資料5‐2 防災教育支援に関する懇談会(第4回)における主な意見(第4回懇談会の資料に対する委員等の意見を事務局で整理したもの)

1.防災教育支援のあり方について

(1)防災教育の担い手・つなぎ手の育成、確保について

【担い手の育成、確保】

  • 防災士にはかなり知識もあり、貢献できる場を求めているので、担い手として良い役割を果たすのではないか。
  • 職務命令等によりきっかけを与えること、そこにある面白さを見せてあげることにより、担い手は増えるのではないか。
  • 総合的な学習の時間では、指導よりも子ども達の自発的な学びを支援する姿勢が強く、子ども達に任せきりになっている。指導と支援の両方の役割が担い手には求められる。
  • 最も活躍できる場所が担い手にはあり、その立ち位置は人によって異なる。皆がいい形で立ち、喜べる場所を整理できれば、担い手とつなぎ手が上手くつながる。

【つなぎ手の育成、確保】

  • 地域の公民館やコミュニティセンターが防災に関心を持っており、小学校や地域の防災施設等で訓練をする上でのつなぎ手として重要な役割を果たしている。
  • 担い手としての活動の喜びや、自分が役に立つという気分が人を駆り立て、マーケットイン型になり、つなぎ手となることがある。

【教員の役割】

  • 教員にはコーディネーターとしての働きを期待してはどうか。周回軌道の隣の人を呼べば、隣の人がさらに隣の人を呼び、ネットワークが広がる。
  • 教員が防災に関する意識・課題を持ち、防災の必要性を感じるには、地域に防災上の課題があるか、学校運営上の課題があるか、防災教育の有効性を感じているかが関係している。
  • 教員にとっては、防災教育の実施により、子ども達が目を輝かせて学習に取り組むことができるという見通しの有無が重要である。
  • 一方的な知識の注入ではなく、生徒が自主的、自発的、課題解決学習的に学び、興味・関心を持ち続けてくれるような教育を教員に期待しなければならない。

【その他】

  • 学校が核になって地域と結びつける、地域が核になって学校と結びつけるという相互交信的なシステム作りが大切である。
  • 能力は持っているが、担い手やつなぎ手まで至っていない人の育成、活躍してもらうための場づくり、活動に対する評価がなされていない。
  • 地域レベルでは何でも誉める形でいいが、学習として実施するためにはきちんとした評価軸が必要である。
  • 学校教育や地域や企業での防災教育において、防災教育の良さをアピールするなど、取り組むインセンティブを確保するための支援が必要である。
  • 指導者・担い手・つなぎ手の三者ではなく、指導という行為があり、それを担う人と、担っている人達をつないでいく人達という二者でもいいのではないか。
  • 活動的な人には、ある同種の熱い人が多い。つなぐ時には熱い人が大切で、一方で冷静な人が担い手側であるという性格別の分類が考えられる。

(2)学校・地域等の連携、協力体制のあり方について

【学校と地域の関わり】

  • 防災での地域との関わりは防災訓練だけではなく、まず防災以外の様々な面で地域と顔なじみになることによって、防災の話を持ち込みやすくなる。
  • ささやかであっても子どもや地域に貢献できるものであれば、学校に残していく継続的な防災の仕組みを考える必要がある。
  • 高校については、種別も置かれた地域も違う。地域の方に学校に来てもらう方法もあれば、高校生が工業・商業等の得意分野を活かして地域に出て行く方法もある。
  • 学校が避難所に指定されているが、教員が主導するより、過去の災害の経験を踏まえ、地域の方が主催で、学校は施設管理等の立場で参加する形が望ましい。
  • 学校が行っていることを自治会長だけが把握しているのではなく、周りの地域住民がお互いの顔が見えるような形で付き合うことが有機的なつながりである。
  • 学校の教員が地域コミュニティに出ることは重要であるが、学校がつなぎ手になり、学校を通じて防災が様々なところにつながるようにする必要がある。

【学校・地域における教育内容】

  • 大切なのは安全文化や防災に関わる文化である。当たり前のことを当たり前にやることが自助につながることを、子どもにも家庭にも伝える必要がある。
  • 日本は災害の負の面に対する意識が低い。科学的な理科教育を、単なる現象論ではなく、地球システムと人間の関係といった切り口で行うことが非常に重要である。
  • ものづくりに関わる教育がほとんどないため、ものが壊れていくという負の面を知る機会がない。科学技術振興と言いながら、科学の話と社会の話が先行し、技術教育がなされていない。
  • 幼稚園時は親の教育、小学校低学年時は家庭の中の教育、高学年時は身近な地域を知り、そこに影響を与える教育、中学生時は地域を担う教育、高校生時は社会の一員としての貢献のための教育というように、学年次に応じた社会との連携をもう少し強く打ち出してもよい。

