放射線量等分布マップの作成等に係る検討会(第2回) 議事要旨

1.日時

平成23年6月27日(月曜日) 14時00分~17時45分

2.場所

文部科学省 15階 科学技術・学術政策局会議室1

3.議題

  1. 放射線量等分布マップの作成に向けた現在の進捗状況
  2. 放射性物質の分布状況等に関する調査研究の詳細について
  3. 放射線量等分布マップの作成に向けた検討事項
  4. 今後の放射線量等分布マップの作成等に係る検討会のスケジュールについて
  5. 走行サーベイ結果の取扱いについて(非公開)
  6. その他

4.出席者

委員

中村主査、池内委員、斎藤委員、柴田委員、下委員、髙橋(隆)委員、高橋(浩)委員、髙橋(知)委員、茅野委員、長岡委員、長谷委員、久松委員、村松委員、吉田委員

文部科学省

渡辺次長・原子力安全監、板倉EOC環境モニタリング班班長、石井EOC環境モニタリング班、斉藤EOC環境モニタリング班、佐々木(原子力安全委員会)、小平(農林水産省)、小野(原子力被災者生活支援チーム)

オブザーバー

青木(日本原子力研究開発機構)、内堀(放射線医学総合研究所)、恩田(筑波大学)、下浦(東京大学)、谷畑(大阪大学)、津澤(日本地図センター)、難波(福島大学)、水野(福島県原子力安全課)、村松(日本原子力研究開発機構)、その他

5.配布資料

資料第2-1号    :放射線量等分布マップの作成に向けた現在の進捗状況について
資料第2-2号    :放射性物質の分布状況等に関する調査研究
資料第2-3号    :放射線量等分布マップの作成に向けた検討事項
資料第2-3-1号 :作成する放射線量等分布マップの種類について
資料第2-3-2号 :放射線量等分布マップの表し方
資料第2-3-3号 :放射線量等分布マップの作成に向けた分析結果の取りまとめ方
資料第2-4号    :放射線量等分布マップの作成等に係る今後の検討事項及びスケジュール
資料第2-5-1号 :走行サーベイの結果のまとめ方(机上配布)
資料第2-5-2号 :走行サーベイ測定結果のマップ化の方向性について(机上配布)
参考資料1   :最近の放射線量等分布マップの公表資料について
参考資料2   :第1回放射線量等分布マップの作成等に係る検討会議事要旨(案)
参考資料3   :放射線量等分布マップの作成等に係る検討会委員名簿
参考資料4   :放射線量等分布マップの作成等に係る検討会の運営について

6.議事

(1)中村主査の指名により、下委員が主査代理として承認された。
(2)文部科学省及び農林水産省の事務局より、資料第2-1号について、説明が行われた。
(3)事務局より、資料第2-1号について、説明が行われた。
(4)資料第2-2号マル1について茅野委員から、資料第2-2号マル2(硬土壌)について谷畑氏(大阪大学)から、資料第2-2号マル2(軟土壌)について青木氏(JAEA)から、資料第2-2号マル3について池内委員から、資料第2-2号マル4について恩田氏(筑波大学)から、資料第2-2号について、村松氏(JAEA)から説明がなされた。
(5)事務局より、資料第2-3号について説明がなされた。
(6)事務局より、資料第2-4号について説明がなされた。
(7)議題5について非公開で行う旨、主査から説明があり、傍聴者が退席された。

7.主要な質疑応答

○資料第2-1号 :放射線量等分布マップの作成に向けた現在の進捗状況について
【事務局】  今回の土壌調査について、斎藤委員を中心に、地元の調整をご対応いただいている。実際の調査について、日本学術会議の方で、柴田委員にご協力いただき、大阪大学の谷畑先生、藤原先生に、特にサンプリングの調査に参加していただける先生方、研究員の方々を募ってい頂いた。大阪大学の齊藤先生には、徹夜作業でスケジュール管理をしていただき、各市町村に行けている状況である。
 土壌採取については、筑波大学の恩田先生にサンプリングのプロトコルを作っていただき、当日も調査員の方々に、試料のサンプリングの仕方を伝授していただいていた。
 関連機関として、日本分析センター及び放射線医学総合研究所の方にも走行サーベイ、土壌のサンプリングの調査に参加していただいている。
 福島大学の髙橋委員、難波先生を中心に、特に飯舘村、浪江町等の地元に交渉に行っていただいた。
 最後に、走行サーベイについて、京都大学の髙橋(知)委員を中心にやっていただき、今回うまくデータがとれているという状況である。

