科学技術イノベーション政策のための科学推進委員会(第14回) 議事録

1.日時

平成26年4月7日(月曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省 3F1特別会議室

3.議題

  1. 各機関の取組の進捗状況等について
  2. 「科学技術イノベーション政策における『政策のための科学』推進事業」の今後の進め方について
  3. その他

4.議事録

【黒田主査】 
 それでは、第14回の科学技術イノベーション政策のための科学推進委員会を開催させていただきます。 本日の推進委員会は、現在までの各事業の進捗の状況を御説明していただきまして、それから25年度には、委託事業を二つほどやっておりまして、そのことについての御報告も受けます。
 引き続きまして、前回の推進委員会で御議論いただきました、中核的拠点機能の整備ということにつきまして御議論をいただいて、方向を決めてまいりたいと思います。
 事務局に若干異動がありましたので、御紹介をさせていただきます。どうぞ。

【坂下室長】 
 4月1日から企画評価課に分析官として赤池が着任しております。

【赤池分析官】 
 よろしくお願いいたします。

【黒田主査】 
 それでは、引き続きまして、資料の配付の確認をいただきたいと思います。

【坂下室長】 
 それでは、お手元に議事次第と配付資料をお配りしております。一つ一つの資料の確認は省略させていただきますが、資料1-1から1-7、それから資料2-1から2-4、参考資料として名簿をお配りしております。配付資料に不足がございましたら、議事の途中でも結構でございますので、事務局までお知らせいただければと思います。
 また、本委員会は、設置規定に基づき公開とし、出席者の了解を得た上で議事録を公開することとしておりますので、御了承くださいますよう、お願い申し上げます。

【黒田主査】 
 よろしゅうございますでしょうか。
 それでは早速ですが、議題の1、各機関の取組の進捗の状況について、お話いただきたいと思います。恐縮でございますが、時間が限られておりますので、各機関の御説明は大体3分程度ということで、まず関係事業の進捗状況を御説明いただきたいと思います。最初に、基盤的研究・人材育成拠点の活動状況につきまして、政策研究大学院大学の有本教授よりよろしくお願いします。

【有本教授】 
 それでは、資料1-2でございます。基盤的研究・人材育成拠点平成25年度、昨年度の活動状況でございます。3ページ。この基盤的研究・人材育成拠点は、3年前に提案公募型で御審査いただきまして、政策研究大学院大学、その左側に東京大学、右側に一橋大学、左の下に大阪大学、京都大学の連合、九州大学、この5拠点、6大学ということで人材育成をやってございます。次の4ページ。
 現在の進捗状況ということで、総合拠点、GRIPSが、これは博士・修士一貫の学位プログラムということになっており、25年度登録数が12名。東京大学、一橋、阪大、京大、九大ということで92人、4人、15人、9人、53人。この数が多いのは、サーティフィケートを出すということと、GRIPSのようにドクターディグリーを出すということで、数が上下をしているところがございます。それから右端にいきまして、現在26年度、年度初めになったばっかりでございますけれども、GRIPSの場合には、博士課程が5名、内訳は、日本人が2人、それからベトナムとタイと台湾から3人ということで、GRIPSの特徴として途上国の方々がかなり関心を示しているということで20名ぐらいの応募がありましたけれども、審査してこうなってございます。それから東京大学は、75名ぐらいを、今想定をされており、一橋が5名、その他、ここに書いてある数字のとおりでございます。
 それから6ページ、これは大事なサマーキャンプ。初年度は九州大学が幹事校となり同大学で開催し、昨年度はGRIPSが幹事校ということで、つくばで2泊3日ということでやりました。参加者については、学生さんが5拠点で26名、教職員が32名、文科省等10名来ていただきまして、研究の進捗状況と同時に、特にワークショップでテーマを決めまして、議論をして政策提言のオプションズを作ってもらうということを試行的にやりました。昨年の場合には、国際的な「大型プロジェクトの立案」というテーマでやりました。学生さんたちは、非常にインテンシブにやっていただきまして、その後もネットワークのメインテナンスをしてございます。それから、その下が、例年戦略的にやってございますシンポジウムになります。初年度はGRIPSが幹事校となり開催しましたが、昨年度は東京大学が幹事校になって開催しました。「科学技術イノベーションにおけるガバナンス」というテーマで、左下にありますように、トリプルヘリックスの創始者でありますEtzkowitz、NSFのRosenbloom。彼はSciSIPプログラムのディレクターでございます。それから、イタリアのミラノ工科大学、ドイツのカールスルーエ工科大学、オランダのラテナウ研究所等の方々も来ていただいています。
 それから次のページで8、9。事業として実質的に2年目を迎えたということで、意識的にポータルサイトを通じた共同の情報発進、それから、教員の出向講義等も始めてございます。今年度は、9ページの左にありますように、サマーキャンプを大阪大学と京都大学が幹事校となり8月に開催予定です。それから国際シンポジウムは一橋大学が幹事校ということでございます。これらは、国内、それから海外のいろいろなこの分野のネットワーク、人脈を構成する上では、非常に価値がある活動と思ってございます。
 11ページ以降は、各大学のそれぞれの個別の活動の報告でございます。時間がありませんので、あと読んでいただければと思います。
 総体としまして、3年前に公募で選んでいただきましたが、かなり連携が取れてきた。GRIPSが幹事校としましては、分野が非常にダイバースしている中で、三か月に一遍ぐらいいろいろな打ち合わせを各拠点のリーダーとやってございまして、ベクトルが合い始めたと思ってございます。以上です。

【黒田主査】 
 どうもありがとうございました。それでは、御質問あろうかと思いますけれども、後からまとめていただくことにして、引き続きまして、公募型の研究開発プログラムの進捗状況を、JSTの社会技術研究開発センターの泉センター長からよろしくお願いいたします。

【泉センター長】 
 ありがとうございます。資料1-3で御説明申し上げたいと思います。公募型の研究開発プログラムでございますけれども、こちらにいらっしゃいます森田先生をプログラム総括として、平成23年度から公募で課題を選んで進めてございますけれども、資料の3ページ目、現在走っております、16件のプロジェクトのそれぞれのテーマと、研究代表の方の名前を付けさせていただいていますけれども、これらの研究開発は、このSciREX事業の中で、中長期的にこれに資するようなモデル、あるいは指標の開発といったものがこのプログラムでの目的であるわけですけれども、一番後ろのところに、分布図みたいなものを付けてございますけれども、これは今の16のプロジェクトを、目的とかアプローチによって大まかに配置したものでございまして、丸で書いてあるところが指標とか方法論、モデルといった中で、どういう観点のものなのかということで、それぞれのプロジェクトの張り付けをしています。黄色でマークされた2011年度、平成23年度からスタートしたプロジェクトにつきましては、最終年度に入っておりまして、研究開発活動の実施期間が一応、今年の秋までということになってますので、そろそろまとめの時期ということでございます。
 それから、水色のものが2012年度からスタートしたものでございますけれども、これは実質1年を経過しまして、進行度のばらつきはありますが、それぞれ研究の形が見えてきたのかなという感じでございます。
 それから今年の5件でございますが、肌色で、四角でマークされたものでございますけれども、これは、まだ始まったばかりということでございます。今年度は、特別枠ということで、対象とする特定の社会的な課題を明確にした提案を採択するという枠を設けたところでございまして、そういう意味で、これは前回にも御説明したかもしれませんけれども、右下の赤で丸がしてあります、特定政策の効果の評価・シミュレーションのところの課題が入ってきているということでございます。
 それで、プロジェクトが終わるわけで、これからプロジェクトの評価とか、そういうフェーズになってまいりますのと、今年度、26年度につきましても公募をするということで、資料の一番最初のページでございますけれども、2のところ、第4回目の公募を行うこととしておりまして、4月25日から一か月間の公募で、例年のとおりの作業になるかと思いますけれども、10月から研究開発を開始したいということで、現在その準備を行っているところでございます。
 それから、当初、今年の公募を終わることによりまして、当初予定しました、プロジェクトの公募の4回が終わるということで、これからこの事業全体の新しい方向付けも見ながら、次の期の公募をどういうふうに行っていくかということについても検討していくべき段階になってきております。
 簡単ですけれども、以上でございます。

