論点 |
現状 |
対応 |
関連する原賠法の条文 |
法令 |
指針 |
その他 |
原賠法の適用期間 |
- 損害賠償措置として政府の補償契約(原賠法第10条)及び賠償措置額を超える原子力損害に関しての政府の援助(原賠法第16条)についての適用期限が規定されており、その期限は「平成21年12月31日まで」とされている。
- これまで概ね10年毎の改正の度に、10年の延長を行ったきた。
(なお、当該規定は、原子力損害賠償制度全体の見直しを行う契機としての意義もある)
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(第十条第一項及び第十六条第一項の規定の適用)
第二十条 第十条第一項及び第十六条第一項の規定は、平成二十一年十二月三十一日までに第二条第一項各号に掲げる行為を開始した原子炉の運転等に係る原子力損害について適用する。 |
賠償措置額・少額措置額(特例額)および補償料率 |
<(1)賠償措置額の改定について>
- 賠償措置額は、昭和36年原賠法制定当時に50億円とされて以降、4度の引上げが実施(注1)されており、いずれの場合においても、国際水準を勘案しつつ、責任保険の引受能力等を踏まえ、賠償措置額を設定してきている。
- 国際的水準の指標となる賠償措置額として、原子力損害賠償に関する三つの条約(注2)が参考となる。
- (注1) 賠償措置額の引上げの経過
- 昭和36年3月15日(制定当時)~50億円
- 昭和46年10月1日~60億円
- 昭和55年1月1日~100億円
- 平成2年1月1日~300億円
- 平成12年1月1日~600億円
- 平成22年1月1日~???億円
- (注2) 各条約において規定している賠償措置額について
- 改正パリ条約 7億ユーロ(約1,113億円)
- 改正ウィーン条約 3億SDR(約489億円)
- CSC条約 3億SDR(約489億円)
(さらに補完的基金として各国の拠出金が必要)
〔円換算レート:1ユーロ=159円、1SDR=163円(平成20年4月1日)〕
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(損害賠償措置の内容)
第七条 損害賠償措置は、次条の規定の適用がある場合を除き、原子力損害賠償責任保険契約及び原子力損害賠償補償契約の締結若しくは供託であつて、その措置により一工場若しくは一事業所当たり若しくは一原子力船当たり六百億円(政令で定める原子炉の運転等については、六百億円以内で政令で定める金額とする。以下「賠償措置額」という。)を原子力損害の賠償に充てることができるものとして文部科学大臣の承認を受けたもの又はこれらに相当する措置であつて文部科学大臣の承認を受けたものとする。
2・3 (略) |
<(2)少額措置額(特例額)の水準について>
- 原子力施設の形態等に応じて特例による少額の賠償措置額が規定されており、原賠法施行令において、120億円と20億円の2区分が設定(注3)。
- これまでも法定賠償措置額(上記(1))の引上げに伴い、その引上げ率のバランスを考慮しながら、改定が行われてきた。
- (注3) 少額賠償措置額の例(原賠法施行令第2条)
<600億円区分>
熱出力1万kW(キロワット)超の原子炉メートルの運転 使用済燃料の再処理
<120億円区分>
熱出力100kW(キロワット)~1万kW(キロワット)の原子炉の運転
一定の量・濃度以上の核燃料物質の加工 使用済燃料の貯蔵 など
<20億円区分>
熱出力100kW(キロワット)未満の原子炉の運転
一定の量・濃度未満の核燃料物質の加工 一定の量・濃度未満の核燃料物質の運搬 など
【補足】 運転期間中と変わらない賠償措置額の確保が義務付けられている解体原子炉(廃止措置期間中)に対する賠償措置額合理化について、今般の賠償措置額の改定とあわせて議論することが必要か。
<解体中の原子炉に対する賠償措置額の例>
- 原子力第1船むつ(使用済燃料はサイト外搬出済み)600億円
- 東芝教育訓練用原子炉(使用済み燃料はサイト外搬出済み)120億円
- ふげん(使用済み燃料はサイト内プールで保管中)600億円
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<(3)補償料率について>
- 政府の補償契約における補償料については、「原子力損害賠償補償契約に関する法律」において、損害の発生の見込みと国の事務取扱費等を勘案して定める料率を補償契約金額に乗じて得た金額とされており、当該料率(以下「補償料率」という)は、政令において万分の5とされている。
- 補償料率については、原子力損害賠償制度創設以降変更はないが、補償料率の変更について検討する必要はないか。
