原子力損害賠償紛争審査会(第61回) 議事録

1.日時

令和4年12月5日(月曜日)10時00分~12時57分

2.場所

文部科学省内会議室及びオンライン

3.議題

  1. 中間指針第五次追補策定に向けた論点について
  2. その他

4.出席者

委員

内田会長、樫見会長代理、明石委員、江口委員、織委員、鹿野委員、古笛委員、富田委員、中田委員、山本委員

青野専門委員、大塚専門委員、日下部専門委員、末石専門委員、米村専門委員

文部科学省

井出文部科学副大臣、千原研究開発局長、林原子力損害賠償対策室長、松浦原子力損害賠償対策室室長代理、川口原子力損害賠償対策室次長

オブザーバー

【説明者】
古谷原子力損害賠償紛争和解仲介室(原子力損害賠償紛争解決センター)室長
佐藤原子力損害賠償紛争和解仲介室(原子力損害賠償紛争解決センター)次長

5.議事録

【内田会長】  おはようございます。時間になりましたので、第61回原子力損害賠償紛争審査会を開催いたします。本日はお忙しいところ、お集まりいただき、ありがとうございます。オンラインで御参加の委員の皆様もありがとうございます。
 初めに、本日も井出文部科学副大臣に御出席いただいておりますので、最初に御挨拶をいただきたいと思います。井出副大臣、よろしくお願いいたします。



【井出文部科学副大臣】  皆様、おはようございます。本日、61回目の原子力損害賠償紛争審査会の開会に当たり、一言挨拶を申し上げます。
 内田会長をはじめ、先生方には本当に毎回濃密な議論をしていただきまして、ありがとうございます。
 12月2日に福島の皆さんが中間指針の見直しについて要望に来られました。特に御要望いただいたのは、前回、議論をいただきました故郷の喪失・変容にかかる賠償の中で、特に緊急時避難準備区域のことですとか、それから、今日、御議論をいただきます自主的避難等による精神的損害といったところに絞って賠償の御要望いただきまして、その心は、もう先生方に私が今さら申し上げるまでもありませんが、これまでも被災者の分断ということが言われてきていることについて改めて地元として要望があったと受け止めております。このことは前回の議論でも、私も大変難しい議論だなと思って聞いておりました。中間指針でございますので、まず指針が全てではないんだということも引き続き御議論いただきたいと思いますし、また、指針であるからこそ明確性といいますか、どういう考え方に立つのかというところはきちっとお示しをしなければいけない。そういう中で、先生方、非常に苦悩を抱えながら御議論をいただいていると思いますし、いろいろなことを大変重く受け止めながら御議論いただいているということは、福島の皆さんにも2日に、先生方のお気持ちもお伝えいたしました。
 私もこうして本当に、この議論に立ち会う機会というものをいただきまして、非常に責任といいますか、第五次追補をしっかりと見守り、見届けたいという思いでおります。今日も引き続き、真摯な議論をお願いできればと思います。どうかよろしくお願いいたします。



【内田会長】  どうもありがとうございます。
 それでは、次に、事務局から資料等の確認をお願いいたします。



【川口原子力損害賠償対策室次長】  事務局でございます。資料の確認をさせていただきます。本日は会場での対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド形式での開催となっております。会場で参加されている委員につきましては、お手元の端末を、また、オンラインで参加されている委員につきましては、事前にお送りしているものを御覧ください。資料は議事次第に記載のとおりですが、資料に不備等ございましたら、議事の途中でも結構でございますので、事務局までお声がけいただければと思います。
 なお、参考3、全体の資料では116ページ目に当たりますけれども、「地方公共団体等からの主な要望事項について」を配付しております。こちらにつきましては、先ほど井出副大臣からお話のございました、12月2日に行われた福島県原子力損害対策協議会、この要望での概要をまとめたものとなってございます。要望書本体につきましては、委員の皆様に既に共有しているところでもございますので、前回同様、この場での説明は割愛いたしますが、要望書の概要につきまして、資料のとおり配付しておりますので、適宜御参照いただければと思います。
 次に、発言に当たってのお願いであります。会場で参加されている委員につきましては、御発言の際、お手元のマイクのボタンを押していただき、マイクにランプが点灯したことを確認いただいた後、必ずマイクに近づいて御発言いただきますようお願い申し上げます。マイクから離れて御発言されますと、オンライン参加の委員などへ音声が聞こえない場合がございますので、御留意いただければと存じます。音声が拾えていない可能性がある場合は、事務局から適宜お声がけいたしますので、あらかじめ御承知おきいただければと思います。発言が終わりましたらボタンを再度押していただき、ランプが消灯したことを確認してください。
 また、オンラインで参加されている方につきましては、御発言の際、端末の画面上にございます挙手のボタンを押していただけますと、会長などから御指名させていただきます。御発言いただく際はミュートの解除をお願いいたします。発言が終わりましたら、その都度ミュートに戻していただければと思います。
 なお、本日は過半数以上の委員の皆様に御出席いただいており、会議開催の要件を満たしておりますことをあらかじめ御報告させていただきます。
 また、山本委員におかれましては、11時45分頃退席予定である旨お伺いしておりますので、あらかじめ御承知おきいただければと存じます。
 そして、前回審査会に引き続きまして、判決等の調査分析を御担当いただきました専門委員にもオブザーバーとして御出席いただいているところでございます。
 以上でございます。



【内田会長】  ありがとうございます。
 それでは、議事に入ります。議題1は、中間指針第五次追補策定に向けた論点でございます。前回審査会に引き続きまして、中間指針第五次追補の策定に向けた各論点についての議論をしてまいりたいと思いますが、第59回会議では、専門委員の最終報告を基に、事務局から議論すべき論点を5つに整理してお示しをし、審議の結果、これらについて審議することとなりました。前回の第60回会議では、このうち最初の3つである過酷避難状況による精神的損害、生活基盤の喪失・変容による精神的損害、相当線量地域の健康不安に基礎を置く精神的損害について御議論いただきました。
 今回は4番目の精神的損害の増額事由、5番目の自主的避難等による精神的損害の2点に関して、類型化に当たっての考え方について、事務局に具体的な論点を整理してもらいました。進め方については、前回同様、まとめて議論を行うのではなく、各論点を順番に、分けて議論していきたいと思います。
 まず1つ目の精神的損害の増額事由です。最初に、類型化に当たっての考え方に関する基本的な論点につきまして説明をお願いしたいと思いますが、本件、このテーマはADRセンターの総括基準が定める日常生活阻害慰謝料の増額事由を基に類型化を検討するものですので、説明はADRセンターの古谷室長からお願いしたいと思います。また、本件は論点が多いことから、全ての論点をまとめて御説明いただくのではなく、幾つかに分割して説明していただき、それについて議論するという形で進めていきたいと思います。
 まずは資料の全体的な説明と資料1-1の論点、(1)から(3)までについての説明を古谷室長からお願いいたします。



【古谷室長】  ADRセンターの室長をしております古谷でございます。よろしくお願いいたします。では、私から御説明させていただきます。ADRセンターから、今回、御議論をお願いしたいことの要点というのは、資料1-1、「精神的損害の増額事由の賠償の考え方について」という資料がございますけれども、その1ページ目の下のほう、通し番号で言うと3ページになりますけれども、下のほうに丸1から丸10まで事由が箇条書されています。私は、これらのことを「増額事由」と呼ぶこともあろうかと思いますけれども、この10個の増額事由を中間指針に明確に位置づけていただけないかというのが1点目の問題提起でございます。
 それから、2点目は、そのうちの丸1から丸10までの増額事由のうちの幾つかのものについては、定型的に賠償の目安額というのを設定していただけないかというお願いです。
 我々がなぜこのような問題提起をしているかということの背景、事情も含めまして、簡単に御説明いたします。ADRセンターというのは、もう皆さん、多分御承知かと思いますけれども、基本的には被害に遭われた方と、東京電力の間の和解を取り持つ、和解の仲介をするという役割を担っております。そして、実際には、中間指針に定められた内容、あるいは趣旨を踏まえまして、ADRセンターの中の調査官という法曹資格を持った者がおりまして、その調査官がまず事件の調査に当たります。当事者に電話での聞き取りをしたり、いろいろな資料を調べたり、そういったことをしております。
 その上で、仲介委員という者がおりまして、仲介委員が手続を主宰して、これが賠償に一番値するのではないかと考え抜いたものを和解案として提示します。その提示した和解案を当事者、申立てた被害者と東京電力が納得していただければ和解成立ということになります。どちらかに納得していただけない場合は、残念ながら、手続としては打切りということになっております。そういった和解仲介をしています。
 センター自体は、事故から半年ぐらいたった頃から活動を開始しまして、中間指針は類型的な事柄についてはきめ細かく定めていただいているわけですけれども、個別事情を踏まえての救済はADRセンターがしてきました。これは基本的な仕切りになっております。ADRセンターが、実際に個別事情を踏まえた事案の解決、あるいは和解案の提示をする中で、ある程度、グループ化できるものがあるのではないかという認識にだんだん到達していきました。
 例えば事故の前は、バリアフリーの御自宅に住んでいた方が避難して、避難先で生活するということになれば、これはもう当然、日常生活に大きな支障を来すというのははっきりしているわけです。もちろん類型的な救済、賠償ということで、中間指針のほうでは、日常生活阻害慰謝料、そういう呼び方がされていますけれども、当初の頃につきましては、月額10万円という目安額も設定していただいております。
 しかしながら、実際の事案を見ていますと、やはりこれでは少し足りないなと、あるいは事案によってはもう到底足りないなというケースが数多く出てまいりました。中間指針の当初の段階では、類型化はされていないですけれども、事件の対応や実際の和解案を考える中で、このレベルで何とか、中間指針よりも抽象度は低くなるというか、具体的な要素が入ってきますけれども、一つ下の段階での類型化ができないかということで、今回の丸1から丸10までというのをまずは内部的なものとしてつくったわけです。
 これをつくったのがちょうど事故の翌年、平成24年の12月になります。12月、その時点で大体事件数としては、申立件数5,000件を超えたぐらいかと思います。それぐらいの事件の吟味を背景に、これを打ち出したという経緯でございます。形式としては総括委員会の総括基準という形で定式化をさせていただいております。総括委員会というのは、当センターの最高の意思決定機関で、基本的な事柄を3名の総括委員の方に決めていただいているというものでございます。
 それから、総括基準というのは、センターが和解仲介の業務をする中で、こういうことを決めておいたら、さらに賠償が加速するであろうと、適切な賠償ができるだろうという観点から、精神的損害に限らず、財物損害であったり、営業損害であったり、いろいろなことを決めております。ちなみに、現時点で総括基準は全部で15個あるわけですけれども、今回はそのうちの一つを特に取り出して御議論いただきたいという趣旨でございます。
 そこの10個あるのは、丸1から見ていきますと「要介護状態にあること」というものから始まっておりまして、これを今から個別にお話をさせていただきます。これは総括基準という形で、平成24年の12月に、はっきり打ち出して以降、個別の和解案では、東京電力にもこの点を踏まえていただいた和解に応じていただくことが多くなり、それなりの成果を上げているわけですけれども、被害者の方が直接、東京電力に請求する、私も今から「直接請求」と呼んだりすると思いますが、その中では十分にこれを踏まえた、この丸1から丸10が当然賠償に値するという前提での賠償がされているわけではないという現状がございます。
 ということで、まずは総括基準より、格が高いという言い方はちょっと不適切かも分かりませんけれども、はるかに重みを持って、受け止めていただける中間指針に、丸1から丸10を引き上げていただきたいというのが1点目のお願い、もしくは問題提起でございます。
 2つ目は、目安額の設定ということでございます。結局、直接請求で和解できなかった、あるいは和解したけれども、何か不満があるという方はADRセンターに来ていただければ、個別の対応は当然いたしますし、それはセンターの責任、責務でもございます。ただ、実際の話をいたしますと、ADRセンターの手続はやはり当事者の方にとっての負担はある程度あることを正直に申し上げざるを得ません。できるだけ当事者の方の御負担、手続上の負担や、精神上の負担が少ないように努力はしているのですけれども、どうしても一定の負担が生じてしまうというのははっきりしております。
 例えば立証の段階で、昔のことを、記憶を掘り起こして整理しないといけない場面。もちろん整理するのがなかなか大変だというのもありますし、思い出すことの苦痛というのもやはりあるわけです。その辺りはうちもできるだけ配慮しながらしておりますけれども、一定の限界があります。また、手続の中では、東京電力から書面が出てきて、それを読まなくてはいけない苦痛も当然あるわけです。法律家の目から見たら、法的な主張にすぎないような場合もありますけれども、やはり実際に被害に遭われた方からすると、そういった負担感というのは決して軽視できないのだと思います。
 そういった観点から申しますと、もちろんADRセンターをしっかりやっていく所存ですが、その前に目安額というものをもし出せるものであれば打ち出していただいて、できるだけ、ある意味、定型的にといいますか、迅速に賠償いただくというのが大変ありがたいということで、目安額の設定をお願いしたいというのが2つ目のお願いということになります。
 資料に戻りますと、1-1の「考え方について」のちょうど1ページ目のアラビア数字の1のところは、まずは増額事由を中間指針に引き上げていただきたいということが書いてございまして、一番下の行、アラビア数字の2、これは目安額の設定をお願いしたいということを書いてございます。
 以上が総論的なところになりまして、個別の各論の増額事由の御説明に移らせていただきます。資料1-1と1-2-1、それから、1-2-2をお配りしております。これは実際に、精神的事由の増額事由についての和解が成立した事例をセンターで取りまとめて公表しているものを抜粋しております。大部にわたって読みづらいものになっておりますけれども、御容赦ください。必要な限度で、言及していきたいと思っております。
 では、まず要介護についての御説明をいたします。要介護というのは、1-1の資料で言いますと、増額事由の「丸1 要介護状態にあること」というところでございます。これについて、まず、公表されている事例でありますとか、我々の手持ちの公表していない事例などを分析いたしますと、要介護状態については、要介護3、4あるいは要支援という形で等級認定がされているケースが非常に多くございます。等級認定に言及した上で、この人は要介護状態にある、要支援状態にあるという認定をしているものが多く見受けられます。一方で、そのようなものがない場合であっても、ADRセンターでは具体的な状況に応じて、そのときの身体、あるいは生活の状況から、少数ではありますけれども、認定しているという事案もございます。
 ちなみに賠償額、目安額ということを先ほど私は申し上げましたけれども、昨年1年間で精神的損害について増額した和解事由のうち、要介護と身体の障害などいろいろ重複しているのも数が多いのですけれども、重複するのが入るといろいろ複雑な話になってしまうので、単純に要介護だけで増額したケースを分析、計算してみましたところ、要介護だけというのは、昨年1年間では29件ぐらいで、増額の平均値というのが3.8万円でございました。これは公表事例だけではなくて、非公表も含めたものでございます。(注1)
(注1:この後、要介護と身体又は精神の障害が重複する事例が一定数あり、足し算した金額か、それ以上の金額となっている例もあるという旨の説明がありましたが、重複する事例はなかったことから誤りであり削除しました。(第62回審査会において訂正の発言あり。))
 では、次、増額事由の丸2に移りますけれども、「身体又は精神の障害」ということでございます。これについても、公表事例、非公表事例、いずれも、等級の認定がされているものにつきましては、それに基づいて認定している例が多くございます。一方で、例えば避難中に症状が出たなどそういったケースもございまして、そういうのは等級認定云々というのではなく、認定している例もございます。
 昨年1年間で、身体又は精神に障害がある事例で増額したというのを見ますと、増額の平均値というのは月額約3.3万円になっております。
 増額事由の丸3は、要介護の方あるいは身体又は精神に障害のある方を介護されていた方のお話でございます。これは事例を見ますと本当に様々ございまして、介護する側の方の人数、属性、年齢、本当に様々でございますし、介護を受ける側の方も同じような状況であります。
 例えば、家族全員で避難したのですけれども、そのうちの2人が障害を持っておられて、残り3人で、その2人をフォローしたとか、本当に大変だっただろうと思われるケースが多々ございます。介護したという件で、1人の方が介護した例に限って、去年1年のものを見てみますと、増額の月額の平均値は約3.3万円になっております。
 以上が、和解の事由の説明でございまして、若干補足いたします。
 今申し上げましたように、要介護、それから、障害については、等級認定がされている場合にはそれを利用して、認定させていただけると、当事者の方の手続負担としては軽いものになるかなと考えているので、それでいいという形でまとめていただけるとありがたいと思っているところでございます。
 それから、若干細かなお話をしますけれども、総括基準では、この10個の事由のうち、どれか一つがありますねとなるだけでは増額できるという仕切りにはなっておらず、この10個のうちの1個の要件を満たしたことプラス、通常の避難者と比べて、その精神的苦痛が大きいことという要件も書き込んでおります。これ自体は、後ほどお話ししますが、増額事由の中にはかなり事実的に広い範囲のものも取り込んでいるものがあるので、そういったものについては、通常の避難者と比べると精神的苦痛が大きい場合というのを要件としたほうがいいという判断からしているものと思います。
 その関係で、要介護あるいは障害があった、あるいはそういった方を介護していたという方については、ADRセンターの事例を見る限りは、通常の避難者と比べて、精神的な負担といいますか、日常生活の支障が大きい点もはっきりしているので、ほぼ定型的に通常の避難者と比べて、精神的な苦痛が大きいという要件を満たすという形で扱っていくということを許容いただければということを考えております。
 あと二、三あるのですけれども、一つが介護した方の賠償の話です。これは介護者、介護した側の方が複数いらっしゃる場合にどうするかというのが、実務的には非常に悩ましいところでございます。ここはとにかく手続負担が少ない形で、まずは賠償していただくというのが一番大事なことと考えて、主として介護に当たった方に定額で幾らという形で、目安額を設定していただくのが賠償の在り方としては望ましいということで、そのような形での御議論をしていただけるとありがたいと思っています。
 もちろん、具体的な事案によっては、主として介護に当たった方も大変御苦労だったけれども、従として当たった方もすごく御苦労だったという場合は、当然それは賠償に値すると言うべきですし、主従をつけられないぐらい2人が大変だった、3人で一生懸命やったと、そういうケースもあるわけなので、その辺りは本当に個別的な事情に応じて、こちらでも対応していきたいと思っております。
 同じような問題というのは、介護を受ける側の方が複数いる場合にも当然出てくるのですけれども、あまり複雑な目安をつくっても動かなくなってしまう可能性もあるので、基本的なところはまずはがっちり押さえていただいて、あと個別具体的なことはADRセンターの方で対応したいということでございます。
 それから、最後に一つですが、今回、中間指針の見直しの御議論の中で、事故当初の、特に当初の頃を中心とする避難が大変過酷な、苛烈なものであったということを理由に、過酷避難状況による精神的損害についての賠償の御議論がされていると承知しております。また、相当線量の測定がされている地域に一定期間滞在することになったということを理由とする、健康に対する不安についての精神的損害も賠償すべきか否かという御議論もされていると承知しております。仮に、この2つについて賠償すべしという結論が審査会で出た場合、仮に出たとしても、私が今申し上げている増額事由の丸1から丸10までというのは基本的に重ならないと思います。ほんの少しだけ、後で申し上げますけど、重複する部分が考えられなくもないのですが、基本的には重ならないと思いますので、今回の増額事由で目安額を設定していただける場合には、その目安額というのは今回の過酷避難状況であるとか、相当線量地域の健康不安は別物として増額していただくという形を取っていただけると幸いでございます。
 以上、大変長くなりましたけれども、アラビア数字の3の御説明とさせていただきます。
 以上です。



