原子力損害賠償紛争審査会(第45回) 議事録

1.日時

平成29年8月9日(水曜日)13時30分~15時30分

2.場所

全国都市会館 3階 第1会議室

3.議題

  1. 地方公共団体の財物賠償について
  2. 福島特措法の改正及び法定基本方針の改定について
  3. 避難指示解除後の現状や官民合同チームの活動について
  4. 東京電力ホールディングス株式会社による賠償の現状について
  5. 原子力損害賠償紛争解決センターの活動状況について
  6. その他

4.出席者

委員

鎌田会長、大塚会長代理、明石委員、甲斐委員、樫見委員、須藤委員、高橋委員、中島委員、中田委員

文部科学省

林文部科学大臣、田中研究開発局長、増子原子力損害賠償対策室長、堀内原子力損害賠償対策室長代理、山下原子力損害賠償対策室次長

オブザーバー

【説明者】
河本復興庁参事官(原子力災害復興班(福島総括))、山下内閣府原子力被災者生活支援チーム参事官、田村経済産業省福島復興推進グループ室長、近藤東京電力ホールディングス株式会社福島原子力補償相談室長、中川東京電力ホールディングス株式会社福島原子力補償相談室基準総括グループマネージャー、絹笠原子力損害賠償紛争和解仲介室(原子力損害賠償紛争解決センター)次長

5.議事録

【鎌田会長】  それでは、委員の皆様おそろいでございますので、第45回原子力損害賠償紛争審査会を開催させていただきます。本日は、大変お忙しい中、また大変お暑い中をお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
 本日は、林大臣におかれましては、公務のために遅れて御出席いただくということになっております。おいでになりましたら、議事の途中で御挨拶を頂きたいと思いますので、あらかじめ御了承をいただければと思います。
 では、初めに事務局より資料を確認していただきます。


【山下原子力損害賠償対策室次長】  ありがとうございます。それでは、資料を確認させていただきます前に、事務局から御報告がございますので、1点御報告させていただきたいと思います。異動がございましたので、御紹介させていただきます。
 原子力損害賠償対策室長としまして、4月より板倉の後任で増子が着任してございます。


【増子原子力損害賠償対策室長】  増子でございます。よろしくお願いします。


【山下原子力損害賠償対策室次長】  同じく原子力損害賠償対策室長代理として、二村の後任で堀内が7月より着任してございます。


【堀内原子力損害賠償対策室長代理】  堀内です。よろしくお願いいたします。


【山下原子力損害賠償対策室次長】  続きまして、資料の確認でございます。お手元に議事次第と資料を置かせていただいていると思います。議事次第、資料番号が振ってございまして、資料1から6までと参考資料、あとそれに加えまして、机上配付資料としまして、指針の冊子と、これまで原子力損害賠償に関します政府の方針等々を、紙ファイルの方でとじたものを置かせていただいております。
 本日でございますけれども、原子力損害賠償紛争審査会の組織等に関する政令第3条第2項に基づきまして、過半数以上の委員の皆様に御出席をいただいておりまして、会議開催の要件を満たしておりますということをあらかじめ御報告させていただきたいと思います。
 以上でございます。


【鎌田会長】  ありがとうございました。この紛争審査会におきましては、公共財物賠償に関して、これまで中間指針等により基本的な考え方を示しているところ、被害者である自治体と加害者である東京電力におかれましては、それを踏まえつつ、丁寧な調整を行っていただき、当事者間での紛争解決がなされるということが望ましいという考えでありました。
 こうした中、本年6月に浪江町をめぐる公共財物賠償関連の報道がなされるなど、自治体における御関心が高まっているものと承知いたしております。また、紛争審査会に対しても本件に関する御要望を頂いている状況であります。
 そこで、改めて、中間指針等における基本的な考え方や、加害者・被害者双方の主張を客観的に把握し、問題や課題の所在を明らかにすべきであると考えました。この点につきまして、事務局に整理をお願いいたしましたので、まずその内容について事務局から御報告いただきます。


【山下原子力損害賠償対策室次長】  ありがとうございます。それでは、先生方、お手元に資料の1-1から1-3までお出しいただきまして、資料1-1から順番に御説明申し上げたいと思います。
 まず、資料1-1、民間財物と公共財物における賠償の取扱いについてという紙でございます。こちらにつきましては、まず、指針の中での記載ぶりを含めた考え方と、実際に賠償がどういう状況で進んでいるかということを整理させていただいております。
 一番上の賠償対象についてという部分でございますが、これは紛争審査会の中間指針、23年8月にお示しいただいてございますけれども、こちらにつきまして、財物の価値喪失又は減少部分、及びこれらに伴う必要かつ合理的な範囲の追加的費用は賠償の対象であるというお考えをお示しいただきますとともに、自治体の賠償という文脈の中で、地方公共団体が所有する財物に関する損害については、本件事故と相当因果関係が認められる限り、民間と同様に対象という考え方を示していただいてございます。
 加えまして、価値の喪失又は減少についてという2つ目のコラムでございますが、こちらにつきましては、中間指針第二次追補、24年3月にお示しいただいているものでございますが、ここの中で、表の中では民間と公共と分けて書いてございますけれども、ここは分けずに同じ考え方として示していただいてございまして、帰還困難区域につきましては、全損推認が可能と、迅速な被害者救済を重視するという表現とともに、お考えをお示しいただいてございます。あわせまして、居住制限及び避難指示解除準備区域につきましては、避難指示解除までの期間等を考慮して、一定程度減少したものと推認することが可能というお考えを示していただいてございます。
 このような審査会における考え方を踏まえまして、一番下のコラムでございますが、具体的な賠償基準・算定方法についてと書かせていただいてございますが、これは24年7月に経済産業省がお示しされていらっしゃいますけれども、民間財物について、帰還困難区域においては全損として賠償すると。居住制限区域及び避難指示解除準備区域につきましては、事故時点から6年で全損として、避難指示解除までの期間(n年)に応じた割合分を賠償するという考え方が示されて、民間の財物についてはこれに基づいて賠償が進められているという部分でございますけれども、公共に対する、ここに該当する部分については未提示という形で書かせていただいてございますが、考え方が必ずしも示されていないという状況だというふうに理解してございます。
 これに基づきまして、資料1-2でございます。不動産に係る公共財物と民間財物の取扱いに関する論点メモというものを、これは事務局の方でまとめさせていただいてございます。
 3つございまして、まず1つ目でございますが、既に避難指示が解除され、帰還可能な地域においては、多くの財産が既に使用可能な状態にある。一方、いまだ避難指示が解除されていない地域においては、現時点においてさえ、いつから使用できるかどうかの見通しが立っていない状況にあり、これは客観的な状況だと理解してございます。
 2点目でございます。民間財物は、貸付けや売払い等が可能であり、取引可能な評価額を設定しやすい交換価値を有する財産と解することができる。一方で、公共財物の多くを占める行政財産は、地方自治法に基づき貸付けや売払い等の制限があるため、取引可能な評価額の設定が困難である使用価値のみを有する財産と解することができると書かせていただいてございます。ここにつきましては、地方自治法の抜粋を後ろに掲載させていただいてございますけれども、行政財産につきましては、地方自治法第238条4の項目において、一定の制限が課されているということが法律上も書かれてございます。そして、この点については実態のお話も大切だと思ってございまして、公用財産の中で行政財産と普通財産がございますけれども、公用財産については用途の廃止という手続が踏める形になってございます。これは将来にわたって公共の用に供する必要がない場合に、その用途を廃止し、その後に払下げをすることが可能となる手続として定められているものでございますが、この状況を震災前後で我々の方で調べさせていただいておりまして、総務省が発表されております公共施設状況調査におきまして、震災前後の公有財産の中の行政財産と普通財産でございますが、これの全体のボリュームと申しますか、面積の状況ですけれども、延べ面積の量と、あるいは行政財産、普通財産の割合がどの程度変化しているのかというのを確認させていただきました。そうしますと、2007年から2014年までの決算年度で整理がなされているんですけれども、全国全体におきましては、行政財産がおおむね34%から36%、普通財産が65%から66%ということで、普通財産の方がやや多い状況でございますが、福島県に関しましては、行政財産が88から89%、さらに普通財産が11%から12%ということで、各年度、震災前後、それほど大きな変化がない状況でございます。
 あと、行政財産と普通財産の割合だけではなく、全体のボリュームですけれども、2007年から2014年までで毎年の変化を見ますと、おおむね1%の範囲内にとどまる状況でございます。これから分かることは、多くの財産が用途廃止になっているということが震災前も震災後もそれほどないと、全国的にも、福島全体で見てもないという状況でありまして、制度としての公用財産の用途廃止というのはもちろん出来る状況でありますけれども、実態上としての変化はそれほど大きくないという状況でございます。
 資料1-2にもう一度戻らせていただきますけれども、3つ目の丸でございますが、行政財産は、公共目的に供するためのものであり、避難指示解除後には引き続き公共のための財産として使用することが想定されている。このため、既に使用可能な多くの公共財物の価値の減少のための賠償については、交換可能な市場価値の減少という捉え方ではなく、本来事故がなければ機能を果たしていた一定期間の利用阻害があったことに対する使用価値の減少という捉え方ができるとの考え方があるという形で、状況を整理させていただいてございます。
 次に、資料1-3でございます。こちらは、事務局の方で福島県、あるいは関係する市町村の方々にお時間をとっていただきまして、御訪問させていただいたものを整理させていただいて、まとめさせていただいたものでございます。こちらは、いまだ避難指示が解除されていない地域、あるいは既に避難指示が解除され帰還可能な地域で分けて書いている部分と、共通する部分がございますので、共通の御意見ということで掲載させていただいてございます。
 まず、いまだ避難指示が解除されていない地域に特徴的な御意見としましては、民間財物と同様に、全損あるいはそれに準じる扱いとしていただきたいと、多数意見と書かせていただいておりますが、そういう意見が多い状況でございました。
 一方、既に避難指示が解除されて、帰還可能な地域におきましては、民間財物と公共財物では、財物の性質が異なる点があることは理解できるので、賠償方法が異なることもあり得るというのが多くの意見で示されまして、あわせて、民間財物と公共財物で財物の性質が異なることにより賠償方法が異なるとする場合には、簡便でかつ一括の基準に基づいて賠償が進むこと、個別具体の事情がある場合には、それを考慮する仕組みがあること、自治体の意向を丁寧に汲んでいただけるよう配慮を求めたいといったような意見が多かったというふうに我々は受け止めさせていただいてございます。
 一方で、民間財物と同様の賠償方法により賠償を進めていただきたいという御意見もございました。
 さらに、民間財物と公共財物で財物の性質が異なることにより賠償方法が異なるとする場合には、避難指示の解除までの使用できなかった期間については賠償対象としてほしいという御意見もそれなりに多く伺った次第でございます。
 また、共通する意見としまして、賠償基準を迅速に示していただきたいという御意見、あるいは固定資産台帳や公用資産台帳に記載される内容、ここでは所有する建物や土地の面積などというふうに書かせていただいてございますけれども、そういったことや、公会計制度の導入により把握可能な内容(一部土地・建物の評価額や建物の減価償却額など)については、比較的簡便に把握できるが、それ以外の情報、例えば現場の写真を撮ってくるとか、実際の利用状況といったものでございますが、そういったものを入手することについては、手間暇がかかること、あるいは時間・人員などの行政コストが甚大となる懸念があることから、非現実的と考えられるため、ある程度簡便な形で処理できることが望ましい。特に、本件に関わる担当者が少ない自治体の事情を十分に考慮してほしいという御意見はたくさん頂きました。
 また、賠償の基礎となる建物や土地の評価額については、種別等によってある程度の目安が示され、それに応じた賠償がなされることが望ましいという御意見もございました。
 さらに、個別に立証が可能で、かつ目安による賠償を超える場合には、それを考慮する形で賠償が進められることを求めたいという御意見もございましたし、迅速性、客観性、公平性等の観点から、ある程度一律で整理する必要があると考える一方で、個別具体の事情があれば考慮できるように工夫していただきたいというような御意見もございました。
 あと、財物の取得価格や評価額については、いろいろ出せるもの、お示しできるもの、できないもの、様々でして、手間暇がかかるという御意見も、書かせていただいていないんですけれども、自治体の方からの御意見としてはございました。
 これが自治体の皆様の御意見でございまして、加えて、東京電力の考え方の方についても、我々の方で聞いてございますので、口頭にて御紹介させていただきます。
 東京電力におかれましては、公共財物賠償は賠償対象であるものの、相当の長期間にわたり立入りが制限され、使用できない土地や建物については価値の喪失を推認できる一方で、避難指示が解除されて引き続き使用される土地や建物については、財物価値の減少と民有地の賠償と同様に認めることは困難であるため、民有地とは別の算定方法により賠償を行うなど、利用状況等を考慮した取扱いとしたいとの考え方であるというふうに承ってございます。もし、お許しいただければ、本日出席いただいている東京電力より補足あるいは追加で御説明等があれば頂きたいと思いますが、よろしいでしょうか。