【黒田主査】 
 どうもありがとうございました。それでは、引き続きまして、政策課題対応型調査研究およびデータ・情報基盤整備ということで、NISTEPの斎藤総務研究官から御説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【斎藤総務研究官】
 資料1-4を御覧いただきたいと思います。時間の制約もございますので、私から、昨年の、前回推進委員会に御説明して以降の進捗と今後の方向性について、きょうは、若干の資料を用意してまいりましたので、かいつまんで御説明をさせていただきます。
 まず1枚めくっていただきまして、2ページ目ですけれども、これが当方で、今構築しているデータ・情報基盤、それから一連の政策課題対応型の調査研究成果を踏まえた、今後の展開のイメージでございます。1番と2番に書いてありますのは、相互に関連いたしますが、まず1については、未来を拓く戦略研究開発領域とか、いわゆるスター研究者をプロジェクション・マッピング的に可視化をしていきたいという、いわば論文等の分析に基づくミクロレベルの分析の考え方でございます。具体的に申し上げますと、サイエンスマップ、あるいはリンクマイニングの手法を使って新興分野、注目領域、イノベーションフロントを可視化したり、アイデンティファイしていくというのが、かなり大きなテーマとして上がってくると考えております。
 このためのベースになると思っておりますのは、2番目ですけれども、これはミクロレベルの分析と、それから政策にもつながり得るような「メソレベル」と言っていいと思いますが、そういったレベルでの分析のための仕組みです。具体的には、人(研究人材)と研究資金、それから成果の紐付けを時間・空間軸の上で行えるようにするための分析軸の構築ということでございます。これによって具体的ないろいろな研究開発、科学技術イノベーションに関わる施策プログラムのいわゆるアウトカム分析とか、その成果の可視化、効果の可視化が可能になってくると考えております。
 具体的には、研究開発のリソースとして、人材と関係機関ネットワークを活用したファンドとそれによる成果、これらを時・空間で分析できるような紐付けの分析システムを作ろうという方向に今動いておりまして、人材に関しましては、博士人材のデータベースの構築が大きな要素となってまいります。これによって、例えば、個別のアクター、大学なり機関のパフォーマンス、それから地域ごとのいろいろな活動、そのポテンシャルとか、研究力の関連性、効果の分析ができる。さらには、それを積み重ねることによって経済社会インパクトを分析したり、あるいは人と国際的な流動性の掛け合わせによって研究の生産性に及ぼす影響などの分析もできるようになるのではないかと考えております。
 3番目は、かなりマクロレベルの分析になりますが、いわゆるフォーサイト、それから最近高度化した手法として、シナリオプランニングというものも入れています。いわゆるバックキャストの要素も入れて、特に最近では2020ビジョンとか、2030ビジョンの議論がかなり進んできておりますが、そういったものに予測と言われるフォーサイトのいろいろな取組を通じて貢献していきたいという、そんな全体像でございます。
 以上、少し図式的に3ページに書いてありまして、継続的な取組としての基礎的なデータ・情報基盤に加えまして、今計画しているものは、右側に書いてありますような取組でございます。ここについては、応用先として、戦略的なR&D領域を探索する、例えば、JSTの戦略創造事業の新しい領域作りにも、これから是非活用していこうという動きが今進んでおります。さらには、注目研究領域のキーパーソンであるとか、そういった方を育てた仕組みを探索することによって、例えば、将来のスター研究者の候補を発掘したり、あるいは、いろいろな新しい研究開発プログラムにおけるプログラムマネージャーとか、プログラムディレクターの候補を選ぶときにも、こういったものが参考になるのではないかと考えております。
 さらには、これは少し時間がかかりますけれども、博士人材を追跡するデータベースを作ることによって、博士課程修了者の状況を把握すると同時に、国際的な流動性を含めた生産性の分析などに活用できると思っております。
 4ページ以降は、進捗の御報告ですけれども、4ページの真ん中あたりに出ております博士人材データベースの構築がかなり進んでおります。それからその下の地域・産業別のデータベースの中にありますが、企業・公的R&Dのストックとスピルオーバーと、技術的近接性、これらは実は、従来都道府県別ぐらいのデータしかなかったのですが、市区町村別のデータなどもかなり使えるように整備が進んでおります。これによって、例えば、COIをはじめとした、いろいろな地域関係のプログラムの効果分析をしたり、その展開をこれから見ていくという上では、非常に有用なデータベースを提供・構築し得ると考えております。
 5ページ目は、博士人材データベースの現状ですけれども、これについては、大学単位で仕組みを作る取組を進めております。RU11を中心に、既に6大学以上からパイロット調査を一緒にやろうという合意をいただいておりまして、博士人材の数にして申し上げますと、理工系の博士の中で、大体このシステムをフルに動かせば6割以上が補捉できるという仕組みが既に整いつつあります。さらに、今後、参画する大学を増やすとともに、特に企業に行った方などが、なかなか補捉が難しい場合もございますので、そういったところも効果的に把握する仕組みを、是非作っていきたいと考えております。
 6ページ目ですけれども、データ・情報基盤について、関係機関のネットワークを作っておりまして、特に、これは先ほどお示しした中では、ファンドと成果の紐付けに関わる、いわば国の競争資金に関わる機関がほとんど並んでおりまして、これらの機関がいろいろなそれぞれの仕組みを整合させることによって、研究費の投入状況とそれに関わった研究人材、成果の紐付けがかなり体系的にできるようになると期待してございます。ここに書いてあるもの、この中に実は、日本版NIHがこれから入ってくるんですけれども、それを除いて考えても国の競争資金全体の8割から9割を押さえることができる仕組みが構築されつつあると、考えているところでございます。
 あとは、参考でワークショップ等の実績の御紹介で、実際に、現場で研究に関わっている方に、このデータ基盤を使っていただいて、例えば、研究費とそれに伴う成果の関連付け、大学ごとのパフォーマンス分析であるとか、発明者の流動性と生産性の関係はどうかという、予備的な分析がかなりできるということが分かってきておりますので、これをさらに政策にも活用できる形で展開したいと考えてございます。
 8ページ目は、将来ビジョンに関する、フォーサイトの取組の1例ですけれども、実際に、文科省の夢ビジョン2020というものが今年初めに発表されましたが、その基礎データとして、過去の技術予測調査、さらには、それをシナリオとして組み上げていくというデータを基礎データとして提供したところ、それがかなり重要な基礎資料として使われているという状況です。あわせて2030ビジョンを作ってみたところ、それが自民党の国家戦略本部などの勉強会で使われるなど、右下にございますけれども、これが政治的にも、いろいろな今後のビジョン作りの一つの材料として議論に使われるということが期待されるところでございます。
 以上のような取組を踏まえまして、26年度は、最低限これを将来持続的に使い得るものに仕上げていくための、最後の仕上げの仕事をしたいと思っておりますが、並行しまして、4月から外部の有識者による評価の作業を予定しております。座長は、経済学の専門家でいらっしゃる若杉先生のもとで、10ページにございますような、産学官・メディアの有識者にも声をお掛けしまして、厳しい目で外部評価をいただいた上で、来年度以降、特に、来年度概算要求をはじめとした、具体的なこの事業への今後の取組方、関わり方について、過去の成果、実績、問題点の厳しいレビューを頂いた上で報告をまとめていただきたいということで、4月から早速評価のプロセスに入ることにしております。年内には最終報告をまとめる予定でございますが、概算要求に向けて、7月までには一応中間まとめをしていただくという前提で、これから評価をお願いすることにしております。以上でございます。

【黒田主査】 
 どうもありがとうございました。以上、進捗の状況を三つのプログラムについて御説明いただきましたが、何か御質問ございますでしょうか。御意見ございますか。どうぞ。

【相澤委員】 
 非常に積極的な活動が展開されていることは、大変結構なことだと思います。一つ質問なんですが、最初の基盤的研究・人材育成拠点についてです。このプログラムの最初から問題になっていた、教育上の共通の基盤を構築していくということが、強調されていました。それはなかなか難しいことであるということで、ここの報告の中のコアとなる教育内容に関する検討、ここで恐らく、それが検討されているんではないかと思いますが、この書き方だと出版物の編集委員会の設置ということだけが強調されています。このコアを強固にしていくという全体の動きについては、どんな状況でしょうか。

【有本教授】 
 今二つあると思ってございまして、一つは、今、先生がお触れになりました、実質的に2年たちましたので、各大学がそれぞれ教育をやっているわけですけれども、自分たちのそれぞれの資料を使って、あるいは教科書を使って、それが横断的に見えてきましたので、統一的なイントロダクションみたいな形になりますけれども、教科書を作ろうということで、今準備を進めております。
 それから2番目は、GRIPSで夏に四、五十人、民間の企業の方も集まってもらって3週間土日連続で、この分野の教育とセミナーをやっております。これは従来は、GRIPSだけで自分たちの教育の方法でやってたんですけれども、他の大学にも呼びかけまして、去年トライアル的にやってみまして、今年は本格的に、カリキュラムを整備をしてやってみようということで、なかなか分野が分散してますけれども、そういうふうに考えております。
 もう一つは、後からまた御説明があると思いますけれども、中核的研究センターを作るということが、今構想にあります。それができますと、私は、意識的に、霞が関の実務者などが集まってもらったような場を設けて、そこで評価セミナー等のトレーニングをやったらどうかということを考えております。以上です。

【黒田主査】 
 よろしゅうございますか。

【相澤委員】 
 はい。

【黒田主査】 
 ほかに何か、御質問ございますでしょうか。

【郷委員】 
 よろしいでしょうか。一つ、資料の1-3の、先ほど2番で新規研究開発プロジェクト第4回の公募ということで御報告があったんですが、これは例えば機関でなくて、個人が応募するということはできるんでしょうか。つまり、かなりの人数がまとまらないとこういうのはできないんだとなると、そう簡単には、個人が応募するということはできないと思うんですが。

【泉センター長】 
 ありがとうございます。基本的に、今ここに掲げてます、16のプロジェクトも研究チームでやっておりまして、代表はもちろんどなたかなっていただくんですが、大学の先生が多いわけですけれども、その下で複数の機関、複数の大学の研究者の方がチームを作って、この課題に取り組んでいくと、大体、全部そういう体制で取り組んでいただいてまして、ちょっと細かい話になるんですけれども、代表の人がその研究プロジェクトにおける、いわばPIになるわけですけれども、実際の研究費のコントラクトは、関連機関全部とやります。一つのプロジェクトについて。

【郷委員】 
 分かりました。ありがとうございました。なぜそれをお伺いしたかというと、サマーキャンプの皆さんが、ここに写っているんですけれども、男性が一番前の列にいて女性は前にいないんですよね。女性が何人か前に出てきてほしいなと思うのと、女性がサマーキャンプに出にくいのかなという気がします。若い方が、いろいろなアイデアを持っていると思うんです。今までの体制じゃないところで、物事を考えている人というのは、今結構若い人とか、女性でいるんです。大きな大学にいない人たちです。ちょっと、語弊がありますけれども。そういう方のアイデアを皆さんにお伝えできるか、それを評価していただくことが大事じゃないかなと。その仕組みを作るということは、ばらばらに、小さな大学とか私学にいる人たちは、結構やりにくいんで、お尋ねしたわけです。そういう人たちを吸い上げる仕組みが何かあってもいいんじゃないかなと思います。

【黒田主査】 
 私も、このキャンプというか、合宿に参加したんですけれども、かなり女性の方がいらっしゃいます。活発に、リーダーとしての女性も何人かいらっしゃるし、参加される方でもお若い方で、非常に活発に議論をされている方がいらっしゃいますので、それは必ずしも門戸をクローズドしているというよりもオープンにしているとお考えいただいた方がいいと思います。よろしくお願いします。

【郷委員】 
 ありがとうございました。安心しました。

【黒田主査】 
 ほかに何かございますでしょうか。

【有信委員】 
 よろしいですか。

【黒田主査】 
 どうぞ。

【有信委員】 
 政策研でやっている2020年、2030年のビジョンを作るって、すごく重要だと思うんだけれども、ビジョンを描くときに、これは、バックキャスティングのベースになるような形として描こうとしていて、これはこれで正しいやり方だと思うんだけれども、結局、フォアキャスティングとバックキャスティングをどういうふうにないまぜるか、つまり夢物語を描く必要があるんだけれども、その夢物語がどれぐらいの形で実現可能性があるかという観点からすると、やはり、現在のフォアキャスティングの部分で、これをどの方向にねじ曲げていくかという、ねじ曲げるという表現は正しくないかもしれませんけれども、少なくとも科学技術という観点からすると、科学技術自身は、基本的には科学技術のディシプリンに従って、どんどん進歩していく。ロードマップのような試みもいろいろ予測としてやられているわけです。それは、いわば独自に科学技術自身のディシプリンで進む方向なんだけれども、本来は、これをある種の2020年、2030年のビジョンに合わせて方向付けをしていかなきゃいけないという部分があって、方向付けをすることによって、いわば科学技術そのもののジャンピングの方向も出てくる。ただし、それも無意味なジャンピングというか、不可能なジャンピングは、当然のことながらできないわけで、この辺のところのビジョンの描き方のときの観点のようなものを少し教えていただけると。

