資料1-1 2015年までの開発計画(案)

2015年までの開発計画(案)

日本原子力研究開発機構
次世代原子力システム研究開発部門

1. FBR サイクル実用化までの研究開発の基本的考え方


 FBR サイクルを取り巻く社会情勢やFaCT プロジェクトフェーズ1における進捗状況を踏まえ、これまでに原子力委員会の「原子力政策大綱」(平成17年10月11日)、資源エネルギー庁の「原子力立国計画」(平成18年8月8日)や「エネルギー基本計画」(平成22年6月18日閣議決定)、五者協議会の場等において示された共通認識及びFaCT フェーズ1成果に対する国の評価結果を踏まえて研究開発を進める。
 FaCT フェーズ2における研究開発の基本的な計画について、炉システムの基本計画については、原子力機構が三菱重工業(株)、MFBR とともに、日本原子力発電(株)の意向も踏まえ策定したものである。また、燃料サイクルの基本計画についても、原子力機構が日本原子力発電(株)の意向も踏まえ策定したものである。本基本計画は、革新技術の採否判断結果等とともに、日本原子力発電(株)と連名のFaCT フェーズ1報告書として取りまとめ、五者協議会としても合意する予定である。本基本計画に基づく、より具体的な研究開発計画については、原子力機構が設置する研究開発・評価委員会(外部有識者により構成)の評価を受ける予定であり、各年度の計画については、毎年度、五者協議会等の場で協議し、見直しをかけることとする。
 炉、再処理、燃料製造の各分野について、FBR サイクル全体としての整合性は取りつつも、それぞれの開発レベルに応じた開発の進め方とする。また、炉の安全基準やFBR サイクル全体の核不拡散性について国際的なコンセンサスを得ることを目標に進める。
 炉システムについては、2025年頃の実証炉運開、2050年頃の実用炉の実現を目指し、その前段階として、2015の実用化像提示に向けて着実に研究開発を進めていく。
 再処理システムについては、適切な技術実証を経てFBR の使用済燃料再処理が本格的に必要となる時期に合わせて研究開発を進める。LF 共用再処理の議論も踏まえ、軽水炉からFBR サイクルへの移行期にも対応したシステムとして考える。
 燃料製造システムについては、実証炉への燃料供給を通じて、現行技術からFBRサイクル平衡期で採用する技術に向けて、段階的な研究開発を進める。
 なお、中国やインドでの急激な原子力発電の伸びによる在来型ウラン資源の早期枯渇や主要国のFBR 導入加速の動きにも考慮して、2050年以前のなるべく早い時期にFBR サイクル技術を確立し、国際標準化に向けた日本のリーダシップの発揮及び実証炉以降の技術維持の観点から、FBRの早期実用化に柔軟に対応できることを目指す。
 MAを含むTRUリサイクルについては、実現までに比較的長期の研究開発が必要との認識から、FBR実用化時期との関連を考慮しつつ段階的に進めるものとする。当面、国際協力の可能性を模索しつつ、小規模なリサイクルを通じて基礎データの収集および技術課題の明確化を目指し基盤的に進める。

2.FaCTフェーズ2の研究開発の考え方

 FaCTフェーズ2では、2015 年に炉、燃料、再処理の各システムについて実用化像とその後の開発計画を提示することを目標に研究開発を展開する。
 開発に当たっては、炉、燃料、再処理、および廃棄物処分も含めたサイクル全体で整合性を考慮する。特に、燃料集合体等炉心燃料技術を取り合いの中心に置き、炉側と燃料サイクル側の相互の取り合いをあらかじめ考慮した開発を進める。
 2013年には中間取りまとめを行い、サイクル全体の整合性を確認する。中間取りまとめの結果や開発資源(資金、人、設備)の状況変化を踏まえ、必要に応じて計画の見直しを行う。
 また、プロジェクトを進めるにあたり、国際協力を有効に活用する。国際協力を進めるに当たっては、各国の特色や事情を十分踏まえたうえで、フランス等諸外国の開発動向に常に注意を払い必要な研究協力を実施する。
 なお、副概念である金属燃料サイクルについては、主概念として実用化像を提示する2015年頃にバックアップ技術としての位置付けを判断するため、電力中央研究所の協力を得つつ、基盤的な研究を継続するとともに国際協力による研究や情報収集を進めていく。