【鎌田会長】  それでは、東京電力から御説明を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。


【近藤室長】  東京電力ホールディングスの近藤でございます。きょうは発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。それでは、発言させていただきます。
 弊社の公共財物に関する考え方といたしましては、ただいま御説明を頂いたとおりでございますけれども、補足をさせていただきますと……。


【鎌田会長】  恐縮です。林大臣、御公務、大変御多忙の中でお時間を割いて御出席いただきました。どうも大臣、ありがとうございます。早速で恐縮ですけれども、ここで林大臣から一言御挨拶を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。


【林文部科学大臣】  それでは、着座のままで失礼させていただきます。
 このたび、文部科学大臣を拝命いたしました林芳正でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 東京電力の福島原発事故から既に6年が経過いたしましたが、福島の復興・再生、道半ばだということでございまして、その中で、この審査会の委員の先生方におかれましては、震災の直後から早期の被害者救済のための中間指針などの策定、賠償のフォローアップ等々に御尽力を頂いておりますことに、改めて感謝を申し上げたいと思います。
 この春に双葉、大熊を除く居住制限区域、避難指示解除準備区域で避難指示が全面的に解除されるところまでまいりました。また、5月には帰還困難区域における避難指示解除に向けた特定復興再生拠点区域の整備等を盛り込みました福島特措法の改正も成立をしております。こういうものもあいまって、福島の復興・再生、着実に進められるように、引き続き政府一丸となって取り組むことが重要であると、そういうふうに考えております。冒頭申し上げましたように、事故から時間が経過もしておりますし、その経過に伴って賠償の状況も変化しておると、こういうふうに聞いております。この紛争審査会の先生方におかれましては、これに対応していただきまして、引き続き公平かつ適正な賠償、これが一層進むように御議論のほどよろしくお願いいたしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。


【鎌田会長】  ありがとうございました。林大臣におかれましては、公務、大変御多忙でいらっしゃいますので、ここで御退席となりますので、よろしくお願いいたします。
 どうも大臣、ありがとうございました。


(林文部科学大臣 退席)


【鎌田会長】  発言を中途で止めさせていただきまして申し訳ございません。引き続き御説明いただければと思います。


【近藤室長】  それでは、改めて弊社の考え方を述べさせていただきます。
 主な考え方は、ただいま御説明をいただいたとおりでございます。補足をする点としましては、特に、いまだ避難指示が解除されていない地域の土地や建物につきましては、価値の喪失、いわゆる全損を推認の上、賠償することも可能だというふうに私どもは考えているところでございます。
 以上でございます。


【鎌田会長】  ありがとうございました。事務局は、もうよろしいですか。


【山下原子力損害賠償対策室次長】  以上でございます。


【鎌田会長】  それでは、ただいまの事務局及び東京電力からの御説明につきまして、御質問や御意見がございましたら、お出しください。
 それでは、高橋委員、よろしくお願いします。


【高橋委員】  今、事務局から御紹介いただきました中間指針の地方公共団体の財産的損害等について、指針の考え方について少し確認したいと思います。最初の指針には、財物及びという表現があり、その後に、地方公共団体は民間事業者と同様の立場で行う事業に対する損害については、相当因果関係が認められる限りは賠償の対象になると書いてあります。後ろの、公共団体が民間事業者と同様の立場で行う事業ということとの関連で言えば、この財物も、基本的には、行政法上で言えば、普通財産のことを想定しているため、このような書き方になったのだろうと思います。このような指針の解釈からすると、行政財産について、ここで駄目だとは言っていないと思いますが、ただ、明確な考え方を示していないと思います。要するに、行政財産と普通財産と別だというのが、指針の前提だと私は思ってまいりました。
 確かに私も、理論的な筋道が通れば、被災地の、特に住民の方だけではなくて、地方公共団体にも寄り添った賠償の方針を考えるというのは必要だと思います。しかしながら、財産の性格が行政財産ということであれば、かつ、公用廃止もされていない状態であるということであれば、基本的には行政上の利用の価値と、使用価値と言うかどうかは別だと思いますが、行政目的のための利用上の価値ということで考える、というのが基本なのではないかと私は思います。
 かつ、行政上の利用の価値というと、実は、避難先の様々な地方公共団体、さらに、被災地の地方公共団体が、被災地の方、住民の利用のために復興後も様々な形で行政サービスを提供されています。行政財産として様々な財物を利用して住民サービスを提供されているわけですが、その様な利用には、総務省から、普通交付税、特別交付税、さらには復興特別交付税という形で、非常に多くの税金からの投入がされています。そうしますと、基本的に全損の算定をする、全てそこの財産的なマイナスを補うということになると、国民の税金で投入した普通交付税、特別交付税、さらには復興特別税をどういうふうに取り扱うのかという理論的に困難な問題が出てくる、と私は思っています。交付税は総務省の所管ですが、ただ、公金、税金の投入ということを考えれば、そこには理論的に整理しなければいけない問題がある。この点を踏まえますと、基本的には、行政財産の固有の損害については、福島にある行政財産の利用の阻害という視点から考えて賠償するのが、基本的に正しい考え方ではないかというふうに私は思っています。
 以上の点から、基本的には事務局の論点整理が、私は適当であるとは思います。
 以上でございます。


【鎌田会長】  ありがとうございました。
 ほかの御意見はいかがでしょうか。よろしいですか。それでは、まず中田委員、よろしくお願いします。


【中田委員】  ただいま高橋委員から行政法上の御見解を示していただきまして、非常によく理解できました。ありがとうございました。
 その上で、行政法については素人ですけれども、幾つかの観点を申し上げたいと思います。
 まず、損害の算定方法の観点は幾つかあると思います。1つは、目的物の損傷なのか、あるいは使用収益の不能なのか。2番目に、土地なのか建物なのか、両方なのか。それから3番目に、普通財産か行政財産か。そして4番目に、損害を被った主体は公共団体なのか、それとも住民なのかという見方があると思います。これらは幾つかの組合せがあると思いまして、その1つを選んだから全部つながってくるというのじゃなくて、幾つかの組合せで考えていくべきものだと思います。そういたしますと、普通財産か行政財産かというのは1つの区分の在り方としては考えられると思いますが、だからといって当然に1つだけの解が出てくるわけではないのではないかと思います。
 以上です。


