次世代放射光施設検討ワーキンググループ(第2回) 議事録

1.日時

平成26年7月14日(火曜日) 15時00分~17時00分

2.場所

理化学研究所東京連絡事務所 会議室

3.議題

  1. 次世代放射光施設のあり方について
  2. その他

4.出席者

委員

高原主査、雨宮委員、内海委員、尾嶋委員、上村委員、北岡委員、北川委員、小松委員、佐野委員、櫻井委員、杉山委員、曽我委員、水木委員、渡邉委員、

文部科学省

工藤量子放射線研究推進室長、神部量子放射線研究推進室長補佐

5.議事録

【高原主査】  本日は、お暑い中、お集まりいただきまして、ありがとうございました。まだ渡邊委員が来られておりませんけれども、定刻になりましたので、第2回次世代放射光施設検討ワーキンググループを始めさせていただきます。 

 本日は、菅原委員、廣瀬委員が欠席されるという連絡を受けております。

 それでは、まず事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【神部補佐】  配付資料の確認をさせていただきます。

 本日の資料でございますが、まず資料1としまして、前回のワーキンググループ議事録の案を御用意しております。こちらにつきましては、既に御確認いただいているものでございますが、議事録は公開資料となりますので、もし反映漏れ等ございましたら、本日の会議終了までに事務局に御教授いただければと存じます。

 続きまして、資料2でございます。こちらにつきましては、本日、各委員よりプレゼンを頂戴いたしますが、そのプレゼンの内容につきましてポイントをまとめた資料でございます。お三方の資料、それぞれ1枚ずつをつけてございます。

 続きまして、委員の皆様方には、机上配付資料としまして、本日のプレゼン資料のプリントアウトしたものを用意しております。本資料は、非公開のものとして取り扱いいただければと存じます。

 また、机上配付資料としまして、前回のワーキンググループにて委員の皆様より御指摘いただきました各施設の運転時間や人員情報など補足する資料としまして、日本の主な放射光施設に関する基礎資料というものを用意してございます。こちらにつきまして、我が国にある放射光施設の各施設に協力をお願いしまして、当室にて取りまとめた資料でございます。資料の中身自体は公開を前提として集めたものではございません。本ワーキンググループの参考になればということでつけておりますので、どうぞ御覧いただければと存じます。

 また、参考資料としまして、この青色の冊子になってございます、SPring-8に関する中間評価の報告書がございます。こちらにつきましては、昨年の8月に、科学技術・学術審議会におきましてSPring-8の中間評価を行った際の資料でございます。議論の内容や、SPring-8の詳細な資料、データなどもつけておりますので、こちらの方も参考になればということで、今回御用意させていただいております。

 欠落などございましたら、事務局までお問い合わせください。どうぞよろしくお願いします。

【高原主査】  ありがとうございました。

 議事録の確認は、これはいつまでにやったらよろしいのでしょうか。

【神部補佐】  本日の会議が終わるまでに御意見いただければ、反映させていただきたいと思います。

【高原主査】  ありがとうございました。

 それでは、各委員からのプレゼンの方に入りたいと思います。それぞれ先生方、説明15分、質疑10分ということで、前回のワーキンググループでは、今後のワーキンググループの進め方につきまして、委員の皆様には、今後取り組むべき研究課題について、次世代放射光施設に期待する貢献について、それから、次世代放射光施設に期待する運営の在り方についての、3項目についてのプレゼンをお願いしております。本日は、尾嶋委員、北川委員、佐野委員に発表をお願いいたします。プレゼンごとに15分程度で説明していただいて、それから、10分程度の質疑応答の時間を設けさせていただきます。それから、あと、3人のプレゼン終了後、最後に全体の意見交換として、30分から40分程度時間を設けたいと考えております。

 それでは、まず尾嶋先生の方からプレゼンをお願いいたします。

【尾嶋委員】  御紹介いただきました東京大学の尾嶋でございます。

 お題を与えられまして、中型高輝度光源に望むことという、かなり広い範囲のことでしたので、私は実は企業といいますか、産業界に20年、大学に20年おりましたので、多分、この観点で絞ってお話をした方がいいかなと考えました。お題が3つありまして、研究課題、それから、期待する貢献、これでやらせていただきます。

 研究課題は、“Nano and Operando”are different!ということが結論であります。それから、貢献は、「コンテンツ」と「コンシェルジュ」、それから、運営の在り方、これはテクノロジープラットフォームとサービスでイノベーション創出ということでございます。

 まず取り組むべき研究課題、特に軟X線ついてまとめさせていただきました。軟X線は、御存じのように、数十エレクトロンボルトから1キロエレクトロンボルト、2~3キロエレクトロンボルトあたりまでのエネルギーで、超高真空を使って研究をやる分野でありますので、非常にお金もかかるといいますか、大変な実験であります。しかしながら、この領域には非常に重要な軽元素、カーボンからフッ素まで、それから、トランジションメタルの2p軌道のエネルギー、それから、レアアースの3d軌道のエネルギー、こういうものが含まれています。例えば、シリコンでしたら、このようなFinFETのようにテクノロジーロードマップに従ってどんどん進歩していく、これを微小な領域で見ていくというのが非常に大事であります。それから、超伝導、それから、エンザイムとか光合成、それから、スピントロニクスなど、非常に重要な分野がこの軟X線領域に潜んでおります。そこで我々は、創エネ・省エネ・蓄エネ、それから省資源という4つの課題に対して、ナノ領域における新物性にをナノビームを使って解明し、こういうグリーンデバイスの開発に貢献するというのが重要であろうと考えております。

 これは放射光学会の前会長である水木先生がまとめられた学術会議のマスタープランであります。ロードマップとして、2030年、2040年に向けて、とにかくまず中型高輝度放射光源、これが必要であると主張しています。特に、これは100eV以下ぐらいの軟X線では回折限界光源であります。もう一つは、X線の回折限界光源が、その次に必要であります。このいろんな分野において、こういう新しいサイエンス、新しいテクノロジーの開発ができる、こういうことで、放射光の重要性がますます増していくでしょうということを言われております。

 一方、産業界ではどうか。実は私は、文科省科政局研究開発基盤課が進めております先端計測小委員会とか、タスクフォースなど、いろんなところで意見交換をやっております。最近では、電気とか化学、鉄鋼、精密機械関係の4者の代表として、実際に最前線でやっておられる方、プラスアルファの方に話を聞きました。その結果、これは放射光に限ったことではございませんけれども、かなり当てはまると思ったので、今回使わせていただきました。

 彼らは、とにかく最近の分析装置が非常に優秀なので、いっぱい出るけれども、なかなかソリューションにつながらないという問題点を挙げました。はっきり言えば、もうけにつながらないということです。もうワンステップ工夫が必要ということをおっしゃっていました。これはデータを取るだけではなくて、やはり何らかのコンサルタントが必要である。それから、高い見識で、それを次の改良に結びつける、そういう知恵が必要です。と同時に、単なる結晶や粉の試料を測るだけではなくて、やっぱり実際動いているところを測ることが大事。オペランド解析をやっていないために、真のソリューションにつながっていないのではないかと私は考えました。

 それから、トップを説得するのに、インパクトあるイメージが必要だそうです。2次元のデータないし3次元のデータですね。視界に訴える結果が欲しい、できれば動画、つまり時間軸も重要である。

 それから、3次元解析、時間変化、それから、温度変化ですね。インプロセスの解析で劣化メカニズムを解明する必要があると。そうすると、本当に役立つ情報が出てくると。

 本当に使われている環境、要するに、1気圧とか、非常に過酷な状況、高圧下とか、それでデバイスを動かしているときのオペランド解析が必要だと考えています。

 また、マイクロからミクロ、更にナノの領域の解析。実は不均一な領域が機能を支配しているということがだんだん分かってきておりますので、10ナノメートル以下の空間分解能、0.1エレクトロンボルトのエネルギー分解能が必要である。

 そして、いつでも使える電子顕微鏡、どんどん性能が向上する電子顕微鏡ということをおっしゃっていました。これは放射光にも当てはまり、放射光の性能の向上。本当に欲しい時に日本のどこかで使える――スイスに行けば夏休みでもSLSの放射光が使えます。とにかく、使える時間をもっと増やしてほしい、それから、タイムシェアリングをやってほしい、アンペアも増やしてほしい、そして、コンテンツを常時更新してほしいというような要求が出てくると思います。

 これはエレクトロニクスの方からの要求ですが、見えるものはもう大体分かった、しかし、「見えないものを見たい」、「デバイス界面の電子状態」というのが非常に重要であると。これは単に、高分解能、高感度にするだけではなくて、数値解析で補完することが重要でしょうというようなことをおっしゃっていました。

 ナノに潜むリッチなサイエンス、これは私が勝手に作った絵なのですけれども、例えば、磁石の性能を上げたいと。先ほども絵がありましたけれども、このヒステリシスの横幅を広げたい、縦軸を上げたいというときに、実際、ミクロサイズでどのような磁区があるか、ナノサイズでどのような磁区ドメインがあるかを知ることは重要です。また、磁壁が新幹線ぐらいのスピードで動いていく様子を直接見たいとか、これはアートル先生の白金表面での酸化還元反応を2次元的な動きとして動画で見た仕事です。また、こういう単粒子、単一触媒の電子状態と機能を関係づける。それから、FET、動作中の界面を調べる。また、強相関の電子状態をナノスケールで調べるなどなどナノ領域には重要なテーマが多く存在しています。ノーベル物理学賞のローラー先生は、Nano is different!と、言っておられます。

 一方、やはりオペランド測定というのが非常に大事でありまして、放射光を10ナノメータに絞って、電子分光と発光分光によっていろんな新しい電子状態を調べていく。できればオペランドで調べていくということが、これからますます重要になります。それから、エネルギーと運動量、それから、スピンとか時間、こういうことに加えて、歪(ひずみ)とか、電場とか、こういういろんな条件での電子状態をこれから調べていく必要があるのではないか。特に軟X線の分野ではそういうふうに考えておりまして、Operando is different!だと思っております。

 次に、期待する貢献について。横軸を教育、開発、研究というふうに勝手に分けさせていただきました。どういう光源でそれが実現できるか。本当に最先端が必要かどうか。いろんな意見があると思いますが、人材育成がこのあたりにあって、産業利用、目的基礎研究はこのあたりにあり、イノベーションは、この2つが大事だろうと思います。やはり純粋基礎研究で最先端の数ナノとか、もうミリエレクトロンボルトを切るぐらいの超高分解能の解析が必要で、この最先端分光研究と連携を取ることがイノベーションには必要だろうと考えております。

 現在提案されている中型高輝度放射光源の位置付けをここに示します。これは放射光学会前会長の水木先生が、学術会議のマスタープランのヒアリングに使われた資料でありますけれど、この1ナノメートルラジアンのエミッタンスを使えば、大体13ナノメータのナノビームが作れる。こういうナノビームを使って、先ほどのようなオペランドの解析をやっていくのがいいのではないかと考えております。

 一方で、軟X線の分野では、我々はVUV/SX利用者懇談会というものを作っておりまして、そこでいろんなニーズのアンケートをやりました。時間分解の測定というのが結構大きな位置付けを占めております。あと、顕微鏡、ARPES、XPSです。それから、日本の長所として、実験のフレキシビリティ、多くの人が利用できること、運転の安定性がいいというのが非常に大きな特徴です。ただし、海外の放射光というのは、ユーザーサポートが非常に充実しているという声を上げた人が多くて、いわゆるコンテンツ、コンシェルジュ、この2つが大事だろうと思っております。それから、多目的ビームラインだけではなくて、専用ビームライン、人・物・金・時間を集中していくような運営も必要であろうというような意見も出ております。

 これは最近我々がSPring-8の東大ビームラインで行った実験結果を紹介させていただきますと、SPring-8だからできた70ナノメートルの放射光ビームを使って、自分の好きな位置にスキャンして、それで、角度分解電子分光測定を行うことができます。サンプルホルダーを工夫しまして、FETにゲートバイアス、ドレインバイアスをかけた状態での変化を見ています。と同時に、半導体パラメータアナライザにつないで、この真空装置中でトランジスタ特性を測りながら放射光測定を行う。この有機FETでは場所によって特性が異なりますので、ソースからドレインへの電位変化を非常に詳しく見ることができる。接触抵抗が場所によって大きく違う。平均情報では全然分からなかった情報が分かってきております。これはグラフェンFETでも実現しておりまして、デバイス動作中のチャンネル内電位変化、こういう研究がこれからどんどん広がっていくのではないかと思っております。