【斎藤総務研究官】 
 今、御覧いただいている資料1-4の8ページ、左下に出ておりますけれども、政策オプションの検討のトライアル的な作業を昨年度、ほぼ1年間かけてやってまいっております。具体的なトピックとして、ちょっとスペシフィックに思われるかもしれませんが、糖尿病というテーマを選んでおります。これは、がんとか認知症のように、既に政府全体のレベルでいろいろな戦略とか、その実現に向けたロードマップ作りの議論が進んでいるものはそちらに任せておいて、少し、この政策のための科学の例題として取り上げるのにふさわしい、そこそこの広がりがあり、かつ社会的インパクトとか、QOLの低下、さらに、生産年齢人口に対する影響が非常に大きいと言われる糖尿病というテーマについて、試行的に分析を行った例がございます。これにつきましては、最初にシナリオをいろいろな幅広い専門家の中でまず議論しました。ワークショップの形で議論をして、いわばバックキャストの前提となるような将来のゴールなり、目指すべき姿というのを、例えば、糖尿病の場合で言えば、予知、予防、診断と治療というフェーズがあるんですけれども、どこに力を入れると、どういうことが起こるのかということを、ある程度シナリオとして見極めていくという作業をまず第1段にいたしまして、今度は、ただそれに伴っていろいろな課題のリストが出てまいります。技術的な課題、制度的な課題、それぞれについて今度はある程度専門家を動員して、昔風に言うとデルファイになってしまうんですけれども、それも、例えば最近はオンラインで、Webの形でアンケートを繰り返しやることによって、今までの紙と鉛筆でやっていた時代に比べると、1年近くかかっていたものが一~二か月でできるということで、いろいろな年代の見極めとか、あるいは今後のビジョン作りの作業を、かなりスピーディーに進めることができます。具体的に、この糖尿病の場合には、糖尿病学会の関係者1万数千人に声を掛けまして、2千数百人の声を得て、今度は、非常に、余り絵に描いたような餅と言いましょうか、ジャンプのない、地に足の着いたビジョン作りが第2段階としてできるということで、一応、今最終的なシナリオ、年代も張り付けたストーリー作りを作業として進めております。間もなく報告書として出せると思っております。ただ、これは一種のトライアルでありまして、同じような作業なりプロセスというのを、今ちょうど、新しいタイプのフォーサイトとしてシナリオ・プランニングワークショップを幾つかやりながら、それによって、バックキャストの前提になるゴールとか、前提認識をみんなで共有した上で、今度は専門家によるパネルを作って、年代を張り付けた、もう少しリアルな絵を描いていく、2020~30年に向けての絵として仕上げていくという作業が、まさに今進んでいるところでございます。
 ただ、その際に、やはり、ゴールの設定の仕方にもよるんですけれども、非常に学際的な問題が、次々出てまいります。そうすると従来パネルを作るときに、どうしても分野別のパネルとなってしまって、情報通信の専門家、環境の専門家、こういうところがばらばらに予測をすることになりかねないんですが、それをもう少しインテグレートして、ある程度共通のビジョンを作る、あるいは縦の絵を描きながら、横串を通して、一種の横串で一つ整合性の取れたストーリーなり、オプションを作っていこうという作業を、今並行してやっております。いわば縦と横の糸を張っていくような作業を、これからまさに進めていこうと準備しているところでございます。その少し分かりやすいところを切り出して、2020~30年のビジョンの形でお出ししたんですけれども、ハイライトだけですので、まだストーリーが見にくい面があったかもしれません。それはこれから是非作業をしていきたいと思っております。

【有信委員】 
 ストーリーは、多分そのとおりでいいと思うんだけれども、やはり、気になるのは、あんまり緻密にやると、足が地に着き過ぎるし、余り乱暴だと絵に描いた餅になってしまう。
 現実に、例えば、今世の中に出ている様々な製品にしても、大体10年ぐらい前に、大きな方向付けを出しているんです。その方向付けに沿ってそれぞれの人たちが努力をした結果が、今やっと周りの環境条件がそろって非常に多彩な製品群として展開をされるという状況になってきていて、その全体が共有できるようなビジョンをいかに全員に持たせるか、例えば、糖尿病であれば、そのときのビジョンをいかに持たせるかって、とにかくメインストリームだけにこだわると、非常に限られた話になってしまうので、是非、そういうことを含みながら進めていかれるのがいいかなと思います。

【相澤委員】 
 よろしいですか。

【黒田主査】 
 はい。

【相澤委員】 
 同じく、政策研についての質問があります。博士人材データベースの件ですが、これが極めて重要であることは当然であって、そして、これを非常に積極的に進めていただいているのは、大変結構なことだと思うんですが、この中に多様なキャリアパスに対応しという表現があります。これが、データベースの持つ重要な側面だと思うんです。特に、RU11を対象にして進めている場合に、今広い意味でのリサーチアドミニストレーター、この人たちの将来展望を含めたキャリアパスの構築です。これが、極めて大切なわけです。というのは、例えば、大学に例を取れば教員系の人事と、それから事務系人事の狭間に入っている。そういうところにしっかりとしたポジションが構築されていくということが極めて重要です。と同時に、博士人材が、そういうところにも大きな関心を示して、積極的にプロフェッショナルなフィールドとして捉えて参入していく。これが基本であろうかと思うので、このデータベース構築のときに、今のようなことが含まれているんではないかと思われますが、どういう基本的な進め方でやっておられるのかを伺いたいと思います。

【斎藤総務研究官】
 ありがとうございます。この博士人材のデータベースについて、大学単位をベースにしながら、どういうふうに、なるべく今御指摘のあった多様なキャリアパスを念頭に置いた卒業生の現状といいますか、それがどうトレースされるかということを、今いろいろな専門家を交えて議論しています。産業界の経験をお持ちの方にも入っていただいていますが、御指摘のとおりURAというのは、非常に新しい重要なキャリアパスとしてクローズアップされつつある一方で、まさしく研究者と支援者の狭間に落ちるおそれのある職種であります。特に、URAの危機意識も非常に強うございまして、任期制のキャリアを重ねていくというのが標準のパターンになるわけですけれども、中にはテニュアをとって一流の研究者を目指したいという方もおられると認識しております。そのあたりは、今現状でいくと、大学全体の仕組みがちゃんと押さえられないと、そういうところが抜け落ちてしまう。どうしても、例えば、ReaD&Researchmapなどに登録している研究者として独り立ちしつつある方については、多分、この仕組みがなくても、例えばJSTやNII(国立情報学研究所)のいろいろなデータとして積極的に自分でデータを発信していくことが期待されますが、URAの場合には、なかなかそういうことも期待しがたい状況です。その場合に、我々としても、是非、特定の学部とか、いわゆる教員、教育・研究部門の人材だけを押さえるのではなく、全学的な体制としてちゃんと作りましょうということで、今、RU11等で話をしていますのは、主として学長とか副学長のレベルですので、URAステーションを含めた方々が、この仕組み作りに参画してくれていると考えています。
 一方で、URAにとっても、仕事の種として学内の人材がこれからどういうふうに羽ばたいていくかというのは、例えば総合的な研究力を考えていく上では、非常に重要な要素です。URAにとっても有用な情報になりますので、いろいろな意味から、URAの方々にも是非これを使っていただいたり、彼らのキャリアパスをより有効に開けるような形でデータベースを構築していきたいと思っております。
 特に、企業に行った方が、どうしても行方不明になる可能性が高いと言われております。そういう点では、これから、主として、ポスドクをたくさん雇っているような産業界、例えば、経団連であるとか、産業界の関係者にも、このデータベースなり、その仕組みの有効性を理解いただいて、優秀な博士人材を採用する際の手掛かりにしてほしいとか、あるいは自社にいる卒業生がメンターとして、後輩に指導するような、そういう仕組みを是非入れていきたいと考えております。

【黒田主査】 
 どうもありがとうございました。
 まだ、御議論が多分いろいろあると思うんですが、次の二つも、多分関係が出てくると思いますので、委託事業で進めた二つについて、御説明をいただいてから、また御議論をさせていただきたいと思います。
 最初は、政策オプション作成に資する社会的・経済的影響分析手法を試行してみるという、三菱総研が受託をされました研究につきまして、三菱総研から、尾花さんにおいでいただいてますので、7分程度で御説明をいただきたいと思います。

