これまで「もんじゅ」の場合,プラントメーカー4社が保全の作業を実施していると説明しましたが,これを概略で示したのが3ページの図です。ここに示した図は,先日の第2回検討会において,日本原子力研究開発機構が示した図を使わせていただいています。
プラントメーカー4社とは,下に示したとおり,三菱重工業,日立GEニュークリア・エナジー,東芝,富士電機のことを言っています。ここには「プラントメーカー所掌(建設時)」と書きましたけれども,保全の所掌も大体このとおりです。
三菱重工業は,炉心を取り囲んでいる原子炉容器,また,放射性物質を閉じ込めておくべき格納容器等を担当しています。日立GEニュークリア・エナジーは,図中,赤く示してある一次冷却系の機器などを,東芝は,図中ピンクで示した二次冷却系,及び黄色で示した水蒸気系の機器などを,富士電機は,ここでは図に表れていませんが,燃料取扱い設備などを主として担当しています。
以上が発電用原子炉の保全における実施体制と「もんじゅ」におけるプラントメーカー4社の所掌分担の説明になります。
続きまして,発電用原子炉保全の品質保証について御説明します。4ページを御覧ください。
「もんじゅ」においてプラントメーカーが日本原子力研究開発機構より受注した作業の品質保証は,国内各電力会社の各原子力発電所における品質保証と同じ原子力QMS(品質マネジメントシステム)体制の下,実施しています。その内容は,年度ごとに各プラントメーカーが契約に従い,日本原子力研究開発機構に提出している「高速増殖炉もんじゅ品質保証計画書」という図書に記載しています。「高速増殖炉もんじゅ品質保証計画書」は,国際標準化機構のISO9001及び日本電機協会が作成している「原子力発電所における安全のための品質保証規程」並びにその適用指針に準拠しています。
具体的な内容について,5ページで紹介します。ここに記載してあるのは,品質保証計画書の主な目次だと考えていただいて結構です。
まず図書の目的,適用範囲,言葉の定義が1から3に記載されています。4の品質マネジメントシステムでは,QMSの体系や組織の体制などが記載されています。5では,経営者が品質についてコミットすることを明記しています。6では,品質管理において,各社の資源を適切に投入するということを言っています。7では,実際に業務を行う際の業務プロセスについて述べています。ここで,他の産業と異なる特徴的な点は,7.7項に放射線管理要領が入っていることです。8では,1から7までで約束したことから外れたことが行われた場合,それをどのように見つけて対処し,改善につなげるかということを記載しています。
6ページは,5ページの内容を図示化したものです。緑色の部分が5ページのQMS全体に相当します。左下にある法令や規制の要求事項,更には顧客からの要求事項が業務計画のインプットになり,業務を行うことになります。これを経営者のコミットメントの下,適切なリソースを投入して業務を行います。業務の結果のみならず,そのプロセスも評価してQMS全体も継続的に改善し,最終目的である原子力安全を目指しています。
7ページからは,保全プログラムにおけるプラントメーカーの役割について御説明します。7ページの図も先日の第2回検討会において,電気事業連合会が示したものを使わせていただいています。保全プログラムは保全計画の立案から実施,結果の評価,更には見直しといったPDCAを回すことで,継続的改善を行って信頼性向上を目指します。
8ページ以降で,このPDCAにおけるプラントメーカーの寄与を示したいと思います。
8ページは,軽水炉における保全プログラムへの寄与を示したものです。プラントメーカーが主として実施する部分を紫色で示しています。プラントメーカーは,電力会社から発注された範囲の保全作業を実施します。保全作業が完了した後は,作業報告書を提出します。その作業報告書には,作業実施内容はもとより,作業の結果,判明したことや,場合によっては今後の作業に向けての改善提案などを含みます。
電力会社は,保全計画の立案に当たって,機器の重要度やその劣化事象,他プラントでの保全経験,新知見などをインプットしていますが,そのインプットの一部としてプラントメーカーの作業報告書を参考としているものと考えています。PDCAのC(チェック)や,A(アクション)としての保全の評価や保全の見直しにおいても,作業報告書に記載した作業結果そのものに加え,作業の結果に基づいたプラントメーカーなりの評価結果や提案を考慮いただいて,全体としてPDCAを回しているものと考えています。軽水炉の場合,運転経験が長いことや,同じ,あるいは類似型式のプラントも多いことから,このPDCAサイクルは数多く回っており,現在の保全計画が出来上がってきていると考えています。
9ページは,「もんじゅ」の場合の保全プログラムを記載しています。保全プログラムのPDCA概念そのものは軽水炉と変わるものではありません。プラントメーカーの寄与も同等と考えています。その一方,「もんじゅ」と軽水炉では異なるところもありますので,幾つか注記として書きました。
まず左端のPlan(保全計画の立案)においては,アスタリスクの1と2に示したとおり,ナトリウム炉特有の機器が存在し,固有の重要度や固有の劣化事象を考慮する必要があります。また,軽水炉では,参照できる保全計画が多数あるのに比べ,「もんじゅ」ではその数が少なく,軽水炉経験のうち生かせる部分や国内外先行高速炉の経験を参照する必要があるということをアスタリスクの3に示しました。
アスタリスクの4には,保全において何か問題が生じた場合のことを記載しました。問題の克服プロセスは,まる1,現象の把握,まる2,要因分析・原因究明,まる3,対策検討,まる4,対策案の実証と,ナトリウム炉,軽水炉にかかわらず同じですが,そのうち要素試験や実証試験においてナトリウムを取り扱う場合において,特別な施設が必要であったり,工夫が必要であったりします。
このように,ナトリウム炉特有の事項が軽水炉と異なりますが,このPDCAを回していくのは,やはり運転開始後が本格的になるので,現時点ではこの点が異なるのではないかと考えています。
また,左端のPlanの下に示しましたが,現在,日本原子力研究開発機構が保全計画の抜本的な見直しを実施中で,その見直しに当たり,プラントメーカーも協力をさせていただいています。
最後,10ページには,本日御説明したことのまとめを示しています。
(1)「もんじゅ」は,軽水炉に準じた保全プログラムの体系や保全の体制を構築しています。
(2)ただし,ナトリウム冷却高速炉の特徴を踏まえた保全計画の検討が重要です。
(3)保全計画は,実際の運転経験や保全経験を踏まえて改善を行っていくものであり,「もんじゅ」はこれから経験を積んでいくべき段階と認識しています。
(4)今後も,プラントメーカーは「もんじゅ」の保全活動への参画を通じて,高速炉の開発・実用化に協力していく所存です。
これで御説明を終わります。ありがとうございました。