2.1 原子炉システム

(1) 基本的な考え方

 FaCTフェーズ1の成果、2010年の革新技術採否判断及び実証炉の出力・基数の暫定判断結果に基づき、2011年より5 年計画でFaCT フェーズ2を開始する。フェーズ1の革新技術の成立性評価から、FaCTフェーズ2では実証炉・実用炉の概念設計と技術実証にプロジェクトは移行する。具体的には、2025年に運転開始を計画する実証炉の開発に重点を移し、マイルストンとして設定した2015年の「実用化像の提示」に向け開発を継続する。「実用化像の提示」は、1実証炉と実用炉の概念設計結果とその性能評価結果、2設計成立性の根拠となる要素試験データ、及び3機器・システムの実証試験データが必要であり、それらをフェーズ2では実施する計画である。さらに、2015年には実用化までの開発計画を提示する。
 プロジェクトのチェックアンドレビューに関しては、5年計画の中間年度である2013年に中間評価を受けるとともに、機構内部のチェックアンドレビューとして、各専門分野の委員会、設計と開発をチェックするシステム検討会、等を組織し進捗をチェックする。


(2)開発計画


 上記の基本的な考え方に基づき開発計画を立案する。1フェーズ1で実施した概念検討では設計成立性を見通すために主要な部位・事象について評価してきたのに対し、概念設計では、全ての機器・系統、想定事象に対し網羅的に評価を実施して仕様を確定させる。2フェーズI で実施した要素試験は、主要構造及び部位の成立性を確認するものであったが、フェーズ2では2015年までの設計最適化や2016年以降の基本設計に必要となる要素試験データの取得を進める。3実証試験は2015年に機器・系統の設計成立性とその性能を実証するための試験であり、フェーズ2末までに実施できるよう準備を開始する。特に実証試験に関しては、試験実施に比較的長い期間を要すること、技術移転の主要なデータであることから、より確実な計画とするために以下の考えに基づいて計画を立案した。
 最初に実証項目を取りこぼし無く摘出するために、各機器・系統に対して、設計成立性、構造健全性、流動安定性、保守・補修性、等の視点から実証が必要な項目を摘出した。摘出された実証項目について、先行炉・一般産業技術での評価、解析での評価、を検討し、残された実証項目について実証試験を計画した。実証試験計画では、必要な模擬範囲・模擬スケール・使用流体を吟味し、必要十分な試験計画とした。
 さらに、今後運転が再開されるもんじゅに関しては、設計に必要なデータについては試験計画段階から設計者が試験計画に参画することによって設計へ反映するデータの質を高め、実証炉の概念設計への反映、及び2016年以降の実証炉基本設計へ反映するデータの蓄積に努める。

(a)概念設計
成果目標
 「実用化像の提示」に必要な実証炉及び実用炉の概念設計結果と、その性能評価結果を提示する。
開発計画の考え方
・2010年の革新技術採否判断、及び実証炉出力の暫定判断結果に基づき、出力75万kWe の実証炉概念設計を実施する。
・2011~13年の当初3年間で一巡のプラント設計を実施し、そのプラント概念と性能の概略を提示する。
・2014~15年の2 年間では、要素試験データ、一部の実証試験データを反映し概念設計を最適化する。