 それから、もう一つ、オペランドという点で、燃料電池の動作中測定の例を示します。薄い膜を隔ててこちらは大気圧、こちらは超高真空でありますけれども、こういう90ミリメートルのフランジの中に水素と酸素を入れて、発電しながら発光分光スペクトルを取ります。そうすると、触媒中にわずか1%入っている鉄が、今までは働いていないと思っていたのが、実は働いていた、燃料電池の触媒として働いていたということを初めて明らかにした。それと同時に、これは産総研の難波さんたちの理論計算と比較して解析したものですが、スパコンの結果と合わせていくというようなことが、これからますます大事になっていくと考えております。

 それから、運営の在り方につきましては、放射光関係有識者9人が集まって、神楽坂会議というのをやりました。どういう運営形態がいいか、議論しました。大学共同利用、物構研のPFのような運営形態、それから、SPring-8のような共用促進法の下での運営形態、いろんな特徴があります。大学共同利用は、産業利用をミッションにしていないとはっきりおっしゃいますが、私はそれではいけないと思っておりまして、このいいところを取っていくような新しい方式が大事になってくるのではないかと思っております。

 大型研究施設の運用でありますけれども、これはプラットフォーム化が不可欠であります。これは水木前会長、村上現会長が、文科省のヒアリングのときに使われた資料でありますけれども、こういうプラットフォームとネットワークというのが非常に大事です。実は、先ほどの文科省研究開発基盤課における小委員会の中でもいろんな議論をやっておりまして、その委員会メンバーがイタリアのNMRプラットフォームの調査に行きました。これはEuropean Technology Platformというものの中の一環で、NMRとか、TEMとか、いろんなプラットフォームがある。これが非常に有効に使われている。プラットフォームというのは、とにかくモジュール化と共通化と標準化の掛け算であり、使いやすさというのが大事で、使われてなんぼだと考えております。

 以上、まとめますと、研究課題としましては、ナノ領域の構造と電子状態、デバイス動作中のオペランド解析、3次元イメージングと時間変化、見えないものを見る、この4つが、これから産業界が多分望むであろうと思われる課題と考えております。

 期待する貢献ということですが、いつでも日本のどこかで放射光施設を運転してほしい、外国に行かなくても済むようにしてほしい。それから、解析メニューの常時更新、そのためには、やはり施設を作るだけではなくて、運営に非常に力を入れてほしい。現在のSPring-8の運営は非常にすばらしいと思っております。それから、実験前・中・後のフォローが大事です。実はうちのポスドクがスイスのSLSに1年半おりまして、実験前、後のフォローがすごいと。それによっていい論文・特許が大量に生まれる。ここがポイントかなと思います。それから、研究開発クラスタの中心に施設を建設して連携をやっていくのが大事。

 運営については、先ほど申し上げましたが、とにかくイノベーション創出に貢献したかどうかを評価関数にしていくのがいいのではないかと考えております。

 以上であります。

【高原主査】  ありがとうございました。

 それでは、何か御質問等ございましたら、今、3つのポイントで御説明いただきましたけれども、御質問をお願いいたします。

【北岡委員】  よろしいですか。

【高原主査】  どうぞ。

【北岡委員】  尾嶋先生の話を聞いて、御所属が放射光連携研究機構ということで、今やられている研究の、ビームはどこを使っておられて、この研究機構というのは、どういう組織なのか。今後のためにちょっとお聞かせください。

【尾嶋委員】  分かりました。

 東京大学は、柏キャンパスにリングを作ろうとしたのですが、それを断念して、SPring-8を含めて、第3世代リングにアウトステーションというものを作ろうということを決めました。これが2006年であります。で、SPring-8に、BL7番に連携研究機構のビームラインを作って、それを全国のユーザーに一般開放して、東北大学の先生とか奈良先端の、いろんな先生に使っていただいて、我々と共同研究をやっております。これは時限立法といいますか、10年間ですので、あと2年半で契約が切れて、それを我々、継続していこうと考えております。私は現在そこの研究員でありまして、こういう実験も自分で、徹夜はしませんけど、自分で実験をやっているところです。機構長は雨宮先生です。

【北岡委員】  ということは、今やられているような、やりたい、やられたということのビームの質を上げていこうとすると、1エミッタンスで10ナノ程度のナノ分析、ナノ解析、そういうものを今の研究の延長でやりたいと。

【尾嶋委員】  そういうことです。

【北岡委員】  SPring-8ではできないのですか。

【尾嶋委員】  SPring-8は8GeV、80億電子ボルトですので、やはりX線の領域が強い。我々の使おうとしている軟X線では、現在提案されている中型高輝度光源では輝度が100倍向上します。100倍違うということは、要するに、単位面積当たりのフォトンフラックスが100倍違うということですので、もっと速い時間分解の解析ができる。今、我々は70ナノメータまでしか絞れていないのですが、これを中型高輝度光源でやると、10ナノメータになるだろうと考えております。

【北岡委員】  分かりました。ありがとうございました。

【高原主査】  ほかにございませんでしょうか。どうぞ。

【上村委員】  13ページのEuropean Technology Platformについてお伺いしたいのですけれども、NMRとTEMと放射光が非常によく連携されているということをおっしゃっていましたけれども、日本ですと、NMRの場合は、理研と横浜市大と阪大が3つで共通の金額でやるとか、使用できるとかなっていて、電子顕微鏡の方はできていないのですけれども、これは受託とかをやられてうまくいっているのですが、うまくいっているその内容について、もうちょっと詳細に教えてください。

【尾嶋委員】  私が調査に行ったわけではなくて、先日の研究開発基盤課の先端計測小委員会で調査結果が報告されました。最先端のNMRについては、ヨーロッパ全体で10台近くあって、それをネットワーク化してどこか申し込んだら、今どこがすいているから、そこだとすぐ使えますよというようなことを、たちどころにやってくれるということで、非常に稼働率が高いというふうには聞いております。具体的に、どういう運営をしているのかというのは、資料がないのですぐにはお答えできません。

【上村委員】  やっぱり受託とかになりますと、直接やるのはなかなか難しいので、多分、そういう専門の、アクセスする別の組織が何かありまして、それで、そこに申し込むようなことになっているのだと思ったのですけど。じゃ、その辺は、システマティックに何かというのは、まだ把握されていないということでよろしいでしょうか。

【尾嶋委員】  そうですね。

【高原主査】  よろしいでしょうか。

 その中で、TEMに関しては、日本の場合は、ナノテクプラットフォームで各超高圧電顕がうまくいっていますよね。

【尾嶋委員】  そうです。ナノテクプラットフォームは非常に上手くいっていると聞いています。

 聞いたところによると、TEMは、ヨーロッパの一番よく売れているTEMのメーカーが、自分のところの最先端の製品を無料でそのプラットフォームの中に貸し出している、という話を聞いています。それでユーザーを広げて、顧客を集めようとしています。

【高原主査】  FEIとか、そういうところですね。

【尾嶋委員】  そうです。

【高原主査】  ほかにございませんでしょうか。どうぞ。

【櫻井委員】  実験前と中と後のフォローということですけれども、日本のビームラインと比べて、ヨーロッパとかアメリカ、台湾なんかのビームラインは人が多いと思うのですけれども、先生のイメージでは、特に今の日本と比べて、どれぐらい差があるとお考えですかね。

【尾嶋委員】  PFでは、1ビームライン当たり1人弱のスタッフですが、向こうでは2~3人いるという統計が出ています。だから、2~3倍違うのかなとは思っております。

【櫻井委員】  向こうは組織として、研究者とテクニシャンと分かれてやっていますね。

【尾嶋委員】  分かれています。

【櫻井委員】  日本では、それはないですよね。その辺は、やっぱり分かれてやった方がいいのでしょうかね。どう思われますか。

【尾嶋委員】  やっぱり日本の雇用システムを考えると、なかなかそこは。

【櫻井委員】  難しいですよね。

【尾嶋委員】  給与体系の問題もあって難しいとは思うのですが、私もスタンフォードのSSRLで学生を連れて実験をやっていたときに、夜中の12時ごろにコンピュータエンジニアとメカニカルエンジニアなど3人ぐらいが見廻っていて、「Is everything okay?」と聞いていました。問題があったらすぐ直すよということを、こんな夜中に来るのか、と驚きました。そういう手厚いことは日本ではなかなかできないなと思いました。。

 彼らはそういう職業意識、プロ意識ってはっきり持っていて、やっているのですが、日本だと、なかなかそこまでいかないのかなと。

【櫻井委員】  ドイツへ行きますと、タンパクを作る人間と、測定する人間と、解析する人間は分かれていますよね。そういういわゆる分業システムが非常にうまくいっているような気がします。 

【高原主査】  ほかにございませんでしょうか。

 最後に出てきたネットワーク型研究拠点というのは、実際にはどういうところが幹事機関になってということを考えておられるのかということは、今御発言いただけますか。

【尾嶋委員】  あんまりイメージがないのですが。SPring-8で放射光、J-PARCで中性子を、同じ試料で測定する、1つの課題を出せば可能になる、というようなことですね。

【高原主査】  相補的利用という。

【尾嶋委員】  相補的に利用できるということは新しい動きで、すばらしいなと思っています。それが放射光間でできたらいいかなと。1つの例ですが、例えば、UVSORやHiSORに行って、分光実験を行い、同じサンプルをSPring-8とかKEKでディフィラクション実験をやるとか、そういう相互乗り入れができるといいかなとは思っています。

【高原主査】  それぞれの特徴的なところで相補的にやっていくというふうなイメージのネットワークということですね。

【尾嶋委員】  そうですね。

【高原主査】  ほかにございませんでしょうか。水木先生。

【水木委員】  人材育成のところで、尾嶋さん、今まで大学におられて、いろんな学生を育てられてきたのですけれども、その中で、こういうシステム、あるいは、こうであればもっと人材が育ち、あるいは、教育ができ、更に人材が育っていくという、もう少し具体的な点、あるいは、こういうところが問題で、ここを直すことが必要だというのがもしあれば。

【尾嶋委員】  我々はいい雑誌に論文を書かなくてはいけないと同時に、やっぱりいい学生を育てなくてはいけないという2つの責任があって、いい論文を書くためには、いいビームラインでないと、なかなか書けないということも事実です。

 ところが、我々、97年からPFのBL1に、ベンディングマグネットのビームラインなのですけど、特別課題のビームラインを建設した時ときには、これは失敗してもあまり文句を言われない、怒られなかった。結構学生もいっぱい失敗しましたが、「いや、別にビームタイムがたくさんあるからいいよ」みたいなのんびりした雰囲気でやれました。ビームラインの輝度はあんまり高くないのですけれども、そのときの学生がやっぱり非常に育ったなと思います。その後入ってきた学生は、完成した装置を使ってサンプルを測れば、すばらしいデータが出て、ちょこちょこっとピーク分離すれば、いい論文が書けるという状態になりました。人材育成は手間暇かかるものなので、失敗が許されるような、そういう装置も残しておいた方がいいのかなというのは、非常に強く思っています。

【高原主査】  ありがとうございました。

 大体予定の時間になりましたけれども、後でまた全体の議論の時間を設けておりますので、続きまして、北川先生の方からプレゼンをお願いいたします。よろしくお願いいたします。

【北川委員】  京都大学の北川です。よろしくお願いします。

 前回所用があって出席できなかったので、どういう議論されていたのかというのは深くよく分かっていません。それと、私自身は放射光のユーザーでありまして、尾嶋先生みたいに専門家ではないのですが、御容赦の上、聞いてくださればと思います。

 今日のお題、3つありますが、今後まず取り組むべき研究課題ということで、私自身の専門は無機化学とか、少し物理寄りの固体物性なのですが、今後取り組むべき研究課題ということを、自分の専門分野から離れて、少し話したいと思います。