【内田会長】  どうも詳しい説明ありがとうございました。
 それでは、具体的な論点について一つずつ御議論いただきたいと思います。資料1-1と、そして、それについての、ただいまの古谷室長からの御説明を踏まえて、幾つか論点を分けまして、御議論をいただきたいと思います。
 まず最初に、資料の(1)、(2)に書かれていること及びこれに対する御説明の内容を踏まえた、全般的な見方に関して2つの論点が抽出できるかと思います。
第1番目は、総括基準が定める丸1から丸10までの事由があり、そして、通常の避難者と比べて精神的苦痛が大きいと認められる場合、こういう要件が必要だということを、ただいま古谷室長から御説明がありましたが、通常の避難者と比べて精神的苦痛が大きいと認められる場合に、日常生活阻害慰謝料では十分考慮されていたとは言えず、過酷避難状況や相当線量地域健康不安とも異なる性質であるから、月額の日常生活阻害慰謝料に対して増額できると。丸1から丸10までの事由があれば増額できることとしてよいかというのがまず第1の論点です。
 そして、2番目に、増額の仕方ですが、丸1から丸10のうち、内容が明確で、その認定が比較的容易なものについては増額の目安を示すことが相当であるとしてよいか。この点がまず、総論的な論点としてあろうかと思いますので、まず、これについて御議論いただければと思います。
 どこからでも結構ですが、御意見いただければと思います。いかがでしょうか。
 山本委員、お願いいたします。



【山本委員】  山本です。今、古谷室長から御紹介があった総括基準ですけれども、これは私自身が総括委員であった時代に策定されたものでございますので、一言、そんな観点から御意見を申し上げたいと思います。
 基本的には、ここで提案されていることには賛成でありまして、私は総括基準がつくられたときの我々というか、少なくとも私の思いとしては、このような基準が策定されたことによって、ADRにおいてはもちろんですけれども、いわゆる直接請求においても、これが配慮されて、東電の側から、言わば積極的に賠償がされていくもの、そういうことになることを期待していたものでありました。しかしながら、その後の状況は、残念ながら、必ずしもそのようなことにはなっていないということを伺っております。
 そうであるとすれば、やはり東電の直接賠償においては、この中間指針というものが、先ほど古谷室長から格というお話がございましたけれども、そういうことを考えますと、やはりADRを申し立てられる人、あるいは申し立てようと思う人は、必ずしも被害者の全員ではないということをこの間の被害者の方々からのヒアリングでもそういうことがお話あったかと思いますので、そうであるとすれば、申し立てた人と申し立てなかった人で、ある程度定型化できる損害について賠償の結果が変わってくるということは望ましくないことは明らかだと思いますので、この際、総括基準を指針に反映していくということは相当ではないかと思います。
 そうであるとすれば、今の内田会長の第2点の話とも関係しますけれども、やはり直接賠償に反映しようとするのであれば、できるだけ具体的な目安、可能な範囲で目安を示すべきなのではないか。抽象的に増額すべきだと言っても、これまでの賠償の状況を考えると、本当にそれが適切に反映されるかどうかということは必ずしも保障されないような気がいたしますので、可能な範囲でできるだけ明確な基準、目安というものを示していくことが望ましいのではないかと考えております。
 総論的なところとしては、私から以上です。



【内田会長】  ありがとうございます。
 続いて、鹿野委員、お願いいたします。



【鹿野委員】  ありがとうございます。鹿野です。私も今の総論的な部分のいずれにも賛成でございます。今、古谷室長及び山本委員からもお話がありましたように、丸1から丸10につきましては、実際のADR賠償実務において実績が積み重ねられ、それを踏まえて、総括基準として立てられて、用いられてきたということでございますし、そのような意味で類型化が既に行われてきたのだろうと思います。
 それから、あえて指針これを取り込むということに関しましては、これもお二方から御指摘がありましたように、既にADRだったら、これを用いて、実際に解決が図られるということが定着していると思いますけれども、やはり直接請求等に関しての紛争解決の促進に、より強力な形でつなげるという観点からは、これを指針に盛り込むということについての必要性が高いものと思います。
 そして、(2)のところについても、これが増額の事由ないし項目として掲げられるだけではなく、金額が示されるということが、それを類型的に示すことができる限りということではありますけれども、そのことが一層の紛争解決の促進に資することになると思いますので、いずれも賛成です。



【内田会長】  ありがとうございます。
 それでは、中田委員、お願いいたします。



【中田委員】  私も、(1)、(2)、いずれも賛成でございます。その上で、総括基準を中間指針に取り入れることについて一言、意見を申し上げたいと思います。古谷室長、山本委員おっしゃいましたとおり、今回これを取り入れることによって、直接請求にも生かすという狙いは誠にもっともなことでありますが、中間指針のほうが格が高いから、あるいは、より重みがあるからという御説明があって、それもよく理解できるのですが、しかし、そのことは、総括基準が格が低いとか軽いものではないということも当然の前提だと考えてよろしいのではないかと思います。総括基準、現在まで15項目あるということで、残り14項目あるわけですが、もちろんその中にはいろいろなタイプのものがあります。手続的なものもありますので、いろいろなものもあるのですが、これは決して軽んじていいものではなくて、これも当然、東電としては尊重していただくべきものだということを、できましたら、全体の「はじめに」というところでも示していただければありがたいと思いました。



【内田会長】  ありがとうございます。
 それでは、織委員、お願いいたします。



【織委員】  ありがとうございます。私もほかの先生方と同じように、この2つの総論的な考え方を入れることは大賛成でして、長い経験の下で、ADRで総括基準を15項目つくられてきたという、それぞれ皆さん、住民の方の事情などを聞きながらこれらをやってきたという重みがあると思います。私も実は住民の方のヒアリング等をするまでは、指針はあくまでも指針で、あとは個別的な案件ですとか、ADRに行けばよいのではないでしょうかと思っていたんですけど、まさに、今、室長がおっしゃっていたように、ADRがそれほど当事者に負担がかかるということを今おっしゃっていただいた意義はすごく大きいと思います。もちろん書類を整えるとか、記憶を呼び戻すという、そういったことの御負担が多分、私どもが考えているよりもっと大きいというのは、ADRの直接対面していらっしゃる皆さんがすごく切実に感じていらっしゃって、それを指針に生かすべきだという御意見は非常に重要だと思っております。そうした意味からも、これを指針に取り込むことはすごく重要なのではないかと思っております。
 また、鹿野先生がおっしゃったように、基準が明確であるということがすごく重要なんだろうと思っている中で、これは個別の論点になってくると思うんですけど、等級認定を使うというお話について、ある程度時差みたいなものをどうすればいいんだろうと。等級認定、1年に1回という認定になって、その間に進行したことについて、その辺りはどのようにするかというのは、後ほど各論に入ったらまたお伺いしたいと思います。
 以上です。



【内田会長】  ありがとうございます。
 ほかは大体よろしいでしょうか。古笛委員、お願いいたします。



【古笛委員】  私も方向性としては、この2つとも賛成です。ただ、今、織委員からも御意見があったんですけれども、やはり基準の明確性というところで、特に最初に増額事由として、丸1から丸10までの10項目を入れているけれど、通常の避難者と比べて、精神的苦痛が大きいと認められることが必要だと。そういうふうな抽象的な基準で最後に切るというところがあるので、反対するわけではないんですけれども、ぜひ教えていただきたいのは、例えば10項目に当たるとか当たらないが結構問題となるような項目があるのかどうかという点です。すごくもめるようなものであれば、それを基準として入れると、かえって、それが足を引っ張るようなことにならないかなということを懸念した次第です。
 以上です。



【内田会長】  では、ただいまの点について、古谷室長からお願いできますか。



【古谷室長】  ありがとうございます。今の先生方の御指摘はもっともでして、後ほど詳しく御説明しますけれども、簡単に申し上げますと、丸1から丸5まで、これはある程度定型的に把握することができるので、これについては定型的な扱いで目安額も設定していただきたいという御提案を、今からしていこうと思っております。
 それから、6番以降について、例えば中等度の持病といったときに、どこまでが中等度なのか、持病とは何なのかと言い出すと、ものすごく難しい判断になりますので、残念ながら、これらは目安額の設定からは外すという判断での御提案ということになっています。
 同じようなことが、8番の家族の別離です。この別離というのも、例えば小さな子供とお父さん、お母さんが離れたという場合は、かなりはっきりしているのですけれども、成人間でも結びつきが強い場合はどうするのかなど、別離の定義はすごく難しいため、これも本当は目安額設定のほうに入れたかったのですけれども、外しているという経緯です。
 ということなので、今の古笛先生の御指摘に対しては、丸1から丸5まではある程度の定型的な対応が可能ですが、丸6番以降は、残念ながら難しいかなという前提でのお話をさせていただきたいということになります。



【内田会長】  よろしいでしょうか。



【古笛委員】  引き続き、重ねてすみません。御質問させていただきたいんですけれど、文言から見ても、やっぱり丸6、丸7、丸8、丸9はなかなか難しいなというところはあるんですけれども、これをあえて慰謝料増額理由として掲げるという積極的な意味というのはございますでしょうか。