(b) 要素試験
成果目標
 概念設計の根拠となるデータ、及び2016年に開始する基本設計に必要となるデータを取得するための試験を実施する。
開発計画の考え方
・概念設計最適化に反映するデータを2013年までに取得する。
・基本設計に必要なデータを2015年までに取得する。
要素試験計画の概要:
・炉システムに係る技術を主としてプラントの設備単位で分類して要素技術開発を行う。分類項目は、安全性向上(自己作動型炉停止機構、確率論的安全評価、放射性物質移行挙動、自然循環除熱式崩壊熱除去)、コンパクト化原子炉構造、原子炉容器-配管-中間熱交換器結合系流動-振動(大型水流動試験)、改良9Cr 鋼2ループ大口径配管、ポンプ組込型中間熱交換器、防護管付伝熱管蒸気発生器、簡素化燃料取扱システム、SC 造格納容器、高速炉免震システム、炉心・燃料、安全要件(安全指針類のベースとなるもの)・安全解析手法等の技術基準、構造材料規格基準である。上述の分類項目毎に開発項目を摘出した。各開発項目に対し、データ取得のための方法・規模(気中/水中試験かナトリウム試験、等)や評価手法の開発段階(評価モデル構築・改良段階か検証段階、等)などの進捗度が把握できるように、2013年、2015年の各断面における成果目標を設定した。

(c)実証試験
成果目標
 実証炉の設計成立性及び性能を示すことが必要な機器・システムについて、実証試験が必要な項目を摘出し、その試験データを取得することで「実用化像の提示」に資する。
開発計画の考え方
・実証項目を機器・系統の別に網羅的に摘出し、それぞれの実証項目について以下の考え方で実証方針を設定した。
・もんじゅ等の先行炉の開発知見、一般産業技術を活用し性能を評価可能な機器・システムはその性能評価を持って実証とする(概念設計の中で実施する)。
・十分に検証された解析コードによる評価結果をもって実証とする(概念設計の中で実施する)。
・上記以外の試験を必要とする実証項目については、模擬範囲の適切なサイジング、環境の設定等により、必要十分な試験計画を立案する。
実証試験計画の概要
・機器実証については、「炉内計装の健全性やガス巻き込み・液中渦対策等を実証するための1 次系ホットレグを対象とした1/2.5 縮尺1次系統水流動試験」、「自然循環時の炉内伝熱流動等を実証するための1/5 縮尺炉容器ナトリウム伝熱流動試験」、「主循環ポンプの性能実証等のための1/1 ポンプ単体機器開発試験」、「直管SG の構造健全性、伝熱流動等の性能データを取得するためのSG機器開発試験(熱出力約10MW)」を計画した。
・系統実証については、「自然循環崩壊熱除去性能等を実証するための1/9縮尺水伝熱流動試験」、「主冷却系の流動安定性を実証するための1/2.5縮尺1次系統水流動試験(前出)」、「主冷却系と水蒸気系及び蒸気発生器の総合的な除熱性能・過渡挙動を実証するための冷却系システム試験(熱出力約20MW)」を計画した。

(d) もんじゅ成果の反映
成果目標
 実証炉の基本設計、安全審査、及び運転計画にもんじゅの性能試験、ナトリウム管理技術、保守経験、等の成果を反映し、実証炉の信頼性を高める。
開発計画
・2016年開始の基本設計までに、性能試験成果を用いて設計手法検証や解析コードのスケール効果の確認等を実施する。
・2018年末の安全審査までに、定格運転時の保守経験、ナトリウム取扱技術、信頼性データベースなどを蓄積し、これらの成果を許認可へ反映する。
・2025年の運開までに、更なる保守経験の蓄積とナトリウム機器の検査技術の高度化などの成果を、実証炉の運転へ反映する。

(e)その他
・炉心・燃料技術のうち、高燃焼度被覆管材料については、試験データを拡充の上、2013年に採否判断を行う。
全系統システム試験の実施要否について、2013年までに実証炉概念設計の成果、要素試験の成果を反映し、2013年に実施要否を評価する。

(3)留意事項


組織・体制の強化
 FaCT のプロジェクトマネジメント機能を強化するために、以下の施策をとる。
・中核企業であるMHI とそれが設立したFBRエンジニアリング会社であるMFBRの責任と権限を明確にし、これを強化するため、実証炉概念設計はMFBR/MHIが主体的に実施する。
・実証炉安全審査に向けた準備を、開発側(JAEA、メーカ、国、電力)が連携して進める。
・2016年頃以降、実施主体での実証炉の基本設計・安全審査・建設フェーズへ円滑に移行するための準備のため、人材移転を段階的に進める。また、人材育成も強化する。