【有馬座長】

どうもありがとうございました。ただいまの説明について,御質問等あればお願いをいたします。どなたからでもどうぞ。
井川委員。

【井川委員】

今の御説明を聞いていて,かなり違和感がありました。「もんじゅ」の今の状態は,批判を浴びていますが,これの一義的な原因として,記憶を遡れば,まず温度計が折れたのは,欠陥温度計,メーカーが作った温度計が欠陥温度計であったため。それから,炉内中継装置が落ちたのは,メーカーが作ったぶら下げ機がすぐ壊れるようなちゃちなものであったため。要するに,一義的な原因はメーカーが半端な部品を持ち込んだことによるというのが,この「もんじゅ」の苦境の始まりなわけです。そう考えると,その協力をさせていただいているとか,ちょっと人ごとのようにおっしゃっていますが,これは一義的にはメーカーの品質保証がどうなっているのか。
検討会の趣旨から考えると,今後「もんじゅ」をもし持続的に使うとしたら,恐らく補修部品だとかいろいろなものを持ってこなければいけないし,それから,現状ある部品等の健全性というのも継続して確認しなければいけないわけですが,そのメーカーがそこをきちんとできるのか。少なくとも今まで重要な部品について,欠陥部品を持ってきたようなメーカーですから,そこをどう改善したか,今後改善できるのかということを恐らくこの検討会では,そのメーカーの監督官庁を含めて,それをきちんとできないと日本原子力研究開発機構と「もんじゅ」の運営部門が幾ら頑張っても,メーカーが半端だったら,また欠陥部品を持ってこられたら,また事故を起こして,また止まるということになるわけですよね。
だから,何か人ごとのように協力していきますだとか,並べて,作業の品質保証しか書いていないとかですね。そちらがまた部品を納入するわけですから,その部品は今後きちんと,半端なものを持ってこないのかということを御説明にならないと,多分,検討会として成立しない部分があるのではないかということで,この御説明はいかがなものかと思います。できれば事務局に,この監督官庁,これは経済産業省になるのかどうかわかりませんが,どうやって,このメーカーを監督しているのか,お話を是非伺いたいと思います。
以上です。

【多田原子力部長】

大変厳しいお言葉でございます。ナトリウム漏えいや炉内中継装置の問題について言及されているのだろうと思います。その責任については,それぞれ担当したメーカーと,日本原子力研究開発機構と関係者の間で話をさせていただいています。過去の話についてはそういうことになります。
今の品質保証体制がどうなっているのかということですが,本日は,作業を中心に話をしましたが,品質保証体制そのものはサービスであれ,製品であれ,同じです。そこをすり抜けて,今まで事故の原因となった部品を納めてしまったというのは,これはメーカーとしては大変大きく反省をしなければならないところですし,今後そのようなことがないように,このQMSをしっかり機能させて,納めていきたいと考えています。

【有馬座長】

ほかに御質問ありませんか。どうぞ。

【宮野委員】

宮野です。今の問題,御質問について,QMSの話は,QMSは発注元が管理をするということになっていますから,しっかりやっていただきたいと思います。質問ですが,事業者との連携の話がありますが,これも含めて,品質保証の説明は,これは建前で,QMSに示してある絵をそのまま示してあるだけなので,こうやってやりなさいと言っているのを説明してもらっても,実態はどうですかという話をしなければ全く意味がないので,それでお伺いします。違いがあるのは,「もんじゅ」の場合はまだ立ち上げていない,まだ途中の段階であり,100%出力まで行っていない,そのプロセスにある段階だというところだということですが,軽水炉の場合はどういうふうにしてその段階を事業者とメーカーで一緒に品質保証に取り組んでいるか,体制がどうなっているかお伺いしたい。
それから,運転を始めた後どうなっていますか,定期検査のとき,どういう体制でやっていますか。どのように連携してやっているのかということがお伺いしたいところです。
今,申し上げたように,QMSの場合は,事業者が発注先までの品質管理をしなさい,品質管理と確認をしなさいということになっていると思います。そこをどのように連携をしてやっているのかというところをお伺いしたいというのが一つです。
それから,連携のところで,点検工事・保守のところは,工事会社,プラントメーカーが一つになっていますが,この中でも関連会社,下請と,いろいろあると思います。その関連はそれぞれのメーカーとの関連と,電力会社との関連,「もんじゅ」の場合はどうなっているのかというところを明確にしていただきたいというのが一つです。
ここに入っていない,メーカーそのものの品質管理体制がどうなっていて,軽水炉の場合の発電所との関連と「もんじゅ」の場合のサイトとの関連でどのようにその品質管理が運営されているのか,体制ができていて,連携ができているのか,それも併せて示さなければならないと思います。
もう一つ関連して,品質保証でPDCAを回すということになっていますが,これでPDCAを回すというのはどういう意味か分かるかということで,それでは,社長が全部見ているのですかという絵になっていますから,実際にどのようになっているのかという絵がないと理解できません。経営者というのは誰ですか。実際の体制は社長が全部を見ているわけではないので,どういう仕組みで動いているのかというのをこの中で示さないと,これをどうやって回しているのかという説明が必要なのではないかと思いますが,それが電力会社の中でどうなっているか,それから,メーカーの中でどうなっているか。そして,このPDCAを回すときに連携がどうなっているか。先ほど説明がありましたが,流れが具体的にどう動いているのかということが分からなければいけないと思いますので,今,答えられれば答えていただきたいのですが。
それで,不適合の話が出ましたので,不適合はいつどのように起きているのか。前回,電力会社の中では,数百件という件数が出ていましたが,それと同様に,その中で,メーカーの場合はサイトでどのように起きていて,中でどれだけ起きているのかというのを参考に教えていただければと思います。
よろしくお願いします。