【その他】

  • 地域といっても田舎と都会では違う。都会と田舎の類型は、防災教育における連携のあり方を考える上で意外と大切である。
  • 例えば教職員、行政や消防職員の採用試験の問題に防災の問題が入っているのか等を防災教育において考え、社会的な評価軸の有無を見ていくことも大切である。
  • 学校の取組も、一段階進むのに1年かかったりする。継続的に実施するために学校にどのようなサポートが必要かということを考える必要がある。
  • 消防関係者等は、地域ごとの専門職でもあるので、もっと幅広い取組を学校から要望してはどうか。
  • 地域のリスクマネージャーでもある損保の代理店の存在を活かし、担い手になってもらうことも考えられる。

(3)防災教育への科学技術的視点の活用

【科学技術的視点の活用方法】

  • 良い知見は海外にも多くあるが、言語の問題や、どうやって教育に活かすかという狭間を埋めることができていない。
  • シミュレーションと現実の映像と、簡単にできる実験をセットにして出せば、先程のものづくりとも接点があり、バランスよく活用することができる。
  • 今の子どもは過激な映像やリアルな映像に触れているので、単なる動画ではなくできる限りリアルなものを追求するか、具体的な実験で見せた方がよい。
  • 知見を学習者の立場から見て、例えば小学生が学ぶときにどのように使えるのかとか、高校生ならもっと違う使い方ができるだろうとか、上手く現場や研究者の方をつなげるとよい。

【科学技術的視点の活用の具体例】

  • 総合的な学習の時間や社会教育において、カスタマー側のニーズ調査、例えば子どもが地震について持っている疑問に対して、科学的な知見で回答できるようなものを考えるとよい。
  • 映像を素材として使う場合、短時間の映像に加工し、その中である種のメッセージ性を持たせることも一つの形である。科学者に、自分は素材を提供しているという意識を持ってもらうことは、意外と重要かもしれない。
  • 防災シリーズ番組のようなものは日本の総力を挙げて作成し、他の言語にも翻訳して、特にアジアに国には見てもらえるような試みはあってもいい。
  • クロスロード(災害時の対応をシミュレートするカード教材)のような、ある意味社会科学の成果物も科学の成果として使えるのではないか。

【課題】

  • つなぎ手、コーディネーター役にとって、すばらしい科学的知見が点になっているのが現状で、使えるカリキュラムやプログラムになっていない。
  • 日本の場合、映像の使用にお金がかかり、サイエンスマインドを皆に広める障害となっている。
  • 学校教育ではカリキュラムの制限があり、それをどこまで越えてよいかという問題は、手伝おうとする人にとっては、学校と関わる上で懸念される点である。
  • 教員はコーディネーターとして、自分が学校だけで教えていたことだけではなく、外部の人を招く等のプラスアルファがシステムとしても求められている。
  • 既存の技術や家庭科の中での科学的知見の提供、どこの学校でも普遍的に取り組めるようなミニマムスタンダード、総合的な学習の時間に担当の教員が選択できる教材が必要である。

【その他】

  • 理科嫌いと言われる根底的な問題があるが、理科と科学は異なり、科学は私達に役立つものであり、必要なものであるということを理解する、科学を許容する素地を育てることが重要である。
  • 科学は人類全体で行う能動的学習でもある。自分達が主体になり、分からないことを論理的・合理的に整理する行為のエッセンスを学んでもらうことが重要である。
  • 科学はいつも正解を与えるような誤解があるが、科学には正解ではないものも多くある。すべてが正解ではないという科学の教育の場として防災というものを、科学者側から謙虚に提供することも考えられる。
  • 子ども達は高校生くらいになってくると、キャリアプランの話が関わってくる。大人としてこういうことが役割として成り立つ、ということを伝えてほしい。

2.防災教育支援において取り組むべき課題について

(1)防災教育支援ポータルサイト(仮称)について

  • 国民運動と連携しながら、オールジャパンで使えるものにする必要がある。
  • 既に同様の内容を掲載しているサイトが行政レベル、団体レベルであるかもしれないので、区別化について議論が必要である。
  • これは防災教育であるということを文部科学省がしっかりと示す必要がある。防災教育の学習指導要領のようなものを作ることは難しいので、懇談会としてのおすすめをイメージで伝えられればよい。

