資料2‐2 外部評価委員からの意見(第7次火山噴火予知計画)

1)現計画に対する評価

目標の達成度

  • 少ない資源を効率的に用い、多くの成果を上げたことは評価されるべきである。
  • 観測点の充実、新しい観測技術の導入で多くの新たな観測結果が得られ、概ね計画に沿って順調に進捗している。
  • いくつかの火山については、観測に基づき火山体の地下構造やマグマ供給系が明らかにされ、マグマ移動のモデルが作成されて時間的な推移が記述可能となったことは高く評価できる。
  • 観測点総数の伸び自体が小さいことは問題であり、特に大学の観測点数の伸び率は小さい。現在の火山噴火監視体制は大学等からのデータ分岐に頼っているとのことだが、大学の機器更新・定常点増設がこのような状況にあることは問題であり、早い段階での予算措置が必要である。
  • 国立研究機関の独立行政法人化及び国立大学法人化に伴い、計画の実施を担保する予算的な枠組みが変化しているが、対応は必ずしも十分ではないと思われる。
  • 観測・監視体制を維持するための人的・財政的な措置への不安は深刻であり、第7次計画の中で将来の見通しを立てることが望ましい。
  • シナリオ外の噴火活動へと展開したときの観測・防災体制についての戦略が示されていない。
  • 国立大学の法人化等、情勢の変化に対応できておらず、むしろ翻弄されている現状は極めて憂慮すべき事態である。
  • 予定された研究の中で予算の裏付けがなかったため実現できなかった課題について、どのような研究なのか、どのような問題が生じたのかが分からない。
  • 火山活動の推移予測については解明すべき多くの課題が残っていることから、取り組みの強化を図るべきと考える。
  • 観測施設の維持・強化とともに後継研究者と技術者の人材の養成と確保する体制を早急に整備する必要がある。
  • 火山噴火予知には未解明な領域が含まれており、あらゆる角度から予知の可能氏を見いだすという視点からの研究評価も必要である。
  • マグマの輸送や発泡現象の物理といった基礎研究も重要だと考えるが、どのような進展があったのか。
  • 噴火予知研究の重要性をそれぞれの大学の執行部が認識することが必要ではないか。

実施体制の妥当性

  • 実施機関・研究者間の連携は適切にとられていたと思われる。
  • 地震活動の基盤的調査観測網の活用や地方公共団体等の観測網を有効利用することにより、地震観測網がない火山についてもある程度の火山性地震活動の監視が可能になったことや、これまで独自に研究計画を進めてきた大学の火山噴火予知と地震予知に関する研究が火山噴火予知研究協議会と地震予知研究協議会が統合されたことで、観測研究を整合的に進める体制が整ったことは評価する。
  • 研究人材、資源ともに縮小の状況は深刻であり、研究の網に穴が開く事態が懸念される。
  • 大学における体制(人材、資金を含む)が不十分であると判断される。
  • 噴火予知は現地での直接観察や経験的推察が不可欠であるにも関わらず、それを実施する体制が不十分である。
  • 監視体制が十分に整備されていない上に、財政的な支援の問題や国立大学法人化に伴う研究者や技術者の確保の問題があり、これまでの監視体制や機能が果たせなくなることもあることから安定した実施体制の確立を着実に進めるべきものと考える。
  • 計画実施の予算請求は各省庁、大学法人、独立行政法人がそれぞれに行っていることや火山学全般の基礎研究や予知研究における研究機関相互の連携・情報交換・意見交換を充実さる場が設置されていないことから、重複するテーマもあるのではないかと懸念する。
  • 噴火予知研究の方針・総予算・実行計画を統括するヘッドクォーターをいずれかの組織に置くべきであろう。
  • 火山研究者が全員で取り組むしかないような状況と感じたが、ある特定分野について全員がミッション研究に携わるというのは健全な学術研究体制とは言い難い。
  • 各大学の持ち分で、地域ごとにばらばらな体制が目立つ。
  • 観測体制が十分に整備されていない施設に設置された「研究協力支援部門」の機能がどのようなもので、どのような補完機能を果たしたか具体的に説明した方がよい。
  • 異なる機関、異なる手法の成果をどのように総合化し、個々の火山の構造と活動の全体的理解(モデル作成)に生かしていくかの共同作業が必要ではないか

学術的意義

  • 限られた予算・人数の中で、学術的成果は上がっているように思われる。
  • 野心的な研究の結果、火山の実態を浮き彫りにしつつあり、学術的にも意義のあることと考えられる。
  • 火山及び噴火を各種観測によってモニターすることにより、マグマの浅所での移動や変化、噴火の機構解明につながる基礎データが充実しつつあるといえる。
  • 富士山や浅間山における観測により、地殻中・深部からマグマと思われるものが検出され、たことは、今後この浅部にわたるダイナミクスが解明されると、噴火予知だけでなく火山学の発展に寄与すると考えられる。
  • 富士山の火山体構造探査とその活動史の解明、浅間山2004年噴火に関するマグマ供給系の把握は、学術的に高く評価できる。
  • 浅間山や三宅島では、噴火に至る長期的な活動の変化や噴火直前の前兆的変動の把握による火山学の進展と新たな火山ガスの観測手法の開発ができたことは大いに評価できる。
  • 桜島に関しては、地球物理学的に多くの進展があったが、より総合的なモデルを目指すことによって、噴火予知だけでなく火山学全体にさらに寄与できると考える。
  • 火山性地震・微動に関するデータベースの刊行は、地方自治体の防災担当者等に伝える上でも貴重な情報源と考えられ、学術的意義のみならず社会的貢献の視点からもこの編集作業を高く評価する。
  • 多様な国際誌への論文発表が見られ、原著論文の発表は適切と考えるが、地震予知研究における深部低周波地震発見のようなインパクトは感じられなかった。
  • プロジェクト全体で最低限の学術的成果の公表を組織的に行うべきである。
  • 火山の活動や火山情報は社会的要望が強いことを考えると、観測の維持・強化は重要であり、国民の理解を得られるよう努めながらも早急に解決策を策定する必要がある。