【内田会長】  では、古谷室長、お願いいたします。



【古谷室長】  これは、先ほど中田先生から、格は同じだという大変心強い御発言をいただいたのですけれども、実際、丸6以降のことは、基本的に個別対応にはなるのですけど、でき得る範囲で東京電力のほうには、グルーピングできるものはしていただきたいという願いは込められておりますし、今までADRセンターの中では丸1から丸10を踏まえてやってきていましたけれども、それをより確実なものにするという面もございまして、今回、これまで総括基準に掲げていたものは漏れなく引き上げていただきたいと、そういう趣旨になります。



【内田会長】  ありがとうございます。よろしいでしょうか。



【古笛委員】  はい。ありがとうございます。



【内田会長】  富田委員、お願いいたします。



【富田委員】  基準を明確にし、簡易、迅速に賠償するというのが中間指針の一番大きな役割ですが、もう事故から10年たって、御承知のように、ADRの賠償事例も賠償事例集が項目別にできるぐらいになっているわけです。これらの賠償についても、過去のことについて、これから請求があったとき賠償するという話ですので、直接請求においても、もちろん迅速に賠償されることが望ましいんですが、しかし、賠償事例集を参照して、これとの関連でこのぐらいは出せるということも東京電力も言えるはずだと思います。それを中間指針に載っていないから駄目ですというのは、今後は許されないのではないかと考えます。
賠償事例集は東京電力が賠償した事例です。自分で賠償した水準は、新しい事例についてもちゃんと賠償してもらいたいというメッセージを審査会としても打ち出して、そういう形で、なるべく直接賠償のところで賠償がされるように、今回の中間指針ではきちんと説明して、東京電力にその趣旨を伝えるとできたらと考えております。



【内田会長】  ありがとうございます。
 ほかにはよろしいでしょうか。江口委員、お願いいたします。



【江口委員】  私もこの総括基準を中間指針に入れること、それから、金額の目安を示すということは妥当であろうとは思っているんですけれども、ただ、今回、賠償の事例集というのを、具体的な事例というのを初めて拝見させていただきまして、本当に解決センターの方々の調査官、それから、仲介委員の方の御努力には本当に頭が下がる思いをいたしましたし、それから、先ほども古谷室長が言われましたとおり、1つに当たるものでないんですね。2つに当たる、場合によっては、3つに当たる、4つに当たると。そうすると、それから、2つに当たったときが足し算になるのか、そうでないのかということもおっしゃいました。そうすると、単に5つのものは増額事由になるんだよということだけを言っておけばいいのか、果たして3つになったらこうなるんだよとか、4つになったらこうなるんだよということまでも必要なのかどうか。
 それから、先の話になってしまうかもしれないんですけど、この金額についても、5割以上あるいは10割以上という例がずらっと出てきて、これだけ見ていると、どう違うのか。どうしてこうも違いができてしまったのかというのは要約を読んでも分からない。そうすると、ある意味、目安を示すときに、一つという形で示したときに、それがもっと取れる人にとっては悪いメッセージを与えるということにはならないんだろうかという懸念ですね。目安を示すことは必要だとは思うんですけども、その示し方、これは3以降になってしまうかもしれませんが、目安の示し方ということはどうなんでしょうか。



【内田会長】  では、古谷室長、お願いできますでしょうか。



【古谷室長】  ありがとうございます。大変難しい、かつ重要な問題だと認識しております。まず事由が重複する場合、これは私どももかなり検討はしまして、例えば交通事故ですと、併合、加重といいまして、こういう障害があったら1.5にしますとかあるわけです。そういうやり方も考えられなくはないのですけれども、正直、非常に事案の多様性が大きくて、そもそも一つの事由について目安額を示すことすら結構難しいところもあるわけなので、ましてや、併合、加重的なものを設けるとしても、あまりうまく機能しないのではないかという判断をしていまして、少し難しいと思っています。(注2)
(注2:この後、注1と同様、要介護と身体又は精神の障害が重複する場合、少なくとも相乗効果で金額が減ることはないことを把握しているという旨の説明がありましたが、重複する事例はなかったことから誤りであり削除しました。(第62回審査会において訂正の発言あり。))
 それから2点目の目安額を示すことの功罪というのは、これは全く御指摘のとおりで、個別事案で、少なくとも目安額までは賠償すべきだろう、目安額を超えて賠償すべきだろうというケースはいくらでもございます。他方で、目安額で定型的に賠償される形になっていないために申立てすらしないという方がかなり多数いるだろうというのもまた事実なわけです。ですので、目安額の設定については、そこら辺のことを踏まえて、本当に難しいと思うのですけれども、最低限とは違う、かといって、言い方は難しいけれども、観念的には、類型化し得る、少なくとも共通し得るものとして抽出できるものは目安額を出していただいて、それを超えるものはやはりADRセンターの方で、できるだけ負担を減らす努力はしつつ、こちらで受け止めるというお答えになると、思った次第です。
 


【内田会長】  ありがとうございます。ただいまの回答でよろしいでしょうか。



【江口委員】  はい。ありがとうございます。



【内田会長】  では、明石委員、お願いいたします。



【明石委員】  どうも明石でございます。私も考え方は全て賛成でおります。先ほど古谷室長から、こういう要介護、それから、身体または精神の障害、これは認定されている場合は「等」があるので類型化しやすいという話で、その後に、これがたとえ認定されていない場合でもケース・バイ・ケースで事情によってはというお話がありました。今ここで議論しているときは多分、納得というか、そうだろうなと分かるんですけど、そのうち時間がたつと、認定されていないのは駄目なのではないかと思われるような方も増えてくると思うんですが、これは認定されている場合、それから、そうでない場合も両方、可能性があるという内容がどこか文章の中に書き込まれるのかどうか。もしそういう、仮に認定されていないような場合でも、場合によっては認められる可能性があるという文面がどこかで内容が含まれていると、後々もその考えが浸透してくるかなと思うので、ぜひそれをお願いしたいと思うんですけど、いかがでしょうか。



【内田会長】  ありがとうございます。
 では、古谷室長。



【古谷室長】  ありがとうございます。御指摘は全くごもっともでございまして、少なくとも公の認定がなければ認められないということはもう微塵も考えておりません。微塵も考えてはいないのですけども、思っているだけでは駄目なので、それを何とか文字化して、表現化して、伝わるような形で対応したいと思います。大変ありがとうございます。



【内田会長】  指針に掲げるということになりますと、説明の中にそういうことが書き込まれるということになるだろうと思います。
 それでは、樫見委員、お願いいたします。



【樫見会長代理】  ありがとうございます。既に皆様おっしゃったので、繰り返しはいたしません。1点、古谷室長が、丸1、丸2、丸3に関しては、過酷避難による慰謝料ですとか、あるいは健康不安、これらとは独立にきちんと増額するということをおっしゃったかと思いますので、その点をきちんと指針に書き入れていただきたいと思います。議論が進んで、次の項目にも移っていくかと思いますけれども、その点、ほかの慰謝料の中に埋没することがないように、きちんと独立の項目として認めていただきたい。その旨を指針に書き入れていただきたいと思います。
 以上でございます。



【内田会長】  ありがとうございます。ただいまの点は重要な論点であると思います。
 大体よろしいでしょうか。
 
 (首肯する委員あり)
 
 それでは、全般的な論点につきまして、私の整理いたしました2つの論点については、皆さんの御同意が得られたものと思います。
 では、続いて、次の問題ですが、(3)で御説明のあった増額事由の「丸1 要介護状態にあること」についてでございます。ここにつきましては、2つの論点が抽出できるかと思います。まず第1は、要介護状態にあることについては、介護保険被保険者証において要介護5ないし1の認定を受けていることが確認できる場合、または同等の状態にあることが確認できる場合に増額事由を認定し、ADRセンターでの賠償実務に照らせばほぼ例外なく増額することが相当と考えてよいか。
 明石委員からの御指摘があった点ですけれども、介護保険被保険者証において要介護5ないし1の認定を受けていること、または同等の状態にあることが確認できる場合に、ほぼ例外なく増額することが相当と考えてよいかというのが第1点でございます。
 第2点としては、日常生活への支障の内容、程度は個別性が強いことを否定できないが、要介護認定の等級を問わず、共通するものとしての日常生活の支障を観念できることから、ADRセンターの賠償実務を参照し、一律に目安額を定めてよいか。これは個別事情に応じて実際の賠償額がADRの中で異なってくるということはあり得るとしても、指針の中では、共通する日常生活の支障があるものとして一律に目安額を定めてよいかというのが第2点でございます。この点につきまして御意見いただけますでしょうか。
 鹿野委員、お願いいたします。



【鹿野委員】  ありがとうございます。まず第1点につきましては、要介護状態にあるということの中には、認定を受けている方のほか、それ以外の方でも、それと同等の状態であることが確認できる場合を含むということでした。その点については、いずれも含めて増額事由とすることについて異論はありません。
 第2点で、これは質問にもなりますが、要介護認定の等級を問わずということについて、素人的な感覚で言うと、要介護の等級が重いほど御負担が大きいような、そういう相関関係というのは果たしてないんだろうかとも思うのですが、その辺りはADRとしてはどのような御判断をなさっておられたのでしょうか。教えていただければと思います。



【内田会長】  ありがとうございます。
 それでは、古谷室長、お願いいたします。



【古谷室長】  ありがとうございます。今、大変重要な御質問をいただいたと思っております。これは例えば、2番目の身体や精神の障害というのは、必ずしも日常生活の支障にその等級が直結するという構造はほぼないため、等級に差はないということは強く言えると思います。それに比べますと、要介護というのは、その概念からして、先生が御指摘のような、それによって差が出てくるのではないかという議論は当然、我々もしておるところでございます。
 今回、これをあえて等級に差がないことを打ち出しているというのは、少なくとも一番軽い人について、確実に一定の賠償額が行くようにと考えています。もちろん、さらに要介護状態が高い方については、ADRセンターと個別の増額をするという含みも持たせた上で、それでもやはり一律につくったほうが賠償が進むのではないかという判断から、こういった御提案をさせていただいているということでございます。原理的に先生のおっしゃるようなことがあり得るというのは、我々も考えてはいるところでございます。
 以上です。



【内田会長】  ありがとうございます。鹿野委員、よろしいでしょうか。



【鹿野委員】  あと一言だけ、よろしいでしょうか。今の御趣旨は分かりました。そういう形でも、その額を示すことによって、迅速公正な解決の促進を図るということの意味は理解しました。ただ、おっしゃった趣旨によれば、要するに、要介護の状態によって、当然これ以上の負担があり、賠償額としても増額幅が大きくなる場合があるということですし、そのことを、やはり指針の文章の中で明確にしておくということが必要なのだろうと感じました。
 以上です。



【内田会長】  ありがとうございます。もともと指針は全てそうであると思いますが、特にこの点についてもそういう点は重要であるという御指摘かと思います。ほかに御意見ございますでしょうか。
 では、大体、ただいまの論点につきましては、委員の間で御同意をいただいたということで理解してよろしいでしょうか。ありがとうございます。
 それでは、続いて、(3)で御説明のあった「丸2 身体又は精神の障害があること」についてですが、ここも2つの論点が抽出できるかと思います。まず第1は、身体障害者手帳において身体障害等級1ないし6級の認定を受け、もしくは精神障害者保健福祉手帳において、精神障害等級1ないし3級の認定を受けていることが確認できる場合、または、これらと同等の状態にあることが確認できる場合に増額事由を認定し、そして、ADRセンターでの賠償実務に照らせばほぼ例外なく、増額することが相当と考えてよいかというのが第1点。
 第2の論点は、日常生活への支障の内容、程度は個別性が強いことは否定できないが、認定等級を問うことなく、共通するものとしての日常生活の支障を観念できることから、ADRセンターの賠償実務を参照し、一律に目安額を定めてよいかというのが第2点でございます。
 以上の点につきまして、御意見をいただけますでしょうか。古笛委員、お願いいたします。



【古笛委員】  丸1とも絡むんですけれども、普通、「要介護状態にあること」というと、身体や精神に障害があるから要介護状態なんだということで、丸1が介護保険によって決めるというと、何となくイメージとしては、若年者は介護保険サービスを受けるものではないので、丸1は高齢者を対象にしていて、丸2が若年を対象にしているのかなと思ったんだけれども、必ずしもそうではないというところですし、また、手帳の場合には、手帳を取っている人と取っていない人というところで差が出るというのもどうかなと思いました。結局のところ、丸1、丸2ともどうすれば一番漏れがないようになるのかなと思ったんですけれども、やっぱり明確性ということを考えると、介護保険や手帳といった形式的な基準を踏まえて、プラスアルファのところでなるべく漏れがないようにせざるをえない。そして、障害を持っていたとしても、介護が必要な人というのはより重い補償ができるように、むしろ丸1ということが分かりやすいような基準が設けられたらとは思います。



【内田会長】  ありがとうございます。
 では、古谷室長、この点について。



【古谷室長】  ありがとうございます。今、古笛先生のおっしゃった点、全くそのとおりでございまして、こちらも手帳がないと駄目など、そのようなことはゆめゆめ考えておりませんで。できるだけ客観的に、なおかつ、早く情報が把握できるものの一つのサンプルとして掲げているにすぎませんので、ほかにも何かあれば、それは掲げるようにしていきますし、決してそれ以外の方は賠償されないという間違ったニュアンスが伝わらないように、表記のほうもまた改めて検討したいと思います。ありがとうございます。



【内田会長】  ただいまの回答でよろしいでしょうか。



【古笛委員】  はい。



【内田会長】  増額事由として、要介護の観点と、身体、精神の障害の観点と2つ、どちらからでも増額事由に到達できるという、むしろそういうふうに捉えられるのかと思います。そして、手帳、認定を受けているかどうかは要件ではなくて、同等のものというのが含まれる。明確に含まれるように指針を書いていくということが望ましいというのは御指摘のとおりかと思います。
 ほかによろしいでしょうか。
 では、この点につきましても委員の御同意を得られたと理解してよろしいでしょうか。
 
 (首肯する委員あり)
 
ありがとうございます。
 続いて、(3)で御説明のあった丸3ですが、つまり、「丸1又は丸2の者の介護を恒常的に行ったこと」という増額事由です。これについては、3つの論点が抽出できるかと思います。まず第1に、丸1の要介護状態、又は丸2の身体、精神障害の者の介護を恒常的に行ったことについては、これらの介護を受ける者と同居する者が介護を恒常的に行ったことと推認し、ADRセンターでの賠償実務に照らせば、ほぼ例外なく増額することが相当と考えてよいか。
 丸1ないし丸2に当たる方と同居している方が介護を恒常的に行っていると推認するということですね。それから、第2の論点は、介護を受ける者と介護を行う者との間で、精神的損害の大きさに類型的な差があるとは言えないから、ADRセンターの賠償実務を参照し、一律に介護を受ける者と同等の目安額を定めてよいか。そして、3番目の論点として、複数の者が恒常的に介護を行った場合については、主たる介護者を賠償の対象とすることが相当であるが、個別具体的事情を踏まえた柔軟な賠償を妨げるものではないと考えてよいか。これは古谷室長からの御説明もあったところですが、以上の3つの論点につきまして、御意見をいただけますでしょうか。
 樫見委員、お願いいたします。