【尾花(MRI)】 
 ありがとうございます。では、御説明をさせていただきます。資料1-5で御説明したいと思います。当社が受託しました調査では、政策目標の達成に際して、複数の政策手段が考えられたとき政策選択をエビデンス・ベースで行うための議論の素材として、政策パターンごとに目標達成度とその社会的・経済的影響を比較する指標をともに示すことを実際に試してみようというところで予知・予防を重視した健康長寿社会の実現、具体的には、糖尿病を例に政策オプションを作成することにチャレンジした取組でございます。
 実施内容は、2ページ目の下に書いてございますが、政策パターンの社会的・経済的影響の評価手法の構築。大きく三つから構成され、基盤データの構築、糖尿病の状態別患者数・医療費の推計手法の開発、それに基づく経済的影響の分析手法の開発を行いました。あわせて政策パターンの組成ということで、これは、技術シナリオ、社会シナリオをベースに政策パターンを組成しました。これら二つを組み合わせた上で政策オプションを作るということにチャレンジしたところでございます。
 具体的に実施したことを、3ページ目のフローを書いております。先ほど大きく五つ申し上げましたが、基盤データの整備というところですが、ここでは、今まである既存の産業連関表を、医療や研究開発の活動ベースの投入構造や産出構造をベースに産業連関表を作り変えること、あと、各産業で形成される、知識資本ストックの陳腐化・懐妊期間を把握して、実際にそれを推計するということを行いました。
 糖尿病の状態別患者数・医療費の推計手法では、実際に、レセプトデータを2万人以上取得いたしまして、そのデータをベースに糖尿病の患者が重症化する確率というものを、遷移確率と名付け、これを推計するという取組を行いました。
 並行して、政策パターンの組成ですけれども、これは、NISTEPの方で実際に行っていらっしゃる、専門家ワークショップでございますとか、検討の成果を基にどのような技術が開発されるのかというシナリオをベースに政策パターンを作成いたしました。これらの三つをベースに、経済的影響の分析ということで、具体的には、知識ストック、就業可能人口、医療費の変化がどのような形で経済に影響を与えるのかということを推計するモデルを構築し、最終的に政策オプションを作成したというところでございます。
 続きまして、4ページ以降から、具体的に何を作ったのかということを、主に図を中心にしながら御説明申し上げていきたいと思います。一つ目、基盤データの整備でございます。下の図を御覧いただけますでしょうか。左側の産業連関表の図でございます。これ分かりやすく説明すると、縦側は投入、どこから物を調達するかと、調達部門が書いておりまして、左側の行の方が、どこから物を買っているかという表でございます。経済学では基本的なツールですが、今までは、このツールが、医療の部分ですと、国立大学とか民間医療法人などになっていたところ、予知、予防、診断という形で活動をベースに、実際にどういう投入、調達を行っているのかということを明らかにしたり、その右側に赤い丸がございますけれども、固定資本形成のところで、企業内R&Dがどれぐらいの固定資本形成をしているのかというところを表現するような表を作ったりということを実施したところでございます。
 続きまして、5ページ目になります。糖尿病状態別患者数・医療費の推計方法の開発のところでございます。こちらは、先ほど、重症度と申しましたが、実際に、レセプト、これは保険診療を行った医療機関が、患者の診療報酬を保険者から請求する際の明細書ですけれども、明細書ベースで観察しようとしますと、どのぐらい病態が重いということを把握することは、非常に難しいということで、今回は受療状態、ステートということで、どんな治療を受けているかということで、患者の状態を分割してモデル化いたしました。イメージの図が下にございます。上からステート、正常高値、ステートP、健診異常所見者、ここからが、次のステートS1、糖尿病で投薬されてないけれども、病院にかかっている方、投薬しているけれども、非インスリンの薬を投薬されている方、投薬をしているけれども、インスリンを使っている方、合併症、人工透析、これらをレセプトデータから分析して、実際に、どれぐらいの確率で遷移していくのかというところを分析、モデル化したところでございます。
 この横に三つの技術が書かれております。予知マーカー、再生医療、ICTによる保健指導・生活習慣指導です。改善指導の高度化というのがございますが、本調査研究では、これらの技術が入れば、どれぐらい遷移確率が変化し、患者様が減るのかというところを推計するモデルを構築したところでございます。ここの技術については、後ほど詳しく御説明したいと思います。
 実際に、推計した結果はどうなったのかというのが、次のページ、6ページ目でございます。先ほど、三つの技術を入れたら患者数がどう変わるかというお話だったのですが、これを五つの政策パターンで考えてみました。下のグラフを御覧いただけますでしょうか。政策パターンというものがございます。全ての技術の開発支援に投資をした場合、予知マーカーだけ重点的に投資した場合、ICTによる指導技術向上だけに投資した場合、再生医療技術だけに投入した場合、政策を何もしなかった場合の五つのパターンを考えて、糖尿病の患者の数が、どうやって変化をするかという推計した結果が、このグラフでございます。端的に、結果だけ申し上げますと、パターン1の場合、総患者数が50万人、2030年度までには減るであろうと、これは何もしなかった場合と比較してということでございます。あと、重度の糖尿病患者様、これは透析とか受ける患者ですが、それは10万人ほど減るだろうと、医療費ですと、約1,590億円が抑制されるだろうという推計結果が出てきたところでございます。
 このときに、政策パターンと書いてありますが、どういうふうに検討したのかというのが、7ページ目のところでございます。実際の検討は、ちょうど真ん中に図がありますが、三つの要素を勘案しながら行いました。技術シナリオ、社会シナリオ、政策手法というのが書いてございますが、技術シナリオは、先ほど申し上げましたとおり、NISTEPの検討結果をベースにしております。社会シナリオに関しては、75歳まで就労年齢は上昇すると想定して計算いたしました。政策手法、研究助成とかいろいろあるのですが、今回は、集中投資をした場合ということで、今回は、簡明な想定をさせていただきました。その下で、下にあるような表、例えば、政策パターン1であれば、仮に300億円投資をしたとして、全て実現した場合とか、政策パターン2、予知マーカーの場合ですが、100億円投資して、2020年頃実現して、普及割合というのは、その患者様のうち50%ぐらいに普及するだろうなどと考えたところでございます。このようなものを仮説で置いて、推計を行ったところでございます。ちなみに、20年後の実現というのは、これは実現の時期ですけれども、ここのところを、まさにNISTEP様の研究成果等を活用させていただいたところでございます。
 続きまして、8ページ目でございます。経済的影響の分析です。こちらの方ですが、今回行いましたのは、多部門経済一般均衡的相互依存モデルという、ここでは難しいので細かい説明は割愛させていただきますが、図のイメージにありますとおり、就業可能人口、医療費、政府R&Dをインプットとした上で、GDP、その他経済変数をはじき出すモデルでございます。これを、政策を実施した場合、実施しない場合で比較したという推計を行ったところでございます。
 駆け足になりますが、この結果が実際にどうなったのかというのが10ページ目になっております。これも先ほどと同じ政策パターンで、全て出しております。当然、三つの技術を同時に実現したという場合は、やっぱり一番効果が多く出ております。具体的には、実施しない場合と比較して、実質GDPベースで2,554億円のGDP増があるだろうということです。これは働ける方が増える等々の効果の結果であります。その後、パターン2の場合はそれに対して66ポイント、パターン3の場合は33ポイント、パターン4の場合は2ポイントという比較になっております。ここで比較値を出しましたのは、今回の分析精度で申し上げますと、絶対値はどちらかというと参考値としての扱いでございまして、どちらかと申すと、この比較値というところが重要であろうということで、比較値の方を重点的にお示ししたというところがこの結果でございます。
 ここまでの結果を最後の表にまとめたのが、11ページ目の表になっているところでございます。作成した政策オプション、政策オプションごとに、表をごらん頂きますと、1、2、3、4、実施しない場合は書いてございませんから具体的に四つございますけれども、それぞれごとに投資額が大体どれぐらいで、その場合は社会的影響がどれぐらいで、経済的影響がどれぐらいだということを一覧できる表でお示ししたものです。
 この結果から分かることは、当然、全ての技術を投資した方が、患者数とか医療費が抑制になるのは当然ですけれども、今回分かったところというと、例えば政策オプション2でありますとか3、要は初期段階で患者様の治療に役立つ、予知・予防に役立つ技術が早めに実現されれば、当然、GDPとかそういう点で効果があるということで、上流で対策を打つことが効果的ということが、今回、試行的ではございましたが、分かったという結果になっているところでございます。
 以降、12から13は参考値ですので、ここでは御説明を割愛したいと思います。
 最後、14ページ目、15ページ目の結論と今後の課題というところです。結論でございますが、今年度の研究で、一つ申し上げることができるのは、R&D投資(公的、民間、企業内)が知識ストックに与える影響と医療分野における政策オプションの作成方法のプロトタイプは確立できたのではないかと。その中で、研究開発の投資やストックの可視化であるとか、レセプトデータを用いた推計でございますとか、様々な政策変数を入れることでシミュレーションが可能な経済予測モデルができるということが、このプロトタイプの特徴であったと考えているところでございます。
 実際に政策オプションが四つできたわけでございますが、実際に分析することもできました。実際、今回のところでは分析精度面でやや問題があるところは全然ないわけではございませんでして、例えば産業連関表に関しては、実際に医療部門に事細かに実態調査を行った結果をもとに推計すべきところを、既存の統計調査で推計したところとか、用いたレセプトデータは組合データであり、全国民データを使っていないというところもございますので、こういう点では分析精度にやや問題がある、課題があるというところは御承知頂きたいと思うところでございます。
 最後、短い時間で恐縮ですが、今後の課題を大きく4点ほどお書きさせていただいております。政策パターンというものと、社会的・経済的影響の評価手法というものを緊密に結び付けていくためには、「政策パターンの細密化」というのと「分析の精度向上」というのは切っても切れないものですし、それをすることによって、有効かつ有益なものになるのではないかというところです。
 一つ目は、政策手法による投資額や社会的・経済的影響の差異を分析する手法を構築することで、もっと頑健で緻密な政策パターンの検討が可能になるのではないかというところでございます。
 もう一つが、多様で、かつ説得力のある政策シナリオの作成機能を強化することで、より合理的な政策オプションの作成と評価が可能になる、これはNISTEPさんの方でやっていらっしゃるバックキャスティングを入れた手法でございますとか、そのための情報収集・整理・分析体制を構築するなどということが挙げられるのではないかというふうに考えているところでございます。ここまでは政策パターンの細密化ですが、残り二つ、これは分析精度の向上という点です。研究開発投資の効果分析に必要なデータ基盤の整備というところは、今回医療分野における研究だったのですが、いろいろデータ面での制約があり、限られたデータでの分析になったわけでございます。例えばナショナルデータベースのような完全データを利用した推計等を行うことによって、より高い精度の分析を行えるようになるのではないのかというところでございます。
 駆け足でございますが、以上でございます。

【黒田主査】 
 どうもありがとうございました。御質問がありましたら後からいただくことにしまして、もう一つの委託事業、政策研究大学院の方にお願いいたしました、「政策のための科学」の推進に向けた試行的実践、有本先生からお願いいたします。