2.2 再処理システム


(1) 基本的な考え方


 FaCTフェーズ1では、FBR平衡期におけるFBR 使用済燃料の再処理(F再)法として先進湿式法再処理を選択し、これを構成する6つの革新技術の開発を進めてきた。一方、この平衡期の前には長期間に渡るLWRサイクルからFBRサイクルに至る移行期(LF 移行期)が存在し、これに対応する再処理技術開発の重要性が強く認識されている。そこで、FaCTフェーズ2では、FBR 平衡期におけるF 再技術に加え、LF移行期への対応を考慮した第二再処理工場に適用するF再技術も対象として開発を実施する。

(2) 開発計画


 FaCT フェーズ2においては、FaCT フェーズ1の革新技術の採否判断やLF移行期への対応、核不拡散に係る国際的な動向等を踏まえ、従来のFaCTにおける再処理技術開発の進め方を見直し、開発技術を下記の通り改良・革新技術、将来技術、核不拡散技術に再整理して、開発を進める。プラント概念検討では、FaCTフェーズ1で実施した先進湿式法のF再プラントの概念検討を継続するとともに、LF移行期を考慮して比較的実現性の高いコプロセッシング法を採用したF再プラントの概念検討を実施する。
 2015年には、これら2つの概念検討結果をもとに、これらの実用化像(プラント概念、概略コスト)を提示する。また、技術開発の進捗状況・成果、六カ所再処理工場の操業経験にもとづく摘出課題等を踏まえて、2016年以降の技術実証の進め方及び技術開発計画を提示する。

(a) 改良・革新技術
 F再固有の技術の他、プラント概念に係わらず開発効果が高く、第二再処理工場での採用の可能性が高いと目される技術を対象とし、当面、本技術に重点を置いて開発を行う。2015年までに、実用化に向けて工学的成立性の見通しを得るためのデータを取得し、成立性を確認する。
・解体・せん断技術
 解体技術については、解体システムの信頼性向上のための各種要素試験や集合体構造の検討等を実施する。
 せん断技術については、せん断データの拡充を図るとともに、稼働率を確保する上で重要な粉塵対策を検討する。
・溶解技術
 溶解プロセス開発では、溶解速度の精度向上に反映するための溶解プロセスデータの拡充とモリブデン酸ジルコニウム等のスラッジ基礎データの蓄積を重点的に実施する。
 連続溶解槽の開発については、信頼性及び稼働率向上の観点から最も重要性の高い耐閉塞性確保と駆動部の耐久性確保に向けた開発を重点的に実施する
・遠心抽出器
 遠心抽出器については、信頼性及び稼働率向上の観点から、最も重要性の高い駆動部の耐久性確保に関する検討を重点的に実施する。
・廃棄物低減化
 廃棄物合理化技術に係る研究開発プログラムを構築するとともに、これに基づいて開発を進める。

(b) 将来技術
 FBRサイクルにおいて低除染・MAサイクルを実現するために必要となる技術等の開発効果は高いが、実現までに長期間を要する技術を対象とする。2015年までは開発の方向性を決めるために必要となるプロセスデータの収集を行う。
・晶析技術
 晶析技術では、技術的成立性を判断する上で重要なU 回収率の制御性と除染性能の確保に重点を置いた検討を実施する。
・MA 回収技術
 抽出クロマトグラフィ法では、廃液発生量、回収率、FP 除染係数に係る基礎データの収集を行う。また、溶媒抽出法について、抽出剤の選定、フローシートの構築等を行い、溶媒抽出法と抽出クロマトグラフィ法との比較評価を実施する。

