原子力損害賠償紛争審査会(第60回) 議事録

1.日時

令和4年11月28日(木曜日)10時00分~12時20分

2.場所

文部科学省内会議室及びオンライン

3.議題

  1. 中間指針第五次追補策定に向けた論点について
  2. その他

4.出席者

委員

内田会長、樫見会長代理、明石委員、江口委員、鹿野委員、古笛委員、富田委員、中田委員、山本委員

青野専門委員、大塚専門委員、日下部専門委員、末石専門委員、米村専門委員

文部科学省

井出文部科学副大臣、千原研究開発局長、林原子力損害賠償対策室長、松浦原子力損害賠償対策室室長代理、川口原子力損害賠償対策室次長

オブザーバー

【説明者】
古谷原子力損害賠償紛争和解仲介室(原子力損害賠償紛争解決センター)室長
髙砂内閣府原子力被害者生活支援チーム参事官

5.議事録

【内田会長】  おはようございます。それでは、時間になりましたので、第60回原子力損害賠償紛争審査会を開催いたします。本日はお忙しいところ、お集まりいただき、ありがとうございます。オンラインで御参加の委員の皆様もありがとうございます。
 初めに、本日は井出文部科学副大臣に御出席いただいておりますので、御挨拶をいただきたいと思います。井出副大臣、どうぞよろしくお願いいたします。
 
 
 
【井出文部科学副大臣】  文部科学副大臣の井出でございます。本日はお忙しいところ、こうして皆様に御出席、また、オンラインで御出席いただきまして、ありがとうございます。前回、11月10日になりますが、専門委員の皆さんによる過去の判決等の調査・分析の最終報告が行われまして、この報告を踏まえて中間指針を見直すこととし、第五次追補を策定するという審査会としての共通認識が得られたと承知しております。私も議論を聞かせていただきましたが、特にこれから見直しを進めていくに当たって、例えば、どうして見直しに至ったのかを反映させるべきではないか、それからまた、これまでも言われてきておりますが、指針の機能と限界、これが上限ではないということをしっかり盛り込むべきではないか。指針の本質的なところの重要性もしっかり皆様方に意識して、議論いただいているというところは本当に感謝と、また、敬意を表したいと思っております。
 今日、前回示されました論点の中から、過酷避難状況による精神的な損害、故郷の喪失・変容に関する精神的な損害、それから、相当量の線量地域に一定期間滞在したことによる健康不安を基礎に置いた精神的損害について少し細かく議論をいただくと伺っております。
 特に、被災者、被害者の皆さんにおかれましては関心の高い議論だと思います。先生方には引き続き中立公正の立場から、今日も有意義な御議論をお願い申し上げます。ありがとうございます。
 
 
 
【内田会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、次に、事務局から資料等の確認をお願いいたします。
 
 
 
【川口原子力損害賠償対策室次長】  事務局でございます。資料の確認をさせていただきます。本日は会場での対面とオンラインを組み合わせましたハイブリッド形式での開催となってございます。会場で参加されている委員につきましては、お手元の端末を、また、オンラインで参加されている委員につきましては、事前にお送りしているものを御覧いただければと思います。資料につきましては議事次第に記載のとおりでございますが、資料に不備等ございましたら、議事の途中でも結構でございますので、事務局までお声がけいただければと思います。
 なお、参考3といたしまして、「地方公共団体等からの主な要望事項について」を配付してございます。端末の方はPDFの全体の39ページ目に該当する資料でございます。こちらにつきましては、要望書本体について、委員の皆様に共有しているところでもございまして、前回と同様、この場での説明は割愛いたしますが、要望書の概要を記載の上、配付してございます。
 次に、御発言に当たってのお願いでございます。会場で参加されている委員につきましては、御発言の際、お手元のマイクのボタンを押していただき、マイクにランプが点灯したことを御確認いただければと思います。その後、必ずマイクに近づいて御発言いただきますようお願いいたします。マイクから離れて御発言されますと、オンライン参加の委員などへ音声が聞こえないという場合もございます。御留意いただければと存じます。音声が拾えていない可能性があるという場合は、途中でも事務局から適宜お声がけいたしますので、あらかじめ御承知おきいただければと思います。発言が終わりましたらボタンを再度押していただき、ランプが消灯したことを確認ください。
 また、オンラインで参加されている方につきましては、御発言の際、端末の画面上にございます挙手のボタンを押していただけますと、会長などから指名させていただきます。御発言いただく際はミュートの解除をお願いいたします。発言が終わりましたら、その都度ミュートに戻していただきますようお願いいたします。
 なお、本日は過半数以上の委員の皆様に御出席いただいており、会議開催の要件を満たしておりますことをあらかじめ御報告させていただきます。
 また、山本委員におかれましては、11時45分頃退席予定である旨お伺いしてございますので、あらかじめ御承知おきいただければと存じます。
 そして、前回審査会において御確認いただきましたけれども、判決等の調査・分析を担当いただきました専門委員にもオブザーバーとして御出席いただいているところでございます。
 以上でございます。
 
 
 
【内田会長】  ありがとうございます。
 それでは、議事に入ります。議題1は、中間指針第五次追補策定に向けた論点についてでございます。前回の審査会におきまして、中間指針を見直し、第五次追補を策定するという方針については、委員間での共通の認識が得られたところですけれども、今回からは、第五次追補の策定に向けて、各論点について、議論を深めていきたいと思います。
 つきましては、過酷避難状況や生活基盤変容などの論点について議論を行うに当たって、事故当初の状況や、生活基盤の回復状況などについて把握することが必要ではないかと考えております。
 そこで今回、内閣府の原子力被災者生活支援チームにお越しいただき、関連情報について聴取したいと思います。
 本日は、内閣府原子力被災者生活支援チームから髙砂参事官に御出席をいただいておりますので、御説明をお願いいたします。
 
 
 