【鎌田会長】  では、樫見委員。


【樫見委員】  私も中田先生と同じように、通常の民事の損害賠償の考え方で、今回についても少し意見を述べさせていただきたいなと思っております。
 まず、今回、避難指示を受けられた市町村におかれましては、避難指示解除がされた地域、それからいまだ解除がなされていない地域というところで、それらを通じて1本の筋にまとめられるような損害を考えていかなければいけないであろうと。
 今回御提示いただきました使用利益につきましては、先ほど高橋委員からお話ありましたように、恐らく震災を受ける直前において、行政上のサービスを各市町村が提供できていたこと、それが震災後、それを提供できなくなった、その全体を、一言で言えば、使用利益の侵害が生じたというふうに表されるのかなというふうに1つ思っております。
 なので、この場合、先ほど東電の方は、まだ避難指示が解除されていない場合には全損推認というふうにおっしゃったのですが、既に解除された地区、それから、今は解除されていないけれども、近々に、あるいは将来的に不明である地域、いろいろな段階があるかと思います。そうしますと、一挙に全損推認というのではなくて、そこら辺のところは使えるときまで、現状が復帰されるまで使用利益が年々侵害されているという状況を続けた方がいいのではないかなと。解除されていない地区と、それから解除された地区、これは段階的な差であって、一挙に全損とそうでないところというのは、やはり考え方としては、私自身は少し疑問がございます。
 それから、今回の公共財物全体におきまして、幾つか特徴点があるかと思うのですが、とりわけ避難指示解除がなされた地区におかれましては、市町村が既にその地に戻られているわけです。そういたしますと、既に生じた損害と、それから将来どのような損害が生じていくのか。ある程度現実に既に損害としてまとまって生じたところについては、その額を大枠のところで捉えて、そして、まだ避難指示解除がなされていない地区については、ある程度予測的な損害賠償を行って、しかしながら、いわゆる交通事故などで人損が起きた場合には事故当時には捉えられなかったけれども、後で後遺症的に生じた損害については、枠をはめないで、将来的にもプラスの損害賠償が可能であるといったような柔軟な考え方が必要であろうというのが1つです。つまり、既に生じた回顧型、加藤新太郎先生がお使いになっていたかと思うのですが、回顧型の損害賠償額と予測型の損害賠償額。特に後者については、後になって生じてくる、例えば現時点で将来的な損害も含めて賠償の対象にしたとしても、後で現実にはもっとたくさんの被害が生じたという場合には、それをプラスするといったような枠の柔軟性が必要かと思っております。
 それから、第2点で申し上げたいのは、先ほど中田先生がおっしゃったのですが、財物にはいろいろなものがあると。例えば土地であれば、戻ればそこをそのまま使うことができるわけです。それ以外の建物については、これは当然、年々老朽化なり価値そのものが減っていきますし、場合によっては、老朽によって全損扱いにせざるを得ないという場合もありますので、そこら辺の種類の問題、それから単純な動産であれば、これは数年で使い物にならなくなりますし、臨時的に別の場所で業務をされている場合は代替品を購入しているわけですから、その分が損害賠償の算定額の対象になるといったような、全体としては財物の種類ですとか使用目的によって少し考え方が違ってくるのではないかと。
 それから、先ほどの避難指示の関係で、被害当時の現状に復帰できるか。いわゆる将来的な原状回復の可能性の程度、これもなだらかなというか、あるいは段階的な損害賠償の額のところで考えていかなければいけないということであろうかと思います。
 あとは、今申し上げた細かいことを1つ1つ、通常の民事訴訟のようにエビデンスを求めてやるという枠組みは、被害の大きさですとか、皆様の御苦労、時間、手間を考えますと、これは現実的ではないので、全体としては、いわゆる民事訴訟法の248条、裁量による損害賠償の額、当然それに対してはある程度大枠の基準の設定は必要かと思いますけれども、一定程度、248条の規定にも根拠がありますので、裁量的な、いわば昔、公害の方で採用されました一律・一括的な損害賠償、これもある程度段階的なものがあるかと思うのですが、そういった考え方も採用できるのかなと思います。基本のところは、先ほど大枠で示された、いわゆる使用利益の賠償、こういった点は、やはり一般の民間の場合の財物の賠償とは異なった視点かなというふうに思っております。
 以上でございます。


【鎌田会長】  大塚委員、よろしいですか。はい、どうぞ。


【大塚会長代理】  一言だけ申し上げさせていただきたいと思いますけれども、民事の通常の賠償との関係で先生方の大変貴重な御示唆をいただきまして、私も損害賠償との関係でまた勉強しなくてはいけないと思っているところでございますが、今回は特に、今までの中間指針との関係でどう見るかというところが重要になってくると思われまして、資料1-1のところとの関係でいうと、特に居住制限区域及び避難指示解除準備区域について、従来の民間についての、6分のnという考え方とは少し違う考え方をとるかどうかというところが最大のポイントになってくるのではないかと思います。これについては事務局も説明していただきましたし、高橋委員もおっしゃったように、行政財産に関して、公用廃止がなされていないという状況がございますので、その点を踏まえて、民間の財物とは違う扱いをすると、使用価値で見るというところが最も重要なポイントではないかと思っています。
 ということで、この整理に賛成ですが、同時に、行政財産に関しては、貸付けに関しても、地方自治法238条の4にあるように、原則としては設定しにくいことになっておりますが、こちらに関しては、公用廃止と違って、それほど制限が実際にはなされていないのかどうかというような統計が、もし事務局がお持ちでしたらお話しいただくと有り難いと思います。
 以上でございます。


【山下原子力損害賠償対策室次長】  御指摘ありがとうございます。今手元にはございませんので、今後調べたいと思います。ありがとうございます。


【鎌田会長】  ほかにいかがでしょうか。はい。甲斐委員、お願いします。


【甲斐委員】  全く法律については素人ですが、疑問といいますか、コメントといいますか、こういう使用価値の減少というのは、どのような形で評価ができるのか、ちょっと私には想像がつかないものですから。先ほど、民間の場合には全損、6分のnというのは非常に分かりやすい、迅速化というのはいろいろな声がありましたので、迅速に一律に整理するという希望も強いと。もちろん一方で、個別的なものも考慮してほしいという意見があるわけですが、こういう使用価値の減少という考え方は、法的には、恐らくそういう一定の理があるんだろうと思いますけれども、現実性、迅速性という点ではどうなのか、その辺が疑問に思いました。


【鎌田会長】  今の御疑問について、何かありますか。


【樫見委員】  使用価値の侵害といいますか、使用利益の侵害といいましても、通常考えられるのは、例えば家を貸せるはずだったのに借りることができなかった。今回の場合には、国なり、賃料を取っていないかと思うんですけれども、行政サービスを従来やっていたところでやれずになって、ほかのところで行政サービスを提供すると。それについては、賃料はともかくとして、増加費用は要るわけです。例えば職員を別の地に移転させて、住まわせて、そして様々な人件費であるとか、あるいは使用利益とは直結はしないかと思うのですが、そこで従来だったら買わなくてもいいような物品を購入した、あるいはしなくてもいいような業務がさらに増えたであるとか、直接は使用云々(うんぬん)には結び付かないかもしれないのですが、現状では要らなかった、あるいは使わなくてもよかった、そういうコストが余計に増えたというのも、この使用利益の損害の中には入ってくる。恐らくここで想定されているのは、さっきも少し私申しましたけれども、今回のような損害の発生の仕方というのは、先例がないわけですよね。なので、何をもってそこの損害の中身を捉えて、そして各市町村に対して損害賠償するのかというところで考えますと、従来の行政サービスを行えなかったことに伴って、現時点で余計に掛かった費用、総枠でいうと、全体としての損益計算書の中のマイナス部分みたいな、そういうふうな捉え方になるのではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。


【高橋委員】  中島委員が、不動産の使用の収益率とかいろいろお話されていると思いますが、私も推定というか、みなしの問題だと思っています。
 今の御指摘ですが、先ほど申し上げましたように、例えば学校とかが使えなかった場合は、ほかで小学校のサービスとかを提供しているといった場合は、全部、交付税で措置されています。国民の税金から、交付税措置で全部出ております。賠償についても、人件費がたくさん出たという部分については、東電は賠償の中で算定されておりますし、職員の人件費も基本的には交付税措置がされていまして、そういう意味では、ほかで使ったからという考え方は、この場合について採用しない方がいいのではないかと思います。そういう意味では、本来使えるべき行政財産が事故により有効に利用できなかったという抽象的な利用可能性を使用価値の減損と見る、そして、ここは、それを合理的に推計してお支払いするというのが、私は理論的には支持し得る考え方だと思います。中島委員、その辺はいかがでしょうか。


【中島委員】  ざっくりと定量的な話ですけど、実務で、賃貸借でない無料の使用貸借の権利が設定されている場合でも、大体1、2割価値が減じると。賃貸借であれば半分か半分以上、賃借権の方へ取られますけども、使用貸借であっても1、2割減じるというのが実務の扱いかと思いますので、ざっくりとですけれども、市場性のない行政財産であっても、その利用が阻害されたということによる減り方の1つの目安としては、使用貸借がある場合の1、2割程度というのは、ちょっと少ないかもしれませんけど、1つの目安かなとは思います。賃貸借ですと半分以上減りますので、ちょっと少ないかもしれませんけど、それはいかがでしょうか。


【鎌田会長】  今までの御意見を少し整理する必要があると思うんですけれども、まず帰還困難区域に関しては、民間の財物については全損推認で、実際に全損として賠償もしてきている。行政財産も含む公有財産についても、東電は全損の扱いをすると、こういうふうに御説明になったんですが、この点については、東電と関連自治体との間の話合いの中でそういう方向でいくのを、あえてストップはかけないという方向が皆さんの御意見だと承ってよろしいでしょうか。
 そうなると、問題なのは、居住制限区域及び避難指示解除準備区域であって、民間のものについては事故から6年で全損、5年だったら6分の5と、こういうふうな計算方法で賠償をしてきたわけですけれども、公有財産、とりわけ行政財産については、この考え方は当てはまらないのではないかという点については、皆さんの御意見は一致しているように承りました。東電も基本的にはそういうふうな方向でのお考え、民間の財産とは少し違った取扱いでいきたいというふうにお考えでいらっしゃるわけですね。
 問題は、それをどういう形で具体的な損害額あるいは賠償額の算定を行えばいいかということで、事務局からは、使用価値というふうな形での御説明がありましたけれども、実際には、財物の評価額の減少を、使用価値を基準にして考えるというふうなニュアンスにも聞こえますけれども、他方では、利用が阻害されたことによる現実の損害額は幾らなのかという、こういうふうな考え方で損害額を評価するのが本来の筋であるというニュアンスでの御意見も強かったように思います。今のところ、財物の価値の減少額を、使用価値を基準に考えるんだというのと、一定の期間、利用が阻害されたことによってどれだけの損害が生じたかということを直接に評価するような方向で考えるべきだという、多少違ったお考えが存在しているかのように受け止めたんですけれども、その点はいかがでしょうか。