(2)防災教育支援モデル地域事業(仮称)について

  • 担い手とつなぎ手の方が参加しやすいように、もう少しメニューを細分化し、地域の研究事業や大学の教材づくり事業等に分ける必要がある。
  • モデル事業の中心を大学にすることは、大学の貢献という意味ではメリットがあるが、それを押し付けても地域のニーズと合わない場合があるので、ユーザーサイドから見て使いやすい事業にした方がよい。
  • 既に様々な取組をしている学協会を上手く取り込んでやればどうか。
  • 教科等の作成については、学校安全の冊子に既にきちんとまとめられているので、それをもう少し分かりやすくするようなものを作ってはどうか。
  • 教員は研究の成果である知見をもとに教育を行うので、防災教育の理解を深めるような研修が必要である。理解と防災教育の実践を同時にしなければならない。
  • 国の研修はもう少し場をたくさん用意し、参加できる職員、教員を増やし、また年に複数回実施する必要がある。

(3)防災教育支援地域フォーラム(仮称)について

  • 継続して実施することも大切だが、とりあえず全国1回は、何年かの計画でやりきってしまうか、東海・東南海地震等にあわせて優先度をつけることも考えられる。

(4)防災教育支援コンテスト(仮称)について

  • 防災に関する、まるまる検定というものも面白い。いかに皆が受けてみたいと思えるような魅力あるものにできるかが大切である。
  • 学びたい人の熱意を上手く評価する仕組みがあれば流行るかも知れないし、役立つと言わないまでもその知識を評価することは考えられる。
  • 表彰に至るまでの支援をきちんと行い、さらに表彰して終わりではなく、その後も新たなネットワークづくりにつながるような活動を取り入れてほしい。
  • 防災教育の実践的な取組を行っている学校に加え、地域も表彰の対象としてほしい。
  • フォーラムやコンテストは、民間活用やNPOの協力等、既にある団体の力を活用して事業委託等をしていくことも一つの方向ではないか。

(5)防災教育支援窓口について

  • 恒久的な窓口にしないと意味がないが、これを1箇所にするのか、各都道府県にするのか、各地域にするのか、議論が必要である。
  • 事務局というよりは、ネットワークや、有機的な人のつながりを担保する場が必要で、それがフォーラムやコンテストを主催したりする形が考えられる。

(6)空欄部分に対する意見

  • 施策の方向性が見えない部分は、現場の人が主体となる仕組みが必要であり、モデル地域事業の中で位置付けるか、他局に宿題として出すことになるのではないか。
  • 提供すべき知見、体系的な実施については、教えるべきカリキュラムをどう作っていくか、対象とすべき人をどう選別しマッピングするかを整理する必要がある。
  • 提供すべき知見は、シミュレーションや、優良な国内外のサイトの体系的な提供、ものづくり的な教材の整理、そしてそういう教育を紹介するプログラムや地球システム的な大きいプログラムであり、教員を育てるための体系的なワークショッププログラムも必要である。
  • 提供すべき知見は社会科学と自然科学の両方であり、それをどう具体的に並べるかということはモデル図の外周の誰も行っていない。それを行うことを大前提として出すべきではないか。
  • 自然に関わる知識、社会に関わる知識と防災には非常に強いつながりがあり、系統的・意図的に、それらの知識をどこで教えるかを体系化する必要がある。

(7)その他

  • コンテストや評価等について、そのことだけを議論するチームがあって、PDCAサイクルが回るという仕組みは支援として必要である。
  • 案として掲げられている対策は防災教育に携わる人がいる前提での提案であって、やらない人にどう気付かせるかということについては何ら触れられていない。
  • 1のポータルサイト、2の教員の研修や防災教育の体系化、5の窓口は文部科学省が主体的に行うべきであり、2~4は地域での活動の支援なので、既存のものにいかにサポートするか、ということになる。
  • モデル図で言えば、一番外枠を強化する、だから各周回軌道を回っている人達を強化するという事業の立て方、あるいはすい星のような軌道を回っている、いわゆるつなぎ手の人達の試みを強化してあげるということも考えられる。
  • 科学技術立国を考える際に良いモデルケースになるテーマについて、効果的な教育の仕組みづくりが上手くいけば、環境にも宇宙にも応用可能なパラダイムにはなり得る。
  • 防災教育については、態度や基本技術というものはある程度小学校までで伝達していけるのではないか。高度なものはもう少し上になってくるのかもしれないが、学校種によって違うという分析をもう少し精緻にしてもいい。
  • 学校と地域の関係については、行政の側からは自治会との関わりが楽であるが、自治会が高齢者中心のセクターを対象にしている一方で、PTAはもっと若い世代の人達を相手にしているため、見ているところが実は違う。
    東京都でもPTAが区の地域防災の担い手の主役になっているケースがある。学校もベストプラクティスを探さなければならないが、行政の側でも、あるいは地域の色々な取組の中でも探すようにしなければならない。

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研究開発局地震・防災研究課

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