【髙砂参事官】  御紹介をいただきました内閣府原子力被災者生活支援チーム、参事官の髙砂でございます。
 それでは、資料に沿って、御説明を差し上げたいと思います。統合版資料3ページ目以降になります。おめくりいただきまして、統合版5ページ目までおめくりいただければと思います。
 まず一時立入りの状況というタイトルになってございます。これは着の身着のままでの避難が過酷であったことを示すものとして、避難指示区域の立入りの例を出させていただいております。原子力被災者生活支援チームでは、避難指示区域の管理を実施してございます。その中で、被災されている住民が避難指示区域に立ち入る際の手続を御案内して、今でもしてございます。
 前提といたしまして、上の青枠のところにも書かせていただいていますけれども、福島第一原子力発電所から20キロ圏内の警戒区域の被災者の皆様におかれましては、事故発生時に緊急に避難したため、必要な物資を持ち出せなかった方がほとんどであると考えております。このため、自宅への一時立入りを実施させていただいたところであります。
 特に、一時立入りの一巡目である平成23年5月10日から9月9日の間については、持ち出し量・時間等の制限等が大変厳しい状況で行われまして、必要最低限のものの持ち出ししかままならない状態であったと思われます。避難先においても不便を強いられた状況と考えられます。
 下の一覧表を御覧いただきたいと思いますけれども、一巡目のところと二巡目以降ということで分かれて書かせていただいています。まず一巡目のところです。立入り時間は2時間以内。装備は、防護スーツ、マスク、手袋、靴カバー、線量計、線量の関係もありまして、こういったものをつけなければいけなかったんですけれども、時期を御覧いただければ、真夏の大変暑い時期でありました。防護スーツを着ていると脱水症状の危険性もあったということでありまして、非常に厳しい状況での立入りだったと思います。
 立入り方法も、マイカーでは不可ということにさせていただいていまして、このときは、バスによる送迎での立入りでございました。持ち出せるものでございますけれども、支給されたビニール袋、70センチ掛ける70センチ1枚に入る量しか認められませんでした。立入り人数の制限ですけれども、一応、原則一世帯一人となっていますが、当時、自治体が認めれば、一世帯二人まで行くことができたと記録が残っております。
 付言でもありますけれども、8月26日までは3キロ圏内の立入りは認められておりませんでした。これ以降、9月19日以降は二巡目に入ってまいりまして、マイカーで入れたりするようになるんですけれども、一巡目はとにかく厳しい状況ということであります。
 次のページを御覧いただければと思います。このときの立入りの実績データでございます。これはピークが7月ぐらい、ざっと合計のところの人数を見ていただくと分かると思うんですけれども、ピークが7月です。ただ、8月になっても相当程度の人数の方にお立ち入りいただいているということでございます。こういったところまで待たされていた世帯があったことが認識いただけるのではないかと思います。
 9月は9日までだったので、人数が少なくなっているということでございます。
 一時立入りの状況は以上でございまして、次のページでございます。次は、故郷変容の関係でございますけれども、居住制限区域と避難指示解除準備区域の状況の御説明を差し上げたいと思います。統合版資料7ページ目以降になります。
 まず表でございますけれども、両区域の解除時期についてということで書かせていただいております。青枠の中にも書かせていただいておりますけれども、避難指示解除の際には、区域ごとではなく自治体ごとで両区域同時に解除された地域がほとんどであったということでございます。具体的には赤字で示されたところ、28年の葛尾、南相馬、29年の飯舘、川俣、浪江、富岡。あとは元年の大熊ということでありまして、これら2つの地域を、除染をしっかりやりつつ、同時に解除していったということでございます。
 1点、川内村が若干違う形になっているんですけれども、解除時期が少し早かったこともあって、この時点では早く解除することが、場合によっては不利益になるのではないかという御心配もあったと聞いておりまして、この当時は、川内だけは、居住制限区域を避難指示解除準備区域にして、後々、除染した後、避難指示解除準備区域を解除していたということでございまして、その後は、皆さん、どの自治体もこの両区域を同等に扱って解除していったという記録の例でございます。
 次のページですけれども、インフラ再開状況も一つ、データとして見られるのではないかと思いまして、ピックアップさせていただいています。青枠の中、居住制限区域・避難指示解除準備区域は生活圏が一体であったため、生活インフラの整備や、それに伴う避難指示解除は実質一体として進められたということが読み取れるということでございます。
 この中で、字が小さくて恐縮ですけれども、具体例として書かせていただいております。直近、すごく近い例ですけれども、大熊町、大河原地区、中屋敷地区。大河原地区が居住制限区域、中屋敷地区が避難指示解除準備区域。これは同時に解除されていますけれども、令和元年4月10日です。この住民説明会資料の中から抜粋させていただいております。
 まず除染検証委員会の検証結果という欄には、やはり両地区、並列に並べられておりまして、大河原地区と中屋敷地区で行われた空間線量率や土壌の放射性物質濃度などの調査で得られた結果から、両地区では除染の効果や自然減衰などが認められ、総合的には線量率が十分低下しているものと判断する。あるいは、大河原地区や中屋敷地区の屋内の汚染は比較的低いが、住民が屋内の汚染に対してどのように対処すればよいか判断できる情報の提供が重要である。そのため、屋内の汚染調査や清掃などに対する継続的な支援が必要であるという指摘でも、両地区を並列に並べて論じられております。
 また、インフラ・交通の復旧でも、この両地区を対象に全部書かれておりまして、LPガスについては、ガス供給を行っています。上・下水道については復旧済みです。大河原・中屋敷地区から目的地、これは主に病院への送迎ですけれども、いわき市、南相馬市への医療機関まで送迎可能なワゴン車を、本年6月から運航すべく準備を進めていますという記載もございます。
 ちょっと前の例でいきますと、南相馬市の解除のときは、原町区の一部、居住制限区域が一部ございました。小高区、居住制限区域と避難指示解除準備区域が混ざっているところ。あとは鹿島区、避難指示解除準備区域が一部かかっておりました。避難指示解除時、平成28年7月12日の議会説明資料からでございます。
 南相馬市の避難指示区域の中では、避難指示解除準備区域・居住制限区域では、原則として夜間の宿泊はできませんが、平成27年8月31日より、「ふるさとへの帰還に向けた準備のための宿泊」(準備宿泊)を開始し、事前に御登録いただいた上で、御自宅への宿泊が可能となっていますというように、両地域並列で書かれています。
 あとは放射線量/除染の状況においても、両方一緒に、南相馬市の避難指示区域は、というように一緒に書かれております。そして、一律に市民が避難を強いられるような状況から、居住をしつつ、復興、環境回復に関わろうとしている市民を積極的に支援していく状況へと移行する段階に来ていると考えるということで書かれている。
 インフラ・生活関連サービスの復旧も同じでございまして、両地区同等に、上水道・下水道は復旧済みです。水道水については、小高区、原町区における放射性物質に係る水道水モニタリングを週3回実施しており、検査結果は不検出です。要するに、両地区、並列にしっかり検査されていたということであります。
 最後、富岡町でございますけれども、このときの住民説明会資料の抜粋です。ここでも、インフラのところですが、複合商業施設、これは今でも使われていますけれども、さくらモールとみおか、昨年11月にホームセンター・飲食店等が先行開業。本年3月30日に食料品スーパー・薬局等含めて全面開業予定。開業して、翌々日に避難指示解除したということでございますけれども、この商業施設も両区域、居住制限区域及び避難指示解除準備区域の共通したお買物場所ということで整備されているということでございますし、町立の診療所も同等でございまして、昨年10月に開所し、週3日の診察を実施中、あるいは本年4月から週5日の診察を実施予定と、両地区の方が利用できる診療所として整備されたということでございまして、両地区の扱いについては、町ごとにほとんど同等に扱っていただくことが分かるかなと思います。
 次でございます。緊急時避難準備区域の状況ということでございます。統合版資料11ページ目でございます。これは各市町村の人口データ、これは客観的なものですけれども、示させていただいております。このグラフですけれども、旧緊急時避難準備区域の人口の推移となります。緊急時避難準備区域が、解除後も人口の戻りはそんなに簡単に戻っておらず、相当緩やかに回復してきているということでございまして、相当な期間、住民は帰還できていないということでございます。そういう意味で、解除したからすぐに帰れたわけではないことを示しているデータとなります。
 次のページ、12ページ目でございます。これも緊急時避難準備区域の復旧状況についてということでありまして、日常生活阻害慰謝料の終期、24年8月末ということでございますけれども、この前後でもインフラ等がなかなか再開していないという事例がございます。震災以前の状況には戻っていなかったのではないかということでございます。
 1つ目の事例でございますけれども、保育所、幼稚園、学校です。南相馬におかれては、平成25年5月時点でも小中学校22校中16校が再開していましたけれども、市内の学校に戻った児童数は60%程度だったということ。また、田村市、都路町では、平成26年4月まで小中学校が再開せずということでしたし、広野町、広野保育所、幼稚園、小中学校は、平成24年8月まで再開しなかったと。また、川内村、広野町の小中学生数は、これは現在のデータになりますけれども、令和3年度時点でいまだに震災前の5割以下でありますし、南相馬市は平成30年時点の5割強ということであります。
 あと、病院のところですね。福祉施設、ここも同じようなことでございまして、南相馬市が、4施設のうち1施設減ということでございましたし、診療所は24施設のうち5施設減ということでございました。川内村も、唯一の診療機関「ゆふね」というところがあるんですけれども、24年4月まで閉鎖されていましたし、広野町も、病院1施設、診療所1施設が再開しましたが、歯科医院は26年6月まで閉鎖したままだったということであります。
 下のところにも書かせていただいていますけれども、広野町、川内村というのは、自治体独自の御判断もありまして、24年3月末まで全町避難されていたということでございます。
 こういったこともありますし、具体的に、さらに言いますと、広野小学校は、人数で言いますと、もともと289人いたんですけれども、170人がいわき市内の三十数校の小学校に区域外就学していたという記録がありますし、また、いわき市中央台南小学校の一部の空き教室を間借りし、広野小学校を開校し、就学が70人。要するに、間借りしたこともあって、その学校でしばらくの間、広野小学校を開校していた。中学校も同じようなことでございまして、間借りをして、避難先で、一定程度の期間、開校されたので、そう簡単に帰れていなかったということでございます。
 あと、次のページ、13ページ目です。緊急時避難準備区域の復旧状況について、マル2というものですけれども、青枠の中、緊急時避難準備区域では平成24年8月時点で交通インフラはほぼ、ほとんど復旧していなかったということ。あと、居住制限区域・避難指示解除準備区域においては、復旧がさらに遅いので、こういったものも影響して、緊急時避難準備区域もいろいろ影響を受けていたということでございます。
 生活圏の変化ということで書かせていただいておりますけれども、南相馬市においては、この図を見ながらですが、常磐線の相馬駅から原ノ町駅間というのが2011年12月21日ですけれども、原ノ町区にあります磐城太田駅が2016年まで運行が再開されていないということもありまして、こういったところで、原ノ町区の周辺住民も不便も強いられていたはずでありまして、また、鉄道による東京のアクセスですね。いろいろ解除されて、皆さん戻って、ちゃんとやっていたのではないかということですけれども、もともと常磐線で東京に行かれていたわけで、この間、この真ん中、第一原発のところ、ずっと避難指示がかかっていますので、常磐線も駄目でしたから、でも、仙台周りで行かれたということでありまして、相当不便な思いをされていたということが実感としても分かるかなと思います。
 田村のほうも同等でございまして、緊急時避難準備区域と、特に都路のところですね。警戒区域の住民、これは区域が両方あったわけですけれども、帰還時期が異なることで、児童生徒に二分するような分断みたいなものが起こってしまったということで、故郷が変容していったと言えるのではないかと思います。
 あと、川内村も、商圏とか学校、病院なども、浜通りのほう、富岡町、大熊町のほうに通っていたんですけれども、警戒区域で立入りできなくなってしまったので、むしろ田村、船引とか郡山のほうに行かざるを得なくなっていたということです。
 あと、広野町については、国道6号線を中心に、富岡とかそういうところが商圏だったと考えられますけれども、鉄道も通らず、道路も通らずという状況だったので、いわきのほうまで行かないといけない状況だったと思います。
 あと、市町の職員の方にも少しインタビューというか、データはないんですけれども、当時の感覚論として聞いてみたんですけども、南相馬市というのは意外と戻っていたというデータがあったりするんですけども、ただ、お店が再開しても、時短営業がされていて、相当程度不便はあったということで御証言もございましたし、あとは当時、今の広野町長、遠藤町長が当時のことを振り返ったインタビュー、これはインターネットにも載っていますけれども、事故対応のために多くの作業員が入ってきていて、やはり事故前とは故郷が異なる状況であったと、相当程度の住民が感じていたということが語られているということがございました。
 最後でございます。特定避難勧奨地点についてでございますけれども、これはあまりデータがなくて、この程度ぐらいしかないんですけども、統合資料15ページ目でございます。解除は26年12月末だったんですけれども、これは前後まで、除染、生活環境の改善が行われていたということでございます。
 平成23年7、8、11月の区域設定後、26年6月時点で8割の世帯が避難を継続されておりました。解除に向けて、26年3月には宅地周り除染が完了し、その後、宅地周辺の道路、側溝、路肩ですね。あと、生活圏近隣の森林の除染も実施されております。
 同年7~8月に放射線モニタリング調査を実施し、年間積算線量が20ミリシーベルト以下であることを確認、その後、住民説明会、戸別訪問等による住民の方と意見交換を実施し、希望に応じ、線量の追加測定や倉庫の清掃、落ち葉等の堆積物の除去を実施しております。
 それで同年12月に解除となってございます。
 交通インフラでは26年12月6日に常磐道の相馬インターと山元インター間が開通して、生活環境が改善されているというデータが残っているということでございます。
 私からの説明は以上でございます。ありがとうございます。
 
 
 
【内田会長】  どうもありがとうございました。各地域の状況が非常に具体的によく分かりました。御説明どうもありがとうございます。
 それでは、ただいまの御説明に対しまして、委員の皆様から御質問等をお受けしたいと思います。どこからでも結構ですのでお願いいたします。何かありますでしょうか。
 特に御質問はありませんでしょうか。よろしいですか。具体的なデータを基に大変詳しい御説明いただきましたので、皆さん、十分御了解されたのではないかと思います。
 それでは、どうもありがとうございました。
 
 
 
【髙砂参事官】  ありがとうございます。
 
 
 
【内田会長】  では、続きまして、第五次追補の策定に向けた論点についての議論に入りたいと思います。今回は3つの論点を扱いますが、まず、過酷避難状況による精神的損害、2番目に、生活基盤(故郷)喪失・変容による精神的損害、3番目に、相当線量地域の健康不安を基礎に置く精神的損害、この3点に関して、類型化に当たっての考え方につきまして、専門委員の報告書を基に事務局において具体的な論点を整理してもらいました。
 進め方としましては、まとめて議論を行うのではなく、各論点を順番に一つずつ議論していきたいと思います。
 そこで最初の過酷避難状況による精神的損害という論点ですが、まずこの点につきまして、事務局から類型化に当たっての考え方についての具体的な論点について御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
 
 
 
【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  それでは、資料2-1-1及び資料2-1-2を御覧ください。過酷避難状況につきましては、前回11月10日では、過酷避難状況は中間指針で示されているとは言い難いことから、類型化する、独立の損害項目ではなく、日常生活阻害慰謝料の加算要素とするということが確認されていると理解しております。
 今回お諮りする内容ですが、まず、1ポツの(1)と(2)について、中間指針におきましては、月額10万円の日常生活阻害慰謝料において賠償すべきものとされている損害は、主に避難生活における苦痛や過酷さであって、過酷避難状況に伴う苦痛や過酷さは十分に考慮されていなかった、このような過酷避難状況は法的保護に値する損害に当たり、中間指針はこれを考慮しているとは言い難いと考えられることから、賠償すべき損害と認められると考えてよいか。
 次に、(3)、対象区域・対象者ですが、まず、(3)の前段ですが、本件事故発生直後に避難指示が発出され、政府の許可がなければ一時立入りも許されなかった区域。具体的には、中間指針第3において対象区域として指定された避難区域から避難を余儀なくされた者としてよいか。
 次に、(3)の後段ですが、平成23年4月21日に福島第二発電所8キロ圏内に避難区域が縮小されて区域から外れた地域についても、少なくとも避難区域に設定されていた期間は過酷避難状況が認められると考えてよいか。
 次に、2ポツの損害額の算定方法について御説明します。
 まず、加算要素とする詳細な理由ですが、過酷避難状況による精神的損害と日常生活阻害慰謝料の考慮要素は、時間的にも内容的にも重なり合うことに加え、過酷避難状況の結果として、その後の避難生活の苦痛がもたらされるものであることに鑑みれば、両者を別個の損害項目とすることは必ずしも妥当とは言えず、独立の損害項目とするのではなく、日常生活阻害慰謝料の加算要素とすることでよいか。
 対象期間と金額ですが、(2)、過酷避難状況は本件事故発生から当初の時期が最も過酷であったと考えられるが、被害者の状況は多岐にわたり、過酷避難状況が認められる期間を明確に示すことは困難であることから、本件事故発生当初から相当期間にわたって過酷避難状況による精神的損害が生じていたものとして、第1期、具体的には6か月間ですが、この期間において加算することが相当であると考えてよいかということです。
 資料2-1-2は各高裁判決の慰謝料、そして、その他の参考となる裁判例を掲載しているので、御覧いただければと思います。
 説明は以上です。
 
