原子力損害賠償制度の在り方に関する検討会(第3回) 議事録

1.日時

平成20年7月4日(金曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省 10F2会議室(文部科学省10階)

3.議題

  1. 原子力損害の賠償に関する法律の改正事項について
  2. 原子力損害賠償制度の運用に当たっての考え方について

4.配付資料

  • 資料3‐1 原子力損害の賠償に関する法律の適用期限の延長について(案)
  • 資料3‐2 損害賠償措置額の見直しについて(案)
  • 資料3‐3 損害賠償措置額の見直しに関連する事項について(案)
  • 資料3‐4 罰則規定の見直しについて(案)
  • 資料3‐5 原子力損害の賠償の履行の確保のための国の役割及び原子力損害賠償紛争審査会の活用について(案)
  • 資料3‐6 原子力損害賠償制度の運用に係わる指針に規定する事項について

5.議事

【野村座長】
 定刻になりましたので、ただいまから第3回の原子力損害賠償制度の在り方に関する検討会を開催いたします。
 本日は、委員13名のうち10名の方にご出席いただいております。また、本検討会の顧問として谷川先生、下山先生にもご出席いただいております。それから、過去2回の検討会にご都合によりご欠席されていた原委員から、一言お願いいたします。

【原委員】
 原でございます。海外出張と病気ということで2回欠席させていただきまして、誠に申しわけありません。微力ながら、多少でも役に立てればと思います。よろしくご指導いただきたいと思います。

【野村座長】
 なお、今回の検討会には研究開発局から古谷審議官にご出席いただいておりますので、ごあいさつを。

【古谷審議官】
 古谷でございます。おはようございます。実は私も、1回目と2回目と別件の都合が重なってしまいまして、今回が初めてになります。これまで2回、非常に積極的なご議論をいただいておりますけれども、引き続き、この原子力損害賠償の件につきましては、重要な話でございますので、よろしくご議論のほどをお願い申し上げたいと思います。

【野村座長】
 続きまして、配付資料の確認をいたしますので、事務局からお願いいたします。

【山野原子力計画課長】
 まず、議事次第を見ていただきたいと思いますが、配付資料として資料3‐1から3‐6まで、6種類の資料が配付されてございます。個々には確認いたしませんので、過不足等ありましたら、その都度言っていただければ対応いたしたいと思います。
 また、席上だけ前回の議事録のテープ起こしのドラフトが配られてございますので、適宜後で見ていただいて、何かありましたら来週10日ぐらいまでに、ご連絡いただきたいと思います。よろしくお願いします。

【野村座長】
 それでは、議題(1)に入りますが、議題(1)は原子力損害の賠償に関する法律の改正事項についてということで、実際の法改正が必要な事項についてご検討いただきたいと思います。事務局より、項目ごとに改正事項の内容と論点のポイントについてご説明をしていただいて、その後で委員の皆様からご意見をいただきたいと思いますので、事務局からご説明をお願いいたします。

【山野原子力計画課長】
 資料3‐1から、今ご説明ありましたように、法律改正事項として確実に法律に絡む事項につきまして、若干マイナーな点もありますが、一つずつそれぞれご議論いただきたいと思います。
 まず、資料3‐1で、これは適用期間の延長ということでございます。今の第20条では、政府の補償契約や援助について平成21年12月31日までに開始した原子炉の運転等に適用するということですから、何もしないとこの適用条項が切れるという事態になるわけです。これが、法律改正が絶対要るという話でございます。若干、下に経緯等を含めて書いていますが、制定当時、10年間の法律の適用期限を予定して、その後の取扱いについては、色々な進展状況でありますとか、民間責任保険の引受能力なんかを踏まえて、その都度考えていこうという趣旨で、このような時限的な規定ぶりになっているということでございます。
 それで、適用期限が切れるという10条と16条でございますが、まず、10条につきましては、地震・噴火などの損害を担保する政府で結ぶ補償契約の規定でございます。その規定につきましては、現在におきましても民間の責任保険で対応することは簡単ではなかろうということで、そういう自然災害なんかを念頭に置く部分については、引き続き政府の補償契約で担保するのが常識的には適当ではないかということでございます。
 あと、16条のほうは、保険での賠償措置額を超えた場合に、必要に応じて政府が援助するという規定でございます。この規定につきましても、国民の安心・安全を担保して、ちゃんと理解を得ながらやっていくということから考えますと、今後とも必要ではないかということでございます。
 また、これまで10年間ごとの延長をやってきたところですが、この規定は、結果として、10年ごとに賠償制度について再検討する役割も果してきているという事実がございます。
 そのようなことから、次回の改正におきましても、これまでと同様に、この20条の規定につきましては、10年間の延長を図ることが適当と考えたらどうかという提案でございます。
 簡単でございますが、説明は以上でございます。

【野村座長】
 それでは、今の点について、質疑応答の時間にしたいと思いますけれども、できましたらご発言のときには挙手をお願いしたいと思います。こちらから指名してご発言いただくことにしたいと思います。これは、今稼働しているものについても過去に遡って金額が上がっていくんですか。

【山野原子力計画課長】
 いえ、既に運転を開始しているものについては影響がないということなんですが、新たに……。

【野村座長】
 影響がないというのは、その金額は上がっていかないということですか。

【山野原子力計画課長】
 既に運転を開始しているものについては、適用期限が切れることの影響はありません。金額は別途、賠償措置額の規定のところで上がっていきます。

【野村座長】
 それでは、岡本委員。

【岡本委員】
 おそらくご意見が皆さんないというのは、多分必要十分であるということなんだと思います。唯一あるとしたら、この10という年限ですね。これが、色々な世界の動きを考えたときに、次に10年というスパンでいいかどうか。8年なり、7年なり、色々あると思うんですけれども、10年前には実は原子力ルネッサンスという言葉はほとんどなくて、今は原子力ルネッサンスの中で環境が大分変わってきている。多分そういうことから、これを10にするか、5にするか、8にするかということぐらいしか決めるところはないのかなという気はしております。
 ただ、私は、今ご提案にありましたように、従来10年ごとにやってきているということと、それから10年前の状況等を考えると、私もこの10年という数字には賛成したいと思っております。

【野村座長】
 はい、下山顧問。

【下山顧問】
 私は、今おっしゃられたとおり、10年は別に異論はないのでございますけれども、10年置きますと、10年の間はしなくていいという感覚がどうしてもあるわけで、逐次、国際的な状況とか色々な変化に応じて、やはり文部科学省ではレビューをしておいていただきたいというのが1つでございます。10年前の専門部会の報告書でも色々注文がついておりますが、結局、今日までそのままになっておりますので、今後は、逐次必要があれば、この10条と16条では確かにそれでよいかも知れませんけど、他の件については、国際的な動向、特にアジア問題を含めて見直していっていただければと思います。
 それからもう一つ、歴史的な話で恐縮なんですけど、10年と言ったのは、プライス・アンダーソン法というアメリカで最初の原賠法ができたときに、やはり10年見直しとなった。ただ、そのときの動機というのは、保険プラス国家補償5億ドルというのがありまして、国家補償がどこまで必要かということをレビューしていくというのも1つ。保険のキャパシティーが上がることもですけど、事業者自体や原子力技術の発展によって、それだけのものを国が補償を用意する必要があるのかどうかという議論です。
 日本の場合は、逆に、最初は我妻先生の専門部会では国家補償という線を出したんですけど、それが大蔵省の反対によって国の援助という形になったわけなんです。そうすると、その議論というのは残りまして、やっぱり見直すんだということになれば、やがてはその援助から、必要があればそういったアメリカ流の補償にもなるという可能性も言わずもがなで入っているのかなということで、合意ができるという面があったと思います。
 ですから、保険のキャパシティーが増えてくるということももちろんですけれども、もう一つ、16条の見直しということは、要らないという話ではなくて、むしろ、今の援助というのは、これはどこの国でもなかった方法で、他は全部国の補償だったわけですから、そういう面も納得させるため、国家補償論者を説得するための一つの方法だったんじゃないかと今は思う。

【谷川顧問】
 歴史的には色々あるけど、10年と言って今までやってきて、しかも10年来たら、やらなきゃならないところだけはとりあえずやろう、しかし、問題は残っているんだから、次の10年が来るまでの間になるべく早くやれと何遍注文をつけたって、文書には出てくるけれども、やった試しがない。また10年来たかという話になるものだから。まあ、それはあんまり言ってもしょうがない。

【山野原子力計画課長】
 ちょっと事務局から補足します。今回は、別にこの法律だけじゃなくて、マニュアルとかも作ろうとしていますので、ああいうものは、それこそ、こういう法律をちょっと直すとかという以上に、色々レビューがされていくと思うんですね。だから、ここの規定は、例えば10年延長したとしても、その間の期間、何もしないんじゃなくて、特にマニュアルみたいなものは、その都度レビューが入ってくるから、何らかの形でこういう場が動いてくるんじゃないかなと想定しています。

【下山顧問】
 この10年というのは、かなりこの分野では変化があったんですね。今回は国際的な面での動きですけれども、各国の損害賠償の額とか、あるいは幾つかの条約の改正とか、新しい条約の制定とかいうことで。それからもう一つは、アジアに関しては、近辺の国々が非常に原子力発電を伸ばしてきたという面です。この3つぐらいが大きな変化だと思うので、今度の改正においては、何かの形でそういうものが反映されるようなあり方であってほしいという感じがいたします。
 それから、言わずもがななんですが、この法律が初めて適用されたのがJCOで、それは非常に大きなことだと。

【谷川顧問】
 さっき保険のキャパシティーの話が出ていたけど、保険のキャパシティーをにらんで額の改正をやってきていて、これが10年と言うと池田勇人を思い出すのだけど、10年たったら所得倍増というやつで、300億の600億、今度は1,200億でしょう。倍、倍、倍と来るけれども、今度の1,200億は、現在の色々な条件を考えればキャパシティーの範囲内で処理できるのかもしれないけど、その次の10年になったときには、その倍額のキャパシティーが確保されるという保証は全くないし、むしろ悲観的な結果が出てくるんだということを念頭に置いておいたほうがいいという状況だと思いますので、それだけは覚悟しておいていただきたい。