【多田原子力部長】

たくさん御質問があったのですが,まず事業者との連携に関して,軽水炉でいえば,引渡し前の品質保証と,引渡し後の品質保証にどういう違いがあるかというような御質問だったかと思います。
これについては基本的にQMS自身が変わるところはありません。契約自身がその設計,建設,製造の建設,それから,据付けまでですね。あるいは試運転までという,そういう契約の中でQMSを回しているということになります。納めた後は,今度は点検や保守になるわけですが,そこにおいても同じQMSを使っています。別に段階によってQMSを変えるというわけではありません。「もんじゅ」の場合は,軽水炉と少し契約体系が異なっていて,100%出力になる前に引渡しということになっており,ですから,既に日本原子力研究開発機構に引渡しになっていますが,基本的には全く同じで,引渡し前と引渡し後と,QMSで変わるところはありません。
関連会社という話がありましたが,関連会社においても,私どもが用いているQMSと同等な内容のものを適用していただくということで,各関連会社にはQMSそのものを作ってもらい,適用しています。そのQMSについては,やはり品質保証計画書なるものを出してもらい,こちらで見るということになっています。
事業者との連携ですが,必要に応じて事業者は関連会社まで入っていって,QMSのチェックができるようになっていると承知しています。
QMSを経営者が,本当に社長が見ているのかということですが,これは毎年マネジメントレビューをしており,もちろん社長が1から100まで全部見ているわけではありせんが,品質保証関係の部署が取りまとめたものについて,問題があったか,ないか,どんなことがあったかというようなことを社長が毎年レビューをする,そういったマネジメントレビューを行っていると承知しております。
それから,不適合はいつどのように起きているかということですが,これは個別,個別のケースになっていますので,ここではお答えができないこと,御了承ください。

【宮野委員】

ありがとうございます。QMS上ではこうだという話はもう皆さんもよくお分かりなので,QMSに書いてあることは全くそのとおりだと思いますが,実態としてどうなっているのかというのが分かればということでお伺いしました。具体的に申し上げれば,安全管理等をする場合に,サイトに常駐して,それでメーカーはメーカーで常駐して,それで連携した体制の中で動いているというのが例としてあるわけですが,そういったものが品質問題でもあるのかということです。運営管理,品質管理の中でもそういう体制で動いているのかという問題と,「もんじゅ」ではどうなっているのか,実態としてはどうかというところをお伺いしたいというのが最初の質問だったのです。

【多田原子力部長】

失礼しました。軽水炉の場合も,「もんじゅ」の場合も,サイトに責任者,いわゆる現地所長なるものを置いて,その下に品質管理の責任者を置いて,そこで事業者と密接にミーティングをしながら仕事を進めていると承知しています。それは「もんじゅ」の場合も変わらないと考えています。

【宮野委員】

それはメーカー側から見て,全く同じだという判断をしているということですね。

【多田原子力部長】

特にいろいろな支障が出ているというわけではないと思います。

【宮野委員】

分かりました。先ほどのもう一つ,QMSの流れについてですが,これもお伺いした理由は,「もんじゅ」でも理事長以下で回しているというところがあると思いますが,メーカーの場合にはどのように回しているのかというところを例としてお伺いできればと思ったわけです。具体的にはこの体制が組織として下で順番に回していっているということを,どのように下から上へ上げていっているのかというところを簡単に御説明いただければと思います。

【多田原子力部長】

申し訳ありません。質問の趣旨が,把握できかねているのですが,下から上へ上げているというのは,何か問題が起きたときにという意味ですか。

【宮野委員】

いいえ,品質問題としてQMSをどのようにして回しているのかということです。回しているというふうにおっしゃっているので,社長がDo(実施)をするわけではないので,トップがどのようにしてその指示をして,組織としては下へ落としていき,そのDo(実施)をやった結果,誰がどのようにCheck(評価)をするのか。今度はQMSにして回した結果,Check(評価)した結果を報告書なり作って,上に上げて,そこでまたもう一回,その上に上げていくという流れを作っていると思いますが,そういうことの実態を御説明いただきたい。

【多田原子力部長】

それは実際にDo(実施)をしたものが作業報告を書きます。それを品質保証の担当がいますので,そういったところでCheck(評価)をしていくということになろうかと思います。

【宮野委員】

そうすると,問題点が出てきたところで,問題点だけが上に上がっていくということでしょうか。

【多田原子力部長】

それは作業報告ということなので,問題点があった場合は,作業報告に問題点も掲げていくということになりますし,もっと大きな問題ですと,作業報告を書く前にその連絡が行って,そこで対処してというようなことになるわけです。

【宮野委員】

報告は,ラインとして上に上がっていくという仕組みになっているという説明ですね。

【多田原子力部長】

そのとおりです。

【宮野委員】

わかりました。

【有馬座長】

どうもありがとうございました。
私もこの問題,非常に関心を持っていまして,「もんじゅ」の場合,ナトリウム漏えい事故が非常に大きかったのですが,よく世の中で知られている問題点は,発表の仕方がまずかった,遅れたというところに非常に焦点が当たっていますが,本日,メーカーからお話を頂きましたので,一度まとめて御報告いただきたいのは,ナトリウム漏えい事故及び炉内中継装置の落下事故のときに,メーカー側はどこまでどう対処をしたか,それから,「もんじゅ」側はそれをどのように対処したか,「もんじゅ」側の問題点とメーカー側の問題点を明確にして,それに対して,その後,それぞれの機器とそれぞれの箇所に対して十分な保証がされているのかということについて,御説明を賜れればと思います。これは本日,お答えいただかなくて結構ですので,「もんじゅ」の二つの大きな事故に対して,もう一度きちんとその責任体制及びその後の保守の仕方について御説明いただき,そしてまた,PDCAサイクルにおいてどのようにその事故が反映されているのかということについて教えていただければ幸いです。
以上,お願いをして,第2の議案,高速増殖原型炉「もんじゅ」の視察結果についてに入りたいと思います。先日2月9日に「もんじゅ」の視察に参りました。この結果についての報告と各委員からの所見を頂きたいと思います。
初めに,事務局から結果の報告をお願いいたします。

