次世代放射光施設検討ワーキンググループ(第3回) 議事録

1.日時

平成26年8月18日(月曜日) 15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省 5F6会議室

3.議題

  1. 次世代放射光施設のあり方について
  2. その他

4.出席者

委員

北岡主査代理、雨宮委員、内海委員、上村委員、北川委員、小松委員、佐野委員、菅原委員、杉山委員、曽我委員、廣瀬委員、水木委員

文部科学省

川上科学技術・学術政策局長、渡辺研究開発基盤課長、工藤量子放射線研究推進室長、岡村量子放射線研究推進室長補佐

5.議事録

【北岡主査代理】  それでは、定刻になりましたので、第3回次世代放射光施設検討ワーキンググループを始めさせていただきます。

 本日はお暑い中、お忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。本日は高原主査が御欠席のために、議事運営規則第2条4項に従いまして、主査代理であります、大阪大学基礎工学研究科の北岡が、議事進行を務めさせていただきます。

 このほか尾嶋委員、櫻井委員、渡邉委員が御欠席、それと航空機の遅延のために北川委員が遅れて参加されるとの連絡を受けております。

 開催に先立ちまして、前回ワーキンググループ開催後の7月25日に着任されました、渡辺研究開発基盤課長に一言御挨拶をいただきます。渡辺課長、よろしくお願いいたします。

【渡辺課長】  御紹介ありがとうございます。7月25日に研究開発基盤課長を拝命いたしました渡辺でございます。

 SPring-8をはじめとし、こういった放射光関係のものは、文科省はもともと科技庁でございますから、その歩み、建設計画そのほかから、直接担当しないまでも、折に触れて拝見させていただいたり勉強させていただいたりする機会がございましたが、今回、このように次世代のお話をするという場に携われるということで、大変うれしく思っております。どうぞ皆様、よろしく御指導方お願いいたします。

【北岡主査代理】  ありがとうございました。

 それでは、まず事務局より、配付資料の確認をお願いいたします。

【岡村補佐】  先月、量子放射線研究推進室の室長補佐に着任いたしました岡村と申します。どうぞよろしくお願いいたします。それでは、座って失礼いたします。

 まずお手元の資料を御確認ください。机上資料といたしまして、本日の委員プレゼン資料が3つ、横のステープラ止めのものがございます。加えて、ドッチファイルにて、過去2回の会議資料と「日本の主な放射光施設基礎資料」という資料を準備してございますので、御議論に当たってどうぞ御活用ください。

 また、縦のステープラ止めの資料として前回の第1回会議の議事録を御用意してございます。こちらは、委員の先生方におかれましては既に一度御確認いただいているものですが、この議事録自体は公開の資料になりますので、もしご意見の反映漏れなどございましたら、本日の会議終了時までに私か事務局の者までお知らせいただければと思います。

 そしてもう一つ、こちらの資料2という縦の資料ですが、こちらは本日の委員プレゼン内容の補足資料でございます。

 以上、何か欠落などございましたら、事務局までお問い合わせ願います。よろしいでしょうか。

【北岡主査代理】  よろしいでしょうか。それでは、本日の議題に入らせていただきます。各委員におかれましては、議事録にて確認していただいたとおりなんですが、前回は人材育成についての議論に時間がやや多く割かれました。その議論自体は有益なのですが、本ワーキンググループとしては、次世代放射光施設に求められる性能、機能を幅広く議論することが主な目的となっておりますので、本日は是非各分野のサイエンスを進化させるためにはどのような光が必要かといった観点について、活発に御議論いただければと思います。

 本日は、杉山委員、廣瀬委員、水木委員に発表をお願いいたします。委員の皆様には、まず再確認ですが、今後取り組むべき研究課題について、次世代放射光施設に期待する貢献について、それと次世代放射光施設に対する運営の在り方についての3項目についてプレゼンを行っていただきます。プレゼンごとに15分程度で説明時間と、10分程度の質疑の時間を設けておりますので、また3人のプレゼン終了後、最後には全体の意見交換として3、40分程度時間を設けたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、まず杉山委員の方から説明をよろしくお願いいたします。

【杉山委員】  それでは、報告させていただきます。私は一ユーザーとして、文化財を調べたことがあるという、そのような立場から、文化財に関する利用をメインにして報告させていただきたいと思います。かなり狭いフォーカスの細かい議論になるかと思いますが、どうぞ御容赦ください。

 まず自己紹介ですが、私は木材を研究対象として20年ぐらいやってきておりますが、木材を研究する者にとって、京阪神は非常にいい地理的条件にあります。この表で御覧いただけますように、木造の国宝のほとんどが京都・奈良地区にあるという、そういう立地でございます。こういった木造の文化財から樹種の特定をいたしますと、木の利用の歴史を知ることができますし、また年輪を分析しますと、気候や産地、年代などの重要な歴史的な情報が与えられます。また、このような様々な木材が現存の建築物、あるいは遺物として残っているということは、経年変化というものを研究するということを可能にするもので、材料の寿命というサイエンスが生まれます。このように、保存科学にも役立つということになります。

 私は、木材の構造学が専門で、その中で樹種の特定ということをやってきております。せっかく周りに国宝がございますものですから、少しは社会の役に立ちたいということで、我々の方では、識別技術を用いて、樹種の特定をやっております。通常は光学顕微鏡で観察可能な三断面の画像をとり観察するわけですが、国宝の遺物、あるいは作品になりますと、非破壊の観察が原則となります。しかも国宝の修理中に不可避に、故意にではなく、知らぬ間に落ちてきた破片が観察対象になります。ですので、その形がどれほど小さくても、圧縮されていても文句を言うことはできません。しかも、またこの小さいものを次世代に残したいという強い希望がございますから、微小領域の観察が可能であり、高い分解能が可能であり、少なくとも光学顕微鏡を超える立体構造が見える必要があり、さらには3次元的なイメージングがよいということで、放射光のμCTを使わせていただいて、こんなことができますよということを、文化財をやっている方々に示せたということです。それがきっかけとなりまして、いろいろな国宝の仏像の破片であるとか、同様の依頼サンプルの観察に放射光を利用させていただきました。

 そういった結果は、非常にインパクトが強いといいますか、すぐにニュースになったり、新聞社が来たりするんですが、いろいろ経験したことをまとめて言いますと、そういう結果を公開するということが、所有者、補修者、観察者の間では意味合いが違う。その意味合いの違いをよく考えて行動しないと、大変なことになるということを経験いたしました。それについては、後ほど少し具体的に話せるかと思います。

 ということで、今後取り組むべき研究課題について、まずお話しさせていただきますが、SPring-8の文化財研究利用に関する統計データをここに示します。このデータは、SPring-8の竹村モモ子さんが取りまとめていただいたものですけれども、実施課題数の推移、実験手法の推移、研究対象の推移、文化財研究会というのがSPring-8の利用者ワーキンググループの4つからなりますので、その順番に説明させていただきます。

 利用件数は、1999年に2件ありましてから、それからどんどん増えていってはいるんですが、大体年間10件未満でございます。私も何度も出していますが、複数回残念ながら不採択というのがございまして、学術的緊急性に欠くという評価を受けました。ですので、潜在的には、文化財に関するテーマはもう少し数は多いのではないかと思います。

 手法と対象について見てみますと、このように年度を追って変化していることが分かります。当初はXRFですか、蛍光のX線吸収スペクトル等々、元素分析が主になるんですが、徐々に有機物の観察も対象となり、CTであるとか、他の手法が入ってきていることが分かっていただけると思います。

 次に、文化財研究会のメンバーの所属ですが、このようになっております。博物館並びに文化財研究所。すなわち、文化財を保有しているとか、文化財に詳しい人、つまり文系の方々ですが、その方々が6機関16人。大学等研究機関ですけれども、そこには19機関、芸術系を2大学含んでおりますけれども、29名と一番の大きなマジョリティとなっております。17大学、芸術系以外の大学は、やはりいわゆるサイエンスの対象として文化財を捉えておりますが、芸術系の大学においては、文化財としての取扱いをしております。装置関係は3、人数は10といった具合に、このような分布で合計77人からなっております。

 こういった文化財研究会ができて、さあいよいよ文化財の利用を促進しましょうという機運が高まってきております。それをますます確実なものとして前進させるために、メンバーからいろいろな意見をくみ上げて、上部に答申するという活動をやっていただいていたんですが、そのときに出てきた意見としては、「文化財専用のビームラインを設けてほしい」。実験設備としましては、「今現在必要である蛍光X線、XAFS、粉末解析、赤外、μCT、CT、小型じゃなくて大型のものも入るようなセッティングなど」が候補だろうと思います。多くの場合は、高機能、高精度をうたうよりも、汎用性であるとか多様性というものを求める声が、文化財に携わる方には多かったようです。

 そういう意見がある一方、「文化財研究のための特別なビームラインや分野枠を設けるよりも、マシンタイムの隙間を利用できるような便宜、工夫。具体的には隙間を活用してのお試し測定や、SPring-8に試料を託しての依頼測定制度を充実させた方が、より現実的ではないか」というような御意見もありました。

 ということで、今後取り組むべき研究課題についてということなんですが、文化財科学、古生物学、考古学というものに対応できるようなビームライン、あるいは手法。そういったビームラインを持ってはどうだろうかと。方法論としましては、汎用性といいますか多様性を求める意見が多かったということでございます。

 次に、次世代放射光施設に期待する貢献ですが、これも文化財科学の立場から、一面的な意見ではございますが、報告させていただきます。私の主張の骨格になっておりますのが、『ESRF news』に載りました「放射光文化:化石から芸術まで」と題する小冊子に載っている文章ですけれども、要するにESRFでは、「文化財を研究することは、単にすばらしい結果を得ることや新しい新聞発表をすることが目的でなく、その作品がどのように生まれ、保存されるべきかを知ることである」ということで、そういったテーマを集めて、そしてどんどんデータを出して、社会に対して公開していくというシステムが、どうやら日本よりも進んでいるように思えるわけでございます。