○資料第2-2号マル1 :放射線量等分布マップにおける土壌狭域内分布の確認

【髙橋(知)委員】 2kmメッシュ内での、縦方向の浸透のことが多く入っているかと思うが、表面状況による沈着速度、沈着量の差という観点はここに含まれているのか。つまり、表面状態により、森林だとか普通の平地だとか、状況により沈着量が変わってくるというような、最初の存在量の部分のところ。
【茅野委員】  それはもちろん見る。

【吉田委員】  森林のところの自然林というものの中身を教えていただきたい。つまり、森で考えると、里山は事故のときに葉っぱがついていなかったということで、この場合、自然林というのが何を指すのか。要するに葉っぱがついたような状態の林なのか、あと、葉っぱがついていたという意味では杉の植林地とか、そういうところは入る余地はないのか。
【茅野委員】  私が実際に行っていないので、行ってきた者に確認して、ご連絡したい。
【吉田委員】  ポイントは、事故時に樹幹に葉っぱがついていたような林であるのか、そうではないのかというところの区別で少し試料をとっておいた方が良い。先ほど沈着量という話が出たが、そこのところで沈着量が変わってくる可能性がある、という質問の観点である。
【茅野委員】  これは調べて、次回にでもお答えしたい。

【中村主査】  選ぶ点は、15点の試料採取をするというのは2kmメッシュの中であるが、その2kmメッシュは1個だけ選ばれるということか。
【茅野委員】  それは今、1カ所である。今回は時間の関係もあってそのような状況である。特に常緑樹のある所もという話があるのであれば、(そのメッシュの)隣などを探すことも検討はできると思う。

【事務局】  例えば、今回2kmメッシュ内でとったデータで100という値が出たとき、その場所が例えば畑地であった場合、畑地と水田で例えば3倍の差がるのなら、2kmメッシュ内の水田は大体300ぐらいとか、他の2kmメッシュ内でもできるようなものか。
【斎藤委員】  そんなに単純には言えないと思うが、そこら辺を明らかにするために、この調査をやっているということ。

【久松委員】  空間的な沈着量の差を確認したいのであれば、2kmの中を、さらにメッシュ切って、その中を機械的に落としていって沈着量の差を見るということであれば分かる。そうではなくて、樹木別にやるということになると、樹木による沈着量の差を見るということであるのか、その辺の、多分仮説の立て方だけだと思う。その2kmの中の分布の変動要因として何を考えているのか少し見えにくい。
 それから、深度方向への浸透の話が組み合わさっており、これもまた非常に大事な話であるが、焦点が絞り切れていないという感が少しする。
 この計画全体として、どんな土壌のファクターによって、土壌の中の因子によって土壌の深度分布が変わっていくのかとか押さえないといけない課題である。
【茅野委員】  目的としては、今お話しのあった2つのうち、後者にわりと重点を置いている。今は分布状態を見ている。今度、離散的に分布を見たときに、その間で動態がどうなっているかというところを見るのが1つ大事なポイント。そういう意味では、土壌によってどういうふうに放射性物質が浸透していくのかを確認することについて、重点的に考えている。
【長谷部委員】  久松委員と同じ意見で、2km四方の中を15点調べて、それで何が言えるのかというのが正直気になるところ。動態を調べるにしても、もっと当然精密に調べなければいけない。この戦略推進費の使える一定期間内でやるべき最低限のこととしてなら理解できる。
【柴田委員】  今後の展開として、それがどうなるかということで、1回だけじゃどうにもならない研究だと思う。ある程度期間をおいてとっていって、その変化を見るとか、今回の研究をベースにして、もう少しいろいろな領域に広げていくとかいう展開が必要。そのための最初のテストという位置づけなのではないか。
【茅野委員】  十分説明できなかったが、今回はとにかく9月、10月までに1回仕上げるということで、どういうやり方がいいのかというのを調べる意味もある。その後は、いろいろ予算などが許せば、もっと違う環境でも行う。もう1つは、最終的にはシミュレーションモデルに対して、どういうパラメータを用意できるかというところが1つ大事な点だと思うため、その辺に着眼しながらやっていきたい。