【髙谷研究開発戦略官】

それでは,資料2に基づいて,「もんじゅ」の視察結果について,事務局から御報告をさせていただきます。
先日,2月9日火曜日に「もんじゅ」を視察いただきました。この日に参加いただいたのは,有馬座長,井川委員,櫻井委員,高橋委員,中尾委員,丸委員の6名の委員です。また,宮野委員は別途,2月17日にほぼ同じところを視察いただきました。
本日は2月9日の視察結果について,御説明させていただきます。
4ぽつ,視察結果ということで,冒頭,青砥理事/所長からこれまでの経緯や,業務管理体制,保守管理不備の改善状況など,「もんじゅ」の概要を,別添で付けあります資料に基づいて説明いただき,質疑応答が行われました。質疑応答のやりとりは以下の2点です。
一つは,今もありました大きな二つの事故の発生までに得られた科学的な成果としてはどのようなものがあるのかという質問に対して,所期の目的でもあった高速増殖炉の設計,建築,試運転までの各段階を達成した。また,平成22年7月に炉心確認試験を終了し,この際に放射性廃棄物の減容に関する知見を得ることができた。それから,次につながる課題や改善すべき点が明らかになったということです。
次の質問としては,ロシアのBN-800等の諸外国で進められている高速炉開発との構造上の違いや,海外と比較して「もんじゅ」が優れている点はどういうところかという質問に対して,大きな違いとして,「もんじゅ」はループ型でナトリウムを循環しているのに対し,ロシアではタンク型という,1か所で集める形となっていること。ループ型は垂直方向の設計に自由度があることから,冷却系統に高低差を設けることで,外部電源が失われたとしても自然循環による冷却がより効果的に行われる等のメリットがあるという話がありました。
その他,「もんじゅ」の運転保守体制の変遷,保安検査指摘事項の対応状況,原子力規制庁とのコミュニケーションの状況等について議論がありました。
また,保守管理不備の根本的な問題について,日本原子力研究開発機構自身が外部の意見も入れつつ分析をした結果ということで,大きく五つ,マネジメント,技術基盤,安全の意識,長期的な研究の見通し,それから,経費が課題ではなかったのではないかという問題提起がなされて,今後,日本原子力研究開発機構において更にこの検討を進めていくと伺いました。
次に,現場の視察です。現場の視察は,原子炉格納容器,中央制御室に加えて,原子力規制庁の保安検査で実際に保守管理上の不備を指摘された事例として,3か所を回りました。
1番目,配管支持構造物ということで,この場合の指摘事項は,保全計画に従った点検を実施していない。可視可能範囲のみを対象とするなど,点検内容のとおり実施していないというところで,保全計画では外観点検一式としていたところ,視認不可部の点検が実施されていない,また,作動性の確認を行っていないということで,指摘を受けたところです。
また,2番目,二次主冷却系配管ということで,これは配管において,壁の貫通部等が識別されておらず,健全性評価が行われていなかったところ。
それから,3番目,制御用圧縮空気設備というところで,これは一番初めのぽつのところにある重要度分類が適切に設定されていない機器が1,387機器であったというところ。このような安全重要度分類の問題について,実際の機器を御覧いただきました。
3ページです。この現場視察の一環として,実際の保全計画,書類そのものですとか,保守管理支援システムの紹介,それから,若手職員との懇談も併せて実施しました。
このうち,若手職員との懇談における職員からの主なコメントは,以下のとおりです。
まず初めですが,改善を進めるたびに悪いところが明らかになって,その対応に追われ,悪循環になってしまったということ。2番目,保全プログラムがうまくできていなかったためにPDCAが回らず,今,健全であるという証明ができていないことが残念であるということ。3番目,出向者が多いが,知識の蓄積ができないのが人材育成の面でも大きな課題であるということ。4番目,世界で初めての「高速炉の保全計画」を作っているという気持ちで今やっているという意見。5番目,「もんじゅ」では,目標として,小さな成功をみんなで分かち合い,成功体験をみんなで共有したいと思っているということ。6番目,新たな技術に挑戦したいと思って日本原子力研究開発機構に入ったが,炉を安全に運転だけをすればよいとなると,日本原子力研究開発機構の存在意義が失われてしまう。挑戦するなというのは避けてもらいたいということ。最後ですが,「もんじゅ」も軽水炉並みの保全プログラムを入れなければいけないということで,軽水炉では2年,3年をかけていたところを2,3か月でやった。一日でも早く策定しなければいけないという思いでジレンマもあったという意見がありました。
4ページです。最後に締めくくりの意見交換を行いました。主なやりとりして2点。幹部と若手職員との間で対話や意思疎通が十分に取れているかという質問に対して,課題があることは日本原子力研究開発機構自らの調査でも把握しており,更に努力が必要であると考えているということ。「もんじゅ」内で日本原子力研究開発機構の目標の共有化をどのように行っているかということに対しては,昨年,「持続的エネルギー供給の実現性を示すことで人類繁栄に貢献する」という「もんじゅ」のミッション,ビジョン,ストラテジーを作成した。部署ごとにも作り,更に共有化を進めるよう工夫していきたいというやりとりがあったところです。
概要は以上です。

【有馬座長】

どうもありがとうございました。
それでは,その視察に参加された委員の方からそれぞれ御意見,御所感をお持ちでしたら発表していただきたいと思います。どなたからでもどうぞ。
高橋委員。

