資料2-1 外部評価委員会における主な意見(第1回及び第2回)(地震予知のための新たな観測研究計画(第2次))

(□第1回/■第2回)

1)現計画に対する評価

目標の達成度

  • □多くの成果が上げられ、概ね目標を達成していると評価できる。
  • □プレート境界地震については、稠密な基盤観測網と相補的に展開された臨時機動観測、及び過去の地震の再解析に基づき、アスペリティモデルの有効性の検証が大きく進展したことは高く評価できる。
  • □体制整備について、データの公開・流通については、学術的な波及効果のみならず教育・啓蒙的にも役目が大きかったことを高く評価する。
  • ■内陸地震についても、モデル化が少しずつ進展しているということで評価できる。
  • □内陸地震については、プレート境界地震に比べると成果が少い印象があり、科学的観測結果による前兆現象も重要なパラメーターと位置付けて研究を進めることが望ましい。
  • □国立研究機関の独立行政法人化や国立大学法人化に伴う予算的な枠組みの変化への対応が必ずしも十分ではない。
  • □目標がやや曖昧であり、研究期間中の状況変化に応じて、目標も変化している印象があり、目標達成度の評価は難しい。
  • □学術的な目標に対しての達成度は高いが、社会から望まれる成果としての目標が明確ではないため、防災の視点からの達成度については評価が難しい。
  • □他のプロジェクト研究との仕分けや重複の度合いが判読できないため本計画を単独で評価することが難しい。
  • □新観測技術の開発について、海底測位システムは実用化には今一歩であり次期計画にはより一層の努力を期待する一方、地下構造モニターシステムについては学術的進展がみられない。
  • □人材の育成について計画開始当時よりも後退した印象があり、具体的な対策を今後打ち出す必要がある。□本計画に投じられている総予算と担当する担当人員数を明確にし、地震予知研究に専念するスタッフの安定確保を行うべきではないか。
  • □大学の観測網は基盤観測網の重要な一部を構成しており、現在の基盤観測の水準を維持するためにも設備更新の予算措置が重要である。
  • □予知に関わる研究の相互関係、本計画に投じられた研究費の情報がないと評価は困難である。
  • □地震予知には未解明な領域が含まれており、あらゆる角度から予知の可能性を見いだす視点からの研究評価も必要である。

実施体制の妥当性

  • 第1測地学分科会地震部会の下に観測研究計画推進委員会を置き、国の機関と大学等とが重複がないように研究テーマの調整が図られている。
  • □大学の研究部門はヘッドクォーターとして地震・火山噴火予知研究協議会を持ち、強い相互連携が図られている。
  • □実施機関・研究者間の連携は適切にとられている。
  • □体制内部での連携・交流はスムーズに行われており、計画推進のための原動力の一つになったと評価する。
  • □地震調査研究推進本部と地震予知との関係が分かり難い。地震予知研究は推進本部の指揮のもとに進められているのか。
  • □大学及び関係機関が役割分担して協力・連携しているが、その取組みが具体的に見えづらい。
  • □地震研を中心に大学間連携はうまく行われていると思うが、個々の研究組織の責任体制が見え難い。
  • □観測と予測理論とのフィードバック体制が未だに十分でない。
  • □他の関係プロジェクトや関係機関、特に活断層や地震動予測、リアルタイム地震情報といった実用的な重点領域と十分な連携が図られたかはやや疑問である。
  • ■平成8年と18年を比べると大学の観測地点の割合が少なくなっている。若い研究者を育てる大学の観測点が減少するのは、問題ではないか。
  • □内陸地震については、個別の地震だけではなく様々な地震に対して新たな手法も導入し研究を加速すれば成果をあげられるのではないか。学協会の積極的な協力体制の構築を期待する。
  • □我が国における地震予知に関する研究情報を収集し、テーマの重複がないか調整強化に努めてほしい。
  • □より多くの研究者が参画できるような体制作りと、単独組織で責任を持って行う体制作りも模索することが望まれる。
  • □国立大学法人として実施するための新たな体制作りが必要である。

学術的意義

  • 第1深部低周波地震の発見やアスペリティモデルの確立は地震現象あるいは地球科学全般に大きなインパクトを与えたと判断する。
  • □プレート境界地震に関しては、相似地震のモニタリングによるプレート間滑りの推定、地震時の滑りと余効滑りの相補性、大きな地震のアスペリティ破壊様式の多様性など、学術的に質の高い独創的な研究を生み出してきたと評価できる。
  • □世界最高の観測網を設置することで、沈み込み帯での地震発生機構について米国をもしのぐ成果が揃ってきたことは高く評価する。
  • □学術論文としての成果について、一世代前から格段に向上しており世界に伍する研究ばかりでなく、全体的なレベルアップがされていると評価できる。
  • □本研究はプレート境界で発生する地震に力を入れてきた結果、内陸地震の研究まで手が回っていない印象である。
  • □短期的な前兆現象に関わる研究は、他の研究に比べ本研究期間中に更に遅れてしまったのではないか。
  • □研究成果が国内のみならず世界においても地震による被害の軽減に資することを期待する。
  • □内陸地震の研究内容について、情報を提供してほしい。
  • □基盤的観測体制の整備に投じられた費用や研究者数に対して、学術的成果は他分野や海外諸国と比べて優れているかという視点も考えられる。