【有本教授】 
 お手元の右上の資料ナンバー、1-6でございます。平成25年度の文部科学省の委託で、試行的実践ということが大事だと思います。1枚おめくり頂きますと、1ページ目、GRIPSが文部科学省から受託をしまして、昨年12月から今年3月ということで、実質的には三か月ぐらいでございました。全体の枠組みとしましては次のページの絵が、2ページの下、図の1の本調査研究の全体像、三つの大きな柱にしてございます。先ほど来御議論がありました、政策課題というのをどうやって設定するんだということを、短期間でありましたけれども、内外の手法というものを文献調査や往訪調査、あるいは海外の人にこちらに来てもらっていろいろ議論をする、それから、研究会も開かせていただきました。
 それから、真ん中の2ぽつでございます。特定政策課題についての政策シナリオと政策オプションの検討ということで、期間が短かったものですから、暫定的に課題1から4を選びました。課題1が国際ビッグプロジェクトの推進の在り方、課題2がデュアルユースのプロジェクトの推進の在り方、主として、今政府で行われていますImPACTとか、そういうものをどうやったらいいんだということ。それから、課題の3が科学技術外交の戦略と推進。それから、課題の4がオリンピックに向けての科学技術面での検討ということを仮定しました。後から御説明します。
 それから(3)が右でございますけれども、政策形成プロセスの在り方の検討。ここにありますように、いろんな事例をピックアップしてございます。その上で、全体を、こういうものを積極的にやる場合にどういう課題があるかというようなところをまとめてございます。このサマリー、この内容自身はまだ暫定的でございますけれども、次の資料、3ページでございますが、表1に研究会の一覧ということで、短期間でございましたけれども、非常にインテンシブにいろんな関係者にお集まり頂きまして、二十数回の、さっき申しましたそれぞれの大きな柱ごと、それから、ビッグプロジェクト、デュアルユースの問題、科学技術外交、それからオリンピックという問題について、関係者の研究会も開かせていただきました。
 その上で、4ページからが調査結果の概要でございます。非常に簡単にまとめてございまして、多分、出来上がりは四、五百ページぐらいになるんじゃないかと思いますけど、私、個人的な思いですが、これを1冊読めば、大体この分野の今までのいろんな活動全体が見え、理解できる。これは研究者のみならず実務者にとっても非常に大事だと思ってございますので、そういう形でしっかり今後まとめていきたいと思ってございます。
 まず、4ページの5-1が政策課題の設定手法に関する検討ということでございます。これは、(1)欧州の、HORIZON2020のあの大きなプログラムを設定するに当たっては、いろんなワークショップなどを繰り返しやってございます。それから、イギリスのForesightの活動。(2)で、アメリカのエネルギー省の研究開発戦略の手法、それからアメリカの科学アカデミーの円卓会議の方法。先ほど有信先生がおっしゃったForesightと、それからバックキャストとしてどうやって科学技術の課題に落とし込むかというところで、アメリカのエネルギー省の在り方というのが一つの参考になるんじゃないかというふうに思った次第でございます。それから、RISTEX、社会技術センターのやり方。(4)に、先ほども出ていますけれども、NISTEPのやり方。(5)が、これは特徴がありまして、今年の1月に、文科省から発表された「夢ビジョン2020」でも使われてございますけれども、RISTEXの課題の一つとしてやっている手法がございます。これも、ここに紹介をしてございます。それから、(6)では、慶応大学でユニークな取組をやってございますので、これも取り上げた次第でございます。
 ページの6でございます。今、本文は10ページか20ページぐらいずつで、こういうものをいろいろまとめつつあります。(7)にありますように、とりあえずのものとして、課題、要件としてはどういうことがあるかということで、黒ぽつの1、時間がありませんので詳細は省きますけれども、課題の設定に当たっては、政策担当者と研究者、利害関係者の、当然ですけれども、初期からの参画が不可欠である。初期だけではなくて、こういう課題、あるイシューがおぼろげになったときだけではなくて、日頃からのネットワーク、それから信頼関係というものが非常に大事になるだろうということ。
 黒ぽつの2番目が、課題といっても様々な大きさがあります。政策レベルといいましょうか。それから、4番目にありますけれども、今度、課題といってもその課題を解決するための時間というものをしっかり考えていく必要があるということで、黒ぽつの4の、小さな黒ぽつに書きましたけれども、数か月単位のようなラピッドレスポンスのもの、それから、一、二年ぐらいのもの、それから数年を要するものということをきちっとイシューとして設定する場合の、空間と時間といいましょうか、大きさと時間というものを常に認識しながら、関係者がやる必要があるだろうということでございます。
 次に、10ページからが5-2で特定課題、先ほど申しましたけれども、国際ビッグプロジェクト、それからデュアルユースの問題、それから科学技術外交、オリンピックというものを暫定的に設定しまして、政策シナリオと政策オプションを検討。ここでは、少し長文でまとめてございますけれども、国際ビッグプロジェクトの推進の在り方ということで、いろんな視点が重要になるだろうということを掲げてございます。
 次に、絵を描けということで、国際ビッグプロジェクトも、今、先進国主導型から、どんどん途上国も最初からインボルブするというような、トランスフォーメーションが起こってございますので、そういうことにも言及したいと思ってございます。
 12ページにデュアルユースの問題。これはかなり苦労しましたけれども、アメリカのDARPAのプログラムマネージャー等の経験者、あるいはこういうプログラムを議会側で立法した方々を含めて6人ほど、急遽、お呼びしまして、その上で1日掛かりでいろんな議論をいたしまして、その結果がここに書いてあるところでございます。
 14ページに参りまして、3番目の課題の科学技術外交の戦略的な推進。これは30ページ以降、また詳細を書いてございますので、後から是非お読み頂きたいと思います。真ん中にありますように、まず今までの事業をレビューする必要があるだろうということで、JSTがやりましたもの、それから旧振興調整費でいろいろやられているもの、それから、民間の非営利団体がやっているものということで、それらの事業のプログラムマネージャーなどをやられた方々にお集まり頂きまして、いろんな課題を抽出してございます。14ページ下にまる2で、1から7項目ぐらい整理をしつつあるところでございます。近々、科学技術審議会の国際の委員会にレポートをして、御議論を頂こうというふうに思ってございます。
 それから15ページに、オリンピック2020への科学技術面での検討ということで、先ほどNISTEPのいろんな、Foresightの活動が貢献したということでございます。さらにRISTEXのプロジェクトも非常に貢献している。引き続き、大きなビジョンから技術課題を絞り込んでいくということで、今後、検討が進むと思ってございます。
 17ページに、どういう課題があるかということで、暫定的なものでございますけれども、先ほどとちょっと似ていますけれども、どれぐらいの時間でこれをやる必要があるのか。オプションまで作るということで、感じておりますのは、こうした活動は普通の大学ではできない、一種のシンクタンク的運営です。課題によっては様々ですが、既存のいろんな知識とかデータをぱっと集めて、早くレスポンスするというような仕組みを相当意識的に作る必要があるのではないかというふうに感じております。それから、常にそういう動員ができるようなネットワークを日頃から作っておくということが大事ということが一つの大きな課題と思っています。
 18ページ以降はオプションの形成とそれらを行政とか政治につないでアクションを起こしていくというステージとしてどういう活動があるかということ。ここでは四つほどにカテゴライズしました。第1に分析的な方法。先ほど、三菱総研から御説明がありましたもの、それから、一橋大学が今やっておられる(2)、(3)では九州大学が地域の行政といろいろ協働しながらやっておられるもの、(4)では拠点校の一つの京都大学が医薬政策に寄与する経済分析の手法ということで、事例でいろいろやっておられるというものを紹介してございます。それから(5)に、隣においでの桑原先生がやっておられる大学のベンチマークとガバナンスのリンクというテーマでございます。
 5-3-2の科学と社会・政治・行政とのブリッジングというところ。GRIPSとCRDSとがやっております科学助言、これは世界的に物すごくスピード速くやっておりまして、今年夏のオークランドの会議、あるいは来年のOECDの閣僚会議でもアジェンダになるということでございますので、こういう課題の作業。それから、リスクコミュニケーションということで、大阪大学の今までの経験、それから今後のやり方。それから、東京大学がやっておられるJointFact-Findingというのがいい成果を、これはRISTEXのサポートでございますけれども、上げてございます。
 9番目は、科学と社会のバウンダリのところでのオーガニゼーション、ファンクションということで、阪大を中心に、今、欧州が非常に効果的にやっていますので、これを調べてございます。それからフューチャーセンター。
 5-3-3は、科学アカデミーのいろんな動き。アメリカ科学アカデミーの、今、ハリケーンとかメキシコ湾岸の原油流出、福島原発事故も含めて、どういう形で社会が直面する問題にアカデミーとして取り組んでいるのかということ。アカデミーの担当の方を、こちらにおいでになってしっかり聞いたところでございます。それから、12番目がヤングアカデミーの活動状況でございます。
 5-3-4、政策形成プロセスにおいて、その関係者が歴史的な視点、あるいは歴史的な思考力というものをしっかり持っておく必要があるだろうということ。あるイシューについて、それがどういう経緯であったのかということ。NISTEPが3月にワークショップをやりましたときにも、この視点で、非常にいい議論があったというふうに思ってございます。
 それから、14は特許行政でのITと特許審査の方法との共進化というものを掲げてございます。それぞれの詳細は、25ページにビッグプロジェクト、28ページにDARPA型、30ページに科学技術外交、それから35ページから、課題の設定の構造と作成の構造というものを掲げてございます。
 全体として非常に短期間でございましたけれども、現在、三十数ページに中間的にまとめてございますけれども、さっき申しましたように、これをベースにエグゼクティブサマリーにしてまとめ直し、同時に、本文は四、五百ページぐらいになると思います。できるだけオリジナルなデータも添付した方がいいんじゃないかと思ってございます。研究者だけじゃなくて、今からの科学技術行政、イノベーション行政をあずかる実務者の方も知っておくべきという視点でできるだけ抽出したもので、まとめていきたいというふうに思ってございます。
 最後に、こういうことをやるに当たっては、全体のマネジメント、それからシンクタンク的なやり方、こういう視点で人材の今後の配置、あるいは資金管理体制というもの、あるいは常日頃からのネットワーク、あるいはプラットフォーム作りが非常に大事になるんじゃないかというふうに思った次第です。
 以上でございます。

【黒田主査】 
 どうもありがとうございました。
 二つの委託事業でございますけれども、非常に短期間の間に、精力的にやっていただきまして、今までのSciSIP全体の成果が取り込まれているんじゃないかという気がします。
 何か御質問がありましたら、何でも結構ですが、いかがでしょうか。

【土屋文部科学審議官】 
 今、黒田先生がおっしゃられたように、この二つの調査報告書は、これまでの議論全体を踏まえて、トータルな形で整理していただいておりまして、大変有用情報だと思うんですが、三菱総研の方でやられた調査についてなんですが、トライアルということではあっても、全体通して形にしていただいたのは、大変ありがとうございました。
 その中で、ちょっとよく分からなかったのですが、産業連関表というのは、インプットがあって、アウトプットの形で出てくると思うんですが、それを、アウトプットというよりも、むしろその効果が、これはどういうんですか、活動ベースの部門に変更したとさっき御説明されたんですが、その意味がよく分からなかったので教えていただきたいのが1点目です。
 もう一つは、知識ストックのところが、我々、科学技術をやっているといろんな知識がストックされることによって、新たな論理とか新しいイノベーティブなことが起こるだろうというふうに考えているんですが、見ると、知的ストックが陳腐化するというところは確かにおっしゃるとおりで、新しいものが出れば前のものは要らないということになるんだろうと思うんですが、プラスの効果、ポジティブな効果は、さっき申し上げたようにあるはずだろうと考えているんですが、それは今回、どういうふうに取り扱われたか、時間が短かったのでなかなか難しいと思うんですが、そのポジティブなことを取り扱うとすれば、今後、どうしたらいいかという、そのあたりどうお考えか、教えていただければと思います。お願いします。