【高橋委員】

それでは,私から余りこれまで話題にならなかったことを1点お話ししたいと思います。それは情報の収集と活用の問題です。軽水炉は,恐らく世界で既に1万数千炉・年の運転実績があって,多くの不具合も経験していますし,それから,事故も経験しています。こうした国内外の情報に対しては,いろいろな入手ルートもありますし,電気事業者も組織的にこれを収集,整理して,検討を加え,必要な点検,あるいは対策を行っています。もちろんその不具合情報だけでなくて,規制情報もそうですし,それから,世界のベストプラクティスを調べて,それを自分たちの業務に反映し,改善を図るということをしていると思います。
一方で,「もんじゅ」の場合を考えますと,軽水炉に比べて,恐らく圧倒的に情報量が少ないだろうと思います。そういったことで,情報に対する積極性みたいなものが少し欠けていないか。また,軽水炉情報が入っても,これはナトリウムの情報と違うということで,なかなかそれを生かそうということにはならないのではないかということを懸念しました。
こうしたことが,要するに,情報に対する感度といいますか,積極性といいますか,保全情報あるいは品質保証情報,電力事業者が有しているノウハウの活用の情報,規制情報ということに積極性を失って,規制動向に対する対応の遅れ,あるいはその対策の後手といったことが今回の問題につながっているのではないかということを懸念しました。
そこで日本原子力研究開発機構には是非この情報の収集,活用,こういった仕組みというものを一度検証していただきたいと思いますし,文部科学省には検証における論点にこの問題を加えることを検討いただければと感じました。
以上です。

【有馬座長】

ありがとうございました。
ほかに御意見ございませんか。丸委員。

【丸委員】

先日,現場を見せていただき,意見交換もさせていただきまして,どうもありがとうございました。大変有意義だったと思います。それで,いろいろな御説明の中で2点,疑問があります。一つは,今,御説明のあった資料の後ろに当日説明いただいた資料が付いていますけれども,ちょうどこの4ページと5ページのところを御覧いただきたいのですが,4ページに組織表がありまして,その下に「オールジャパン体制による取組」というのがあります。それで,私が,現場でこのPDCAのそれぞれに対して,どこがどのように責任を持っているのかと質問したところ,全てプラント保全部が責任を持っていて,ここでクローズしているのだという御説明でした。この一番左の緑の部分になると思います。
それで,一方,その下の図を見ていただきますと,取組の仕方として,通常業務担当体制としてプラント保全部と書いてあり,短期集中チームというのが並行に置かれているわけです。この短期集中チームについての活動の仕方については,具体的に余り御説明はなかったのですが,私の疑問は,全てプラント保全部に責任があるときに,この短期集中チームとどういう関係になっているのかということです。
つまり,この短期集中チームが不具合原因なり,対策なりを練っているわけですが,そこからプラント保全部の具体的な活動にどのように情報が流されているのか。どのようにというのは少し抽象的な言い方ですが,要するに,責任と権限がはっきりしているか。しているのだと思うのですが,それが視察を通してはっきり分からなかったということです。ですから,懸念は取り越し苦労かもしれませんが,責任と権限の分散が起こっていないかというのが1点です。
それからもう1点は,この下の図にあるように,チームAである品質保証室に重要な役割があると思いますが,品質保証室は,この保全の実行においてどういう責任を持っているかということの説明がなく,そこがもう一つの疑問だったわけです。
それで,いろいろな意味で,最上位で文部科学省がこれはいろいろ御覧になっていると思いますが,どのように見ているのか。こういう体制でうまく進んでいくという考えがあれば,お話いただければと思いますが,もちろん日本原子力研究開発機構からコメントいただいても結構です。

【有馬座長】

どうぞ,どちらからでも。

【荒井計画管理部長】

日本原子力研究開発機構の荒井です。今,御質問があったシート5のアルファベットチームとシート4の業務管理体制の関係について,当日の説明が分かりにくかったのかと思います。申し訳ございません。
まずPDCAについて,プラント保全部でクローズしているという当日の回答については,そのときの我々の回答は,点検をするときの計画を作って(P),実施して(D),評価をして(C),見直しをする(A)というところのPDCAについて,どこが担当しているのかという御質問だと理解して,それについてはプラント保全部でやっているとお答えしました。
「オールジャパン体制による取組」ということとの関係については,5ページの左側にある通常業務担当体制というところにプラント保全部が書いてあるのは,ここで点検を実施しているというところです。
それと短期集中チームとの関係については,例えばチームB・Cというのは保全計画の改定,あるいは見直し作業をしている。これはプラント保全部の中の保全計画課というところが担当していて,このチームB・Cというのは,シート4の組織図でプラント保全部の左から2列目に保全計画課長がいますが,彼がこのチームB・Cの総責任者で,チームB・Cのチームリーダーは保全計画課長の下にいて,この保全計画の見直しをする。そういう意味では,ラインと,このチームB・Cとの関係は,保全計画課長を媒介として,チームB・C側と保全計画課,あるいは保全計画課長を通じてプラント保全部各課と関係しています。
同じくチームAの品質保証室,あるいはチームDの技術総括課についても,これはそれぞれの品質保証室と技術総括課の課長あるいは室長の下に,それぞれのリーダーが業務のラインという意味ではぶら下がってやっているところです。

【有馬座長】

どうぞ。

【田中研究開発局長】

文部科学省がどう見ているかということについてですので,お答えしますと,「オールジャパン体制の取組」というのは,児玉理事長が昨年4月に着任されて,それからずっと御覧になっていって,この取組が必要だろうということで新たにスタートしたものだと理解しています。
その前に,昨年3月まで1年半を掛けて「もんじゅ」集中改革に取り組んでいましたが,今までは主として原子力規制委員会から個別にいろいろ指摘を受けたことに対して,その個別に指摘を受けたことを横展開して,その不具合を直していくという,そういう取組の仕方をしていましたが,その1年半掛けている取組の中で,日本原子力研究開発機構自身として,それだけだと見つかったところだけ直っていくようなイメージなので,抜本解決に至らないということに徐々に気が付いてきて,それで,もともとの保全計画の見直しという作業に取り組み始めたわけですが,ここに置かれているオールジャパン体制というのは,その保全計画の更に上位概念にある保安規定からスタートして,実際その保安規定の下位のいろいろな文書,そういうものを全体としてきちんと見直していくための体制作りが必要だろうということで,今,プラント保全部でやっている個々の不適合が出てきたものに対する横展開と修復作業といったものと並行して,もう一度保安規定の,一番上位から下におりていくそのチェック作業を行っているところです。それがむしろそのプラント保全部自身に行ってもらうよりも,違った目で,かつ,またそのプラント保全部が今行っている業務を阻害しないような形で,この体制を作らせたと理解していますので,実際,オールジャパン体制を作るのに時間が掛かりましたが,この取組自身はそういう意味で非常に意味のあることだと我々は評価しています。