 
 
【内田会長】  ありがとうございます。それでは、ただいま御説明いただいた点について順に議論していきたいと思いますが、とりあえずは、1と2で分かれておりますので、まず、1の対象区域・対象者のところです。この点についてまず議論したいと思いますが、ここに含まれる論点としましては、ただいま御説明がありましたように、大きく見ると3つぐらいあるかと思います。
 1つは、ただいまの資料の1の(1)と(2)に書かれていることですが、過酷避難状況による精神的損害について、賠償すべき損害と認められると考えてよいかということです。これは前回の審査会でおおむね合意があった点ではありますけれども、念のため、確認のために論点として挙げてあります。
 それから、続いて2番目として、1の(3)の前段ですけれども、対象者が中間指針第3における避難区域から避難を余儀なくされた者としてよいか。それから、3つ目が、1の(3)の後段に書かれている点ですが、福島第二原発に係る避難指示の区域が10キロから8キロに縮小されたわけですけれども、途中で避難指示の区域から外れた地域、8キロから10キロの間にあった地域について、少なくとも設定期間中は過酷避難状況による精神的損害が認められると考えてよいかという論点でございます。
 以上の点につきまして、御意見をいただきたいと思います。どうぞ御自由に御発言ください。
 第1番目の過酷避難状況による精神的損害について賠償すべき損害と認められると考えてよいかという点は、前回、ほぼ皆さんの了解が得られているかと思いますが、この点はもうよろしいでしょうか。御同意をいただいたということで、ありがとうございます。
 では、それ以外の対象者についてですが、何か御意見ありますでしょうか。
 樫見委員、どうぞお願いします。
 
 
 
【樫見会長代理】  今ほどの論点につきましては、先ほど内閣府から御説明があったとおり、非常に過酷な状況というのが文章ではありますけれども、私ども非常に実感できましたので、やはりこの点は御意見のとおりで私はよろしいかと存じます。
 以上です。
 
 
 
【内田会長】  ありがとうございます。
 ほかに御意見ありますでしょうか。特にはありませんでしょうか。
 ありがとうございます。それでは、ただいまの3つの論点につきましては、委員の皆様の間で御了解が得られたものと考えて進めていきたいと思います。
 それでは、次の2番目の損害額の算定方法についてです。ここには3つの議論すべき点が含まれているかと思います。
 まず第1は、2の(1)に書かれている点ですが、独立の損害項目とするのではなく、日常生活阻害慰謝料の加算要素にすることについて。この点については、前回、皆さんの了承が得られているのですが、その理由をこの2の(1)のところでより詳細に記載しております。この考え方でよいかどうかというのがまず第1の点でございます。
 それから、2番目に、2の(2)に書かれている点ですが、被害者の状況というのは多岐にわたっていて、過酷避難状況が認められる期間を明確に示すことが困難であることから、本件事故発生当初から相当期間にわたって精神的損害が生じていたものとして、避難指示が出されていた期間に応じて、第1期の期間において、事故から半年ですが、加算するということが相当であると考えてよいかという点。
 そして、第3番目に、これは今日結論を出すことではないかと思いますが、過酷避難状況による精神的損害の損害額について、資料では「○○万円」となっていますが、どの程度と考えるべきかという点についても御意見ございましたらいただければと思います。
 今、挙げました論点の2つ目の論点の相当期間という点について少し補足いたしますと、過酷避難の状況というのは、人によってかなり差があって、非常に激しい過酷な状態が事故直後から1か月とか2か月続いたという方もいれば、そこまでではないけれど、しかし、過酷な状況がもう少し長く、5か月、6か月続いたという方もいる。そういう方々について一律に何か月と期間を切ることが非常に難しいものですから、また、その1か月にどのくらい加算するかについても人によって異なるということで、それらの過酷な避難状況に置かれた方々に共通する損害として、相当期間の間、といっても、これは第1期の中でということだと思いますが、相当期間の間、過酷な状況に置かれたという共通の損害を加算要素として、まとめて幾らという形で提示してはどうか、こういう趣旨であろうと思います。
 以上の点につきまして、御意見ございましたらお願いいたします。どこからでも結構です。いかがでしょうか。明石委員、お願いします。
 
 
 
【明石委員】  明石でございます。私は専門家ではないので、1点お伺いしたいんですが、人によってかなり差があるということで、何を目安としてということがあるんですが、こういう場合は、一般的に、あまり過酷状況がひどくない人、それから、最もひどい人の、例えば平均値とか中間を取るんでしょうか。それとも、決めることができない場合は、一番ひどい場合、いわゆる我々の放射線の分野で言うと、保守的にとか安全側にという言葉で大きい数字を取ることがあるんですが、この場合はどういう考え方をするのか御教示いただけたらと思います。
 
 
 
【内田会長】  ここでの考え方は恐らく、最大公約数的といいますか、人によって様々な違いがあるわけですが、全員に共通して定型的に認められるのはこのぐらいであるという額を出すという趣旨であろうと思います。
 ただ、例外的にもちろん、それよりも少ないという方がいるかもしれませんけれども、その場合に、少ない方に合わせるというのではなく、最も平均的な、共通している部分を賠償額として示すというのがこれまでの指針の考え方であったと思います。
 ですから、最大公約数という言い方がいいのかどうか分かりませんが、最も共通して生じていると思われるレンジの額を提示する。それよりも、個別事情によって多い方については、ADRで個別の証明をして、加算するということもあり得るという趣旨であろうと思います。
 
 
 
【明石委員】  分かりました。ありがとうございます。
 
 
 
【内田会長】  はい。これまでの中間指針の考え方そのものは変わっていないという趣旨であろうと思います。
 富田委員、お願いします。
 
 
 
【富田委員】  先ほどの内閣府からの御説明でも、最初の6か月間は、立入り自体も非常に厳しく制限されていて、自分の身の回りの品すら回収できないということで、6か月たった後は、それがかなり緩和されたということですから、やはりこの期間については特別の加算する必要があるだろうと思います。
 今、額の議論がありましたけれども、その点は、今回は別にするという形ですので、次回以降、平均的なものがどうかということも含めて、お互いに意見を出してやるということで理解しております。
 私の意見は以上です。
 
 
 
【内田会長】  では、この方針については大体御賛同いただけたということで。
 
 
 
【富田委員】  はい。これで結構でございます。
 
 
 
【内田会長】  ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。中田委員、お願いいたします。
 
 
 
【中田委員】  私も全体についてはこれでよろしいかと思うんですけれども、若干御質問があります。今日お示しいただいている案というのは、最終的には第五次追補に盛り込まれるワーディングになっていくのかどうかにもよるんですけれども、単なる御説明なのかもしれないのですが、2の(2)の最後のところです。「避難指示が出されていた期間に応じて第1期の期間において加算する」という言葉、ちょっと私、最初読んだときになかなか理解しにくくて、第1期と書いているんだからこれは6か月だろうと思ったり、しかし、避難指示が出されていた期間というと、あれっ、もう少し長いのかなと思ったりして、そこがよく分からなかったのです。ワーディングですけども、この第1期という言葉と避難指示が出されていた期間ということとの関係をもう少し整理できないだろうかと考えました。
 これは実質にも関わることでありまして、なぜ6か月、あるいは、福島第二から8キロ超10キロ圏内については、1か月ですか、2か月ですか、というように限定するのか。後者については分かるんですが、前者については、先ほどの明石委員の御発言とも関係するんですけれども、なぜそこまでなのかということを16ページの1の(1)の最後のほうに、過酷避難状況についての定義がありますが、この定義との関係で6か月が区切りだということを説明できたら、より分かりやすいと思いました。
 
 
 
【内田会長】  今の点については、事務局から何かありますでしょうか。
 
 
 
【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  中田委員の御質問に対してお答えします。
 まず、避難期間、避難指示が出されていた期間に応じてというのは、先生の御質問の中でも最後のほうで多少言及されておりましたが、福島第二発電所が、避難指示が4月21日に10キロ圏内から8キロ圏内に縮小されたということで、8キロから10キロの間に含まれている方々については、その他の過酷避難の状況の方とは少し異なるということで書かせていただいております。
 1ポツの(1)の最後のところとの関係にもなりますが、一時立入りができる、できないというのは、着の身着のままの状況と深く関係しているかなといったところで、その辺の関係が出てくるかと思います。先の見通しという点においても、4月21日に避難指示が解除された方々というのは、その他の方ともまた少し状況が違うということで考えております。ただ、多少分かりにくい等あれば、そのものについてはまた修正等を考えていきたいと思います。
 いずれにしろ、今日出している文言については、基本的にはこれまでの審査会の指針の議論と同様に、その後の指針の素案に反映していくと考えております。
 以上です。
 
 
 
【内田会長】  ありがとうございます。
 今のお答えで、中田委員、いかがでしょうか。
 
 
 
【中田委員】  ありがとうございました。今の御説明で大体分かったのですが、ただ、避難指示が出されていたというと、少し広がってしまう、第2期以降まで入ってしまうようなニュアンスもという理解もあり得ると思いましたので、ここはもう少し何か考えられるのではないかと思いました。
 それから、過酷避難状況の定義との関係で、「着の身着のまま」でというところとの関係ではよく分かるのですが、「放射線に関する情報が不足する中での」という、そことの結びつきももし示せれば、より分かりやすいと思いました。
 
 
 
【内田会長】  ありがとうございます。
 中田委員の御指摘の箇所については、文章の書き方について改めて検討してもらおうと思います。御指摘は、なるほど、もっともだと思いました。
 あと、過酷避難状況による慰謝料というのは、もともとはやはり通常の避難では起きないような、「着の身着のまま」という表現をされていますが、通常避難するという場合に想定していないような非常に過酷な状況がこの場合には起きていたということをもって慰謝料の理由にしようということですので、基本的には避難の当初の損害、当初に発生している損害のことなんだろうと思います。しかし、当初だけとか、あるいは1か月だけ、2か月だけと区切ろうとすると、人によってはもう少しそれが続いている人もいる。度合いは少し低いかもしれないけど、もう少し長い人もいるということで、期間を明示することなく、相当期間という形で、トータルで最も共通している額はこのぐらいであろうということを示そうという提案になったものだと思います。
 ですから、避難が続いている間の損害については、日常生活阻害慰謝料で既にカバーされていますので、それでカバーされない過酷な状況が相当期間、存在していた。それをカバーしようというのがこの趣旨であろうと思いますが、それが文章でうまく表現できるように工夫してもらいたいと思います。どうもありがとうございました。
 ほかに御発言ございますでしょうか。江口委員、お願いします。
 