 手法といたしましては、X線吸収分光法(XAS)による研究例が非常に多いようです。年々増加しております。先ほどの日本のデータは、採択件数でしたけれども、これはnumber of publicationsですから、発表論文は既に10報以上年間で出ているということでございます。しかも非無機物といいますか、有機物に関する結果もどんどん増えていっております。特に2007年以降、急激にどんと増加しておりますが、これについてはまた後ほど運営に関する点で出てきますので、説明させていただきたいと思います。

 ここで、先ほど私の経験でもって自分がやったときに、新聞発表等も含めてあったのですけれども、所有者の気持ちを大事にしなかったというふうなことをちょっと言いかけました。所有者が本当にそういった公開を望んでいるかというのは、文化財研究にとっては非常に重要な問題です。ESRFの場合は、この結果を見て分かるように、結果が公表できるような状況を作っているということが、非常に進んでいるという様に私は考えます。

 そういった結果を大々的にこのようなチャートにして、過去の紀元前から中性、近代の絵画まで。これはピグメントの解析ですから、蛍光吸収とか、X線のスペクトルで調べるのですが、どのような塗り方がされたか、どういった材料が作られたか、どういった地域から来たかというのが研究の対象になっています。更に古くなりますと、サイズが示されていますが、非常に大きな試料も観察していますよということをESRFでは宣伝をしています。このように、過去を照らすと題しまして、非常に優れた研究結果がどんどん出ているということが、すばらしい点です。

 これを見てみますと、公開というものが人の生活に潤いをもたらすということや、保存に役立つということ。また、正しい歴史や文化の認識につながるということ。欧州はその風土が確立されているといいますか、文化財を明らかにすることに対して、非常に好ましい状況にあるというふうに言えるかと思います。

 更にヨーロピアンコミュニティの中には、COSTというファンデーションがございまして、国を超えた共同研究基金がございます。そういった申請を通して、簡単に国際共同研究が生まれていきます。放射光を機軸としました国際共同研究も幾つか走っているようで、その中で文化財に関わるものも、何件か見つけることができました。このように、国境を越えた国際共同研究へと展開するというのも、1つの貢献であるというふうに考えます。

 少しまとまりが悪いですが、次世代放射光施設に期待する貢献としまして、文化財科学というものは、そもそも論ですが、歴史上、考古学上の遺物や芸術作品の非破壊検査解析から人類の英知を学び、後世に伝えるために保存・修復・維持する総合科学であると。このような文理融合型の研究に先端科学が融合することにより、ここが言いたいところなんですが、放射光が「社会を豊かにする革新的なツール」として、社会に高く評価される可能性が高いと思います。

 さらに、我が国のみならず、東アジアの発展途上国にも古くからの歴史があります。今現在、国を挙げて「文化力」の向上を目指している現状を考えますと、その中核研究施設として、国際貢献を期待できるのではないかと思います。

 3番目の運営の在り方について。これも同じくESRFの冊子からの引用です。ネアンデルタール人の遺物だと記憶しているんですが、「どのようにしてサイエンスはこの刃をカットしたか」、結論から言えば「CTで見た」ということですが、そうじゃなくてこの文章の中に、「2007年後半の結果を受けて、ESRFはイメージンググループに古生物学担当の5年任期のポジションを準備し、そのポジションを3年後にパーマネントとし、今は新規プロジェクトを正式にスタートさせて、非破壊イメージングのリーダーとなるべくまい進している」ということが書いてありましたので、運営面においても、要するに、考古学、あるいは文化財科学担当のポストとラインを準備しつつあるということが分かっていただけるかと思います。

 最後になりましたが、次世代放射光施設に期待する運営の在り方につきまして、私なりの意見ですけれども、まずは現状としまして、文化財研究はそれ自身「新たな市場を開く」ことが目的ではなく、つまり、競争的なところでは弱いというわけです。産業・経済への波及効果を期待するものではない。このことが公募審査の段階等で不利にならないように、何らかの措置をしていただきたいと。公開を原則としない「文化枠」の設置はどうかと書きましたけれども、ここまで強いことは言えないのかもしれません。

 少し進みまして、文化財専用ラインを設けるとしますと、文化財科学に詳しい人材をビームラインに雇用する。また、放射光の利用を希望する文化財研究者、学芸員、結構たくさんいることが最近分かってきております。ただ、その方々は文系の方々が多いので、放射光に関して全く知識がございません。ですので、放射光機構との間を取り持つ共同研究のコーディネーター的な人材、色々な分野に精通したすばらしい人材が必要であると思います。

 更に進んで、文化財の診断を兼ねて博物館に併用して専用ラインを建設するならば、文理融合、学際性の高い研究テーマの熟成の場として大いに期待できるのではないかと思います。具体的には、ルーブル美術館の地下に加速器があると同じようなイメージを持っておりました。そういったところでは、学生のインターン制度などを設けて、積極的に人と文化財が回る仕組みを、所有者、博物館、放射光機構といった間で構築していく必要がありますが、もしそれが可能であれば、すばらしい研究施設になるのではないかと思います。

 以上、簡単ですけれども、私の報告を終わらせていただきます。

【北岡主査代理】  杉山先生、どうもありがとうございました。

 何か御質問等ございましたらお願いします。

 ちょっと私の方から。今使われているSPring-8のビームラインとかは、SPring-8でないとできないんですか。日本のほかの放射光施設ではできないんですか。

【杉山委員】  分解能が1ミクロン以下であればできますので、どこでもそれはやらせていただけるのでしたらできます。

【北岡主査代理】  ただ施設側で、今言われたああいうような文化財の、どこでできたか、年代を含めてX線吸収でしたっけ、ああいうのはSPring-8以外にできる施設はほかに日本にあるのでしょうか。今のお話の内容に関して。施設側、いかがですか。

【小杉施設長】  通常のX線吸収装置は普通に各施設にあると思うんですけれども、軟X線領域の顕微鏡のモードという点では、フォトンファクトリーとUVSORでは1ミクロン以下の吸収の顕微イメージングができるような装置が今、立ち上がっているか、立ち上がりつつあるという状況です。近くSPring-8にも入ると思います。

【北岡主査代理】  ということは、今の施設でも割と使われることは可能でと。

【小杉施設長】  測定方法として、軟X線吸収の場合は、試料の厚みが薄くないと透過しませんが、ほかの透過法ではない手法もありますので、その辺の手法の開発が必要です。現状としては、普通の透過法で顕微イメージングをとる形になるので、試料が薄くないとできない。

【北岡主査代理】  要するに、サンプリングができないので、そのままのやつでやらんといかんわけですよね。だから、そういう限界があるというわけですね。

【小杉施設長】  そうですね。

【杉山委員】  性能的には非常に優れたものがあるんですが、文化財の方の形であるとか、そっちの方の制約でなかなか持っていけないということがありますね。それが一番大きなところです。これは本当に破片だから、逆に持っていけたというだけの話かもしれないんですが。

【北岡主査代理】  なるほど。ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【水木委員】  使われるエネルギーはかなり多岐というか、いろいろなエナジーを使うわけですか。それとも、かなり高いエナジーに特化しているとか。

【杉山委員】  鉄器、石器から始まって木材までございますので、いろいろな波長が、エネルギーが使われると思います。私の場合は、それほどエネルギーが高くなくても大丈夫なんですけれども。

【北岡主査代理】  ほかに。どうぞ。

【熊谷理事】  施設者側というか、装置側から少しお聞きしたいんですが、この文化財を対象とする場合、なかなか例えば物があるところから外に取り出せない、持ってこれないというのがありますよね。それから、文化財を非破壊ということなので、それほど強いX線を当てるということもできないと。そういうことを考えると、文化財で必要な放射光施設の性能というのは、どんなことが実現できていれば、差し当たっていいのかどうか。例えば、フォトン数がどのぐらいとか、あるエネルギーのX線に対してフォトン数がどれぐらいあればいいのかとか、ちょっとその辺を教えていただけますか。

【杉山委員】  まさにその点が、実際非破壊で様々な遺物であるとか文化財の作品であるとかを観察できるかという点が、私どもも知識がないものですから、まず一緒に考えるようなワーキンググループが必要じゃないかと考えています。まず何を見たいかというところから聞いてあげないと。文化財側からいうと、聞いていただきたいし、今の質問に対して、そういうふうなお答えしかできないですけれども。物はいっぱいあるのですが、具体的にどのような対象があるのか具体的にお示しすることは今私にはできません。

【熊谷理事】  ちょっといいですか。その件は、実は理系というか、我々と文化財側の人たちの意見を交流する場所というのがなかなかなくて、おっしゃるとおりなんです。我々の近くにオリエント美術館というのがあって、そこのガラスのお碗(わん)が外に出せるというので、たまたまそういうチャンネルを通して、今、文化財をやり始めている。そこに行っていろいろなチャンネルがあることはお聞きしました。我々、まだそういう視野に、自分たちの周りにどんな方がいて、どんなニーズがあるかというのを余りよく分かっていなかったんですが、そういう異分野の交流というのがあると、何かもっと夢が広がっていい結果が出そうな気が私自身はしているんです。ですので、是非とも装置側と文化財側の交流をするような場所というのを、我々も作りたいと思いますし、そちらの使う側の方の方も、そういうチャンネルを広げて、こういうことは施設者側で今考えていますよというアナウンスをしていただければと思いますので、よろしくお願いします。

【北岡主査代理】  ほかにありますか。

 何回もESRFという言葉が出てきたのですけれども、European Synchrotron Radiation Facilityというのですか、そこはマシンとしては、日本のマシンよりも先行しているんですか。グレードアップされたのですか。その辺をちょっと済みません。

【熊谷理事】  いや、例えばESRFとAPSとSPring-8という3つありますけれども、一番初めにできたのがESRFなんですね、第3世代で。

【北岡主査代理】  ああ、第3世代なんですか。

【熊谷理事】  ええ。大型の第3世代というので、6GeV、7GeV、8GeVとあって、割にX線のエネルギーが高いものが出る。それともう一つは、ヨーロッパの文化というのがあって、例えば芸術だとか、さっきお話になっていた顔料の話だとか、そういうところにもかなり注目している部分があった。それから、化石というか、化石を普通ですと掘り出して掃除するわけですね。ところが、それを全部CTに当てると中のものが見えたとか、新しい発想で放射光を使っているという、そこがちょっと違うのかなという。