【丸委員】

どうもありがとうございました。

【有馬座長】

ほかに御質問。櫻井委員。

【櫻井委員】

意見というか,この間の視察の件ですが,たまたま偶然なのですが,私は,この1か月の間に,柏崎刈羽原子力発電所と福島第一原子力発電所と「もんじゅ」の三つを併せて見る機会があり,比較をするという意味では,個人的には大変有意義でした。そこで,主として比較の関係から感じたことを少し申し上げたいと思いますが,まず,それぞれやっていることが違うので,技術の能力はそれぞれの分野において一定水準の方がやっておられるのだろうと感じられました。
ただ,それぞれのプロジェクトを担う組織,それから,働いている方の気質(きしつ)や雰囲気について,「もんじゅ」の場合は,相対的にテンションが低いなというのが率直に感じたところです。アグレッシブかどうかという意味では,そういうところはなかったかなと感じました。個々の職員の方々の何か熱いものが感じられたかというと,そこは相対的には低かったように思います。
そのことについては,現時点で特に良い,悪いという評価をしているわけではないのですが,客観的にそのように感じたということで申し上げます。それで,なぜそうなのかという理由ですけれども,考えられることは,そもそも公的な性格の機関であるということは一つあると思います。公務員気質(きしつ)というか,民間企業に比べて公務は淡々とやるべきことをやるという,こういう規範が基本的にあるので,そういう点で,仕事に対する姿勢が民間企業と少し違うところがあります。多分それが一つあるだろうと思いました。
それからまた,研究活動をやっているということは,これはいわゆる世俗的な活動をしているということとまた少し性質が違うので,研究的な活動をしているということも恐らくは影響を与えているということも,もう一つの要素だと思います。
それから,もう一つの要素は,後天的なことなのでしょうが,やはり長年,なかなか「もんじゅ」のプロジェクトがうまくいっていないということがあって,将来的にどうなるのかという展望も必ずしも見えない中でやっておられるので,そういう意味では,なかなか明るくやる気を持って頑張るという感じでもないのかなというのは,個人的には思いましたし,それが組織全体の在り方としても言えるのかなと思いました。これも,評価以前の問題として,だからどうするということでは必ずしもないのですが,大きな違いとして感じたところです。
例えば東京電力の廃炉の問題も,それ自体は,後ろ向きのプロジェクトですよね。言うなれば,事故の後始末の話をしているわけですので。しかしながら,視察したとき,それを非常に前向きにやろうとしているというところがかなり感じられたところでして,これは若干驚きだったのですが,技術的な課題として,あのプロジェクトを捉えると,技術者としては非常に大きな克服すべきものとして捉えているのだなということは逆に感じたのですが,もんじゅの場合,そういうところは余りなかったと思っています。
こうした問題は,恐らく組織形態とも関連していて,どのような受皿を作るのが適切かという問題と密接に関わってくるのだろうと思います。それが一つ。
それから,もう一つは,そのこととも関連しますが,日本原子力研究開発機構の方々の問題なのですが,いろいろな御説明の仕方とか,取組方から垣間(かいま)見られるということで申し上げると,これも必ずしも批判しているというわけでもないのですが,何と言うのか,全体として世慣れていないなという印象はありまして,立ち回りが余り上手ではないなと思いました。これは多分,二つ問題があって,一つは周辺住民の方とか,あるいは国民との関係でどうかという問題が一つあります。ナトリウム漏えい事故に対する対応もそうですけれども,この問題は電力会社も同じで,それぞれに非常に苦労されているところで,共通している問題と言って良いわけです。したがって,それは,原子力施設が共通の問題として抱えているということだろうと思ったのですが,もう一つの側面として,行政対応というところで,日本原子力研究開発機構は,きちんとできていないのではないかと思ったところです。
行政対応というのはどういうことかというと,はっきり申し上げると,文部科学省との対応は慣れていて,普通に話をすれば,話が通じるし,相手も日本原子力研究開発機構の事情が分かっているので,お互いに分かっている中での対応であり,それなりにこれまでやってきたということになるのだろうと思います。しかしながら,行政の組織の中でも,原子力規制委員会というのは,三条機関として独立性のある機関として東日本大震災の後に新規に作った,なるべくそういう従前の文脈を断ち切って,言うなれば,柔軟にやらない,厳格に,形式的にもしっかりやるというところから出発している組織です。そのため,確かに,従来のやり方を知っている人間からすると違和感があるのは分かるのですが,正にそういうものとして作り,その仕事をしているというのが原子力規制委員会の行政機関としての特徴だと思います。
そうすると,そういう新規の機関に対して,日本原子力研究開発機構がどういう対応をしていくのかというところは,スイッチを切り替えて,その辺の状況を踏まえた上で腹をくくって,文部科学省とは違うのだということで,対応をしていておかしくないのですが,そうした対応がいま一つできていないのではないかなと思いました。どちらかというと,愚痴的な話に聞こえるような御意見もありましたし,その辺が電力会社とは少し違うなと思います。ほかの電力会社も苦労しておられて,いろいろな不満はもちろんあるでしょうが,しかし,それなりに対応しておられるように見えます。安全の問題については,現行法上は原子力規制委員会の所管ですから,そこはそういうふうに言われたら,それにとにかく納得してもらえるように,規制機関がきちんと分かるように説明していくことが大事ですし,納得してもらえるような対応をしっかりするという覚悟,それをやり抜くんだという粘り強さがないと,なかなかこうした規制の要求に対して,応えていかれないと思いますので,そこのところはほかの電力会社との比較で言うと,少し足りないかなと思いました。
それから,3点目ですが,所管の官庁である文部科学省の御対応というところで,当日,視察についてもいろいろエスコートしていただいたのですけれども,日本原子力研究開発機構に対して妙に優しいなという感じがあります。確かに,事情をよくお分かりだから,日本原子力研究開発機構のこういうところを分かってほしいという気持ちが多分おありなのだと思うのですが,何か,内輪の雰囲気があって,共通の敵が原子力規制委員会というようなことになっているのではないでしょうか。しかし,本来は,そうではなく,多分,文部科学省と日本原子力研究開発機構との間にもっと緊張感がないといけなくて,今回も,日本原子力研究開発機構の方がもっとピリピリしていないと本当はおかしいような気もしましたし,文部科学省も,まあまあ,どうぞ,どうぞという感じで,そぐわない感じもしました。全体として,日本原子力研究開発機構本体と法人を所管している官庁としての文部科学省の姿勢が両方相まって,少し内輪っぽいので,その間に外部的な視点が入らないと,恐らく,監督の仕方も,ある種,外部的なボードみたいなものが入ってもいいかなと思ったりもするところで,これは両方変わらないといけない。やはり子供が変わるだけでは駄目なので,親も一緒に変わらないとそれぞれ独立しないということなのかなと思っています。