【中村主査】 それでは、了解いただいたこととしたい。

○資料第2-2号マル2(硬土壌):深さ30cm方向の土壌分布調査

【谷畑(大阪大学)】  (土壌中の放射能濃度分布が)深さ方向にどういうふうになっているのかということを測定することを目的とし、浸透していく状況を追跡調査するということを念頭に置いて、なるべく、まだ擾乱されていない梅雨の前に、深さ方向の分布をとりたいというふうにしたもの。
 土の深さ方向を全く乱さないで測定するという方法を開発している。
 2ページ目の測定方法について、コリメータを使い、土壌はそのままにしたまま、土壌のどの部分からのガンマ線が来ているかを見るという方式である。特にセシウム137を(測定対象として)やろうと思っている。セシウム137は寿命が長い、セシウム自身は多分同じ動きをすることからセシウム137を代表として追いかけていく。スリットの幅は5mm程度にして、5mmのピッチで全部、30cmの深さまで測るということになっている。
【長岡委員】  鉛のコリメータの厚みはどの程度か。
【谷畑(大阪大学)】  10センチである。
【長岡委員】  同じようなことを昔やったことがある。穴を掘って、そこに(検出器を)入れていった方が(計数が)稼げるのではないか。
【谷畑(大阪大学)】  例えば今、5cmの土壌サンプルは、10分もすれば十分な統計になる。(放射能の)強さの問題について、今はあまり問題になっていない。

【久松委員】  絶対測定の計数効率をどうやって出すのか。これはBq/kgの単位になっているので、計数効率をどうやって求めるのか。
 それから土壌の密度が変わったような場合に、その辺をどう対処するのかという計数効率の問題がある。
 もう1つは、外壁の引きずりの問題があって、採土器を(土壌に)たたき込んだときに、上の方の濃度の高い土壌を下の方に引きずっていってしまう。これをどうやって評価するか。それを避けるために横穴を掘って、横穴の壁からサンプリングするというような手法もとられているぐらい。その補正方法は如何に。
【谷畑(大阪大学)】  ランタンオキサイドのパウダーを使いっている。これはナチュラルのアバンダンスがわかっているため、何グラム入れると、どれぐらいその中に放射能が含まれているということがわかる。既にキャリブレーションに使っているが、砂とまぜて実際の測定のキャリブレーションというので回しているが、それと同じことをその辺の砂でやればできると思っている。要するに、砂の上の1センチのところへそれを入れておき、そこへ同じことをやって、下の方までどう入っていくかということを実際にやる。その程度の誤差でやっていこうと思っている。
 絶対値の校正は必要と考えていない。我々は、同じ点での表面線量の絶対値が決まっているため、深さ方向の測定は相対値のみで、絶対値の積分が他のサンプルでとったものとほぼ一緒であるというふうにすればいいと思っている。
【谷畑(大阪大学)】  要するに深さ分布を規格化して、積分した量がその周りのものとほぼ一緒だろうという形で。ですからこのジオメトリーで絶対値、計算はできるが、それを非常に強く使うという形では考えていない。
【久松委員】  そうすると、サンプルを2つとられて、片一方でトータルの量を出されて、片一方で分布を見られるというふうに解釈すればいいか。
【谷畑(大阪大学)】  そうである。