 それから、日本だと残っているものが木とか紙という感じになりますので、そういうものはもともと余りX線にはふさわしくない、マッチングがよくないというあれもあったのかもしれないんですが、最近杉山さんがやっていらっしゃる木材というのがなかなか面白い結果が出ているので、ですから新しい発想を持ち込むということが重要なのかなと思います。

【杉山委員】  とにかく文化財科学者というか、学芸員も含めてですけれども、文科系の方は夢の装置のように思っていますので、是非使いたくて仕方がないんです。ただ、割と行ってみると冷たくあしらわれたり、全然思ったのと違うデータが出たり、なかなか敷居が高いといいますか、分からないんですね。ですから、それを取り除いてやることと、文化財が先ほど言われたように回る仕組みですね。うまく文化財が回る仕組みを一緒に構築するということが、非常に重要なことになると思います。

【北岡主査代理】  ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

 ちょっと私から。ESRFというのができているということは、それを超えるような、まあ、キャッチアップじゃないんですけれども、それを超えるようなものだけではなくて、やっぱり運用面でも非常に幅広い裾野を開拓するという。それもパッケージでいろいろこのワーキングで検討していくということですね。

【熊谷理事】  おっしゃるとおりです。SPring-8も2015年、来年の春から、考古学とか、今おっしゃっていた分科を立ち上げて、少し文化財、芸術とかそういうところに光を当てようという取組をし始めていますので、昔といいますか、今までに比べればもう少し使いやすいシステムになるかと思いますので。

【北岡主査代理】  分かりました。よろしいでしょうか。ちょっと時間も経過して。どうもありがとうございました。

 それでは、廣瀬委員からのプレゼンをよろしくお願いいたします。

【廣瀬委員】  東工大の廣瀬といいます。よろしくお願いいたします。

 我々は、高圧地球科学と申しまして、地球科学なんですけれども、特に高圧というキーワードで、高圧というのは、要するに地球の中という意味です。そういう分野でどういうことがこれまで行われてきて、今後どういうことに取り組まないといけないか、どういうふうなサイエンスを今後展開していくべきか。それに当たってどういうことを次世代の放射光に期待しているか。最後に、これは最近のことですけれども、運営に関する要望というのをちょっと幾つか聞いていただきたいというふうに思っています。

 今申し上げましたように、地球の中、特に我々、地球の中に関心があるんですけれども、今、地球だけじゃなくて太陽系の惑星、特に火星とか、もうちょっと大きな木星とか土星とか、そういったところにも関心がどんどん集まるようになってきています。更にここ10年間ぐらい、天文学の方で非常に大きな話題になっていますのが、太陽系外惑星というやつですね。要するに、我々の惑星はもちろん太陽の周りを回っているんですけれども、太陽じゃないお星様の周りにも、当然惑星がたくさん回っていまして、それが発見されたのが今から15年ぐらい、20年前弱ぐらいに、初めてほかのお星様の周りを回っている惑星というのが発見されて、そこがどういう惑星であったりとか、ひいては更にそこに生命がいるんじゃないかとか、そういうことで非常に天文学の分野でも、新しい惑星の発見というのが相次いでいまして、惑星の内部の研究というのは、今非常に活発に行われるようになってきています。

 それで我々は何をやっているかというと、高圧実験というのがキーワードですけれども、特に高圧だけじゃなくて、実は温度も上げなくてはいけなくて、高温と、それから高圧の環境下で、ここに惑星と書いてありますけれども、地球とかその他の惑星の内部で一体どういうことが起こっているのかということを探るというのが、我々の研究目的です。

 1つ強調しておきたいのは、高圧実験はとにかく日本のお家芸として、過去何十年にもわたって世界をリードしてきたというふうに言えると思います。例えば、これは一番左側にありますのは大型の油圧プレスなんですけれども、ここに川井型と書いてあるように、もともと大阪大学におられた川井先生が最初に開発された油圧装置が、この川井型のマルチアンビル装置というやつでして、世界中の研究者がこの装置を使って研究していると。この装置はとにかく日本で生まれて、ほとんど技術が日本にありますので、当たり前のように日本が世界をリードしている、まさにお家芸の装置がこちらの装置になります。

 それから、こちらにもう1個別の装置がありまして、私はもちろんこっちの方ばかりやっているんですけれども、これは手のひらに載るような非常に小さいサイズの装置で、ダイヤモンドアンビルセル装置といって、この中に単結晶のダイヤモンドが2個入っていまして、このダイヤモンドの先端と先端のところに、まさにここに試料を挟み込みまして圧力をかけると。実はここに4つ黒いねじがあるんですけれども、これを六角レンチで回すだけで、何百万気圧という圧力がかかる装置です。こちらは実は歴史的なことを申しますと、日本は油圧プレスが中心で、どちらかというとアメリカがダイヤモンドアンビルセル装置が中心で、日米でという感じだったんですけれども、最近ではダイヤモンドアンビルセル装置に関しても、日本がかなりアメリカをリードしていると。若しくはヨーロッパをリードしているという状況で、とにかく高圧実験というのは日本のお家芸で、非常に強い分野ですよということです。

 それで、これまでどういうことをやってきたかというと、我々、一番の関心事は、地球の中が一体まずどうなっているのか。もうそろそろ、例えば冥王星にもNASAの探査機が行くような時代です。あと数年たつと、冥王星に最接近するという時代なんですけれども、地球の中は実はどうなっているか余りよく分かっていないという、これが現実です。よく地球の断面図というのは、図鑑などによく紹介されていて、あたかも分かったかのように書かれていますけれども、実際は本当にどういう物質があるかというのは、つい最近までよく分からなかったというのが現状です。

 それはどうしてかというと、これは地球の断面図をショートカット型に輪切りにしたものですけれども、ここが地球の中心で、ここが地球の表層になるんですけれども。それで地球の真ん中まで6,400キロなんですけれども、圧力としては364万気圧あります。実は80万気圧ぐらいというのが結構マジックナンバーでして、これを超える圧力を出すのは結構難しいんです。それで今からざっと10年ぐらい前まで、この80万気圧を超える高圧実験というのはほとんどされたことがなくて、これが地球の深さでいうと3分の1ぐらいのところにあるんですけれども、ここから下が一体どうなっているかというのは、ごくごく最近に、それもSPring-8で明らかにされてきた成果です。

 歴史的なことを言うと、これは地球の中を、いろいろな違う物質でできたものがタマネギ状に層構造を作っていると。これはよく知られていて図鑑に書いてあることなんですけれども。実はこの上からどういう層構造をしているかというのは、地震学を見れば50年以上前から、とっくに分かっているわけです。問題は、一個一個の層構造が一体何でできているかというのがよく分からない。それは幾ら縦波の速度と横波の速度が分かったって、物質の特定まではできないでしょうという、そういう理屈です。

 それで歴史的にどういうことになっていたかというと、このかんらん石というのは表層の岩石なので、日本でも地質学者がよく知っている石なんですけれども、410キロより深いところにいくと、今度はスピネルという別の物質に変わるということが、1960年代にオーストラリア国立大学とか、若しくは東大物性研の秋本先生のグループですね、こういうところによって散々研究されて、1960年代には既に分かっていたわけです。それから、660キロより下のところにはペロフスカイトという、いろいろな分野でよく出てくる結晶構造になるんですけれども、これが明らかにされたのが1974年で、今から40年も前です。これもオーストラリア国立大学。日本もそれなりの貢献はもちろんしているんですけれども、必ずしも世界で一番乗りというわけにはいかなかったかなという気はします。 ここから先はSPring-8の話なんですけれども、これが現在の我々の理解する地球内部の描像です。先ほどの絵は80万気圧ぐらいまでしか絵がなかったんですけれども、今ではここから下、ずっとかなり色塗りが進んできていまして、この青いところはポストペロフスカイトという、全く新しい、それまで全く知られていなかった鉱物からなっているということを、今からちょうど10年前にSPring-8で発見されるに至りました。それから、もっともっと深いところ、この地球の真ん中にはコアと呼ばれる鉄の塊があるんですけれども、その鉄の塊が一体どういう結晶構造でできているか。hcpというのは、六方最密充填硬度のことですけれども、それも2010年になってSPring-8で初めて明らかにされて、要するに先ほどの六角レンチでくりくりっと回すあの装置で、今、地球の真ん中までどういう結晶構造の物質でできているかということが、SPring-8に行けば分かるという時代です。

 問題は、わざとここは白塗りにしてあるんですけれども、地球の中は大分SPring-8のおかげで明らかになってきたと思っているんですけれども、この白抜きになっている液体鉄と書いてある外核と呼ばれるところですね。ここは実は全くよく分からない。どうしてかというと、ここは液体だからですね。もちろんX線回折は固体には強いんですけれども、液体には必ずしもそれほど有力な武器ではないということで、この液体の部分というのはまだまだよく分からない。これが我々の今、コア地球科学では最も大きな問題です。 今言ったように、とにかく外核というところは液体なんですけれども、この液体のいろいろなことがよく分からないので、地球全体のことがよく分からないというのが現状です。たったこれだけじゃないかと思うかもしれませんが、これは実はスケールが結構いいかげんなので、この液体鉄と書いてあるところは、地球全体の質量の3割もあるわけです。その3割の化学組成が実は分からない。地球全体の3割を占める部分の化学組成が分からないと、地球全体の化学組成ももちろん分かりません。そうするとどういうことになるかというと、地球がどうやってできたのかとか、それから、ここはコアと呼んでいるんですけれども、コアというのが一体どうやってできているのか。もともと最初からあったわけではないので、地球の初期にあるところでできたことになっているんですけれども、これがどういうふうなメカニズムでできたのかもよく分からないということで、とにかくここの液体の外核というのを理解しないといけない。

 それが理解されるとどういううれしいことがあるかというと、実はこの液体の中で今対流が起こっているので、我々地球磁場というのがあるわけですね。この地球磁場というのがあるおかげで、今、陸上に生命が住んでいるんだろうと思っているわけですけれども、これがいつからあったのか。それは非常に大きな問題で、今、私がやっていますWPIの地球生命研究所というところで最も大きなテーマが、地球の初期にどういう環境で、そこでどういうふうに生命が発生して進化したのか、これが我々の一番大きなテーマですけれども、これを理解するためには、とにかく地球の深いところでどうやって磁場を作っているんだというのが、非常に大きな研究テーマです。