【尾花(MRI)】 
 まず、前半の活動ベースのところ、省いて御説明して恐縮でございます。産業連関表でございますが、既存の表というのは、例えば医療部門でございますと、国立大学とか民間病院とか、その病院が実際に活動を行うときにどういうところから資材を買っているのかということを表した表でございます。そのようなところに、例えば予知・予防技術が開発されたとなったときに、ある意味、国立大学はどういうふうに調達したのかということしか、今の表は表せないわけでございます。それを、予知・予防する際にどういうふうに調達をしているのかという表に作り替えたことになりますので、予知・予防の技術が上がって、そこのサービスが上がれば、どこから買うかというのが、ある意味、きれいに見えるような表の形で、今回、作り替えさせていただいたという形になるわけでございます。
 当然、もともと大学の中に、国立大学にお金を入れても、その調達構造は見えるわけでございますけど、それをある意味、活動に変えたことで、予知・予防に投資したならば、実はこういうふうに調達、外から物を買う構造が変わってくのだと。あと、予防となればこういうふうに調達構造が変わるのだ、診断をやればこういうふうに調達方法等が変わるのだということを、分かりやすく、国立大学というくくりを活動ベースに全部置き替えて、調達構造を全部置き替えたという形になるという形でございます。

【土屋文部科学審議官】 
 分けられるぐらいデータがあるんですか。

【尾花(MRI)】 
 今回、かなり強引ですけれども、既存の統計をうまく使いながら分割をしていったという形になってございます。

【土屋文部科学審議官】 
 相当割り切って。

【尾花(MRI)】 
 そうですね。本来であれば、そこは例えば医療機関とか、大学病院等に、数多くの機関に聞きながら、調達構造がどうなのかということを積み重ねた調査は是非やりたいところであったのですけれども、今年は半年近くという短い期間でしたので、そこはかなり大胆にやらせていただいたというところでございます。

【土谷(MRI)】 
 2点目に御質問頂いたR&D投資の蓄積がどういう効果をもたらすかというところなんですけれども、この計算モデルの中に、企業の生産活動を表すような生産関数というものが入っておりまして、その中でR&D投資が蓄積されていくと、それによって企業の生産性が向上すると、そういった要素が入っています。
 実際に、この資料の中でも12ページ目に、各産業別、これは政策パターン5と1の比較で、何もしなかった場合に比べて、政策パターン1をやると2030年時点で産業別の生産額がどこまで変化するかといったところを追ったものですけれども、基本的に、全体プラスになっているというところがございまして、これはこういった生産性の向上が各産業に効いていって、それが波及していくといったところが生産の向上につながっていると、そういうところでございます。
 医療関係がややマイナスになっているのは、当然ながら医療費が減っていくというところがありまして、若干、産業構造が変わっていくといったところがこのモデルでは見られるというところも特徴かなと考えております。

【黒田主査】 
 よろしゅうございますか。
 ほかに何か御質問、どうぞ。

【有信委員】 
 三菱総研の研究は非常にいい具体例を出していただいたと思っているんですけど、ただ、具体的な政策で、例えば糖尿病を取り上げたときも、予知・予防というのは極めて精緻に、医学的に予知ができて、予防ができなければいけないという、こういう前提から、例えばBMI、そういうものを測りながら、極めて乱暴に、そのことによってその数値を改善する制約を与えることによっても、間接的にそれなりの効果があるということがあり得るわけですね。現実に、かつてアメリカでは肥満している人は出世できないという、極めて分かりやすい指標で、みんな夕方になるとスポーツジムに行って走っていたという事例が実際には起きたり、みんなそろってジョギングをやるとか、こういうものそのものが、ある意味で統計的に追いかけると改善効果がありますよというような、極めて学問的に精緻にそれを追いかけるという部分と、政策的に言うと、学問的には少々荒っぽくても、政策的に効果がある方法というものとの差があるわけだと思うんです。その辺はどういうふうに考えてやっていくのかなというのは、どうするんですか。

【尾花(MRI)】 
 ありがとうございます。実は、今回のときにも似たような議論が出てまいりまして、NISTEPさんが開催されたワークショップの中でも、初めは再生医療でございますとか予知マーカーという話が非常に出てきたのですが、実は、健康改善のための指導が一番効くんだみたいな御意見が出てきて、それが実は選択肢の中で、それだけですとおもしろくないので、ICTという言葉を入れました。ICTによって健康改善が進んだらというふうに、今回は設定させていただきました。
 ただ、実際、今回分析結果を出しましたとおり、実際の政策に比べると大ざっぱかもしれないのですけど、いざ効いてしまうとかなりの効果が出るという今回の結果が出ておりまして、数字の例で申し上げましたが、例えば11ページ目のところですけれども、ここで申し上げます政策オプション3に当たるところですけれども、ここで一番上がるのは予知マーカーの技術が、実質GDP比でいきますと、何もしない場合でいけば1,691億円ですが、ICTによる指導技術、その健康指導をすることでも853億円ということで、ポイントでいくと、全てをやった場合の3分の1とはなりますが、それなりに効果があるという結果が出ております。ですので、当然、ある意味それは社会技術的なところかと思うのですが、そういうところも組み入れながら議論していくことが重要だというところが、今回の黒田先生、出口先生から御指導いただく中で発見できたことであろうと感じているところでございます。

【黒田主査】 
 いかがでしょうか。ほかに何かありますか。

【森田委員】 
 大変おもしろい研究結果を聞いたと思いますが、感想だけ述べさせていただきますと、一つは、RISTEXの公募プログラムをやっていても、心配といいますか、気になるところなんですけれども、いわゆるイノベーション政策、科学技術イノベーションのための政策の話なのか、政策一般の科学のための話なのか、ここでもずっと繰り返されておりますけれども、それが永遠の課題として、残っているなということです。広く政策のための科学として考えたときに、随分参考になる成果であると思います。
 2点目は、これは実際に、私自身、医療費を決定する方にも関わっているわけですけども、そのときの印象として申し上げますと、要するに、科学的な知見に基づく政策決定といいましても、必要な情報が、必要な時点で全部集まっているわけではないのでありまして、実際の政策決定という場合には、あるタイミングでもって不確実な情報の下で何を決めて、それを最大限合理化するかという話だと思います。
 その意味でいいますと、不確実性に対する対応の仕方、どういう情報が使えるのか、どこが客観的なのか、それはある意味でいいますと、データベースをきちっと整理しておいて、いつでも使えるようにしておくというベースの整理ですね、インフラの整理も必要です。けれども、それ以外には、限られたタイミングでどういう手続で、誰がどのように決定をしていくのか、そこのところの考え方というのは非常に重要だと思います。ところで、ちょっと話ははずれますけれども、研究プログラムだけで、先ほど出ておりましたURAの話にしましても、科学的なイノベーションのための投資であるとか、そういう決定を行う場合には、やはり必要なことは、限られた情報の中で誰がどう決めるかということでして、URAのリサーチアドミニストレーターですね、言葉そのものだと、アドミニストレーターというのはかなりの権限を持った人なんですけれども、日本の場合には、それを研究支援何とかと訳されていて、もうちょっと、アドミニストレーター、キャリアパスの話もございましたけれども、高く重い位置に位置付ける必要があるのではないかと、そういう印象を持ちました。
 以上でございます。

【黒田主査】 
 どうもありがとうございました。
 ほかに何か。どうぞ。

【相澤委員】 
 大変いい分析結果なんですが、これを今後、政策決定の中で生かしていくといった場合には、どういうタイミングのときにこういうオプションを出せるかということなんです。今回の場合は、かなり研究開発で実現するべきことが明確であって、そして、それが実際に適用される現場においてどういう効果が現れているかが比較的予測しやすいケースだと思うんです。ただ、一般に科学技術政策で展開していこうとするときに、初期段階でこういうオプションというものは明確に出せるものなのかどうか。そこの点はいかがでしょう。

【尾花(MRI)】 
 ありがとうございます。大変難しい御質問だと思っております。実際に、今回、明確であったからこそ随分出せたところはございました。ただ、実際こうやっていく過程ですけれども、「予知マーカーは2020年頃に実現」という形で、実現年度をぽっと示したのですが、そこをいろいろな方に聞きながら、探索しながら、実はやっていったというところが事実でございます。ですので、そういう意味ですと、恐らくこのツールだけではなくて、先ほどバックキャスティングのお話とかもございましたけれども、恐らく、そのシナリオを作ったりというのがワンセットであって初めて、この手法というのが生きてくるのではなかろうかと。そういう意味ですと、この計算することだけを一生懸命やっていても、恐らくツールとしては不十分でありまして、探索していったり、初期段階でも、何か少しでも確実なものを探し出すということをもうワンセット並行して持っていて、やっていけばいいのではないかと。
 そういう意味ですと、今回NISTEPさんの方でやっていた研究とリンクしながら進めていたのですけれども、それがあったので私ども非常に助かったのですが、それがなかったらこういう形で御披露できたかどうかというのは、正直、自信がないところです。そういう意味では、皆様のお力が頂けたので、今回の調査研究ができたのではないかと改めて感じているところでございます。

【黒田主査】 
 よろしいでしょうか。
 実は、私も大分このMRIの仕事には参加をさせていただいて、もう半年ぐらい没頭したという感じですけれども、やっぱり、今委員の先生方から御指摘頂いた不確実性の問題とか、イノベーションそのものがどこでどういう形で起こるのかということ自身がそう簡単に予期できない、むしろ予期できたらイノベーションではないのかもしれない。そういう要素をどういう形で、もしあるとすれば、どういうインパクトを与えるかということは評価できても、それがどこで起きるか、若しくはどうやったら起きるかということは、その材料ごとにして施策が施行される段階で、相当議論されなきゃいけない要素だろうと思います。
 ただ、モデルそのものにつきましては、まだ本当に枠組みを作った最初の段階でございますので、おっしゃったような不確実な要素を含めて入れるとすれば、不確実性そのものをある種の分布で与えたエージェントモデルの考え方であるとか、それがどういう確率でリアライズするかということも含めて、何かの想定を置くことは可能だと思いますし、いろんな組み合わせがこれから積み上がっていかないといけない要素はかなりあるんだろうという気がします。
 それから、知識ストックをどういうふうに蓄積をしていって、それをどう捉えるか、これはもう、ある種、無形固定資産として、科学者の間でも、今、世界的にいろんな議論がなされているところで、どうやって捉えるかというはっきりした定型は多分ないんだろうと思います。これも、ナレッジがどう蓄積されていくのか、そして、今回は目的8分類別のナレッジの集積にしていますけれど、実際に政策を考えてみると、もっと細かいものでなきゃいけないとか、もっとナレッジそのものは、どういう形のナレッジで、何に影響を与えるナレッジなのかということまで分からないと、なかなか政策のめどは付かないのかもしれませんが、そういうことも含めて積み重ねていって、蓄積していくというのが、まさにこの政策の科学のナレッジの蓄積で、必要なのではないかなという気は非常にしています。