 
 
【江口委員】  先ほどもありましたとおり、金額の話は、今日はやらないということで、具体的な金額のことを言いたいわけではないんですが、「加算要素」という表現と、表現だけかもしれませんが、2の(2)の下から2行目の「○○万円を目安として」というのが何かしっくりこなくて。というのは、一番、基本的な最初の中間指針で、日常生活阻害慰謝料については月10万円だと定めた上で、でも、避難所等においては、こうこう、こういうことがあるんだから、それを加算要素として、避難所等において避難生活していた期間についてのみ、月額12万円を目安とすることが考えられる。これは中間指針の一番最初のところ出てくるんですよね。
 そうすると、それとの並びで、こういうことも考えたけども、足りないから、ここの部分について加算要素としてということになると、それも加わって、ここを加算要素としたところについては、月額、例えば幾らにするという流れになっていくのかなと思っていたんですが、そのこと自体も、今というか、今日議論することではなくて、金額をどう考えるかについての基礎についてもまた次回ということであれば、それはもちろん結構なんですけれども、その中間指針の前の加算要素の書き方と、ここでの「○○万円」という金額が載っていたことにちょっと違和感を感じたものでして。
 
 
 
【内田会長】  ありがとうございました。これは非常に重要な点ですので、事務局から何かありますでしょうか。
 
 
 
【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  江口先生の御指摘、確かにごもっともなところはあるのですが、会長からも冒頭に少し論点の示唆があったとおりで、人によって出されている過酷避難の状況が認められる期間というのが様々な中で、平均して出すというときに、この第1期の期間に幾らという形にならざるを得ませんでした。そのため、月額でこれまでは幾ら加算となっていましたが、今回、ここの部分に関しては、月額ではなくて、第1期に幾ら加算と。避難指示の出された期間に応じてといったときに、ここで、月なり、半年に対して幾らの期間かというので、少し何分の、6分の何か月みたいなのを掛けて算定するというのはあり得ると思います。
 いずれにしろ、審査会での御議論を踏まえて、目安の示し方については御議論いただければと思います。
 
 
 
【内田会長】  第1期というと6か月ということですが、そうすると、この「○○万円」を6で割って、月幾らと書けばいいではないかというのが一つの考え方ですが、そうすると「過酷避難」という言葉で示される状況からすると、本当に6か月、みんな続いたのかという疑義が出てきかねなくて、人によってはもう少し短いのではないかという疑問も出てきてしまう。しかし、短い方は、非常に過酷な状況が当初、一、二か月続いていたということもありますので、そうすると何か月ということで統一することがどうも難しいというので、第1期の中で相当期間、トータルで幾らなのかを算定する、そういう形になったのであろうと思います。
 江口委員のおっしゃる違和感は、中間指針のこれまでの定め方からすると全くもっともなんですけれども、よろしいでしょうか。
 
 
 
【江口委員】  はい。分かりました。
 
 
 
【内田会長】  ほかに御発言ありますでしょうか。
 富田委員、お願いします。
 
 
 
【富田委員】  念のための確認ですが、避難区域のマル1の福島第一原発から半径20キロ圏内は、6か月を超える長い期間避難していますから、マル1の期間については、第1期の期間において同額の加算をするということですね。マル2の福島第二原発については、避難指示自体が6か月以内に解除された部分があるので、この点については同額にはならないという趣旨で避難指示が出された期間に応じてということで、こういう書き方になっているという理解でよろしいでしょうか。
 
 
 
【内田会長】 それでは、事務局からお願いします。
 
 
 
【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  富田委員の御指摘のとおりの認識であります。
 
 
 
【内田会長】  はい。ほかに御発言ありますでしょうか。古笛委員、お願いします。
 
 
 
【古笛委員】  今日、議論の対象となっている点については、私もこの方向でとは思っています。ただ、実務家から言うと、本当に法律の世界でもよく相当性という言葉を使うんですけれども、相当は何かと言われるときに、その判断というのが人によって変わるし、それから、過酷ではないだろうと思われても、主観的には過酷だという被災者の方がたくさんいらっしゃると思うので、いずれにしても、この方向について、裁判例を分析した結果、過酷ということがこのように考えられているのでと。今回はこういったことについて過酷避難状況と踏まえた上で、相当期間の相当というのもなかなか難しいところではあるのですけれども、できるだけ本当に分かりやすく、誰の目から見ても納得できるような形で文章的にもまとめていただく必要があるのかなとは思っております。
 
 
 
【内田会長】  ありがとうございます。ただいまの点は、書き方の点で非常に重要な御指摘だと思いますので、その点、工夫をしていきたいと思います。
 ほかに御発言ございますか。鹿野委員、お願いします。
 
 
 
【鹿野委員】  ありがとうございます。私も、もう既に委員の方々が御指摘になったように、2の最後の(2)がどういうことを意味しているのかということが、資料をいただいて読んだ限りにおいては、分かりにくいと感じました。しかし、先ほどから、中田委員をはじめとする委員からの御質問に対して事務局からお答えがあった中で、そういうことなのかと理解しましたし、その内容については、額についてはまた今後ということではありますけれども、それ以外の考え方については異論はございません。
 ただ、これも御指摘いただいたように、最終的に書くときには、より分かりやすい記載が必要だと思います。指針では、分かりやすさということが非常に重要だと思いますので、その点に御配慮いただければと思います。
 それからもう一つ、これは内田会長から先ほど、従来の考え方を変えるものではないということで御確認があったところについてです。個人によって状況に差はあり得るわけですが、ここで示すのは基本的に最大公約数といったものであるということ、したがって、相当期間とか、あるいは今後の議論では何万円というような具体的な数値まで示すとしても、個別事情によってそれを超えるということは当然あり得るのだと思います。そこで、個別事情によるさらなる請求が立つことがあり得るのだということは、先ほど、御確認があったところですけれども、改めて強調しておきたいと思います。
 以上です。
 
 
 
【内田会長】  どうもありがとうございます。
 ほかに御発言ありますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、以上のような方向で、具体的な金額を今後詰めていくという段階に入りたいと思います。
 それでは、続いて2番目ですが、生活基盤(故郷)喪失・変容による精神的損害についてでございます。
 まずは、事務局から類型化に当たっての考え方についての具体的な論点について、御説明をお願いいたします。
 
 
 
【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  次に、資料2-2-1及び資料2-2-2について御説明します。
 まず、11月10日には故郷の変容について中間指針には示されていないため、喪失と同様に独立の損害項目で類型化をすると。具体的な慰謝料額は、各判決との比較で適正な金額を算定するため、判決の認容額から日常生活阻害慰謝料等を控除した残額を参考に検討するということが確認されたと理解しております。
 今回、お諮りする内容ですが、まず、1ポツについて、これは故郷と生活基盤、あるいは喪失と変容についての考え方を整理しております。
 生活基盤とは、被害者にとっての本件事故前の生活の基盤を指すものであり、人的関係や自然環境なども包摂する経済的・社会的・地域文化的・自然的環境全般を意味し、ハード面のインフラに尽きるものではない。各判決が言う、いわゆる故郷は生活基盤と同様であるか、あるいは生活基盤を被害者の側から捉え直したものであると考えられます。
 その上で、損害の類型的把握の観点からは、生活基盤の毀損についての賠償内容を定めることで足りると考えますと、変容は生活基盤がかなりの程度、毀損されたこと、喪失は生活基盤が著しく毀損されたことを意味すると考えられます。
 こうしたことを踏まえまして、第五次追補においては、生活基盤の喪失による精神的損害とは、生活基盤が本件事故前の状況から著しく毀損されたことにより、被害者に生ずる精神的損害を意味し、生活基盤の変容による精神的損害とは、生活基盤が本件事故前の状況からかなりの程度、毀損されたことにより、被害者に生ずる精神的損害を意味すると考えて良いかと。
 次に、2ポツですが、まず、帰還困難区域について、各判決との比較で適正な金額を算定するに当たり、いろいろな留意点を整理しております。
 まず、日常生活阻害慰謝料の算定期間、(1)ですが、第四次追補は、実質的に平成29年6月までの75か月間にしております。各判決に共通する、平成30年3月までの85か月間とは異なっております。各判決との比較で適正な金額を算定するに当たり、算定期間を各判決と同様に、平成30年3月までの85か月間を目安として良いかと。あわせて、避難費用の賠償期間についても、平成30年3月までを目安とすることで良いかということです。
 (2)ですが、第四次追補は第3期の精神的損害として1,000万円を加算し、長年、住み慣れた住居及び地域が、見通しのつかない長期間にわたって帰還不能となり、そこでの生活の断念を余儀なくされたことによる精神的苦痛等を一括賠償することとされていますが、これは帰還困難区域等における生活基盤喪失による精神的損害を賠償する性質のものであると解されることから、これを生活基盤喪失による精神的損害として良いかと。
 (3)ですが、第四次追補で一括して加算した1,000万円は、形式的には平成26年3月時点の精神的損害として、その時点以降、将来生ずる損害を含めた金額とされていますが、第二次追補による一括賠償額、600万円を月額換算した場合の将来分の300万円、これは生活費増加分を除いておりますが、これを控除することにより、実質的には700万円とするものであります。
 (4)の前段になりますが、生活基盤喪失による精神的損害の目安額、700万円については、第四次追補の内容を変更する必要性を裏づける事情は見いだされないのではないかと。(4)の後段になりますが、その場合、各判決の認容額と比較検討する際は、日常生活阻害慰謝料850万円、故郷喪失700万円、そして過酷避難状況の加算、これをアルファ万円としますと、1,550万円プラス、アルファ万円の妥当性を検討するということで良いかということです。
 次に、3ポツの居住制限区域、避難指示解除準備区域ですが、これについても新たに類型化する際に、判決との比較で適正な金額を算定するに当たっての留意点等を整理しております。
 まず、(1)の日常生活阻害慰謝料の算定期間ですが、これまでの月額の日常生活阻害慰謝料について、終期は第四次追補において、避難指示等の解除等から相当期間経過後、この相当期間は1年間とされておりますが、各判決の共通の平成30年3月までの85か月間として良いかと。併せて、避難費用についても、同様に平成30年3月までの85か月間として良いか。
 次、(2)、これは生活基盤変容の状況ですが、長期間に及ぶ避難指示により、本件事故前に当該地域に存在した生活基盤が大きく変容しており、一定の復興を遂げている地域がある一方で、帰還を断念し、本拠を別の地に移した者や、いまだに帰還の決断ができない者も相当数存在したことも認められ、変容した生活基盤が事故前の状況に戻る見通しは立っておらず、このような変容した生活基盤を受け容れざるを得ない状況にあることが認められると。
 (3)になりますが、このような状況において、帰還をした者、帰還を断念した者、帰還、移住の決断をできない者のいずれにおいても、生活基盤変容による精神的損害が認められるとして良いかと。
 (4)、ここは目安額のところになりますが、冒頭の1ポツで述べましたとおり、変容にあっては、従前の生活基盤がかなりの程度、毀損されたのに対して、喪失にあっては、従前の生活基盤が著しく毀損されたものであることから、損害の程度には、なお大きな差があると認めるのが合理的であると考えられます。したがって、目安額の算定に当たっては、生活基盤変容による精神的損害の程度は、生活基盤喪失による精神的損害に比べれば小さいと言えること等を考慮して、帰還困難区域の生活基盤喪失による精神的損害の目安額700万円の半分を大きく下回る額を目安額とすることでよいかということです。
 (5)になりますが、居住制限区域と避難指示解除準備区域に差を設けるか否かという点になりますが、まず、①にありますように、両区域を持つ多くの市町村においても、両区域の避難指示は同時に解除されていること。②として、居住制限区域であるか、避難指示解除準備区域であるかによって、一義的に避難指示期間の長短が決まる関係にはないこと。さらに、ある自治体の居住制限指示解除後に、他の自治体の避難指示解除準備区域の避難指示が解除されているという逆転している場合もあります。こういったことを考慮しますと、両区域間で差を設けるのは相当でないと考えて良いかと。
 次に、4ポツ、緊急時避難準備区域についてであります。まず、緊急時避難準備区域の状況ですが、本件事故から約6か月後に全て解除され、避難を実施せずに滞在を続けた居住者も多いことから、一定の地域社会が残っていたと考えられるものの、先ほどの被災者生活支援チームから説明もありましたとおり、解除後も生活基盤の回復に一定程度の時間を要し、多数の住民の帰還が相当程度の期間できなかったことも認められております。
 (2)ですが、そのため、生活基盤が、一定程度変容したものとみなし、居住制限区域及び避難指示解除準備区域に準じて、生活基盤変容による精神的損害を合理的な範囲において賠償すべきものと認めることで良いかと。
 (3)ですが、居住制限区域及び避難指示解除準備区域と異なり、一定の地域社会が残っており、生活基盤の変容の程度が異なることを考慮し、居住制限区域及び避難指示解除準備区域の生活基盤変容による精神的損害の目安額を大きく下回る額を目安額とすることでよいかと。
 (4)、終期に関してですが、生活基盤変容による精神的損害として、一括の賠償を行うに際し、それまでの月額の日常生活阻害慰謝料については、中間指針第二次追補で、第3期の相当期間は平成24年8月末まで、楢葉町については、同町の区域のほとんどが避難指示区域であることを考慮し、同町の避難指示区域についての解除後、相当期間が経過した時点まで、相当期間は第四次追補について、1年間とされております。このうち、楢葉町につきましては、上記の3ポツのとおり、同町の居住制限区域及び避難指示解除準備区域における月額の日常生活阻害慰謝料は、平成30年3月までの85か月間とされておりますところ、当町の緊急時避難準備区域についても同様に、避難費用も合わせて、平成30年3月までの85か月間として良いかということです。
 次、5ポツですが、これは特定避難勧奨地点についてであります。緊急時避難準備区域に包含されている地域は生活基盤変容が認められますが、それ以外の地点については、地域的な広がりがなく、生活基盤変容が認められないことから、第二次追補において、避難費用及び精神的損害が賠償の対象となる相当期間として定められている避難指示解除から3か月間の目安を維持することで良いかということです。
 次に、6ポツですが、住居確保に係る損害の賠償を受ける者の避難費用です。第四次追補の備考におきまして、住居確保損害の賠償を受ける者の避難費用が、賠償の対象となる合理的な時期は、例えば、帰還困難区域等に住居があった避難者については、事故後6年後までを目安とすることが考えられると規定されております。
 しかしながら、その後の復興公営住宅の整備状況を見ますと、必ずしも事故後、6年後までに整備できたとは言い難く、むしろ、おおむね各地区において、復興公営住宅に入居可能な状況が整ったのは平成30年3月頃であること。住居確保に係る損害の賠償を受ける者以外の者の避難費用については、避難指示区域は一律に賠償の対象となる期間の目安を、平成30年3月末までとするのであれば、住居確保に係る損害の賠償を受ける者の避難費用につきましても、平成30年3月末を目安とするのが合理的ではないかと。
 最後に7ポツですが、指針の構成につきまして、第四次追補の第2の位置を、この論点を踏まえて変更すると、かなり大幅な修正になります。変更点を簡明にするために、第四次追補の第2の1、避難費用及び精神的損害を全面改訂するということで良いかということであります。
 資料2-2-2は、今回の高裁判決の慰謝料を整理したものを掲載しております。
 以上です。
 