【高橋(浩)委員】  5mmというのは、分解能で決められたと思うが、もう少し細かくすることは考えないのか。
【谷畑(大阪大学)】  5mm以上の深さ分布を見て意味があるのかどうかということがある。土壌の専門家ではないので、5mmにどういう意味があって、1mmがどういう意味があるかということをはっきり見ていない。

【長谷部委員】  用語の定義がよくわからないが、硬土壌と、軟土壌というのは、何がどう違うのか。
【事務局】  事務局が整理する観点でつけた名称とうもの。

○資料第2-2号マル2(軟土壌):土壌中における深度方向の放射性物質分布の確認調査

【久松委員】  資料第2-2号マル2(硬土壌)と同じ引きずり込みがどうなっているか。
 イメージングプレートについて、セシウムのガンマ線エネルギーが高いため、高い分解能は期待できない。マクロな分布には非常に有効かとは思う。
【青木(JAEA)】  まず1点目について、外壁の引きずりはある。それをどうするかということで、スクレーピングを非常に慎重にやるということ。このスライサーを使う場合には、やはり幅が広くて深さがあるものを用い、表面を全部そぎ落として中心部をとると、現時点では考えている。
 例えばイメージングプレートを穴に入れたらどうかとも考えたが、イメージングプレートに水分がつくとまずいので、穴の中に入れるということはしていない。
 イメージングプレートの分解能につきましては、高いところから事前にサンプルをとって、予備試験をしている。6時間、12時間、24時間の感光時間によって、どれぐらい違うかということを事前にチェックした上で、12時間に決めている。ただし、分解能という観点では、我々もあまり分解能は期待していない。例えばワイドのものであれば、土壌の性質によって(放射能に)違いが出るのか、出ないのかというようなことを見るという意味でイメージングプレートというのを考えているため定量性はあまり期待していない。

【長谷部委員】  農地の方だと、土壌断面標本を作っている。このジオスライサーの小型みたいなものでやっており、そのときの経験からすると、このような大きなジオスライサーで引っ張り上げたときに、当然沈圧してきて、下の方が潰れることがあると思う。このあたりは、技術的にはいかがか。

【青木(JAEA)】  第一に、硬いと駄目である。それと、外壁の引きずり込みがあるということと、あと、特に下の方の部分を何でこんなうまくとれるのかと。色々なノウハウがあり、そこが特許になっている。

【長谷部委員】  (採取した土壌の)保存は大丈夫か。
【青木(JAEA)】  調査が終わったらすぐ埋め戻している。

【吉田委員】  収着試験というのは、一定量のサンプルをここから採って、バッチか何かで吸着試験をするということか。
【青木(JAEA)】  そうである。

【吉田委員】 最初の目的のところで「ヨウ素は収着性が低い」というふうに書いてある。黒ボク土壌とか結構べたべたとヨウ素がくっつくが。
【青木(JAEA)】  部内でも、これは言い過ぎだろうと言われたが、あえてセシウムと比較してという意味で用いた。厳密に言えばおっしゃるとおり。

【村松委員】  イメージングプレートの所で、(採取した土壌を)他の場所に持っていかないということについて、その場でやるとすると、他からの放射線の影響もあるのではないか。それと、水分との関係や密度を考慮にどう入れるか、その2点を伺いたい。
【青木(JAEA)】  イメージングプレートについてだけは、現場でやるといろいろ問題があるため、福島市内に持っていっている。測定した場所のバックグラウンドは、毎時0.08~0.09マイクロシーベルトである。そこに置いて、かつ周りからのコンタミを防ぐために、鉛の板、鉛のシートを上に被せる操作をしている。
 水分について、採取後数時間が経過しているため、蒸発したりはするが、水分の影響というのは、特には。水分については、あまり影響はなかったと見ている。
【村松委員】  水分というか、密度により吸収が違うと思う。
【青木(JAEA)】  密度につきましては、これは土質試験、この11個につきましては、浅い部分と低い部分で真密度、乾燥密度、湿潤密度、全部を測っているため、それで比較することを予定している。 