 震災以降、少し時間はたってきてはいるのですが、まだまだ解決しない問題がたくさんあって、まだ収束まで数十年かかると思われますので、やはりこの放射光の分野が、こういった書いていますようなところに貢献するということは非常に重要だと思います。ありふれていますが、農林水産の基礎となる土壌・水質の科学的微量分析、放射性物質の分析、土壌とか廃炉作業における汚染・除染対策、放射性物質の分離、吸着、回収。これは少し私の専門分野でもありますけれども、いろいろな多孔性材料がありますが、これは吸着剤として期待されているわけなのですが、その貢献に資するような放射光の復興支援というのはあると思います。

 次に、軟X線のナノ空間分光法、10ナノメートルを用いた新産業創出というのも、非常に重要であると思います。尾嶋先生もおっしゃったと思いますが。一時期、ナノテクナノテクとずっと言われましたが、ナノテクだけでは階層構造というのは作れません。当然でありますが。メゾスコピック物理というのは、もう相当物理の分野ではやられているとは思いますが、意外と化学ではメゾスコピック化学というキーワードがあまり普及していなくて、言われてみれば当然は当然なのですが。ですから、ナノとメゾのスケール両方の制御というのは、非常に重要だと思います。そういった点でも、この10ナノメートルぐらいのナノ空間分光法というのは重要であろうと。当然、例えば、人工光合成というのが今1つのはやりになっていますが、それはナノスケールとメゾスコピックスケール、この両方を制御しないといけないということであると思います。あと、高分子、私の専門は高分子ではありませんけれども、高次構造の解明とか、結晶化・相分離形成メカニズムの解明、あと、流動など外場下での高分子構造形成メカニズムの解明とかは、これは幾つかの企業の人にヒアリングしたことがあるのですが、やっぱり高分子の会社の方というのは、こういうところは是非放射光を使ってやりたいとおっしゃっています。あと、先ほど言いましたように、人工光合成とか有機ELデバイスというのは、今後伸びる分野だと思います。

 あと、これはもう既にSPring-8とか、PFが貢献しているとは思いますが、先ほどもありましたように、その場観察を含めた触媒システム、あと、住宅建材というのは、今後更に私自身も伸びると思っていますけれど、多孔性の高断熱構造材料とか、シックハウスの分子を壁自体が吸着するようなものとか、いろいろな高機能の建材の開発は重要でありまして、そういうところにも十分ニーズがあると思います。あと、これも放射光がもう既にかなり貢献しているとは思いますが、更に超低燃費タイヤの開発とか、先ほどありましたような各種電池の劣化試験とか、触媒の劣化評価をする。あと、実は、分離膜というのは、今後物すごく伸びる分野であります。それは、例えば、シェールガスとかのことの対応なのですが、もともとは石炭を使っていたわけで、今は石油ですけれど、今後は天然ガスが化学産業のもともとの出発原料になるということが十分あるので、そういうものについてエネルギーをかけずに分離するというのが非常に重要で、こういう多孔性材料による分離膜の評価、開発、これは10ナノメートルのところのナノ空間分光法というのは、配向性とか細孔分布がどうなっているかというところで、非常に重要になると私は思っています。

 それと、その他、新しい手法の開発というのも重要だと思います。これは私自身が興味あるものを書いてしまったのですが、私は中性子の方もかなり共同研究者と一緒にやっているのですけど、最近では、非弾性のX線散乱手法があり、普及しつつあるとお聞きしていますし、これも実は数年前にアメリカのミシガン大学とか幾つかが、硬X線を使った原子のPDF解析、リバースモンテカルロ解析をして、ナノ粒子の単結晶的な構造解析をしているのですが、最初、この構造はほんまかいなと思ったのですけど、だけど、今、それの論文をぱっと見て、早速知り合いの放射光の研究者に頼んで、今、構造解析をいろいろやっていただいています。

 10ナノメートルぐらいですと、きちっと通常のパウダーX線でもシミュレーションが止まるのですけれど。リートベルトとかですね。ところが、1ナノとか2ナノを切ると、非常にブロードで、構造をきちっと決めるのが非常に難しいです。例えば、最近、我々、ヨウ化銀というのをナノ粒子、10ナノメートルを切ることができたのですが、1ナノメートルぐらいにすると、もう室温で半融解のような状態なのですけど、その構造解析というのは、通常のものではできませんので、やはりこういったPDF/RMC解析というのは、今後、個人的には非常に興味を持っています。あと、もうこれは言うまでもないですけど、これも先ほど尾嶋先生からもあったと思いますけど、各種分光法との連携による実時間観測手法の確立というのも重要だと思います。

 それと、高輝度を生かした時間分解測定、これは広角、小角、極小角の散乱、あと、ほかの中性子とか、赤外・ラマン分光などの同時測定というのも、当然重要だと思います。イメージング技術の進化による散乱手法とか、それと、当然、日本は世界に誇れるものが幾つかあると思いますけれども、今、2位とか3位に落ちてしまっているかもしれませんが、「京」コンピュータがあります。放射光も世界トップクラスですから、それと、J-PARCもありますけれど、そういうものをしっかり連携してやっていくということも重要だと思っています。

 この2つ目以降、かなり過激なことを書いているのですが。それは、理由は、自分のことなのですが、私、九州大学に在職中に、今からほぼ10年前で、40代の半ば手前だったのですが、ひょんなことから、当時、梶山先生が総長をされていたときに、構造改革担当の総長特別補佐をしました。それまではもう研究と、少し40を過ぎてから教育も重要だと思い始めた頃に、大学の運営ではなくて経営をやらされて、3年間やったのですが、そのときに徹底的に仕込まれたのは、ステークホルダーは誰なのだということ、これを徹底的に梶山先生から教え込まれました。それがないと大学はやっぱり存続できないということがあったので、その立場から少しお話をさせていただきます。

 まず、貢献についてですけど、お題が少しあったので、それに対して答えるような形にさせていただいていますが、より高輝度かつナノビーム化による超微細構造の解明とか、フェムト・アト秒のダイナミクスといった最先端光源を目指すべきかと。総論としては、もう当然イエスだと思います。日本は科学技術立国としてやっていくということを言っていますので。ただ、例えば、復興施設ということが、もし1つの、要するに、復興支援ということも頭に入れるのでしたら、当然、その地方とか国の復興に対するニーズに合わせて設計すべきということもあるとは思います。

 それと、自動化・迅速化・簡素化などのユーザービリティを高めるべきか。エンドステーションの高度化を目指すべきか、ということですけど、これももちろん総論としては、私はイエスだと思います。これも繰り返しになるのですけれど、いろいろな緊急課題、国の復興とかにしては、やっぱり迅速に社会ニーズに対応することも重要だと思いますので、こういう高度化などエンドステーションの高度化というのがそれに貢献するならば、非常にいいと思います。

 それで、最後の3つ目が、どちらかというと、そのステークホルダーの話ですが、まず次世代放射光施設ということで、これは1つの例として、SPring-8の運営費がずっとどうなってきているかというのをいただいたのですが、もともと、ざっくり言うと100億円以上あった運営費が、今ではかなり減ってきていて、今は多分80億ちょっと切っているようなところだと思います。ちょうど私、以前、民主党政権のときに、行政事業レビューの公開プロセスに参加したのですが、あのときにも、さんざん私、当時SPring-8の予算を半分にすると、要するに、100億を50億にするという議論があって、何を考えているのだということを大分私は言ったのですけれど。

 ちょっと脱線してしまいますけど、例えば、「はやぶさ」が150億円らしいですけれど、あれで小学生の夢が買えるのだったら安いものだと私は思うのですけれど。アポロ11号が月面着陸したとき、私は感動して、これは絶対理科系に進もうと思ったのですけど、あれは全部アメリカがやってくれたわけですよね。だから、どれだけ計り知れない夢を与えたかと思いますけれど。ちょっと脱線ですが。

 それで、次世代の期待することでありますけれど、先ほどの繰り返しですけど、科学技術立国を標ぼうしている日本にとっては、もう次世代の放射光施設は絶対必要不可欠だと思います。ただ、それが学会ニーズを重視し過ぎるとか、優先し過ぎると、やはり社会から見放されてしまいますので、このバランスというのは非常に重要だと思います。社会、特に産業界に開かれた放射光施設でないといけないと。これ、100%と言っているつもりはなくて、バランスが重要だということです。ステークホルダーはあくまでも、これは、私は社会だと思います。その運営費は税金から出ていますので。あと、これはちょっと個人的なことも入っているのですけど、やっぱり放射光がそれほどまだないASEAN諸国なんかには、かなり日本の貢献ができると思います。ここもちょっと微妙なあれですけど、パワーバランスとかいろいろ考えると、ASEAN諸国の貢献というのは今後重要だと私は思っています。あと、これは先ほどのことですけど、ハイエンド、ミドルレンジ、地域性、運営の多様性。運営の多様性も、先ほどネットワーク型という話も出ていましたけど、いろいろな運営形態があると思います。

 地域によっては、例えば、鳥栖みたいに県に任せる方法もありますし、道州制的なところで、そこの道州制のところに任せるということもあり得ると思いますので、いろんなものがあると思います。大切なことは、ハイエンドの放射光施設とミドルレンジの放射光施設を両方ちゃんとそろえておくということが、あと、地域性のこともあると思います。ちょっと言葉はあれですけど、たくさんあった方がいいに越したことはないので。ただし、同じようなものが重ならないように、地域性とか、復興とか、ハイエンド、ミドルレンジというのは考えておかないといけないと思います。

 日本の資源というのは、言うまでもなく頭脳と科学技術力で、欧米にちょっと勝っただけではもう駄目で、圧倒的に勝たないともうどうしようもないわけですね。資源がないですから。だから、もうこれは行政レビューのときも言いましたけど、科学技術力は2位ではやっぱり私は駄目だと思います。

 ちなみに、国立大学生の1人の国費投入というのは、平均で年間200万です。これは病院の運営費を入れていないのですけれど。旧7帝大では、大体1人300万なのです。要するに、運営費交付金を学生数全員で割ると、それは人材育成費だと思えば、1日1万円かかっています。だから、学生が1日さぼってパチンコをやると、1万円税金むだということです。だから、私、いつも学生に、「君たちは勉強する義務がある」と。自分らの払っているお金なんか、たった50万ちょっとですから、受益者負担なんてほんのわずかで、これは国のために、そこらのおじさん、おばさんと法人税が払っているわけですから、勉強する義務がある。逆に、我々は、ちゃんと教育する義務があるということです。したがって、やっぱりステークホルダーは誰かと思ったら、これは社会だと思います。

 大学の重要な使命というのは、これは当時、私がいろいろ考えたことをもう一遍書いたのですが、当然、社会に有意な人を育てるというのが大学の重要な使命だと思いますけど、と同時に、社会に有意な学術研究を行うということだと思います。

 これも、私が総長特別補佐をやっていた最後の会があって、そのとき何かしゃべれと言われて、少し出したやつなのですけど。この選択と集中の最適関数というのと、あと、経営戦略と学問自由との均衡はどこでとるかというのは、これは永遠の課題だと思います。要するに、アクティビティが高い上位数%だけに投資するのか、それとも全体的にするのか、これはいまだに私は分かりませんし、大学の経営戦略と学問自由をどうバランスをとるかというのは、多分、永遠の課題だと思います。

 先ほど言いましたように、校費は人材育成費であるべきだと私は思います。だから、「こんなに校費が減らされたら研究ができない」と言ったら、誰も税金は払ってくれないわけで、「こんなに校費が減らされたら人材育成ができない」と財務省に言うべきだと私は思います。今、近々3割ぐらい傾斜配分すると言われています。非常に大変な時代を迎えています。今校費は1.1兆円ですけれど、ガソリン税は2.9兆円なのですね。だから、その3分の1近くでも回してくれればと、私はずっと削減に反対していました。文科省の研究振興局の科学官を最近まで4年やっていましたので、相当言ったのですけれど、もう減らすのをやめろと。だけど、局長が全員いたのですけれど、何と言ったかというと、18歳の人口が120万人までなっているのだから、そんなに要らないだろうというわけですね。だけど、それは間違いで、国立大学の学生の定員は全然変わっていないのです。若干増えているぐらいなので。