【有本教授】 
 補足的に。私が御説明した分厚い資料の22ページに書いておりますが、22ページの一番最後の黒ぽつです。抽象的に書きましたけど、政策オプションを作成する方法としては、経済分析、もちろん、経済分析の中には、様々な分析の手法があると思いますけど、それから制度比較、あるいは歴史分析などたくさんあるが、政策課題ごとにこれらの方法を組み合わせて、適切なオプションを作成することが重要である。中核センターでは、こうした多様な方法とそれを担う人材を、タイムリーに糾合する仕組みと機能、マネジメント体制を整備しておく必要があると、全体総括として記述しております。

【黒田主査】 
 どうもありがとうございます。おっしゃるとおりだと思います。
 ほかに何か御質問、ございますか。
 もしよろしければ、今の御議論を踏まえたという形で、前回の議論のときに出ました中核的な研究拠点を作りたいということでございましたので、その議論に少し入らせていただきたいと思います。まず、資料の説明から、基本的考え方2013年、14年、それから中核研究拠点をどう作るかということを含めて、事務局の方から御説明を頂きたいと思います。

【坂下室長】 
 それでは、資料2-1から2-4までの説明を併せてさせていただきたいと思います。
 まず資料2-1は、前回、12月の推進委員会で御議論頂きました基本的な考え方の2013でございます。こちら、修正点は2点でございまして、5ページ目、机上の資料は赤字になっているかと思いますけれども、これから御議論頂きます中核的拠点機能につきまして、前回御議論を頂きまして、その在り方について、機能を公正・中立に果たす上では、運営に一定の自律性を有する大学にその機能を担わせることが望ましいということなんですけれども、ただ、先ほどから議論ありますように、これは通常の大学の業務を超えたような運営が必要だということで、実践性や機動性の確保に十分配慮するという一文を加えてございます。
 それから、もう1点の修正は後ろから2枚目の図表でございますけれども、評価時期に関しまして、前回、RISTEXの評価時期が正しい位置になかったということで、その点を修正してございます。こちらはもう既に昨年度のものでございますので、御確認頂いた上で、本日、御了承頂ければと思っているものでございます。
 それから、きょうの本題でございますけれども、資料2-2、基本的な考え方の2014(案)というものでございます。こちら、1ページめくっていただきまして、事業全体の実施概要というところがございますけれども、ここで、まず基盤的研究・人材育成拠点の活動状況について、2ページの後半から説明をしております。こちらは、初めに有本先生から報告があったところと重なりますので、2ページの説明は省略いたします。
 そして3ページ目から、中核的拠点機能の整備というところがございます。こちらを少し読ませていただきたいと思います。
 これまで3年間、基盤的研究・人材育成、公募型研究開発、政策課題対応型調査研究及びデータ情報基盤の構築をそれぞれ推進してきたものの、事業全体の実施の方向性を収斂(しゅうれん)させることが必要になってきている。同時に、以下の3点が改めて課題として浮き彫りになってきている。
 1、体系的なエビデンスの蓄積や方法論の確立など、時間と経験を要する挑戦すべき課題が多い。2、科学的な知見に基づく客観的エビデンスを根拠としながら、科学技術イノベーション政策の方向性を見極めることが重要であるが、科学技術イノベーション政策の形成プロセスは、政策課題の特定から、政策手段の選択、政策立案、実施まで、極めて複雑である。3、情報技術の飛躍的な進歩により、エビデンスの収集・分析に係る手法が発達し、政策形成プロセスにおいて利用できるデータ量が飛躍的に拡大するとともにその観察精度が急激に向上した。そうした情報技術等の発展の成果を科学技術イノベーション政策の形成に生かすことが極めて重要となってきている。
 このような状況を踏まえると、以下の領域からなる中核的拠点機能を整備し、エビデンスに基づく政策の実践のための指標、手法等の開発を行うとともに、中長期的に得られたデータやノウハウなどの知見と経験を蓄積していくことが不可欠である。
 1、政策デザイン領域。政策課題について多様なシナリオを検討し、それぞれの効果等について比較・分析するために必要な手法開発を行う。2、政策分析・影響評価領域。社会経済情勢の把握や政策課題への対応による社会的・経済的影響の分析、課題解決のための選択可能な政策手段の影響評価などに関し、新たな科学的方法を用いた指標・手法等を開発する。得られたデータやノウハウなどの知見と経験の蓄積機能も担う。3、政策形成プロセス実践領域。我が国の政治・政策過程や制度について分析し、ステークホルダーや社会・国民とのコミュニケーションを含めた政策形成プロセスの構築に向けた手法開発を行う。
 このため、中核的拠点機能を整備するに当たっては、1、科学技術イノベーション政策形成プロセスにおける政治・行政・産業界・国民等の政策ニーズを的確に把握できること。2、人文社会科学から自然科学までの多様な知見を活用して、科学技術イノベーション政策の科学を探求できること。3、国民各層の理解と支持を得る透明性を保持できること。4、政策のための科学を深化させるための中核拠点として、様々な研究機関や大学に、広くかつオープンな研究、議論及び実践の場を提供できること等が重要である。
 その活動内容に関しては、文部科学省や推進委員会の議論を踏まえて発展・進化していくことが重要であり、文科省及び推進委員会は、的確にこれに対してアドバイスするとともに、育成していくという姿勢を持つことが重要である。
 過去3年間の事業の経験と実績を踏まえると、現在の基盤的研究・人材育成拠点大学のネットワークを生かしつつ、その他の大学や研究機関等を巻き込んでいく方向性が妥当性を持つと思われる。したがって、政策研究大学院大学(総合拠点)を中心とした東京大学、一橋大学、大阪大学、京都大学及び九州大学(領域開拓拠点)との連携協力・協働の下に中核的拠点機能を整備することが適切である。
 中核的拠点機能の始動に合わせて、他の関係機関が果たすべき役割は以下のとおり。
 RISTEXは中長期観点から「科学技術イノベーション政策のための科学」を形成し得るコミュニティーを新規開拓・糾合することを目的とし、政策立案や社会の場において実装し得る革新的な手法や新たな指標等に関する研究開発及びそれらの実装性を検証する研究開発を広く公募・支援するとともに、それらから得られた知見を中核的拠点でも生かしていく機能を強化する。
 NISTEPは中核的拠点における政策ニーズの把握や政策課題への対応による社会的・経済的インパクトの分析に活用するため、中核的拠点及び関係機関等と連携して「政策のための科学」に関するデータ・情報の収集・公開及び活用を促進する。また、関係省庁・機関と連携して、研究資金・人材等に関する省庁横断的なデータ・情報基盤構築と分析の中核を担う。
 CRDSは、内外の動向調査を行うことなどにより、「政策のための科学」の俯瞰(ふかん)・構造化に取り組むとともに、研究開発戦略の立案に資するため行っている科学技術分野における領域ごとの俯瞰(ふかん)、科学技術イノベーション施策の俯瞰(ふかん)を通じて、政策形成における政策課題、政策手段の選定に寄与する。また、CRDSの戦略提言活動全体における「政策のための科学」事業との有機的連動性の向上に努める。さらに、SciREXポータルサイトの整備による情報流通の促進を図るとともに、対外広報や関係機関等との定期的な連絡会議を実施する。
 以上が中核的拠点機能の整備に関する部分でございます。
 以下は、公募型研究開発プログラム、政策課題対応型調査研究、データ・情報基盤に関する進捗を踏まえて少し更新しておりますけれども、活動状況の報告ですので説明は省略いたします。
 最後は今後の方向性でございますが、こちらも以前の「基本的な考え方2013」から基本的には変わっておりませんので、説明は省略いたします。
 その後、6ページ目が評価時期及び評価体制ということで、こちらも前回と変わっておりませんので、説明は省略したいと思います。
 今回、7ページ、8ページに図を新たに加えております。7ページが「政策のための科学」の構造に関する図、それから、8ページが中核的拠点機能のイメージ図でございます。
 資料2-2は以上でございます。
 引き続きまして、資料2-3の御説明をいたします。資料2-3は、この推進委員会の下にあります科学技術イノベーション政策のための科学推進委員会基盤的研究・人材育成拠点整備のための分科会の文書でございます。基盤的研究・人材育成拠点における役割と連携の仕組みについて書かれたものでございます。「基本的な考え方2013」は既に決定されたものでございますので、ここには報告をさせていただくということで、説明の方は省略させていただきます。
 2-4でございます。2-4は、これから御審議頂きます資料の2-2「基本的な考え方2014」を、今後、基盤的研究・人材育成拠点整備のための分科会の方に伝えて、さらに改定する予定のものです。本日は、各拠点の実施する人材育成プログラムの概要と、拠点間共同プログラムの内容につきまして、2014年版に更新した状態のものを配付しております。前半の議論でもございましたけれども、拠点間共同プログラムにつきましては、短期研修を実施するということですとか、現役学生と修了生のネットワークを構築するといったような項目が新たに盛り込まれておりまして、活動が進展しているという状況でございます。
 簡単でございますが、説明は以上です。

【黒田主査】 
 どうもありがとうございました。限られた時間で説明を頂きましたが、肝心なことは、今回お決め頂きたいのは2014年度の基本的な考え方をどうするかについての考え方と、それから、中核的拠点形成についての考え方でございますので、何か御質問なり、御意見、ございましたら伺いたいと思います。いかがでしょうか。

【相澤委員】 
 かなり明確な形で整備されてきているんだと思います。ただ、基本に戻って、もう一度ここを議論しておく必要があるかなと思うのは、一つは、GRIPSを全体のプログラムの拠点大学としていると、この軸と、それから、今回の研究拠点としての、いわゆるシンクタンク機能の拠点という、この二つの機能が、今後、この拠点をGRIPSにもし置くということである場合には、かなり明確にしておかなければいけないのではないかと思うんですが、そこはどういうふうに整理されているでしょうか。

【坂下室長】 
 先ほど説明いたしました資料2-2の4ページでございますけれども、ここに過去3年間の事業の経験と実績を踏まえて、現在の基盤的研究・人材育成拠点大学のネットワークを生かして中核的拠点を整備していくという考え方を書かせていただいております。したがいまして、基盤的研究・人材育成拠点大学の総合拠点である政策研究大学院大学を中心として、ほかの領域開拓拠点である5大学が連携協力・協働し、この全体を中核的拠点機能というふうに位置付けて考えていくのが適当ではないかというのが、この文章の趣旨でございます。