<現在の補償料の額>
- (賠償措置額:600億円)
- (補償料率:万分の5)
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<原子力損害賠償補償契約に関する法律>
(補償料)
第六条 補償料の額は、一年当たり、補償契約金額に補償損失の発生の見込み、補償契約に関する国の事務取扱費等を勘案して政令で定める料率を乗じて得た金額に相当する金額とする。
<原子力損害賠償補償契約に関する法律施行令>
(補償料率)
第三条 法第六条に規定する政令で定める料率(以下「補償料率」という。)は万分の五(大学又は高等専門学校における原子炉の運転等に係る補償契約については、万分の二・五)とする。
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罰則について |
- 原賠法24条及び25条においては、損害賠償措置を講じていない場合や、報告徴収違反等が生じた場合の罰則について規定されている。
- これまで、原賠法と関連の深い原子炉等規制法とのバランスを考慮して罰金の額等が改定されてきたところ。
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(罰則)
第二十四条 第六条の規定に違反した者は、一年以下の懲役若しくは五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第二十五条 次の各号の一に該当する者は、二十万円以下の罰金に処する。
- 一 第二十一条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
- 二 第二十一条第一項の規定による立入り若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をした者
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原賠法の適用の考え方 |
- 国際条約においては、原子力損害を損害の類型として定義しているが、原賠法については第2条で「原子力損害」を定義しており、もっぱら「放射線等の作用」との相当因果関係の有無により、原子力損害を判断。
- 相当因果関係の有無の捉え方は解釈の幅が広く、原賠法の適用に考え方についてなんらかの整理をする必要はないか。
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(定義)
第二条 (略)
2 この法律において「原子力損害」とは、核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用(これらを摂取し、又は吸入することにより人体に中毒及びその続発症を及ぼすものをいう。)により生じた損害をいう。ただし、次条の規定により損害を賠償する責めに任ずべき原子力事業者の受けた損害を除く
3・4 (略)
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JCO臨界事故を踏まえて整理すべき事項 |
<(1)原子力事業者・地方自治体・国等の基本的役割や連携方策の整理>
- JCO臨界事故に際しては、JCOが被害者と直接交渉を行うのは困難であった。
- 県、村、保険プールの支援は有効であった(注4)。
- また国は、原子力損害賠償紛争審査会の設置(以下(2)参照)、原子力損害調査研究会の設置(以下(3)参照)等を実施した。
【JCO臨界事故における原子力損害賠償の概要】
- ◇JCOに寄せられた賠償請求件数:約8,000件(営業損害は7割~8割)
- ◇JCOが支払った賠償金総額:約150億円(当時、原賠法に基づく核燃料加工事業者の賠償措置額は10億円)
- (注4)JCO臨界事故に際しての、村、県、原子力保険プールの主な対応
- <村の対応>
→被害者との間の調整や関係団体等(商工会、農協、漁協等)と連携して域内の被害を取りまとめ
- <県の対応>
→仮払いの際には窓口となり、被害者との間を調整を行うとともに、賠償金確定に際しては、被害者との調整や、被害者とJCOの交渉へ陪席
- <保険プールの対応>
→JCOから賠償請求に関する情報を収集し、分析。原子力損害調査研究会における検討においてデータ提供
(補足)JCO臨界事故においては、原賠法第16条に基づく政府の援助は行われていない。その発動要件や、実際に発動するとした場合の具体的な援助方法については、必ずしも明確になっていない。 |
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(国の措置)