【樫見会長代理】  質問なのですが、介護をする側、例えば父親、母親に対して子供が介護をするということはあるかと思うのですが、例えば高校生であるとか、若年者の介護ということも少し問題になっているかと思います。何かその点で実際のADRで事例がございましたら教えていただきたい。その点、どう考えるかということも併せて御質問させていただきます。
 以上でございます。



【内田会長】  ありがとうございます。
 では、古谷室長、お願いします。



【古谷室長】  ありがとうございます。考え方としては、少なくとも介護を要する状態にあるという認定がされ得る方であれば、年齢を問わずに、介護される方の対象になります。その方を介護した人は、今の事由によって賠償されるというつくりになると思います。事例のほうで若年の方のものがあったかどうかというのは、私も今すぐにお答えするのが難しいので、確認の上、次回でも御報告させていただきたいと思います。申し訳ございません。



【内田会長】  ありがとうございます。



【樫見会長代理】  お願いいたします。



【内田会長】  それでは、中田委員、お願いします。



【中田委員】  ありがとうございます。内田会長の3つの論点に対応しているかどうか分からないんですけれども、3点ほど御確認したいところがございます。まず1点目は、丸3の4行目に、「一律に介護を受ける者と同額」とあって、次に(【1人月額●●万円】)という記載がありますが、これは丸1の場合と丸2の場合が同じ金額であるということを前提としているのではなくて、丸1と丸2は違い得るけれども、それは丸1と同じ、あるいは丸2と同じという、そういう意味だというふうに理解しております。もちろん最終的に丸1と丸2が同じになるかもしれないんですけれども、本日の時点ではまだそこまでは決めていないという理解でおりますが、それでよろしいかどうか、これが1つ目です。
 それから、2つ目は、その次のパラグラフで、「主従がなく介護した場合の負担の度合に応じた柔軟な賠償」とあるんですが、この負担の度合に応じたということは、トータルが1で、それを負担の割合に応じて分配するということだけではなくて、それぞれの介護者の負担の度合が大きいときは、トータルが1を超えることもあり得るという理解でよろしいかどうかというのが2つ目でございます。
 それから、3点目は、全体を通じて、先ほど鹿野委員の提起された問題との関係なのですが、言葉がちょっと微妙に違うものが入っているように思います。一つは共通するものとしての観念という言葉です。これは最低限、最大公約数と言うんですかね、最低限のものだということに近い表現になると思います。ところが、他方で、一律の目安額という言葉があって、一律とか目安額というと何か標準額のような印象を与えてしまうこともあります。そうすると、趣旨を明確にするために、共通するものという部分がむしろここの狙いなんだということが分かるような表現になったほうが、先ほどの鹿野委員の御指摘にも応えることができるかなと思いました。



【内田会長】  ありがとうございます。
 では、古谷室長からお願いします。



【古谷室長】  ありがとうございます。まず1点目の御質問については、資料には、「一律に介護を受ける者と同額」とありますけれども、これは当然、先生がおっしゃったように、もし丸1と丸2で違えば、違うように対応して同額という趣旨でございまして、全部が全部同額という趣旨ではございません。これが1点目のお答えになります。
 それから、2点目は、介護した方に主従がない場合。これは表現がよくなかったかなと反省していますが、確かに「負担の度合」という書き方をすると、1ある負担を0.7と0.3に割りつけるとか、どうしてもそういうニュアンスが出てしまうかなと今思ったところで、趣旨としては、そのようなものではございません。場合によっては1.5になり、2になり、あるいは3になることもあるかもしれません。ですので、負担の度合というか、程度と度合という形で表記したほうがよかったのかもしれませんので、そこは表現については改めて検討させていただきたいと思います。
 3点目、これも御指摘を受けて、そうかもしれないと思ったところでございまして、共通するものとして、観念できるというお話、記述と、一律の目安額というところの若干の不整合といいますか、そこは確かに御指摘のとおりかと思いますので、表現については改めて検討させていただきたいと思います。ありがとうございます。



【内田会長】  ありがとうございます。趣旨を明確にする上での重要な御指摘ですので、表現については工夫をしていただきたいと思います。
 ほかにございますでしょうか。特にありませんでしょうか。
 それでは、ただいまの点につきましても、委員の間で共通の理解が得られたと認識してよろしいでしょうか。ありがとうございます。
 以上で最初の論点のくくりが終わりまして、では、次に、論点の資料の(4)と(5)についての説明をお願いいたします。



【古谷室長】  それでは、まず資料1-1のアラビア数字の4、「乳幼児の世話を恒常的に行ったこと」と、これについての御説明をいたします。
 まず、事例のほうを見ますと、これはかなり件数としてはございまして、公表事例においても、もちろん数多く出ております。昨年1年間の事例について金額を調べましたところ、乳幼児についての増額の平均値というのは、月額約2.8万円ということになっております。
 内容のお話をさせていただきますけれども、乳幼児の世話については、子供の年齢に応じて必要となってくる世話の内容が異なるということも考慮しまして、この年齢を主な基準として、あとはセンターの賠償実務を参照して、目安額を設定していただけないかということをお願いしたいところでございます。
 この資料に沿って申しますと、まず資料2ページ目、通し番号4ページ目の一番下のほうに書いてございますことは、小さい子供と一緒に住んでいますと、基本的に世話をするのが必要になるので、何か陳述書を要するなど、そういったことはないということにしていただきたいという立証面の在り方についての御提案を書かせていただいております。
 それから、3ページ目に入りますと、乳幼児の世話というのはなかなか一律に、中間指針で定めている月額10万円に入らない部分もありまして、乳幼児の世話をしているのであれば、通常の避難者と比べて精神的な苦痛あるいは日常生活の支障が大きいと言ってよいのではないかということを書いております。
 それから次は、具体的な話を提案させていただいていまして、まず乳幼児として、満3歳に満たない子供の世話をしていたという場合を月額で決めていただいて、次は、満3歳児以上、小学校就学前の子供の場合について、この分類で一応の提案をさせていただいております。ここは何歳でするのがよいのかなど、いろいろ議論はあろうかと思います。我々としては、センターの実務を踏まえつつ、児童手当などの公的なものの仕切りなども参照しつつ、こういった提案をさせていただいております。
 あとは、少し下になりますけれども、さっきと同じような問題として、複数の者が子供の世話をすることもよくあることでございます。これもさっきと同じような発想で、基本的には、主として世話をした者ということで、賠償していただいて、当然それ以外のバリエーションには対応すべきですし、それを超えるものについては、ADRセンターで受け止めるというのは当然の前提ということにしております。
 また、子供が複数いる場合、これもケースとしては非常に多いのですが、これも細かいことを決め出すとやり切れないということもあるというところで、これも基本線を決めた後は個別対応という御提案とさせていただいております。
 次が、アラビア数字の5、懐妊中でございます。懐妊中についても、まず実際の事例のお話をいたしますと、これも事例としては結構ございまして、昨年1年間の和解事例を調べますと、増額の平均値は、月額約3.3万円(注3)となっております。
(注3:月額約2.8万円との説明がありましたが、月額約3.3万円の誤りであり修正しました。(第62回審査会において訂正の発言あり。))
 懐妊中の方が御負担や日常生活の支障が多い。これもはっきりしていることでございまして、基本的には懐妊の期間に応じて日常生活に支障が生ずると考えることができるだろうということで、妊娠期間に対応する形での目安額の設定を原則としております。
 もっとも、本件事故が発生した際に懐妊していた方というのは、大変な御苦労があったかと思います。妊娠の月齢によって何か差が出るものでもないのではないかということで、一時金という形での賠償をしてはどうかということを書いてございます。
 具体的に資料1-1に基づいて、駆け足で御説明いたしますと、3ページの真ん中辺り、アラビア数字の5ですけれども、まず認定については、母子手帳等、そういった使えるものがあればそれを使わせていただくのでどうかということを書いております。
 目安については、先ほど申しました、基本は懐妊中期間、10か月だったら10か月で月何万円という形にしていただきつつ、本件事故時に懐妊されていた方については、妊娠月齢により差を設けるべきではないという前提で、一時金として目安額を定めていただけないかということでございます。
 以上が4番と5番の御説明になります。よろしくお願いします。



【内田会長】  ありがとうございます。では、ただいま御説明のあった点を、まず大きく2つの論点に分けて御議論いただきたいと思いますが、まず「丸4 乳幼児の世話を恒常的に行ったこと」に関してですが、これについては、細かく分けると5つぐらい論点があろうかと思いますので、まず、それについて御議論いただきたいと思います。
 第一は、「乳幼児の世話を恒常的に行ったこと」については、小学校就学前の子と同居する成人について世話を恒常的に行ったことを推認するなどの方法により増額事由を認定し、ADRセンターでの賠償実務に照らせば、ほぼ例外なく増額することが相当と考えてよいかという論点です。これはただいま古谷室長から、陳述書などは不要であるという立証の点にも配慮しての提案であるという御説明がありました。
 それから、第2の論点ですが、増額の目安については、子供の年齢を主な基準とし、ADRセンターの賠償実務を参照し、満3歳未満と満3歳以上小学校就学前とで分けることでよいか。
 それから、3番目の論点として、上記目安額について、子供の人数、家族との別離、あるいは避難先の状況などの個別事情を考慮して、さらに増額できると考えてよいか。
 4番目の論点としまして、複数の者が恒常的に世話を行った場合については、主として世話を行った者を賠償の対象とすることが相当であるが、個別具体的な事情を踏まえた柔軟な賠償を妨げるものではないと考えてよいか。
 そして、5番目に、子供が複数いる場合については、個別具体的な事情に基づいて賠償額を算定することとし、類型的な基準を設けて、目安額を示すことはしないということでよいかという論点でございます。
 以上につきまして、御意見をいただければと思います。いかがでしょうか。
 では、古笛委員、お願いします。



【古笛委員】  この点については、今、室長もおっしゃったとおり、陳述書だ、何だを求めるのはとてもナンセンスな話だと思いますので、機械的に、もう同居していたらそれでという形でよろしいかと思います。
 また、就学前で切っていいのかどうなのかという問題もないわけではないんですけれども、基準としてはそこで、形式的なものとしては年齢で区切るという方向も、そこはもう最低限の基準としてはやむを得ないところなのかなと。もちろん子供が1人、2人とか、家族関係とか、どこに避難したかということで全く変わってくるというところは、もうプラスアルファという、結論としてはこういう方向でよろしいかと思います。



【内田会長】  ありがとうございます。
 ほかに。明石委員、お願いします。



【明石委員】  今のこと、妊娠のことなんですが、例えば……。



【内田会長】  懐妊中は次の。



【明石委員】  すみません。子供のこと。では、一緒なので後にします。



【内田会長】  よろしいですか。一緒でしたら今お話しいただいても。いいですか。



【明石委員】  やっぱり後のほうがいいと思います。すみません。



【内田会長】  分かりました。それでは、織委員、お願いします。



【織委員】  私も基本的にこの考え方でいいと思います。特に、懐妊中、妊娠中については、安定期に入る3か月前なのか、あるいは臨月に近いかというのは、実は個別にいろいろ違うんだと思うし、当事者によってもすごく異なってくるところがあるので、個別に聞いていたらなかなか大変なところがあると思うので、取り急ぎはこういう形で決めて、一律基準で決めておいて、それでいいわという方と、やっぱりこのときは本当に大変だったという、そういうところでは個別に立証するという形で持っていくということが、方法としてはいいなと思っているんです。ただ、実際、個別でそれを立証していくということになってくると、懐妊中の大変さというものは多く、精神的なものですとかそういうのによって、事実上はなかなか難しいのかなという気もしております。
 以上です。



【内田会長】  ありがとうございます。
 ほかによろしいでしょうか。樫見委員、お願いします。



【樫見会長代理】  樫見でございます。最後の「子が複数いる場合については、個別具体的な事情に基づいて」云々と書いてあるのですが、この複数いる場合のほかですね。やはり妊娠中というのは様々な疾患にかかる可能性もありますので、個別具体的な事情に基づいてという中に、子が複数いる場合プラスアルファ、その他、困難となる事情なりを入れていただいたほうがいいのかなと思います。
 以上です。



【内田会長】  これは乳幼児の世話を恒常的に行ったという場合についての基準ですが、今の御意見についていかがでしょうか。古谷室長、お願いします。



【古谷室長】  ありがとうございます。今の先生の御指摘はもっともかと思いますので、どこの場所になるかというのは検討の上、対応したいと思います。ありがとうございます。



【内田会長】  ありがとうございます。
 ほかに御意見ございますでしょうか。
 では、乳幼児の世話については以上のような論点について、おおむね御同意いただけたということでよろしいでしょうか。
 
 (首肯する委員あり)
 
ありがとうございます。
 それでは、続いて、「丸5 懐妊中であること」についてですが、これについては3つぐらいの論点が抽出できようかと思います。
 まず第1に、懐妊中であるということについては、母子手帳の記載により認定することや、あるいは出産時期から推認するなどの方法により増額事由を認定し、ADRセンターにおける賠償実務を参照し、ほぼ例外なく増額することが相当と考えてよいか。
 第2の論点として、増額の目安については、懐妊中の期間に応じて月額とし、ADRセンターの賠償実務を参照し、目安額を定めてよいか。
 そして、3番目の論点として、本件事故発生時に懐妊中であったという者については、妊娠月齢により精神的損害の大きさに差があるとすることは適切ではないことから、一時金として評価することとし、ADRセンターの賠償実務を参照し、目安額を設定してよいか。
 以上の3つの論点が抽出できようかと思います。
 それでは、これについて御意見いただきたいと思いますが、明石委員、お願いいたします。



【明石委員】  先ほどは申し訳ありませんでした。ちょっと迷った理由は、妊娠中、懐妊中であることというと、出産後はこれに含まれないことになると思うんですが、ただ、子供を出産後、非常に短い時間である、時間がたっていない場合であると、今のままで言うと多分、3歳未満の子供ということの世話だけになるという、複数の場合は別途、また、いろいろな問題があるんですけども、それは妊娠、もう出産後については一切ここには含まれない。子供だけという解釈になるのかどうか。そういう例があったかどうか分かりませんけども、多分その辺は多少問題になるのかなと思って、質問させていただきました。