 
 
【内田会長】  どうもありがとうございます。
 それでは、具体的な論点について、一つ一つ御議論いただきたいと思いますが、なかなか多様な、たくさんの論点が含まれておりまして、まず、最初に、1の「ふるさと」、ないし「故郷」と「生活基盤」等についてでございますが、ここでは、2つの点を議論いただく必要があるかと思います。
 まず、第1は、生活基盤と故郷との関係ですけれども、生活基盤というのは、人的環境や自然環境なども包摂する経済的・社会的・文化的、あるいは自然環境全般を意味し、ハード面のインフラに尽きるものではないと考えると。そして、各判決の中に、「ふるさと」、ないし「故郷」という言葉を使ったものが3件あります。仙台高裁が2つと高松高裁です。そこでいう故郷というのは、生活基盤と同義であって、被害者の側から捉え直したものと考えて良いか。これが1の(1)でございます。
 そして、次は1の(2)と(3)ですが、もし、1の(1)について、よいということになると、いちいち故郷と生活基盤両方使う必要がなくなるので、とりあえずは生活基盤という言葉で御説明をいたしますが、2番目の論点として、変容と喪失の関係について、生活基盤の毀損の程度を意味するものとして、第五次追補では、生活基盤の喪失による精神的損害というのは、生活基盤が、本件事故前の状況から著しく毀損されたことにより被害者に生ずる精神的損害を意味すると。また、生活基盤の変容による精神的損害というのは、生活基盤が本件事故前の状況から、かなりの程度、毀損されたことにより、被害者に生ずる精神的損害を意味するということとして良いかという論点です。
 「著しく」と「かなりの程度」というのは、なかなか微妙な表現ですけれども、「著しく」のほうは、要するに、もう元に戻れない状況のことを意味しているのだろうと思います。「かなりの程度」というのは、戻ったのはいいけれども、病院もない、売店もないと、そういう状態で暮らさなきゃいけないと、そういうことによる精神的苦痛であろうと、典型的に言えば、そういうことかと思いますが、以上の2点につきまして、御意見をいただければと思います。
 どうぞ、どこからでも結構です。どうぞ、よろしくお願いいたします。中田委員、お願いいたします。
 
 
 
【中田委員】  前回、生活基盤と故郷の関係、そして、喪失と変容の関係について整理が必要だということを申し上げたんですけれども、今回、それが分かりやすく整理されていて感謝しております。ありがとうございました。
 故郷も生活基盤も、全体を客観的に見るという視点と、個々の被害者のほうから見るという視点と両方あると思うんですけれども、今回の資料は、生活基盤について、1の(1)にありますけれども、「損害の類型化の観点から被害者に共通するものを観念したもの」だと、こういうふうに位置づけられていて、言わば2つの視点を融合したようなものなのかなと理解いたしました。指針としては、こういう方向になるんだろうと思います。
 その上で、細かいことを二、三、申し上げたいんですけれども、第1点はワーディングのことなんですが、「ハード面のインフラに尽きるものではない」ということについて、先ほどの御説明、あるいは内田会長のお話でも、1の(1)の2行目の後に続く、注釈のようにお使いになったと思うんですが、そのほうがいいと思います。この文章よりも、分かりやすいと思いました。
 それから、第2点ですが、1の(1)の4行目に「文化的営み」という言葉が出てきますけれども、どうして文化的営みに限るのかということがよく分かりませんでした。つまり、その前のところでは、経済的、社会的、文化的と並ぶわけですが、なぜ経済的、社会的を外したのかということです。特に個別事情によっては、この基準を超える損害もあり得るということを示す上では、あえて除外する必要はないのではないかと感じました。
 第3点は、内田会長がおっしゃいましたとおり、生活基盤と故郷との関係について、同じだとすると、あえて入れる必要もないから生活基盤という言葉をとおっしゃったんですが、2ポツ以下では、「生活基盤(故郷)」という表現がかなり出てきます。そうでないのもありますけれども。その結果、かえって曖昧になっているのではないかなと感じましたので、そこの整理も必要かと思いました。
 
 
 
【内田会長】  ありがとうございます。ここの点は、中田委員からこれまでも何度か御指摘のあった点で、中田委員から合格点が出るかどうかというのを非常に気にして、事務局は資料をつくっていた点ですが、おおむね、よい評価をいただいたのではないかと思います。ただ、幾つか文章の修正について御提案いただきましたので、この点は御検討いただければと思います。
 それから、後のほうの資料で、「生活基盤(故郷)」となっているのは、1の(1)で、冒頭のところの論点で、これは同じ意味であるという合意が得られないと、後のところで故郷という言葉を外せないものですから、一応こういう形で書いておりますけれども、同じ意味であるということで、委員の間で共通の理解が得られるのであれば、生活基盤で統一するということは十分考えられるかと思います。どうもありがとうございました。
 ほかに御発言ありますでしょうか。富田委員、お願いします。
 
 
 
【富田委員】  この1ポツの点については、基本的な内容は了解できるんですが、2ポツ、3ポツの各区域ごとの議論の中で、帰還困難区域は、生活基盤喪失による精神的損害とポンと出ています。3の居住制限区域及び避難指示解除準備区域は生活基盤変容による精神的損害と出ていますが、1と2,3との間の関係について、やはり一言説明が必要ではないでしょうか。この点について、1ポツのところで、帰還困難区域についてはこうだから生活基盤喪失に分類される、その他の地域はこうだから生活基盤変容に分類されるといった説明があるといいと思います。今の書き方ですと、2ポツ以下は、もう金額の議論に入っているので、2,3,の冒頭に入れるより、1.のところで入れたほうがいいかもしれません。いずれにしろ、そこは説明が抜けているのではないかなと思いますので、2,3の個別のところで入れるか、1の総論のところで入れるか、御検討いただければと思います。
 
 
 
【内田会長】  ありがとうございます。なるほど、ごもっともな御指摘ですので、1に入れるのがいいですかね。そういう方向で御検討いただければと思います。
 ほかに御発言ありますでしょうか。今のところはよろしいでしょうか。樫見委員、お願いします。
 
 
 
【樫見会長代理】  2点ありまして、生活基盤の喪失というと、感覚的には、どちらかというと、社会的インフラ的なところがイメージされるような感じがしますので、私の個人的見解としては、喪失の場合には、どちらかというと、故郷、生活基盤の喪失というほうが、被災者の方にとっては分かりやすいかな。
 それから、変容の場合なのですが、2点目ですが、これにつきましては、賠償額のところで、半額より大きく下回るという、24ページの(5)のすぐ辺りです。「精神的損害の目安額700万円の半分を大きく下回る額を目安額」と書いてあるのですが、先ほど内閣府のところで、交通網が断絶をされまして、ここのところは、例えば病院の開業の状況、従前とは全く違っていますし、交通インフラがずたずたの状況ですと、今まで生活物資、あるいは医療、様々な生活基盤においては大きく変更を迫られているわけで、ここのところの半分を下回るというところについては、私はさらに検討が必要ではないかと考えております。
 以上でございます。
 