社会的貢献

  • 情報発信・情報提供は、適切に行われていると思われる。
  • 噴火情報・避難情報やその後の対応が適切で、社会的に高く評価された事例も多く見られる。
  • 研究成果は、防災に極めて大きな貢献をしている。人文系の学問分野を含めて波及効果も高い。情報発信も、直接・間接を通じて、ほぼ適切に行われていると考える。
  • 継続して観測することにより、活動傾向の的確な予測ができるようになり、防災に一定の貢献をしたと評価できる。
  • 火山の熱水系の重要性が認識され、噴火予知、火山そのものの理解に寄与するだけでなく、地熱エネルギーの利用進展等への波及効果を持つと判断される。
  • 社会への直接的貢献として2004年の浅間山噴火や2006年の桜島噴火などでは事前に兆候をとらえ、噴火開始後の断続的な観測により、噴火推移に関して情報を発信できた。国民はニュースで情報を得ることで噴火に備えた危険回避行動を取ることができた。
  • 三宅島では火山ガスの減少傾向を観測し島民の避難解除の判断になったことも社会的貢献と評価する。
  • 気象庁の火山情報の発信に大きく貢献しており、防災に役立っている。
  • 防災に役立っているかという評価については、国民のレベルで理解できるような具体的な評価軸が必要である。
  • 地方公共団体における防災体制の改善に寄与しているか、具体的な指標を提示するなどの評価が必要ではないか。
  • 火山噴火の予知(規模、場所、時間)の項目ごとに、どこまで明らかにされていて、なにが明らかになっていないのかを具体的に示す必要があるのではないか。
  • 気象庁は大学に依存するのではなく、防災に責任を持つ官庁の一翼として、火山観測網の整備に努力していただきたい。
  • 何時までに、どの火山について、どこまで明らかにする、というような今後のタイムスケジュールがあると、説明性が増すと思われる。
  • 火山防災の重要性に関する社会への発信を進めて欲しいが、現状の研究者数では、それを望みにくい状況であると思われる。
  • テレメーター技術やSAR・飛行機やヘリコプターによる探査などの新技術への取り組みがやや不足しているのではないか。

2)今後の計画の在り方に関する意見・提言

  • 火山研究の人材、資源が置かれた状況は極めて深刻であり、ここまで有効な手立てを講じてこられなかった学協会、並びに行政機関は、この事態を重大に受け止めるべきである。
  • 火山研究・観測については、国からの直接委託研究調査事業のような形態を模索することも考えられる。
  • 物理機構や場の理解が遅れていることなど、根本的問題があり、抜本的な対応が必要である。
  • 計画従事者、研究者の増員は急務と考えられる。
  • 資源が減少傾向の中、思い切った観測点数の縮小等を検討する必要があるのではないか。
  • 火山噴火予知は、物理モデル化よりも、当面は、多くの前兆的変化を検出することを目指し、経験的な活動予測を目指す段階にあるのではないか。
  • 大学における研究者は限られており、周辺研究者を取り込む体制作りを検討してはどうか。
  • 被害を軽減するには発災時の具体的なイメージが防災対策に有効であり、火山噴火においても被害のイメージをもてるように、国民への周知・理解を徹底するよう提言する。
  • 火山ごとに観測網を整備維持するのではなく、日本にある多数の火山と噴火現象を対象としたネットワーク型の総合観測網に変更すべきではないか。
  • 長期にわたる基盤的な観測と、卓越した異なる観測技術を持つ複数のグループが複数の火山を対象とした機動的観測を組み合わせる必要は無いか。
  • 大学等における今後の火山研究は、火山観測に特化した機器開発や,それを用いた機動的な観測に基づくマグマ供給系の解明等の基礎研究の推進だと考える。
  • 気象庁の努力を促す計画とするとともに、計画自身が、その努力の実現を社会に働きかけるアピール性をもったものとすることが望ましい。
  • 国の研究資金配分において、基盤的経費が削減傾向であるのに対し競争的資金が増加傾向にある中で、「計画」を実施する枠組みが不明確になりつつある。計画の今日的な意義について、基本に立ち返った検討が必要ではないか。
  • 今後の観測・監視体制の維持が困難であること、これまでも39火山のみが監視されていたにすぎないこと、火山噴火は限られた地域に被害を与えるだけではなく異常気象などの地球規模の問題にもつながること、などを社会に対して周知させる必要がある。
  • 地震調査研究推進本部と同様の組織が必要であり、幅広い防災分野との連携も必要であると思われる。
  • 地球科学分野全体で、国を守るための研究を維持するために、研究者の育成、研究者人数の配分など、どうすれば良いかといった議論がされるべきだと思われる。最先端も重要であるが、学問の維持・継承も重要である。
     合理化のため地震観測のノウハウをそのまま引き継いで、日本標準の観測網を重要な火山からひとつずつ整備していくことが必要である。現地の観測所に常駐しての細かな観測はもはや断念し、活動の兆候が見えた火山においては、研究者の多くがそこへ投入できる体制を作るべきである。このような体制を実施していけば、定常観測以外の部分で各大学の研究者が相補的あるいは実験的に独自の観測・研究を進めれば、今以上に学術的にも成果が上がるものと期待できる。

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研究開発局地震・防災研究課

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