【野村座長】
 それでは、この問題については、従来どおり10年ということで。10年間見直さないという意味ではなく、逐次確認していただいく、ということでよろしいですね。
 それでは、次に、損害賠償措置額の見直しについて、課長からご説明をいただきます。

【山野原子力計画課長】
 まず、資料3‐2でございます。これは法律で書いている措置額ですが、前提として、見直しの経緯を書いていますが、当初50億から出発して、先ほど倍々という話も出ていましたが、50、60、100、300、600と改正のたびに引き上げてきてございます。そのときの考え方は、国際的な標準を勘案しつつ、実際上、保険で引き受けられるかということを踏まえながら設定してきたということでございます。
 それで、第1回目にも説明しましたように、実際上は、保険については海外のプールと再保険を受けたり出したりしているものですから、結果的に言うと、そういう国際水準が引受能力の常識となって国際相場観ができてきて、ヨーロッパ先進国と日本は大体同じようになってきたというのが今までの経緯でございます。
 (2)で、前回改正以降の状況ということで色々書いていますけど、原子力の役割は変わっていませんし、この10年間のうちにはJCOも起こったというようなこと。それで、法律上の措置額を大幅に上回る賠償金が支払われるとか、最近は地震への不安もあるというようなことから、今後の原子力活動を考えた上でも、国際的な水準を勘案しつつ、万が一の際に十分対応できるような適切な額を定めておく必要があろうと考えられます。
 そこで、まず国際水準の状況を見てみますと、以前の説明の繰り返しになりますけれども、今、パリ条約とウィーンの条約は、パリ条約が7億ユーロ、ウィーン条約が3億SDR(特別引出権)。またCSC条約につきましては、3億SDR(特別引出権)とした上で、補完基金として各国が拠出して助け合うというような仕組みになってございます。
 一番後ろの資料に各国の状況を書いていますが、改正パリ条約の関係のヨーロッパグループは、国内法の手当てを進めているところです。7億ユーロということですが、スペインとか、ドイツとかはもう対応していますが、その他のところは現在進行形という状況でございます。また、改正ウィーン条約とかCSCの関係は3億SDR(特別引出権)ということで、一部のチリみたいなところを除きまして、大体条約上の措置はできているというような状況でございます。
 それでまた2ページ目に戻りまして、国際的にちょっと考えておかないといけないのは、パリ条約もさることながら、やっぱりCSCだと思いますので、CSCだけ資料に書いてございます。1回目にも若干議論がありましたように、仮に我が国がそういう条約の関連を考えるということになった場合には、常識的には、やっぱり地域的な問題とかから、パリ条約とかウィーン条約ではなくて、CSCを念頭に置くのが現実的であろうということでございます。それで、CSCについては、繰り返しになりますが、3億SDR(特別引出権)を確保しておくとされているというようなことでございます。
 それで、どれぐらいの拠出金が各国から出てくるのかということなんですが、数とか、どういう国かにもよりますが、拠出金を集めると200億円程度が見込まれているということで、これもCSCの中では、全部その国で使えるんじゃなくて、半分ぐらいはその国で、残りは越境損害の補償に充てるというようなことになってございます。なお書きで書いていますが、CSCに入るかどうかというのは、メリットも色々な課題もあるので、やっぱりきちんと検討しないといけないということで、その検討は今回ではなくて、次回以降にしたいと思いますが、そういう状況であるということです。
 そのような背景を踏まえた上で、今回どうするかということが2.でございます。とりあえず、2つのオプションを示してございます。基本的な考え方としましては、国際水準とか保険の引受能力を勘案してやっていくということで、まず(1)番目のオプション1、これは極めてオーソドックスなオプションでございます。改正パリ条約を念頭に引き上げるということで、日本は原子力先進国ということですから、欧州先進国がやろうとしている7億ユーロを目安として引き上げるということです。そうでありますと、現在の600億円というのが、7億ユーロですから、レートでの変動はもちろんありますけれども、倍ぐらいになるということで、こうなった場合には賠償能力は大幅に強化されるということです。これがオプション1です。
 なお、その際の考慮事項として、やっぱりCSCとの関係がまず1点でございまして、CSCの場合にどうなるかといいますと、3億SDR(特別引出権)を超えると、いざというときに、他の国から来る拠出金のもらい方として、図で言うと次の3ページ目に2つあると思うんですが、もしも7億ユーロにして、仮に我が国で事故があったときには、7億ユーロは保険で出ますから、その7億ユーロを日本としては国内法で措置していますよ、とIAEAとの関係で通告しておくと(1)の図のようになって、損害が7億ユーロを超えたら拠出金が各国からもらえる。この場合には、日本は他の国に比べて損するのではないかということになる。
 それでは(2)の図も考えられるんじゃないかということで、これは7億ユーロのうち、とりあえずIAEAに3億SDR(特別引出権)相当を登録しておいて、3億SDR(特別引出権)部分は国内の保険でやって、その後、各国からの拠出金が間に入って、それを超える部分はまた国内の保険の世界でてん補するということで、この場合には、少なくとも、CSCに入って我が国が不平等になるというようなことにならないけれども、こんな制度・保険が国内で成り立つかどうかという検討が必要だろうということでございます。
 それと、もう一つの考慮の点は、2の保険プールの引き受け能力ということなんですが、そこは保険プールさんに、もしも7億ユーロ相当になったときに引き受けられるかどうかということをちゃんと確認していく必要があるということでございます。
 (2)番目がオプション2でございまして、これは、今はとりあえず600億円で置いておくという案でございます。それは、繰り返しになりますが、もしもCSCを念頭に置くのであれば、その基準をとりあえず今現在でも満たしているということですから、そんなヨーロッパ並みに上げる必要はないんじゃないかというオプションでございます。600億円であっても、CSCにもしも加入する場合には、それに各国からの拠出金分が上乗せで実際に入ってくることとなります。
 ということなので、ここは事務局としてもオプション1、オプション2とお示しし、ちょっと議論していただきたいなということで、問題提起型の資料にしてございます。
 以上でございます。

【野村座長】
 それでは、今のご説明をもとにご意見をいただければと。
 谷川顧問。

【谷川顧問】
 今のCSCの説明で、オプション1の方式、アメリカがやろうとしているのは、これに似た方式だろう。

【山野原子力計画課長】
 私もコンポーネントは知らないですが、アメリカはオプション1で言う(2)をやろうとしている。加入するときに、他のところが何かあったときには3億SDR(特別引出権)以上で自分の国の金を拠出するのだから、自分の国が拠出金をもらうときもやっぱり同じようにもらおうとなると、彼らの制度もぶつ切りした間にそういう拠出金を入れて、また国内の共済に戻すという(2)の制度設計を念頭に置いているようです。

【谷川顧問】
 この図で、全部がこうなる形じゃないんだよね。アメリカの場合、国内だけで問題がおさまる場合には、このCSCの拠出の分というのは勘定しない。拠出が入ってくるときは、こういう格好になりますよというやり方。だから、制度は複雑なんだけど、拠出する側の国内的な抵抗感は少ないという工夫はしている。(1)だと、国内的には、7億ユーロぐらいに上げておくと、もらう機会はほとんどないよというと、出さなきゃならない機会だけ。しかも大口で出さなきゃならなくなるという不公平感が出てくるという問題は残るということだと思います。
 オプション2は、理論的には成り立つんだけど、今まで10年ごとに改正してきて措置額を必ず上げてきているのに、今度は10年延長するけど措置額は上げないのかと言われたときに、答えに困っちゃうんだよな。

【山野原子力計画課長】
 だから、国際相場観として今までは一番高いところを念頭にしていたけど、条約だって3つあるわけで、600億円で据え置いたとしてもウィーンとCSC並みにはなるということでの議論です。

【伊藤委員】
 ちょっと消費者の立場で意見を言わせていただくと、賠償額が上がって補償されるということは、被害者の立場に立つとすごくいいなと思うんですけれども、ただ、そのコストをどうやって捻出していくのかということになると、やはり電気料金なりに加算されていくのかなという部分があるわけですよね。そうすると、原油も上がっている。例えばCO2(二酸化炭素)排出権の問題とかが関わってくると、これからどんどん電気料金が上がっていってしまうのではないかな。それに加えて、例えば物価なんかも上がっていってしまうんじゃないかなという、そういう消費者としての不安というのもあるんですね。
 何か起きたら電気事業者が全部やってくれるよみたいな論調が常識になっていくのもどうなのかな、という部分が一つ自分の中にはあって、これから原子力発電ということを考えたときには、環境問題とかも含めて合意形成というのがすごく必要だと思うにもかかわらず、何か起こると事業者がもう悪いみたいな形になってしまって。
 1,200億円まで引き上げられたときに、どの程度保険料というものが上がって、負担が増えてという部分もちょっと知りたいなと思うんですけれども、いかがでしょうか。

【野村座長】
 原さん。

【原委員】
 基本的には、まだ何とも言えない。ただ、欧米の実績からすると、やっぱり相当上がっていくとしか今は言えませんね、補償範囲がまだ固まっていませんので。しかし、1,200億円に保険金額が上がるというだけで保険料が倍になるかと言ったら、倍になることはないんです。それが5割なのか、6割なのか、今の段階では何とも申し上げらない。やっぱり国際的な相場観で決まってまいりますので。