 
 
【内田会長】  ありがとうございます。後半でおっしゃった部分は、この後の議論のテーマかと思いますので、そこでのそのような御発言として受け止めさせていただきます。
 それから、前半については、喪失については、生活基盤に加えて故郷という言葉を加えてはどうかという御提言ですけれども、この点については、ほかにどなたか御発言ありますでしょうか。古笛委員、お願いします。
 
 
 
【古笛委員】  生活基盤と故郷という言葉の問題なんですけれども、確かに被災者の方の思いがこもった故郷という言葉は大きくは社会的にも取り上げられるとおり、思いに沿った言葉なんだとは思うんですけれども、これまでの裁判例を踏まえたときに、統一的に使われていると、必ずしもそういうものでもないし、喪失だけ故郷で、じゃあ、変容は故郷を使わないのかということも踏まえると、ここでは指針の問題ということで、生活基盤ということで統一してもいいのかなとは拝見しておりました。
 
 
 
【内田会長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。中田委員、お願いします。
 
 
 
【中田委員】  私も統一していいんじゃないかと思います。と申しますのは、どちらかというと、インフラのほうに議論が今、集まっているような感じがするんですが、人的なつながりといいますか、そこも非常に大きな要素だと思うんです。そうしますと、ほとんどの方がなかなか避難先から帰還できないという地域と、ある程度の方は戻れるという地域とでは、その点に違いがあるけれども、しかし、連続して捉えることができると。そうすると、インフラだけではなくて、人的関係や自然環境なども包摂するという意味で、両者共通の概念を使ったほうが、むしろ分かりやすいかなと感じました。
 
 
 
【内田会長】  ありがとうございます。樫見委員、いかがでしょうか。
 
 
 
【樫見会長代理】  全く皆さんの御意見で結構でございます。
 
 
 
【内田会長】  ありがとうございます。それでは、生活基盤という言葉で統一してということで進めたいと思います。
 ほかには特にありませんでしょうか。ありがとうございます。
 それでは、続いて、次の2の帰還困難区域のところに入りたいと思います。ここにつきましては、4つほど議論をすべき論点があったと思います。まず、2の(1)で書かれていることですが、帰還困難区域の場合、月額の日常生活阻害慰謝料の賠償対象期間について、第四次追補では、実質的に平成29年6月までの75か月となっている。これに対して、各判決に共通するのが平成30年3月までの85か月であって異なっているということが指摘され、各判決に鑑みて、平成30年3月末までの85か月を目安とすることで良いか。そして、避難費用についても同様の考え方で良いかというのが第1の論点です。
 それから、第2は、2の(2)で書かれていることですが、第四次追補は、長年住み慣れた住居及び地域が見通しのつかない長期間にわたって帰還不能となり、そこでの生活の断念を余儀なくされたことによる精神的苦痛等というのを一括賠償するということとしたわけですが、これが生活基盤喪失による精神的損害と捉えて良いかということです。いわゆる故郷喪失ということですが、生活基盤喪失による精神的損害と捉えて良いかということ。
 それから、第3番目は、2の(3)と、それから(4)の前段に書かれていることですが、第四次追補における実質的な生活基盤喪失による精神的損害の目安額、これは700万円ですが、700万円という額について、各判決の認容額に照らすと変更する必要性を裏づける事情は見いだせないということで良いかということです。判決によってはこれより多い額もあるわけですが、トータルの賠償額をにらみながら見たときに、これを変更する必要性というのが見いだせないということで良いかということです。
 4番目は、2の(4)の後段ですが、日常生活阻害慰謝料の目安額、これは85か月で850万円になりますが、これと生活基盤喪失による精神的損害の目安額700万、これを足して1,550万円。これに先ほどの過酷避難状況による精神的損害の金額、アルファ万円と表示されていますが、これを合計した金額を各判決の各認容額に照らして妥当性を検討するということで良いかということです。
 以上の論点につきまして、御意見をいただければと思います。いかがでしょうか。
 ここでは、過酷避難状況の慰謝料額は、まだアルファということで決まっておりませんが、ただ、日常生活阻害慰謝料プラス生活基盤喪失による慰謝料の目安額でもって大体総額が出ますので、これ、1,550プラスアルファということで各判決と対比していくということは、かなり重要な指針の決定につながるかと思いますが、特に御意見はありませんでしょうか。おおむね異論がないと‥‥、大塚専門委員、お願いします。
 
 
 
【大塚専門委員】  一言だけ申し上げます。最初に帰還困難区域の一括賠償に関して決めさせていただいたときに、(2)のところですけども、ここにまさに書いてあるとおり、当時は故郷喪失損害のつもりだったんですけども、故郷喪失損害という言葉は使わないほうがいいのではないかという議論があったので一括賠償ということにしておりますので、もともと第四次追補をつくったときの趣旨は、生活基盤というか、故郷喪失による精神的損害というつもりで、この1,000万、あるいは700万を、実質的には700万ですけども、決めましたので、その点は申し上げておきたいと思います。ありがとうございます。
 
 
 
【内田会長】  ありがとうございました。できれば大塚専門委員から、その発言をいただければと思っておりましたが、中間指針、そして第四次追補を策定された当事者である大塚専門委員から、当時の事情について御説明をいただきました。これはまさにこの趣旨でつくったということでございます。
 それでは、大体おおむね御異論はないということで、今のところは……、富田委員、お願いします。
 
 
 
【富田委員】  すいません。私の理解が十分でないんですが、ここの点で、85か月にするということについて、第四次追補では、時期が30年3月まではなく、85か月ではなかったのですが、帰還困難区域の方に対する賠償として、85か月間はもう賠償されているという前提になるという点は、どう理解したらよろしいんですか。
 
 
 
【内田会長】  これは事務局のほうからお願いします。
 
 
 
【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  ここ、実際の状況は、東京電力が被災者に幾ら払ったかということになりますが、我々が把握している東電の賠償基準によりますと、実質的には、85か月間というふうになっていると承知しております。
 
 
 
【富田委員】  そうですか。いや、第四次追補のときは、そういう前提ではなかったんじゃないかとも思ったものですから。
【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  東京電力は逆に、今回、実質的に700万としているのを、実は600万という形で賠償しておりまして、その点で、実際、全体額を、今、東電の基準を合計しますと1,450万になります。なので、700万と実質ここでみなしているものを東京電力は600万で賠償しているので、そこの部分が今、100万円少ない形にはなっています。なので、今回、この考え方を整理すると、1,550万までです。当然、賠償基準よりは、まず、ベースとしては100万上がり、そして過酷避難状況のアルファ万円を足すということで、実質100プラスアルファが帰還困難区域については増額されるという考え方になります。
 
 
 
【富田委員】  要するに、85か月間賠償されるべきだということが、従来の中間指針には出ていないのではないかということが気になったので、今回、その点も、むしろ中間指針として明言しておく必要はないか。その辺りの調整もお願いできたらと思います。
 
 
 
【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  おっしゃるとおりの考え方で、今の中間指針だと、10か月間足りないという構造になって、東電は逆にそこは払っているんですけど、生活基盤喪失のほうが少ないと、そういう考え方になっています。
 
 
 
【内田会長】  第四次追補の内容を実態に合わせた上で、生活基盤喪失についての金額を、もともとの指針の額をきちんと明示をして定めるということですかね。よろしいでしょうか。
 ほかに、特に御発言ありませんでしょうか。ありがとうございます。それでは、ここはそのように進めていきたいと思います。
 では、続いて、3の居住制限区域及び避難指示解除準備区域についてでございます。ここにつきましても、4つほど議論すべき論点があったかと思います。
 まず、第1が、3の(1)に書かれている点ですが、月額の日常生活阻害慰謝料について、終期は、第四次追補において、避難指示等の解除等から相当期間経過後とされている。指針ではそうなっていて、第四次追補で、この相当期間については1年間を当面の目安とするとされたかと思いますが、この点について、各判決に鑑みて帰還困難区域と同様に、賠償対象期間については、平成30年3月末までの85か月を目安とすると明記をするということでよいというのが第1の論点です。
 それから、第2に、この区域の人々は、長年住み慣れた住居及び地域への帰還の見通しが立つまでに相当程度の期間を要し、それまでの間に、そこでの生活の断念を余儀なくされた。あるいはまた、帰還したとしても、避難を実施する前とは変容した生活を受け容れざるを得ない状態になった。そのことの精神的苦痛等を生活基盤変容による精神的損害として良いか。ここは先ほど富田委員からも御指摘ありましたが、そういう位置づけで、生活基盤変容を適用するということで良いかという点でございます。3の(2)と(3)に書かれている点かと思います。
 それから、3番目に、生活基盤変容による精神的損害の程度についてですが、帰還困難区域の生活基盤喪失による精神的損害の目安額700万円の半分を大きく下回る額を目安とすることで良いか。また、大きく下回る額とは具体的にどの程度と考えるべきかというのが、3の(4)です。金額そのものは、今日決定する必要はないのですけれども、大体の感触をもし議論できればと思います。この点は、先ほど樫見委員から御発言もあった点です。
 それから4番目に、居住制限区域と避難指示解除準備区域の間で差を設けるのは相当でないと考えて良いか、これは3の(5)に書かれていることです。
 以上の点につきまして、御意見をいただければと思います。御自由にお願いいたします。江口委員、お願いします。
 
 
 
【江口委員】  額のことにも関わるのかもしれませんけれども、先ほど帰還困難区域のところでは、いわゆる(4)、各判決の認容額と照らしてどうなのかというので、最終的な総額としての妥当性を検討するということが出てきたんですが、居住制限区域とか避難指示解除準備区域については、帰還困難区域における(4)のような検討はしなくていいのでしょうか。
 
 
 
【内田会長】  (4)というのは……。
 
 
 
【江口委員】  すいません、帰還困難区域の。
 
 
 
【内田会長】  2の(4)ですね。
 
 
 
【江口委員】  はい。2の(4)のところで、最終的にトータルとしての額について、各判決の認容額に照らして、帰還困難区域等における精神的損害の賠償額としての妥当性を検討するというのが出てくるんですけれども、居住制限区域、避難指示解除準備区域では、そういう最終的なトータルの額について、各判決の認容額と照らして、何か妥当性を検討するというのは出てこないんですけれども、それは必要ないんでしょうか。
 
 
 
【内田会長】  その点について、事務局からお願いします。
 
 
 
【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  まず、帰還困難区域について、第四次追補で既に同様の考え方が示されていて、金額も実質700万円となっていることから、各判決と照らし合わせることも重要かと思って明記しております。だんだんそこを基準として、毀損の程度で居住制限区域、あるいは避難指示解除準備区域についても金額を定めていくということで、一義的には書いてはいなかったんですが、実際のところは、各判決の総額も見ながら検討する必要があるかと思いますので、御指摘の点は事務局のほうでも検討したいと思います。
 
 
 
【内田会長】  表現をそろえるという点でも、その点を書き込んでおくというのはいいかと思います。実質的には、そのことは当然行われることだと思います。ありがとうございました。
 ほかに御発言いかがでしょうか。古笛委員、お願いします。
 
 
 