 以上まとめると、今後取り組むべき研究課題として4つ並べてみましたけれども、とにかく技術的に、若しくはサイエンスとしては、高圧下において液体がどういう物性を持っているんだということ。固体も、圧力をかけておけばどんどん物性が変わるのはもちろん分かっていることですけれども、液体だってもちろんどんどん変わっていくわけです。なので、液体が高圧下でどういうふうな物性を持っていて、どういうふうに振る舞うのかということは、是非理解をしたいと。逆に言うと、ほとんどよく分かっていないので、地球科学としてはここを何とかしたいというのが非常に強いモチベーションです。

 それで具体的には4つぐらい大きなテーマがあるんですけれども、最初に言ったコアの化学組成というのは、先ほど説明したように、地球の3割を占める質量がよく分からないとどうしようもないと。それから、これもちょっと説明させていただきましたけれども、そのコアの中で、液体がどういうふうに動くのか。どういうふうにコアができて、どういうふうに磁場が作られるようになったのか、そこをちゃんと理解したいわけです。

 それから3番目は、これは今までと話が違いますけれども、我々やっぱり地球科学は、深発地震とか大規模火山活動とか、そういうところはどうしても無視することはできないんです。何で日本のような沈み込み帯にたくさん地震があって、巨大火山ができるかと言われているかというと、要するに、一旦太平洋プレート等持ち込まれた水が、もう1回日本列島の下を通って戻ってくるわけです。それをリサイクルと言っているわけですけれども。一旦沈み込んだ水がどういうふうに戻ってくるかというのは、これが実は僕が学生の頃からずっと議論されているんですけれども、全くよく分からない。これに関しても、とにかく高圧下でどういうふうに液体が振る舞うんだということをちゃんと理解しないと、多分永遠に解けない問題じゃないかなというふうに思っています。

 それから4番目は、これは太陽系といってもこれは惑星の話ですけれども、太陽系の惑星の質量の95%は液体です。なので、今我々はSPring-8でいろいろな実験をして固体のことがよく分かって、地球のこともよく分かった気になっているんですけれども、実際本当に惑星のことを理解できたかというと全然そんなことはなくて、やっぱり従来の固体の研究のみでは全く不十分というふうに感じています。

 以上申し上げましたように、とにかく我々としては、高圧コミュニティとしては、液体の物性と挙動を何とかしたいと。それを高圧下で何とか見たいというわけです。それが今、もちろんSPring-8で頑張ってやっているんですけれども、なかなかこれがうまくいかないというか、十分ないいデータが出ないというのが現状です。では、何が困っているかというと、短時間測定が今のところではかなりできないんですね。今、例えば液体の密度とか、それから液体の音速というものを何とか測りたいと思っているんですけれども、例えば音速1つ測るのに6時間かかると。我々は今、超高圧・超高温下、例えば200万気圧の3,000度とか4,000度とかいうところで6時間キープしてくださいって、それは結構難しい問題です。なので、ここを何とか短時間測定するようにしたい。それが1つ。要するに、輝度を上げてくれということですね。

 それから2つ目は、なかなかこれは実験上の問題で、試料を全部溶かすというのは結構難しい。これはすみません、汚い絵で申し訳ないんですけれども、これは実はこのちょっと影がついている黒っぽいところですね、ここだけが液体で、ここに何かぴょろっと出ていますけれども、これは液体ができた後動くんですね、どうしても。ここの明るい部分は固体です。なので、ここの部分だけが液体です。ここだけ見たいんですね。ここだけ見たいんですけれども、このバーが5ミクロンなので、かなり小さいビームじゃないと、この液体だけ見ることができないんです。なので、とにかく集光して、例えば1ミクロン以下、サブミクロン以下に常に集光されているような状況で、X線回折若しくは非弾性散乱、こういうものがとれるようになると、極めて液体の物性測定としては有効と。それから、高解像度のイメージングというのも極めて大きなテーマです。

 というわけで、次世代光源、特に高輝度とかナノビームは、液体の測定をするには大歓迎です。ただし、同時にじゃあ全員が本当に高輝度、ナノビームだけやっていれば幸せかというと決してそういうことはないので、こういった日本の現在存在する極めて大きなコミュニティかつ世界的に極めて高い研究レベルを今、高圧のコミュニティは持っているわけですけれども、それをしっかり同時に維持していただく必要があります。そのためには、この一部の特化したビームだけじゃなくて、全体のビームタイムをしっかり確保する必要があろうかと思っています。

 最後に、運営に関する要望を2つだけ挙げさせていただきます。1つは、いろいろな新しい施設が議論されていて、それは全く結構なんですけれども、同時にそういうことを作ると、例えば全体のビームタイムが減るという、それはある意味しようがない話で、とにかく全体のコミュニティを維持するということが極めて重要。例えば、上海に中型の放射光施設ができるという話がありますけれども、我々に言わせれば、物だけ作ったって、やる人がちゃんとしていなきゃどうしようもない。高圧のコミュニティをちゃんとやっぱり維持する必要があって、そのためにはちゃんとコミュニティというものを維持させていく必要があって、そのためにはビームタイムがないとどうしてもどんどんコミュニティが小さくなってしまうので、全体としての運転時間の確保というのは重要です。

 特に最近、PFの運転時間が半減しているということですけれども、これは非常に大きな問題になっていますので、ここを何とかしていただきたいというふうに思っています。 これが最後のスライドですけれども、ごめんなさい、あと2枚あるんですけれども、これは先ほどの杉山先生のお話にもあったかもしれませんが、要はお試しタイムというのがもうちょっとあってもいいんじゃないかなと常々思っています。これは実は僕自身、前にちょっと苦労したことがあって、大体研究者というのは、野心的なアイデアを何とか試してみたいわけですよね。ただ、野心的であればあるほど、思ったとおりのデータは出ないです。

 ところが、もしうまくいけば、すごく大きなインパクトになる。私、昔あることを思いついて、台湾ビームラインでちょっと実験したらめちゃくちゃうまくいって、すぐ『ネイチャー』に出て非常に褒められまして、もっと先生やってくださいと言うから、もう1回やったら、今度は違うことをやったらめちゃくちゃつまらないデータで、論文を書くのに大分苦労したという結果があって、とにかく野心的なデータがうまくいくかどうか試せるような、そういうシステムになっているということが非常に重要かなと思っています。 それからもう一つ、今、SPring-8の中で非常に問題になっているというか、話題になっているのが成果発表義務の話で、3年以内に査読付きの論文への公表が原則で、もちろんD論とかもいいそうなんですけれども。僕個人的な意見としては、ここを緩和する必要はないだろうと思います。

 一方、先ほど言ったようなお試しがないと、どうしても新規のユーザーを開拓するのは極めて難しい状況にある。要するに、3年以内に必ず論文を書かなきゃいけないと。僕、1回も実験したことはありません。なかなかやらないですよね。とにかく論文にならないリスクが高いんだけれども、野心的なアイデアに基づく実験を後押しする必要性というのは必ずあって、現状のこの制度の中では、なかなか新しいユーザーが野心的なアイデアを試すようにはなっていないというふうに僕は感じます。なので、いわゆるPFでいうとP型みたいな、そういうものを数十%ぐらいSPring-8でも導入されたらいかがかなというふうに思っております。以上です。

【北岡主査代理】  廣瀬委員、ありがとうございました。

 それでは、何か御質問等ございましたらお願いいたします。

 先ほど、液体の鉄ですか。それはもちろん高温・高圧で密度もあるんでしょうけれども、磁性を持っているんですよね。

【廣瀬委員】  磁性はすぐ分かるので、実際磁性が関係あるところはもっと低圧なんですね。

【北岡主査代理】  ああ、低圧なんですか。磁性がないことは分かっているんですか。

【廣瀬委員】  磁性はもう、フェーズにもよるんですけれども、15万気圧ぐらいかければ大体なくなると。

【北岡主査代理】  そうですか。ということは、先生がやられたいビームのクオリティとしては、とにかくエミッタンスは、輝度が高いということで、非常に狭い小さなところ、高圧で少ないスペースでやりたいと。ということは、先ほどのお話は、割と汎用性、多様性ということと、先生のお話は1点特化というか。

【廣瀬委員】  誰にとったって、輝度が上がるのは間違いなくいいことだと思います。集光は別にデフォーカスするのは簡単なので。簡単とは言いませんけれども、それは切り換えはできるので。

【北岡主査代理】  今まで使われているSPring-8の実績の中で、じゃあこうあればもっといいというのでは、ビームのクオリティとしては、どこが一番必要と思われているんですか。輝度があればいいですか。

【廣瀬委員】  輝度というか、フラックスが非常に重要で。だから、集光されるということと、それからもともとの輝度を上げていただくと。例えば、今6時間かかっている測定が、仮に5分でできるようになれば、それはもう。

【北岡主査代理】  全然違いますね。分かりました。ほかにいかがでしょうか。

 今はどれぐらいのあれですか、フォーカシングができるわけですか。今のSPring-8でやられているのは。何ミクロンぐらいですか。

【廣瀬委員】  それもある程度輝度との兼ね合いも、輝度というか、ビームラインによりますね、それは。数ミクロン以下になっているところもあれば、非弾性とかだとどうしてもまだ数十ミクロンというところでなかなか難しいです。

【北岡主査代理】  ほかにいかがでしょうか。

 それでは、またまとめて後でお話ししていただくことにいたしまして、それでは、時間もきておりますので、最後に水木先生の説明をよろしくお願いいたします。

【水木委員】  それでは、水木が御報告します。私は、関西学院大学の所属ですが、立場としては前放射光学会長として、それからマスタープラン2014を学会が出したときの学会長であったということで、学会の考えを述べよと理解して発表をいたします。

 これは前回、尾嶋委員も出されましたが、放射光学会としては、物質、生命における創発機能の解明、それが持続可能な社会の創成に結び付くということで、まずとにかく我々は、中型の高輝度光源が必要ですということを主張いたします。これは軟X線の回折限界光源になるわけですが、それに続いて、やがて硬X線領域の回折限界光源が必要になります。これらを持つことによって、こういうものが実現しますよということを述べてきました。