【中島委員】  利用阻害、最近は利用制限と言っているようですけれども、利用阻害率、利用制限率というのは、たしか土地利用の場合の補償の基準用語だったかと思いますので、今回ももともと戻るという前提で、その間の利用がどう阻害、あるいは制限されたかという観点での阻害率、制限率という考え方が整合的なのではないかなと。そういう意味では、使用貸借というのも入れましたのは、いわば所有権の利用が事実上制限されているという意味で1、2割減るという意味では、むしろ利用阻害という考え方なのではないかなと思います。


【鎌田会長】  それと同時に財物の性質によっては、もうもとに戻らないものもあるわけで、これは正にそのもの自体の価値が減損した部分というのはあるわけですね。土地の価値が100%戻るかどうかについては考え方の違いがあるかもしれませんけれども、動産なんかだと、避難している期間中に価値がゼロになってしまったという場合も十分にありうるわけで、そういったところについて議論をさらに詰めていく必要があるように思いましたけれども、いかがでしょうか。
 お許しいただけるのなら、きょうこの場でその点について画一的な結論を出すことはなかなか難しいと思いますし、甲斐委員からは、同時に、1件1件について迅速な処理ができるように配慮すべきだという、こういう御指摘もありますので、次回に、どのような形で価値の減少といいますか、端的に言えば損害額をどう評価していくのが妥当なのかという点についての議論を深めたいと思っております。そこで、次回までに事務局で、本日出されたいろいろな御意見、それから関係市町村の御意向を踏まえて、さらに整理を進めていただければと思いますけれども、そのような進め方にさせていただいてよろしいでしょうか。


(「異議なし」の声あり)


【鎌田会長】  ありがとうございました。それでは、また事務局には少し御負担をお掛けしますけれども、議論を整理して、あるいはまた意見を聴取していただいて、再度、次回の紛争審査会において御報告をいただき、その御報告を踏まえて、この場で可能な限り方向性を示せるようにしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。そういうことでよろしいですか、事務局も。


【山下原子力損害賠償対策室次長】  はい、ありがとうございます。


【鎌田会長】  それでは、次に議題の2番「福島特措法の改正及び法定基本方針の改定について」に移ります。この点につきましては、復興庁から御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。


【河本参事官】  復興庁の参事官をしております河本と申します。どうぞよろしくお願いいたします。座って説明させていただきます。
 資料の2-1及び2-2に基づいて説明させていただきます。
 まず、資料2-1の方でございます。福島復興再生特別措置法の一部を改正する法律についてでございます。こちらの法律につきましては、先の国会で審議をしていただきまして、5月19日に公布・施行されております。このもともとの法律、福島復興再生特別措置法自体は平成24年3月31日に法律として成立しておりまして、その後、平成25年、27年と2回改正を経まして、今回3回目の改正ということになっております。今回の改正は、地元からの要望、あるいは与党からの提言といったものを踏まえまして、帰還困難区域の復興・再生に向けた環境整備や被災事業者の生業の復興・再生を担う組織の体制強化、あるいは浜通り地域の新たな産業基盤の構築、それから福島県産の農林水産物等の風評の払拭に必要な措置を講ずるというようなことを柱として改正したものでございます。
 最初の柱でございます。1番目でございますけれども、1ページ目、特定復興再生拠点区域の復興及び再生を推進するための計画制度の創設でございますが、こちらにつきましては、従来、帰還困難区域が「将来にわたって居住を制限することを原則とした区域」として設定されたわけでございますが、この区域内の一部で放射線量の低下がありましたり、あるいは帰還を希望される住民の思い等を背景とする地元からの御要望、さらには与党からの提言といったものを踏まえまして、帰還困難区域の復興・再生に早期に取り組むということが必要になったという背景に基づきまして、この特定復興再生拠点区域の復興・再生のための計画制度を作ったわけでございます。
 具体的には、市町村長が帰還困難区域内に、おおむね5年以内をめどに、避難指示を解除して、帰還者等の居住を可能とすることを目指す区域、いわゆる特定復興再生拠点区域を定めるということになっております。
 この市町村長は、その拠点区域の範囲でありますとか、計画の目標・期間等を記載した計画を作成いたしまして、福島県知事と協議をした上で内閣総理大臣の認定を申請するということになっております。
 その認定の申請を踏まえまして、内閣総理大臣は、福島復興再生基本方針との適合性があるかとかいった観点を踏まえまして、計画を認定することにしております。
 具体的な認定の観点の例といたしまして、枠囲いの中に書いておりますけれども、除染によって放射線量がおおむね5年以内に避難指示の解除に必要な基準以下に低減するか、あるいは計画的・効率的な公共施設等の整備が可能な規模であるかとか、あるいは住民の帰還、あるいは事業活動によって想定した土地利用が実現する見込みがあるかといった観点から認定を行うということになっております。
 計画は、認定されましたら、その下で除染やインフラ整備などの事業を一体的かつ効率的に実施するということで、今年度から既に必要な予算が措置されております。
 この計画が認定された場合の効果といたしまして、この認定計画に従って除染や廃棄物の処理を国が実施する、その費用を国が負担をするということになっております。また、道路の新設といったインフラ整備の事業を国が事業代行するといったこと等が認定の効果として挙げられるところでございます。
 なお、この帰還困難区域内で拠点として設定されなかったところも含めました全域について、市町村が中長期的な構想を策定した場合には、国がその構想に基づいて市町村が行う取組を支援するという枠組みになっております。
 なお、実際に帰還困難区域を抱える市町村、現在7市町村ありますけれども、既に双葉町の方では、8月2日に全員協議会の承認を経まして、既に8月4日福島県に、この計画を協議いたしまして、協議が済んでおります。近々、国の方に認定の申請が行われるという予定であると承知をしております。
 それから、2番目の柱、2ページ目でございますが、官民合同チームの体制の強化ということでございます。平成27年8月に国や福島県、あるいは福島相双復興推進機構等からなります官民合同チームが創設されまして、被災12市町村の商工事業者に対しまして個別の訪問、あるいは支援を実施しております。既に先月までの間に4,700件の事業者を訪問いたしまして、その事業者の事業再開に向けたいろいろなアドバイスでありますとか、あるいはコンサルティング、そういったものを行っております。さらに、最近では営農再開のために、地域の農家の将来像の策定でありますとか、農業者の取組を支援しております。既に先月までに750回の農業関係者の訪問を行っております。
 そういった活動をしておるわけですけれども、この官民合同チームでございますが、改正の概要の下枠の左の方に、旧・官民合同チームという絵がありますが、これまでは福島相双復興推進機構のほか、国や福島県、あるいは独立行政法人中小企業基盤整備機構等が、いわゆる寄り合い所帯として1つのチームを組んでやっておりました。したがって、例えば事業者を訪問するときも、それぞれの名刺を、ばらばらな名刺を配ってやっておったわけですけれども、これをより一元的な指揮命令系統の下に体制を強化しようということで、福島相双復興推進機構、公益社団法人になっておりますけれども、こちらに国からの職員が直接出向という形で派遣されるような仕組みにしております。今回の法律では、そのための、例えば国家公務員の共済組合法、あるいは退職手当法に関する特例の規定を整備いたしまして、国の職員が福島相双復興推進機構に出向できる、派遣されるような手当をしております。
 3ページ目、福島イノベーション・コースト構想の推進の法定化でございます。福島イノベーション・コースト構想は、平成26年6月の報告書に基づいて、浜通りに新しい産業を興すということでプロジェクトが進められてきたわけでございますけれども、これを今回、法律の方にも位置付けるということで、既にございます重点推進計画という福島県が策定をする計画の中に、この福島イノベーション・コースト構想に関する記述を盛り込むということにいたしました。この福島イノベーション・コースト構想を重点推進計画に書き込んで、内閣総理大臣の認定を受けた場合に、例えば中小企業者がその計画の下で特許を取得した場合に特許料等が減免される、あるいはロボット等の開発のために国有の試験研究施設を使うときに使用料が低減される、そういった効果がございます。
 また、原子力災害からの福島復興再生協議会、いわゆる法定協議会という組織が既にございますが、その下に分科会を創設するという規定を設けまして、既に先日、8月6日に行われました原子力災害からの福島復興再生協議会、法定協議会において、この福島イノベーション・コースト構想を推進するための分科会が設置をされたところでございます。
 4ページ目をお願いいたします。4ページ目に風評払拭への対応ということで、事故から6年以上たっても、なかなか福島県産の農林水産品に関する風評が残っているという状況に鑑みまして、風評被害の実態調査、あるいはこれに基づく必要な措置、すなわち指導や助言等の措置を講ずることを法律に位置付けたところでございます。
 また、関連する予算といたしまして、今年度、福島県農林水産業再生総合事業という事業を設けまして、47億円を措置いたしまして、この一部を使いまして実態調査を行っておるところでございます。
 その他の改正事項といたしまして、帰還環境整備推進法人、いわゆるまちづくり会社を帰還環境整備推進法人として指定いたしまして、この被災12市町村で役場機能が分散をして人的資源が不足しているところを、民間のNPO等の力を借りて町の復興・再生を図っていこうという体制を整えるようにしております。
 それから、社会問題化をしております福島から避難している子供に対するいじめの問題に対応するために、いじめの未然防止、あるいは早期発見、いじめへの対処について、教育委員会あるいは学校が行う取組を支援するということを法律に位置付けております。
 それから、地域住民の交通手段の確保ということで、12市町村の帰還者が安心して通院、あるいは買物といった日常生活を送るための公共機関が必要になるわけですが、どういった路線でバスを走らせるかとか、そういったことについて国からも適切な支援を行うということになっております。
 続きまして、資料2-2、福島復興再生基本方針でございます。こちらは福島復興再生特別措置法に基づいて定められる、いわゆる法定の基本方針でございます。法律制定されて以来、初の改正ということになります。既に6月30日に閣議決定をされております。
 概要といたしまして、原子力災害からの復興・再生の意義・目標ということで、福島の復興・再生が着実に進展しておりますが、避難指示の解除、これはゴールではなくスタートであって、解除後も政府一丸となって取り組むということ、それから、帰還困難区域については、たとえ長い年月を要するとしても、将来的に帰還困難区域全てを避難指示解除して、復興・再生に責任を持って取り組むという決意の下で、可能なところから特定復興再生拠点を作って、一日も早い復興を目指して取り組むといったことが書かれております。
 具体的な内容といたしまして、各取組の概要というところに書いておりますが、赤字のところが今回の法改正に伴うものでございまして、項目といたしましては、特定復興再生拠点区域復興再生計画を新たに項目として盛り込みまして、この計画に盛り込む記載事項でありますとか認定基準について規定をしております。
 そのほか、先ほど法改正のところでも御紹介いたしました官民合同チームの体制強化、あるいはまちづくり会社の活用、いじめ防止のための対策、風評対策、福島イノベーション・コースト構想、それから地域公共交通網の形成支援、そういったものにつきましても、この基本方針の中でも盛り込んでおるということでございます。
 以上でございます。