【古笛委員】  今の点にも関連するんですけれども、先ほど樫見委員からもお話があったとおり、700万円の半分を大きく下回る額を目安としていいかと、いきなりここだけぽんと出てくると、インパクトが強すぎるので、裁判例を踏まえたときに、どういったものが出てきているので、結果として、こういう数字になるんだということを分かりやすく書くほうがよろしいのかなと思いました。
 
 
 
【内田会長】  今の御発言に対しては、事務局のほうから。
 
 
 
【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  そうですね。そういう御指摘の点も踏まえて、記載ぶりを検討したいと思います。
 
 
 
【内田会長】  実質はそのとおりだと思いますので、確かに、大きく下回るというと、なぜ減らすんだという疑念だけが生じてしまいますので、判決をにらみながら、バランスの取れた金額を算定すると、半分を大きく下回る程度の額になると思われるが、それでいいかということですね。
 ほかに、富田委員、お願いします。
 
 
 
【富田委員】  細かい点ですが、3の(1)の点なんですけれども、避難指示が解除された時期については、飯舘村以下は平成29年3月以降ですから、これで特段問題はないかと思うんですが、南相馬は28年7月、葛尾村は28年6月となっていて、1年たっても30年3月まで到達しないんですが、もうそれも含めて、一律に30年3月までの目安としようという点については、従来の解除から1年という話とずれる部分もあると思うので、その点の説明はどうなりますでしょうか。
 
 
 
【内田会長】  事務局からお願いします。
 
 
 
【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  御指摘のとおり、指針の考え方としては、帰還の時期で賠償額に差が出るというのは、公平性の観点から問題だというシステムになっておりますので、当然、帰還の時期問わず一律という考え方になりますが、第五次追補で、その辺、疑念のないような記載は、きちんと書くように検討したいと思います。
 
 
 
【内田会長】  今の回答でよろしいでしょうか。
 
 
 
【富田委員】  統一すること自体はよろしいのですが、前に書いていた点とのつながりは、そこはそうあるけれども、今回はこうするといったところは明示しておいたほうがいいのかもしれません。
 
 
 
【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  了解いたしました。
 
 
 
【内田会長】  判決に鑑みてということですかね。
 ほかに発言ありますでしょうか。特に御発言はありませんでしょうか。
 それでは、3の点についても、大体、以上のような方向で金額を詰めていくということでよろしいでしょうか。どうもありがとうございます。
 それでは、今度、4の緊急時避難準備区域についてでございます。ここについては、3つほど御議論いただく必要のある論点があるかと思います。
 まず、4の(1)と(2)に書かれていることですが、先ほどの原子力被災者生活支援チームからの説明も踏まえて考えますと、緊急時避難準備区域についても、生活基盤が一定程度変容したものとみなして、居住制限区域及び避難指示解除準備区域に準じて、生活基盤変容による精神的損害を合理的な範囲において認めるということで良いかというのが第1番目の論点です。
 それから、2つ目は、4の(3)に書かれていることですが、生活基盤変容による精神的損害の損害額については、居住制限区域及び避難指示解除準備区域の目安額を大きく下回る額を目安とすることで良いかどうか。これも先ほどと同じ表現の問題がありますけれども、方針として、こういう方針で良いかということです。
 それから、3番目に4の(4)に書かれている点ですが、緊急時避難準備区域の日常生活阻害慰謝料についての賠償対象期間について、楢葉町以外については、第二次追補で第3期の相当期間は、平成24年8月までを目安とするとされていたわけですが、これを維持する。これに対して、楢葉町については、同町の区域のほとんどが避難指示区域であることを考慮し、同町の居住制限区域及び避難指示解除準備区域と同様の平成30年3月までの85か月を目安とすることで良いか。細かな地区の問題になりますけれども、楢葉町についてのこういう例外的な扱いをするということで良いかという点、これが3つ目でございます。
 以上の点につきまして、自由に御発言をお願いいたします。
 緊急時避難準備区域についての基準の在り方ですが、特に御発言はありませんでしょうか。大体おおむね論点整理で書かれている方向で検討していくということで、御同意が得られたと理解してよろしいでしょうか。
 
(首肯する委員あり)
 
ありがとうございます。それでは、そういう方向で進めたいと思います。
 続いて、5の特定避難勧奨地点についてでございます。ここでは、5の(1)に書かれている論点ですが、特定避難勧奨地点について、緊急時避難準備区域に包含されている地域は生活基盤変容が認められるが、それ以外の地点については地域的な広がりがなく――これは、特定避難勧奨地点というのは住戸単位で指定されますので、地域的な広がりがなく、第二次追補の相当期間として定められている避難指示解除から3か月という目安を維持することで良いかというのが、ここでの論点でございます。
 この点については、いかがでしょうか。これも大体、この論点整理で書かれている方向で進めていくということでよろしいでしょうか。特に御異論はありませんでしょうか。
 
(首肯する委員あり)
 
ありがとうございます。
 それでは、次に、6の住居確保に係る損害の賠償を受ける者の避難費用についてでございます。ここは6の(1)に書かれている論点ですが、第四次追補における住居確保損害の賠償を受ける者の避難費用が賠償の対象となる合理的期間について、事故後、6年後までを目安とされていたということにつきまして、月額の日常生活阻害慰謝料の賠償対象期間と同様に、平成30年3月までを目安とすることで良いか。住居確保損害についても、日常生活阻害慰謝料の賠償対象期間とそろえて、平成30年3月までを目安とするということで良いかという論点でございますが、この点については、いかがでしょうか。
 これも大体同じような考え方で進めていくということで、特段、御異論ありませんでしょうか。
 
(首肯する委員あり)
 
ありがとうございます。
 それでは、最後の7、指針の構成ですが、7の(1)に書かれていることですけれども、第四次追補の第2の1という部分、これを今回、これまで御議論いただいたような方向で指針を見直すとなります、大幅に変更することになります。これを法令の改正のように、改め文で、ここをこう改めると書き出しますと、結局どうなったのかがよく分からないということになり、非常に分かりにくくなるものですから、第五次追補の中で、第四次追補の第2の1を全面的に改定する、置き換えてしまうということで良いかというのがここでの論点でございます。
 これは、そのほうが分かりやすいと思いますので、特段御異論はないかと思いますけれども、特に御意見ありますでしょうか。中田委員、お願いします。
 
 
 
【中田委員】  異論は全くないんですけれども、避難費用の点と精神的損害の点をまとめると、かえって分かりにくいのではないかという印象を受けました。もちろん第四次追補では、避難費用と精神的損害をまとめているわけなんですけれども、今回の追補の主な点は、やはり精神的損害という点にあると思いますので、そこを、現在の書き方でも混じってしまっていて分かりにくいので、何か切り分けられないだろうか。中身の問題じゃなくて、形式の問題なんですけども、少し御検討いただければと思いました。
 
 
 
【内田会長】  ありがとうございます。これは検討可能でしょうか、事務局のほうで。
 
 
 
【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  指針の具体的な構造も、いろいろ考え方が過去からあるので、中田委員の御指摘にどこまで応えられるのか、検討したいと思います。
 
 
 
【内田会長】  それまでの指針の書き方とのバランスを考えて、可能な範囲で中田委員の御趣旨、分かりやすさということだと思いますので、それが実現できるように、検討してもらおうと思います。それでよろしいでしょうか。
 
 
 
【中田委員】  はい、結構です。
 
 
 
【内田会長】  ありがとうございます。ほかに御発言ありますでしょうか。特によろしいでしょうか。どうもありがとうございます。
 それでは、以上で、2番目のかなり重要な点についての議論が終わりまして、続いて、3番目の相当線量地域健康不安に基礎を置く精神的損害についてでございます。まずは、事務局から類型化に当たっての考え方についての具体的な論点について、御説明をお願いいたします。
 
 
 
【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  資料2-3-1、及び資料2-3-2について、御説明します。
 11月10日には、計画的避難区域の居住者につきまして、後に政府による避難指示が発出される基準に該当する地域に一定期間滞在していた事実があり、安心できる生活空間を享受する利益が相当期間にわたって侵害されたことが認められ、その侵害から生ずる相当線量地域健康不安は法的保護に値すると。相当線量地域健康不安は、自主的避難等対象区域の滞在者が抱く不安を超えるものであり、指針で類型化するということが確認されたと理解しております。
 今回、お諮りする内容ですが、まず、1ポツ、対象区域・対象者ですが、(1)は類型化の考え方です。計画的避難区域において、一定期間滞在した者については、その滞在期間中、安心できる生活空間を享受する利益を侵害されたものと認められ、その侵害によって生ずる健康不安を基礎とする精神的損害は賠償すべき損害と認められるものと判断し、本件事故発生時に、計画的避難区域に住居があった者については、類型的に同区域内に滞在したと認めるのが相当であるとして良いかと。
 (2)ですが、これは避難実施時期を問わない考え方です。計画的避難区域の居住者の行動態様は様々であります。避難を開始した時期や滞在期間を特定した上で、それに対応する形で賠償の対応に差を設けることは、公平性や立証負担の観点から適切ではなく、避難の実施時期を問わず、同等に類型的取扱いをすることに合理性があるとして良いかということです。
 (3)ですが、なお、福島第一原子力発電所から半径20キロメートル圏内の区域は、避難指示の対象であり、一定期間、同区域に滞在することは想定されていないため、ここでの対象者からは除外されます。もっとも個別具体的な事情に基づいて、避難の過程で計画的避難区域に一定期間滞在したと認められる場合には、同様の精神的損害が認められ得るとして良いかと。
 (4)ですが、これは特定避難勧奨地点についてです。特定避難勧奨地点につきましては、相当量の線量が測定されたのが局所的な地点にとどまり、地域的な広がりまでは認められないことなどから避難指示の対象とされていないものの、生活の中心である住居単位で特定避難勧奨地点が設定されていることに照らしますと、安心できる生活空間を享受する利益を侵害されたものと認めるのが相当であるとして良いかということです。
 2ポツに行きまして、損害額の算定方法ですが、まず、終期ですが、相当線量地域健康不安は、その性質上、避難することにより直ちに解消されるものではなく、避難実行後も引き続き存在すると考えられます。この点に関しまして、福島県の調査においては、住民の行動記録を基にした外部被曝線量の推計値から放射線による健康影響があるとは考えにくいとされており、同調査の結果が平成23年12月に公表されたことにより、健康不安はある程度軽減されたものと考えられるものの、それまでの間は健康不安が軽減されることなく存続したと考えられることから、本件事故発生から平成23年12月までの期間を賠償期間とすることが相当であるとしてよいかと。
 (2)ですが、一方、本精神的損害の賠償の対象者は強制的避難者に該当し、別途賠償される日常生活阻害慰謝料には本損害は考慮されていないと解されることから、日常生活阻害慰謝料に吸収されることなく賠償されるべきであり、一方で、本精神的損害と日常生活阻害慰謝料の精神的損害が同時に生じているものと言えることから、日常生活阻害慰謝料に加算する形で賠償することが相当であるとしてよいかということです。
 (3)ですが、これは区域内に複数の避難指示区域が設定されていますが、計画的避難区域が帰還困難区域等に見直されるまでの間は、住居の所在地の積算線量を被害者自らが推し量る述べはなく、また、実際に区域が見直されたのは、早くても平成24年4月であることを考えますと、本件事故発生から平成23年12月までの期間において、利益侵害の程度は被害者に一様であったと観念することが合理的であり、住居の所在地を問わず同等に類型的取扱いをすることに合理性があるとしてよいかということです。
 (4)ですが、子供、妊婦とそれ以外の者で差を設けるべきかという点ですが、自主的避難等に係る損害において、子供及び妊婦、それら以外の者と別々に算定していることなどを考慮し、損害額の具体的な算定に当たっては、子供及び妊婦、それら以外の者と別々に算定する、あるいは一律に算定するのがどちらが合理的であるかということです。
 資料2-3-2は地裁判決の慰謝料について整理したものを掲載しております。
 以上です。
 