 その中で、物質科学が必要とする放射光源といたしましては、今までは不均一なものを大体平均して見ていたもの、それを静的なものと見ていたのですが、不均一なものを不均一なものとして、更にそのダイナミックスを見ていく必要がありこれらを可能とする光源です。これらが可能になれば、いろいろな物質の機能の解明ができてくる。生命科学にとっても同じで、より複雑な分子量の大きなもの、さらにそれらの動的な情報が必要になってきます。それによって生命の中における物質、あるいはエネルギー代謝、あるいは情報伝達の機能の機構が解明されてきます。

 もう一つ別な切り口から言いますと、社会からの要請としては、安心・安全、持続可能な社会実現のためにどういうことが必要なのかということで、グリーン&ライフ・イノベーションの推進ということが言われています。ブレークダウンした中身といたしましては、例えば永続的なエネルギーの確保とか、高度医療技術、あるいは高度な情報通信技術の開発が必要になってきます。それと前回も議論されましたが人材育成。それでもう一つ、福島の原発の問題というのがあります。これは、いわゆる高レベル放射性の廃棄物をどうするのか、その減容化、さらに同時に考えなければならない原発の廃炉という問題と関係し、しかもこれは全世界の問題であります。これに関しては内海委員が発表されるということで、今回はこれに触れませんけれども、放射光がこれに対して大変大きな寄与をするということは間違いない事実であります。

 まず、全世界の放射光施設の状況を見てみましょうというのがこの図でして、横軸が、蓄積リングでぐるぐる回っている電子のエネルギーに対して、縦軸がエミッタンス。いわゆる電子ビームがどれほど絞られているかということですけれども、例えばこの図は、リングでぐるぐる回っているんですが、あるストレートセクションに同じアンジュレータを入れた場合に出てくる基本波のX線のエネルギーという見方をしていただいて、その光のエネルギーに対して、いわゆる回折限界光源の10倍ぐらい大きいエミッタンスが赤い点線で書かれたラインです。

 ですから、大ざっぱに言いますと、これよりも上のところは、出てくる光としては利用する側にとっては十分なものが出ていますよというふうに見てもらっていいです。これを見てお分かりのように赤の部分が日本の放射光施設です。青の抜いているもの、あるいは中黒になっているものは実際に今建設が進んでいるもの、あるいは現在稼働しているものですが、今、世界で活躍している中型の高輝度光源というのはこの辺です。それから、これは大型の放射光施設で、先ほどお話のありましたESRFがこれ、SPring-8、アメリカがこれらです。これらは全てアップグレードが計画されています。

 これらもすでに高輝度の中型光源になっているのですが、これを更にアップグレードする計画が今いろいろなところで報告されています。今回我々(日本放射光学会)がマスタープランで提案した放射光源の位置付けが図中のここになります。中型の高輝度光源です。見てお分かりのように欧米、スウェーデン、それから日本という3極。これは大型放射光施設でヨーロッパ、アメリカ、日本という3極体制で情報交換しながら世界の放射光科学を牽引してきたのと同じように、提案するような放射光施設が日本にできることによって、やはり軟X線の回折限界光源においても欧米日という3極が中心になって世界を引っ張っていくような構図ができるのではないかと思っていますし、もし我々の提案しているものができますと、軟X線の回折限界光源になるわけですけれども、ビームラインが20本の計画なので、世界で見てみましても、それに太刀打ちできる本数になっているというふうに思います。

 先ほどのこの絵で、じゃあ日本が遅れているのかとというと、それはとんでもない話でして、実は世界で活躍している、先ほどの準回折限界光源、リングも、全て日本の真空封止アンジュレータを利用して、その技術を利用して、ああいうすばらしいリングになり、すばらしい研究成果が出ているわけなので、日本の技術は全てトップにあって、光源に関しても、あるいはリングの技術に関してもトップなわけです。何でじゃあ中型放射光源ができていないかというと、ただただいろいろな事情があって予算化されていないというだけであって、予算化されればすぐに世界で稼働、計画されている光源を超えることはできます。

 ということで、学会がマスタープラン2014で提案したものは、東北大学の濱先生らが中心になって計画されている、いわゆるSLiT-Jというものです。これの設計コンセプトはどういうものかといいますと、SPring-8、あるいはKEK-PFが不得意、あるいはカバーしきれない軟X線領域において、世界最高性能かつ低コスト、省エネ型のイノベーション利活用施設であります。低コスト、省エネというのが非常に重要になっていくと思います。

 それで先ほどのエミッタンスの図がありましたけれども、あれでお分かりのように、リングのエミッタンスに関しては、かなりいいところまできています。ですから、昔のように回折限界光源が要求するエミッタンスが現実の値と非常に離れている場合はエミッタンスを上げるということは非常に重要だったわけですが、今ではエミッタンスの競争はこのぐらいにしておいて、更にもっと重要なのは、X線のビームがよくなっても、それを最大限利用しているのかという問題があります。すなわち検出器とか、あるいは光学系、それから試料環境、そういうものが同時に整備されていないと、どれだけいい光が出ても、それを有効利用していない。特に検出器は非常に重要なアイテムで、日本の場合は残念ながら少し遅れているのではないかと思っていますが、ちょうど去年から新学術領域で検出器の開発に関するテーマが始まりましたので、これに我々は非常に期待しているところです。

 試料環境に関しましても、これから施設を作る場合には、これから話をしますけれども、In situ、あるいはOperandoの測定というのが必要になってきますので、そういうものを初めから施設側が準備しておくことによって裾野を広げて、利用者の拡大につながるというふうに思います。

 ということで、我々学会が提案しています中型高輝度光源ができますと、どういういいことがあるかといいますと、まず軟X線の回折限界光源でありますので、中心となる実験としては分光実験です。分光実験は、もちろん今の放射光でいろいろなところでされているわけですが、それらを全て位置に関する空間分解能を10nmにしたイメージングが可能になるということです。いわゆる分光実験がたくさんありますけれども、これらを全て10nmの空間分解能で観察が可能になるということが言えると思います。ですから、我々が提案しています光源ができますと、最先端軟X線ナノ空間分解分光法というものを、いろいろな学問分野、あるいは産業界に提供することができるというのが最大の、この中型の高輝度光源ができることの、社会に対する貢献だというふうに我々は考えています。

 対象となるものは、簡単に象徴的に言いますと、理想系から実在系へという言い方ができると思います。すなわち、例えばデバイスですと、デバイスの動作中の電子や原子がどういうふうに動作しているのかということを観察するOperando、あるいはIn situ測定が可能となります。更にそれらが不均一なものを不均一なものとして、すなわち平均構造ではなくて不均一なものとして分析することができるようになってきます。ということは、3次元のイメージングというのが、結晶構造だけでなくて電子状態に関しても、それが可能になってくるというものです。

 二、三例を挙げますと、例えば走査型の透過軟X線である軟X線顕微鏡において、今までの実用の限界としては大体空間分解能が50nmですけれども、これが10nmになってくると、非常にいろいろな世界が広がってきます。例えば環境科学に関しまして、エアロゾルの問題があります。エアロゾルというのは空気中にPM2.5など、御存じのようにいろいろあるわけですが、これは例えば、エアロゾルが太陽の光を吸収、あるいはそれを反射したり、あるいは、エアロゾルを核にして雲ができて、その結果として地球に対して冷却効果が出てくるわけですけれども、これらのことが、エアロゾルが何でできているのか、大体1ミクロン以下なんですが、それがどういう化学的組成でできているか、どういう分布をしているのかというのは全く分からないために、冷却効果の本質が全く分かっていません。

 これはいわゆる地球の温暖化とかいうような問題がありますが、それよりもむしろ大きな効果を与えるものでありますし、もちろん地域にも非常に大きな影響があるものですが、こういうものは分かっていません。エアロゾルの中身が分かっていない。あるいは、これができる過程が分かっていない。10nmの軟X線ビームが利用できますと、エアロゾルの中のいろいろな組成の分布が分かり、組成の分布が分かると、どういうふうにしてエアロゾルの核ができていっているのかというのを解明することができます。それらは非常に環境問題に対して重要な科学的な情報を与えてくれることになります。

 今度は医療、それから健康の科学の観点からいいますと、例えば薬を飲んで治すということがあるわけですが、それよりも、例えば患部が皮膚の中にありますと、塗って治すということの方が人体に対する影響が非常に少なくて優しいわけです。ということで、ドラッグデリバリーの問題として、皮膚から、例えばナノカプセルが角質層を通ってどういうふうに入っていくかということを観察する必要があります。

 そのときに、これは例えば電子顕微鏡で捉えた50nmの分解能のものなんですが、ステロイド系の薬が細胞の中にあるのか、細胞の外にあるのか、細胞間を通っていっているのかというのが、これでは全く分解能が足らないために分かりません。これを10nmの軟Xビームで分析できるようになってくると、それが分かってきます。そうなってくると、ドラッグデリバリーの観点からナノカプセルがどういうふうにデリバリーされていくかという、非常に大きな問題に対して回答を与えることができるようになりますので、これはいろいろな薬の開発にもつながっていく、非常に大きな発展となります。

 次に、元素戦略の問題を取り上げてみたいと思います。これは御存じのように、レアメタルを使わない磁石の開発が一つのテーマとなっています。磁石の保磁力をいかに強めるか、大きくするかということで、今のところはネオジ系の磁石にジスプロシウムを入れて、この保磁力を高めているのですが、これを使わないでも保磁力の高い磁石を創成することがターゲットです。そうすると、この保磁力を大きくする機構を解明することが必要となり、SPring-8で実験が始まっているのですが、その空間分解能は今のところ100nmが限度なのです。それでも分かってきたことは、赤と青が、例えばスピンが上を向いている群と別の方向を向いている群を分けているドメインが存在していることを示しています。ドメイン間を隔てているのがドメイン壁です。これには有限な厚みがあり、ドメイン壁の中の微量分析をする必要が重要となってきます例えばここのドメインとここのドメインとが磁性的に関係していない方が、すなわち、こっちがある方向を向いたらこれも同じ方向を向いてしまうということでは駄目なので、この関係を切らなければいけません。ということは、このドメイン壁の中の組成とその磁性、原子が持っている磁性がどうなっているのかというのを分析することが重要となってきますそのためには100nmではもちろん空間分解能が足りなくて、10nmのビームを手に入れることによって、そういうことが可能になってきます。それが分かれば、間違いなくジスプロシウムを使わないで保磁力を高めるということが可能になってくると思います。