 今、国立大学の、すみません、国立大学の話ばっかりしていますけど、例えば、国立大学の学生の定員って60万人です。じゃ、その6割の36万人で日本の科学技術力がキープできるかというと、絶対ないと思いますよ。60万人は絶対必要です。だから、校費を減らすべきではないわけで、減らすことは間違っていると思うのですね。ちょっと脱線していますが。だから、結局、先ほどの繰り返しなのですけど、大学というのは、経営戦略、外部ニーズを偏重し過ぎると、優秀な人材は大学に残りませんよね。企業化しちゃうと。だけど、学問自由、内部ニーズを偏重し過ぎると、国立大学法人としては破綻すると思います。

 したがって、これは最後の話なのですが、放射光は誰のものと考えたときに、学界のものなのか、社会のものなのか。これはどちらとも言うつもりはないですけれど、バランス感覚は非常に重要だろうと思います。つまり、サイエンス、内部ニーズを偏重し過ぎると施設は破綻すると思いますし、社会的課題、外部ニーズを偏重し過ぎると学問は育たないということになります。だから、外部ニーズに振り回されるのは、僕は駄目だと思いますけれど、閉ざされたムラ社会になってしまったら、社会から当然見放されるわけですね。閉ざされたムラ社会からは、なかなか新しい学問が育ってこないので、やはり新領域の融合されたところのテーマというのは、閉ざされたムラ社会からではなく、融合分野から芽生えるということは、しっかり我々は頭に入れておかないといけないことだと思います。

 あと、最近ちょっと思いますのは、ビームライン担当者の環境が決していい環境ではないということを時々聞きます。ですから、日本は技術者に対する尊敬が欧米に比べて低いのですけれど、やっぱりしっかり給与面の待遇を改善していかないと、放射光はうまいこと人材も育たないし、そこに定着しないと思いますし、あと、課金制度というのが日本でうまく運用されない1つの理由は、欧米では、特にアメリカでは研究費が日本に比べて多いので、数百万あって、そこで、例えば100万ぐらい出してもかまわないのかもしれませんけど、今、日本の場合は、本当に100万、200万のところで、じゃ、50万、100万出してくださいと言ったらなかなか難しいということがある背景とは思います。だから、もうちょっと金を持っている人からたくさん取ってという何かを考えた方がいいのかなということです。

 以上です。

【高原主査】  ありがとうございました。

 北川先生らしいプレゼンで、学術政策全般にも関わってくる内容ですけれども、御質問、御討論、よろしくお願いいたします。

【小松委員】  すいません。

【高原主査】  どうぞ。

【小松委員】  非常に楽しいプレゼン、ありがとうございました。

 我々、会社の場合ですと、会社への貢献というのと非常に自由な研究テーマというのは、やはりすごいバランスをとらないと駄目なのですが、基本的に会社の場合は、かなりその決定機構がはっきりしていて、上がこうだと言ったら、そうだという、従わざるを得ないのですが。例えば、放射光のこういう社会的な施設に対して、そのバランスというのは、誰がどういう判断でとるのがいいのだろうかというのはあるのでしょうか。すいません。

【北川委員】  非常に難しい質問だと思うのですが、例えば、放射光学会がそれに当たっていたら、多分おかしいと私は個人的には思います。かといって、その施設自体がやっていると、それも変なことだと思うのですね。もちろん、法人化されていますから、いろんな外部の委員は入っているはずですけれど。やっぱり広く社会からいろいろな委員を入れて、意見を集約するということが大事で。例えば、ここにも企業の方はたくさん来られていますし、先ほど、余り存じ上げていませんけれど、神楽坂会議というのがあったみたいですが、その中にも決して放射光が専門ではない、福山先生なんか放射光が専門ではない先生ですけど。だから、やっぱりアカデミアからも放射光の専門家ではない人を入れるとか、社会から広くいろいろな人を取り入れて意見を聞くということが少なくとも必要ではないでしょうか。

 すいません、答えになっていないかもしれません。

【小松委員】  いや、ありがとうございます。

 会社の場合でも、会社のことばかり言って申し訳ないのですけど、やっぱり会社が変な方向に行って暴走するというようなことを抑えるために、今、社外監査役というか、社外取締役の方みたいな方を、どこの会社も結構力を入れてやられていると思うのですが、ある意味、そういう運用を議論するような、そういう外部、外部と言ったら変ですけど、何かそういう組織的なものがやはり必要なのでしょうか。それとも、今、そういうものというのはあるのでしょうか。

【北川委員】  必要だと思います。もちろん、法人であるならば必ずそういう委員は入っているとは思いますが。ちょっと脱線ですけど、私、今までずっと理学部出身で、理学系の大学を5回転勤しているのですけれど、工学系とか応用のところはあんまり行ったことがないのですが。今、京都大学の理学研究科というのは、もう非常に原理主義のところですから、私みたいな意見を持っているのは多分私だけだと思います。日頃おとなしくしているのですけれども。

 それで、4月から、また研究担当の理事補になってしまって、本部の会議に出ることがあるのですが、先日、経営協議会があって、外部の委員がほとんどですけれど、やっぱり京都大学に社会が期待するところって、物すごく大きいなと私は思いました。ただ、そこでの議論を理学研究科の教員に聞かせると、もうみんな腹を立てるでしょうね。要するに、大学のことを全然分かっていないやつが何勝手なこと言っているのだということだと思うのですけれど。いまだに、私がいるところは、例えば、市役所の市長を決めるのに、市役所の職員が決めるべきだと思っている人がほとんどですから。だけど、市長を決めるのに市役所の職員が決めていたらおかしいですよね。同じことが、大学においても私は言えると思うのですけれど。

 だから、やっぱり社会ニーズをしっかり聞けるような諮問機関なり、そういうものをちゃんとしっかり、経営に関するところも置いておかないと、多分、社会からしっぺ返しを食うと私は思っています。

【小松委員】  ありがとうございます。

【高原主査】  ほかにございませんでしょうか。

【尾嶋委員】  では、1つ。

 80年代から放射光はずっと利用できて、その頃からやっている人というのは、どっちかと言うと、放射光を研究の中心にやっている人たちで、第1世代だったのですが、最近は放射光はどんどん使いやすくなってきて、北川先生のように放射光が専門ではない方も、かなりコミットされてこられています。それが第2世代だとすると、第3世代は、本当に放射光のほの字も言わないけれども、自分のサイエンスを展開する上でなくてはならないという人たちで、こういう世代がこれからどんどん出てくると思うのですよね。そういう人を放射光にアトラクトする秘策というか、やはり放射光って敷居が本当に高くて、ムラ社会ですが、そういうのを突破する秘策は何でしょうか?北川先生はどうやって入ってこられたのか、もうちょっと素人の人に入りやすくするにはどうしたらいいかお聞かせ願いたいのですが。

【北川委員】  非常に難しいのですけれど、いずれにしても、今、尾嶋先生がおっしゃったことは非常に重要なことだと思います。私みたいなもともと素人が入ってこられるようになって、マシンタイムもある程度頂いているので、非常に感謝しているのですが、更にその状態、今や私もステークホルダーになっているのですが、だけど、もっともっと日本全体がステークホルダーになるような形の第3世代といいますか、そういうふうになっていけば、必ずみんなお金を出して放射光を作ろうよという話になると思います。

 すいません、答えは持っていないのですが、その方向でいかないと多分駄目だと私は思います。

【高原主査】  あと、SPring-8関係ですと、お手元の青色冊子49ページのところに、SPring-8ユーザー共同体、SPRUC、現在私が会長をしておりますけれども、雨宮先生が前会長で。こちらでかなり社会ニーズと学界ニーズをうまくバランスをとるような仕組みを更に今作り上げていって、それから、あと、現在の放射光ユーザー以外のところも新しく開拓しようというふうな仕組みで、そういった意味では、そういったバランスをとりながらの運営をやろうとしているというところで。

 雨宮先生、何か補足はないですか。

【雨宮委員】  今、高原先生がSPRUCの会長をこの4月からやっておられるのですが、今言った趣旨で、結局、新陳代謝が円滑に行われる、外の人を吸い上げる、そして、ムラ社会にならない、そういう組織なき組織、コミュニティづくりというのが非常に重要かと思っていました。

 ただ、今、一番難しいのは、組織なき組織というのは、行政から見ると人ではなくて、要するに、存在していないのですよね。だから、そこをどういうように法人としての資格を持つかということと同時に、そうであると同時に、その壁を作らないようにするかと、そこのバランスが非常に重要で、新しい仕組みを作るというところの模索は、今SPRUCでしている段階です。

【高原主査】  ありがとうございました。

 ほかに何か御発言。北岡先生、お願いいたします。

【北岡委員】  北川先生のプレゼンの最後に、「放射光は誰のもの?」って書いていますよね。これ、確かに、社会ニーズと学界ニーズ、放射光の大きな資源投資するやつは、やっぱり社会の中の施設と位置付けていないと、ただ学術のためとか、それはやっぱり抜け出さないといけないと思うのですよ。

 一方で、社会ニーズの産業応用とか、あるいは、最近のSPring-8のような学術成果を見ると、SPring-8の運営の仕方とかこれまでの実績って、やっぱり社会ニーズと学界ニーズを一応かなりバランスよくやられていたじゃないですか。だから、そういうことを踏まえた上で、じゃ、それをどうやって発展させていくかということも、次代の放射光については考えていく必要もあって、いかに社会ニーズと学界ニーズというのは、私、全く第三者のアカデミアからの代表みたいなものなのですけど、やっぱりそういう大きな、かつ、実績があるような中で、これをどう発展させていくというのは、社会ニーズと学界ニーズをどうバランスをとるか。更に良いバランス、今、もしSPring-8の運営上で問題があるのであれば、それを解決しながら、やっぱりそれをどう取り込んでいくかと。

 でも、やっぱり先端性もあるので、社会ニーズより学界ニーズというと、やっぱり新しい分野を開拓していくということも大事でしょう。こういう科学の世界の中では、先頭を切る、オンリーワンになる必要があるわけで、そういうことをうまくどうバランスをとるかというのも、このワーキングで議論する重要なポイントかなというような気がしました。

【高原主査】  ありがとうございます。

【北川委員】  今日、北岡先生が来られていたので、私よりもまだ、失礼かもしれませんけど、放射光に遠い先生が入ってこられたので、だから、逆に、そういうことをこの委員会は重視されているのだろうと思いました。

【高原主査】  施設側から何かございますか。今の議論については何か。石川先生、よろしいですか。

【石川センター長】  学界ニーズ、内部ニーズ、外部ニーズというお話は、多分非常に重要で、ここは考えなければいけないところではありますが、もう一つ、シーズという話があって、先端性を確保していくためには、やはり何かシーズがないといけない。いつも我々、この手の話をしているときに、放射光科学というのに、science of synchrotron radiationと、science for synchrotron radiationと、あとscience with synchrotron radiationとあって、だんだん最近ではwithのところでお話をすることがたくさん多くなっているのですが、ofのところとforのところというのをやはり考えておかないといけないのかなと。それは、ある意味で施設側の責任なのかなと考えております。

【高原主査】  ありがとうございました。

 そのほか、何か御意見があれば。また最後に時間を取っておりますので。

 続きまして、ちょっと立場は違う、企業側の方から、佐野先生に説明をお願いしております。よろしくお願いいたします。

【佐野委員】  東芝の佐野でございます。今日は、発表の機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。

 表題ですが、放射光施設に対する要望ということでまとめさせていただきます。

 中身なのですけれども、私、この課題を頂いてどうしようかなと思ったのですが、産業界のユーザー、それから社内のユーザー何人かにちょっと話を聞きまして、意見をまとめたのですが、羅列的になってしまって全然面白くないので、まずは、私がどういうようなことをやっていたかというのをちょっと御紹介しまして、私の意見を最初に述べさせていただいてから、皆さんの、アンケートみたいな形になってしまいましたけれども、少し意見を羅列したようなところを、お時間があれば紹介したいと思います。