【久松委員】  コンパクションはかからないのか。
【青木(JAEA)】  コンパクションもかかると思う。ただし、評価できない。
【久松委員】  コンパクションに関しては、普通であれば、実際にとれた高さと実際の深さとが違っているので、それを補正して戻してやるということになると思う。
【青木(JAEA)】  それはやっていないが、ほとんどその違いはないというふうに見ている。 

○資料第2-2号マル3:河川・地下水の試料採取及び分析について、その他の核種分析

【吉田委員】  河川水、浮遊砂等の採取について、全体の濃度の分布とかを見ようとしたときに、試料採取の条件をどれぐらいそろえるべきか。つまり、雨が降った直後は変動する可能性がある等、例えば天候とかの状態をある一定に保って全体のサンプルを集めるというようなことが必要ではないか。
【池内委員】  少量の雨なら良いかと思っている。 

【池内委員】  河川水をマップにするという考えはあるのか。
【事務局】  今のところ河川水をマップにするかどうかというのは考えていない。河川水の放射性物質の状況の確認という事を最初に報告書にまとめるもの考えている。 

【吉田委員】  (データ公表時の)説明で、余計な説明をしなくていいようなサンプリングをしておいた方が良いのではないか。
【恩田(筑波大学)】  水についての時系列、いわゆる降雨による変動は、ほんとうに出たこと等がない。我々としては時系列をとってみようというようなことがあり、もしかしたらその辺のことが解釈に使えるのかもしれない。 

【長谷部委員】  降雨があれば、当然山の土が削れて、そこにあるセシウムなり放射性物質が川に入ってくる。このため水中のセシウムは毎日変動し、6月より8月が少ないという話ではない。場合によっては上がることもある。
 河川の堆積物はどんどん溜まっていくだろうから、6月、8月の2回そうやって調べるという意味はあると思うが、水の方はそれほど単純な話ではない。

【村松委員】  分析法について、セシウム、ヨウ素は測りづらい(放射能)レベルかと思う。セシウムのとき、マリネリ容器で2リットルを測ることとなっているが、検出限界に達しない可能性もあると思う。濃縮ということは考えていないのか。
【池内委員】  濃縮するならば、ストロンチウムと同じように40リットルで、このくらいの検出限界までいく。しかし、これは試料数との兼ね合いがあり、50試料、地下水合わせれば100試料あるため、今回9月30日までに200試料やるということになる。そのため、9月30日までにやるのはこの方法が一番いいかなというのを考えている。
 ヨウ素については、酸入れて濃縮すると、飛んでしまう。そのため、この方法しかないと思う。
【村松委員】  例えばフェロシアン化鉄なり、フェロシアン化ニッケル等というのは結構くっつける。そのあたりで濃縮が比較的早くなる。
【池内委員】  それはセシウムの濃縮か。
【村松委員】  セシウムである。
 もう1つ、プルトニウムのところで、アルファ線を測ることは重要であるが、ICP-Massでやると、239、240の比が測れるため、また新しい情報も得られるのではないか。
【池内委員】  おっしゃるとおりである。
【村松委員】  プラスアルファの情報ということで、だから電着板に電着するのであれば、後は、それを残しておけば、溶かしてということも可能だと思う。
【久松委員】  村松委員とは逆に、今の場合には、公式の方法に固執された方がよろしいかと思う。確かに実験的な濃縮をすれば感度が上がるということは考えられるが、この状況では、既に経験のある手法で、やることが一番確実。
 それから、アルファ核種を測定すれば、Pu238が確実に出ると思う。
【久松委員】  Pu238を指標にすれば、施設寄与のプルトニウムなのか、フォールアウトのプルトニウムなのかというのがきちんと分かる。
【池内委員】  おっしゃるとおりである。様々土壌を日本分析センターでやっているが、フォールアウトのプルトニウム238と239、240を分母にした比は0.026で、先生ご存じのとおりである。既に発表しているが、今回の事故の影響を受けたプルトニウムは、その比が1から2とかに出ているので、アルファ核種を分析すれば、そこの影響というのはすぐにわかる。