第十六条 政府は、原子力損害が生じた場合において、原子力事業者(外国原子力船に係る原子力事業者を除く。)が第三条の規定により損害を賠償する責めに任ずべき額が賠償措置額をこえ、かつ、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、原子力事業者に対し、原子力事業者が損害を賠償するために必要な援助を行なうものとする。
2 前項の援助は、国会の議決により政府に属させられた権限の範囲内において行なうものとする。 |
<(2)原子力損害賠償紛争審査会について>
- 原賠法第18条においては、原子力損害の賠償に関して紛争が生じた場合における和解の仲介を行う組織として原子力損害賠償紛争審査会の設置が規定されている。
- JCO臨界事故の際は、紛争審査会に持ち込まれた案件は2件であった。
原子力損害賠償紛争審査会 平成11年10月28日設置
(開催実績)
- 原子力損害賠償紛争審査会 2回開催
- 原子力侵害賠償紛争審査会小委員会 28回開催
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(原子力損害賠償紛争審査会)
第十八条 文部科学省に、原子力損害の賠償に関して紛争が生じた場合における和解の仲介を行わせるため、政令の定めるところにより、原子力損害賠償紛争審査会(以下「審査会」という。)を置くことができる。
2 審査会は、次の各号に掲げる事務を処理する。
- 一 原子力損害の賠償に関する紛争について和解の仲介を行なうこと。
- 二 前号に掲げる事務を行なうため必要な原子力損害の調査及び評価を行なうこと。
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3 (略)
<(3)損害認定の考え方について>
- JCO臨界事故の際に、原子力損害についての損害認定の考え方を整理することを目的として、科学技術庁(当時)の委託により、「原子力損害調査研究会」が設置され、報告書が取りまとめられた。(なお、JCO自身も平成11年12月に「JCOの補償等の考え方と基準」を示したが、県や村に受け入れられなかった)
- JCOと被害者との間で、損害賠償の範囲及びその金額を確定するプロセスにおいて当該報告書は有効に活用されたとの評価が多い、原子力損害の迅速かつ公平な賠償に資するものであったと考えられる。
「原子力損害調査研究会」取りまとめの報告書〔中間報告書(平成11年12月)最終報告書(平成12年3月)〕について
- 「身体の傷害」「避難費用」「検査費用(人)」「検査費用(物)」「財物汚損」「休業損害」「営業損害」「精神的損害」の8項目について損害認定に係わる一つのメルクマールを示す。
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<(4)その他>
- 損害発生状況の迅速な把握方法
- 幅広い関係者間の連携・協力
- 原子力損害賠償の申請等のためあらかじめ用意しておく資料・様式 など
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国際条約への対応 |
- CSC改正は、今後アジア地域における原子力損害賠償制度を構築できる可能性もあることから、仮に我が国が何れかの条約への加盟を検討する場合はCSC条約が望ましいとの議論がある。
- 一方、CSC条約加盟にあたっては拠出金制度を如何なるものするか、原子力損害の定義の整合性など、整理を要するべき事項が多い。(現状、我が国を含め、アジア諸国はいずれの条約にも加盟していない)
原子力損害賠償制度に関する三つの条約
- 【パリ条約(改正パリ条約)】
- 1968年発効
- 英・仏・独・伊等OECD加盟国を中心に15ヶ国が締約
- さらに2004年に改正パリ条約が採択。改正条約の批准に向けて、各締約国は国内法等の整備を行っているところ。
- 【ウィーン条約(改正ウィーン条約)】
- 1977年発効
- 中東欧等IAEA加盟国を中心に34ヶ国が締約
- さらに2003年に改正ウィーン条約が発効。改正条約の締約はアルゼンチン、ベラルーシ等、五ヶ国のみ
- 【CSC条約】
- 1997年採択(未発効)
- 締約国は、アルゼンチン、モロッコ、ルーマニア、米国の4ヶ国(特に最近批准した米国は条約発効に向け、東アジア諸国へ条約加盟への働きかけを強めている)
- パリ条約、ウィーン条約の非加盟国を含め、より多くの国の加盟を念頭においている
- 加盟国の拠出による基金を創設し、国際的な損害賠償体制の構築を目指して策定された
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