【内田会長】  御質問ということですので、古谷室長、お願いいたします。



【古谷室長】  ありがとうございます。今回の御提案について申し上げますと、今、明石委員がおっしゃったとおり、本当に出産直後の大変さというのも、先ほどの乳幼児の3歳未満というところに入るだけということにはなってしまうかと思います。整理としてはそういうことになっています。ただ、ADRセンターでは、そこまで機械的なことはしていないわけでございまして、当然、出産直後の大変さと、子供が2歳、3歳の頃はかなり違いますので、その辺りを踏まえて和解案は出しておりますが、今回の目安額については、先生の御指摘のとおりという御回答になります。



【内田会長】  個別の対応はあり得るということのようですが、それでよろしいでしょうか。



【明石委員】  ありがとうございます。



【内田会長】  ほかに。山本委員、お願いいたします。



【山本委員】  すみません。私だけが分かっていないんだと思うんですけれども、今の内田会長の2点目と3点目の関係が私はよく分かりませんでした。前段は、懐妊中の期間に応じて日常生活の阻害を観念し得るから月額でいくということで、他方、後段は、本件事故発生時の懐妊中の者については、一時金として評価するということとの関係ですけれども、これはあれでしょうか。3月11日に懐妊していた人については、一時金で賠償し、それにプラスで、その後、出産するまでの間、月額を賠償するという趣旨なのか。
 それとも、それはバーターの関係になっているのか。その辺り、これが分からなかったんですが、クラリファイしていただければありがたいです。



【内田会長】  ありがとうございます。
 それでは、古谷室長、お願いします。



【古谷室長】  ありがとうございます。これはこちらの提案したほうの考え方としては、3月の段階で懐妊していた方については、一時金として賠償してもらって、その方がその後、何か月か懐妊していたからその分の月額を出すということはございません。それはないという前提でお話をしているものでございます。
 そうしますと、金額で大小が出てくるので、そこは要するに一時金のほうが月額のときより低くならないような、そういう配慮というのが必要になってこようかと思います。
 以上でございます。



【内田会長】  ありがとうございます。



【山本委員】  すみません。そうすると月額で支払うというのは、3月11日の時点で、懐妊していなかった、その後に懐妊した人ということなのでしょうか。



【内田会長】  そういうことだと思います。



【山本委員】  そうだとすれば、この記載ぶり、期待の仕方ですが、「なお」のほうを先に出して、一時金とし、「事故発生後、懐妊した者」とか、「それについては」とかにしたほうが話として分かりやすいような気がしましたが、ここは分かっていないのは私だけかもしれませんのでお任せしますけれども、そういう印象を持ちました。



【内田会長】  ありがとうございます。確かに御指摘はそのとおりかと思いますので、そこは工夫していただければと思います。
 ほかに御意見ありますでしょうか。
 それでは、ただいまの論点につきましても、おおむね委員の皆さんの御同意を得られたと理解してよろしいでしょうか。
 
 (首肯する委員あり)
 
ありがとうございます。
 それでは、次に、論点の(6)についての御説明をお願いいたします。



【古谷室長】  それでは、論点の(6)、資料1-1で申しますと3ページの下から4行目ぐらいですか。増額事由で申しますと、丸6以下のものでございます。これは先ほど先生方からも御指摘がありましたけれども、目安額を提示することを断念といいますか、目安額を提示していただくのが難しいだろうということで、個別の解決に委ねざるを得ないだろうという判断をしたところでございまして、そこについての御説明になります。
 まず増額事由、丸6以降のものについて、実際の事案がどういうものがあるかということを簡単に御説明いたします。
 まず事由の丸6番で、重度又は中等度の持病があることというのと、それを受けて丸7で、丸6の者の介護を恒常的に行ったものです。
 これはケースを見ていただくと分かると思いますが、具体的なその増額事由というのは非常に多岐にわたっておりまして、人工透析、人工透析とは別に病名ではございませんけれども、心臓機能障害、変形性膝関節症、認知症、うつ病など、病名あるいは治療法というのは非常に広範囲にわたっております。それから、その深刻さというのも本当に多様であるという状況です。
 また、高血圧、これも深刻な場合がございますし、腰痛といった訴えもありますということは、実際の事件を担当している調査官からよく聞いているところでございます。
 ADRセンターの賠償額はどうかと聞かれますと、人工透析などはある程度共通の理解があるのか、おおむね高額の増額はされております。他方、例えばさっき申し上げた変形性膝関節症ですと、ADRセンターの公表事例を見ましても、3万円のものもあれば月額10万円としているものもあって、一般的な類型化というのは非常に難しいところがあろうというところではございます。
 昨年1年間の増額の状況を見ますと、平均値としては、月額約3.1万円となっております。
 次に丸8、家族の別離、二重生活が生じたことというのがございます。これもかなり多様でございまして、誰が別離するのかと。小さい子供と親の場合もあれば、高齢者とその子供、成人という場合もあれば、成人同士という場合もあります。また、どういった経緯で別離が継続しているかというのも、これもかなり多様でございまして、子供の教育の関係、学校の関係で別離が長くなっているなど、そういったケースもいろいろありまして、その別離が家族にもたらすダメージなり日常生活の支障というのも様々であると言わざるを得ないところでございます。ちなみに、昨年1年間について別離だけで見た場合の増額としては、平均値は月額約1.4万円になっております。
 それから次、最後が丸9番の避難所の移動回数が多かったことでございます。これについては、金額だけ調べたのですけれども、昨年1年間について言いますと、月額3万円になっております。今申し上げた重度・中等度の持病、家族の別離、避難所の多数云々ということにつきましては、かなり、避難回数の多い少ないというのは、それほど高度の評価が要るわけではないのですが、中等度の持病であるとか別離というのは、何がそれに当たるのかという判断が非常に難しくて、なかなか難しいところがございます。ということで、これらについては目安額という形ではなく、基本的には個別的な事情を踏まえた判断という形でどうかというところです。
 もちろん、東京電力において、そのような中でも一定の範囲で類型化できるものがあるのであれば、それはぜひ賠償していただきたいと考えておるところでございます。
 それから1点、丸9の関係で、避難所への移動回数が多かったということについて若干の御説明をいたします。これ自体は、総括基準においては、避難所への移動回数が多いというのは当然、生活の支障なり精神的な苦痛というのも大きいというのは類型的に言えることなので、増額事由としたものと思います。今般、中間指針の見直しで、本件事故当初を中心とする第1期の期間のうちの中で、避難が大変苛烈であったということを理由とする精神的損害が賠償の対象となるという点が今議論されているかと思います。これにつきましては、苛酷避難状況による精神的損害というのは、放射線に関する情報が不足する中で、避難行動自体から伴う苦痛やその苛酷さから生ずる損害と言われておりまして、内容としては、第1期の期間中、本件事故発生から相当期間にわたって同損害が生ずるという説明が今のところされていると思います。
 このことに照らしますと、そのうちの一部の期間は、後から避難する方もいるのですけれども、第1期について言いますと、避難所への移動回数の多さからもたらされる精神的損害と、過酷避難状況による精神的損害というのは、ある程度重複するところがあるのではないかという認識でおります。このため、基本的には、過酷避難状況について重複する面があり得るということを前提に、この個別的な判断をする際も、この丸9の移動回数が多数ということについては、主として第2期以降に生じた移動を中心に、総合的に判断をしていったほうがよいかなというふうなところは考えております。
 一方で、過酷避難状況による精神的損害の賠償対象とならない区域が今のところ議論されているかと思います。具体的に申し上げると、計画的避難区域と緊急時避難準備区域、それから特定避難勧奨地点になりますけれども、ここにお住まいだった方々につきましては、当然、これは過酷避難の対象にならないということであれば、第1期以降の移動も含めて考慮すべきということになろうかと思います。
 それから、最後に増額事由の丸10ですが、これは包括条項みたいなものとして、総括基準では対応していたものでございまして、中間指針でも包括的条項として位置づけていただければありがたいと考えております。
 私のほうからは以上でございます。よろしくお願いします。



【内田会長】  ありがとうございます。
 それでは、御議論いただきたいと思いますが、今御説明いただいた丸6から丸9までというのは、いずれも専門委員の最終報告では、定型的な損害として指針に掲げることが難しいとされていた事由ですが、第59回会議で、委員の皆様から、定型化が困難でも増額事由として指針に掲げることを検討すべきだという御意見があったものです。
 それでは、具体的な論点について1つずつ御議論いただきたいと思います。ここでは3つくらいの論点に整理できるかと思います。
 まず第1に、丸6から丸8、そして丸10の事由については、該当するか否かの判断において高度の評価が要求され、あるいは、立証方法が主として被害者の言い分によらざるを得ないなどといった事情があり、かつ、通常の避難者と比べて精神的苦痛が大きいと認められるか否かについては、個別具体的な事情に基づく判断となることから、目安額を定めることは困難であり、増額の金額等の算定については、個別具体的な事情を踏まえた判断に委ねることとしてよいかというのが第1でございます。
 第2の論点は、丸9の避難所の移動回数が多かったことについてですが、第1期においては、避難所への移動回数の多さがもたらす精神的損害と過酷避難状況による精神的損害がある程度重なる面があることから、当該増額事由については、主として第2期以降に生じた移動を中心に回数を判断することが相当であると考えてよいかという点。
 そして3番目の論点として、今の丸9について、古谷室長から御説明がありましたように、計画的避難区域、緊急時避難準備区域及び特定避難勧奨地点について、過酷避難状況による精神的損害を認めないという整理をする場合、これらの区域からの避難者については、第1期に生じた移動も含めて判断することが相当であると考えてよいかという論点でございます。
 以上につきまして、御意見いただけますでしょうか。
 山本委員、お願いします。



【山本委員】  申し訳ありません、私、間もなく退出をしなければいけないものですので、恐縮ですが、今の点全体について御意見を申し上げたいと思います。
 私自身、前回、前々回の検討会も、この点、さらに検討する余地があるのではないかということを申し上げました。今回、具体的な事例、あるいはこの資料の記載等を拝読しまして、やはり、なかなか具体的な目安額まで記載することは難しいということは十分理解をしました。そういう意味では、この記載に基本的には賛成です。
 ただ、そのときも申し上げましたけれども、被害者の方々のヒアリング等の席上においては、やはりこういう、何回も何回も避難をしなければいけなかったことであるとか、あるいは家族が離れ離れになってしまったこと、そういったようなことはかなり多くの方々から指摘をされていたように記憶をしています。
 そういう面では、個別具体的な事情に係るということはやむを得ないところとは思いますけれども、その類型化、できる限りの類型化に向けて、東京電力が直接請求でも対応するように仕向けていくというか、そういう方向に向かっていくことが望ましいのかなというふうに思いました。
 先ほど古谷室長からも、持病については、例えば透析等があれば、これは基本的にはほとんど認めているとか、そういったような具体的なことの御指摘があったところですので、何とかそういうものを直接請求の段階で反映できるような工夫、私自身、具体的なあれがないので申し訳ないのですが、そういうようなことを引き続き模索していっていただきたいなと思ったということを申し上げたいと思います。
 以上です。



【内田会長】  ありがとうございます。古谷室長のほうから何かありますでしょうか。



【古谷室長】  今、山本委員から御指摘の点は全くそのとおりかと思いますので、引き続き検討をしていきたいと思っております。ありがとうございます。



【内田会長】  よろしくお願いいたします。
 それでは鹿野委員、お願いいたします。



【鹿野委員】  鹿野です。趣旨は今の山本委員の御発言と基本的に同じなんですが、まず、第1点として、丸6から丸10について、かなり多様なものがあるということで、一律的に目安額を示すということが難しいとしても、前回の議論を踏まえて、ここに増額事由として掲げるということで提案されていることに感謝申し上げます。
 それから第2に、内田会長による先ほどの整理でいうと第1の論点に関わるのかもしれませんが、特に丸6の重度又は中等度の持病があることという点については、今、山本委員も言及されたように、かなり重篤な、深刻な状況の方もいらっしゃるんですよね。特に透析を受けている状態であったところ、このような事故に遭ったという場合には、相当に負担が重いであろうということが容易に想像されるところでありますし、ADRの事例としても出てきているというご説明でございました。
 そこで、これも一般的な考え方と共通しているところではありますけれども、丸1から丸5番までは目安額が示されていて、丸6以下のところでは額が示されないということによって、何か丸6以下は重要でないような印象を決して持たれないように、むしろ、事案によってはそちらのほうが負担が重く、額としても幅が大きくなるというような場合もあり得るのだということを何らかの形で説明に加えていただければというふうに思います。
 それから3点目に、これが山本委員が御指摘になったところと共通する趣旨だと思いますけれど、例えば、先ほどの室長からの御説明で、透析とかについては、一定、定型的な判断をなされてきたように聞こえましたし、全体として重度又は中等度の持病があることというのを全て細かく取り出して目安額というものを示すことはできないとしても、何らか類型化できるようなものがあるとすると、それを中間指針の中ということなのか、それとも別に、例えばADRの今までの実績が目安となるというような形なのか、それを関係する方々にとって分かりやすいような形で示すということができないだろうかということを思いました。
 以上です。



【内田会長】  ありがとうございます。古谷室長からお願いします。



【古谷室長】  いろいろ大変貴重な御指摘ありがとうございます。
 先生方が御指摘のように、丸6番以降の事由が軽んじられることが決してないよう我々も訴えていきたいですし、表現上もそのような工夫はしたいと考えております。
 それから、重度・中等度の持病につきましても、おっしゃるように、一律何万円など、それは少し難しいにしても、やりようというのはもう少しあり得るかも分かりませんので、引き続き、方法論を、どういった形でするのがよいのかというのも含めて検討していきたいと思います。ありがとうございます。



【内田会長】  どうもありがとうございます。
 それでは中田委員、お願いできますか。



【中田委員】  今までの御発言と若干共通することですが、細かい点を2つお聞きしたいと思います。
 1つは、4ページの上から4行目なのですけれども、「増額の金額等の算定」については云々とあるんですが、この「等」というのは何を意味しているのかがよく分からなかったので、お教えいただきたいと思います。ひょっとしたら、増額の金額の算定等という御趣旨なのかなというふうにも思いました。
 それから、2つ目は、同じページの(7)の丸10についてですが、この⑩については、客観的事情ということが再三出てきまして、客観的であるということが強調されております。そうすると、必ずしも本人の言い分によらざるを得ないということには限らないのかなという気もいたしましたのですが、この丸10で言おうとしていることは、将来何が出てくるか分からない、現段階で予想できないことについての包括条項、受け皿なのか、それとも現段階でもあるものについて何か想定しておられるのか、もし後者だとすると例えばどんなものがあるのかを、もし可能であればお教えくださればと思います。
 以上、2点です。