 ということで、そういうビームがあるということは、大げさに言いますと、日本の科学技術立国としてこれから成り立っていくのかということの大きな回答を、このビームが与えてくれるのではないかと思います。

 次は固体物理の問題ですが、先ほどからずっと不均一ということを言っていますが、固体物理の非常に大きなテーマの1つに、強相関電子系というのがあります。強相関電子系で最近よく分かってきたことは、何と電子が自己組織化で勝手に不規則になる、これが本質であるというものです。我々はずっと今まで均一だと思っていろいろな実験をして議論していたのですが、実はそんなことではなくて、自己組織化のためにこの図のこういうところ、さらに言うと超伝導体は特にそうなのですが、超伝導になっている部分となっていない部分とが混在しているのが本質であることが分かってきました。でも、それを今まで平均として見てしまっていたので、じゃあ超伝導がどうなっているのかというのを分かるはずがない。これは鉄系超伝導でも多分機構が違うとは思うんですが、不均一なものになっていることが発券されています。

 ですから、不均一なものを不均一なものとして、しかも超伝導の機構解明なんていうのは、こういう電子がどういうふうに励起されているか、揺らいでいるかというのを見る必要があります。ですから、こういうところ、こういうところの電子の揺らぎをちゃんと見ていくということが、不均一系における新しい学理を構築していくという、非常に大きなブレークスルーを与えるものになる。それができるのが、10nmのビーム、軟X線の回折限界光であり、提案する中型の高輝度光源が必要になってきます。

 次に、生命科学、あるいはタンパク質の構造解析の人たちにとっては、軟X線の高輝度光源、あるいは回折限界光ができても余りうれしくないのではないか、と思われているかも分からないのですけれども、実はそうではなくて、最初に言いましたように、今後は非常に複雑な分子量の多いものの構造解析をする必要があります。今までは、例えばそのような複雑な対象でなければ、大腸菌にセレンを入れてタンパク質を合成し、そしてセレンの異常分散を使って位相を決定するということで、非常に詳細な構造解析ができていたのですが、高分子量で、かつ非常に複雑な分子のものになっていくと、大腸菌はそういう分子を作れないわけです。となってくると、セレンを入れられない。そうすると、もともとタンパク質が持っている元素、サルファなんですが、サルファを使った異常分散ができると、非常に複雑な分子の構造の位相が決定されるということで、S-SAD法という方法を使いたくなるのです。サルファのK-吸収というのは4keVです。これは軟X線ということが言えますので、こういう軟X線の高輝度光源ができますと、わざわざセレンを導入することなく、生のままのタンパク質の詳細な結晶構造解析が、すなわち位相を決定することができる。こういうことが可能になってきます。非常に大きな影響をいろいろな分野で与えることができるというのが、中型の高輝度光源です。

 最後になりましたが、施設側の運営形態の在り方を議論する場合、例えばユーザー側にとってどうかということと、それから施設側にとってどうかという見方があると思うのですが、我々はここは、ユーザー側にとってどうかということだけに限ってコメントしたいと思います。ユーザーにとって、まずこれは当たり前ですが、使いやすい施設である。使いやすい施設というのはどういうことかといいますと、サポート体制が充実している。それから、大学や産業界へも、企業にも、平等に利用が開かれている運用形態が必要です。大学は、こういうシステムに乗っかってください、産業界はこのシステムに乗っかってくださいではなくて、全くイコールに使えるような運用形態を採っていただきたい。

 次、これは非常に大きいのですが、特に産業界の人から切実な要求があるわけですが、今、日本においては、今回そうですが、今すべての放射光施設は夏休みです。あるいは、冬もシャットダウンがあります。そういうものでは困ります。産業はずっと年中動いて、皆さん働いているわけなので、使いたいときに使えるという意味で、通年運転が、通年利用ができる施設運営をしていただきたいということです。

 それから、産官学連携を積極的に仲介をして、そういうものが1つの大きな仕事であるということを考えていただく施設になっていただきたいと。特に、今提案している軟X線の領域というのは、分光実験が基本ですので、いろいろな解析技術というものには慣れていない方が多いと思いますので、そういうものをちゃんとサポートしてくれる体制が必要です。

 それから、これももちろん非常に重要ですので、これは大学との密接な連携プログラムというのを、その施設がきちんと作っていただきたいということを要求したいと思います。以上です。

【北岡主査代理】  ありがとうございました。

 それでは、今の水木先生の御説明に関しまして、御質問何かございましたらお願いいたします。いかがでしょうか。

 ちょっと私、部外者なので申し訳ないですけれども、今、いろいろ生物系、生命科学、材料、物質でいろいろ10nmスケールのそういう測定の話が出ていたんですけれども、現在、課題が沢山あるんですけれども、これができなければサイエンスは進まないんですか。全体として今はどういう状況なんですか。

【水木委員】  全部代表して言うのは難しいと思うのですけれども、例えばこれに関して言いますと、これは今、SPring-8、それからPFも元素戦略をやっておられるのですけれども、例えばジスプロシウムを使わない磁石に関して言えば、こういうドメインが並んでいて、これが保磁力を高めるというのは前から分かっていたことだと思うのですが、ドメインコントロールするということがあるので、ではコントロールとはどういうことなのかということで、例えばドメイン壁が今、どういうものになっているのかというのは、SPring-8でやるまで分からなかったのが、何となくドメイン壁が実は強磁性になっているということが明らかになってきました。強磁性になっているのだけれども、その中の組成がどうなっているのかということは、よく分かっていません。どの元素がどういうふうなモーメントを持って、どっちを向いているのかという、このドメインに対して、それが分かっていないので、それを小さなビームで、100nmではなくて、10nmで今の疑問に対して答えられてくると、保磁力を高める機構がかなり分かってくるというようなことです。だから、全く分かっていないわけではなくて、その方向にいっているのですけれども、更に決定的にするためには10nmが必要。

【北岡主査代理】  ありがとうございました。どうぞ。

【水木委員】  例えば、こういうのもそうだと思うのですけれども、北岡先生は、かなり御存じだと思いますけれども、特に強相関電子系である酸化物超伝導体というのは典型例ですけれども、それが実は電子状態としては均一にはなっていなくて不均一になっているということが分かってきています。それらの動的な状態を観測して超伝導機構に関して議論しているのですけれども、今は不均一なものを均一なものとしか見えていないので、それしか方法がないのでそれでは絶対に解明できません。だから、やっぱり混とんとしているのは、僕はそこが大きな問題になっているのではないかと考えています。そこを、こことここを区別して、それぞれの揺らぎ、ダイナミックスを見ていけば、これはかなりクリアなことが観えてくるのではないかというふうに思います。

【北岡主査代理】  ぼやっと見るのではなくて、フォーカスしてその電子をそのままの状態で見ると、小さいスケールで。そのためにビームを入れるということですか。

【水木委員】  はい。

【北岡主査代理】  ほかにございませんでしょうか。どうぞ。

【石川センター長】  10nmの分解能にするというのは、多分非常にいろいろなところで求められていることで、それは今まで上から押していった分解能と、あと電子顕微鏡などで下から上がってきたもののちょうど見えないところが10nmぐらいの分解能というところでございます。そういう意味で、いろいろな分野で今まで届かなかったところを求められているというのは、そのとおりだと思います。ただそのときに、10nmのビームを作るのかというと、そこは多分いろいろな議論があって、今の高輝度放射光で10nmに集光してしまうと、そこにはかなりのフォトン数というかエネルギーが集中するわけでございますので、そういうビームを当ててあげると、見るものを壊してしまう可能性が非常に強い。

 例えば、ソフトなものですと、SPring-8の100nmでも壊れますし、皆さんせっかく強いビームを小さく絞ってアブソーバーを入れて弱くして使うというような、非常にもったいないことをしているという現状がございます。この次世代の高輝度、次世代になったら、ビームを絞るというよりも、例えば大きいビームを用いて結像系で高い分解能を出すにはどうすればいいかとか、そういうことをもうちょっと真面目に考えていかなければいけないのかなということを感じています。

【北岡主査代理】  企業の方もおられるんですが、例えば創薬とか材料とか、そういう面で是非ともビームを今のこうしたいというニーズはあるんですか。

【上村委員】  水木先生にちょっとお伺いしたかったんですけれども、S-SADは今でもできていますよね。それで結局、異常分散の波長でやればできると思うんですけれども、いっぱい論文も出ていますし、ハードでやったやつで。それでどうして、マイクロビームラインについては賛成なんですけれども、軟X線でないといけないというのは何かプラスアルファがあるんでしょうか。

【水木委員】  実は私は専門ではないのですが、これを作っていただいた方にヒアリングして聞いたのですけれども、そういうタンパク質はものすごく作るのに難しい、小さいものしかできないようです。小さいので、ビームとしては輝度が必要になってくるということは言われておられます。

【上村委員】  結局、輝度が強いと、まただから……。

【水木委員】  壊れるという、はい。

【上村委員】  大きいので、だから、XFELのやつですごく強いという方が、アドバンテージはあるような気がするんですけれども。だから、今でも一応とれないやつがとれるようになるために、マイクロフォーカスというのも賛成なんですけれども、それが何で軟X線でやらなきゃいけないかなというところがちょっとよく分からなかったので。

【水木委員】  そこは実際に、今PFでやっておられる方で、PFでどうしてもできないようです。

【上村委員】  そういうところがあるんですね。

【水木委員】  はい。

【上村委員】  だから、やっぱりさっきも言いましたように、マイクロビームラインというのはとても賛成で、私とかも夏とかにいろいろなビームのところに送っているんですけれども、ものすごくファインフォーカスで、1つの結晶でもすごくマイクロビームですと、かなり1つのやつでもずらして、一番うまくできるところ、1つの結晶の中で一番出るところでデータをとってくるんですよ。だから、そういうことができるのが世界の標準になっていて。