 放射光利用の背景、これは私が放射光を使っている背景なのですが、私は20年ぐらい、レーザーを材料に照射して、その材料を強くする技術というのを開発してきました。実際効果があるということは分かっているのですが、なぜ強くなるのかというのはなかなかよく分からなくて、レーザーを照射したとき、パルスレーザーなものですから、ナノ秒のレーザーを照射するということで、非常に速い現象だということで、今までなかなか分からなかったことを、たまたま2000年ぐらいからSPring-8等を使えるようになったということで、これを使わせていただいて、いろいろ実験をやったということでございます。やはり材料の劣化も破壊も、全て初めは原子レベルで起きますので、時空間ともミクロな視点で、放射光を使っていくというのは非常に有効だと考えています。

 SPring-8はこのように使ってきたわけなのですが、PFは、エネルギーが低いところが十分使えますので、我々、ラボの実験室でいろいろ、X線回折とかやるのですけれども、それとほぼ同じ条件で実験ができるということで、初めは結構便利に使わせていただいておりました。今は残念ながらPFは使っていないのですが、SPring-8、SACLA、NewSUBARU等を使わせていただいております。

 私の開発の内容なのですが、ちょっと細かい話になりますが、御説明いたします。レーザーを材料に水の中で照射しますと、水の慣性が非常に強く働きまして、プラズマの膨張を妨げることができます。そこで、皆さんが実験で使われているような非常に小さなレーザーでも、2万気圧とか3万気圧、あるいは数万気圧ぐらいの高い圧力のプラズマを作ることができまして、それが誘起する衝撃波で材料を改質する、そういう技術でございます。ただ、物理的にといいますか、メカニズム的には非常に複雑で、エネルギーの流れで言いますと、電気からレーザーになって、プラズマになって、それが衝撃波を誘起して、材料を塑性変形させて、さらには、いろいろな環境の中で亀裂が発生するとか、残留応力が緩和するということで、非常に広い分野を取り扱う内容になってございます。

 我々、メーカーですので、シミュレーションだけではなくて、必ずこれを実証していくということをやる必要があるわけですが、このブルーの部分になりますが、今までなかなか実際に実験で確認することができなかったわけでございます。衝撃波はほぼ音速で材料の中を伝わっていくわけでございますが、その衝撃波が伝ぱしたことによって、材料が塑性変形していく、あるいは、例えば、結晶粒が微細化されるとか、析出物ができてくるというのを、なかなか実験では確認できなくて、今までシミュレーションで取り扱ってまいりましたが、シミュレーションも連続体力学としての仮定でやってきたわけでございますので、実験を十分再現しているとは言えなかったわけです。

 そこを見るのに、後ほど御説明しますけれども、SACLAを使うとか、あるいは、亀裂の成長、特に疲労亀裂になりますと、非常に細かくて、なかなか見ることはできません。特に実際の環境で使っていますと、表面にさびがあったりして、どういうふうに亀裂が進展していくか分からないと、突然壊れて、大事故になるということもございます。き裂の成長はなかなか実際に測ることができないので、それをシミュレーションで確認しているわけでございますが、この亀裂の成長につきましては、SPring-8によるCTですとかラミノグラフィを使って、どういった形で進展していくかを見るとか、あるいは、こちらの、先ほど申し上げましたが、材料の高速変形による残留応力とかいうのも、SACLAで今確認をしているところでございます。

 こちらの上の写真は、先ほどちょっと申し上げましたレーザーピーニング、水の中でレーザーを照射しまして材料を強化しているところでございまして、プラズマができる様子が、このように出ております。時間的には、ナノ秒オーダーでプラズマが膨張してきまして、それの反力で材料が強化されるというメカニズムになります。

 まずCTですが、これはもう皆さんよく御存じのお話でございまして、X線領域で電磁波が1より多少小さい屈折率を持ちますので、エッジが強調されるということで、こういった昆虫なんかも非常に周囲が強調されて分かりやすくなります。それから、これはESRFの実験かと思いますが、検出器と被写体との距離を変えていくと、このようにエッジが強調されてよく分かるということで、透過像ではこのように非常にいい結果が得られているということです。我々、原理はよく分からないのですが、メーカーですのでそこはお許しいただくとしまして、そのままCTをやったらどうなるかということで、実験をやっております。

 これは放射光のビームラインに、小さな疲労試験機を持ち込みまして、直径数ミリのアルミの棒を疲労させてCTを撮る、また疲労させてCTを撮るということで、亀裂がどうなっていくのかというのを見たものでございます。こちらにある亀裂は、このように進展する、それから、ここにある亀裂は、このように進展していくということで、これは今まで破壊力学的には半だ円状に進展していくというのは理論的には分かっているわけですけれども、それを実際に確認した例というのは余りなくて、最初に、2006年ぐらいだったかもしれませんが、初めに見えたときは非常に感動いたしました。

 SACLAの方なのですが、SACLAは、今、レーザー照射でポンプしまして、金属の塑性変形ですとか、結晶粒の微細化、あるいは析出物の生成、それから、マルテンサイト変態などを、XFELの非常にフォトン数の高い、大きいパルスが出ますので、それを使ってワンパルスでどうなっているかを見ようということです。レーザーを照射して、XFELを照射する時間遅れを変化させることによって、レーザー照射した後、何が起きているかを見ようということで実験を行っています。

 こちらは材料を書き忘れたのですが、アルミニウム合金でございます。回折はアルミがこう出ていますので、分かるかとは思いますが。レーザー照射前の2次元検出器の、これは黄色の線のところがデバイシェラーリングに対応するところでございますが、応力ゼロですと、それに一応乗っかったような回折が出ていまして、12ナノ秒後――12ナノ秒後というのは、ちょうどこれが試験片の厚さなのですが、裏からレーザーを照射して、衝撃波、圧縮波が伝わってくると、X線進入深さにちょうど達するか達しないかぐらいが大体12ナノ秒になります。そうしますと、ここのところでございますが、ちょっと拡大してみますと、例えば、ここのところは、赤で示すレーザー照射前の回折パターンと、グリーンで示します12ナノ秒後の回折パターンがちょうど重なりまして、黄色になっております。ということは、この結晶粒はひずみがかかっていない。ところが、こちらの赤い回折点、回折スポットは、このひずみがかかっていないところから広角側、すなわち圧縮側に変位しまして、しかも、このように回折がリングに近づくような変形をしているということで、塑性変形といいますか、ひずみが材料の中に、結晶粒の中に入っているというふうに判断されます。

 ちょうど進入深さのところに圧縮波が伝わってきたところぐらいですので、恐らくここの結晶粒は、こちらのまだ衝撃波が達していないところの回折で、こちらは衝撃波が達する前と後を見ているというふうに思っております。こういったのは、今まではなかなか見ることができなかったのですけれども、ワンパルスが非常に強いSACLAを使うことによって、初めて見ることができたというふうに考えております。単結晶などでは実験は行われているのですけれども、実用材料では初めてではないかなと思っています。

 同じような結果なのですけれども、こちらは、レーザー照射後16ナノ秒ということです。16ナノ秒後の状態は、もともとの回折点がこのように広がっているということです。

 残念ながら、これはワンパルス打ったとき最初の状態がどうなるかを見ておりまして、次は違う試験片に対して見ていますので、連続写真ではないわけですけれども、このようなことを繰り返すことによって、どういうふうに材料が変形して強くなっていくかというのが理解できたと考えています。どんどん時間を変えながら、このような実験を繰り返しています。

 本当に簡単に御紹介しましたけれども、実験のまとめですけれども、今、これは申し上げたことでございます。

 我々の希望としましては、私、ずっと重厚長大物をやっているものですから、更に高いエネルギーというのは1つの希望でございます。大きな構造物の中を見たい。それから、先ほどはアルミでしたけれども、例えばステンレスとか、そういった密度の高い材料も見てみたいということでございます。ただし、エネルギーを高くしますと、散乱が増えたり、検出器の感度が下がったりしますので、検出器の問題はあると考えておりまして、検出器の高度化、それから検出器だけではなくて、どうやって散乱X線を防ぐかとか、そういったことも考えていかなくてはいけないなと思っています。

 それから、こちらは実験に使わせていただいて思うことですが、SPring-8もイメージング、それから、SACLAも回折をどんどん撮っていきますと、大体1日で1テラバイトぐらいのデータが取れまして、その解析がすごく時間がかかるというのが、これはぜい沢な悩みかもしれませんが、1つございます。何かうまい解析サービスですとかサポートをしていただけると非常に助かるなと思います。ぜい沢な悩みかもしれませんけれども、そういうように思います。例えば、CDIなんかでは、駄目なデータはどんどん自動的にはねるようなソフトが既にできているようですけれども、ディフラクションなんかでもそういったものができるといいかなと考えています。

 これはちょっと感想ですけれども、先ほど尾嶋先生、北川先生からいろいろお話ございましたけれども、私も放射光施設というのは非常にいいなと思っていまして、研究だけではなくて、技術者の教育としても非常にいいと思っています。それは何かといいますと、分野を超えて一流の研究者・技術者が集まる、一つの場所に集まるところにあります。そういったところはあまりなくて、J-PARCなどはあるわけですけれども、そういったところでいろんな方とお話しさせていただくというのは非常に刺激になりまして、我々のモチベーションアップにもつながるというか、これはちょっと大げさな言い方ですが、頭脳循環の拠点として活用できるのではないかなと思っております。

 要望でございますが、これは私の要望でございます。

 施設・ビームラインの位置付けを明確にして、サイエンスと産業利用の役割分担を行う方がいいのではないかなと私は思っています。その方が、初めてのユーザーにも分かりやすくて、使いやすいものになるのではないかなと思います。

 先ほどから議論がございましたが、産業利用とサイエンスの話なのですが、産業利用というのは、やっぱりトップサイエンスの恩恵を受けて育っていると私は思っています。自分が最先端の、例えば、精緻な回折計を組み立てることはなかなかできないということで、良いサイエンスがあって、その手法や装置を利用させていただくことで産業利用も充実してくると思っていまして、やはり先ほどから出ていますバランスといいますか、そこら辺、非常に重要だなと思います。

 役割分担の話なのですが、施設間で役割分担していただきますと、施設間のアライアンスの強化も可能で、紹介サービスなども期待できるかなと思っております。

 それから、こちらはインターフェース、ハード・ソフト、マニュアルの共通化ですね。特に我々はいつも放射光を使っているわけではございませんので、そこら辺をしていただけると、ユーザーの流動化が促せるのではないかなと思います。ただ、これは当然、共通化というのはトップサイエンスには向かないと思いますけれども、我々はいつも慣れた施設を使っちゃうわけですね。行けば何か様子が分かるところをすぐ使うわけですけれども、そうではなくて、やはり最適な施設・ビームラインを使うような方向になっていくべきではないかなと思います。

 それから、これはここで議論するような内容ではないのかもしれませんが、やっぱり欧米へ行きますと放射線管理が簡単だなという、そういう思いがございまして。

【尾嶋委員】  コーヒーが飲める。

【佐野委員】  そうですね。実験ホールを放射線管理区域から除外できないかなと。放射光施設はどう見ても安全と思う施設なのですが、どうしてあんなに厳密にしなきゃいけないのかなというのは、ちょっと感じるところでございます。

 取り組むべき研究課題、これも最初のものは私が今までやってきたものでございまして、やはりこれからいろいろな構造物、どんどん古くなっていくインフラを維持していくということを考えますと、材料・構造物の破壊とその制御、これもやはり1つの重要なテーマかと思っています。例えば、10年間使いたいとしますと、11年後に全部壊れるみたいな、そういったものができたらすばらしいなと思っております。廃棄するのも簡単だということですね。

 それから、これはやはり我々、大きなものを作っていますので、ものづくりに接合というのは欠かせないのですけれども、その接合自身のプロセスの研究、それから、接合界面の研究というのは非常に重要だと思っています。もちろん、電子デバイスでもあると思うのですけれども、例えば、冷却の問題、LEDとかSiCなんかでもそうですけれども、それはもちろん電気的にも関係しますけれども、機械的特性、これはやはりどうしても通常は接合部から壊れますので、その接合界面の研究というのは非常に重要だなと思っています。

