日本原子力研究開発機構改革本部(第1回) 議事要旨

1.日時

平成25年6月7日(金曜日)15時30分~16時30分

2.場所

文部科学省 3F1特別会議室

3.議題

  1. 日本原子力研究開発機構改革本部及びタスクフォースの進め方について
  2. 日本原子力研究開発機構の抜本改革における論点について

4.出席者

委員

青山委員、井手委員(代理人出席)、柘植委員、中西委員、宮野委員

文部科学省

下村文部科学大臣、福井文部科学副大臣、丹羽文部科学大臣政務官、森口文部科学事務次官、藤木文部科学審議官、前川大臣官房長、田中大臣官房総括審議官、吉田研究振興局長、戸谷研究開発局長

オブザーバー

松浦日本原子力研究開発機構理事長

5.議事要旨

(1)日本原子力研究開発機構改革本部及びタスクフォースの進め方について
事務局より資料に基づき説明した内容について、特段の意見はなく、原案通り決定。

(2)日本原子力研究開発機構の抜本改革における論点について
事務局より資料に基づき説明した内容について、以下の意見があった。

(青山委員)
○抜本改革の「抜本」は何を指すのかという点も議論になる。原子力の関係者の中では、「もんじゅは研究者が主として管理しているから商用炉とはまた違う、特異な失敗が続く」という指摘が実は日常的になされているが、事実であれば、国民から見ればとんでもない話である。この会議で議論する抜本改革とは、JAEAだけの改革ではなく、原子力に関する研究機関や研究者全体に関する改革が必要かどうかを含めて謙虚に進めるべきだと思う。

○「もんじゅ」の現状は、技術的に行き詰まったのでなく、動燃のナトリウム漏れ事故などの隠蔽の体質が問題となったものである。

○強い独立性が確保された原子力規制委員会が新しい安全基準を示す予定であり、それに適合する原子炉は稼働するのが政府の基本方針となっている。それで正しいか、国政選挙などで主権者の意思を常に確認していかねばならないが、原子炉を一部であっても稼働するなら核のゴミの問題が最重要課題のひとつになるから、核燃料サイクルの実現も避けて通れない課題だ。したがって、「もんじゅ」も原子力規制委員会の新基準に適合すれば動かすべきだ。「もんじゅ」の運転には当初は電力事業者の技術者がかなり関与していたが、現在はごく少数しか関わっていない。電力事業者は原子炉再稼働を主張しているのだから、核燃サイクルに国と並んで重大な責任があり、「もんじゅ」の稼働にも、より責任を分担すべきだ。したがって、迅速に、すなわち短期間で改革への議論をとりまとめなければいけないとしても、JAEAが今後も「もんじゅ」を管理運営していくことを議論の前提とせず、JAEAから切り離し事業者と国の新しい共同管理体制で運営することを含め、様々な選択肢を、少なくとも議論の俎上(そじょう)に乗せることが必要。

(柘植委員)
○本来JAEAに求められる社会的責任に対して、トップマネジメントが足りないと感じている。すなわち、JAEAが福島第一原子力発電所事故への対応で、自らの社会的義務を果たしたと満足してしまっており、かつ、こうした油断を認識・是正する自律能力が欠けていたのだと思う。また、トップの指示を実行できないという点も、安全文化の劣化が根底にあるのではないか。今後、論点を掘り下げていくためには、これらの課題を徹底的に深掘りする必要がある。問題が山積しているわけで、放置すれば同じことが必ず起きることになる。

○JAEAの大きな命題は、社会的な使命の遂行であるが、経営陣と現場との間で日常的に問題意識を深く共有しておくことが大事だと思う。トップが現場まで行って、何階層も飛んでこれらの話をしていくことが極めて大事だと考えている。

○今後の方策としては、JAEAの「もんじゅ」に対する安全管理を電力事業者並みまで高めること、又はアメリカのように保守管理を外部の業者にアウトソーシングすることが考えられるが、どちらも中途半端だと、安全管理上の問題が起きる。

○「もんじゅ」に関する国の方向性は今後変わる可能性があるのだから、取りまとめの結論は、複眼的な視点を堅持する必要があると思う。

○最終的なとりまとめに当たっては、現場の方々が納得するかということを配慮しなければならない。

(宮野委員)
○改革本部の見直しの範囲が非常に広いため、2か月という短時間にどこまでできるのかということを考える必要がある。今回の問題を、経営管理に絞って議論するのか、全体の研究開発も含めて議論するのか、範囲によって違いがあるはず。議論の方向性自体はもっともだが、どこまでを議論の対象とするかを明確に考えていく必要があるのでは。