【有馬座長】

どうもありがとうございました。
何か文部科学省から御意見ありますか。

【田中研究開発局長】

櫻井先生の御意見はきちんと受け止めて,今後の検討にきちんと反映させていきたいと思います。

【有馬座長】

どうもありがとうございました。
次の案件に移ります。これまでの検討会で各委員から出されました質問等に関しまして,日本原子力研究開発機構から回答が来ておりますので,日本原子力研究開発機構から説明をお願いいたします。

【荒井計画管理部長】

資料3に基づいて御説明させていただきます。よろしくお願いします。
今までの検討会の中などで,委員の方々から御質問いただいた件のうち,本日,一部を回答させていただきます。
1ページ,安全文化の浸透に係る意識調査結果について御説明させていただきます。
2ページです。これは第1回の検討会の中で,委員から現場の意見の調査をしているのかという御質問の関連です。
実施機関ですが,株式会社原子力安全システム研究所(INSS)というところにお願いをして,これまで平成20年度から平成26年度まで7回実施してきています。
一つ飛んで,対象ですが,平成20年度から平成25年度は敦賀地区,平成26年度は日本原子力研究開発機構内全ての拠点を対象にし,更にその調査対象については,プロパーのみならず,出向者等も含めて日本原子力研究開発機構の作業着を着て,働いている者全員に対してのアンケートを行っています。
調査方法については,アンケート方式で,複数の設問を用いて,原則5段階の選択肢を設定して質問をしました。評価結果の例を3ページに紹介をしています。これは平成26年度の結果の例ですが,上のレーダーチャートは点線の黒い四角が日本原子力研究開発機構全体の平均値,白い丸が高速増殖原型炉もんじゅのアンケートの結果です。
このアンケート,調査結果の報告書の中で,INSSから考察を頂いた一つを御紹介します。幹部の姿勢や取組に関する項目の評定値が低い。幹部が懸命になっているという姿はごく一部の管理部門にしか十分に伝わっていないのが現状と思われるという考察を頂き,あるいは下図,部長級以上の上級管理職から一般職員までの3グループの比較をしていますが,上級管理職と一般職でギャップがあるというのは,通例どんな組織でもあることですけれども,加えて,「もんじゅ」の場合は,上級管理職と管理職の間にも認識のギャップがあるという考察を頂きました。こういう考察,そういうアンケートの結果というものを認識して,現場との相互理解のための活動を所長,あるいは理事長が実施しているというところです。
4ページから5ページ,これは「もんじゅ」の不適合管理活動について,御説明する資料として作りました。
5ページですが,中央に不適合の処置概略フロー図というものを示しましたが,不適合というのは,通常とは異なる,あるいは要求事項を満足しない場合が該当しますが,それが発生した場合,それを除去する,あるいはその先に再発防止を行う,更には,それ以外のところに潜在する不適合の未然防止を行うという処置をしていきます。
これらの処置は,書類を作って,分析をして実施しますが,日本原子力研究開発機構は,以前からある不適合管理委員会に加え,上側のまる1,CAP(Corrective Action Program;是正処置プログラム)情報連絡会というものを平成26年12月に設置して,改善をしているところです。CAP情報連絡会は,所長以下がメンバーとして出るわけですが,その会議に現場のいろいろな不具合,いろいろな情報を上げて,情報の迅速な共有を図るとともに,メンバーからの指示,指導,助言を受けて,不適合の管理を回していくということを行っているところです。
6ページと7ページに運転保守体制の変遷をまとめました。7ページですが,下側にグラフが左から右に,平成7年度から平成27年度まであります。平成7年度というのは,「もんじゅ」がナトリウム漏えい事故の前に初送電をした年ですが,そこから平成27年度までの「もんじゅ」の運転保守体制の変遷をここに示しています。職員と電力会社からの出向者,更にはメーカー等からの出向者という三つのグループに分けて,グラフを作りました。
特に平成26年度については,日本原子力研究開発機構内の他拠点からの異動や,実務者を中途採用するなどにより職員を増加して,約200人まで上げました。そして,保守管理及び品質保証に係る体制の強化を図っています。
また,平成27年度においては,「もんじゅ」をプラントの運転,保守管理に専念できる体制とするために,「もんじゅ運営計画・研究開発センター」を新たに設置し,そこに一部「もんじゅ」から要員を異動しています。
平成27年度の棒グラフの右側に「旧動力炉・核燃料開発事業団からの勤務」ということで,これは技術継承の観点から,少し情報を整理したものです。現在約165人のプロパー職員がいますが,プロパー職員のうち,動力炉・核燃料開発事業団時代を経験している者が約40名,その40名のうちの35名がナトリウム漏えい事故の経験者という状況になっています。
8ページ以降,これまでの保安検査の指摘事項概要と対応についてまとめました。
9ページです。これが保安検査での指摘事項の全体を俯瞰(ふかん)するように,左から,平成24年11月から始まり,右側が現在ですけれども,それぞれ幾つかのイベントの間に保安検査を受け,そのときに指摘を頂いています。これまで保守管理上の不備に係る指摘として,違反を13,監視を四つ頂いています。加えて,保守管理上の不備以外の指摘として,監視を三つ頂いています。
これらの指摘を左から分析してみますと,一番下に三つ箱を書きましたが,初期は,「点検の実施」に対する指摘を多く受けています。すなわち,Do(実施)の部分での指摘です。真ん中で,少し時間が進み,平成25年に1回目の報告書を出した以降は,「点検の計画作成」あるいは「点検の評価」に対する指摘,すなわち,Plan(計画)をするところ,あるいはCheck(評価)をするところの指摘を受けています。更に最近においては,一番右ですが,「点検結果の評価の反映」,すなわち,Action(見直し)のところの指摘であるとか,「保全重要度の設定」に対する指摘,Plan(計画)に対しての指摘を受けています。そういうふうに指摘の質が少しずつ変わってきていると分析しました。
10ページですが,縦軸に保守管理のプロセスフロー,上からPlanが始まって,真ん中が点検の実施のDoであり,その後に,Checkだとか,ActionというPDCAが回っている絵がありますが,それぞれの時期に(1)から(5)の指摘を頂いているところです。右側にそれを再整理しました。
(1)については,点検計画において定めた点検期限を超過している,要するに,Doの指摘を頂いています。ただし,それに対しては,所要の点検を全て完了し,報告書を提出するとともに,計算機システムを導入して,新たな点検期限超過は現在まで発生していないと考えています。その後,PlanやCheckの指摘を(2),(3),あるいはその下の段階で,Plan,Actionに対して(4),(5)という指摘を頂いているところです。
全部で17の指摘については,16ページ以降の参考資料にまとめています。本日は時間の都合もあり,御説明はしませんので,後で御覧いただければと思います。
このように,指摘の質が徐々に,Doを真ん中とすれば,両側の端の方に少しずつ広がっているということで,今,オールジャパンの体制を発足させて,潜在するあらゆる課題を体系的に摘出して,改善をしていくという取組をしているところです。
続いて,11ページです。今まで頂いた指摘事項に係るプラントへの安全への影響についてまとめました。未点検機器等,安全重要度の設定不備,保修票等の未処理と,大きく分けると三つになりますが,それぞれの項目に対して,例えば未点検機器でいえば,速やかに点検を実施する,あるいは点検時期までの間,プラントの安全に影響を及ぼしていないということを技術評価して確認し,特別採用を実施するなどの分析評価を行っています。このような形で,現時点において,プラントの安全に影響を及ぼしていないということを確認しています。
12ページ,13ページ,14ページは,先般,視察いただいた配管支持構造物あるいは配管の外観点検,安全重要度の設定不備に係るものについての指摘事項と,それに対しての日本原子力研究開発機構の対応についてまとめていますが,これらは現地での説明でも触れましたので,説明は割愛させていただきます。
以上です。