 このあたりは、先ほども出たお話でございます。

 それから、これはちょっと漠然としていますけれども、やはり日本の強い素材とかをもっと伸ばすような研究ができたらいいなと思っております。

 あと、放射光施設に対する期待、これ以降は、実はいろんな方に聞いた意見をまとめてございますので、ばらばら書いてございますので、見ていただければいいのではないかなと思っておりますので、それでよろしいでしょうか。私のお話としては、そんな感じでございます。

 どうも御清聴ありがとうございました。

【高原主査】  まだ時間はよろしいのですが。

【佐野委員】  最後のところは、いろんな方の意見を集約して羅列したものになってございます。

【高原主査】  これはかなり現実的な問題が入っていますね。

【佐野委員】  そうですね、最後の方は。車が利用できないと、SPring-8は、食事とか、なかなか苦労するところがございますので、車が使えないユーザーにも、もうちょっと使いやすいようなものになるといいなという、これもぜい沢な要求かもしれませんけれども。

【高原主査】  どうもありがとうございました。

 それでは、ただいまの佐野さん、非常に最先端のところまで産業界で活用されておりますけれども、御質問等ございましたらお願いできますでしょうか。

 現実には、今、どういった大型のものまでこの技術というのは活用されているのでしょうかということをちょっとお尋ねしたいのですけど。

【佐野委員】  私自身は余り大きなものはやっていませんけれども、例えば、燃料電池の1つのセルを持っていくなど、そういったことは実際やっております。

 あと、東芝ではやっていないのですけれど、タービンのブレードをそのまま持っていくなどされていると聞いておりますが。そういったことも、タービンのブレード自身はあまり厚くないので、工夫すれば多分測定ができると思っております。大きくても薄いものであれば、いろいろ工夫して、多分測定ができると思います。

【高原主査】  ほかにございませんでしょうか。

【曽我委員】  私はこの辺、物理の専門家ではないので、変な質問をするかもしれないのですけれども。先生のお話を聞いてちょっと刺激を受けたのですけれども。今までは、SPring-8でも、PFでも、サンプルを施設に持っていって測定だったのですけど、逆に、この施設を現場に持っていて測定というのは、やっぱり現実的にはほとんど不可能なことなのでしょうかということを思ったのです。

 例えば、先ほどの亀裂の成長ですね。実際に橋桁とか建物が傷んでいないかとかを調べるのには、測定装置の方を現場に持っていって測れれば、(シミュレーションではなく)現実のもので分かる。そうすると、非常に役に立つような気がするのですけれども、そんなことはほとんど不可能なことなのでしょうか。

【佐野委員】  私が取り扱っているような大型構造物では、なかなか今は難しいかもしれませんけれども、例えば、内部の構造を見るとか、そういったことはある程度、今からトライしているようなところかと。小型中性子源を使うこと、それから、放射光も小型化できると思っていますし、それから、あと、宇宙線ミュオンを使ったイメージングとかで原子炉の中を見たりとかというのはトライアルがされています。

 ただ、疲労亀裂みたいに非常に薄くて開口幅がないものは、通常、コントラストが非常につきにくいので、放射光みたいな平行性で屈折コントラストみたいなのを使わないと、なかなか見られないと思っています。中性子も、平行のものができれば、使えるようになるのかもしれませんけれども。

【曽我委員】  ありがとうございました。

【高原主査】  ほかにございませんでしょうか。

【上村委員】  強度の問題を先ほどおっしゃっていたのですけど、例えば、SACLAとかの強度というのを、どのぐらいまで強いのが欲しいというふうにお考えになっていらっしゃるか。

【佐野委員】  先ほどのアルミの例ですと、スポットの回折が出てしまうので、実は、アッテネータを入れて強度を落としています。その部分が、検出器がダメージを受ける可能性があるということで。ですから、今、アルミの薄いサンプルを見るには、もう十分な強度、私の実験の範囲では十分ですね。

 ただ、実はステンレスなんかもやっておりまして、ステンレスの場合には、非常に回折がぼうっとして、もっと強度が高い、例えば、一桁ぐらい高いのがあったらいいかなと思っています。

【上村委員】  10倍?

【佐野委員】  はい。

【高原主査】  よろしいでしょうか。ほかにございませんでしょうか。どうぞ。

【内海委員】  佐野先生とは個人的にも仲良くさせていただいているので、佐野先生の場合にはどういうことをやっておられるかというのは、実はかなり教えていただいたりしているところはあるのですが。

 施設者側の人間としては、実はこの産業利用に関しての1つの大きな問題の1つは、成果非公開というのか、成果占有型というのか、場所によっていろんな言い方はあるのだと思うのですけれど、そこに、どうしても放射光の場合でも、中性子の場合でも、今、研究者と技術者が仕分けができていないものですから、多くの場合、研究者が時間を割いてユーザー支援をやっている場合が非常に多いわけですね。そのときに、成果占有型、あるいは非公開型でしていただくのは非常にいいことではありますし、日本の産業振興のために放射光や中性子が役立っているという点では非常にウェルカムなのですが、一方で、その成果の中身がなかなかオープンにならないということで、それぞれ支援をやっている者の評価になかなかつながっていかない、あるいは、施設そのものの評価になかなか見えてこないというところが若干あるのですね。

 やはりいろいろお話をお聞きしていると、成果を占有にしたい、あるいは秘密にしておきたいというのも、いろんなレベルがあるのだろうと思うのですけれど、もう少しその辺のレベル分けをして、今回のSACLAのデータみたいなのは、非常に基本的な、企業がやっておられる研究テーマとしても基本的なもので、すぐ公開していただいていると思うのですけれど、実際に直接企業の活動に役立っている内容でも、できるだけ早い形で外に公開していただくということが、支援している者にとっても、それから、施設側にとっても、いいことにつながっていくことはいっぱいあるのだろうと思うので、そのあたり、いろいろ難しいこともあろうかと思うのですけれど、皆と一緒になってお考えいただけると有り難いなと思っております。

【佐野委員】  確かに同感でございます。

 国のお金を使って使わせていただいていますので、すぐには難しくても、例えば、特許を出した後に公開するとか、やはり基本的には公開する方向が私は望ましいと思っております。

【高原主査】  ほかに御意見ございませんでしょうか。

 施設側から、特に何かございませんでしょうか。

【熊谷理事】  最後に、まとめのところでちょっとお話ししたいと思っていますけれども。

【高原主査】  では、次に。

 そういたしましたら、大体予定の時間になりましたので、意見交換ということで、続きまして、本日のプレゼン全体を通して、また、今後の進め方も含めて、御質問、御意見等を自由に御議論いただければと思います。

 それでは、よろしくお願いいたします。

【熊谷理事】  何点かあるのですけれども、最初の人材育成というところで、尾嶋さんに、私もそうだなというように、ちょっと共感する部分がありましてね。それは、最先端施設の環境にいた学生さんというか、若い人というのは、必ずしも伸びないかと。それよりも、むしろ少し古いような施設で自由にできる、そこの中で知恵を出して、なおかつ、成果としてそんなに遜色のないようなもの、そういう方というのが、後で見ると、結構伸びている感じがするのですよね。ですから、最先端施設で教育というものを考えたときに、その2つをうまく何かできるような工夫が必要かなと。それから、日本全体として、そういうことができるような環境というのも必要かなと思います。

 多分、これが、最近、非常に細分化されてしまっているので、若い人が、特に最先端のところへ飛び込んじゃうと、サイエンスのベースがほとんどないという方が見受けられるので、大学でも、大学院でも、本当にベースになるようなところの教育はきちっとしていくべきなのかな。

 私なんか見ると、物質科学というのは、どっちにしたって原子レベルはどうなっているかというのが、最終的にそこに行き着くわけで、私は物性関係ではないので、見方がちょっと違うのかもしれないのですが、いずれにしても、電子の振る舞いをきちっと理解すれば、物性とか機能とかいうのは多分基本的な理解はできるのだろうと思ってしまうのですが、そういうところがきちっと教育されていないように見受けられる方もいらっしゃる。単に測定をすると、非常にきれいなデータが出てくるので、あたかも最先端の実験をしたと思ってしまう方がいるというのも、ちょっと問題かなとは思いました。

 それから、先ほど最後に、例えば、施設に来て実験をするというのと、逆に、施設から出向いていってという、多分、これはいろんなユーザーの方を考えると、そういう方もかなりいらっしゃるのだと思うのですよね。例えば、メーカーさんで使うときには、多分、出向いてきてくれれば非常に有り難いなと思われる方もいらっしゃるのだと思うのです。そのときに、SPring-8とかJ-PARCという最先端のビームを必要としているのか、それとも、それの100分の1とか10分の1ぐらいのビームでもいい、だけどもコンパクトであってということが非常に重要だというような、多分、いろんなニーズがあるのだと思うのですよね。それをきちっと整理をするということがまず必要で、それに応じて、例えば、自分の実験室で軟X線のエネルギー領域で、輝度、フラックスは今の放射光施設の10分の1か100分の1でもいいよと、そういうものであれば、今、いろいろと使える技術がありますので、そういうものでまとめるということもあるのだろうと。

 要は、施設を設計している人、または、検出器を開発している人が、利用者と、きちっとタッグを組むということが重要なのだと思うのですが、そこが今ちょっと欠けているのかなとは思いますね。だから、今後、そういうところもきちっと何らかの枠組みを作っていただいた方がいいかなというのが私の印象です。

【高原主査】  ありがとうございました。

 最初に、後半のお話の方から皆さんの御意見を伺いたいと思いますけれども。いかがですか。

【熊谷理事】  もう一つあった。ごめんなさい。

 利用の中で、軟X線と硬X線を1か所、例えば、SPring-8ならSPring-8で、軟X線と硬X線の輝度を、最先端の輝度を使って同時に実験をするというニーズというのはあるのでしょうか。

 一般的に言うと、SPring-8の場合は、硬X線に特化されているので、そこで軟X線の最先端のビームを出せと言われると、非常に困ってしまうのは、アンジュレータから出てくる光の波長というのが、分子にアンジュレータの周期長のラムダ、下がエネルギーの二乗になっているのですよね。ですから、エネルギーが高いものでアンジュレータを作ると、λが大きくなりますので、周期数が稼げない。だから、明るくならないということになるのですね。

 その2つを共存させようというと非常に難しいのですが、最近のリング関係ではない技術を使うと、軟X線も硬X線も、それに特化したエネルギーのものを使えばいいわけで、例えば、ライナックベースですと、中間から出して、非常にクォリティのいいもので軟X線を作る。硬X線はそのまま通過させて、硬X線にする。全体のチャージの量はそれなりに大きくしておけばいいわけですから、そういう技術もあるので、どういう利用の仕方という。リングを考えなければ、いろんな方法があるような感じはしますけれども。

【雨宮委員】  それは、直接ライナックから取り出すのですか。

【熊谷理事】  取り出す。エレクトロンを分配するということになります。ですから、常電動ではできないのですが、超伝導ですと、そういうビームカレントはある程度高くできるので、分配すればいいということだとは理解していただければいいと思いますけど。

 そういう方向もあるので、要は、施設がどうこう、じゃなくて、利用者が一体どういうことをしたいのかというのをきちっと明確に整理されるということが、まず重要かなとは思いますけど。

【高原主査】  今の後半の話を含めて、利用者サイドからいかがでしょうか。

 大体ハードかソフトかというのは、自分たちのやりたいことで決まっていますので、そこの無理難題をふっかける人はなかなかいないとは思いますけれども。いかがですか。

【尾嶋委員】  先ほど我々の結果をちょっと紹介させていただいたのですが、やはりスペクトロスコピーにあって、スペクトロスコピーとして課題解決になるようなサンプル、FET、そういうものを選んで我々はあそこでやっているので、あそこに同じように、じゃ、10ナノのX線がKBミラーから来て、一緒に測れば何かすごいことができるということではないのですよね。ただ、そのぐらいの分解能で、構造的にどういう変化があるかというのは、別途デバイスを持っていけばいい話で、一緒にそれを使える施設でないと我々は困るということは、特にはない、今のところは特にないとは思っています。

【高原主査】  どうぞ、谷口先生。

【谷口センター長】  3つの講演全部に関連するかもしれませんが、共通して見えるのは、連携とかプラットフォームと尾嶋先生おっしゃっていまして、ほかのところも大なり小なりそういう箇所はあったと思うのです。