【野村座長】
 この保険料というのは、電気料金にどのぐらいの比率で反映されているんですか。

【原委員】
 それは、私どもでは分かりません。

【廣江委員】
 理屈から申しますと、私ども、今、原価というのを組みまして、それで電気料金というのは作ります。その中で、原価に入れることによって回収が保証されていますのは規制されている分野だけで、現状で申しますと、ご家庭用の電灯料金と、ごく小さな商業用の低圧料金です。それ以外は自由化されていますので、実際のところは、それが価格に開示されているかどうかという保証はございません。
 それから、私も事業者として少し申し上げますと、まさに伊藤委員からおっしゃっていただきましたように、今、原油の値段が非常に上がっておりまして、かつての電力経営とは全く違う局面に入ってしまっております。ご承知のように、東京電力さんは柏崎の事故がありまして、特に厳しい状況でございます。それ以外の会社も、実は今140ドル原油の時代になっておりまして、今の原価と言いますと、大体50ドルぐらいの石油価格を前提につくっておりましたから、収支状況も非常に苦しくなっております。
 その中で、これも今ご指摘いただきましたけれども、CO2(二酸化炭素)の問題がかなり厳しい状況に入ってまいりました。ポスト京都をどうするかという議論はありますが、とりあえずポスト京都の前の京都議定書で、私ども電気事業者は、1990年に対して、この第一次約束期間で、CO2(二酸化炭素)の排出原単位でございますけど、これを20パーセント減らしますと、こういうお約束を自主行動計画としております。やはり無責任なことはできない、必ず達成しなければならないということで我々は取り組んでおります。本来ですと、やはり原子力というのが大きな武器になるはずでありまして、それで20パーセント削減をやろうとしてまいりましたけれども、例えば柏崎の問題もございます。それ以外にも、現在、原子力の利用率が低迷状態にございまして、70パーセント台でございます。ということで、どうもこのままで行きますと、京都議定書、私どもの自主行動計画の排出原単位20パーセント削減は困難な状況になっています。
 ということで、京都メカニズムというのがございますけど、それを使いまして、特に、クリーン開発メカニズム、CDMと言われているんですけど、これをかなり各社は積極的に活用せざるを得ない。具体的な言い方をすると、中国、あるいは南米諸国で色々な省エネルギーの事業をいたしまして、それに対して私どもがお金を出しまして、いわば排出権を買ってくる。この負担も相当な額になっております。
 さらに申しますと、この間の福田ビジョンにも出ていました新エネルギー、特に風力、それから太陽電池、これを今後積極的に取り入れていこうという議論が行われています。私どもは、もちろん今後とも日本のエネルギーの安定供給を担いますのは原子力であると、この思いに全く揺らぎはございませんが、できる限り新エネルギーも取り組まないといけない。新エネルギーは原子力と違って安定性の低い電源でございます。天気のときはよろしいですけれども、一旦曇りますと突然出力が出なくなってしまう。あるいは風力も、まさに風任せでございまして、突然止まったら発電できなくなる。そうしますと、バックアップの電源を用意しておかなければならない。あるいは、場合によっては電池をもって、それで出きたものを吸収して安定的に出す。これも相当な負担になるだろうなと考えております。
 そういう非常に厳しい状況にございますので、まさに伊藤委員におっしゃっていただきましたように、どんどん保険料率が上がっていくというのは、状況としては大変厳しい。さらに、申しましたように、現在は自由化されておりますので、原価に算入すれば、それが100パーセント回収させていただけるということもないと、こんな状況であります。
 その中で、今回のこの1,200億の話でございますけれども、国際的ないわば標準であると、先ほど課長からもお話がございました。そういうことであるならば、これはある程度やむを得ないかなと思います。その場合には、まずは保険プールさんで受けてもらえるということは大前提でございますし、保険料がどれぐらいの金額になるのか、リニアに増えることはないですねと。政府の補償契約の方でも、過去リニアに補償料が増加しておりますので、このあたりはしっかりと今回は議論させていただきたいということでございます。
 長くなりましたけど、以上でございます。

【山野原子力計画課長】
 措置額を引き上げるのがいいかどうかというのとはまた別の議論なんですが、保険料というのはそんな高いものではないです。当然それは料金転嫁になるんですけど。例えば、今、お話に出ました政府の補償契約というのは、補償料率が万分の5ですから、東電の柏崎サイトで600億円をかけているわけです。政府補償だと、万分の5を掛けますと年間3,000万円の補償料です。当然、輸送とかその都度かける補償契約がちょっとあります。補償料としてはそんなものすごい額ではないけれども、有事の際には600億円が補償されるというリスク分散の仕組みになっているということです。
 保険料で言えば、おそらく日本の中で一番サイト数が多くて色々なことをやっている原子力研究開発機構だと思いますけど、そこが一番たくさん保険料がかかっていると思います。アバウトに言うと数億ぐらいですか。

【野村委員】
 全体で年間5.4億円ぐらいですね。

【山野原子力計画課長】
 それが一番多いと思います。

【谷川顧問】
 保険金額と保険料はリニアじゃないですからね。エクセスロスは漸減してくるわけだから。そういう意味で問題なのは政府補償契約の補償料で、あれはもうリニアにきちっと決まって動かないというのは問題が残っていると思うけど。

【下山顧問】
 前回の例で言うと、300億が600億に、倍になったときの保険料のアップ率というのは8パーセントだった。

【山野原子力計画課長】
 そう聞いています。

【下山顧問】
 今度がどうかはまだ分かりませんけど、保険金額が倍になっても保険料はそうはならない。ただ、政府の補償契約は完全にリニアでありますから、もう倍になれば倍になる。それは色々また文科省でも考え中でございましょう。

【廣江委員】
 私どもからしますと、保険料の上昇については当然ながら8パーセント以下になると期待をいたしております。

【下山顧問】
 それから、資料3‐2のところで、国際的な制度の流れを勉強していく上で重要なことは、(3)の上から4行目のところ、「運営者の責任額の下限としたうえで」と書いてありますね。これは非常に重要なことで、それまでの国際条約は、パリ条約もそうなんですが、そこが下限でなく有限責任の上限としてのリミットだったんですね。ところが今度の改正で、条約に書いてある責任制限の金額というのは最低限ですよと言っているんですね。
 こうした流れを見ていますと、有限責任が最低限に改正されたり、その後、ドイツ・アメリカでは国家補償が完全に後ろへ引いちゃって、事業者の自助努力的なものが表に出ている。これは、1つには、それだけ、チェルノブイリはちょっと別格ですけれども、原子力発電の安全性の実績が上がっているということなんですね。初期のころは国が補償するけれども、だんだんそういう実績が上がってきて、民間で対応できるようになってきたという考え方でやっているので、別に原子力事業者をいじめているわけではない。そういう考え方でとらえるべきなんだろうという感じがいたします。
 そういう面から見ると、一般の納税者・消費者の立場から言うと、やっぱり電気事業というものも自分で負担すべきものは負担していくんだよという仕組みが、かえって今後の原子力発電の社会におけるアクセプタンスにとってプラスになる面もある。そういう面を考えて、この原賠法を前向きの意味でとらえていく必要があるのだろう。事故が起こったときの後始末の問題ばかりじゃなくて、この制度が果たす意義というか、原子力発電の発展に、条約もそうですけれども、原子力利用を進めていく場合の手段として役立たせるという意味合いが大きいのだろうと私は思っています。

【野村座長】
 そうしますと、この論点については、オプション1という方向で検討していくということでしょうか。

【野村委員】
 1つ意見。

【野村座長】
 どうぞ。

【野村委員】
 資料3‐2の別紙、この表なんですけど、各国の賠償措置額の状況を見ますと、例えば改正パリ条約は7億ユーロを最低限とするとは言っているものの、それよりもずっと低い額になっているのは……。

【谷川顧問】
 まだ改正してない。

【山野原子力計画課長】
 改正パリ条約は発効していないです。前段階のやつなんです。

【野村委員】
 だから各国で検討中なわけですね、これ。

【野村座長】
 そうです。

【野村委員】
 分かりました。

【野村座長】
 今改正が終わったのはスペインだけなんですね。よろしいでしょうか。
 それでは、国際水準との整合性とか、保険プールの負担能力とか、事業者の負担というのはありますし、消費者への影響や意義とか、色々論点はあると思いますけれども、一応今日の段階ではオプション1でさらに細かく検討するということでよろしいでしょうか。
 (「異議なし」の声あり。)
 それでは、次の項目について、また課長からご説明いただいて。