【鎌田会長】  ありがとうございました。
 ただいまの説明について、御意見、御質問がございましたら、お願いいたします。
 高橋委員、どうぞ。


【高橋委員】  どうもありがとうございます。前々から申し上げておりますが、私は、賠償も重要ですが、政府が復興事業を公的事業として確実に実施することが、福島の復興にとっては重要だということを申し上げてきました。特に復興再生拠点整備事業などは、復興のために有益な事業だろうと思っています。
 そこで、予算のことをお聞きします。309億円というのは、これは今年度できる、要するに体制が整っている限りということで、309億円という数字が出てきたのかどうか、ここら辺を少しお聞かせ願いたいと思います。


【河本参事官】  この309億円という数字は、特定復興再生拠点整備事業と書いてありますが、一言で言えば除染のための事業費でございます。これについては、昨年の12月に政府の予算案を確定いたしました。そのまま国会で承認を受けたわけですけれども、そのときに想定される規模の除染が今年度、つまり、平成29年度に拠点がある程度着手できるだろうと、それの推定をいたしまして、309億円の除染費用を計上しているということでございます。


【高橋委員】  そうしますと、区画整理とか、インフラ整備というのは、また別のお金だというふうに考えられるということでしょうか。


【河本参事官】  はい。インフラ整備につきまして、その上にあります福島再生加速化交付金807億円、これは復興拠点だけではなく、全体でございます。この一部を使いまして行うということになります。


【高橋委員】  すいません。再生加速化交付金は1,000億円規模が例年の数字だったのですが、何で807億円なんでしょうか。


【河本参事官】  おかげさまでインフラの整備というのは福島全体でもある程度進んでおりまして、これはある程度ピークアウトといいますか、おっしゃるように昨年度までは1,000億円オーダーだったんですけれども、規模が少し減ったということで807億円にしておりますが、これでも需要についてはカバーできるという規模になっております。


【高橋委員】  そこは地元と協議の結果、このような規模のお金が出たのだと思います。ただし、対外的に見ると、浜通りについては本格的に復興だというところであり、復興のための公費投入の需要は必ずしも私はピークアウトしてないのではないかと思います。そこは、是非、説明の仕方とか、対外的にも予算努力を引き続き地元と調整しつつ確保していただきたいと思います。これはお願いです。


【河本参事官】  正に今、来年度予算要求を議論、検討しているところでございます。御指摘のありましたように、十分な需要に対応できるような予算を要求していきたいと思っております。


【高橋委員】  どうもありがとうございました。


【鎌田会長】  ほかにはよろしいでしょうか。それでは、どうもありがとうございました。


【河本参事官】  どうもありがとうございました。


【鎌田会長】  次に、議題の3番、避難指示解除後の現状や官民合同チームの活動につきまして、内閣府被災者支援チームと経済産業省なりわい再建室より、御説明を頂きます。よろしくお願いいたします。


【山下参事官】  それでは、まず、資料3の前半に沿いまして、私の方から、避難指示区域の状況等について御説明いたします。
 めくって、裏の2ページ目、右下に少し薄くて恐縮でございますが、右下のページ、2ページ目をごらんください。前回、1月の審査会からの進捗としましては、そこの真ん中の箱の下にありますように、3月31日で飯舘村、川俣町、浪江町、それから、翌4月1日付で富岡町が解除というふうになっております。これによりまして、居住制限区域、そして、避難指示解除準備区域につきましては、大熊町、双葉町を除きまして全域解除となったということであります。大熊町、双葉町につきましては、その下の箱でございますが、帰還困難区域が人口ベースで町の96%を占めておる状況ではございます。大熊町につきましては、大川原地区、それから中屋敷地区におきまして特例宿泊を実施しておりまして、今年のお盆も4回目の特例宿泊を実施することとなっております。双葉町につきましては、先ほど復興庁から御説明があったとおりでございまして、特定復興拠点の策定に向けた取組が進んでいるという状況でございます。
 それから、3ページ目はごく簡単に、今回の避難指示解除によりまして、避難指示区域からの避難対象者数が平成25年8月の区域設定時の約8万1,000人から、右側、4月時点で約2万4,000人と、約5万7,000人減ることとなりました。
 それから、4ページ目以降は、各町におけます復興に向けた取組の事例の紹介でございます。全てを御紹介する時間はございませんので幾つかピックアップさせていただきますと、5ページ目をごらんください。左下に飯舘村がございます。3月31日付で解除されたわけでございますが、その4つある写真の右上、特老ホームです。いいたてホーム、これは震災後も事業を継続しております。ただ、ここにつきましては、介護人材の確保という問題を抱えておりまして、引き続き国として支援をしている、そういう状況でございます。左下は、道の駅の整備でございますが、今月の12日に、までい館という名称で開業することとなっております。
 それから、右側の川俣町につきましては、右側、買物環境の整備ということで、とんやの郷という、これは山木屋地区でございますが、これが今年の7月にオープンしたところでございます。
 めくって6ページ目をごらんください。左上、浪江町でございますが、これも医療環境、あるいは買物環境の整備が進んでいるところでございます。
 最後、富岡町でございますが、医療環境としましては、これは予定でございますが、来年の4月に、いわゆる二次救急医療施設が開院する予定でございます。また、買物環境としましては、今年の3月30日付で比較的大きな規模の商業複合施設がオープンしたと、こういった状況になっております。
 私からは以上です。


【田村室長】  経済産業省、田村です。よろしくお願いします。次の同じ資料の束になっておりますが、被災12市町村における事業・なりわい再建支援の取組について、簡単に説明をさせていただきたいと思います。
 避難指示解除が進んでまいりますと、やはり事業のなりわいの再建というのが非常に大きな課題になってまいりまして、それの中核的な役割を果たさせていただいているのが官民合同チーム、先ほど復興庁の河本参事官からの説明にありましたとおり、相双機構、福島相双復興推進機構というところに、今般の福島特措法の改正をもちまして、国の職員を身分を持ったまま現役で派遣することができると、そのようなことにしていただきました。それを踏まえまして、これまで長期出張という形で弊省とかから出させていただいていました職員を、正式に相双機構の職員として派遣をしておりまして、今のところ、弊省、経済産業省から30名強、それから、農林水産省からも若干名、現役で職員を出させいただいておりまして、それをこちらに載せました企画グループですとか、事業者支援グループですとか、そういったところ、営農再開グループですとか、そういったところのグループ長、あるいはより現場で、事業支援という形で回らせていただいて、実際に支援策を御紹介したり、活用促進したりというふうな役割として出させていただいているというふうな状況になってございます。
 それで、官民合同チームがいろいろと支援をしてまいりまして、これまで4,700ぐらいの事業者を訪問させていただいている。これは商工事業者の方で言いますと4,700ぐらいを訪問させていただいておりますけれども、やはり再開意向というところで見ますと、既に地元、あるいは避難先で事業を再開されているというのが2ページになりますけれども、大体50%強になってございまして、それで将来的に地元に帰還して事業を再開したいとおっしゃっている方というのが、今再開されている方、あるいはこれから再開される方を合わせまして44%ということでなかなか、避難指示が解除されてきてもまだ地元に事業者の方々、企業の方々が戻り切っていないというのが現状になっております。また、やはり特に商業の方々で言いますと、商圏が大分小さくなってしまっておりますので、そこの部分の経営の改善と言いましょうか、そういったものというのが非常に重要な課題になってくるというようなことになってございます。
 それで、3ページ、4ページ目はブレークダウンした表ですので、これは省略させていただきまして、この夏の時点まで、一昨年の8月に官民合同チームが形成されてからどんな支援をしてきたかというふうな話でございますけれども、まず6ページ目で、これは前、御説明申し上げたかもしれませんけれども、官民合同チームが拾ってきたニーズなどを踏まえまして国の方で予算要求をいたしまして、228億円の基金、これは事業再開支援の個別の事業者への補助ですとか、官民合同チームによるコンサルティング支援とか、そういったものを合わせた228億円の基金を積みまして、それに加えまして、昨年度も予算要求をして、より充実したメニューを形成するように努めているというふうな状況になっております。
 7ページ目が商工事業者に対するこれまでの支援のおおむねの状況でございまして、それで、官民合同チームが設立されてから、この2年弱で4,700事業者を個別訪問しておりまして、それで再訪問してコンサルティング支援などをしておりますのが3,100に上っているというふうなことになっております。下の方をごらんいただきますと、コンサルティング活動の成果ということでございますけれども、官民合同チーム、これままで720者に対してコンサルティング支援を行ってきておりまして、中には、売上高が震災事故前に比べて120%ぐらいまで増えたというふうなところですとか、そういった成功事例というのもどんどん出てきている。ただ、中には、まだまだ状況的に厳しいところもありますので、そういったところに重点的に支援をしていくというふうなことをやっていきたいと思っております。
 それから、国の方で積んでいます補助金の活用促進なども含めて進めておりまして、事業再開等支援補助金、これは別の事業者に対して4分の3の設備投資補助支援を行うというものですけれども、それですとか人材確保、そういったものについての国と官民合同チームで共同して、地元の事業者の方々の再開、あるいは経営の改善、販路の拡大といったものを後押ししているというふうな状況になっております。
 それでは、個別のコンサルティング等の支援の状況というのは8ページ目から11ページ目までありますけど、こちらは省略をいたしまして、それで、単に補助金を活用していただくのをサポートするというだけでなくて、最近はイノベーション・コースト構想を通じまして、大分新たな企業もこの浜通り地域に進出し始めておりますので、そういったところと地場の事業者の方々のマッチング支援ですとか、そういった意味で、新たな1Fに代わるような新たな取引先といいますか、納入先といいますか、そういったものを作っていく、そういったような工夫もしております。
 それから、営農再開の部分についても、官民合同チームは大分力を入れてございまして、それが14ページ目、15ページ目あたりですけれども、営農再開グループ、こちらも大分体制を強化しておりまして、これまでは地域的な農業ビジョン作りといったものが中心だったんですけれども、個別の営農者の方々への訪問を通じまして、商工業と同様に、補助金の活用促進ですとか、あるいは例えばコンサルティング支援ですとか、そういったものも農業者の方々に対してもやり始めております。
 それで、これまで、15ページになりますが、官民合同チームは今年の4月から個別に農業者の方々を回り始めまして、既に515者、最新ですと600者ぐらいまで個別に訪問しておりまして、そういった方々に事業、営農再開のためのいろいろな支援措置の御紹介ですとか、今後に当たって必要なニーズの把握ですとか、そういったものに努めているというふうな状況になってございます。そういった意味で、商工業、農業とまだまだ再開が十二分でない地域ではあるんですけれども、そういったものを、方々を、官民合同チームをうまく活用といいますか、国と連携しながらしっかりとお支えしていく、後押しをしていくということを引き続きやってまいりたいと考えております。
 取りあえず以上でございます。ありがとうございます。


