資料2‐4 防災教育支援の現状と課題について

1.防災教育支援のあり方について

(1)防災教育支援の理念

1.防災教育支援と学力

  • 安全に関わる教育と学力の向上を結びつける視点が必要である。
  • 防災教育とは、自然災害に対して、自分自身と社会の防災力(要援護者の支援等)を家庭・学校・社会という場で育むことである。

2.学ぶ動機づけ

  • 児童・生徒の関心や、教員の専門分野と防災のつながりを意識させる取組が重要である。

3.文化としての浸透

  • 防災のノウハウや対応策だけでなく、命の大切さや日本の災害文化を理解できるようなプログラムが求められる。

(2)防災教育支援のモデル

1.科学的な教授法(インストラクショナルデザイン)

いつ、誰が、何を教え、それをどう支援するか、身に付けるべき防災知識の基準を明確にする必要がある。

2.学習環境デザイン

防災教育支援を行う空間、そこで使うツール、実際の活動、実践共同体の4つを意識し、働きかける取組が必要である。

2.学校・地域での防災教育支援について

(1)指導者の育成と確保

  • 教材の作成・配付だけでなく、広く教員等を対象としたその活用方法に関する研修を実施する必要がある。
  • 現行の学習指導要領の下でも、あらゆる教科で防災教育が可能であるという視点を持った教員を育成する必要がある。
  • 自然科学の有識者と現場の教員等を橋渡しし、防災の知見を分かりやすく伝える人材を育成・確保する必要がある。
  • 校長会や新任研修を通じて、教員に防災の重要性を認識させるとともに、その重要性を伝えることのできる人材を確保する必要がある。
  • やる気になった教員等が継続的に防災教育に取り組めるように、現場の負担を軽くする必要がある。
  • 防災教育の優れた取組を広く紹介する場や資金的な援助の仕組みを設け、意欲ある教員等とその取組を誘い出す必要がある。

(2)防災教育の位置付け

  • 日常生活の中で防災に臨機応変に対応できるよう、全教育活動において横断的に防災教育を実施する必要がある。
  • あらゆる教科に盛り込まれた防災の知識を体系的に理解できるようにする必要がある。

(3)対象

  • 発達段階に応じて地域の防災訓練等に参加させる等、保護者や高齢者を巻き込んだ取組とする必要がある。
  • 防災教育を受ける側の年齢を考慮する視点が必要である。
  • 被災者を助ける側に立てる子どもを育てる必要がある。

(4)教育内容

  • 防災教育が形式的・表面的な内容に止まっている例があり、発災時の具体的な行動につながる内容が少ない。
  • 防災教育における指導の事例を集め、年間指導計画にまとめることは可能ではあるが、現在、防災教育のための体系的な年間指導計画の事例は少ない。
  • 災害事象と被害の両面について、社会がそれに対して何を行うかを予防と事後対応に分け、その中のどこに実践が含まれるかという整理が必要である。
  • 防災科学技術の先進的な研究や、行政等が作成するパンフレット等の優れたコンテンツを行き渡らせ、活用できるようにする必要がある。
  • 教員個人で作成されている教材等の体系化・ネットワーク化が十分に進んでおらず、防災教育教材を集積・配信する仕組みが必要である。
  • 現時点では地域や学校の温度差、ポテンシャル差があるのは当然であり、優れた取組を取り上げて、それを全国に広める方がよい。

(5)教育方法

  • 災害時の学校現場や恐怖感を知ることができるような、体験談や過去の教訓の情報が十分に取り入れられていない。
  • 防災を自分の問題としてとらえ、生活に役立て、そのメリットを認識できるよう、知識としてだけでなく体験型の学習を重視する必要がある。
  • 防災について、災害だけの視点ではなく、自然や環境の理学的・科学的な知識等と合わせ、バランスよく教える必要がある。
  • 防災教育に科学技術の知見を活用するためのツール(指導方法)が不十分であり、優れたテキストを作成して支援する必要がある。

3.組織間、地域と学校の連携について

(1)組織間の連携

  • 行政の防災部局や研究機関と教育委員会の連携を充実させる必要がある。
  • 行政や教育現場が優れた事例の普及努力を行い、教育を通じて地域を巻き込む必要がある。

(2)地域と学校の連携

  • 学校を一つの場としてとらえ、社会教育の視点で広く地域全体、全ての年代を対象としたメニューやノウハウを提示する必要がある。

4.その他

  • 教育現場の予算が限られている中、企業や地域等から提供される支援も有効活用すべきである。
  • 子ども達の取組を広く紹介する場を提供すべきである。
  • 日本の防災の先進事例を用いて世界貢献することで、防災の印象を変えられる可能性がある。
  • 防災を学んだことの利点を、児童・生徒が将来に活かすことができることが求められる。

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研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)