【山野原子力計画課長】
 さっきと関連する話です。資料3‐3です。これも限度額の話で、まず何点かあります。
 1つは、少額の特例額をどうするかということでございます。それで、(1)にありますように、現行におきましては、当然大きな発電所とか再処理工場は600億円とした上で、それ以外はそれぞれ事業の形態に応じて120億円、20億円という特例額を政令で規定してきております。これにつきましても、これまで法定の措置額の見直しに対応して、国際水準を見ながら見直してきたという経緯がございます。
 それで、まず第1点目は、今はこういう2区分ということでやってきたわけですが、それにつきましては、今においても一定の合理性はあるのではないかと考えられます。
 また、(2)の国際水準で考慮する観点ですが、諸外国とか国際条約でも特例額を設けるというのは、大体一般的でございます。具体的には、3条約すべてそうなんですが、特例額を設定することは認めていて、それぞれ条約の条件は、例えばCSCであれば、少額であっても3億SDR(特別引出権)までのすき間部分については、いざというときには各国の公的資金でちゃんと充足できるように、と規定されております。
 こういうことから、今回、そういう少額の特例額の見直しをどうするかということで、これにつきましても、とりあえず2つのオプションで議論していただきたいということでございます。まず、オプション1は、非常に単純で、法定の措置額が2倍に上がれば下の政令の方も同様に考えて引き上げるというのがオプション1ということです。これが一番オーソドックスなものでございます。
 オプション2は、今後の進展を考えて、CSCを考えた場合に特例額を一律3億SDR(特別引出権)まで上げておこうというものでございます。
 そのときの考慮事項は、今後の推移にもちろんよるのですが、CSC条約は、より具体的に言うと、特例額もかなり小さくて500万SDR(特別引出権)以上であれば特例額を認めているんですが、繰り返しになりますが、それと3億SDR(特別引出権)とのすき間部分については、パブリックファンドでちゃんと確保できるということを要請しているということです。だから、こういう少額特例額をどうするかという課題があるということです。
 ただちょっと注意書きで書きましたが、1つの日本の制度の理屈としては、例えば保険の限度額はある程度少ないとしても、事業者の責任というのは、別に保険の限度額で切れるわけではなくて、無限であるということと、また必要に応じれば国の支援もあるということだから、今で言うと、例えば20億円だと言ったとしても、本当にすごい災害が出れば現行制度でもちゃんと3億SDR(特別引出権)まで対応できることになっているということで、そういう説明で解釈するというのが可能かも知れない。ということで、ここは決まっていないもののとりあえず書いておいたということでございます。
 それと、次のページに論点を何点か書いています。
 2つ目はまた違う話でございまして、これも1回目にちょっと話しましたように、今まで原子炉の運転というのは、動いているだけじゃなくて、もう解体しているものまで、例えば原子力船「むつ」の原子炉みたいに展示物になっているものまでいまだに600億円の保険をかけているとかの状況があるので、解体の進捗に応じて賠償措置額というのも考えたらどうかということでございます。
 例えば原子炉では、そういう解体の事例というのは、小さな研究炉とかで結構あります。分かりやすく言うと、原子炉が600なら600億円ということで、例えば解体が始まって、まず炉心から燃料を抜きました、だけどサイトにはちゃんと燃料がありますというような形態の場合は、単純に言うと、使用済み燃料の貯蔵をする者と同様であろうということで、例えば120億円に下げる。使用済み燃料もサイト外に搬出され、空の原子炉だけがありますというような状況になれば、これは放射性廃棄物を管理する者並みということで、20億円というようなことで、これにつきましても、そういう解体の状況に応じて限度額を下げていくということをきちんと検討した上で、これをちゃんと制度として政令を改正したらどうかということでございます。
 それで、3番目がまた違うポイントで、今さっきまさに議論のありました政府補償契約の補償料率ということです。これは保険プールさんでやっている責任保険は、さっき議論になりましたように、保険金額が2倍になっても、前回の改正時で言えば8パーセント程度しか保険料は上げていないということなんですが、政府補償につきましては、昭和30年代の制定以降ずっと万分の5で変わってきていないという事実がございます。これまで賠償措置額を上げている中で、本当に見直しがないということがいいのかどうかというのをきちんと検討したらよかろうということでございます。補償契約に関する法律では、補償料率の決定の要因としては、補償損失の発生見込みでありますとか、国の事務取扱費ということを書いているわけですが、そこをちゃんと今様に勘案してより適切な算定方法ができるのであれば、それを考えた上で、その万分の5という政令の規定を見直すということもまじめに検討したらどうかという提案でございます。
 説明は以上でございます。

【野村座長】
 では、論点が幾つかありますけれども、自由にご発言をお願いします。
 野村委員。

【野村委員】
 2番目の解体中の措置額についてですが、ご提案のような考え方は大変合理的だと思います。それで、当初解体が届け出制でスタートして、JPDRはそれでやったんですが、その後色々ご議論があって、許可制にするという話も一時期出ましたが、私どもも、合理的にやるにはどうしたらいいかということを随分議論させていただきました。そして、解体の段階に応じて対応していこうというのが今の安全規制の状況になっています。こういった廃止措置に伴う賠償措置額というのが、どのきっかけでどういうふうに変わるのかということを、やっぱり法的にもきちっとしておかないといけないと思います。ですから、この解体は、今、解体計画を出しますと認可をもらうという認可制になってございますから、そういった認可が出たらこの状況に入っていくというふうにしたらどうか。それで、その後の状況は、段階的な措置というのが決まっておりますから、2、3のような格好で考えていったらどうかと思います。

【下山顧問】
 これ、設置の許可と解体の認可の関係はどうなっているのか。解体の認可を出した途端に設置の許可、運転等の許可の方はなくなるわけですか。

【野村委員】
 いえ、許可は1本なんですよ。

【下山顧問】
 1本でしょう。

【野村委員】
 ええ。

【下山顧問】
 そうしたら、全然別に解体の認可というのは。

【野村委員】
 許可が1本あって、すべてその中での話。だから、作るときには設工認をやり、解体するときには廃止の計画を出して認可をもらい、最後に、全部の措置が終わったら許可がなくなる、というシステムになっているんです。

【下山顧問】
 そうすると、設置の許可がある限りにおいては、運転の600億円という賠償措置は継続しちゃうわけですね。

【岡本委員】
 今はしています。それが不合理であるという。
 今の野村さんのご意見ももっともだと思うんですけれども、ちょっと厄介なのは、廃止措置計画の申請書を、認可を受ける前に使用済み燃料が取り出されてサイトからも出ている場合があったり、それから、研究炉などは炉心に燃料があっても廃止措置に入れるんですね。研究炉の場合だけ別扱いすればいいのかもしれないんですけれども、なかなか炉心の状況と廃止措置の認可の状況が一筋縄では行っていないところがあります。今後もう少し詳細に詰めていかないと、矛盾が出てくる可能性があるなというのを危惧します。

【野村委員】
 そうですね。この認可制度ができる前に、もう既にやっているものもありますから、全体をもう一回よく調査する必要はあると思います。

【岡本委員】
 ただ、前からやっているものは、原則的には新たな法律のもとですべて認可を受けておりますので、それは認可を受けたということになると思うんです。けれども、そのところをアンドにするのか、オアにするのか、どこのところでトリガーがかかって、この1から2に移るのかというところが若干気になるところであります。

【山野原子力計画課長】
 そうですね。おそらく炉規法の許認可と、ここの実際の形態が一致しないのですね。だから、こういうことを本当にやろうとして、政令に書こうとしたら、確かに1から2に移った段階というのを、どこでちゃんと確かめるのかということがおそらく重要だと思いますね。

【岡本委員】
 そうですね。

【山野原子力計画課長】
 炉規法では、別にこの辺りで線引きして、その都度何か許認可が入るわけでは恐らくないと思います。だから、別途、もしかしたら原賠法だけの世界の中で、何か確認行為みたいなものを入れないといけないのかも知れないですね。

【野村座長】
 原賠法は、どっちかと言ったらリスクの大小で金額を下げていこうという発想ですね。

【岡本委員】
 そうですね。

【野村座長】
 認可の手順というのは、ちょっと僕も中身は分かりませんけれども。

【岡本委員】
 あれもリスクが下がることによって規制を楽にしようということで、炉主任の配置とかが要らなくなるんですけれども。

【野村座長】
 だから、必ずぴったり合わせなくちゃいけないかどうかは……。

【岡本委員】
 いや、それは分けたほうがいいと思う。

【野村座長】
 こちらが確認できる仕組みを作らないといけないということですね。

【岡本委員】
 はい。この2番、3番の考え方、非常に合理的であると思いますので、この分け方は非常にいい分け方だと思うんですけれども、それを誰が確認するかというところだけがちょっと気になる点だと思います。

【下山顧問】
 おそらくこれはこの場の問題じゃないと思いますけれども、規制法の関係で設置の許可というのがずっとありますから、これをやるときに設置許可変更をやるのか。安全審査が要るわけですか。

【岡本委員】
 設置許可変更になります。設置許可は変更されますけど、安全審査ではない。だから、それは解体届の審査になるんです。

【下山顧問】
 設置の許可はそのままですか。

【岡本委員】
 そのままですね。

【下山顧問】
 あれはもう永久に生きているわけね。

【岡本委員】
 ええ。あれはもう完全に廃炉になるまで。

【下山顧問】
 それから、先ほどもちょっとお話がありましたけれども、日本の今の原賠法の政府の援助は、公的資金の利用の確保というふうに読んでくれるかというのは、これは一遍確かめたんですけど、だめなんです。

【野村座長】
 この注の話ですね。

【下山顧問】
 ええ。この公的資金というのは、要するに保険と同じで、必要要件が出れば直ちに資金は出るということであって、日本の援助みたいに裁量が残っているというのは、この場合の公的資金の範疇に入らないということを言われております。

【野村座長】
 道垣内委員。

【道垣内委員】
 この少額賠償措置額のところですけれども、ここにはJCOの話が出てこないんですが、あの事故で120億円なり150億円なりが賠償にかかったということは、国会、あるいは国民から見れば、倍では全然足りないという話になるんじゃないかと思うんですが。賠償措置額を決めるというのは、自動車で言うと自賠責みたいにここまでは掛けなさいという話ですが、自動車ですと、慎重な人あるいは多くの人は任意保険を掛けているわけです。今、20億円の対象事業者の中で任意保険を掛けている企業はいないんですか。要するに、JCOを見れば足りなかったことは分かっているわけですよね。であれば、それはビジネス判断だと思うんですけれども、むちゃくちゃ高いのであればそういう保険は買えませんけれども、先ほどの議論から言うと、それほどリスクが多くない事業であれば、保険金の上を伸ばしてもそんなに保険料がはね返らないんじゃないかと思いますので、そこは、要するに任意保険として放っておくとどうなるのかというのがあって、その検証もあってしかるべきじゃないかと思うんですが。

【谷川顧問】
 保険が成り立つためには、ある程度お客さんがいなければいけないんだけど、そんなにお客さんがいないんだよね。

【道垣内委員】
 そうであれば、みんなに強制しなきゃいけないことです。

【天野委員】
 あのとき確かに措置額を超えて保険を契約していたところが何カ所かありましたよね。たまたまJCOはなかったですけど。

【道垣内委員】
 ああそうですか。

【野村座長】
 任意保険。

【天野委員】
 任意保険をプラスで積んでいたところもありました。

【谷川顧問】
 任意保険なのかな。責任保険の任意保険というのはないんじゃないかな。

【天野委員】
 いや、別途の保険を掛けていましたよ。

【原委員】
 そのとき掛けました。

【道垣内委員】
 そうですか。

【天野委員】
 どういうやり方だったかは、もしご存じだったらしゃべっていただきたいと思いますが。

【下山顧問】
 核燃料の輸送等については、この額よりも任意保険等を掛けているんじゃないですか。

【廣江委員】
 すいません。ちょっとそれは、私、よく今知識がありませんので、確認いたします。掛けてないと思います。

【原委員】
 基本的には売ってないんですよ。原子力に関する保険のリスクは原子力保険プールにしかありませんから、普通の保険会社は受けていません。だから、そういう意味での任意保険という考え方はないんですよ。