【鎌田会長】  ありがとうございました。それでは、ただいまの御説明につきまして、御意見、あるいは御質問がございましたら、お願いいたします。


【甲斐委員】  先ほど特定復興再生拠点区域の制度ができたということで、これで双葉町が申請準備を完了したというお話があって、大熊町はいかがなんでしょうか。


【河本参事官】  大熊町については、まだ現在、準備中だと承知しております。


【甲斐委員】  そういったところでは、先ほどの官民合同チームはちょっと役割が違うのかもしれませんが、そういう官民合同チームの支援のようなものはあるんでしょうか。


【田村室長】  そうですね。支援策といいますと、少し先ほど語弊があったかもしれませんが、必ずしも戻られる事業者の方だけを支援しているというわけではございませんで、別の移転先で再開されたり、あるいは販路を求めたりというところも御支援させていただいています。
 それから、事業再開の支援ということで言いますと、域内で再開支援する場合だけではなくて、域外で再開する場合についても、少し条件は違うんですけれども、しっかり国の方でも、県と連携して補助制度を作りまして後押しをしているというふうな状況になっております。


【鎌田会長】  よろしいですか。ほかにはよろしいでしょうか。
 それでは、どうもありがとうございました。
 次に、東京電力による賠償の現状について、東京電力より御説明をお願いいたします。


【近藤室長】  改めまして、東京電力ホールディングスの近藤でございます。よろしくお願いいたします。本日は、賠償の状況につきまして御報告する時間を頂き、まことにありがとうございます。弊社の原子力発電所の事故から6年5か月近くがたちました。しかしながら、今なお多くの皆様がまだ避難生活を継続されていらっしゃいます。また、風評被害もまだ根強く残っているところがございます。弊社といたしましては、こうした福島の厳しい現状をしっかりと受け止めまして、福島復興への責任を確実に果たしてまいる所存でございます。そして、福島の皆様が1日も早く生活再建、事業再開を果たされ、新たな生活を始められますよう、最後の1人までの賠償の完結はもとより、国の復興施策にも最大限協力をしてまいりたいと存じます。引き続き御指導のほどどうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、本日御用意いたしました賠償に関する資料につきまして、御説明をさせていただきます。資料4でございます。簡単な資料でございますけれども、ごらんいただければと思います。まず、1ページでございますが、賠償金のお支払い実績についてでございます。6月末の時点で総額が7兆4,673億円のお支払いをしております。なお、先月の26日に認定を頂きました新々・総合特別事業計画におきましては、要賠償額の見通しを9兆7,047億円というふうに見積もっているところでございます。
 下のグラフが賠償のお支払い額の推移でございます。最近は個人、それから、法人等の賠償が比較的落ち着いた状況を見せている一方で、こちらのグラフで法人・個人事業主などの項目に計上しております除染等の費用が大きく増加している状況にございます。
 続きまして、2ページでございます。まずは、農業の賠償でございますけれども、本年1月以降の農林業者様への賠償の状況でございます。前回のこの審査会でも御説明をさせていただきましたが、避難指示区域内及び出荷制限等の対象となる農林業者の皆様には、本年1月以降の損害といたしまして、年間逸失利益の3倍相当額を一括して賠償をすることとし、本年の1月より御案内を開始しておりましたが、6月末時点で約5,200件、226億円のお支払いをしているところでございます。
 一方、避難指示区域外の風評の賠償につきましては、2017年12月末までは従来どおりの賠償を継続しております。来年以降の賠償の具体的な在り方につきましては、相当因果関係の判断基準や賠償基準の具体的な内容等につきまして、農林業関係者の皆様の御意見を伺いながら鋭意検討を進めているところでございます。
 それから、続きまして、その下が訴訟等の状況でございます。6月末の時点で調停とか、仮処分も含めまして、送達件数が事故後399件、うち229件が終了となっており、現在、170件が係属中でございます。この1年間を見ますと、平均して月に3件程度提訴があったということになります。
 それから、その後、これまで同様に、参考といたしまして個人の方に対する賠償の合意状況、それから、福島原子力補償相談室の体制及び賠償項目別の合意金額の状況を掲載しておりますので、後ほどごらんを頂ければと思います。
 賠償状況については以上でございますけれども、先ほど行政財産等についての御議論を頂きまして、ありがとうございました。たくさんの御指摘を頂きまして、まだまだ細かいところを検討しなければいけないというふうに思った次第でございます。そのときに、私、申し上げるのを失念しておりましたので、この時間を頂きまして補足をさせていただきたいと思っております。
 先ほど私ども、いまだ避難指示が解除されていない地域の件については申し上げましたけれども、既に避難指示が解除されて帰還可能な地域における行政財産の賠償につきまして、弊社の考えをちょっと述べさせていただきますと、第二次追補の第2の4の備考のところに記載されております、一定期間使用ができないことという視点を踏まえた観点といたしまして、例えば、いわゆる賃料相当損害金とする方法が適当なものの一つではないかというふうに考えているところでございます。
 なお、賃料相当損害金とする場合には、地方公共団体様の条例で定められております行政財産使用料、これを参考とすれば比較的簡便に御請求いただけるものではないかと考えているところでございます。ちょっと後になって補足ということで申し訳ございませんでした。
 私からは以上でございます。


【鎌田会長】  後半に追加で述べられた点につきましては、先ほど申し上げましたように、次回に向けて議論を整理する中で盛り込んでもらった上で、次回のこの場での審議の対象にさせていただきたいと思います。その他の点も含めまして、委員の皆様から御質問、御意見ございましたら、お出しいただけますか。


【高橋委員】  賠償訴訟が進行して、終了が229件ということです。ただし、一審で終わったか、二審で終わったか、それから、上告審まで行ったのか、この辺の内訳はお分かりでしょうか。


【近藤室長】  細かい数字はちょっとあれなんですけれども、今、控訴審でやっているのは一桁ぐらいだというふうに、今、認識をしております。ほとんど一審で終わっておる、あるいは和解で終了しているというところがほとんどでございます。


【高橋委員】  では、要するに高裁まで行ったのは非常に少ないと。


【近藤室長】  はい、それほどございません。


【高橋委員】  申し訳ないんですが、敗訴案件はあるんですか。


【近藤室長】  もちろん一部認容というのは結構ございまして、すごく雑ぱくに申し上げますと、解決件数のうち、大体4割が棄却、却下ということでございまして、和解等で終わっておりますのが四十数%ぐらいと。残りが認容というふうになっております。


【高橋委員】  1割程度ですね。


【近藤室長】  1割強ですね。


【高橋委員】  1割強、はい。分析はされていますか。


【近藤室長】  内容についてですか。


【高橋委員】  はい。


【近藤室長】  ある程度分析はしております。やはりいろいろ難しいところもありまして、私どもはADRも同様に、同じくやっておりますので、そういったものとの比較とか、そういった分析はしているところでございます。