 
 
【内田会長】  ありがとうございます。
 それでは、具体的な論点について1つずつ御議論いただきたいと思います。この相当線量地域健康不安というのは、7つの確定判決に基づいてというよりは、ADRの事例などを踏まえて取り上げられた論点ですけれども、まず最初に、1の対象区域・対象者についてでございます。ここでは4つぐらい御議論いただくべき論点があるかと思います。
 まず、1の(1)に書かれていることですが、本件事故発生時に計画的避難区域に住居があった者について、類型的に一定期間滞在したと認めるのが相当であるとしてよいか。
 それから2番目に、1の(2)に書かれていることですが、計画的避難区域の居住者について、避難の実施時期を問わず同等に類型的取扱いをすることに合理性があるとしてよいか。いずれも指針として定型的な賠償をする際の考え方を問うものです。
 それから3番目に、1の(3)に書かれている点ですが、これは避難指示対象区域に住居がある者についても、個別具体的な事情に基づいて、避難の過程で計画的避難区域に一定期間滞在したと認められる場合には、同様に、相当線量地域健康不安に基礎を置く精神的損害が認められ得るとしてよいかというのが3番目です。
 そして4番目、(4)に書かれている点ですが、特定避難勧奨地点に住居があった者について、避難指示の対象とされていないものの、生活の中心である住居単位で特定避難勧奨地点が設定されていることに照らすと、安心できる生活空間を享受する利益を侵害されたものと認めるのが相当であるとしてよいかという点です。
 まず、以上の点について御意見をいただければと思います。いかがでしょうか。
 特に御意見はありませんでしょうか。これまでのADRで積み重ねられてきた判断基準を基に、新たにそれを指針に取り込むということで、今のこの点についてはよろしいでしょうか。
 
(首肯する委員あり)
 
 ありがとうございます。それでは、続いて、2の損害額の算定方法について入りたいと思います。
 ここでも4つぐらい御議論いただくべき論点があります。2の(1)に書かれている点ですが、まず、賠償対象期間については、本件事故発生から平成23年12月末までの期間を目安とすることでよいかという点。福島県県民健康管理調査の報告が公表された時点ですが、そのあたりまでとしてよいかということがまず第1点目。
 2番目に、(2)に書かれていることですが、日常生活阻害慰謝料に加算する形での賠償とすることでよいかということ。
 それから3番目に、(3)に書かれていることですが、計画的避難区域が帰還困難区域、居住制限区域及び避難指示解除準備区域に見直されたのは、早くても平成24年4月であり、その間、住居の所在地の積算線量を被害者自ら推し量る述べがないことから、住居の所在地を問わず、同等に類型的扱いをすることに合理性があるとしてよいかというのが3番目の論点です。
 そして4番目に、(4)に書かれていることですが、損害額の算定に当たり、子供及び妊婦とそれら以外の者とを別々の算定とするか、それとも一律の算定とするか、どちらが合理的であるか、ここは二つの選択肢についての問いかけの形になっております。以上について御意見をいただければと思います。いかがでしょうか。
 どの点についてでも結構ですが、とりわけ最後の点はどう考えるべきかという審査会の意見が問われている点です。同じく不安を感じているんだから、そんな区別をする必要はないという考えもあれば、そうではない考え方もあるかと思います。
 明石委員、お願いします。
 
 
 
【明石委員】  どうも、明石でございます。私も前々から言いますけれども、法律の専門家ではないんですが、今まで健康影響が認められないという考えがある一方、精神的な損害があるという2つの考え方が両立して今まで来たことを考えると、私、専門家ではないんですけれども、精神的な面、不安ということから考えたら別々とするほうが、恐らく今までの流れの一貫性があるのではないかと私は素人ながら考えております。いかがでしょうか。
 
 
 
【内田会長】  ありがとうございます。科学的な健康被害の有無とは別の精神的損害という点で、感受性という点ですかね、放射能に対する感受性という点で違いがあるということで、精神的損害にも区別があり得るのではないかという御意見かと思いますが。
 
 
 
【明石委員】  先生、よろしいですか。
 
 
 
【内田会長】  どうぞ。
 
 
 
【明石委員】  感受性というか、今回は放射線による科学的な健康影響がないという事実と、ただ、法律的には精神的な不安等を考慮してきたという、その2点を同時に考えると、別々に算定するというほうが全体的にいいのではないか。つまり、感受性ということはもちろんあるんですけれども、この線量の中では感受性を考えても健康影響がないという判断だと思いますので、その感受性ということではないというふうにお考えいただければいいと思います。
 
 
 
【内田会長】  そうすると、妊婦、子供を区別しないという考え方にも何かつながる御意見のように聞こえましたが、そこはどのように。
 
 
 
【明石委員】  そうではなくて、私自身は、健康影響はないという、だけれども、今までの精神的な不安ということでは違っているのではないかということなので、別々のほうが今までの流れに合っているのではないかというふうに考えたということです。
 
 
 
【内田会長】  ありがとうございます。自主避難での扱いとのバランスということでしょうかね。
 ほかに御意見ありますでしょうか。中田委員、お願いします。
 
 
 
【中田委員】  質問なんですけれども、計画的避難区域を対象になさったということはなぜなんでしょうか。これは最初の段階で出てきた区域で、1年後ぐらいに避難指示区域の一部になるわけですけれども、20キロ圏内については外すんだということは分かったんですが、それ以外の、例えば緊急時避難準備区域などについてはどうなるんでしょうか。
 
 
 
【内田会長】  この点は事務局からお願いします。
 
 
 
【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  前回の御議論でも確認した点でもありますが、この計画的避難区域については、平成23年4月22日に発出をされて、それまでの間は、特に政府から避難の指示が出ていなかったと。その後、区域に設定されてからも、おおむね1か月をめどにと。実際はかなり、避難を実施するまでは数か月かかったと。その間というのは、避難指示が発出される20ミリシーベルトを年間積算線量で超えるおそれがあるということで、ここは本来であれば20キロ圏内と同様に、すぐに避難すべきところであったのが、そのような線量が高いかもしれないという中に一定期間滞在したということが、今まで類型的には損害の対象とされていなかった区域と認められることから、今回この対象区域になったということであります。
 
 
 
【中田委員】  ありがとうございました。緊急時避難準備区域について言及されていないのはどうしてですか。
 
 
 
【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  緊急時避難準備区域は、政府が20ミリシーベルトに年間積算線量で達しないというふうな考え方になっているので、その対象区域に滞在したとしても、このような相当線量地域健康不安は認められないという考え方になります。
 他方、自主的避難等の賠償の際に、現在、一次追補でも子供及び妊婦につきましては、避難指示の対象期間ではなくなった以降の平成23年12月末までは自主的避難等対象区域に準じた賠償が認められる、あるいは避難指示区域からの避難者が自主的避難等対象区域に避難した場合も、同じように準じた賠償を認めるということになっておりますので、この放射線被曝の不安を基礎とした賠償がされる者については、計画的避難区域と自主的避難対象区域と、その対象区域に避難してきた者については、準じた賠償というふうに類型が幾つか異なっているので、緊急時避難準備区域については、ここではない類型の中で賠償対象になっているということであります。
 
 
 
【中田委員】  ありがとうございました。今の御説明でよく分かりました。できれば、今の御説明のようなことを書きまして、それで対象区域を、どうして計画的避難区域にするのだということを少し説明していただくと分かりやすいのではないかなと思いました。
 
 
 
【内田会長】  ありがとうございます。やはりこれまでの経緯を知っている方とそうでない方とで、なかなかさっと読んだときの理解が異なると思いますので、できるだけ経緯を知らない方が読んだ場合でも分かるように、中田委員の御発言を踏まえた改定を検討していただければと思います。
 ほかに御意見はありますでしょうか。特に最後の、子供、妊婦の点について、何か御発言、ほかにありませんでしょうか。
 
 
 
【富田委員】  よろしいでしょうか。
 
 
 
【内田会長】  富田委員、お願いします。
 
 
 
【富田委員】  この慰謝料を認める理由が、基本的に健康不安にあるということで、自主的避難等対象区域と同様の考えになるということであれば、同じように妊婦、子供と差をつけるということになろうかとは思います。基本的にはそういう理解でよろしいんでしょうか。
 
 
 
【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  そのとおりでございます。
 
 
 
【内田会長】  ほかには御意見ありませんでしょうか。明石委員、富田委員からいただいたような御意見の方向で進めていくということでよろしいでしょうか。
 
(首肯する委員あり)
 
 分かりました。どうもありがとうございます。
 それでは、熱心な御議論をいただきましたが、一応、一通り各論点について議論いたしましたけれども、既に議論した部分も含めまして御意見がございましたらお伺いしたいと思います。あるいはまた、これまで議論していない何か漏れた論点がありましたら、御意見をいただければと思いますが、いかがでしょうか。
 特によろしいでしょうか。どうもありがとうございます。それでは、ちょっとまとめますが、これまで第五次追補の策定に向けた論点について、3つの論点について本日、委員の皆様での議論を深めていただきました。次回の審査会におきましては、残りの具体的な論点について同様に議論を深めてまいりたいと思います。そこで、事務局におかれましては、今回同様、引き続き残りの論点について具体的な論点整理をお願いいたします。
 また、今回議論を行った3つの論点につきましては、細かな点でさらなる議論が必要な部分もありますけれども、大方の部分については方向性が見えてきたと思います。そこで、以降は第五次追補の具体的な内容について、金額を含めた議論をしていくことになりますが、事務局におかれましては、本日いただいた各委員からの御意見を踏まえまして、審議のたたき台となる第五次追補の素案を作成するようにお願いをいたします。
 以上で議題の1が終わりまして、次に、議題2のその他ですが、今回は特にこの点について議題が設定されていないと聞いておりますので、本日の議事は以上になります。
 最後に、本日の審査会を通しまして、委員の皆様から何か御発言がありましたらお伺いしたいと思いますが、何かありますでしょうか。
 特によろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、これで本日の議事を終了いたします。長時間にわたりまして大変熱心な御議論いただき、ありがとうございました。
 最後に、事務局から連絡事項をお願いいたします。
 
 
 
【川口原子力損害賠償対策室次長】  事務局でございます。次回、第61回審査会につきましては、来週12月5日月曜日を予定してございます。詳細につきましては、改めて御連絡をさせていただきます。
 また、本日の議事録につきましては、事務局でたたき台を作成し、委員の皆様方に御確認の上、準備が整い次第、ホームページに掲載させていただきたいと思います。
 以上でございます。
 
 
 
【内田会長】  ありがとうございます。
 それでは、本日はこれにて閉会いたします。どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――

お問合せ先

研究開発局原子力損害賠償対策室

(研究開発局原子力損害賠償対策室)