【谷川顧問】
 原子力のリスクは他では持たない。

【天野委員】
 少なくともあのときに20億円について、JCOのようなところを120億円に上げる際に他の例を調べたときに、他のところは既に別のやり方でも手当てしていますという話がやっぱりあって、だから上げても大丈夫ですという返事をもらったので上げたという経緯があります。

【山野原子力計画課長】
 道垣内さんが言われたJCOのときのことを考えるかどうかとなると、今、120億円の事業者は、ある程度上がれば当時の150億円はおそらくカバーできるんですね。20億円の事業者を40億円に例えば引き上げたとしても、やっぱりJCOのときのことを考えたらどうかというのがあるんですよね。それで、おそらく少量であっても、原賠が20億円の事業者というのも、物量としては臨界になり得る物量を扱っているということだと思うんですね。だから、ああいうばかなことが起きれば、可能性が全くゼロじゃないということになれば、本当にJCOのときの反省を考えると、20億円を150億円ぐらいまで上げないといけないのかどうかというのは、もしかしたら議論かも知れない。

【野村座長】
 その場合、賠償措置の金額を上げるか、さっきの任意保険みたいなものを考えるかですね。

【道垣内委員】
 任意保険を掛けるのでいい話か、賠償措置として強制すればいい話なのか。そもそもどれくらいがビジネスの判断として常識なのか分からずに議論しているので、そこがちょっと気になって言いました。

【下山顧問】
 少額でもいいという趣旨は、制度としては、少額にしておいても国の援助が出るから、被害者の保護については欠けないということが前提なのだろうと思うんですね。

【山野原子力計画課長】
 被害者の保護は、国の補助もありますけど、別に保険の上に次は事業者の無限責任がある。その上に国がいるんですよね。

【下山顧問】
 それもあるんだけれども、例えば大学の研究炉とかそういうのを考えたときに、もう資金はないですよね。

【山野原子力計画課長】
 いや、そんなこと言ったら保険全部みんな600億にしてくださいとなります。

【谷川顧問】
 大学のキャンパスというのは、財産的価値は大変ありますから、資金がないとは言わせない。

【野村座長】
 補償料率の方はいかがでしょうか。

【谷川顧問】
 これは再検討してもらわなければいけないということは前から言っている。

【廣江委員】
 これはとにかくよく知りませんけど、ここに「補償料率の引き下げの要否を検討する意義がある」と、非常に奥ゆかしく書いていらっしゃいますけれども、ぜひこれはお願いしたいということでございます。よろしくお願いします。

【野村座長】
 そうしますと、この論点については、少額賠償措置は残すということで、オプション1でしょうか。オプション2というのもあり得るんでしょうか。あまりないですかね。

【岡本委員】
 リスクを考えた場合に、それこそ事業によって料率を変えるとかいう訳の分からないことになりかねないので、あまり複雑にならないように考えると1かと。

【野村座長】
 そのときに単純に2倍にするのか、JCO事故を考えて、もうちょっと少額のものを引き上げるのか。オプション1でもう少し検討ですね。
 それから、解体中の原子炉については、基本的な考え方はこういう方向でいくということです。
 料率についても引下げを検討するというところでよろしいでしょうか。

【谷川顧問】
 補償料率はむしろリスクによって料率が変わるのが保険なんでないか。

【岡本委員】
 そういうふうな感じで保険プールさんで考えることはできるんですか。

【原委員】
 できます。

【岡本委員】
 そうすると、政府補償契約の料率もリスクによって変えるということになる。

【下山顧問】
 しかし、補償損失の損害見込みというものをちょっと別にすると、国の事務取扱費ならば、そんなに上がるものじゃない。それと、全然収入と支出が見合ってないんですよね。入るほうは、国の一般財源として入っちゃって、出るときは補正予算を組むわけでしょう。だから、ファンドに積んでいるわけじゃない。

【谷川顧問】
 そんな積んでないし、問題を残しているのは、最初に変な計算式を作って、それが残っているから、もう動きがとれなくなっている。あれを一遍全部ぶち壊さなきゃだめだよ。

【山野原子力計画課長】
 まあ、補償料率は非常にざっくばらんに言うと政府内の話です。その議論に耐え得るようなレトリックができて、今様の保険の世界の常識的な考え方で見積もるとこんなものです、となる。いずれにしても、きちんと整理できれば議論はちゃんとできると思います。常識を見れば、確かに補償金が倍々に上がってきていて、単純に補償料も倍々になっているのは普通ちょっとおかしいと思いますので、そこは理屈が作れるかどうかだと。

【下山顧問】
 科学技術庁のコンメンタールを見ますと、大学とか高専の補償料率に何で低いのがあるかというと、これは政策的配慮等と書いてある。だから、補償料については、政策的配慮を加味する余地があるんだというふうに解釈したんですけどね。

【天野委員】
 原子炉、多分今回だけがチャンスかもしれないんですよね。実際に事故が起こったという事実があったときに変えられなかったら、もう二度と多分変えられないという感じだけはやっぱりしますよね。

【野村座長】
 分かりました。大体方向性は見えてきたかと思います。
 それでは、その次に、罰則規定の見直しについてということで、これも課長からご説明をいただいて。

【山野原子力計画課長】
 資料3‐4、これもかなりマイナーなところですし、罰則については、法務省と調整することになるんですが、これまでの経緯を言いますと、ここにありますけど、安全規制のほうの炉規法とのバランスを考慮しながらバランスをとってきたというようなことでございます。
 それで、原賠法にある罰則規定は、24条、25条、26条ということなんでが、この表にありますように、24条というのは、要は賠償措置を講じないで原子炉の運転等を行った場合ということでございます。これにつきましては、現行では平成元年の改正のとおりになっていまして、1年以下の懲役または50万円以下の罰金ということです。
 それに対応する同じような炉規法の世界では、そういう炉規法の許可をとらないで運転したということになるんですが、その場合には、少しやっぱり重くて1年以下の懲役若しくは100万円以下ということで、50万が100万に、これは14年度の改正で変わってございます。
 25条のほうは、行政庁の報告聴取に対して嘘をついたとか、そういうものでございます。これは原賠法では20万円以下の罰金。これに対応するようなものが炉規法では100万円以下の罰金になっているということでございます。
 ということで、最近の炉規法の改正では、類似の規定の罰則関係が少し上がっているということでございます。
 あわせて、原賠法の26条というのは、個人がこういうことをやったときに、両罰規定で法人も罰するという規定で、原賠法ではそこは個人と法人はまったく同じようにしているんですが、炉規法では、平成14年度の電力会社の自主点検記録の不正とかがあったときに、これは組織ぐるみじゃないかという背景から、平成14年度の改正では、そういう組織的な不正を抑制するため、法人重課という制度が導入されてございまして、個人であれば100万ですが、法人には重くして1億円という制度になっている。
 ただ、その場合でも、電力会社なんかはそういうことなんですが、当時も研究炉の運転とかは、組織ぐるみで不正をすることはないだろうということで、法人重課は入っておりません。
 ということで、この対処方針としては、基本的には法務省と今後調整ということですが、炉規法とのバランスを考えて、必要であればきちんと引き上げていくことが適当であろうということでございます。
 なお、両罰規定の罰則については、原賠の世界ではそのような組織だっての不正は考慮する必要はなかろうと思いますので、法人重課は導入する必要がないのではないかと考えてございます。
 説明は以上でございます。