社会的貢献

  • □防災施策への協力・提言等は、この研究が着実に社会に貢献しており、高く評価される。
  • □基盤観測網による一時観測データは一般に公開され、データを活用した研究論文が多く発表されており、社会貢献として評価できる。
  • □各担当機関は、積極的に地震活動に関する情報提供と教育活動を実施している。
  • □地震予知連絡会は、学術的検討に基づく地震予知研究者の見解を公表してきた。
  • □地震予知研究で構築された地下構造データは、強震動の定量的予測の基礎となっており、防災に役立っている。
  • □関連分野の研究者等へは、地震工学・耐震工学分野をはじめとして、科学的・技術的波及効果が期待できる。
  • □プレート境界地震に関しては、発生位置と規模の予測が進展したことで、防災面への貢献が期待できる。
  • □レビュー報告書における社会貢献の評価と、国民が地震予知研究に求める社会貢献の期待内容とはズレが感じられる。
  • □予知研究の現状と、地震学では現状は予知できない不可知の部分が相当大きいことを、丁寧に発信すべきである。
  • □地震発生時期の短期予知・直前予知の見通しは立っていないので、その現状を社会に対し丁寧に説明する責任がある。
  • □情報発信・情報提供の方向性や考え方等について何らかの見直しが必要である。
  • □防災にどのように役立っているのか、国民のレベルで理解できるような具体的な評価軸が必要である。
  • □地方公共団体の現状の防災体制改善にどのような寄与しているのか具体的な指標を提示する必要がある。
  • □本計画の地震防災に果たす役割はそもそも限定的である。本計画の防災に対する貢献を強調することは、地震に対して誤った認識を国民に植え付ける恐れがあり、慎重にすべきである。この点で、地震調査委員会の評価に活用されていることをもって、防災に役立っていると考えるべきである。
  • □国民への説明性、現状の防災施策への貢献、という意味では貢献度を評価し難い。国が牽引する研究として説明性のある貢献成果を示してほしい。
  • □成果として明らかな部分は、マスコミや防災関係者と密接に連携して活用すべきである。
  • ■地方自治体の防災担当者に、分かりやすく研究の成果を発表する機会を設けるなど、地震予知の現在のレベルを防災担当者に理解してもらうことは重要である。
  • ■地震などの防災関係は安全・安心な国造りに寄与する分野であるため、一つの学会に任せるのではなく、学術会議という大きな枠の中で社会的貢献を行っていくべきではないか。

2)今後の計画の在り方に関する意見・提言

地震予知のための研究の考え方(主に次期計画)

  • □専門家に、予算や制度の枠にとらわれずアイデアを出してもらう場を設け、実現可能性、緊急性を考慮して優先順位を付け、新たな計画に着実に実現する方策を盛り込むべきである。
  • □地震予知には未解明な領域が多いことから、あらゆる角度から予知の可能性を見いだしていくという視点も計画の柱として位置づける必要がある。
  • □国の研究資金配分において、基盤的経費が削減傾向であるのに対し競争的資金が増加傾向にある中で、「計画」を実施する枠組みが不明確になりつつある。計画の今日的な意義について、基本に立ち返った検討が必要ではないか。
  • □目標設定に際し、外部の意見を取り入れることが望まれる。
  • □短期的な前兆現象の研究は、今後の計画に含めない方がいいのではないか。
  • ■当初の計画を作る段階で、過大な計画設定をした部分やあるいは投入すべき資源が不足だった部分があると思う。実現可能が高い目標を設定して資源投入するという、ある程度コミットメントした計画を作るのか、あるいは広く学術研究者にガイドラインを示し協力を仰ぐという形で計画を作るのか、考え方を整理する必要がある。
    (地震予知のための研究の考え方(主に研究内容))
  • □当面はアスペリティモデルの構築と検証を一層推し進め、定量的予知の可能性を探るべきだが、今後はアスペリティモデルの存在や変化も予測に含めるような方向性も探ってほしい。
  • □内陸地震においても応力集中過程のモデル化を進めてほしい。
  • □プレート境界地震の予測のためには、海域での構造推定と地震・地殻活動観測が最も重要である。海底測位技術の国内の技術水準と今後の開発の見通しはどうなっているか。
  • □短周期の地震波動の解析方法は未だ発展の余地が多くあることから、波動伝播解析とシミュレーション方法の更なる改良の奨励が重要である。
  • □国際共同研究を活発にし、定常的な共同観測研究を実施することが必要である。
  • □世界の他の地域での地震予知研究の現状に関する記載があってもいいのではないか。
  • □次期計画で内陸地震発生メカニズムのモデル化を積極的に進めることが急務である。
  • □沈み込み帯地震について、「想定外」シナリオの可能性も同時に推進してほしい。
  • □SARなどでリモートの新技術を開発する努力は必要である。

地震予知のための研究の考え方(主に研究体制)

  • □膨大なデータを処理するための研究補助者を多数配置することが強く望まれる。□既存の観測網については、密度等を一律に増やすよりも、重点地域にアレイ観測網を増やし10倍以上の空間分解能を持つよう強化すべきと考える。

研究と社会とのかかわり

  • □平行して地域に適した防災・減災を講じるため、関連する計画との連携が求められる。
  • □内陸地震について、同定できる断層はしっかりと情報を国民に公表する努力をすべきである。

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研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)