【内田会長】  ありがとうございます。丸10の点は、この後でと思ってはいましたけれど、ただ、今御指摘ありましたので、それを含めて古谷室長からお願いできますでしょうか。



【古谷室長】  ありがとうございます。まず、4ページ目の上から4行目につきましては、これは御指摘のとおり、増額の金額等の算定ではなくて、増額の金額の算定等というふうに改めさせていただきたいと思います。大変御迷惑をおかけしました。
 それから、丸10の増額事由については、私が先走って説明してしまったもので、順番を混乱させてしまいまして申し訳ございません。
 これにつきましては、今後どのようなものが出てくるか分かりませんけれども、それを取り込むという意味での包括的なものでございまして、何かこれまでに出てきた特定のものを意識して、ここで御提案をしているというものではございません。
 この客観的な事情というのも、当事者が苦しんでいることであったり、大変に思っていることであったり、それが言い分であるにせよ、何であるにせよ、認定できるのであればそれは客観的な事情と言い得るわけなので、何かここで特段、ぐっと絞りをかけたいと、そのような趣旨ではございません。
 以上でございます。



【内田会長】  ありがとうございます。
 よろしいでしょうか。
 では、江口委員、お願いいたします。



【江口委員】  言うまでもないことかと思ったんですが、この丸7の、丸6の者の介護を恒常的に行ったことと出てきます。この解釈については、丸3の、丸1又は丸2の者の介護を恒常的に行ったことと同じように考えてよいと、そういうことでよろしいんですよね。



【内田会長】  同じようにという御趣旨……。



【江口委員】  同じようにというのは、例えば、丸3に関して、さっき、一律に介護を受ける者と同額の目安額を定めてよいかというのがあったので、このときも、丸6と同額と見てよいかとか、あるいは、複数の者が出たときにはというところがあったので、それはもう丸3と同じように考えてよいのではないかと思うんですけど、その点は明確にしておいたほうがいいかなと思っただけです。



【内田会長】  ありがとうございます。今のような御理解でよろしいでしょうか。



【古谷室長】  そのとおりでございます。



【内田会長】  ほかに御発言ありますでしょうか。
 米村専門委員ですか。お願いします。



【米村専門委員】  すみません、専門委員の立場で、あまり内容に関わる発言は控えたいと思いますが、先ほど、丸6の事由について何人かの委員から御発言があったと思いますので、その点について、若干、質問させていただきたいと思います。
 専門委員の最終報告でお示しした案では、丸6の事由は含まれていなかったわけですが、それに関して、この原賠審の場でこの点も記載したほうがよいのではないかという御意見を頂戴いたしまして、今回丸6が入って、改めての御提案になったということだろうと思います。
 この点に関しての前々回の原賠審における御発言の趣旨としては、専門委員最終報告よりも幅広く「重度又は中等度の持病」に当たる場合を取り込んで増額対象にしたほうがよいのではないかというものであったと私自身は理解しており、おそらくは事務局も同様に受け止めてこういう提案になっているものと思いますけれども、今日の御発言は、むしろ定型的に賠償できるものはそのように書いたほうがよいということかと思いました。しかし、そういう書き方をいたしますと、逆に、幅広い事例を増額対象に取り込むことはできなくなってくる可能性があるわけです。つまり、裾野を広げようとすると曖昧な書き方にならざるを得ず、定型賠償は難しくなる。逆に定型賠償できるような明確な記載にするとこぼれ落ちるものが出てくることをある程度認めざるを得ないという、ある種の二律背反の関係にあると私自身は考えております。
 前々回の原賠審の御提案は、定型性を排しても裾野を広く取ったほうがいいので、曖昧な基準でも丸6の項目を挙げたほうがよいという御提案かと思っていたわけですが、今日の御発言を伺うと、むしろ定型賠償のほうがよいという御趣旨にも受け止められて、どういう方向で修正をしたらよいか、方向性が見えにくくなっているのではないかということがやや気になりましたもので、今、先生方の御意見を伺いたいと思って発言させていただきました。
 私自身の理解としては、前々回の原賠審のときにも申し上げたと思いますが、丸2の「身体又は精神の障害があること」の中に一定範囲の内臓疾患等が含まれますので、日常生活に大幅な支障を来すような疾患を持っている方についてはこちらで拾える形になり、定型賠償は丸2で、それに当たらない様々な疾患に関しては、丸6のほうで個別事情で裾野を広げて取るという二段構えだと理解しております。したがって、本来、定型賠償の対象になるようなものは丸2のほうで拾うという形だと考えておりましたが、さらに何か工夫が必要だという御趣旨なのか、その辺りも含めて、御趣旨をできれば明確にしていただけると大変ありがたいと感じました。



【内田会長】  ありがとうございます。
 私の理解では、丸6についてあった御発言というのは、定型化を指針の中でせよという趣旨ではなくて、ここで言う持病というのが具体的にどういうものがあって、どのくらいの金額で賠償されているかというADRの実績のようなものを参考資料として何らかの形で示すという趣旨なのかなと理解をしていたのですが、特にこの点について御発言があったのが鹿野委員かと思いますけど、いかがでしょうか。



【鹿野委員】  ありがとうございます。私の趣旨としては、内田会長がまとめてくださったところで尽きていると思います。なお、項目丸1から丸10までの中で、実際にはいろいろと項目が重なりうる場合があり、それで、後のほうの(8)で書いてあるように、複数の事由が認められる場合については、ADRの実績を見ても、それらを考慮してかなり増額幅が大きくなっているものもあるように見えます。先ほど申しました例についても、この丸6の疾病というところに入るのか、それとも別の項目に掲げるのか、どっちもあるのかも分かりませんけれども、具体的にどういう事由で幾らぐらいのADRの賠償実績があるのかということをより分かりやすいような形で示すこと、指針外で結構ですから、そういう資料的なものを付け、あるいはそれをリファーするようなことなどができないかという趣旨で申し上げました。
 以上です。



【内田会長】  ありがとうございます。ということは、米村専門委員のおっしゃる裾野の広いやや曖昧な指針にはなりますけど、一応それを掲げておいて、ただ、中身がどういうものが入るかということが、何らかの形で実績が見える資料をつけるということが御意見であったのかなというふうに思いますが、ほかに。
 富田委員、お願いします。



【富田委員】  前回以前に私も発言しておりますので、その趣旨を申し上げます。
 要するに、今考えていることは、ADRで東電が賠償した実績があるので、それを直接請求においてもどのくらい実現できるかというのが現在の課題だと思っています。もちろん、明確な基準ができれば直接請求の段階で賠償しやすくなるわけですが、先ほど申し上げたように、例えば、丸1、丸2の基準に当てはまらないけれども、慰謝料を増額するのは当然だと思われるような、例えば透析をしている人など、今回、非常な困難を来していたわけなんですよね。そういったものは、当然賠償してもらわなきゃいけない、そのぐらいのことは当然だと判断できるのではないかということです。
 ですから、1つの方法としては、どういう記載の仕方をするかは別にして、もう明らかに疾病として、ADRで賠償した実績のあるものを注釈的に掲げて、それらを考慮して賠償すべきだというようなこともあり得ます。
 それから、疾病ごとに、極端な話、何万から何万でADRでは賠償しているというようなことも参考に掲げることを考えてもいいんじゃないかと思います。中間指針の書き方としては、かなり異例だとは思いますが、そういった工夫をすることで、東京電力の方でも自主的に判断できるような工夫を検討してみたらどうかなというふうに思っております。
 ここでは、裾野を広げて、賠償すべきものは、できる限り直接請求の段階でも賠償してもらうということを目標にしてはどうかと考えます。そうはいっても、全部が全部とは到底いかないかとは思いますけれども、もともと個別事情で賠償するというのは他の中間指針でも掲げられていることがありますので、それをできるだけ具体化する工夫をもう1回検討してはどうかなというふうに思っております。



【内田会長】  ありがとうございます。
 古谷室長、よろしいですか。確かに指針のほかの項目とはやや性質が異なりますので、もともとはこれは指針に掲げないという提案であったわけですが、それを掲げる以上は、その趣旨が分かるような何らかの説明がつけられることが望ましいのかと思います。いろいろ可能な範囲で工夫をしてもらいたいと思います。
 ほかに御発言ありますでしょうか。大体よろしいでしょうか。
 
 (首肯する委員あり)
 
ありがとうございます。それでは、先ほどから(7)の問題は既に出てはおりますけれども、最後の論点の(7)から(10)までについての説明をお願いいたします。



【古谷室長】  それでは、まず、資料1-1の4ページの(7)の御説明からいきます。これは、避難生活に適応が困難な客観的な事情であって、上記と同程度以上の困難さがあったことということで、包括的な条項として設定していただけないかということでございます。趣旨としては、先ほど中田先生からの御指摘にお答えしたように、今後、将来どのような事案が出てくるか分かりませんけれども、賠償に値するものはできるだけ賠償していきたいということでございます。それが第7番目の御説明になります。
 それから(8)、これは複数の事由が認められる場合でございます。これは、先ほど御指摘に対して御説明を申し上げたかと思いますけれども、内容によってかなり多様でございまして、なかなか交通事故の場合のような併合の規定を設けるなど、何か目安を設けるというのは非常に難しいというのが我々の認識でございます。(注4)
(注4:この後、注1と同様、要介護と身体又は精神の障害が重複する場合、足し算以上の生活上の支障があると考えられるという旨の説明がありましたが、重複する事例はなかったことから誤りであり削除しました。(第62回審査会において訂正の発言あり。))
 次が(9)でございまして、これはもう、言わずもがなではございますけれども、目安額を示したものというのは、当然、類型的対応が可能であるものについて目安額を示したと、それだけの意味しかないわけでございまして、当該事由が認められる場合においても、その目安額を超えるものは、当然、個別事情に基づいて認められるべきでございますし、目安額がないもの、丸6番以降のもの、当然これも賠償が認められるべきものでございます。そこら辺は誤った形のメッセージが伝わらないように、表現については十分に注意をしていきたいと考えているところでございます。
 それから、最後、(10)になります。これは文章自体が短いですけれども、センターとしては大事なことかと思っておりますので御説明をいたします。
 今回は、類型的に目安額を設定できなかったものについても、当然、個別具体的な事情に基づいての賠償、ADRセンターでしていくつもりでございます。それから、目安額が設定されたものについても目安額を超える賠償が必要な場合、相当な場合は賠償されるべきである、これもADRセンターの責務でありますので、しっかりやっていきたいと思っております。
 個別具体的な事情を踏まえた解決をする際に、中間指針というのはある程度抽象度の高い規範でございますので、それだけでは十分に和解が進まないという実態が残念ながらございます。その場合に、センターの先例を尊重すべきと考えますとともに、尊重していただくことで、かなりの紛争解決の実効性が実現できるのではないかと考えておりますので、その点を明記いただきたいというお願いになります。
 私のほうからは以上です。



【内田会長】  ありがとうございます。
 それでは、具体的な論点について御議論いただきたいと思いますが、それぞれの括弧の数字ごとに4つの論点があります。まず第1が(7)に書かれていることですが、丸10の避難生活に適応が困難な客観的事情であって、上記と同程度の困難さがあるものであったことということについては、丸1から丸9までと同程度以上を意味する包括的事由であると考えてよいかという論点です。包括的事由というのは、漏れたものをカバーするバスケットクローズのような趣旨であろうかと思います。
 それから、(8)ですが、複数の事由が認められる場合の賠償額の目安については、個別具体的な事情を踏まえて、総合的に増額の金額を検討するのが相当であり、金額の目安を示さないこととしてよいかという点。
 それから、(9)に書かれていることですが、目安額を示したものであっても、個別具体的な事情を踏まえて目安額を超える増額を妨げるものではないと考えてよいか。これは、これまでも度々委員から御指摘をいただいている点ですので、これをきちんと書いてはどうかということかと思います。
 それから(10)ですが、個別具体的な事情を踏まえて増額する金額を定めるに当たっては、ADRセンターの賠償実務を参照するのが相当であると考えてよいか。これも古谷室長から御説明ありましたように、その旨、解説の中で書いてはどうかということかと思いますが、以上の点について御意見いただけますでしょうか。
 富田委員、お願いします。



【富田委員】  この中では、やっぱり(7)の点が、直接請求においてどの程度実現できるかという疑問があろうかと思います。実質的には、例えば弁護士さんを代理人に立ててこの点を主張してもらうことが必要で、なかなか本人だけで主張するのは困難だというふうには考えます。しかし、そういった場合も当然、中間指針としては考え得るわけです。もちろんこの具体的事情が請求者から主張がなければ、どうしようもないということになりますが、しかし、やっぱり主張の機会は与えて、その点を検討してもらうということは大事だと思います。中間指針には必ずしも適さないとしても、やはりある意味で包括的に考えて、できるだけそういった事情を逃さないということを東京電力にも考えてもらうという趣旨で入れていただくことに賛成でございます。



【内田会長】  ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。明石委員、お願いします。



【明石委員】  先ほど持病のところでも出ましたし、障害というところでも出て、その中でも議論されているんですが、例えば人工透析の場合は障害2級が認められることになっています。ただ、8番の複数の事由が認められる場合とか、個別ということを考えると、もちろんその障害というところで認められる場合もあれば、ケース・バイ・ケースで8番はほかの事情を考えてここで認められるという、もう要するに、非常に弾力性を持った考え方でこれは決められるというふうに考えてよろしいんでしょうか。



【内田会長】  御質問ということですが、古谷室長、お願いできますでしょうか。



【古谷室長】  それ自体は全くそのとおりかと思います。ただ、人工透析の場合、障害で拾える部分と障害ではカバーできずに持病で拾う部分とがあると考えられます。丸1から丸9まででカバーできるところはカバーして、それでもどうしても漏れてしまうということがあれば、それは丸10で拾うということで賠償に漏れをなくしたいという趣旨でございます。