【久松委員】  浮遊砂について1カ月間の採取をするということか。
【池内委員】  そうである。その装置をずっと置いておいて、1カ月分の砂を集める。
【久松委員】  比較的天候の影響というのはならされていると考えてよろしいか。
【池内委員】  砂を集めるについてはそうである。
【久松委員】  多分必要なのは、サーフィスランオフがどのくらいあり、降水量との関係でサーフィスランオフをどうやって見積もるのかというところを押さえる必要がある。それをきちんと押さえておかないと、これを年間ではどのくらい流れるのかといった場合に、ちょっと評価が難しいという話になりかねない。 

【池内委員】  今回は試料数が多いのと、あと報告期限も限られているため、より多くの試料数をやる方が良いと思うことから、マリネリビーカーでやらせていただきたい。
 試料は多く採っておくので、全部検出限界以下だかとになれば、濃縮等の手法を考えてみたい。

○資料第2-2号マル4:放射性物質による環境影響への対策基盤の確立

【茅野委員】  このような移行の研究を行うとき、「測ったら、こうなった」で終わらないようにするために、移行に寄与するキーとなるパラメータの同位置測定というのが非常に大事である。例えば巻き上げとか、それから森林から土壌への移行とか。どういうパラメータが考えられており、そのあたりの測定も含めてどういうふうに実施していこうと考えているのか。
【恩田(筑波大学)】  巻き上げに関しては、雨量がそういった気象要因となるということが考えられる。これについては、気象モニタリングステーションを5地点に設置しており、風向、風速、雨量、温度の自記測定のデータと関連づけて、このモニタリングを考えている。
 森林、土壌への移行についても、1つ考えられる要因としましては、1つは風、雨等であるが、雨についても林の外の雨と林の中の雨をとり、それについて、放射性核種の分析をし、解析を進めることを考えている。

【髙橋(知)委員】  このプロジェクトは9月までであるが、普通の耕作のところでというとかなり長期のデータが出てくるのではないか。そうすると、9月までに出てくる、このプロジェクトに使われるパラメータはどのようなものが出てくるのか。
【恩田(筑波大学)】  田んぼについて、直接的な我々のフォーカスとして、田んぼという場所から、どれだけ水と土砂が出ていくかというところにある。となると、稲が生育し、いわゆる田んぼの水を落としてしまうと、出ていく量はぐっと減っていく事を1つ考えている。9月まででも、田んぼから下流への放射性核種の移行については、大まかなところは押さえられるのではないかと思う。 

【長谷部委員】  田んぼからの放射性物質の系外流出データはいかようにも試験的に操作できる。代かきして、代かき水を濁ったまま流せば沢山出て、田んぼは危ないというストーリーにすることもできるし、湿田や泥田のようなところもあり、水を全く落とさなくても耕作はでき、田んぼからは流出はないというデータにすることもできる。慣行的な水管理方法で試験していただきたい。

【恩田(筑波大学)】  その辺は実際、耕作をやっていただく方は地元の方に、できるだけ通常の耕作をしていただくということで考えており、あとは出水によってどれだけというようなデータがとれるかどうか。

【村松委員】  森林生態系の中でセシウムというのは、植物に取り込まれたり、菌類に入ったり、循環がいろいろ起こっていく。そのあたりも恩田先生自身がやられるのか。他のチームも加わってやると、この生態系と水の循環なりが合わさって、充実したデータがとれるのではないかなと思っている。

○資料第2-2号マル5:測定・分析結果のデータベース化

【久松委員】  科学的な、学術的な世界への情報発信というのは何か考えているのか。これを、要するにペーパーとしてしかるべきところに投稿して、きちんとレビューを受けて論文にするというようなことはお考えか。
 少し国際的に、要するに英語版のデータベースも同時につくって、国際的に公表するということで良いか。
【事務局】  前者については、今後の検討会の中でも、委員、関係大学の先生方に相談させてもらった上で考えていきたい。
 英語版のデータベースに関しては、今回のお金の中で、できる範囲でやっていきたいと考えている。ただし、まずは日本語版を作り、ユーザーのニーズに応じて、どう展開していくかということを考えていきたい。