【野村座長】
 それでは、この点についてご議論を。これについては、特にないということでよろしいでしょうか。

【岡本委員】
 賛成です。

【野村座長】
 それでは、その次に、原子力損害の賠償の履行の確保のための国の役割及び原子力損害賠償紛争審査会の活用という点について、これも課長からご説明を。

【山野原子力計画課長】
 資料3‐5でございます。これについては、恐らく色々色々ご議論があろうかと思います。前回のJCOのときに何をやったかというところで色々話が出ましたように、当時は紛争審査会と調査研究会という2つの組織が立ち上がって、調査研究会では、そういう賠償に当たっての損害の認定のための考え方みたいな基準が示されたということがあったわけでございます。そういうことを踏まえて一般化して、今後、国の役割を考えたらどうかということで、提案的に資料を用意してございます。
 最初の3枚のところにありますように、国が担うことが望ましいのではないかということで、損害に関する全体像の把握。これは初期段階で、やっぱりマクロの把握を行うことは誰かがやらないといけないだろうということでございます。
 あと、損害賠償に当たっての基本的考え方。それは損害費目とか、因果関係とか、損害額の算定方法なんかの基本的な考え方を提示するようなこと。そういうことについても、できれば国がやった方がいいじゃないかということと、それを誰がやるかということにつきましては、中立的・専門的な機関であります今の紛争審査会、必要であれば名前も変えればいいと思うんですが、それを活用するのも一案じゃないかという提案の資料でございます。
 考え方は、色々書いておりますが、政府の役割として、1番目の損害に関する全体像を把握するということ。これは、まず早期に全体の把握を行うということは当然重要でございまして、どれぐらいの被害があるかが分からないと、まず事業者はどんなことができるかということになりますし、いざとなったら政府が援助するというようなことについても、ある程度マクロに最初に分かることが議論の出発点になるだろうということで、そういうことを誰かやらないといけないだろう。やるとしたら国だろうということでございます。
 それで、具体的なやり方につきましては、今後定めようとしております指針の中で、国だけじゃなくて、原子力事業者、地方公共団体とか、保険プールさんとか、そういう中で、どういう体制でこういう情報を収集していくかというようなことは、きちんと書くことがまずは重要ではないかということでございます。
 2つ目に、事故ごとに損害の賠償の基本的な考え方を提示できるという機能でございます。原子力損害の賠償請求というのは、JCOぐらいでも7,000件、8,000件というのがばっと生じるわけですから、短期間に非常に多数の案件が生じるということで、そういう中で、迅速とか、公平とかいう観点でやっていくということについては、やっぱり誰かがある程度同一的なものを類型化するなら類型化した上で、それに当たっての賠償の基本的考え方をまとめて、それが関係者で共有できることが重要であろうということでございます。
 そういうことをやる場合には、当然、賠償の話は原子力事業者と個々の被害者の民民関係であるものの、実際上起こったときの原子力事業者の混乱でありますとか、原子力事業者は、そういう場合は大体加害者的な感じになりますから、被害者の感情とかそういうことを考えると、損害賠償の考え方は、ある程度ニュートラルなところが示すのが適当であろうということで、常識的には国になるかなという感じがします。
 ただ、こういう示し方は、ただし書きにありますように、ちょっと注意しないといけなくて、杓子定規に、これで一律になるんじゃなくて、それぞれの交渉事ですから、どうしても裁判に行くやつは行くし、そこまで拘束するような性格ではないことに注意する必要があろうということでございます。
 そういう2つのマクロに把握するものとか、基本的な考え方を示すということは、ある程度国が主体的にやるのだろうということは、誰が、どういうふうにやったらいいかということなんですが、(3)で、1つの提案としましては、紛争審査会というのが既に法律上あるわけですから、そこのファンクションの一つにしたらどうかという提案でございます。
 今でも紛争審査会というのは当然和解の仲介をやるということですから、そういう要望があれば対応しなければいけないということなんですが、実際上、これと同じようなことは、例えば多数の仲介の申し立てがあった場合を想定すれば、実態上は同じことをやる必要があるというようなこと。
 あと、真ん中の丸は、紛争審査会というのは、中立性とか専門性という意味で、信頼を得やすいとか、あと、絶対作らないといけない組織ですから、専門家の機動的な活用が可能であるというようなこととか、あと、紛争審査会と別に、また違う組織を作るというのは、今の行革の観点とか、我々の事務局機能を考えても、当時は研究会と審査会というのは2つ動いたわけですけど、なかなか2つも3つも自分たちでハンドリングするというのは、そんな簡単ではないだろうというようなことから、法律上ある紛争審査会の機能を上手に使うのがいいんじゃないかということです。
 ここでもなお書きでありますように、ルールメークとアンパイヤーという関係にあるので、そこらは相反するところもありうるので、ちょっと考える必要があるということでございます。
 (4)は、ADR機能の向上ということで、和解の仲介に加えて、調停や仲裁や裁定とか、そういうこともやれるようにしたらいいんじゃないかというようなこととか、訴訟との関係で、時効の中断とか、そんなことまで考えたらいいんじゃないかということなんですが、それについては、ご存じのように審査会自体は事故が起こったら突然ばっと集まってやるような常設の機関でもないものですから、ここにあります、突破的に色々な機能を発揮しないといけないということですから、そういう準司法的な物事をやっていくというのは、なかなか難しいだろうということで、もっぱらそこらは専門家の裁判手続にゆだねるのが適当じゃないかというようなことでございます。
 なお、これの議論の参考にということで、他でもそういう紛争処理でどんなことをやっているかなという、まだ集めている途上ではあるんですが、参考になるようなものということで見ると、次のページにありますが、すべてを説明しませんが、一番参考になりそうなのは、一番左の鉱害関係でございまして、ここでは経済産業局長が和解の仲介をするのと、地方鉱業協議会というのを設けて、そこで賠償の範囲とか、方法に関する公正かつ適切な基準の作成し、公表することができるというようなことになっています。法律的な関係では、次のページの112条、線を引いているところですが、「経済産業局長は、損害の賠償に関する争議の予防又は解決に資するため、地方鉱業協議会に諮問して、損害の賠償の範囲、方法等について公正且つ適切な一般的基準を作成し、これを公表することができる」という規定です。こういう機能も紛争審査会も機能としてやったらどうかということで、他の事例は、もうちょっと調べてみたいと思いますが、説明は以上でございます。

【野村委員】
 それでは、これについては法律の改正ということもちょっと視野に入れてということだと思うんですけれども、ご意見をいただければと。どうぞ。

【谷川顧問】
 2ページの(4)は全く異論がないです。(3)のところ、紛争審査会を活用する考え方は分かるんだけど、最初の丸と2番目の丸がどうなるのか。こういう機能を果してもらいたいというなら、事務局の手足が要るんだよな。JCOのときはたった2件の和解の仲介が来ておたおたしていたんだから、そこのところは十分考えた上でやる必要がある。
 もう一つは、損害に関する全体像の把握の視点と、それから賠償の基本的な考え方で、そこで紛争処理までやってしまおうということを考えると、中立性に問題が生じてこないか、1つの機関が相対する別なファンクションに果たすことになりはしないかというのをうまくどう整備できるかだな。

【山野原子力計画課長】
 そうですね。だから、実際上は、当時も2件で、それぞれ専門の下にブランチを2つ作りましたよね。だから、おそらく大きなアンブレラとしては紛争審査会があって、実際上、そういう基本的な考え方をまとめる部会みたいなのがあって、あと、個別の和解の仲介をするような部会に個別のブランチを作るような仕組みになるのではないかと思うんですが。
 いずれにしても、そういう全体の把握とかは、集まってもらった先生が直接やるんじゃなくて、当然、事務局が必死で集めてきて、こんなまとめ方でいいでしょうかというようなことを相談しながらまとめていくという場になるんじゃないかなと思います。

【谷川顧問】
 それともう一つ、この表に色々なのが出てくるけど、いずれにせよ、どれを取ってみても、1つの事象について対象としなきゃならない相手の数というものは格段に違うということ。もうたった一発でバーンと来るというところを念頭に置いて事務組織なんかも考えなきゃいかんのが難しいよというご注意まで。

【道垣内委員】
 よろしいですか。

【野村座長】
 はい。

【道垣内委員】
 私はご注意という立場じゃないですけれども、これはJCOの経験が相当色濃く反映されていて、和解の仲介が2件しかなかったのは、あれは年末にたくさん払ったからですからね。

【谷川顧問】
 払い過ぎちゃった。

【道垣内委員】
 ああいうことは普通はないと考えると、大量に紛争審査会に来るということはあり得る。そうすると、3年ではとても処理できないことがあり得て、時効の措置はとりませんとそこを切られていると、もうできませんということで作業を始めなきゃいけないので、被害者も困るでしょうし。ですから、想定している規模がちょっと小さいんじゃないかなと思うんです。やっぱり裁判所にいきなり行くよりは、こういう間のファンクションが果たすところがあることは非常に大切だと思うので、時効の措置がないなら紛争審査会が円滑に動くような仕組みをやっぱり考えたほうがいいかどうかですね。

【下山顧問】
 今のは、普通の場合には裁判所へ行くということなんですか。

【道垣内委員】
 何もなければ行くしかない。交渉で多めに払ってくれれば裁判所は行かないでしょうけど。

【下山顧問】
 そうするのは自由ですけど、例えば敦賀のときなんかでも、事業者が先に来まして、結局、賠償法の適用はないけれども、見舞金の形で直接話し合うことになるんですね。あるいは、例えば裁判所に直接行った場合でも、大量のものが一遍に裁判所に行ったら、裁判所にもそういう機能が一体……。

【道垣内委員】
 裁判所は和解の勧告をすると思いますけれども、薬害とか、あるいは公害の紛争等ですね。

【下山顧問】
 まあ、やらざるを得ないんでしょうけどね。

【道垣内委員】
 だと思います。そこに行くのか、こういうのをちゃんと持っているところが……。

【谷川顧問】
 薬害とか公害で裁判所へ行くときは、代表選手が行くんだよね。この辺は、おそらく全員が来ると思うよ。

【道垣内委員】
 だから、中には組織力のある人もいるかも知れませんし、委任状を集めてくる場合もありますので。

【伊藤委員】
 東海村のときは地方自治体もクッションになる役割というのがあったわけですよね。そことのすみ分けというのは、国もどういうふうに考えていらっしゃいますか。

【山野原子力計画課長】
 賠償交渉をまず原子力事業者と被害者がやるわけですね。そのときに、自治体が間に入って交渉したりとか、場所を提供するとかということで、顔が見える立場でやったからある程度まとまったんです。そこで、要は事業者と被害者の関係でまとまらなかったというものが、今の仕組みとしては、極論すれば裁判に直球で行くものもあるし、国としては紛争審査会に和解の仲介をお願いしますと言って来るものがあるということなんです。当然まとまったものはこういうところまで来ないということです。それで、なるべくそこでまとめるために、そういう自治体の役割というのはかなり重要だった。

【伊藤委員】
 そうすると、自治体それぞれに、やっぱりこういうところをしっかり設けておかなくちゃいけないということになりますよね。

【下山顧問】
 今のお話ですけど、部分的に当事者でやるものはやっちゃって、他のものは残るという形が事実上あり得るのかなあ。オール・オア・ナッシングみたいな感じがする。最初からファーストサーブでやったら必ず後で問題になりますから、当事者でやるのか、それともまとめてちゃんと法的手続によってやってくれということになるのか。あらゆる場合、事業者と地域の間を考えてみると、そうならないような気がするんだけど、やっぱりJCO的な対応は普通の状況ではない。天野さん、どうですか。

【天野委員】
 僕も、自分自身の経験と将来的なものとの間にちょっとギャップがあって、ストレートに自分の経験がそのままこれでいいんだというふうにはちょっといかないところが幾つかあるんですけど、1つだけ気になったのは、基本みたいなものを定めるというのは、これは一つの基準みたいなもので、定めるという行為と、何か解決するという行為との間には、時間のずれと役割の根本的な違いがあるような気がするんですよ。それが1つのところで対応できるのかどうか。
 それから、今、先生がおっしゃった質問も、そこのところなのだと思うんですよ。要するに、一括で解決されなきゃならないようなところと、一括で解決されないところとあって、基準を作るのは、一括で解決されるところだけを早くというのがまず基本だと思うんですよね。だから、解決できそうなところはまず解決しちゃおうという発想でまずやらないと、基準作りというのは多分できないんじゃないかと思うんですよ。できるところだけでもまずやろうぐらいの感覚で出さないと、多分できない。でも、紛争審査会のようなところは、全部一応解決しないといけないわけですよね。できるか、できないかは別にして。