【内田会長】  よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 それでは、樫見委員、お願いします。



【樫見会長代理】  樫見でございます。
 最後に御指摘のあったADRセンターの賠償実務を参照するのが相当であると。この点、最終的には様々な事情において、個別具体的な事情を踏まえた増額の考え方というのは、ここに至るわけでありまして、そのところで、やはり10年以上のADRセンターの賠償実務というのは、一種判例法的な意味合いを持っておるというふうに私は考えておりまして、そこで、「参照」というよりはもう少し強い言葉、「踏まえて」であったりとか、「これに照らして」とかというふうに、もう少し東京電力に対して、このADRセンターの賠償実務が基準として大きく活躍するというか、活用されるんだということを示したほうがいいのではないかと思っております。
 以上でございます。



【内田会長】  今の点について、古谷室長、お願いします。



【古谷室長】  今の御意見、大変ありがたく受け止めております。表現ぶりについては、工夫をさせていただきたいと思います。ありがとうございます。



【内田会長】  ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
 古笛委員、お願いします。



【古笛委員】  今、樫見委員からも御指摘があったとおり、やはり今回の指針につきましては、ADRの実績というものをかなり踏まえた上での対応になるかと思います。本当のことを言えば、増額事由についても丸1から丸5だけで、そして包括条項というのが、もしかしたら法形式的にはきれいなのかもしれないんですけれども、これまで丸6、丸7、丸8、丸9についてはそれなりの実績を踏まえられているということからすると、あえてほかの基準の書き方とは若干ニュアンスが違うかもしれないけれども、入れて、センターのこれまでの実績を十分に斟酌しているということがよく分かるようにということで今回は賛成させていただいた次第です。



【内田会長】  ありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。大体よろしいでしょうか。
 
 (首肯する委員あり)
 
 ありがとうございます。それでは、以上の点につきましても、おおむね委員の御同意が得られたものとして進めさせていただきます。
 以上で、本日の最初の大きな論点が終わりまして、ちょっと時間が超過して恐縮ですけれども、次に、2番目の論点に移りたいと思います。自主的避難等による精神的損害でございます。
 まず、具体的な論点に入る前に、本件に関しては前回及び今回の審査会の参考資料として、地方公共団体等からの主な要望事項についてというものが配付されております。これを拝見しますと、自主的避難等対象区域外の対応について御要望が出されております。この区域の拡大については、第59回審査会において慎重に対応していく、すなわち指針を維持するということで特段の御異論はなかったものと認識しておりますが、これらの要望書が出ていることに鑑みまして、この点について再度確認をさせていただきたいと思います。
 まずは専門委員による最終報告の根拠となった区域の設定に関する判断枠組み、つまり、第一次追補策定時の経緯や考え方について、改めて事務局から説明をお願いできますでしょうか。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  それでは、資料2-3、これは通しページでは75ページになります。これについて御説明をします。
 この資料2-3は、平成23年12月21日に開催された第19回原賠審の資料であります。第一次追補が策定された際にも対象区域の設定について様々な批判や意見がありました。それを踏まえて、追補策定後に異例な形で追加的な説明、議論が実施されました。
 第一次追補におきましては、自主的避難に係る恐怖・不安は、原発からの距離、避難指示区域との近接性、政府や地方公共団体から公表された放射線量に関する情報、自主的避難者の状況等の要素が複合的に関連して生じたと考えられ、これらの要素を総合的に勘案して、少なくとも対象区域においては放射線被曝への相当程度の恐怖・不安を抱いたことには相当な理由があり、また、その危険を回避するために自主的避難を行ったことについても、やむを得ない面があるというふうにされております。
 この対象区域の判断枠組みについて御説明します。資料2-3の前半は原発からの距離、自主的避難者の割合や人口動態、安定ヨウ素剤の配布状況、放射線量のデータで、資料2-3の最後のページ、これは通しページでは110ページになりますが、参考4となっている資料です。これは参考2のデータを分かりやすく整理した表であり、これに基づいて概略を御説明いたします。
 左端から、いわき、相双、県中、県北、県南、会津、南会津の主な都市、原発からの距離、放射線量については福島県による環境放射線モニタリング調査のデータから、平成23年9月から10月の学校等の高い方から10地点のデータ、これは通しページでは95ページに細かいデータが記載されています。また、平成23年8月から9月の福島県放射能測定マップ、これは通しページでいうと103ページからになります。に相当するデータ、このデータ自身は福島県のホームページから取ってきております。このデータの同じく高い方から10地点、そして自主的避難者数、人口移動、ヨウ素剤の配布の有無です。
 その右は地域振興局単位でまとめたものです。網かけがなされた地域が自主的避難等対象区域に設定されたところです。
 当時の議事録を読みますと、距離が近ければ不安を感じる要素が高いだろう。放射線量は重要な要素であるが測定地点によってばらつきが大きい。概略的に言えば相双、県中、県北、いわきが比較的高い線量が観測されている。自主的避難者の数は、避難したくてもできなかった者もいることから、重要なメルクマールではないという考え方もあるものの、避難者数が多い地域は相対的に不安を感じる者が多かったということを間接的に示している。ヨウ素剤が実際に配布されると不安はより大きくなるのではないか。対象区域外であっても放射線量が一定量認められるところでは賠償の対象になり得るが、対象区域に設定された地域は放射線量の比較的高いところが一定の広がりを持って存在するというのが前提だ等の議論がなされております。
 第一次追補においては、公平かつ可能な限り広く、かつ早期に救済するとの観点から、一定の対象区域を設定した上で、対象区域に居住していた者に、少なくとも共通に生じた損害を示しています。また、対象区域外においても個別具体的な事情に応じて賠償の対象に認められ得るとされ、実際、県南地域及び宮城県丸森町については、子供・妊婦の場合には対象区域の半額、このときは20万円です。さらに、子供・妊婦に関わらず、県南地域及び宮城県丸森町の全体に追加的費用4万円を自主的に賠償しているというふうに承知しております。
 専門委員による調査分析においては、こうした経緯から区域の見直しは慎重という結論になったものと理解しております。
 説明は以上です。



【内田会長】  ありがとうございます。
 当時の審査会での議論を振り返って見てみますと、対象区域の設定に当たっては、事故当初は整理された情報がない中での不安、そしてその後は低線量の被曝に対する不安を中心に考え、そしてその際どのような事情を勘案するかについては、第1に放射線量というのが地域によってばらつきが大きいということ、第2に、不安は放射線量だけではなく、原発からの距離などにも影響を受けるということなどを勘案し、また、第3に、迅速・公平な賠償の観点から、市町村単位で一律に対象区域を設定するのが妥当であるということなどを考えて、当時の審査会としてこのような判断枠組みが取られたものと理解をしております。こうした点を踏まえまして、自主的避難等対象区域を拡大するかどうかについて再度御議論をいただければと思います。御意見をいただければと思います。いかがでしょうか。
 地元からの要望書も出ている点ですので、審査会としてどう考えるかというのは改めて議論できればと思いますが、御意見ありませんでしょうか。
 富田委員、お願いします。



【富田委員】  主に問題になるのが県南地域ということになろうかと思います。それぞれの地域の要望、御意見はある程度もっともな点もあるんですが、結局、このときに県南地域の一部を入れたり入れなかったりしなかったのは、特に地域のまとまりを重視するということのようです。県南地域でも、いわきとか県中地域に極めて近くて、現在も自主的避難の賠償もされている方が多数いる地域もあるわけですが、生活圏としての地域のまとまりを重視するという点もあったようです。
 県中地域になると、端のほうはかなり離れていて、県南地域と変わらないところもありますけれども、市町村の単位ではまとまる必要があるのと、県中地域でのまとまりを重視したということです。
 実際上の賠償としては、県南地域について東電も自主賠償もしていますし、ADRでも賠償を認めているということですので、その点は同程度の線量が確認され、それぞれ個別事情として、他の地域で賠償されているものと同程度の場合には当然賠償するということを明確にすることが大事だろうというふうに思いますので、地域的な見直しはやはりなかなか難しいというふうに考えております。



【内田会長】  ありがとうございます。
 ほかに。古笛委員、お願いします。



【古笛委員】  私もこの点は本当に大変難しい問題だなとは思うんですけれども、やはり今御説明いただいたとおり、この地域についてはいろいろなことを考えて設定しているということと、それから、今回の裁判例を踏まえた専門委員の御意見からしても、やはり一律に基準としてというのは、現時点では難しいのではないのかなというふうには考えております。



【内田会長】  ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。大塚専門委員ですか、お願いいたします。



【大塚専門委員】  すみません、そろそろ出かけなくてはいけないものですから、申し訳ないですが。これを決めるときに関わらせていただいたので一言申し上げさせていただきますが、先ほど御指摘が、今もございましたように、今回の確定判決の中で、生業だけが唯一この類型化を認めているのですが、ちょっとほかは認めていないということが1点と、それから、先ほど松浦さんから御説明いただいたように、線量とか近接性とか、あと市町村単位でという先ほどのお話にもございましたけれども、そういうことを総合的に決めたものでございます。
 それから、県南地域と丸森町については、今もお話があったように、東京電力が半額を払っているということもあり、なかなか難しい問題だと思いますけれども、個別的な事情を考慮してADR等で検討していただくというのが適切ではないかというのが専門委員のほうでのお考えでございました。
 取りあえず説明させていただきます。ありがとうございました。



【内田会長】  どうもありがとうございました。
 ほかに御意見ありますでしょうか。大体皆さん、内容的には御異論はないというふうに理解をしてよろしいでしょうか。
 
 (首肯する委員あり)
 
 ありがとうございます。それでは、専門委員による最終報告のとおり、第一次追補における自主的避難等対象区域の設定に関する判断枠組みは、引き続き合理性を有するということ、そして対象区域に含まれず、個別具体的な事情に応じて賠償の対象となり得るとされた県南地域、そしてもう一つは宮城県丸森町ですが、については、実際、東京電力が自主的に賠償しているということも考慮し、区域の拡大については慎重に対応する。すなわち、現行の指針を維持するということでよいとの認識であると理解してよろしいでしょうか。
 
 (首肯する委員あり)
 
 ありがとうございます。それでは、以上確認いたしました上で具体的な論点についての議論に入りたいと思います。
 まずは事務局から類型化に当たっての考え方についての具体的な論点について御説明をお願いいたします。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  前々回、11月10日には、まず、子供・妊婦以外の者につきましては、第一次追補は賠償すべき期間を本件事故当初の時期、1か月間としていたことについて、各判決を踏まえまして、本件事故当初の時期以降に抱いた放射線被曝への恐怖・不安についても、自主的避難等対象区域のような比較的低線量の場合に、放射線への感受性が子供・妊婦と同じ程度に高い可能性があるとは一般的に認識されていないことから、これだけでは賠償の対象となる損害の基礎にはなり得ないが、残存する後続事故に対する不安と相まって抱く相当程度の複合的な恐怖や不安を抱いたことには相当な理由があり、また、その危険を回避するために自主的避難を行ったことについてもやむを得ないと考え、賠償すべき損害の対象期間を変更する。
 子供・妊婦につきましては、各判決と比較した場合、少なくとも平成23年12月末までの間の賠償の考え方は、各判決と中間指針の考え方は整合が取れている。平成24年1月以降については、各判決は終期において考え方が分かれているが、中間指針は個別の事例または類型ごとに一定の要件の下で賠償の対象とすることとしていることには相応の合理性が認められる。そのため、中間指針の見直しについては慎重に対応するというふうな確認が得られています。
 本日はこれを踏まえまして、子供・妊婦以外の者の賠償の考え方について、資料2-1、2-2に論点を整理しております。
 資料2-1につきましては、通しページで71ページになります。
 まず、1ポツの対象期間ですが、(1)対象期間を変更する理由です。ここは一応、前々回で確認しておりますが、確認的に書いております。第一次追補が賠償すべき期間を本件事故当初の時期としたことについて、本件事故当初の時期以降に抱いた放射線被曝への恐怖・不安についても、各判決を踏まえ、放射線被曝への恐怖・不安と残存する後続事故に対する不安と相まって生ずる相当程度の複合的な恐怖や不安を抱いたことには相当な理由があり、また、その危険を回避するために自主的避難を行ったことについてもやむを得ない面があると考えてよいか。
 (2)これは終期です。平成23年12月16日に政府が発電所の事故そのものの収束を宣言したことを考慮し、同年12月末には残存する後続事故に対する不安がおおむね解消されたと認め、同年12月末までを賠償の対象期間として算定することが妥当と判断してよいかということです。
 2ポツ、損害項目・損害額の算定方法ですが、まず(1)第一次追補で示された損害項目について記載しております。子供及び妊婦以外の者について、本件事故発生当初の時期に受けた損害のうち、丸1、自主的避難者の損害は、生活費増加費用、日常生活阻害慰謝料、移動費用、丸2の滞在者については、日常生活阻害慰謝料、生活費増加費用が一定の範囲で賠償すべき損害と認められています。
 (2)で、今回、第五次追補で示すべき損害項目ですが、第一次追補で示された損害項目は、本件事故発生当初の時期以降の損害の基礎となる不安の内実は変化しているものと考えられるが、その性質が全く異なるものとまでは言い難く、本件事故当初の時期以降も一定程度の範囲で生じていると認められ、平成23年12月末まで第一次追補と同様の損害項目としてよいか。
 (3)、これは自主的避難者、滞在者それぞれの損害額の算定方法です。第一次追補と同様に、自主的避難者については生活費増加費用・日常生活阻害慰謝料・移動費用、滞在者については生活費増加費用・日常生活阻害慰謝料、いずれもこれを合算した額を同額として算定するのが、公平かつ合理的な算定方法と認めてよいか。
 (4)、これは具体的な損害額の算定の考え方です。第一次追補の子供及び妊婦の自主的避難等対象者について示した目安額を参考に、自主的避難等対象区域のような比較的低線量の場合に、放射線への感受性が子供及び妊婦と同じ程度に高い可能性があるとは一般に認識されていないことを一定程度勘案し、各判決では子供・妊婦の場合の3分の1から2分の1程度であることも参考にして算定することとしてよいか。
 (5)、これは第一次追補による損害額等の控除であります。上記(2)で述べましたとおり、第一次追補で示した本件事故当初の時期の賠償すべき損害項目は、本件事故当初の時期以降も一定程度の範囲で生じていると認められ、本件事故発生から平成23年12月末までを一括して算定し、重複する損害額、これは第一次追補で示した目安額8万円、その他、例えば追加的費用4万円の自主賠償を含めた既賠償額です。これを控除することが妥当と判断してよいか。
 (6)ですが、避難指示等対象区域の者に関する賠償であります。本件事故発生時に避難指示等対象区域内に住居があった者、計画的避難区域及び特定避難勧奨地点については、相当線量地域、健康不安に基礎を置く精神的損害が別途賠償されることとなりますため、当該地域は除いております。この地域につきましては、賠償すべき損害は自主的避難等対象者の場合に準じるものとして、第一次追補における考え方と同様とすることでよいか。
 詳しくは資料2-2を御覧いただければと思いますが、この資料2-2に具体的な例を記載しております。
 2ポツの(1)ですが、例えば、緊急時避難準備区域に滞在し続けた者の平成23年4月22日以降、これは指針上でありまして、実際にはそれ以降も自主的に賠償されている場合があります。この平成23年4月22日以降の部分など、中間指針の精神的損害が賠償されていない期間については、自主的避難等対象者の賠償対象期間を勘案した金額、これは賠償とされていない期間を月割りで算定をして、賠償されていない期間が3か月ならば10分の3というふうな考え方です。
 2ポツの(2)ですが、例えば、警戒区域から自主的避難等対象区域に避難した者など、中間指針の精神的損害が賠償されている期間において、自主的避難等対象区域に避難して滞在した期間については、子供・妊婦のときと同様に、自主的避難等対象者の半額を目安として算定した金額となります。
 資料2-1の最後に戻っていただいて、指針の構成です。こうした方向で見直す場合、変更点を簡明にするため、第一次追補の第2、自主的避難等に係る損害について、そして第二次追補の第3、同じくこれは自主的避難ですが、これを全面的に改訂をして、第五次追補とすることでよいかということです。
 説明は以上です。



