資料2‐3 防災教育支援に関する懇談会(第1回)における主な意見

1.防災教育支援のあり方

(1)防災教育支援の理念

1.防災教育支援と学力

  • 保護者の目が国語や算数等の教科指導に向いており、防災教育に重点を置く学校は少ないが、安全に関わる教育と学力の向上を結びつける視点が必要である。
  • 知識で大事なのは「識」ではなく「知」である。「知」とは問題を解決する力であり、「識」とは特定の事柄についての博識を指す。
  • 防災教育とは、自然災害に対する自身の防災力と、要援護者を支援する能力を向上させるために行う意図的な働きかけであり、人生の危機に立ち向かい、切り抜ける力を家庭・学校・社会という場で育むことである。

2.学ぶ動機付け

  • 夢(進路)と防災との関わりを見つけ、どう実現していくかを考えさせるという取組事例がある。教員にとっても得意分野と防災がつながるような研修を行うことが有益である。
  • 生徒に外国の災害や支援について話すと、卒業生が支援チームを作ったり、心のケアの専門家になる等、人材が育つ。
  • 防災を学ぶことのアドバンテージが学校教育にない。高校で防災を学んだ場合、大学や社会でのアドバンテージとすることも考えられるのではないか。

3.文化としての浸透

  • 防災教育に取り組む際、ノウハウやメソッドのみならず、文化や理念も教えるべきである。理科教育だけでなく、国の災害文化を理解するプログラムを作ることが求められる。
  • 日常生活と関わりあう科学を教えるという視点は、命の大切さを学ぶ上での重要な戦略となる。日本の文化を象徴する教育として、防災教育は良い事例になる可能性がある。

(2)防災教育支援のモデル

1.科学的な教授法(インストラクショナルデザイン)

  • いつ、誰が、何を教えるか、それに対してどのような支援をするか、身に付けるべき最低限の防災知識は何か等、目的・対象を明確にする必要がある。
  • 防災教育に関わるカリキュラムの整備を行い、合格基準を明示できることが必要である。
  • ターゲットの明確化を目的とする対象分析を行う必要がある。

2.学習環境デザイン

  • 防災教育においては、空間、そこで使うツール、実際の活動、実践共同体の4つに働きかける取組が必要である。

2.学校・地域での防災教育支援

(1)指導者の育成と確保

  • 県内の学校で同様の内容を学ばせるため、防災教育ビデオを作成・配付し、県内全ての管理職等を対象に活用法に関する研修を実施している。教員向けパンフレットも作成・配付している。
  • 多くの自治体では防犯と防災の担当者が同じで、相対的に防犯のウエイトが大きいという現状がある。
  • 小学校には、地震がどのように起こるかという知識等を持つ理科を専攻した教員が少ない。
  • 学校での防災教育において、教員に大切さをどう理解してもらうかが重要である。防災教育の面白い側面を発見できるような研修が必要である。
  • 防災教育は、校長のやる気次第という面があり、校長をやる気にさせる取り組みが必要である。
  • 科学技術を内容として扱う場合、教える側の学習も必要である。
  • 資金面に配慮するとともに、取組を誉める仕組みを作れば、意欲ある教員等を誘い出すことができる。
  • 十分に活用されていない行政のパンフレットを教育で活用することも考えられる。
  • 特別な科目をつくる必要はなく、今の学習指導要領でどの教科でも防災教育は可能であり、そうした視点を持つ教員を育てる必要がある。
  • 自然科学の理学的知識を有する人と教育者との間を橋渡しできる人材(例えば防災を理解している教員や地方自治体の防災関係者)が必要である。
  • 防災教育をリードできる人材を教員等の中で育て、地域の人材と組み合わせる形の連携が重要となる。例えば教育委員会の中同士、教育委員会の中と外との連携等であり、教育委員会の中では、校長会や新任研修を活用すべきである。

(2)防災教育の位置付け

  • 日常の教育の中で安全教育、防災教育に取り組んでいくという視点で、道徳、学級活動、教科によってはできるものは押さえる等、全教育活動を通じて取組を行うことができる。通常の学級活動、特別活動の中で消化できない場合は、総合的な学習の時間を使えばよい。
  • 災害時の安全な行動のとり方を体育等で教えても、例えば耐震補強の話はそこから出てこない。大人になって、耐震補強が大切だと言われても対応できない。全教科で対応することが望ましい。
  • 既存の科目に防災教育を中心軸で入れるのは難しいため、各教科で少しずつ、横断的に実施しなければならない。地学、地理、体育の他、歴史、社会、家庭科等にも入れていく必要がある。
  • 防災教育では、日常の中で臨機応変に判断できる力やコーディネートできる力を各教科の中で育む必要がある。
  • 総合的な学習の中に防災が位置付けられれば、防災教育が広がるきっかけになる。全体のバランスも考えながら、可能な限り位置付けを与えていく必要がある。
  • 理科は行うこと、他の教科で行うこと等、様々な教科でアプローチし、それが調和して防災教育全体を構成することが望ましい。
  • 子ども達が様々な教科に散在する防災の知識を自分自身で体系的にとらえることは困難である。小学校高学年程度で一度まとまった防災教育を施し、中学校や高校において、各教科の知識を「これは災害の話だ」と理解できるようにすれば良い。総合的な学習の時間に環境、福祉、情報と挙がっているが、そこに防災の位置付けがあればもう少し取り組みやすくなる。

