【資料2】次世代放射光施設検討ワーキンググループ報告書 骨子案(論点整理)

文部科学省科学技術・学術政策局
研究開発基盤課量子放射線研究推進室

A.これまでの検討経過(概要)

1. ワーキンググループの概観

 本ワーキンググループでは、基礎科学(物性科学、化学、地球科学)、基礎工学(ナノテクノロジー等)、製薬・創薬(DDSを含む)、新材料開発(自動車・タイヤ、破壊・劣化の科学等)、新エネルギー・省エネルギー、文化財、考古学から福島原発事故対応に至るまで、様々な分野における放射光の活用事例や研究開発動向について各委員から紹介があり、各分野における技術的課題や今後の展望等について活発な意見交換が行われた。他方で、分野によらない共通的な課題についても多岐にわたる論点が示されており、報告書ではこれらの観点についても整理する。

2. 議論の観点

 本ワーキンググループでは、次世代放射光施設のコンセプト設計にあたり考慮すべき観点として以下に係る検討を行った。

  1. 次世代放射光施設の役割
    ・得意とする波長領域を、特定の領域(硬X線、軟X線)に特化すべきか、あるいは全ての領域に対応できるようにすべきか。
    ・エミッタンスはどの程度まで下げるべきか。得意とする波長領域と同程度のエミッタンスは必要か。
  2. 次世代放射光施設の設計・整備に際して考慮すべき制約
    ・科学的・技術的制約(実現可能な性能パラメータ間のトレードオフ等)
    ・グローバル化の観点(国際競争力や相補性の観点等)
    ・その他、金銭的・時間的制約や環境要因等

3. 分野固有の観点

 分野固有の光源ニーズ等を踏まえた論点が示されたことにより、次世代放射光施設において新たに開拓されることが想定されるユーザー層や新たに実施可能となる潜在的な研究課題等について認識共有がなされた。

4. 研究分野・対象に係る横断的な議論

 研究対象物に関しては非平衡・不均一系、アモルファス系等への拡張が近年特に重要性を増していること、研究様式としてはin situ/オペランド観察・観測手段の高度化が強く求められていること、研究手段としてはより高輝度、コヒーレントな放射光やサブナノ秒時間分解能を有する放射光への期待が高まっていること等、多くの分野が共通して抱える課題ないし次世代放射光源に向けた期待が共有された。 

5. 求められる波長領域

 放射光源の波長領域の別(硬X線、軟X線)に得意とする観察・観測対象・手法についても、各研究分野の特性や固有のニーズを踏まえた課題整理の必要があること等について論点が示された。

B.今後整理が必要な論点(案)

1. 施設性能に係る論点整理

 次世代放射光施設の検討にあたっては、その施設性能の所在をどこに求めるべきか。
・個々の施設レベルで先鋭的な性能(幅広い波長領域、高強度、短パルス幅、高時間/空間分解能 等)を備えるべきか。
・あるいは、個々の施設の特色を際立たせた上で、複数施設間でアライアンスを形成して総体として対応すべきか。
・その際、1 回折限界光源を本質的に要する先端的研究開発と、2 既存の光源性能で十分に対応可能な研究開発とを政策的観点からも区別した上で、我が国総体としての放射光施設群のグランドデザインを検討すべきか。
(※これまでのワーキンググループにおいて、SPring-8等の先端大型放射光施設と次世代放射光施設との関係は、たとえば、欧州におけるESRFとSOLEILとの関係、あるいは米国におけるAPSとNSLS-2との関係に相似するものとする観点も挙げられた。)

2. 施設の運用体制等に係る論点整理

 本ワーキンググループでは、次世代放射光施設について、その技術的性能のみならず、運用形態や利用支援体制についても多くの観点が今後の課題として挙げられており、報告書ではこれらの点についても整理する。
 具体的には、1 運転時間の確保(遠隔・自動測定システムのさらなる充実が必要であること;施設性能が異なる場合、施設間で運転休止時期をずらす方策は根本的な解決とはなり得ないこと等)、2 人材養成の在り方(ビームラインサイエンティスト、コーディネータ、アドミニストレータ等)、3 立地(交通の利便性、企業や大学等の研究環境との隣接性、地勢的観点)、4 分野融合・学際性、5 次世代放射光施設特有の新たな技術課題等について、分野横断的な観点から幅広い議論が必要。その際、施設の技術性能や分野特性についても固有の役割期待をどの程度考慮すべきか。

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