【内田会長】  ありがとうございます。時間が大変超過していて申し訳ありませんが、もうしばらくお願いいたします。
 それでは、具体的な論点について、1つずつ御議論いただきたいと思います。まず、ただいま御説明いただいた内容のうち、対象期間につきましては、2つの論点が抽出できようかと思います。まずはそれについて御議論いただきたいと思います。
 2つの論点の第1番目は、第一次追補で自主的避難等対象者のうち、子供及び妊婦以外の者の賠償の対象期間を本件事故当初の時期としたことについて、各判決を踏まえ、当該時期以降においても放射線被曝への恐怖、不安と、残存する後続事故に対する不安とが相まって生ずる相当程度の複合的な恐怖や不安を抱いたことには相当な理由があり、また、その危険を回避するために自主的避難を行ったことについてもやむを得ない面があると考えてよいか。これが1の(1)に書かれていることです。
 それから、1の(2)に書かれていることですが、平成23年12月16日に政府が発電所の事故そのものの収束を宣言したことを考慮し、平成23年12月末には残存する後続事故に対する不安がおおむね解消されたと認め、平成23年12月末までを賠償の対象期間として算定することが妥当と判断してよいか。この2つの論点について、まずは御意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。
 古笛委員、お願いします。



【古笛委員】  この2点につきましても、各判決を踏まえた専門委員の御報告も踏まえて、こういった方向での改正ということでよろしいのではないかと思います。



【内田会長】  ありがとうございます。
 ほかの皆さんからは、いかがでしょうか。
 鹿野委員、お願いします。



【鹿野委員】  ありがとうございます。私も、今の整理の2点とも、このような方向でよろしいと思います。
 ただ、ついでに1つ、質問に当たるかもしれませんけれども発言させてください。1点目の、子供・妊婦以外の者についても、当初の時期以降についても、各判決を踏まえて賠償の対象にするという方向についてですが、結論的には、今申しましたように異論はございません。ただ、この文章が、私にとってはすごく分かりにくく感じました。1ポツの(1)、4行目から6行目あたりに文章が入っているところです。つまり、4行目の最後のほう、「恐怖、不安についても」の後から6行目の真ん中の「損害の基礎にはなり得ないが」という一節が入っていて、そのために、この文章全体がとても分かりにくくなっているような気がします。
 そこで、あえてこのように1つにまとめられた意図というか、それがあれば教えていただきたいということと、できれば、意図があるとしても、文章を分割してもっと分かりやすくしたほうがよいのではないかというふうに感じました。これが中間指針にそのまま文章として入ってくるという趣旨ではないとは思いますが、ここでの意図が特にあればということで確認させてください。よろしくお願いします。



【内田会長】  ありがとうございます。
 意図はないと思いますが、事務局、お願いします。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  文章としては基本的に専門委員の報告を踏まえたものになっています。この文章、今後どうなるかという位置付けですが、指針は具体的な基準や目安を示す指針部分と、その考え方とか解釈について説明をする備考欄と2つに分かれております。この記載は備考欄のほうに記載するということが想定されますので、今御指摘のように、分かりやすい、簡明な文章に修正して書きたいと思います。



【内田会長】  確かに、ちょっと一文が長い感じがしますので、よろしくお願いいたします。御指摘ありがとうございました。
 ほかに御意見ありますでしょうか。特にはありませんでしょうか。
 では、大体このような方向で進めるということで、御同意をいただいたということでよろしいでしょうか。
 
 (首肯する委員あり)
 
ありがとうございます。
 では続いて、2の損害項目・損害額の算定方法についてですが、ここは細かく分けますと、5つぐらいの論点が抽出できようかと思います。
 まず第1に、第一次追補で示した損害項目、これは資料2の(1)の①、②で御説明されていることですが、本件事故発生当初の時期以降、損害の基礎となる不安の内実は変化しているものの、性質が全く異なるものではなく、一定程度の範囲で生じていると認められることから、平成23年12月末までも同様としてよいかということ。
 それから2番目に、第一次追補と同様に、自主的避難者と滞在者について同額として算定するのが公平かつ合理的な算定方法と認めてよいか。これは2の(3)に書かれていることですね。
 それから3番目に、2の(4)に書かれていることですが、損害額の算定に当たっては、第一次追補の子供及び妊婦の目安額を参考に、各判決では子供・妊婦の場合の3分の1から2分の1程度であるということも参考にして算定することとしてよいかと。
 それから次に4番目の論点として、これは2の(5)に書かれていることですが、(2)で示してあるとおり、第一次追補で示した賠償項目は、本件事故当初の時期以降も一定程度の範囲で生じていると認められることから、賠償額は本件事故発生から平成23年12月末までを一括して算定し、重複分となる第一次追補で示した目安額8万円を含めた既賠償額、既に支払われた賠償額を控除することが妥当と判断してよいか。
 そして最後に5番目、2の(6)で書かれていることですが、避難指示等対象区域内に住居があった者については、賠償すべき損害は、自主的避難等対象者の場合に準ずるものとし、第一次追補における考え方と同様とすることでよいかという論点でございます。
 以上につきまして、御意見をいただけますでしょうか。
 富田委員、お願いします。



【富田委員】  内容についてはいずれも賛成ということになります。期間についても、平成23年12月末まで延びたわけですから、そういう意味ではいいんですけれども、12月末以降は賠償しないという理解になるかどうかというような問題がないわけではないんです。ちょっと私のほうも十分チェックはしていないんですが、ADRにおいてこれらの賠償事例についてもう一度チェックしていただき、個別具体的な事例について期間の制限があるかないかという点は一度チェックした上で、それ以降は一切ないというような理解にならないようなことは本件においても必要かもしれませんので、またそれについては検討してもらおうかなと思っております。
 以上です。



【内田会長】  ありがとうございます。
 この点について、古谷室長から何かありますでしょうか。



【古谷室長】  この点については、例えば、子供や妊婦の場合であれば、当然、平成24年以降も実際に避難されている方など数多くの事例がございます。特に私から見て付け足すことはないと思いますけれども、念のため、もう一度あのエリアの事例もさらって、次回、簡単に、何かあれば御報告をさせていただくことにしたいと思います。



【内田会長】  ありがとうございます。具体例が多数あるということですと、その点、懸念のないように、富田委員の御指摘のような表現ぶりを工夫していただければと思います。
 それでは、ほかに御意見ありますでしょうか。特にはありませんでしょうか。
 では、ただいまのような方向で検討を進めるということでよろしいでしょうか。
 
 (首肯する委員あり)
 
ありがとうございます。
 それでは、最後に3の指針の構成についてですが、これにつきましては、ただいま事務局から御説明がありましたように、変更点を簡明にするため、第一次追補の第2と、それから第二次追補の第3、いずれも本件に関わる部分ですが、これを全面的に改訂し、第五次追補とすることとしてよいかということでございます。これは、変更しない部分はそのまま書き下して第五次追補の中に入れるという趣旨だと思いますが、以上につきまして御意見ありますでしょうか。
 古笛委員、お願いします。



【古笛委員】  この点も本当にかなり分かりにくくなってしまっているので、重複とか不足分とかのものもあるので、全面的に分かりやすく改訂していただくことに何ら異論はございません。



【内田会長】  ありがとうございます。御異論はないかと思いますので、そのように進めることとさせていただきます。
 以上で、一通り各論点について議論をいたしましたが、これまで既に終わった論点を含めまして、何か御意見とか、あるいは別の観点からの御意見などございましたらいただきたいと思いますが、何かありますでしょうか。
 よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 井出副大臣、どうぞ。



【井出文部科学副大臣】  議論をお願いしている立場ですので、あまり発言することがふさわしいかどうか悩みましたが、1点だけ、お許しをいただきたいと思います。
 今日の議論の中で、これはずっと議論の悩みだと思うのですが、一律してとか共通してというところの表現ぶりがあると思うんですが、正確に書き下せば一律して最低限の目安となるとか、あくまでもそれは最低限なんだというような共通理解なのかなと思い今日伺っておりましたし、それは今回の論点だけではなく、この中間指針全てにそういう御意思が込められてきたのではないかなと思います。
 また、内田会長のほうからは、御説明の中で、これこれこういうものはほぼ例外なく認められるべき、そしてそのほぼ例外なくというところも、今日のたたき台ですと、記載のあるものと、先生に口頭で補足していただいている部分、このことも恐らく中間指針全体の考え方だろうと思いますし、あと、今日の自主避難の地域のところの話もございましたが……、どこだったか。すみません、ちょっと待ってくださいね。私が資料を探しております。
 その区域につきましても、今日のお話ですと、やはり一律、一定の賠償の対象として示す地域としては慎重でなければいけない。しかし、被災された方の個別の事情の賠償というものは、妨げられるものではないと表現するのがいいのか、それとも、積極的になされるべきものであると表現するのがいいのか、その辺りは私が本当に素人ですので分かりませんが、そこも含めて被災者の方に分かりやすい中間指針になるのが今回一つの大きな目標かなと感じております。本来であれば私が事務方と話をすべきことなのですが、その問題意識をちょっと後で事務方にお伝えするに当たって、まず先生方にその認識の確認をお願いしたく、発言させていただきました。



【内田会長】  ありがとうございます。会議に御出席いただいておりますので、当然御発言をいただく資格はありますし、重要な御指摘をいただきましたので、十分踏まえて検討したいと思います。
 一律に額を定める場合に、最低限であるということが分かるように書いてはどうかということ、最初に御指摘がありました。もともと、指針というのは必ずしも最低限という趣旨ではなくて、あるカテゴリーの被害者に共通に生じている損害について、もし裁判をすれば大体どのくらいの額が認容されるであろうかというところ、つまり最も合理的に算定した場合に共通して認容されるであろう額を示して、それを賠償の指針にするという趣旨で当初はつくられておりました。そうすると、その額よりも多い方、個別事情によって多い方もいれば少ない方も現実にはいるわけですが、しかし、少ない方について額を減らすということはしませんので、そうすると結果的には、あたかも最低限であるかのように機能する。個別事情に応じて増やす方向でのみ修正がされるということになりますけど、しかし、必ずしも生じている損害の中で最低の部分を取っているというわけではなくて、共通して生じている損害を合理的に算定すればどうなるかというところの基準を示そうとしたものであると理解しております。しかし御指摘のとおり、個別事情に応じて増額されるということは当然の前提になっておりますので、このことが明確に分かるように、これは各委員からも何度も御指摘をいただいておりますが、とりわけ東電にそのことがきちんと理解していただけるように、表現の仕方を工夫していきたいと思います。
 それから、自主的避難区域につきましても、区域外の方々について個別事情によって賠償を認めるということは現にありますし、現実に東電は賠償している。現在の裁判例を見ましても、確定判決の中では仙台の生業訴訟の判決がそれを認めておりますが、個別の地方裁判所の判決の中でも、区域外の住民の方について賠償を認めた例もあり、しかし、他方で認めていない例もあります。結局、個別事情によって判断をしているということですので、個別事情に応じて賠償が可能であるということが分かるように、これも表現ぶりを工夫してもらいたいと思います。重要な御指摘をいただきまして、どうもありがとうございました。
 それでは、最後に少しまとめをさせていただければと思います。前回の審査会から2回にわたりまして、中間指針、第五次追補の策定に向けた具体的な論点として、5つの論点について委員の皆様での議論を深めていただきました。本日取り上げました2つの論点についても、前回同様、細かな点で、御指摘を受けて表現を修正したりといったさらなる検討が必要な部分もありますけれども、大方の部分については方向性が見えてきたと言ってよいかと思います。
 そこで次回は、これまでの議論を踏まえまして、第五次追補の具体的な内容について、第五次追補の素案というものを事務局に作成していただき、これを基に審議をしていきたいと思います。事務局におかれましては、これまでいただいた各委員からの御意見を踏まえまして、審議のたたき台となる第五次追補の素案を作成して、次回の審査会に提示していただきますよう、お願いいたします。
 以上で、議題の1が終了でございます。
 続いて、議題の2その他とありますが、この点については今回特に議題が設定されていないと聞いておりますので、本日の議事は以上になります。
 最後に、本日の審査会を通して、委員の皆様から何か御発言がありましたらいただきたいと思いますが、何かありますでしょうか。
 特に御発言はありませんでしょうか。ありがとうございます。
 それでは、これで本日の議事は終了となります。大変長時間にわたりまして熱心な御議論をいただき、ありがとうございました。
 最後に、事務局から連絡事項をお願いいたします。



【川口原子力損害賠償対策室次長】  事務局でございます。
 次回、第62回審査会につきましては、来週12月12日、月曜日を予定してございます。詳細につきましては、改めて御連絡させていただきます。
 また、本日の議事録につきましては、事務局でたたき台を作成いたしまして、委員の皆様に御確認の上、準備が整い次第、ホームページへ掲載させていただきます。
 以上でございます。



【内田会長】  ありがとうございます。
 それでは、本日はこれにて閉会いたします。長時間にわたり、ありがとうございました。
 
―― 了 ――

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