【高橋委員】  分かりました。どうもありがとうございます。


【鎌田会長】  ほかにはよろしいでしょうか。よろしいですか。
 それでは、どうもありがとうございました。


【近藤室長】  ありがとうございました。


【鎌田会長】  次に、議題の5番です。ADRセンターの活動状況について、ADRセンターより御説明を頂きます。


【絹笠次長】  原子力損害賠償紛争解決センターで次長をしております絹笠と申します。よろしくお願いします。着席にて御説明をさせていただきます。
 お手元の右上に資料5と書いてあるところの資料をごらんいただきたいと思います。「原子力損害賠償紛争解決センターの活動状況報告書~平成28年における状況~」という資料でございます。平成28年の状況につきましては、前回、速報値でですが、御説明をさせていただいておりますので、今日は、確定値に、平成29年上半期の数字も含めて御説明させていただきたいと思います。
 なお、平成29年上半期の数字につきましては、飽くまで速報値でございますので、若干数字に変更があるかもしれませんが、その点は御容赦いただきたいと思います。
 1ページめくっていただきまして、まず、センターの人員体制の整備でございます。こちらは前回、御説明させていただいておりますので、簡便に御説明させていただきますと、平成23年9月から、仲介委員22名、調査官19名で業務を開始し、その後、体制を整備しました。また、平成27年末から平成28年初めにかけて総括委員の方の交代がございますので、その際、総括委員会顧問の制度を設けて、前の総括委員を務めていただいた3名の方につきましては、総括委員会顧問に御就任いただき大所高所の観点から御意見、御助言を頂いております。下の表にございますように、平成28年末現在で仲介委員278名、調査官184名でございますが、平成29年6月末におきましてもほぼ同様でございまして、仲介委員は同じ278名、調査官の方は1名増えまして、185名となっております。
 その次のページをごらんいただきたいと思います。申立件数全体の推移でございますが、一番上のところにございますように、申立総件数が昨年末の段階で2万1,404件、平成29年6月末の段階で2万2,498件でございます。また、平成29年6月末の申立人数の方につきましては、集計、確認、整理などを行っておりますので、平成28年12月末の数字にそのまま足し上げるのは余り適切ではないので、バーにして記載しておりませんが、平成29年上半期の申立人数は2,266人で、単純に足すと10万4,467人となっているところでございます。
 全体の推移につきましては、次のページをごらんいただきたいと思います。こちらの一番右端のところから二つ目、平成28年の1月から12月の合計と、参考で書いてあります平成29年1月から6月のところの欄をごらんいただきたいと思いますが、平成28年1月から12月の合計が2,794件でございます。また、平成29年の上半期の申立件数が1,094件でございます。ただ、平成28年の上半期、ちょうど1年前の上半期の申立件数が1,677件でございますので、昨年の上半期が1,677件、これが今年の上半期は1,094件ということで583件減少、35%ぐらいの減少になっております。ただ、こうすると今年になり急に減少しているように見えますが、昨年の下半期、平成28年の7月から12月にかけての申立件数が1,117件でございましたので、昨年の下半期のレベルがこの平成29年の上半期も続いているという状況かと思っております。
 また、一番下の申立人数のところにつきましても、平成28年の1月から12月までの合計が9,508で、一番右下の平成29年の1月から6月の合計が2,266となっております。これも平成28年の上半期の数字と比較いたしますと、平成28年の上半期が6,894でございますので、6,894から今年の上半期の2,266と比較すると大体67%減となっております。ただ、これも平成28年の下半期が2,614となっておりますので、昨年の下半期のレベルが引き続いているという状況かと思っています。
 次に、和解仲介の状況、終了した案件の状況についてです。終了件数が平成28年12月末日現在で1万9,267件、これが今年の上半期の終了時点の平成29年6月末日現在で2万433件となっております。この2万433件の内訳というのがその下のグラフになっておりまして、申立件数が2万2,498件のうち、終了したのが今申しました2万433件、これが申立件数全体の91%となっております。この91%の終了件数2万433件の内訳が、その右側の円グラフでございまして、和解が成立したのが1万6,845件、取下げが2,003件、打切り等は1,585件となっているところでございます。
 1ページめくっていただきまして、こちらの経年的な推移を御説明させていただきたいと思います。表の一番右端の欄と右から2個目の欄の既済件数の数字をごらんくささい。平成28年の1月から12月までの既済件数の合計が3,406件であったものが、この平成29年1月から6月まででは1,166件となっております。これも昨年の上半期、平成28年の1月から6月までの数字が1,841件でございましたので、昨年の上半期の比較で申せば、1,841件から1,166件と、37%ぐらい減少しているところでございます。
 また、その既済件数の内訳でございますが、平成28年の1月から12月までの合計である3,403件中、和解が成立したのが2,755件、81%ぐらいで、和解の打切りが201件、これが6%ぐらいで、取下げが447件で13%ぐらいでございます。これが平成29年の上半期の1月から6月までの数字で申しますと、1,166件中、和解成立したのが878件で75%ぐらい、和解の打切りになった108件が9%ぐらい、取下げになったものが180件で15%ぐらいとなっておりまして、和解成立したものが81%から75%に、和解打切りになったものが6%から9%に、取下げになったものが13%から15%にということで、打切りと取下げになったものがそれぞれ数%ずつ増えているという状況になっているところでございます。
 その次の6ページ、7ページは、センターの福島事務所・各支所の所在地と広報関係でございまして、これも昨年と同様のもので、特段変更はございませんので、御説明の方は省略させていただきたいと思います。
 以上でございます。


【鎌田会長】  ありがとうございました。それでは、ただいまの説明について、御意見、御質問がございましたら、お願いいたします。大塚会長代理、どうぞ。


【大塚会長代理】  簡単な質問で恐縮ですが、5ページのところの御説明ですと、和解の打切りが6%から9%に上がって、取下げもちょっと上がっているということですが、これはどういうふうに分析されているのでしょうか。複雑な事件が少し増えているということもあるのでしょうか。その辺はいかがでしょう。


【絹笠次長】  複雑と申しますか、今年の活動状況等にも記載させていただきましたけれども、やはり被災地の方々の置かれている状況に相当程度差異が出てきたということから、個別事情に従って個々に見ていくというのが非常に増えてきており、その中でやはりそうした差異といいますか、そうした個別事情をなかなか認定することが難しい場合があるというようなことも生じてきていることによるのではないかと推測しております。ちょっと全般的な印象で恐縮でございますが、大体そういったところではないかと思っております。


【大塚会長代理】  ありがとうございます。


【鎌田会長】  ほかにはよろしいですか。どうもありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。
 議題の6番はその他でございますが、その他の議題といたしましては、本年3月に前橋地方裁判所の判決が出ました。これに対して国が控訴したという報道もございましたが、世間の関心も高まっているところでもございますので、前橋地裁も含めた国家賠償訴訟の状況につきまして、事務局より御報告を頂ければと思います。