○最も重要なのは、原子力安全を優先した経営の問題である。JAEAの経営は、何を持って経営しようとしているかが問われている。経営が良いか悪いかということを、何を持って判断しているのかは、非常に難しいが、社会的に原子力安全がどこまで問われているのかに向かう姿勢を経営陣は明確にして、現場に取り入れるべきである。

○捕捉だが、研究者は安全をないがしろにしているというが、研究者であっても研究全体を見ながら、原子力安全についても、いかに確保されているかという“品質”を考えているのが正しい姿勢であり、また考えていなければならないものなので、研究者は安全を考えなくてもいい、研究にだけ没頭するものだという間違った認識を持たれないようにしてほしい。

(中西委員)
○JAEAについては、動燃と原研が一緒になったことを考え直す必要がある。言うならば、工場と研究者が一緒に仕事をしているようなもので、マネジメントが大変な面がある。ただし、放射線を安全に取り扱うことの重要性については、研究者であっても作業員であっても全く同等であり、それにより安全文化が醸成されていくという認識が必要。

○大幅に予算と人員が減額されてきている中で、どこを減らしてどこを増やすのかは、しっかり考える必要がある。特に、安全面の予算がどうなってきたのかを検証することも重要である。一方、研究開発の非常に強い武器でもあるアイソトープや放射線について、その有用性を考え、研究や開発をしっかりサポートすることが必要。現在日本でこの研究を総合的に支えることができる唯一の研究所はJAEAだからである。放射線利用の分野とは、イノベーションや産業開発に直結し、市場規模で見ると、エネルギー分野とは異なるものの、原子力発電と同等な大きさの重要な分野を形成しているということを認識してほしい。

(井手委員(代理出席))
○核燃料サイクルに関する検討は、その進め方を誤ると国民に原子力に対する否定的な印象を与えかねないので、その点に留意する必要がある。

○JAEAの基本方針として、安全確保の徹底が挙げられているが、これが組織のメンバーの規範となっていないことが問題の根幹にある。ただし、JAEAでは、最先端の研究者から実務を担う人々が多数の事業拠点に散在しており、これらの人々に対して、安全を最優先し、自身の担う業務の社会的責任を認識させることは容易ではない。組織文化の変革が必要であるが、これは一朝一夕に行くものではない。

○組織文化の改革については現状を徹底的に洗い出すこと等が必要だが、こうした取り組みについては、外部コンサルの活用などが必要ではないか。

○民間の知見を活用すること、他の機関との統合等も検討が必要だろうと思う。我が国が原子力利用を推進する上で、JAEAが果たすべき役割は大きい。その役割の再定義の議論は、国の中長期の原子力政策の実現に資する形で進められるべきである。

(松浦理事長)
○理事長の任命を頂いた際、JAEAは非常に重要な組織であるだけに、安全を第一にした信頼される組織にならなければならず、なるべく早く機構が正常となるよう改革をするよう大臣から訓示を頂いた。これは重く受け取っている。

○本日、機構の理事会で、理事長ヘッド、全役員をメンバーとした組織を作ることを決定し、今後、機構の状況を調べ、深掘りに当たるような検討を進めて、改革に取り組むこととしている。その議論を進めるに当たって、本部の御議論を踏まえて、御意見を頂きながら進めたいと思う。

○これまでの原研にいたときの正直な見方を申し上げると、研究と事業は必ずしも両立しないとは思わない。極めて目標をはっきりすること、情報や技術といった要素をつなぎ合わせることにプロジェクトの意味があるので、その意味をしっかり考えないとプロジェクトは成功しない。機構としてプロジェクトをどう進めるかということも改革を進める上での視点として考えたいと思っている。

(下村大臣)
○JAEAは、2つの組織が統合し、更に多岐にわたって拠点がある中で予算、職員数が減っている。こうした組織を再活性させることは大変なので、外部のサポートを使いながら、議論することが必要。

○JAEAが安全・安心な業務運営を行っているかという点については、国民からの信頼を失い、不信感を抱かれている。国民の皆さんに理解していただく必要があり、そのための方策が課題である。

○総合的なエネルギー政策の中での原子力の位置づけについては、政府の見解を早期に示す必要がある。ただし、これは短期間では結論が得られない問題。改革本部では、2か月という短期間の中で、スピード感を持って、まずは大きな方向性の中でJAEAの抜本改革案を示してまいりたい。


○2か月で改革本部の結論を出すというのは難しいので、一定の方向性を出していただき、細かいところは機構の中で議論する。方向性については、TFで議論をするとともに、次回以降の本部で議論すべきと思っている。

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研究開発局原子力課