(c) 核不拡散技術
 核不拡散に関しては国際的な動向等から今後開発が必須と考えられる保障措置技術の高度化や拡散抵抗性技術を対象とする。
 プラント概念検討とリンクしてF 再プラントを転用等に対し十分非魅力的であると主張できる不拡散性を設定し、2015年までにそのための技術開発計画を提示する。

(d) 概念検討
 先進湿式法による低除染・ MA サイクルのF 再プラント及びコプロセッシング法による高除染サイクルのF 再プラントの概念検討を行う。また、2016以降の技術実証の進め方について検討を行う。

(3) 留意事項

 上記の開発の実施にあたっては、以下の点に留意しながら開発を進めるものとする。
・六カ所及び東海での経験を踏まえた検討等により工学的信頼性を確保する。
・工程条件の変動、性能変化に対応したロバスト性を確保する。
・六カ所及び東海での運転・保守経験の反映や産業界、大学、研究機関等の関係者からの意見に留意することにより技術的盲点を排除する。
・フランス等諸外国の開発動向に注視する。
・炉、燃料製造との整合のとれた開発や廃棄物の合理化検討により核燃料サイクル全体を最適化に取り組む。
・検討継続となった技術については、その代替技術の検討も併せて進める。
・適切なメーカへの発注や大学・研究機関等の協力も得て、開発を進め、枢要技術の機構への集約を図る。

2.3 燃料製造システム

(1)基本的な考え方


 FaCTフェーズ1においては、FBR平衡期の低除染TRU燃料製造システム実現のための技術を対象として開発を実施した。フェーズ2に当たっては、軽水炉からFBRへの移行期に対応した燃料製造技術を対象に加えるとともに、実証炉への燃料供給を前提条件として、実証炉燃料製造への反映を考慮した実用化までの技術開発計画を設定する。即ち、低除染MAリサイクルに関連する技術については、実現までに比較的長期の基盤的な研究開発が必要なことから、供給先の炉心燃料開発に整合させながら、まず、実証炉燃料を高除染MOX燃料として経済性向上技術の成果を反映した製造プロセスで量産し、適切な時期から低除染TRUを実証炉の取替燃料として装荷することを基本的な方針とする。
 低除染TRU 燃料製造実用化施設については、2015年までにプラント概念の絞込み及び提示を行う。また、技術開発の成果等を踏まえて、2016年以降の技術実証の進め方及び技術開発計画を提示する。

(2)開発計画


 上述の考え方に基づき、実用化までに実施する技術開発の内容、その手順及び実証炉燃料製造への段階的な反映計画を設定する。段階的な技術開発の反映先を1実証炉初装荷炉心燃料製造、2簡素化ペレット法の採用による高除染MOX製造、及び3低除染TRU 燃料製造と区分し、それぞれの反映先に対する開発項目と2015年までの成果目標を以下に定める。

1 実証炉初装荷炉心燃料製造
 炉内性能、燃料製造性、再処理性等の取合いを最適化した燃料仕様及び燃料集合体構造を検討し、その結果に対応したペレット検査設備、燃料ピン加工・集合体組立設備の開発を行う。また、造粒、成型、焼結等の工程の改良、規格外ペレットリサイクルの合理化、燃料製造設備の自動運転信頼性向上、設備更新の合理化等の技術開発により、実証炉初装荷燃料製造の経済性向上、信頼性向上等を図る。
 これらの開発成果に基づき、実証炉初装荷燃料製造に適用する技術を選択するとともに、2015年までに実証炉初装荷燃料製造施設準備に必要な技術情報を整備する。

2 簡素化ペレット法の採用による高除染MOX 製造
 溶液段階でのPu 富化度調整について、硝酸ウラニル及び硝酸プルトニウムを用いた工学規模試験を行いPu 富化度調整精度の確認を行う。脱硝・転換・造粒一元処理、ダイ潤滑成型及び焼結・O/M 調整の一連の工程に対する小規模MOX 試験を行い、簡素化ペレット法の基本的なプロセス技術を確立するとともに、実規模試験設備の試作、ウラン等を用いた試験により、製造設備概念を固める。規格外ペレットのリサイクルに関しては、従来検討対象とした湿式リサイクルに加え、乾式リサイクルの適用可能性についての検討を行う。
 これらの開発成果により、2015年までに簡素化ペレット法の各工程の基本技術を確立する。