(3)対象

  • 地域の防災訓練は、災害時要援護者である高齢者を中心に行われ、参加すべき子どもの参加がほとんどない。地域での活動を教育課程に位置付け、学校公開の場で実施するという方法もある。発達段階に応じて地域の防災訓練に参加し、保護者にも参加してもらう取組が必要である。
  • 不足している視点は、防災教育を受ける側の年齢である。小学生は家に知識を持ち帰り、そこから街へと広げていく。高校生は地域の防災リーダーに、大人は、高齢者は、といった受け手側に応じたまとめ方をすべきである。
  • 子ども達は弱者とされるが、助ける側に回る取組もある。被災体験をさせたり、避難所でできることをさせたり、子ども達の存在の大切さを教えることで、助ける側に立てる子ども達を育てる必要がある。

(4)教育内容

  • 防災教育が、活断層の上で避難訓練を行う等、現実に地震が発生した時に対応できない形式的な訓練と化しているケースがある。
  • 防災についてつかみだけを教えるのでは本質的な話ができない。何を学ぶべきかを体系化すべきである。
  • 防災の知識は、地震時には机の下に、程度が現状である。先進的な研究やパンフレット作成が行き渡っていない。自分が立っている日本、地球がどういうところかの認識が不十分である。
  • 学校で知識と技能と態度を教える場合、それぞれについてハザードと被害の両面に取り組み、社会はそれに対して何を行うかを予防と事後対応に分けて整理し、そのどこかに実践が含まれるという整理が必要である。
  • 防災力には抑止力と軽減力があり、抑止力は大部分が物理的なもので対応できるが、軽減力には人の社会活動が影響することも視野に入れなくてはならない。
  • 現状として防災教育の指導案はあり、指導計画にまとめられる良い事例を集めてきたが、体系的な防災教育のための計画の事例は少ない。
  • 良いコンテンツを共有する仕組みと、良いテキストを作ることが必要である。
  • モノについては様々なコンテンツがあるが、自分達だけで使用している事例が多い。それらを取り込み共有することで、良いものが多く出てくる。
  • 実際に防災教育を進める場合、知識の学習を進めるためのツールも考えるべきである。そのまま使えるコンテンツを作り、選択できるよう多様なものを並べておくのも一つの方法である。
  • 現時点では地域や学校の温度差、ポテンシャル差があってよい。差を無くそうとすると、逆に低い方に落ち着いてしまう可能性がある。数多くの優れたモデル事例から選択できることが望ましい。

(5)教育方法

  • 県教育委員会が希望する学校に赴き、児童・生徒と話をしたりタウンウォッチングを一緒にしたり、市や県の防災担当を集め、防災担当と教育委員会の連携を図るなどの取組が行われている。
  • 実際に被災者の話を聞く機会は少なく、テレビ等で被災地の状況が放送されても、災害時の学校現場の状況を見ることはほとんどない。
  • 学ぶ側の視点に立った整理が必要である。体験型の学習を重視し、どうすれば学ぶ人が目を輝かせ、防災を学べばメリットがあると思うかを考える必要がある。
  • 大部分の人は自分は死なないと思っており、実際に死なない。自分は大丈夫と思っている人に、「危ない」と伝えるだけの教育は通用しない。
  • 防災を自分の問題として考え、自分の生活に役立てるようにすべきである。なぜ地震、水害等が起こるのか、防ぐにはどうすべきか、起こったらどうすべきか、これらの全体的な枠組みの議論が重要である。
  • 少しの怖さを知りつつ、対処できるものだと知らせることで気付きが起きる。そのようなコンテンツをまず作ってから、いつ、誰をと考えていくべきである。
  • 教科のコンテンツではなくアクティビティベースで、事前・事後のシミュレーションも必要となる。防災について、災害だけの視点ではなく、自然の知識等と合せ、バランスをもって教えるべきである。
  • 周りの人の救出救助や、2~3日たって落ち着いた時の避難所支援等の活動を行うには、過去の災害の教訓に基づく知識・支援・心が必要となる。それを知識としてだけでなく、体感させて教える教育も考えていく必要がある。

3.組織間、地域と学校の連携

(1)組織間の連携

  • 関係省庁で様々な取組があり、省庁間という横の視点と、都道府県・市町村という縦の視点がある。
  • 行政の防災部局と教育委員会が離れていて、教育委員会はあまり関わっていない。教育委員会から防災部局に働きかけることで問題を解決できる可能性がある。
  • 現場(研究所や教育現場)としては、普及努力と良い事例を出すことが必要である。地域と子どもが離れているため、行政や現場が、教育を通じて地域を巻き込んでいく必要がある。

(2)地域と学校の連携

  • 人材や支援に関して、可能な範囲内で学校の外側にも話を広げ、学校も一つの場として使えるように、学校教育や地域教育の有機的な連携を図るべきである。
  • 災害時には現役世代より上の世代も多いため、学校のみならず社会教育の視点でもノウハウやメニューを提示する必要がある。

4.その他

  • 現場に新しいものを開発する予算はない。公の予算は限られており、企業等から提供される物品等を活用できる部分もある。
  • 防災教育は「持続可能な開発のための教育」の大きなテーマの一つになり得る。日本は建築や土木技術が進んでおり、世界貢献できる。日本の良い事例を世界、発展途上国に発信するシステムができれば、防災のイメージが良くなるのではないか。
  • 子供たちにスポットを当てたフェスティバル(全国若者防災フェスティバルなど)の開催を期待する。
  • 防災を学んだ者が社会で活躍する場を、災害以外に設ける必要がある。

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研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)