【黒田主査】 
 そういう御提案ですけれども、いかがでしょうか。今まで3年間やってきたプログラムの過程を見てまいりますと、GRIPS中心に、人材育成ということが中心でございましたけれども、ほぼまとまりがだんだん出てきたと考えております。非常に重要なのは、いろんな分野、それからいろんな大学間の連携ネットワークというのは非常に重要ですし、GRIPSを中心にした全体6大学の連携だけじゃなくて、ほかの研究大学、それからほかのシンクタンク、それからほかの省庁との研究所、そういうものとも、将来、連携をとっていかなきゃいけない。
 そういう中で、研究ではなくて、やはり実践を視野に置いた形で、それを教育にも反映させる。そして、もちろん政策にも資するようなものにしていくというのを考えますと、今までの経緯からいって、GRIPSに中心的な、中核的な研究拠点を置くというのが一番スムーズにいくのかなというのが私の感じでございまして、前回、各拠点の大学のリーダーの集まりでもそういうお話をして、そうだねという形の了解を得ているというところでございますが、いかがでしょうか。

【有本教授】 
 今の相澤先生の御質問なり、御指摘は重要で、これをやる場合には、先生がおっしゃるとおりで、まず教育とこの活動は分ける。もちろん、教育をやりながら、研究や実務経験のある方々を、客員でお呼びしてやってもらうということになると思います。そこのところをきちんとミシン目を入れる。だからこそ、この3ページに、まる1政策デザイン、まる2政策分析、それからまる3政策形成プロセスというのがはっきり書いてあるんだと私は理解しております。通常の大学研究のやり方ではうまくいかない。だからこそ、このセンターというのは相当のマネジメント、それから外との相互作用をするようなところをきちっとするような体制を組む必要があります。普通の大学研究だったら、研究費をもらえば二、三年は研究室でやればいいということですけども、ここでは、分厚い資料で御説明しましたが、常に行政側なり社会なり、あるいは政治と対話をしながら、何がイシューであるのか、それも、時間軸を入れて、これは半年、これは1年、これは数年という出口を意識し、判断しながらやっていく仕組みが必要です。多分、普通の大学ではできないことではないかと。これは通常の仕方では難しいと思います。しかし、これだけのチャレンジングですから、しっかり取り組むというふうに思っているところです。

【黒田主査】 
 いかがでしょう。

【相澤委員】 
 結果的にGRIPSの今までの蓄積と、これからやるべきことを最大限に生かして、この中核拠点を作る、そういう軸は、それで納得できる話です。ただ、もう一つ重要なことは、政策提言をしていく中核拠点、しかも、シンクタンク機能を持ったところがどこに設置されるのがふさわしいかと、こういう議論があるかと思います。ということは、一つはどこかの省直結のところに置くというのもあり得るだろうし、そのほか、完全に民間の組織の中に作るということもあり得るわけですね。
 それで、実際的には、ここにありますRISTEXとかNISTEP、CRDSとの連携をすることは重要なんだけれども、これらはそれぞれ、やはり文科省の傘下のものでもあるので、そことは一線を画した形で、大学という中立的な立場のところに置くという、その正統性を強調しておく必要があるのではないかという意味で伺ってるわけです。だから、現実的には、そういう蓄積のあるところに置くということには、何ら異論はないんですけれども、そこのところを是非。

【黒田主査】 
 前回の推進委員会で、やはり同じような議論が出まして、そのときはGRIPS云々の話ではなくて、中核拠点そのものはニュートラリティーを保つということが大原則であろうと。そうしないと、政策決定プロセスにおけるある種のアドバイスをする、若しくは材料を提供するについてのバイアスが出てきてしまうので、そういうことがないようにという意味で、やっぱり置くのであれば、大学のどこかに担っていただかなければいけないのではないかという議論が、前回出ました。
 それ自身が、GRIPSは大変なお仕事になると思うんですけれども、欧米各国、いろいろ見ますと、そういう形の本当のシンクタンクがないと、日本はなかなかいろんな政策がうまくいかない、同じような要素ではないかと思っています。民間ということもあるんですけれども、民間でそういうシンクタンクが育つところまで、残念ながら、まだ日本は成熟していない。だからこれをきっかけに、民間からも、そういうニュートラルにちゃんと提言ができるようなシンクタンクがどんどんできることが一番望ましい形なのではないかという気がいたしますけれども、いかがでしょうか。

【有本教授】 
 非常に大事な御指摘なのでちょっと長くなるんですけれども、また私の御説明した資料の23ページをお開き下さい。関連で、23ページの色刷りの下側の図なんですけれども、政策決定における科学者の役割という、これ、実は、結構世界的に科学助言の在り方というのを、この2年ぐらい、国際的なOECDの場とか、あるいはアカデミックの場でも比較研究をずっとやらせていただいております。このPielke先生、これはコロラド大学の有名な先生で、この図はよくアメリカ大統領補佐官のホルドレンとかEU主席科学顧問のアン・グローバーとかもよく引用するんですけども、大事なことを言っているというふうに思ってございます。4象限で、Pure Scientistsが左の第2象限、第3象限でScience Arbiter、これはコンシェルジュみたいに何でもメニューを出す。右上は自分のプロジェクトをアドボケートするという者で、右下がHonest Brokerということで、言ってみればそれこそオプションズ、ワーカブルなオプションズを出していくというようなポジショニングになります。これは今の御議論と若干離れるかもしれませんけど、常にこういうポジショニングをしっかりした上で、この中核センターも、それから一人一人の科学者、大学人も対応しないと、何のためにやっているか分からないということになるのではないか。御紹介をした次第であります。

【黒田主査】 
 どうもありがとうございます。
 ほかに御意見、何かございますでしょうか。

【有信委員】 
 こういう拠点が必要だということと、これをGRIPSかどうか分かりませんが、大学のようなところに作るべきだという点については、基本的には賛成です。実際に人材育成拠点をそれぞれ作っていますけれども、これは人材育成のための教育拠点という位置付けで、教育に対してはそれなりの援助が出て、そのために、それぞれプログラムを組んで教育をやっているんだけど、大学院で行う教育というのは、基本的には研究的な要素を必ず含むわけで、この研究をどうやって実施していくかというときに、結果的に言うと、それぞれの学生の出元の大学院のコースの中の研究費で賄おうというのが、これが実はサーティフィケートを出すというプログラムにならざるを得ない理由の一つなわけですね。学位プログラムを出そうとするとそれなりの研究費をどこかから取ってこないといけないから、森田先生がやっている社会技術のところにアプライするような形で研究費を取ってきながら、教育に役立てるという形をとっているわけです。
 そういう中で、是非考えてほしいのは、研究センターそのものが、ある意味で各教育拠点の研究機能とどういう形でうまくリンクするか、それをうまく使うのか、あるいは時に応じて組織していくのかというところでの在り方というのを視野に入れながら設計していただけるといいかなという気がします。

【黒田主査】 
 何かその点、お考えがございますでしょうか。
 私自身は、そこのところは非常に重要で、この人材育成というのは極めて、従来、大学の研究だけやっていればいいという部分とちょっと違うので、政策の実践ということにも大きく結び付かなきゃいけない、そういう意味では、政策オプションを含めたいろんな施行をやること自身が、その姿の中に人材育成に参加している人材も、恐らく参加できるようなチャンスを作ることが一つの形ではないかと思っていまして、そういう意味では、そこの中に行政府から来ている人もいれば、もちろん、学位をとるための学生さんもいるんでしょうが、そういう中で、そういう方々のキャリアパスを作ることを考えていくというのが非常に重要なのではないかというふうに思っております。

【有信委員】 
 思いますね。

【黒田主査】 
 ほかにいかがでしょうか。小林先生、何かありますか。よろしゅうございますか。
 そうしましたら、きょう御提案頂いた、「基本的な考え方2013」につきましては既にお認め頂いていることだと思いますので、このままとさせていただきます。それから、「基本的な考え方2014」につきましては、ただいま中核拠点について頂きましたいろんな御意見を少し修文等々加えさせていただいた上で、御了解を頂いたということでよろしゅうございますでしょうか。
 どうもありがとうございました。

 【坂下室長】 
 それでは、ロゴマークは資料1-7にございます。平成25年度に文部科学省では、ポータルサイトの改良など、広報の在り方について調査・分析をするということで委託事業をやっておりました。その中で、ロゴマークとキャラクターの提案がございましたので、ここに御紹介、御報告をさせていただきたいと思います。
 ロゴにつきましては、この資料1-7の1枚目にある、明るいブルーを使っておりまして、この事業のイメージ、未来のイメージを表したということでございます。
 それから、2枚目の恐竜ですけれども、REXということが国内外を通じて恐竜を意味する言葉ということもございまして、その恐竜のキャラクターをこの事業に使って理解や親しみを持っていただければと思っております。こちらのロゴマークやキャラクターの解説につきましては、改めてホームページ等が開設されましたら、きちんと説明も付していきたいと思っておりますけれども、本日は取り急ぎの御報告でございます。
 以上です。

【黒田主査】 
 ありがとうございました。よろしゅうございますか。

【有信委員】 
 どうでもいいことですけど、このリデザインという言い方は普通の言い方なんですか。何でリデザインなんだろうと、素朴な疑問ですけど。

【坂下室長】 
 再構築というか、新しくデザインをやり直していくと。

【有信委員】 
 やっぱり再構築なんですね。

【坂下室長】 
 はい。一応、ネイティブの方に確認をしていただいて、非常に自然な表現で、内容的にもこれで理解できるとのことでした。

【有信委員】 
 ポリシーに関してはこれが自然な、ポリシーをデザインするのではなくて、リデザインするというのが自然な考えだということでいいんですね。それが普通なら、そのとおり、それで。

【坂下室長】 
 はい、この事業の趣旨からすると、違和感はないということでございます。
 あと、Xにつきましては、この中にX自体は出てこないんですけれども、Xは未知なるものということを表しておりますので、この事業が将来的に様々な分野で活用されるというような期待も含めて、Xということでございます。

【黒田主査】 
 よろしゅうございますか。
 それでは、そういう形でロゴマークを決めさせていただきたいと思います。
 最後ですが、きょう御議論を頂いた役割と連携の仕組みにつきましては、各連携大学の分科会で御報告させていただきまして、御了解を得て、今2014年の案になっております部分に、その役割と連携の部分も加えさせていただくということを御了解頂きたいと思います。よろしゅうございますか。
 では、今後のスケジュールについて事務局の方から。

【坂下室長】 
 次回の推進委員会の日程は、後日、改めて調整させていただきたいと思います。

【黒田主査】 
 それでは、長時間にわたりましてどうもありがとうございました。これで閉会させていただきます。

お問合せ先

文部科学省科学技術・学術政策局企画評価課

(文部科学省科学技術・学術政策局企画評価課)