【有馬座長】

ありがとうございました。
ただいまの説明について質問がありましたらお願いいたします。ないようですね。
それでは,ありがとうございました。
なお,今回は資料の配付のみとさせていただきますが,これまでの御議論を踏まえて,事務局で資料4の論点を更新しております。本日の議論も加えて,再度,事務局において整理する予定ですが,新たに御質問等があれば事務局に御連絡をお願いいたします。
本日予定された議題は以上ですが,何か特にここで御発言になりたいことがあったらどうぞ。

【宮野委員】

今,「もんじゅ」の在り方について,質問や回答を頂きました。もともと前回も発電炉に対してもコメントをたくさん出したのですが,目的は一つ一つこういう回答ではなくて,発電炉と研究開発炉の「もんじゅ」とどういう違いがあるのかということを明確にすることがまず必要ではないかということで,お問合せをしたわけですので,是非それは日本原子力研究開発機構,発電炉,それから,本日報告いただきましたメーカー等も含めて,どういう違いがあるのかということを明確にして,研究開発炉としてはどういうものなのだ,ナトリウムループとしてどういうものなのだということをしっかり提示していただくことが回答になるのではないかと思います。その上で,品質管理というものをどのようにすべきなのかという議論になるのではないかと思いますので,是非そういう取組をお願いしたいと思います。

【有馬座長】

日本原子力研究開発機構,よろしくお願いしますが,よろしいでしょうか。

【荒井計画管理部長】

分かりました。検討し,御回答します。

【有馬座長】

宮崎委員,本日は質問なさっていないので,御意見等何でもどうぞ。

【宮崎委員】

視察はどうしても大学の業務があって参加できませんでした。最初のお話のところで質問をする時間がなかったので質問したいのですが,PDCAのサイクルを回していく点で,第1回の検討会のときに問題,課題として,危機感やスピード感不足,モチベーション不足といったことが挙げられました。本日の御説明の中で,現象の把握,要因分析・原因究明,対策検討,対策案の実証とありましたが,このプロセスで,そのスピード感をどうやって上げるのか,保全の評価項目の中でもやはりスピード感,スピードという尺度はあるのかという質問です。
柔軟に対応するべきだと思うのです。例えば何か問題が起きたときに,柔軟に,そして,スピード感を持って対応する。ですから,このPDCAにそれを盛り込むときにどのように考慮しているのかという質問です。

【有馬座長】

何かお返事があれば。

【多田原子力部長】

スピード感ですけれども,それはケース・バイ・ケースです。問題の大きさにもよりますけれど,基本的にはいろいろな問題があったときには,一番の指標は安全,安全性です。その次が品質になります。その次に初めてスピード感という工程が出てきます。最後にそれに掛かる費用ということで,そういった指標の順番が多くのメーカーのやり方だと考えています。

【有馬座長】

どうもありがとうございました。
予定された議題は全て終わりましたので,事務局より事務連絡をお願いします。

【髙谷研究開発戦略官】

事務連絡です。
本日の議事録ですが,事務局で作成後,これまで同様に,委員の先生方に御照会させていただくという予定です。よろしくお願いいたします。
また,次回ですが,委員の先生方の御都合を伺いながら,現在,3月4日を予定しています。これも正式に調整が整い次第,御案内させていただきます。

【有馬座長】

以上で本日の検討会を閉会といたします。ありがとうございました。

お問合せ先

研究開発局 研究開発戦略官(新型炉・原子力人材育成担当)付

(研究開発局 研究開発戦略官(新型炉・原子力人材育成担当)付)