 それで、それがどうやったら実効性が伴うのかという場合に、やはりそれは我が国の放射光施設全部を同じように見るというのではなくて、それぞれの施設が際立った特色とか、あるいは個性を持っているというようなところを抽出して、そこでの間の連携とかプラットフォームというのであれば、それはかなり実効性を伴うものであろうと。そこのところの、そういうような施設が、どんな際立った特色とか個性を持っているかというところを、まず明確にしておくべきであろうと。それは、光のエネルギー容器もそうですし、それから、利用技術とか、そういうものもそうですし、運営の在り方もそうですし、幾つかの観点に照らし合わせて、どういうふうに見えるかというのは、やはり物事を整理するときに非常に重要になってくるのではないかと。

 それで、尾嶋先生のプレゼンテーションの人材育成とか応用研究、産業利用、それから、純粋基礎研究、あるいは目的基礎研究、このいずれの場合も、そういうことについて、分類して、我が国は一体どういう状況にあるのかというのをまずきちっと押さえて、それで、しかるべき次世代の光源、一番押さえるべきところかなというようなところが見えてくると、非常にいいのかなと。

 私は、そういうふうに放射光施設に収れんしたとして、それを最先端のものを設置したとしても、それをもって全てのことができるわけではなくて、やっぱりそこは一番みんながあってほしいという機能や性能が際立つべきであって、だから、そういう意味で、1つ次を作ったからもう全部解消と、そういう話にはならないので。そうすると、やはり最終的には、我が国の放射光全体を捉えた、日本の底力はどういうふうな観点から、どういうふうに評価できるのかと、そういうふうにして、積分したような形のものが描けると、僕はその次への発展も見通しがしやすいかなと思いまして。

 以上でございます。

【高原主査】  やはりそのあたりに関しましては、パワーユーザーなり、そこのビームラインの責任者等がどういう認識をしているかということを、例えば、私どもでしたら、非常にきれいな回折を撮りたいときはやはりSPring-8を利用する、それから、中性子をやりたいときはもちろんJ-PARCでやるということ、それから、あとは、XAFSとかに関しましては、やはり佐賀のシンクロトロンを使うといった形で、そういったそれぞれのビームラインの特徴を生かしながら、というのを認識しながらやっているのですけれども、やはり一般のユーザーの方は、恐らく何でもできると最初は思ってこられていますので、そのあたりは、やはりそういった独自といいますか、そのあたりをきちんとサイエンティフィックアドバイザーみたいな方、そういった方が各施設に、SPring-8は今そういう窓口を作られていますけれども、各大学にそういった方がいらっしゃいますので、そういった方を通していただければ、非常に有効な活用というのはできるじゃないかと思いますけれども。

【雨宮委員】  熊谷さんや尾嶋さんが言われた人材育成に関してですが、確かに、施設や装置が成熟してくると人材が育たないというのは大学でも同じで、新たな研究室ができ研究室の立ち上げ期に入ってくる学生はすごく伸びるのです。しかし、定年間際の成熟した研究室に入ってくる学生は伸びない。要するに、これは自然の理で、ミクロな世界から宇宙まで、全て存在する物はある一定の期間で、生成消滅、スクラップ&ビルドを繰り返して世代交代を行い持続性を保っています。

 だから、乱暴な言い方をすると、次世代放射光施設も、放射光施設もある年限が来たら生成消滅、スクラップ&ビルドして世代交代することが、人材育成、技術継承のためには必要です。次世代放射光施設を作る根拠として、何か新しいことができるようになるということはもちろん必要ですが、先ほどの破壊の話じゃないけど、ある年限が来たら古い物はscrapさせて新しい物をbuildする必要がある。要するに、そういう形で、最高の人材育成がでも、建設にはお金がかかるので、そんな甘いことは言っていられない、というのはよく分かります。だから、いかに施設を安く作れるかということが重要で、テクノロジーの進歩で、800億でできたものが300億でできるようになりどんどん廉価になるし、太陽エネルギーを使って運転コストも安くなる。そういうふうにすれば、新しいものを作っても、強迫観念なく、学生が実験できる。

 今までできなかったものができるということはもちろん重要なのですが、そこにあまり大きなしきい値を設け過ぎない、人材育成や技術伝承には生成消滅(スクラップ&ビルド)が必要だとするカルチャーが必要だと思います。つまり、人材育成ということに重きを置くということだと思います。

【高原主査】  ありがとうございました。

 人材育成は、北岡先生と櫻井先生、どうぞよろしくお願いいたします。

【北岡委員】  私、第三者なので、ちょっとお話を聞いていると、新しい装置を作る以前に、今まである、いろんなエネルギー領域で全国にいろいろあるやつを、ともかく生かさなければいかんと言われますけど、それは、そういうことをやっていると、作ったものをスクラップにせずに、どんどん作っていくということは、それは世の中もたないですよ。国の予算は。なので、やっぱりそれぞれの装置がいかにアウトプット、世界的な課題に挑戦してやっているかという、アウトプットのエビデンスを見せた上で説明しないと、新しいものを、既存の装置をそのまま置いといて新たに作るということは、やはり今の日本という財政難の中で難しいと思います。

 そういう中で、私は、尾嶋先生の資料7ページにあります世界の高輝度放射光源というのを見させていただいたときに、ちょっと驚いたのは、SPring-8はその当時すごい最先端の装置だったのに、もうほとんど世界に、ただエミッタンスだけの縦軸になるのですけど、すごく追いつかれて、もう先端性がなくなっているところで、今、大事なところで1ナノラジアンですか。

 こういう中で、またそれを作るというわけですけど、やっぱり今ある、左の方の日本の地図を見ると、PFがあって、SPring-8があって、小さなやつがいろいろあるのですけど。先ほど北川先生が、東北とか言われていたわけで、これを見ると、東北にないから作るとか、そういう話は困ると思うのですよね。その装置を、ともかく先端性を持たせるために、今ある装置のグレードをいろいろ考えながら、ある程度スクラップも考えながら、新しいものが我々は必要だということを言っていただかないと、なかなか納得できないという点と、おまけに、ちょっと驚いたのは、マスタープラン、学術会議というのが、これは学術界の中の将来計画を決めるマスタープランなのでしょう。なのに、今議論しているのは、社会の中の施設という形での議論であって、バランスが大事だと言いながら、こういう話をこういうところでやっているということ自体、まず出発がおかしいような気が私はちょっと、第三者から見て思いました。

 それと、次のページですか、次世代の放射光に期待する貢献で、人材育成、応用利用、目的基礎研究、これは非常に重要なのですけど、この際、もうプラットフォームを言うのであれば、今ある日本の放射光のSPring-8、あるいは産業応用へ発展させる、目的基礎研究、純粋基礎研究を含めて、PFもそこに取り込むと。私は、プラットフォームを一つにして、要するに、尾嶋先生は東大の放射光連携研究機構とおっしゃるのですけれども、そこから出られて、放射光連携研究教育開発機構みたいなものを国として作って、それで、基礎研究については、あるいは人材育成については、今おっしゃったような既存の装置も含めて、あるいは、PFで、もしそれをグレードアップできないのであれば、そこで装置を含めるとか、産業利用は、産業連携も作って、今のSPring-8でやられているやつを、今の産業ニーズに応じて、総合マシンをそこは多めに確保するとか、一つのプラットフォーム、一つの機構というのを、国としてもやっぱりまとめていないと、こんな今あるやつをそのままにしておいて、また新たに作るなんていうことを言うのは、第三者から見ると、今まであるやつの組織の改編なり、組織の再編なり、あるいは人材育成、応用研究、目的基礎研究、純粋基礎研究というのを一つのプラットフォームで、やっぱりビームをそこに取り込んで有効にやっていくというコストパフォーマンスを是非とも考えていただきたいと。なぜ学術会議で出されたか、僕、事情は本当に見えないので。

【尾嶋委員】  それは非常に重要な点です。

 まず、このマスタープランに関して、我々は、学術と社会、産業、両方大事だ、バランスが大事だということを言っているのですが、この学術会議マスタープランの位置付けを先に説明させてください。

 これは、大型研究施設を、例えば、天文台とか、J-PARCとか、そういういろんな大型施設のどういうものが日本にあるかということを、テーブルの上に全部載せて議論しようとして、2009年9月に各団体に要請が来ました。それが、たまたま私が放射光学会の会長をやっているときに、放射光学会に来たのです。それで、学会としてマスタープランをまとめましょうと。日本全国に、SPring-8、KEK、UVSORとか、いろいろありますけれども、それをまとめて、じゃ、どういう位置付けにあるかというのを洗い出して提出しました。その2年後に、今度は水木会長が、それをメジャーリビジョンしたマスタープランを出されたという位置付けにあるものです。学術会議だから学術のことしか考えていないということではなくて、やっぱり社会の在り方も含めて、そういうのも含めて、放射光の在り方を議論しているということをまず1つ御理解いただきたいと思います。

 

【北岡委員】  いやいや、一つにまとめるということまで考えられないですかと。

【尾嶋委員】  まとめるということを、じゃ、それを誰がやるのかというと、現状ではこういう会議しかないんじゃないかなというふうに私は思っています。今までこういう会議はなかったので、そういう機会で、みんなざっくばらんに言いたいことを言うのがいい。

【北岡委員】  だから、私が呼ばれた意味がよく分かりましたので、そういうことをここで、外部の第三者の意見も聞いてやろうというわけですか。

【尾嶋委員】  ええ、そういうことだと思います。ほかは何でしたっけ。

【高原主査】  その2つでよろしいですかね。

 では、櫻井先生。

【櫻井委員】  人材育成のことですけれども、今、SPring-8ですと、来週、実はビームタイムの配分委員会があるのですけれども、平均、恐らく普通の研究室ですと、1年間に2日ですよね。もう行ったらすぐに測れるようになっていますから、ほとんど人材育成にならないですよね。学生は行ったら、3歩行ったら測れますから。

 やっぱり日本はどうしても悪平等というか、平等主義ですから、配分委員会をやっていますと、とにかく広く皆さんにビームタイムを与えようということで、非常に薄く、大体1研究室1年間に1日か2日、3シフトとか6シフト与えることをやっていますと、やっぱり今思っていますのは、その研究室では人は育ってこないですよね。だって、年間1日か2日行っても、それはマスターするわけはないのですよ。そういうことで、やっぱり選択と集中というのは非常に大事かなと最近思っています。

 それから、これは台湾の放射光の例ですけれども、あそこは精華大学の隣に台湾放射光があって、精華大学の放射光をやっている先生は、もうしょっちゅう学生を行ったり来たりしているのですよね。そうすると、そこの学生はすごく鍛えられているのですよ。だから、自分のビームタイムじゃないけれども、何かあったら行って、誰か知り合いの先生が来たら、一緒に測ろうかと言って、そういう連中がビームライン担当者になり、そこで論文を書いて、アメリカへ行ったりして、非常に育っていますので、これも私、勝手な意見ですけれども、もし放射光を作るなら、大学を隣に作って、先ほど柏キャンパスの隣に作る話が消えた話を聞いて残念なのですけれども、柏キャンパスの隣に作って、そこで東大の学生で放射光がめちゃくちゃできる、いわゆるマシナリーから理論、実験、全てできるという人をつくるというような、そういう大胆な選択と集中が必要かなと私は思っています。

 以上です。

【高原主査】  ありがとうございました。

 小杉先生、いかがですか。UVSORの方では、人材育成は。

【小杉施設長】  まずUVSORから御説明したいのは、人材育成ですね。ほかの施設と違って、UVSORの場合は、分子科学研究所に属していますので、内部昇格をしないということで、人は動いていかないといけないのです。助教や准教授というのは10年ぐらいで動いていきます。加速器も含めてですね。だから、その辺を前提に、施設の人事選考に組み込んであります。

 加速器でも、普通は加速器を作った人が定年までずっといるとか、それから、ビームラインでも、作った人がずっといるとか、放射光施設は一般に、そんな感じでやっていくのですけど、UVSORの場合、加速器の方も、今施設ができて30年ですけど、4代目です。だから、人がどんどん代わって、新しいアイデアで加速器も改良して、性能を上げていくということで、これまで2回高度化をして非常に性能がよくなっています。施設を作ったらそれで終わりじゃなくて、いろいろ手が打てますので、そのあたりを含めて、人材育成に取り組んでいます。