【吉田委員】  データベースの表の顔について、文部科学省になるということでよいか。
【事務局】  そうである。この事業は文部科学省からの委託事業である。
【吉田委員】  つまり、このデータに正規に、ダイレクトにアクセスしようとすると、文部科学省から入っていく形のデータベースになるのかどうかということ。
【事務局】  おそらくJAEAである。
【斎藤委員】  多分、JAEAのサーバーで公開するが、文部科学省の委託で行った研究であるということを明記する形で公開する。 

【谷畑(大阪大学)】  ぜひ議論しておいてほしいのは、データというのは誰のデータかということが出ることがある。
【中村主査】  それは、これがまとまった段階で議論しようと思う。 

【久松委員】  文部科学省には、例えば成果利用願いとかいう形で、自分のところで出したデータについては、成果利用願いを出せば自分らのペーパーとして出せるというようなシステムはないのか。
【板倉EOC環境モニタリング班長】  それはある。基本的には、今回のこのデータは全世界の共有物になるというのが基本的考え方であることから、決してどこかの機関だけが独占するということはあり得ないと思っている。いずれにしても、このデータの取り扱いは非常に重要だと思っており、次回の委員会までに少し論点整理し、また議論できるような場を設けたい。

【高橋(浩)委員】  今回まとめるデータというのは、多分十分吟味するというところまではいかないようなデータが出てくるのではないかと思う。そういったものを同じレベルで全部並べてしまうと、非常に誤解を招いたり、要らない憶測を招いたり、そういうことがあり得るかと思う。データの不確かさについての考え方をある程度しっかり整理して、それもセットで載せたほうが良い。
【事務局】  基本的に分析結果等、十分に吟味をさせてもらった上で、ある程度信頼性のあるものだけにしたい。
【中村主査】  データの中身に関しては、出てきた段階でこの委員会で議論をすることを予定している。 

【谷畑(大阪大学)】  ただ出てきただけのデータを外へ出すのは嫌なので、少なくとも分析センターで分析したものも大学側で分析する、大学側で分析したものも大学間で移動して、一貫性を見るということは、このデータ収集の方式の中に入っている。
【中村主査】  それは最初のときにクロスチェックをやるということを大分議論している。 

○資料第2-3号:放射線量等分布マップの作成に向けた検討事項

○資料第2-3-1号:作成する放射線量等分布マップの種類について

【長岡委員】  別紙1(資料第2-3-1号マル1)で、チェルノブイリの報告書として出されたこのマップを見ると、ほとんど同じ形である。プルトニウムとかストロンチウムみたいなことを非常に詳細に測定したということはあまり聞いていないため、何かの比をかけたぐらいの図だろう。
【長岡委員】  したがって、100点の測定結果をもってマップをつくる必要はないと考える。 

【髙橋(知)委員】  私もマップを作る必要はないと考える、点数が100点で作ることは非常に粗いマップということもあり、もう1つは、セシウムの結果で類推するということも書いてあるが、放出がセシウムとストロンチウム、プルトニウムでかなり異なるため、ガス状で遠くまで飛んでいっているセシウム、ヨウ素と比べますと、近傍でかなり落ちている可能性がある。そうすると比率がかなり違う可能性があるため、スケーリングで図をかくとかなり間違った図になる可能性がある。
【中村主査】  そういう方向でよろしいか。
【委員方】(「異議なし」の声あり) 

○資料第2-3-2号:放射線量等分布マップの表し方

【長岡委員】  測っていないところがある段階でコンターを引いてしまうと、あたかもそこでそういう値であるかのような誤解を生んでしまうというのが一番怖い。当面は測定をしたところだけのデータを出せばいい。将来、内挿の仕方だとかを議論して、これが適正だろうということがわかったらコンターにするということができると思う。 