【山下原子力損害賠償対策室次長】  御紹介ありがとうございます。それでは、福島原子力発電所事故に伴う国家賠償請求訴訟前橋地方裁判所判決について少し御説明させていただきたいと思います。
 法務省が、この訴訟自体の概要を対外的に御説明されていらっしゃるものを少し引用させていただきますけれども、福島原子力発電所事故からの、資料の方ではなくて、これは口頭での説明ですので、資料の方は後ほど引用で該当部分を御説明したいと思います。
福島原子力発電所事故からの避難者などが原告となられておりまして、全国20か所の地裁において国及び東電を被告とする30件の集団訴訟が係属中ということ、28年11月末現在ということでございますけれども、という状況でございます。
 原告に関しましては、責任論の観点から、国には、東京電力株式会社に対し規制権限の行使を怠った違法があるなどとされてございまして、損害論の観点からは、事故時の居住地からの退避を余儀なくされたこと、又は同居住地において放射線被ばくによる健康被害を危惧しながら生活せざるを得なくなったことへの慰謝料などについて、損害賠償請求がされているという事件でございます。
 平成29年3月17日に、前橋地裁におきまして一連の訴訟における初めての判決が言い渡されたということでございます。同地裁判決を受けまして、被告、国及び東電が3月30日、原告におかれましては3月31日に、東京高等裁判所への控訴を行ってございまして、判決は今の時点では確定していないというふうに理解してございます。また、年内の地裁判決が同様の国家賠償請求訴訟として言い渡される予定になってございますのは、我々が承知している範囲では、千葉地裁においての判決が9月22日の予定、福島地裁における判決が10月10日になされる予定というふうに聞いてございます。
 前橋地方裁判所の判決につきましては、提訴日は25年の9月11日でございまして、原告の方々は137名でございます。うち訴訟提起の後に亡くなられた方が3名いらっしゃるというふうに承知してございます。原告の請求内容に関しましては、一人当たり1,100万円、うち弁護士費用100万円を含むというものの慰謝料の支払いを求めたものであるというふうに承知してございます。
 それでは、判決の内容について、資料の基づいて、審査会で御議論いただいた指針ですとか、考え方と関連する記述の部分について触れさせていただきたいと思います。お手元の資料6の中で、まず目次がございますけれども、この第3章の裁判所の判断というところが3ページ目から記載がございますが、この中で特に審査会で取り扱っていただいている内容と関連が深い部分が第1節の被告東電に対する民法709条に基づく損害賠償請求の可否(争点①)となっている部分、あるいは第5節、被侵害利益の捉え方(争点⑦)という部分、さらには第6節、相当因果関係総論(争点⑧)となっている部分、このあたりは5ページになりますが、第7節の慰謝料算定における考慮要素(争点⑨)となっている部分、さらには第8節の中間指針等の合理性(争点⑩)というところは、特に関係性が深い部分かと考えてございまして、こちらの特に主要となる、関係するであろう部分を順番に御紹介させていただきたいと思います。
 大部になりますので、おめくりいただいて恐縮でございますが、95ページまで飛んでいただけますでしょうか。先ほど申し上げました第1節、被告東電に対する民法709条に基づく損害賠償請求の可否という部分でございます。こちらの段落としましては、一番下のところになりますけれども、「しかしながら」の後でございますが、「原告らが、被告東電に対し、主位的に民法709条に基づく損害賠償を請求して、原賠法3条1項に基づく損害賠償請求を予備的なものと位置付けたのに対し、被告東電が、原子力損害に係る賠償責任に関しては、民法709条に基づく損害賠償を請求することはできないと旨主張するため、原子力損害に係る賠償責任に関して、民法709条に基づく損害賠償請求が可能であるか否かについて以下検討する。」という部分でございますが、裁判所の判断といたしまして、おめくりいただきまして、99ページになります。第3の原賠法3条1項の解釈という部分の中の下の方のパラグラフになりますけれども、「以上によれば」という下から7行目、8行目ぐらいからの部分をごらんいただければと思いますが、読ませていただきますと、「原子力損害は、民法709条の定める不法行為にいう損害にも該当するものの、原賠法には、その制度趣旨に特定の政策的配慮が含まれており、私的自治の原則の下に過失責任を定める民法上の不法行為の規定と原賠法の制度趣旨には本質的な差異があるということができる。」と。さらにその下の部分で少し割愛させていただきますが、「原賠法3条1項が適用される場合においては、民法上の不法行為の責任発生要件に関する規定はその適用を排除されると解するのが相当である。」ということで、結論としましては、その次の100ページになりますが、「そうすると」の段落、2つ目のパラグラフからでございますが、「専ら原賠法3条1項が適用され、民法709条に基づく損害賠償請求はできないと考えられる。」という部分と、2としまして、「原告らは、原賠法3条1項と民法709条とは重畳的に適用され得ること、求償権は損害賠償責任が認められた場合に二次的に問題とすればよく、損害賠償請求そのものを制限するのではなく、求償のみを制限すればよいと主張するが、上記1のとおり問題がある上、原賠法4条1項及び5条の文言からして原告ら主張のように解釈するのは不自然であり、かつ、あえてそのような迂遠な解釈をすべき理由もない。」と書かれてございます。
 できるだけ手短にしたいと思いますが、次は、被侵害利益の捉え方(争点⑦)、179ページでございます。こちらにつきましては、様々な考え方が記載されてございます。細かくは読んでいただければと思いますが、181ページでございますが、下から2つ目のパラグラフ、「以上のように」という部分からですが、「本判決における平穏生活権は、権利利益の性質と多様性に加え、原告それぞれの属性や生活の在り方の多様性を反映したものとして、多くの権利利益を包摂するものということができる。」という記述でございますとか、186ページ、第9、まとめという部分でございますけれども、こちらも少し引用させていただきますが、「本判決における被侵害利益は、平穏生活権であるが、この平穏生活権は、自己実現に向けた自己決定権を中核とした人格権であり、上記のとおり、放射線被ばくへの恐怖不安にさらされない利益、人格発達権、居住移転の自由及び職業選択の自由、内心の静穏な感情を害されない利益を包摂する権利であり、後記第8節以降、これを被侵害利益として、他の争点について検討していくことになる。また、上記1)ないし4)は、慰謝料の額を検討するに当たって、数ある考慮要素の中で重要な意味を持つことになる。」というふうに位置付けられるということでございます。
 続きまして、同じページでございます。第6節、相当因果関係総論(争点⑧)でございます。こちらも途中は少し省略させていただきまして、210ページまで飛んでいただけますでしょうか。210ページのこれはパラグラフの途中でございますが、下から5行目あたりに、「そして、以上を基礎として」という部分から下の部分を読ませていただきますが、「当該移転者の、本件事故当時の生活の本拠、特に、その生活において被ばくすると想定される放射線量が、本件事故によって相当なものへと高まったかどうかや、年齢、性別、職業、避難に至った時期及び経緯等の事情並びに当該移転者が接した情報のもとにおいて、当該居住地の移転が、本件事故との関係で法的に相当といえるかどうかについて検討することが適切であると考える。」というふうにまとめられてございます。
 続きまして、あと少しでございますが、第7節、同じページ、211ページの争点⑨でございますが、218ページまで飛んでいただけますでしょうか。これもちょうどページの中段より少し上になりますが、「そうすると、」という部分でございますが、「被告東電には、本件事故の発生に関し、特に非難するに値する事実が存するというべきであり、被告東電に対する非難性の程度は、慰謝料増額の考慮要素になると考えられる。」という御判断を示されていらっしゃいます。
 さらに219ページ、第8の賠償額の差別的扱いというパラグラフでございます。ここは原告の「慰謝料算定の考慮要素として、中間指針等の示す自主的避難者等に対する賠償金額が、避難指示に基づいて避難した者に対する賠償金額と比べて著しく低いことを、内心の静穏な感情への侵害である」という御主張に対しての裁判所の見解でございますが、219ページの一番下の「したがって」の後からでございますが、「自主的避難者等が、避難指示に従って避難し、中間指針等に従った慰謝料を受けた者と同額の慰謝料を受け取り得る立場にあるということはできない。また、原告らの指摘する中間指針等の示す自主的避難者等に対する慰謝料の支払が低額であるという点は、中間指針等が、あくまで自主的解決に資するための指針であることに照らせば、最終的には訴訟をもってその当否が判断されるべきものであり、政策的に早期に支払を受ける対象者と、中間指針等に基づく任意の支払の段階から同等の金員が支払われなければならない理由はない。したがって、中間指針等において、自主的避難者等と避難指示を受けた者とを比べてその賠償額に差が存在することにつき、これを慰謝料増額の考慮要素と捉えることは、相当であるとはいえない。」というまとめ方をされていらっしゃいます。
 判断の最後になります。第8節、中間指針等の合理性の部分でございます。これは220ページから始まりますけれども、飛びまして228ページ、中間指針等の裁判上の位置付けというところが一番上からの部分でございます。これも該当部分を読ませていただきますと、「中間指針等は、原賠法18条2項2号の定めにより、原子力事業者と原子力損害を被った被害者との間に生じた紛争を自主的に解決するために策定された指針であり、多数の被害者への賠償を迅速、公平かつ適正に実現するために策定されたものである。そして、中間指針等は、その内容や、上記第2にみた能見善久の発言等に照らしても、そのような趣旨に基づいて、被害者の間において一定の類型化が可能な損害項目につき、合理的に一定の損害額を算定し、被告東電においては、少なくともこれを任意に賠償すべきとの指針を提示する役割を持つものであるということができる。他方、損害項目の選択及び損害額の算定方法については、原子力事業者である被告東電による迅速な賠償を実現するという見地から、裁判手続においても認容されることが予想される範囲内において損害項目及び損害額を定めようとしたものであることが認められ、被害者は、その被った個々の損害が中間指針の示すものを超える場合には、裁判手続等において個別にこれを主張立証することで、その賠償を求めていくことが想定されているといえる。不法行為に基づく損害賠償においては、被害を被った者は、原則として、不法行為との間に相当因果関係のある損害について、その賠償を求めることができ、このことは、原賠法3条1項に基づく損害賠償請求においても同様である。そして、中間指針等の趣旨及び性質が上記のような政策的な観点を強く反映しているものであることに照らせば、裁判所が、は原賠法3条1項又は国賠法1条1項に基づく損害賠償請求について、賠償すべき損害を算定するに当たっては、中間指針等の内容を事実上参考にすることがあり得るにせよ、中間指針等が定めた損害項目及び損害額に拘束されることはなく、自ら認定した原告らの個々の事情に応じて、賠償の対象となる損害の内容及び損害額を決することが相当であるということができる。」という御判断を示されておられます。
 これを踏まえた上で、最終的に認容金額というものについて、裁判所の資料の中では記載して、本日お配りしている中には、大部になりましたので割愛させていただきますけれども、中身を紹介させていただきますと、認容金額合計としては3,855万円、全部棄却された方は72名、一部容認の方が62名、避難指示等区域内の原告数72名のうち認容された方は19名、最高額が350万円、最低額は75万円、自主的避難等区域内の原告数58名に対しまして、うち認容されたのが43名で、最高額が73万円、最低額は7万円という資料が大部になりますけれども、後ろに付いてございます。また、弁済の抗弁等に関しましては、上記認容額は、東電が原告らに対して既に支払った金員のうち、裁判所が本件訴訟における請求についての弁済に該当すると認めた金員を控除した金額であるというふうにまとめられてございます。
 以上、御報告させていただきます。


【鎌田会長】  大部の内容を簡潔に御報告いただきまして、ありがとうございます。他方で、十分理解し切れなかったところもあろうかと思いますので、ただいまの説明に関して、特に事実関係等につきまして、御質問があればお願いいたします。よろしいですか。あるいは御意見。


【大塚会長代理】  この前橋地裁の判決は大変興味深いものだと思いますけれども、質問ではなくて、意見でございますけれども、御報告いただきましたとおり、この判決につきましては控訴されており、まだ確定していないということでございますので、現時点で審査会として、判決の内容とか中間指針等への影響の有無について議論するのは少し早いのではないかと、時期尚早ではないかと思っております。現時点では、中間指針等の見直しについて議論する必要はないと考えております。
 以上でございます。


【鎌田会長】  今、御指摘のありました点について、関連して御発言があればお受けしたいと思いますが、よろしいですか。本件訴訟は最初の判決ということで注目をされているわけでありますけれども、控訴中で、確定はしていないし、また、今後、別の判決も出てくるであろうと予想されるところであります。また、この判決の中でも、中間指針の基本的な考え方についてはむしろ肯定的であるというふうに理解もされますので、今後の動き等を注視して、必要に応じてまた議論の対象にしていくということで、現時点で、直ちにこの判決を理由に中間指針の見直しの検討をする必要はないというふうに考えておりまして、本日は、この判決の御報告を事務局から頂きたいということでお願いをした次第でございますけれども、そのような扱いで委員の皆様よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 以上で、用意した議題は全て終了でございますけれども、最後に、この機会に、その他の点につきましてでも、御発言がございましたらお願いをいたします。よろしいですか。
 委員の皆様から特に御発言がないようでしたら、本日の議事を終了させていただきます。長時間にわたりまして密度の濃い議論を頂きまして、ありがとうございます。
 今後とも、審査会としては必要に応じて会議を開催するとともに、適宜賠償の状況を確認していきたいというふうに思っていますので、委員の皆様方におかれましてもよろしくお願いいたします。
 最後に、事務局から連絡事項をお願いいたします。


【山下原子力損害賠償対策室次長】  ありがとうございます。今、会長からおまとめいただきましたとおり、次回の開催につきましては、また皆様と御相談して進めさせていただければと思ってございます。また、議事録の方は、こちらの方でまた、たたき台を作成させていただきまして、先生方、あるいはきょう御報告いただいた方々にも確認の上、御了承いただいたものをまた次回開催までにはホームページに掲載させていただくとともに、前回の議事録として配付させていただければと思ってございます。
 事務局からは以上でございます。


【鎌田会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。


―― 了 ――


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(研究開発局原子力損害賠償対策室)