 ビームライン側は、ある意味、UVSORみたいに小さいところというのはすべてはできませんので、何をやるかというのは、やっぱり中の研究者が意識してやっていかないといけません。新任のグループは10年ぐらいのサイクルで大体変わっていきますので、まずは研究所としてもとにかく集中投資して、独自のアイデアでその時点で最先端のものを作ってもらうことで、成果を上げてもらっています。その方が転出すれば、そのビームラインのユーザーで来ることもできますし、また、それをその研究グループの装置ではなくて、ちゃんと外部に還元して、共同利用をどんどんやっていくというフェーズになっていきます。後任の新しい人が来れば、一番古い装置をスクラップして、また新しいことをやるということで、絶えず人も育てながら、装置も良くしていくということが、ほかの大型施設である程度目的がはっきりしているのとはちょっと違うやり方なのですけど、割と小さい施設だからこそできているという特徴があります。そういう意味で、人材育成には結構貢献していると思います。

 あとは、ちょっとプラットフォームの話は出ましたけど、UVSORもナノテクのプラットフォームに入って、一部のビームラインで民間の方にも使っていただいておりますけれど、放射光というプラットフォームがいいのか、ああいういろんなツールがある中に放射光が一部入っているのがいいのか、いろんな考え方があると思いますが、いろんなプラットフォームに放射光は関わるものですので、放射光でまとまるのがいいとは限らず、エネルギー領域にもよりますし、分光なのか、イメージングなのか、回折なのかで利用対象が随分違ってきますので、そのあたり、ちょっと違うプラットフォームの作り方もあるのかなという印象を持ちました。

 以上です。

 【高原主査】  ありがとうございます。

 谷口先生、広島大学での人材育成絡みというのは何かございますか。

【谷口センター長】  我々のところ、導入当時から物質科学と人材育成が両方盛り込まれていまして、人材育成については、低学年から言うと、学部レベルですと、実際にさわることがなかなか難しいので、それに対するレクチャーとか、あるいは、学生実験をやっている中で、一部、放射光施設でどんなことができる、現場を知るということ、それから、大学院レベルになりますと、放射光がどういうふうに使えるのかということで、理学研究科、それから、岡山大学の大学院との協定下に、大学院生の実験をカリキュラムに盛り込みまして、15名ぐらいが毎期、単位認定も含めて、自分とは違う分野のテーマに取り組むというようなことがあります。

 それから、出口がどうかと言いますと、放射光の施設はもちろんですけれど、割と産業界にもかなり行っておりまして、どこの企業かとはなかなかこういう場で言えないけれども、例えば、分析関係のところに行った、ドクターをもちろん取っていった学生さんは、HiSORを使うのは、それを使って学位を取ったわけですけれども、赴任先の会社の分析する部署におきましては、与えられた分析をどんどん、ファシリティのどこを使ったら最も効果的にそれに対応できるかと、のっけからそういう感覚を持っておりまして、ドクターを取った連中は即戦力として、会社の中の枠の中に収まらなくて、外に出ようとしている。

 それから、修士を取った学生で、修士を取って、別の企業ですけど、行った学生さんたちの中には、やっぱりSPring-8とか、私たちのところを使って、それで会社の分析を行って、それで学位につなげようというようなこともあります。

 それから、ポスドクの数としては、日本人と中国の人が半々ぐらいになりますけど、中国の方というのは非常にアクティブでして、中国へすぐ帰ってやろうなんていう話ではなくて、海外の放射光施設にどんどんアプライしていって、今、複数の放射光施設で活躍している。そういう形で、かなりその体制を整備ができてきつつあるなと思っています。

 一番大事なことは、放射光施設で世界トップレベルの研究でどんなことができているかということがないと、人材育成、我々のところはなかなか難しいですね。学位を取らすとか、そういうときには。そういうことで、やっぱり研究のレベルというのは、ファシリティの規模に関係なく、ある部分、とにかくきちっとしていないと、放射光施設ではやっていけないと思っています。

【高原主査】  ありがとうございました。

 村上先生、学生さん向けでやられているという。

【村上副所長】  じゃ、まず人材育成のことですけれども、PFはKEKの中にありますので、KEKは大学共同利用機関ですので、教育というのは非常に大きいミッションの一つです。

 具体的な取り組みとしましては、大学運営ステーションというのが1つあります。幾つかの大学が、自らビームラインを運営しまして、そこで学生実験でありますとか、そういうものを実際行って、単位まで持っていくという、そういうことをやっております。

 そのほかとしましては、普通のビームライン以外の話ですけれども、ユーザー運営ステーションというのがございまして、これは有力な大学の先生が、1つ、あるいは複数が協力しながら、そこのビームラインを運営するというものでありまして、ここでもかなりビームタイムとしてはきちんと取れて、大学院の学生の教育が行われるということになっております。最近では、大学院生が自ら申請して課題を持つという、そういう課題の種類も取れるようになりました。そのような取り組みを今、しております。

 もう1点だけ、別の観点ですが、今日の議論の中で、学術といいますか、北川先生の図で言えば、学界ニーズと社会ニーズという。学界の中に学術利用ということだと思います。社会ニーズというのは、主には産業利用ということだと思います。

 一方で、学界ニーズの方にも、実はかなり色があって、議論の中で、先端的研究と言っている意味なのですけれども、いわゆる本当にビームをどこまで絞れるのだ、エネルギー分解能をどこまで絞れるのだという、そういうビームの先端性を利用した先端研究というのは、もちろんこれは非常に重要で、非常にいい論文も書けるというのは疑いないところなのですが、実は学界ニーズ、学術界のニーズの中にも、そのビームラインを普通の使い方をして、普通の結果を出すのだけれども、それでも、それを持ってこられる材料がとびきりいいもの、これはやはり学術界のニーズではあるのですが、先端研究です。間違いなく先端研究なのだけれども、必ずしもビームの先端性を利用しているわけではないという、そういう種類のものもございます。どんどんそういうものが増えてきているということも事実でありますので、今度の施設では、やはりそういうところのバランスをうまくとって、先端といったら、ビームの先端というだけの研究ではなくて、サイエンスとしての先端という部分がかなりな部分あるのだということを考えて、そういうものに対応するようなビームライン構成みたいなものを考えていくべきではないかと考えました。

【高原主査】  ありがとうございました。

 SPring-8の方にもう一度、何か補足ございますか。

【熊谷理事】  補足というか、SPring-8も人材育成に関してはそれなりに、理研の方も含めて、若手の育成というのは非常に重要なテーマですので、取り組んでおります。

 大学生の学生による利用を支援する制度がありまして、もう数年になっているとは思うのですが、大学院の学生が主になって課題を実施する。大学院の学生ですから、その後の追跡をした結果からすると、かなりの部分の人が学術または企業の研究者の方に向いていて、そういう意味では、その部分の学生さんはそれなりに育っていると。

 それから、その枠外にいる人たちがどういうところに行ったかというのは、我々自身、今サーベイしつつあるのですが、なかなか膨大になっていてですね。ただ、ドクターコースで学位を取っている方の割合が年々増えている。ですので、ドクターコースが、去年ですと40名近くですかね。ですので、マスターの方というのはその何倍かいらっしゃるという意味で、SPring-8は、そういう意味では、人材がそれなりに育っているのだと。ただ、もう少し自由にできたらいいのかなという枠組みも、私自身は感じております。そういう意味で、いろんなところで知恵を使って、連携をするということが非常に重要かなとは思います。

 それから、ちょっとだけコメントさせていただくと、さっき尾嶋さんの7ページのところで、中型高輝度リングの中に、エミッタンスと利用開始の図がありますが、これは御存じの方は。

【尾嶋委員】  これですか。

【熊谷理事】  1990何年のところに、SPring-8とAPSとESRLが何か古いように見えちゃうのですが、これはエネルギーからいって、この3つの施設があるがために、中型高輝度リングの建設が今非常に盛んになっているということですので、決してESRL、APS、SPring-8の存在がないというのではなくて、これはまず世界最先端の硬X線の放射光施設であると。それがあって、なおかつ、中型で軟X線領域でのサイエンスが今非常に活発になってきて、そこに対応した施設が必要だということです。

 1つだけ、そこにPETRA。

【尾嶋委員】  PETRA3。

【熊谷理事】  中型高輝度光源の下に1点だけありますが、これはDESYにあった素粒子実験用の加速器、2キロぐらいあるやつを6GeVまでおろして放射光に転用しているというので、今、1ナノというところに来ていますが、実はこのリングは6GeVなのですが、つい最近3GeV運転をして、0.2ナノまでいっていると。ですので、世の中、いろんな資源を活用という方向で、昔使っていた素粒子用の加速器を転用しているというところが流れですね。

 それと、もう一つ、中型高輝度リングで割に早い時期に作ったDIAMONDとか、SOLEIL、SLS、こういうものが最近軒並みアップグレード計画で、MAX4のレベルまで到達しようという計画を今出しています。ですから、世界的な潮流が今そういうところに、サイエンスが非常に重要な位置付けになっているので、皆さん、世界各国が皆そっちの方向に動いている。

【尾嶋委員】  そうですね。

【熊谷理事】  ちょっとコメントです。

【高原主査】  ありがとうございました。

 そろそろ時間になりましたけれども、何か最後に御意見、コメント等ありましたら。人材育成等に関しましては、まだまだいろいろな議論があるかと思いますけれども。

 特によろしいですか。何かこの際。

【石川センター長】  1つよろしいですか。

【高原主査】  石川先生、よろしくお願いいたします。

【石川センター長】  いろいろな議論があるわけですが、今の日本の状況を考えたら、今後の放射光施設は、今までのように、多分、電気を幾らでも放り込んでやっていいという話ではなくなっていくのではないかと思います。ですから、我々が次のものを考えるときに、いかに省エネルギーにするかという視点はとても大事で、逆に言うと、どれだけ少ないロードでたくさんのフォトンを取り出すか。これはかなりまじめに考えないといけないのではないか。例えば、諸外国でいろんなことはやっているわけですが、本当にそれを追っかけるだけでいいのか。

 もう一つ、「京」コンピュータの話ですが、中国ですごいのができて、という話があるわけですが、その使用電力量を考えると、すごいことになっているわけですね。そういうことが、多分、放射光でも起こる可能性は十分にあるので、我々が光を皆さんにお使いいただく、特にステークホルダーは社会であるとするのならば、かなりまじめにそのあたりのことは考えていく必要があるのではないかと考えています。

【高原主査】  ありがとうございました。

 材料なんかで言うと、LCAとか、そういったものに対応するものだと思いますけれども、そういったものを考えながら、こういった議論も今後進めていく必要があるかと思いますので、今日はこれで終わらせていただきますけれども、また継続的に御議論のほど、よろしくお願いいたします。

 それでは、最後に、今後のスケジュール等の連絡事項につきまして、事務局よりお願いいたします。

【神部補佐】  本日はどうもありがとうございました。

 次回の日程でございますが、前回もお渡ししておりますスケジュールにもございますとおり、事前に日程を調整させていただいた結果、次回は8月18日月曜日の15時からでございます。場所は、文部科学省5階の6会議室を今確保しております。また近くになりましたら御連絡はいたしますが、スケジュール等を御確認いただければと思います。

 次回につきましては、本日同様に、委員の皆様からプレゼンをお願いすることを予定してございます。

 また、旅費の手続の書類につきましては、押印の箇所が2か所ございますが、両方とも押していただいて、机の上に置いていただければ、こちらの事務局の方で回収させていただきます。

 また、資料につきましては、前回同様、机上に置いていただければ、事務局の方から送付させていただきますので、もしお荷物になるようでしたら、そのようにしていただければと存じます。

 以上でございます。

【高原主査】  それでは、本日は長時間にわたってありがとうございました。本日の会議を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

お問合せ先

科学技術・学術政策局研究開発基盤課量子放射線研究推進室

(科学技術・学術政策局研究開発基盤課量子放射線研究推進室)