【谷川顧問】
 紛争審査会に持ってきたものを、紛争審査会が解決案はこれですよと言って示して、それで治まるということだけだというふうに理解するのはちょっとかいかぶり過ぎであって、むしろやり合っている間に当事者はどこかへ落ちるというのが相当部分なんじゃないかな。数が仮に増えたとしても。そうでなければ合理的に裁き切れないと思いますけどね。

【天野委員】
 だから、紛争審査会って言えば、おっしゃるとおり場があることに実は意味があるんですよね。

【谷川顧問】
 つべこべ言うなら材料を出してごらんと言って、手詰まりになるまで出させるんですよ。手詰まりになったら、もうそれ以上頑張らないから、そろそろ話をしたらと言うと、普通は治まるんだな。これは紛争審査会の話じゃなくて、他のあっせんとかなんかをやった経験から言うと。

【天野委員】
 もう一つ危惧があるのは、要するに、今言ったみたいに、基本とか基準というのは、ある一つの考え方なんです。ボールを投げることなんですよ。正しいか、正しくないかとかが本質じゃないんですよ。まずボールを投げる。誰かが投げなきゃスタートしないから投げるんですよ。それを国の機関でいいのかというのはひっかかりがあって。1つは解決する側と判断する側と最初の案を出す側が1人でいいのかということと、ぽーんとボールを投げるという、誰も何も考えていないときに第一次素案を投げる行為が審査会の行為として妥当なのか、という2つですね。

【下山顧問】
 もう一つ、廣江さんにお聞きしたいんですけど、安全協定の考え方から考えて、こういうようなあれはどうなんですかね。

【廣江委員】
 安全協定の考え方に抵触するかどうか。

【下山顧問】
 補償規定がありますでしょう、どこでも。

【廣江委員】
 はい。特段大きな問題があるとは思えないですけど、ありますでしょうか、逆に。

【下山顧問】
 あれ見ていると、一義的には事業者に対して自治体なり何かが請求があるという感じでとらえていますよね。

【廣江委員】
 なっていますね。

【谷川顧問】
 請求する側が組織化されていると、それだけ問題処理が楽になる。

【下山顧問】
 それはそうです。

【谷川顧問】
 漁協とか、農協とか、そこでくくって、そこから漏れたものをどうするか。

【下山顧問】
 安全協定を盾にとられると、もうどこか行くよりも、直接事業者のところに来るのが早いということに当然なるわけなんだろうと思うんですね。新潟の場合でもそうだろうし、我々、敦賀の場合でも事実そうだったし、JCOの場合でも来るわけですね。

【廣江委員】
 ただ、1つのパスとして紛争審査会が用意されているというのは、あり得るんじゃないでしょうか。

【下山顧問】
 したがって、事業者のところに来る場合に、こういう審査会があるから、ともかくそこでまとめてください、そっちに行ってくださいということにはならないですね。それは請求者側の……。

【廣江委員】
 判断ですね。

【下山顧問】
 ええ。

【山野原子力計画課長】
 非常に単純な発想は、当時のまさに下山さんがやっていただいた、その調査研究会の機能というのは、このペーパーの趣旨は、おそらくあれは有効だったんでしょうということで。

【下山顧問】
 はい、そうです。

【山野原子力計画課長】
 それで、おそらくああいう機能を残していかなければいけないでしょう。それを出せるのは誰かと考えた場合に、かなりニュートラルより何とかというか、どうしても誰も出してくれないから、やっぱり国のほうに来るんでしょうと。そのときに、ある程度誰がやるかを、そのとき何か考えましょうとかというんじゃなくて、ある程度あるんだったら、今既にある、法定されているそういう審査会があるんだから、そこの一つのファンクションに入れていったらどうでしょうかと、そういう発想なんですよ。

【下山顧問】
 これだとすっきりはするんですけど。

【岡本委員】
 いいですか。資料3‐5の別紙の先ほどご説明された鉱害関係です。炭鉱のほうですね。ここ10年はないんですけれども、多分、昔色々な鉱害ですね。非常に広い地域に及ぶ話があったときに、やっぱり同じような議論をされて仕組みを作られていると思うので、私もぜひ作るべきだと思うんですが、皆さんのご議論にあるように、この鉱害関係、もう少し比べていただいて、同じ組織がやるということに対してのデメリットというのも見えるような気がしてくるので、もうちょっとそのあたりは調べていただくと、今の議論ははっきりするのかな。多分、必要性は皆さん今の議論を聞いている限りはあると思うんです。

【道垣内委員】
 よろしいですか。

【野村座長】
 はい。

【道垣内委員】
 例えば1,000件来たとして、こういう基準を作るのは、今の組織を使うべきだと思うんです。今の組織の中で1,000件は絶対さばけないので、アドホックに3人以内のグループを、弁護士さんとかを指名して、その基準に基づいてやってくださいというほかないと思うんですけれども、そこにお金をかけるつもりはあるんですか。要するに、報酬とかちゃんと払って紛争を解決してもらうのか、国の費用でこの審査会のお手当と同じ基準をお考えなのか。

【山野原子力計画課長】
 単純に何もしないと、国の制度で動けば、国の常識的な謝金の世界でしかなかなか組めないですよね。
 それで、ちょっと関係ない話。しかし、そういうふうな経費というのは、必要経費として損害賠償の金でできないんですか。

【谷川顧問】
 被害者救済のために用意していた金を使うというのは認めないのでは。

【山野原子力計画課長】
 県の何かの経費は、JCOは少なくても払っていますよね。それが保険からかどうかは別にして。

【天野委員】
 それは契約を結んだからなんですよ。そういうふうに支払いますという契約を結んで、そういうことでお願いをしたからなんですよ。だから、県が勝手にやったことにお金を払ったわけじゃなくて、考え方としては、JCOが自分たちでやることの一部を県に委託したんです。

【山野原子力計画課長】
 なるほどね。

【野村座長】
 裁判だって全部のコストを要求しているわけじゃないから。

【道垣内委員】
 一部は被害者にも払ってもらってもいいと思うんですけど。ただ、それで本当に動くのかどうか。それだけじゃ賄えない費用をどうするのか。

【下山顧問】
 敦賀の場合なんか法的責任の議論はなかったんですけれども、しかし、色々なところから請求が来るわけですから、それを市にお願いして、市のほうでまとめていただいて。それで、また市に対しては別途の、いわゆる損害賠償金とか行政費の負担とかいうことじゃなくて、それをコンペンセートする方法をとったわけなんですね。いずれにしても、どこかでまとめてもらわないと、事業者としては非常に困るというか。

【道垣内委員】
 先ほどの市の役割、あるいは村の役割で、JCOのときはたまたまうまく行ったのかも知れませんけれども、やっぱり危険じゃないでしょうか。同じ住民税を払っていて、事業者と住民なので、どっちかに片寄るのは嫌だという市長がいれば、「不介入です、うちはしません」と言われたらおしまいですよね。どちらにも恨まれたくないと。そうすると、やっぱりこういう審査会のような仕組みで動かすのが透明性が高くていいということになるんじゃないかと思うんです。みんなやってくれるんですかね、そんな火中の栗を拾わないという市長だっていると思いますけど。

【野村座長】
 今、国民生活センターというのは、法律改正でADRをするようになったんですね。そのやる段階で議論していたときに、国民生活センターってもともと消費者サイドで色々やっていく組織が、ADRというニュートラルなことができるのかという批判が非常に強くて、最終的には、一応そこはある程度担保されているということに結局なっています。建前はニュートラルと言ってもなかなか難しいですけど、何らかの基準である程度画一的にやらないと、一件一件ばらばらというわけにはいかないですよね。
 では、この問題は、もうちょっと今日出たご意見も踏まえて、また事務局でまとめていただくということにして。
 もう一つ議題がございますので、あまり時間は残っていませんけれども、議題(2)のほうで、原子力損害賠償制度の運用に当たっての考え方、指針というものについて、これも事務局からご説明をいただいて。