 それとSPring-8ですと32XUというのが多分それに当たりますし、PFの場合は1Aが当たると思うんですけれども、やっぱりそこはすごく混んでいて。夏はもちろんお休みですし、それから、やっぱり混んでいて大学の先生とかもいらっしゃるので、そこに関しては企業でビームタイムをとるのは難しい状況だと思うんです。ですから、どうしてもやっぱり海外に送ってしまって。それでいいデータが早く返ってくるので、そこで足りてしまっているというところがあるんですよね。

【北岡主査代理】  なるほど。ほかに水木先生に質問ございませんでしょうか。

 それでしたら、続きまして、全体での意見交換をさせていただきたいと思いますので、本日のプレゼン全体を通して、また今後の進め方も含めて、御質問、御意見等、御自由にいただければと思います。いかがでしょうか。

 今日はサイエンスの観点から、次世代、次期放射光施設についてどういうふうなニーズがあり、何ができるかというお話をしていただいて、私の印象は、かなり今日のお話で面白かったのは、文化財、それと地球科学、それぞれニーズがちょっと違うと。それで汎用性と多様性といった一方で、使いやすさ、あるいはお試し実験をしてみたいとかいろいろなニーズがあって、それは今こうやってあわててやって――あわててって失礼ですけれども、先行するグループがあって、それは逆に言うと、日本で開発された技術をキャッチアップした結果、先を越されたというような状況にもあるような感じを受けたんですよね。

 一方で、それをやるだけで、もちろんニーズに応えて幅広いやつでいいんだけど、先端科学という、もっととんがった科学をやっていくという議論が余りなかった気がするんですけれども。その辺の今、3GeVで1ナノメートルラディアンでしたっけ、3GeVのエネルギーで、割と高輝度でいろいろな10nmで出来てというようなこともお話があったんですけれども、それ以上に、今後のサイエンスとしてよりもっと先端を走るという観点から、例えば施設側ではどういうような今のこういう流れの中で位置付けられているんでしょうか。次期の放射光施設としては。やっぱり3GeVうんぬんということと、エネルギーに関してはこれでいいのか、もっと10nmにかける必要がないのかとか、そういう観点での、サイエンスをこれから切りひらいていくという意味での施設側の考えがもしありましたらお願いしたいんですけれども。

【熊谷理事】  大変難しい御質問だと思うんですが、私は加速器をずっとやっていますので、放射光施設というのが今どういう状況にあるかということなんですけれども、先ほどから話題になっている回折限界光源という話がよく出てきます。そろそろそこのリミットに放射光施設が差しかかっている。これはですから、これから加速器の施設で見た、どこまで小さくしたらいいかという話とは全然リンクしない話になる。そういう意味からすると、施設としては、3GeVであろうと6GeVであろうとそろそろ限界。いわゆる輝度という意味では限界に近い状態になりつつあるということは、まず認識していただいた方がいいと思います。

 その上で、利用としてどういう性能が必要なのかと。先ほどから、輝度――輝度というのは、小さな試料にできるだけフラックスを持ち込みたい。だから、収束機能も持たせた上でそういうシステムを作る。それは1つの方法だと思うんですが。ただ、先ほど石川も話していましたけれども、そういう非常にシャープに絞ると、試料そのものが放射光で駄目になるということもありますので、余りむやみに強くすることもできないと。そういう条件の中で、一体サイエンスとしてどんなことをするのかというのは、私自身はお聞きしたいような気がするんですよね、そこを逆に。いわゆるどんなところに、とんがったものが放射光として使えるのかということですよね。

 ただ、放射光施設というのは、何も放射光施設でないと物質科学を究明できるわけではなくて、物質科学というのを中心に置けば、放射光も1つのツールであるし、中性子も1つのツールであるし、MRIも1つのツールであるし、電子線も1つのツール。だから、そういういろいろなものを多角的に使った上で、とんがったものをどういうふうに作っていくかということだと思うんですが。

 ただ、先ほどの御質問のもう一つは、SPring-8という、8GeVと3GeVの役割というのはあると思うんですが。SPring-8はどちらかというと電子ビームのエネルギーが高いので、硬X線というところにそのメリットがあります。ですので、SPring-8で軟X線のところで高輝度を目指してくれと言われると、これは原理的に不可能ですよと言わざるを得ないところがあって。その分は3GeVでもたせないと、その特長を生かして、高輝度の軟X線を作ると。やっぱり3GeVと6GeVの役割は、相補的になっているんだと思うんですね、そこは。その中で、日本の放射光利用というものをどういうふうに展開していくかという。少なくとも施設側から言わせていただければ、何でも御自由に言っていただければ、何でも実現させていただきます。

 ちょっと済みません、言い過ぎたのでもう一つ。検出器に関しては、これからだと思います。先ほど分解能、イメージングで高分解能という話もありましたけれども、やはり検出器というのは、施設の性能を上げるのと同じように、検出効率を10倍上げるということは、ビーム強度を10倍にしたのと同じですから。なおかつSN比も上がってくるんですよね。だから、見えなかった埋もれたものが見えてくるという、新しい目にはなると思うので、検出器とデータ収集系、それから手法の開発というのがもう一つの切り口だと思います。

【北岡主査代理】  どうぞ。

【村上副施設長】  最先端のところをどう目指すかという御質問だったかと思いますけれども、光源性能として、今、熊谷さんもおっしゃったように、かなり限界というかいいところにきているというのは事実でありまして、ただそれ以外に先端を目指せる方法というのは幾つもありまして、今日廣瀬先生のお話は非常に感銘を受けたんですけれども、要するに、液体状態をどういうふうにはかるか。そのときの構造だけではなくて、物性というふうにおっしゃったと思うんですけれども、これは放射光は決して構造だけを調べるというのが特徴ではありませんで、構造と同時に物性もきちんと見ると。

 もう少し言いますと、例えば今の鉄の例でいいますと、鉄の電子状態をきちんと見るということが、実はこういう方向性というのが世界中で出てきておりまして、高圧の分野でも非常に盛んになりつつあると思いますけれども、まさに電子状態を調べるということが、今度の3GeVリングの非常に得意なところである。構造はもちろんかなりのところで調べられますが、それと同時に、分光という、一口で言えばスペクトロスコピーというものを、ディフラクションという手法と同時にやると。そういう方向性で今までみられなかったところを見る。御発表の中にあったように、非常に不均一なところを絞って、そこの構造、電子状態を一対一で対応させる。これは1つのとんがったところを目指せる方向じゃないかなと思います。

 あと、杉山先生の御発表で、私、非常に強く思ったのは、やはりコーディネーターのところの問題が非常に重要であるというふうに思いました。やはりこれまで余り放射光の非常に専門的な使い方を目指してこられなかった分野の方々に対して、やはりコーディネーターの制度を非常にきちんとして、そういうサイエンスのアドバイスをちゃんと行える人を充実させるということが、やはり今度の施設では非常に求められる。ビームラインで測定を助けるということは今までずっと言われてきたわけですが、それの一歩前に、じゃあどういうビームラインでどういう測定をすればどういうことが分かるのかということを、きちんと広い分野の方に説明できる人たちも充実させるという、そういうことも1つの先端のところにいく戦略であろうかなと思います。

【北岡主査代理】  ありがとうございました。どうぞ。

【小松委員】  私も今、村上先生が言われたことと全く同感でして、例えば最先端をやるということが、だからイコール輝度を上げていくとか、どんどんどんどんセンシティビティの高いハードを持つことが、必ずしも、それにつながるのかどうなのかというのは、ちょっと1つ疑問だなというふうに思います。今、世の中でイノベーション、イノベーションと言われていますけれども、高名な先生に言わせると、イノベーションを起こすのに別に先端の技術は要らないと。いわゆる異文化を合体させて、それで新たな発想が出てくることによって、それがイノベーションを生むんだと。別に最先端の技術は要りませんといって、我々技術者ががっくりするようなことを言われるんですけれども。

 ですから、今日も私、廣瀬先生とか杉山先生のお話を聞いてみて、確かにそういうコーディネーションみたいなことをやって、今まで使われていないところに、こういう十分高性能な分析装置みたいなものがあれば、ひょっとしたらそこの分野では最先端のことになって、次のイノベーティブなことが生まれるんじゃないかなと思いましたので、今、村上先生が言われたことは全く、そういうところのアクティビティが必要になって、裾野が広がって使われる分野が出てくるというのも、非常に大きなポイントじゃないかなとは思いました。

【北岡主査代理】  ありがとうございました。どうぞ。

【雨宮委員】  今の、先端か、または、汎用かに関してですが、光子エネルギー10keV以上の光に関しては、SPring-8がありSACLAもあるので、世界の最先端を保っています。しかし、このエネルギー領域の資源の数(ビームラインの数)が少なくて、基盤技術として必要な数が足りていないというところが廣瀬先生、杉山先生のお話での指摘点であると思います。余裕を持って使いたいが、使えない。また、文化領域の課題は、優先順位が低くなってしまい、思うように使えない。だから、先端であると同時に基盤技術としてのSPring-8の役割がある。今度の新しいリングにも、そのような両面が必要だということは間違いないことだと思います。

 新しい3GeVにおける先端性は4keV以下の光に関しては大いにあり、水木さんの資料にあるように、現状では日本は全く劣っています。水木さんの話にもありましたように、日本で開発された真空封止アンジュレータが3GeVで威力を発揮しています。最初に真空封止アンジュレータを作った日本がそれを使った軟X線(4keV以下の光)領域で置いてきぼりになっている。PFがあるけれども、老朽化しているし、輝度において劣っているので競争力がない。

 だから、軟X線においては、世界的なレベルの先端的光源が必要であるという点が、新しい3GeVに対する期待です。10keV以上の光に対しては、多様なサイエンスを行う上での基盤技術としての必要性があり、新しい3GeVがなければ、SPring-8だけでは資源(BL数)が到底足りない。私はこの2側面が、新しい3GeVに対する期待だと思います。