3 低除染TRU 燃料製造
 ペレット規模の低除染リサイクル試験等により、燃料製造工程におけるMA、FP のふるまいに関するデータを取得するとともに、簡素化ペレット法の製造設備概念に基づく遠隔製造システムの概念検討を行う。
 これらの成果に基づき、2015 年までに実用化施設のプラント概念を絞込み、実用化施設の概念を提示するとともに、2016年以降の技術実証の進め方及び技術開発計画を提示する。
 
 また、上記1~3の技術開発の考察・評価及び実証炉燃料の開発に必要なMOX 燃料の基盤技術開発を実施するとともに、焼結・O/M 調整技術及びセル内遠隔設備について、2015年までに革新技術としての採否判断を行う。

(3)留意事項


上記の開発の実施にあたっては、以下の点に留意しながら開発を進めるものとする。
・実MOX による試験を充実させ、工学的な信頼性を十分に確保する。
・各要素技術間の相関を押さえながら試験を進め、工程条件の変動、性能変化に対応したロバスト性を十分に確保する。
・産業界、大学、研究機関等の関係者の意見、関連する最新開発動向に留意することにより、技術的な盲点を排除する。
・国際協力等の場を活用し、フランス等諸外国の開発動向に注視する。
・六カ所及び東海での経験を踏まえた検討等により工学的信頼性を確保する。
・開発成果を炉、再処理等との取合いに適切に反映し、核燃料サイクル全体の最適化に取り組む。
・適切なメーカへの発注や大学・研究機関等の協力も得て開発を進め、枢要技術の機構への集約を図る。

3. FaCT フェーズ2の開発目標と設計要求の基本的考え方


 開発目標については、原子力委員会の性能目標に沿って設定する。フェーズ1と同様「2050 年頃の本格導入期におけるFBR サイクルの技術仕様の目標として設定し、我が国のFBR サイクル技術が国際標準技術として通用するよう目指す」という基本的考え方の下、フェーズ1の成果の評価結果およびそれを踏まえた国(原子力委員会)の方針や、状況の変化等を反映して、適宜、内容や表現を見直す。指標は「安全性および信頼性」、「経済性」、「持続可能性」、「核不拡散性」の4つとし、実用施設に関する目標は、競合電源に比肩する性能を求めるものとする。
 設計要求については、フェーズ1では「最低限守るべき制限値としてではなく、設計の努力目標として高い目標値」として設定していたのに対して、フェーズ2ではFBR サイクルの特徴を踏まえ、「実用施設あるいは実証炉の設計で達成すべき要件」として設定し、設定後も状況の変化等を反映して、内容や表現を適宜見直すこととする。また、各システムの開発フェーズを考慮して、段階的な設定とする。すなわち、設計要求をレベル分けし、レベル毎に要求内容の質(定性的、定量的)や要求項目の詳細化等、要求の深さを変えて、炉、再処理、燃料製造の各システムの研究開発フェーズ(設計の深さ)に合わせて、適切な設計要求を設定できるようにする。
 設計要求の対象となる施設は、基本的に2015年頃に提示する「実用化像」(実用炉、再処理施設(共用プラント、独立プラント)、燃料製造施設(低除染TRU燃料製造プラント))とし、炉システムについては実証炉も対象とする。実証炉については、基本的には実用炉と同じ設計要求を用いるが、経済性についてはスケールデメリットや初号機コストを反映した設定とする。
 なお、国際的な動向が重視される安全性や核不拡散性に関する要求項目については、引き続き国際的コンセンサス形成を進めつつ、その内容を適切に反映する。

以上

 

お問合せ先

研究開発局原子力課核燃料サイクル室

(研究開発局原子力課核燃料サイクル室)