【山野原子力計画課長】
 資料3‐6です。これは、今後作ったらどうかという指針の目次にちょっと毛が生えているぐらいの資料でございますが、これぐらいのイメージで今後作業をしていったらどうかということでございます。
 まず、0.として、指針を作成する意味として、JCOの教訓をちゃんと総括した上で、水平展開するものは将来に生かしていくというような考え方から指針を作りたいということでございます。
 それで、1.として、まず入り口論として、原賠法適用の考え方というのをある程度整理したいと思っています。基本的な考え方のところでは、まず、原賠法の適用するときの判断基準とか、そんなリジッドに定量化できるものじゃないと思いますけど、原子力損害の定義が定性的な定義でしかないものですから、やっぱりある程度基準となるような考え方は整理できないかということです。
 (2)としては、具体的な事例に即して、やっぱり一律に決めようがないと思うので、具体的な事例に即して、分かりやすく言うと、例えば臨界事故であれば原賠はおそらく適用されるでしょうとか、そのようなことです。
 (3)としては、発生する被害類型を事例ごとに考えて、原賠法適用の考え方をやってはどうかということでございます。これはまさにJCOのときの事例を並行展開するような意味で、営業損害みたいなものについてはこういう考えでどうかとか、あと、健康損害みたいなものは、こういう場合はおそらく適用されるでしょうとか、そういうことを、具体的な事例を考えながらある程度まとめたらどうかということです。
 それで、2.以降が、いわゆるマニュアル的なものでございます。まず、平時にどうしておくかということをある程度書いた上で、原子力事業者と自治体とかから、こういう現場についてもちゃんと情報交換できるような仕組みを考えるとか、原子力事業者で色々なフォーマット類をあらかじめ準備しておくというようなことです。
 3.で、実際そういう有事になった場合の初動対応ということで、まず、その場合、適用の有無の判断とか、そこらの情報共有をどうやるかということを書くということと、(2)では損害の拡大防止ということで、ここは災害対応と連動して、非常に分かりやすく言えば、やっぱり安全宣言みたいなものを出すことが重要ですよとか、環境モニタリングデータをきちんと出すようなことをやっていくとか、そういうことです。
 それと、(3)番目が全体の迅速なマクロの把握です。マクロプラス詳細な把握も含めてなんですが、そういう被害状況を、国だけで当然できるわけがないので、地元の色々な機能を使いながら全体を把握するのをどうやっていくかということです。
 4.が、具体的に損害賠償の申請を受け付けるということですから、原子力事業者の中で、どのような体制で、どうやっていくかというようなこと。そのためには、(2)でありますように、窓口をつくるとか、その場合の住民に対する周知方法もちょっと整理してみたらどうかということでございます。
 次のページにいきまして、そういう場合の関係者による支援ということで、原子力事業者だけじゃなくて、地方自治体、国もなんですが、どういうことをやるとスムーズにいくかという観点で支援策を整理する。あと、ここでも申請方法みたいなものは、あらかじめひな型をある程度作っておいたらどうかということです。
 5.に、賠償の基本的な考え方ということで、これはまさに今さっき議論になったようなものです。そういう賠償責任の範囲であるとか、そのような基本的な考え方を、どのような仕組みで、誰が提示していくかというようなこと。その際には、当然、保険プールさんなど、色々な関係機関の協力体制をどうやっていくかということです。
 6.になると、そういう被害者との調整でありますとか、実際上の賠償金の支払いということですが、まずは原子力事業者の賠償金支払いに当たってこういうことに留意すべきであるとか、そういうことも含めて色々な考え方を書くというようなこととか、損害を挙証するための書類の整理なんかもあわせてやっておくということです。
 それと、その際に、県レベル、市町村レベルでどのような支援をしていくかというようなことを整理しておくということです。
 7.にいきますと、次は当事者間でまとまらなかったものということなんですが、紛争の解決についてということですが、まず1番目は、被害者と、原子力事業者間でちゃんとやるというようなことを整理した上で、紛争審査会としてはどうやりますということ。あと、そこでもだめなものについてはどうなりますよということで、裁判に行く場合のフォローの仕方とか、請求権の時効なんかについても、注意すべきことがあったらここらで整理していきたいということです。
 8.には、国の支援ということですが、これも、どういう場合には一律的に支援しますなんて恐らく書きようはないんですが、支援に当たって、どういう手段が考え得るかとか、その際にはどういうことが要件になるだろうかというようなことはある程度整理をする。
 9.が、実際上の保険の支払いということで、責任保険のほうは、おそらく保険プールさんが色々やられていると思いますが、どういうことをやるかということと、(2)のほうは何ら実は考えられていないんですが、補償契約の場合となると、国が個々の査定の妥当性なんかなかなか難しいと思うので、それをどういうふうにやっていくか、それで、やっぱり保険プールさんの協力とか色々な人の協力を得ながら、どうやって認定していくか等を考えるというようなことでございます。
 大体イメージとしては、こういうふうな項目ごとにある程度まとめて、関係者間であらかじめある程度共有しておく。こういうものも一度作っておけば、あとはその都度リニューアルできると思いますので、この検討会で勢いがあるうちに頑張って作りたいなと思っています。
 以上です。

【野村座長】
 それでは、残りの時間で色々ご意見をいただいてと思いますけれども、特にこの中で触れられていない項目とかございましたら、こういうのを入れたらというような意見もお出しいただければと思います。

【谷川顧問】
 指針というのは何種類ぐらいつくるのか知らないけど、1つで間に合わせようというと、もらったものは、自分はどこを読めばいいのか訳が分からなくなる。

【山野原子力計画課長】
 そこは、最初はとりあえず1種類、全体のものを作ればいいと思うんですけどね。あと、なかなかこういう法律に基づいているものじゃないので難しいんですけど、例えば災害のほうなんていうのは、大枠の国の防災計画があって、当事者ごとにみんなそれぞれまた作るとかなっていますけど、これをとりあえず1種類つくって、それでワーカブルかどうか見ながら、やっぱり深掘りするところはそれぞれで、おそらく保険プールさんなんかは独自のものをある程度作っておられると思うんですけど、そういうところはどんどん深掘りして、そういうものも促していくような指針にすればいいと思うんですけど、あらかじめ原子力事業者の中でも、こういうことを念頭に置いたものを用意しておくべきであるとか書いておけば、それぞれやるでしょうし、おそらく電事連さんなんか、どこかでひな型をつくれば各社にばーっと水平展開できるところもあるでしょうから、この分野ってあまり平時に考えていないと思いますので、そのきっかけのためにも、まず大枠のものを作るということは重要じゃないかなという気がします。

【下山顧問】
 これは非常によくまとまっていると思うし、全部初めから100パーセント完璧なものをやるというんじゃなくて、できるところからやっていくというのが一番いいのだろうと思うんですね。その際に、損害賠償調査研究会のときの報告書をご覧いただくと分かるように、8つの項目に分けてあるんですけれども、大別すると、そのうちの半分は健康診断やってくれとか、あるいは直接避難したから金をやる、そういうふうに直接支出が行われたものと、我々が今までイメージして議論してきたのは、営業損害とか、いわゆるそういった財物の損とか休業損害とかいう、トータルでは金額が出てこないものがあって、そっちのほうの対応はこうする。だけど、最初に出てくる体の検査をしてくれ、人によっては心配性だから健康診断を2度やってしまう。そういう費用が現実に出てくる。そういうのに対しての指針と、こっちとはちょっと違うというよりも、2種類ぐらい作らないといけないんじゃないかという感じがあるんですけどね。

【山野原子力計画課長】
 例えばちゃんと領収書があれば、ぱっと分かるものですね、そういうものについては、領収書というか、必要経費、実際支払うことが基本である。いずれにしても何かちょっとエクスキューズが要るんですけど。
 それと、営業損害とかについては、それはケース・バイ・ケースで、期間は前提にするものの、例えば昨年度の売り上げとの差分をある程度明確にできれば、その部分について何とかとか、そういう感じで書き分ければいいんじゃないですかね。

【下山顧問】
 医療とかそういうのは、病院の請求書とか色々ありますからね。それだから、すぐに分かるから対応できるわけですね。

【谷川顧問】
 これは3年分の納税申告書の写しを持ってこいとかね。そうすると、がくんと額が減るんだよ。例の海洋汚染の場合だと、納税申告書の写しを持ってこいと言うと10分の1になるね。ただ、他の場合と違って、めったに起こらないでしょう。

【山野原子力計画課長】
 ええ。

【谷川顧問】
 そうすると、さっきから深掘り、深掘りと言うけど、作ったら置いておくだけで、深掘りしないと思うんだよな。それぐらいだったらやらせるかというのは問題だと思う。

【岡本委員】
 10年後ですね。

【谷川顧問】
 そう、10年後。

【下山顧問】
 もし何らかの形でこういうものが1つでも2つでも、あるいは段階的にできたとすれば、今回の成果としては、僕は非常に大きいんじゃないかと思うんですね。ぜひこれは行政のほうでやっていただきたいことだと思うんですね。もちろん、みんな知恵を出し合って。

【野村座長】
 ほかにいかがでしょうか。
 それでは、一応これについては、色々ご意見をさらにいただいて、もう少し具体化を進めていくということで、今日の段階ではよろしいでしょうか。
 それでは、事務局のほうから連絡事項がございますでしょうか。

【山野原子力計画課長】
 次回はちょっとまだ日にちを押さえていませんが、またご相談しながら。この3回、ポンポンポンとやってきましたが、1カ月後ぐらいを目標にまた日程を設定して、今日いただいたコメントの内容とか、あと、CSCへの対応をどうするかとか、色々やらないといけないので、そういう議論をしたい。
 それと、法律事項については、早めにやらないと。そっちは絶対法律までいかないといけないものですから、若干そういう出口のタイミングというのは戦略的に考えながら、どういうふうにまとめていくかもよく検討して、次回ご相談させていただきたいと思います。

【谷川顧問】
 1点だけいいですか。保険金の優先弁済権、あれはどうするか。全く姿が表れないんだけど。

【野村座長】
 先取特権でいくのか、今の規定のように優先的に払うという条文をそのまま残しておくのかですね。法務省のやっている保険法の改正。向こうは一般的に賠償責任保険について先取特権を与えるという件ですよね。

【山野原子力計画課長】
 ちょっと私も忘れましたが、保険法で、原賠法関係のものを2項目ぐらい改正したんですね、束ね法の中で改正して、この国会で通っています。

【谷川顧問】
 それでこっちは構わないわけね。

【相原係長】
 保険法の改正の有無にかかわらず、原子力損害賠償法の9条で、もとから責任保険契約の保険金について先取特権が先にあった、そういう状況です。

【谷川顧問】
 優先弁済権でしょう、9条1項。これ、先取特権と言うか言わないか。先取特権と言うと、その手続に従ってやらなきゃならない。押さえなきゃならないという話になってくる。その辺のところは、こっちは実質だけ書いてあって、手続に触れてないんだよね。先取特権と言うと、その概念を与えることによって手続まで包含するぐらいになるから。そこのところはどう調整するのかなと思っていたら、9条1項は変わったのか、変わらないのか。

【相原係長】
 変わっていないです。そのままです。事務的に確認して、次回にお話しできるようにしておきます。

【野村座長】
 それでは、この問題はちょっと事務局で調べていただいてということで、時間も参りましたので、第3回の検討会を閉会したいと思います。どうも今日はありがとうございました。

‐了‐

お問合せ先

研究開発局原子力計画課