【北岡主査代理】  それで汎用性と先端性というのも限界にきていて、やっぱりこれだけニーズがあってやるべきサイエンスがいっぱいある中で、運用面でも、ニーズに応えていくためにも、高輝度なんだけど、軟X線ですか、その辺のビームマシンが要ると。あれば、よりサイエンスが進むということで。一方、先端性に関しても限界にきているんだけれども、やっぱりサイエンス側からのニーズがあって、こういう光があればこんなことが見えるということを、やっぱりサイエンス側もアピールしていかないといけないような気がしますね。

 どうぞ。

【石川センター長】  多分、サイエンスの先端という話とちょっと外れるかもしれませんが、先ほど水木先生がおっしゃったようなリアルシステム。要するに、我々は今まで何となく物を見るときには、理想的なものを考えて、重要だと考えて、そういうものの計測をやって議論してきたわけですが、実際のものというのはそんなものは1つもなくて、ある意味で全てがコンポジットになっている。そのコンポジットなものを、コンポジットとして扱って物を作っていくということは、これから非常に重要で、多分サイエンス、テクノロジーも、今までのやり方から本当のものを相手に物を組み立てていくという転換を行っていかなければいけないときに、多分きているんだと思います。そういうときに、この軟X線の高輝度放射光は、非常に大きな役割をするのではないかと思っています。

【北岡主査代理】  ほかにいかがでしょうか。

 リアルなものを見ながら、理想的な状況じゃなくて、実際のその場観察という面で、そういうニーズがあると思うんですけれども、一方で、だんだん裾野が広がっていったときに、例えば非平衡とか、あるいは空間とか、不均質とか、そういうことで物がいろいろ変わっていくときには、結局ダイナミクスがあって、それで平衡状態があって。それは時間が短くなっていくわけですよね。時間追跡と、それからやっぱり構造なり、電子状態なりをその場で、ある時間内で見ていくと。時間分解的に見ていくということが求められていて。そういうのは、これからのビームラインの輝度が必要なのはそういうことだし、ビームを小さくするのもそういうことだし、やっぱり新しいサイエンスに挑戦しようとすると、動的平衡というんですかね、そういうような考え方で物をまさに開発していく、見ていくという手法が求められていると。

 そういうことと同時に、やっぱり運用面でいろいろな裾野を広げていくためには、今までの運用がどういう状況かは私も把握していないんですけれども、かなり全体のビームライン、あるいはクオリティだけじゃなく、それをどう使いこなしていくかという、そういうことを含めて議論するというか、もし新しい制度を作るのであれば、そういうこともパッケージで検討していく必要があるのではないかと。そのためにはやっぱり、コーディネーションと言われましたけれども、いろいろなサイエンス、分野間のニーズをどういう形でコーディネートしていくかという運営の方の。私は、全体としてはコストパフォーマンスだと思うんですよ。お金をかける限りは、いかにうまく利用して、いかにいいものを作って、うまくどう利用していくかということがかなり重要なことになるのではないかという、ちょっとそういう気がいたしました。

 ほかに何かないでしょうか。

 既にある、今日来られている広島とか、分子研の方のビームラインに関しては、将来構想とか、ここの言われている次世代の放射光に対する御意見等、もしございましたらお聞かせいただけないでしょうか。どういう位置付けにされているのかということを含めて。

【小杉施設長】  UVSORの方は、水木さんの資料にありますように、最近のアップグレードで、5ページですけれども、ようやく準回折限界光源の領域に入ってきたので、これまでのスペクトロスコピーに、新たにマイクロスコピーを組み合わせたようなビームライン整備を今やっています。アンジュレータとしては6本あるうち3本が、先ほど御紹介のあった真空封止アンジュレータを入れていまして、それなりに性能が出て、今までの理想系ばかりでなくリアル系の実験もかなり盛んになっております。

【北岡主査代理】  点線の上にあるということですか。このラインの。

【小杉施設長】  ええ、点線の準回折光源の領域中に入っていますよね。低エネルギー光源なので、波長としては長いですから、回折限界に近づきやすいんです。

 そういう意味で、リアル系の研究は最近始まっておりまして、印象としては、大学の研究者というのは理想系の研究者が多くて、民間は理想系じゃなくて実在系が基本なので、割と民間の利用が増えてきています。大学共同利用機関というのは、民間には閉じていて、大学の研究者中心というふうなイメージがあるかもしれないんですが、民間利用もできますし、それなりに民間利用も活発になっています。このように回折限界を求めた光源では、単純なスペクトロスコピーだけではなくて、それにマイクロスコピーを組み合わせていくと、新しい利用が始まるし、そこで新しいサイエンスも生まれるんじゃないかという実感が、最近UVSORとしてはしております。そういうところで整備をやっております。

【北岡主査代理】  ああ、そうですか。ありがとうございました。広島は。

【谷口センター長】  広島のエネルギーの主力というのは、数十eVかそれ以下の、10eVを下回る領域まで、低エネルギーの極限のところをやっているわけですけれども。これまでの経緯を申し上げますと、広島の場合はミニマムのパートレーションでハイクオリティのデータをとるということで、例えばエミッタンスだけが問題になりますけれども、微小スポット等については絶対的なものだと思います。

 それ以外に、例えば電子のエネルギーとか運動量を世界最高レベルで観測するということについては、放射光を用いたエネルギー分解能ですと0.6MeVかそれぐらいで観測できていますし、それから、運動量分解能も、角度分解能が0.1度ぐらいになっていますので、桁違いに高精度ということで、そういういわゆる一昔前の光電子分光と言われるような手法。これは教科書では固体の中の電子状態を見る究極の方法だと言われながら、例えば10年ぐらい前ですと、世界標準の分解能が100MeVとかそういうので。一方、固体の中の素励起、あるいはエレクトロンと形成パーティクルの相互差異というのは大体2MeVのオーダーですから。そうすると、そういうものを直接捉えるというような観点からは、そういう方向で低エネルギーの放射光は非常にバルブ敏感でもありますし、直接的な情報をとれると。

 そういうことをやるためには、結局放射光源のどこの性能を使うのか。それから、その性能を使うときに、分光装置、それからエンドステーションのバランスがうまいレベルの中にマッチングよく並んでいるか。そういうようなことを考えながらやってきていまして、先ほどのエネルギー分解能とか運動量分解能については非常にうまくいって、小さな施設ですけれども、インパクトファクター7以上のネイチャー、フィジックスとか、あるいはPRFとか、全体の16%に達するという驚異的な結果につながっているとは思います。

 ただ、先ほども出ましたけれども、この二、三年、固体の中のスピンの状態を分解するということで、昔はモットサーマルを使ったモットディテクターがあって、それが小型化されて、最近はVEを使ったものが、奥田というスタッフを中心にやっていますけれども、以前から比べますと、100倍ぐらい効率が上がった。

 それから、昔フォトンファクトリーで1日かかってどの辺までやったらスペクトルになるだろうかというのが、目の前でほんの10分もたたない間に決まると。それから、3次元的にディテクターを2基配置することによって、そういうものの測定がほんの30分以内に、目に見えるようにすとんと見えるようになる。そういうような形では、先ほどから出ているエンドステーションとか、そういうところではパフォーマンスを上げていく。

 先ほど検出器というのがありましたけれども、スピン分解は検出器の複雑なものだと思えば、そういう放射光の単色化とか、高輝度とか、あるいは微小スポットまでは技術的に相当なレベルにいっても、それを使い切れない部分というのがまだたくさんあるので、そういうところについては、施設側にやってくださいもいいかもしれないけれども、やっぱり使う人たちも一緒になって歩調を合わせながらやるという意味は、非常に大きくなりまして、私たちの場合は、例えば科研費をユーザーと一緒に出すとか、そういうようなことで一緒になってやる場合は非常に効率が高いということを提言しておりますので、そういうふうなことも視野に入れたらどうかなと思って聞いておりました。以上です。

【北岡主査代理】  施設側もユーザーも共働、共に働くということが非常に重要で、アイデアを出して、できるだけ活用しようということの御意見だと思います。

 ほかにございませんでしょうか。そろそろ時間もまいりましたので、今日は川上局長に御来席いただいていますので、ちょっと今日の討論を含めて御意見なり、御印象なりお願いいたします。

【川上局長】  どうもいろいろな面からの御議論ありがとうございました。もともと次世代放射光施設ということで検討をお願いしているわけですが、今ここに出てきている御意見を伺うだけでも、いわゆるSORそのもの、それから計測、測定の部分のものという2つのハードウェア、それから利用というソフト、いろいろな面での問題があるということが、まさにここの中ににじみ出てきているのだと思います。

 これからの議論、まだ進めていくわけですけれども、そういう多面的な部分をしっかり見ながら、分けて、それぞれの問題をどう解決するかということで取り組みたいというふうに思いますので、引き続き御議論に御参加をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【北岡主査代理】  どうもありがとうございました。

 それでは、本日はどうもありがとうございました。それでは、最後に今後のスケジュール等の連絡事項につきまして、事務局よりお願いします。

【岡村補佐】  皆様、本日は活発な御議論をどうもありがとうございました。

 次回の日程についてですが、事前に委員の皆様方にご都合をお伺いして日程を調整させていただいた結果、次回は9月22日月曜日の午後3時に文部科学省3階の2特別会議室にて開催することとしております。次回も本日同様に、委員からのプレゼンをお願いする予定でございます。

 次に、旅費手続の書類についてですが、押印の箇所が2か所ございますので、その両方に押印いただいた上で机上に置いていただければと思います。

 配付資料につきましては、そのままお持ち帰りになっても結構ですし、机上に置いておいていただければ、後ほどこちらから郵送させていただきます。また、基礎資料も含むこちらのドッチファイルについては、次回以降も使わせていただきますので、そのまま机上に中身も一緒に置いておいていただければと思います。

 それでは、皆様、本日はお忙しい中、どうもありがとうございました。

【北岡主査代理】  どうもありがとうございました。それでは、お疲れさまでした。本日の会議を終了いたします。大変お疲れさまでした。ありがとうございました。

お問合せ先

科学技術・学術政策局研究開発基盤課量子放射線研究推進室

(科学技術・学術政策局研究開発基盤課量子放射線研究推進室)