【長岡委員】  内部で、ワーキングをしてコンターを引くのは一向に構わないが、公開用というのは誤解を生まないというような出し方というのが非常に大事。
 次に、毎時3.8マイクロシーベルトが分かればいいというようなやり方について、あの線量は3.8であって3.9ではないと、そんな厳密なものではない。あくまで目安なので、それを引いちゃうと、こっちはセーフ、こっちはアウトというふうに思われてしまう。やはりこれも誤解を生む可能性がある。淡々と1、5、10とか、そんなような引き方でよい。
【髙橋(知)委員】  全く同じ意見で、賛成である。特にレンジの切り方について、毎時3.8マイクロシーベルトというものが数値として出ている。例えば走行サーベイのデータ、これを車外のデータに置き直した場合に、道路上の値という形での補正になるため、それを校庭の基準である毎時3.8マイクロシーベルトと比較するというそのものが直接な比較にはならない。長岡委員のご発言のとおり淡々と数字で切る形のほうがよい。

 【事務局】  他方で、住民の方にマップを公表する際、安全基準がないと、これはどうなのかと言われてしまう。報告書を出して、それをもらったとしても、皆さんこれがどうなのかわからないとやはり心配であるため、できる範囲で、何かいい落とし所があればと思う。

 【下委員】  航空機モニタリングマップがそのような切り方をしており、これと合わせる必要はないかということについて、事務局としての考えは如何。それと合わない違うものを出した場合に、やはり住民から、これとこれは違うじゃないか、どう読むのかと(言われる。)そこを合わせておく必要はないか。
【事務局】  航空機のモニタリングのマップについては、非常に粗いもので、これからのモニタリングのスポットとして、どういうところを測定したらいいのかというものを検証するためのデータである。その関係で、毎時3.8マイクロシーベルトを超えているところを具体的に調査するために使用する指標である。今後公表するマップは、より正確なものの値と比較する際にレンジが違っても、問題ない。

 【中村主査】  今のご議論で、メッシュごとを中心にし、コンターは内部資料として扱うと。レンジに関してはもう少し議論したいが、それでよろしいか。
【委員方】(「異議なし」の声あり) 

○資料第2-3-3号:放射線量等分布マップの作成に向けた分析結果の取りまとめ方

【中村主査】  例えば5地点のうち4地点がN.Dで、1個だけ出ていたときに、その数値を出していいのかという問題がある。N.Dはゼロと見て平均するのがいいのではないか。

【吉田委員】  測定のときは、ある一定時間測って、それでやめるというものか。
【中村主査】  1時間となっていたと思う。
【下浦(東京大学)】  基本は1時間である。一応1時間で何となく兆候がある試料に関しては、長時間測定で、見える試料に関しては感度上げましょうというふうに、大学連合の方でやっている。だから、N.Dのレベルが、かけた時間によって違うということが起こり得る。
 N.Dになるかどうかを決めているのは、実はヨウ素は364keVで、そこに来るバックグラウンドはセシウムのコンプトン連続部である。だから線量の高いところはバックグラウンドが高いので、自然とN.Dのレベルが上がってしまうという事情がある。同じ検出器でやっても、土壌によってN.Dのレベルが違うということが起こってしまうのが現実。

【中村主査】  これはコメントを寄せていただいて、議論するというのがいいかなと思う。
【髙橋(知)委員】  その際に、どの程度の数のものがきちんと検出されていて、どの程度が全部N.Dとか、そういう情報があった方が検討しやすい。 

○その他

【中村主査】  この次の議題は「走行サーベイ結果の取り扱いについて」ということで、これは、この検討委員会の運営規定の2に該当する議題ということで、非公開とさせていただく。傍聴者の方々におかれましては、ご面倒ですがご退席をお願いしたい。どうもありがとうございました。

 以上

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文部科学省 原子力災害対策支援本部

(文部科学省 原子力災害対策支援本部)