4.防災教育支援の現状

◎防災教育は地域レベルが基本であり、地域社会の取組に対して国レベルの取組がどうあるのか、どう支援できているかという組立ではないか。
◎現状の取組について、体験的な教育の効果が高いことをもっと明記すべき。

(1)全国規模での取組

◎(2)(3)が現状の問題点をシビアに指摘しているのに対し、(1)ではそうした色彩がないことに違和感を覚える。
  • 政府の中央防災会議が決定した「災害被害を軽減する国民運動の推進に関する基本方針」(平成18年4月21日)において、防災教育の充実、メニュー・コンテンツの充実等が示され、政府としての国民運動が展開されている。また、中央防災会議の事務局である内閣府において、防災教育の取組を行う学校等への助成をはじめ、様々な形の支援を提供する「防災教育チャレンジプラン」が実施されている。
  • 地域における防災教育に関しては、平成17年に内閣府政策統括官(防災担当)、文部科学省生涯学習政策局長及び国土交通省河川局長名で、各都道府県・政令指定都市教育委員会教育長に対して、公民館等の社会教育施設等を活用した防災教育活動の支援に関する通知を行い、それらに基づき講師派遣やパンフレット・DVD等の貸出が行われている。
    ◎教材作成や人材育成がかなりなされている表現があり、2.の5つ目まる、4.(3)の2つ目まる、5.(1)の一つ目まるの表現と齟齬をきたさないか。
  • 学校に関しては、文部科学省(旧文部省)において、「生きる力をはぐくむ防災教育の展開」(平成10年3月31日)や「生きる力をはぐくむ学校での安全教育」(平成13年11月30日)をとりまとめ、防災教育の意義とねらい、機会と指導内容、進め方、展開例、防災管理の進め方等を示している。また、様々な防災教育教材を配付するとともに、独立行政法人教員研修センター等において、教職員を対象とする研修が行われている。
  • また、文部科学省においては、地域の防災活動にそれらの知見を反映させることを目指した「防災研究成果普及事業」(平成16年度~18年度)や、地震調査研究等の成果普及を図り、防災意識の高揚や具体的な防災対策に活かすことを目的とする「地震に関するセミナー」(平成8年~)等を実施している。
  • さらに、民間企業等においても、子ども達が自分のまちを歩き、防災や防犯に関する設備や場所を自分の目で確かめながら防災マップを作成する「”ぼうさい探検隊”マップコンクール」(社団法人日本損害保険協会)や、防災活動に取り組む子どもや学生の顕彰を行う「ぼうさい甲子園」(毎日新聞社)等、様々な取組が行われている。
    ◎「ぼうさい甲子園」は、兵庫県も関わっているため、純粋に民間企業の取組とはいえない。

(2)地域社会での取組

  • 地域社会での防災教育の取組としては、公民館等の社会教育施設を活用し、防災学習や防災フェスティバル等の取組が行われている。また、NPO団体等において、救命講座の取組や、商工会議所・青年会議所での防災まちづくりをテーマにした取組や、大学が主体となって、防災講座を開催するなどの取組等が行われている。また、例えば、宮城県、静岡県、愛知県、三重県、和歌山県等の防災教育に熱心な地域を中心に、地域防災力の向上を目的とした地域防災リーダーの育成が行われている。
    ◎「宮城県、静岡県、愛知県、三重県、和歌山県等の防災教育に熱心な地域」に加え、過去の被災地である兵庫県や新潟県は外さない方がよい。具体例があればより説得力が増す。
    ◎NPO団体等における救命講座の取組を選び出して書くのは避けたほうがよい。
    ◎「地域防災リーダー」の具体的なイメージを記載した方がよい。
  • 特に、大学や学協会等においては、地域と協働で、災害シミュレーションやハザードマップ等を用いた先進的な取組を実施しているが、全国的な広がりという点では、その途上にある。一方で、地域主体で行われる防災教育は、防災訓練や避難訓練が中心であり、その参加者の世代構成も、災害時要援護者に該当するような高齢者等の参加が多く、子どもや現役世代の参加が少ないといった傾向が指摘されている。
  • このような地域社会における防災教育の取組は、地震等の自然災害による被災経験がある地域や、災害の切迫性が高い地域を中心に熱心に行われている一方、ほとんど行われていない地域も見受けられる。また、災害の切迫性が高い地域においても、学校や民間企業、自治会等によって取組に温度差があるのが現状である。
    ◎「子どもや現役世代の参加が少ないといった傾向」については、神戸の防災ジュニアチーム等、子どもが参加している成功例についても触れた方がよい。

(3)学校での取組

◎様々な条件が揃ったとしても、防災教育のための時間の確保が困難であることを記載してはどうか。
  • 学校における防災教育は、現行の学習指導要領の下で、理科、社会等の教科教育の一部や特別活動の一環として行われていることが多く、また「総合的な学習の時間」等を活用した取組もなされている。特に、地震や津波等の大規模自然災害の被災経験がある地域や、災害の切迫性が高い地域の学校を中心として、特徴的で、かつ優れた取組事例が見られる。
    ◎避難訓練だけの学校がほとんどであり、多くの学校がそのレベルであるという現状認識はあってもよい。
    ◎科学技術の専門的な支援があるケースを紹介してはどうか(例:神奈川県立西湘高校)。
  • 学校の教員の努力により、例えば、あらゆる教科や活動を通じた横断的・体系的な防災教育の実施や、児童生徒による地域への防災知識の普及や住宅の耐震診断の実施等、各学校やその地域等の特徴を活かした取組事例が見られる。その一方で、防災教育は扱う対象が非常に多岐にわたるため、それに携わっている教員が十分な知識を持っていないということも少なくない。また、防災教育を行う際に、有用な教材や指導事例集等を手近なところで揃えることが容易ではなく、まず、それらを探すことから始めなければならないという状況があるという指摘もある。
    ◎「取組事例」の具体例を記載した方がよい。
  • また、防災教育を行おうとする場合、それを学校で取り上げやすい環境づくりと、それを支える学校と地域の連携が重要であるが、防災教育に携わる教員が、外から人的・物的な支援を得るための環境は必ずしも十分ではなく、学校と、他の組織や団体等との連携が十分でないという指摘がある。

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