資料3‐5 防災教育支援のあり方について(論点整理)
1.背景
(1)自然災害の切迫性と被害の甚大性
- 地震調査研究推進本部地震調査委員会の長期評価
- 中央防災会議被害想定
- 「首都直下地震対策専門調査会」平成17年7月
- 「東南海・南海地震等に関する専門調査会被害想定」平成15年4月 等
(2)社会情勢・国民意識の変化と防災教育の必要性
- 内閣府世論調査
- 「地震防災対策に関する特別世論調査」平成17年8月
- 「水害・土砂災害等に関する世論調査」平成17年6月
- 中央防災会議方針
- 「災害被害を軽減する国民運動の推進に関する基本方針」平成18年4月 等
(3)科学技術の進展と防災への貢献の可能性
- 防災や減災に貢献が期待される科学技術
(緊急地震速報、ハザードマップ、津波シミュレーション)等
2.防災教育支援とは
(1)防災教育の定義
防災教育は、学校や地域において、安全教育の一環として行われるものであり、災害時における危険を認識し、日常的な備えを行うとともに、状況に応じて的確な判断の下に自らの安全を確保するための行動ができるようにすること、災害発生時及び事後に、進んで他の人々や集団、地域の安全に役立つことができるようにすること、さらに、自然災害の発生メカニズムをはじめとして、地域の自然環境、災害や防災についての基礎的・基本的事項が理解できるようにすることを通して、児童・生徒等や地域住民に防災対応能力の基礎を培うものである。
(2)防災教育支援の目指すもの
(1)に掲げる目的の実現を図るため、防災科学技術等の知見を、学校や社会教育施設で積極的に活用し、関係行政機関や地方公共団体、さらには民間企業等とも密接に連携・協力しながら、学校、地域、家庭等で行われる防災教育を支援し、国民の防災に関する意識向上を通じて防災教育の拡充及び継続的な実施を促進する。
3.防災教育の現状と防災教育支援において取り組むべき課題
(1)学校における現状と課題
- 1)防災教育の現状
学校における防災教育は、発達段階に応じ、体育、保健体育科及び特別活動等を中心に、学校教育活動全体を通じて行われている。その特徴的な取組には、被災経験がある地域や、災害の切迫性が高い地域の学校を中心に、総合的な学習の時間等を利用した事例が見られ、先進的な地域や学校に限定されている。
また、防災教育において自然災害がどのように起こるかという知識等を持つ教員の増加や、理学的・科学的な研究成果を利活用した教材・指導事例集等が求められている。
さらに、教員が防災教育を推進するに当たってそれを支援する体制や連携を確保すること、大学等が有する高度な人的・物的資源を有効に活用することが求められている。
- 2)防災教育支援において取り組むべき課題
- 教員の支援・確保
- 副読本等の教材の有効活用のための研修の実施方法
- 学校の取組を広く紹介する場や資金的な援助等による、教員の継続的な取組の支援と負担軽減を図る仕組みづくり
- 防災教育支援の位置付け
- あらゆる教育活動における横断的な実施と、その体系的な理解の推進
- 他の分野へも展開可能な先行的な教育支援モデルの構築
- 教育内容・方法
- 防災分野の先進的な研究や、行政等が作成するパンフレット等の有効活用
- 教員個人が作成している教材等を含めた事例の体系化とネットワーク化
- 教員のニーズや児童・生徒の発達段階に基づいた提供できる防災分野の知見の整理
- 災害の視点に加え、自然や環境の理学的・科学的な知識、自助・共助・公助力の必要性をバランスよく教える方法
(2)地域・家庭における現状と課題
- 1)防災教育の現状
地域主体の防災教育の取組は十分ではなく、地方自治体等が主導する場合であっても、相対的に防犯の比重が大きい。
地域における防災教育は防災訓練が中心であり、その参加者には災害時要援護者である高齢者等が多く、その一方、子どもや現役世代などの若い世代の参加が少ない。
- 2)防災教育支援において取り組むべき課題
- 担い手、つなぎ役の育成
- 自然科学や社会科学の有識者と教員等を橋渡しし、防災の知見を分かりやすく伝える人材の育成と確保
- 支援内容・方法
- 大人・子どもを問わず、自然体験等や家庭教育支援のための学習講座等を含めた地域活動への積極的な参加を促進し、その中で防災教育に関する情報を得る機会の提供
- 地域の自主防災・自主管理活動を支援する教材や仕組みづくり
- 親に対して生活力や生命力、社会性についての理念を持たせるための、生涯学習等による内発的な動機付け手法
(3)企業における現状と課題(懇談会において重点的に意見聴取)
- 1)防災教育の現状
- 2)防災教育支援において取り組むべき課題
- 企業における企業内研修テーマへの位置付けと地域に対する協力
(4)関係主体の連携に関する現状と課題
- 1)防災教育の現状
地方公共団体内部の連携では、行政の防災部局と教育委員会の連携の推進や、地域の学校間の連携も求められている。
教育現場や研究機関が、防災教育の良い成果普及事例を出し、地域を巻き込むことが求められている。
- 2)防災教育支援において取り組むべき課題
- 警察・消防関係者のネットワークと、PTA・自治会・青少年団体・NPO等の地域のネットワークの連携構築
- 学校の「総合的な学習の時間」等で活用できる地域をテーマとした教材・手法
- 学校、地域、家庭、企業等を横断してコーディネートできる組織の育成
4.防災教育支援において当面取り組むべき課題
(1)検討に当たっての基本的考え方(懇談会において重点的に意見聴取)
防災科学技術等の知見を、学校や社会教育施設で積極的に活用するための防災教育支援において、早急に当面取り組むべき課題は、次の条件を満たすことが望まれる。
- 国民のニーズが高く、多くの学校や地域、家庭において課題解決が求められているものであること
- 将来、幅広い地域や年齢層への防災教育の拡大・普及と、その継続的な実施への支援が見込めること
- 学校や地域、家庭における既存の人的・物的資源や、大学・研究所等の研究成果を有効に活用するものであること
これらの条件を踏まえ、防災教育支援に関する懇談会において、次項の4つの視点に課題を抽出・分類する。
(2)当面取り組むべき課題の抽出(懇談会において重点的に意見聴取)
- 1)防災教育支援のための教材作成と流通
- 2)指導者、つなぎ役、担い手の確保と育成
- 3)関係主体の連携手法の確立
- 4)資金的な援助のあり方