5.防災教育支援で取り組むべき課題

(1)全国規模で取り組むべき課題

1 防災教育関連情報の収集・提供

 国においては、関係行政機関等との緊密な連携・協力の下、全国の学校や地域等で行われている防災教育の動向等について調査・把握に努めるとともに、これらの情報を基に、防災教育のための教材・コンテンツ等を取りまとめ、全国に提供していく環境を整備することが必要である。
 また、これらの教材等については、児童生徒や地域住民等、広く国民が理解しやすく、また利活用しやすいものであるとともに、教員や地域リーダー、防災教育支援の担い手にとっても扱いやすいものであることが必要である。
 特に、防災科学技術等の知見が防災教育に積極的に活用されるよう促すため、大学や研究機関等との密接な連携・協力の下、それらの内容を分かりやすい形で提供する環境を作ることが必要である。
 さらに、学校の教員や地域リーダー等から、教材の提供や講師の派遣等に関する依頼があった場合に、適切な対応が取れるような体制を整備することも必要である。

2 体系的な防災教育の推進

 防災教育を効果的に進めていくため、国において、年齢や地域等に応じて身につけるべき防災知識は何か、また、どのような内容をどのような順番で教えるべきか等について整理を行い、防災教育の内容の体系化を図るとともに、それらに応じた支援方策について検討を行っていくことが必要である。

3 優れた取組に対する評価

 全国的に児童生徒、地域住民等が防災を学ぶことの動機付けを図るためには、防災教育に関する取組の継続および発展を促し、彼らの関心や意欲を高めていくことが重要であることから、学校や地域における優れた取組に対する評価を行い、その成果を全国的に広めるような仕組みを構築することが必要である。

(2)地域社会で取り組むべき課題

1 地域住民等の参加の促進

 地域社会においては、核家族化や価値観の多様化の進展とともに、地域の行事等に子どもや若い世代が参加しなくなる傾向にあるが、自然災害に対する防災・減災を促す上で、地域が一体となって、自助・共助の取組を進めることが極めて重要である。
 このため、地域において、関係者の連携・協力の下、地域住民が自然体験活動のような地域活動に積極的に参加できる実践的な学習教育プログラムを開発・提供し、子どもや若い世代の積極的な参加を促進していくことが必要である。
 さらに、地域における防災教育に若い世代の参加を促す一環として、地域の企業や団体等が行う社内研修、新人教育の研修テーマとして防災教育が扱われるようにすることも重要である。

2 地域の組織や団体相互の連携・協力

 地域においては、市町村等の防災部局や教育委員会、警察・消防といった行政組織があり、また、自治会やPTA、ボーイスカウト等の地域団体、経済団体等、多くの団体が存在することから、これらの組織や団体間の相互の情報交換、連携・協力等を積極的に進めることにより、防災教育や地域防災等に関する優れた取組を推進するとともに、それらを一層発展させていくことが必要である。
 また、民間企業等には、防災科学技術等の知見を有している専門家がいることから、地域への社会貢献やボランティア活動の一環として、防災教育に対する協力を求めていくことも必要である。

3 地域人材の育成

 地域においては、学校の教員や地域リーダーの防災教育に関する自主的な努力のみ期待するのではなく、地域として、防災教育支援の「担い手」と、学校等と担い手をつなぐ「つなぎ手」等の人材の育成・確保を図るとともに、それらの人々のネットワーク化を図っていくことが必要である。

(3)学校で取り組むべき課題

1 防災教育に取り組む環境づくり

 学校の防災力向上を図るため、地域における自然災害の実情児童生徒の防災への関心を高めるとともに、教員自らが高い意識を持ち、学校全体で防災に関する様々な活動に積極的に参加、若しくは自主的に防災教育の取組を行っていけるような環境づくりをしていくことが必要である。
 また、学校における防災教育を支援する環境づくりとして、教育委員会のみならず、市町村の防災部局や警察・消防、自治会、さらには近隣の大学・研究機関等からなるネットワークづくりが必要である。さらに、隣接する自治体や学校等との連携、さらには学校間、異学校種間の連携を図っていくことも必要である。

2 教育内容等の体系化及び教材・コンテンツの提供

 学校において防災教育を効果的に推進していくためには、教育課程に従って学年別の教育内容と身に付けるべき知識等を整理し、防災教育の教育内容等の体系化を図っていくことが必要である。
 また、防災教育の教材やコンテンツ等には、自然災害の様態に応じた具体的な行動に結びつく教育内容の内容が不足しており、防災科学技術等を活用した実践的な教育プログラム等の開発が有効である。特に、自然災害の科学的な知識や、それにどのように対応するかという基本的な知識等を養うため、災害の教訓や体験、防災科学技術等を活用した教材・コンテンツ等を作成し、提供していくことが必要である。
 さらに、これらの内容をバランスよく教えていくため、「調べ学習」や「課題解決学習」等、能動的学習に基づく教育プログラムの開発も必要である。なお、優れた実践的な事例については、他の学校や地域に広く紹介していく取組も必要である。

3 防災教育に携わる教員等の育成

 現行の学習指導要領においては、各教科等の学習内容に防災に関する事項が多く含まれており、この中で防災教育を積極的に推進していくことは十分可能であることから、教員研修等を通じて、各教科等において防災教育が行うことができる教員を育成していくことが必要である。また、学校における組織的・継続的な取組を進められるよう、教員のみならず管理職等を対象とした研修等を行うことも必要である。
 また、防災教育に関して意欲の高い教員等については、過度の負担をかけずに防災教育に取組めるよう、第三者による相談や支援等を行う環境を整備することも重要である。

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研究開発局地震・防災研究課

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