科学技術イノベーション政策のための科学推進委員会(第9回) 議事録

1.日時

平成24年3月26日(月曜日)10時~12時

2.場所

科学技術政策研究所会議室(新霞が関ビル201D号室)
住所:東京都千代田区霞が関3-3-2

3.議題

  1. 各機関の取組の進捗状況等について
  2. 「科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」推進事業」の今後の進め方について
  3. その他

4.出席者

委員

有信委員、笠木委員、黒田主査、桑原委員、郷委員、小林委員、野間口委員、森田委員

文部科学省

土屋 科学技術・学術政策局長、阿蘇 科学技術・学術政策局計画官、山下 科学技術・学術政策局政策科学推進室長

5.議事録

【黒田主査】 
 それでは、定刻でございますので、第9回になりますが、推進委員会を開催させていただきたいと思います。局長が間もなくお見えになるとのことですので、始めさせていただきたいと思います。
 本日は、各SciSIPの担当部署が少しずつ連携をとりながら動き出しまして、拠点校も選ばれて、これから共同プログラムの開発もという時点にきているわけですが、もう一度、SciSIPの進め方、今後、非常に長丁場でございますので、各拠点との連携の問題、それから、SciSIPそのものをどういう方向に最終ターゲットとして定めるかということを、改めて少しフリーにディスカッションいただきまして、ここで議論をさせていただきたいと思います。
 まず最初に、資料の確認からよろしくお願いいたします。

【山下室長】 
 おはようございます。お手元に第9回の推進委員会の議事次第と資料をお配りさせていただいてございます。
 資料は、資料1から6。6は枝番が振ってございますが、6まで。参考資料が1から3まで3種類ございます。それに加えまして、本日、笠木先生より御参考で、CRDSのほうで今議論をおまとめしていただいていて、もう間もなく固まると伺ってございますが、「エネルギー政策のための科学」ということで、本日の議論の参考になろうかということで材料提供いただいたものと、あともう一つ、これは事前に確認できませんで申しわけございませんでした。議事録の案を配付してございます。議事録のほうは、案と書いてございませんが、案でございますので、また後ほど、これはメールでも先生方にお送りしますので、御自身の御発言ともし違い等あれば、こちらのほうに御指摘いただければと思います。
 以上でございます。

【黒田主査】 
 よろしゅうございますか。
 それでは、議事に入らせていただきます。
 最初に、このプログラムの各機関が動き出しておりますので、それに基づきまして、2月6日の推進委員会後の進捗状況につきましてお話をいただきたいと思います。これまで約1年間進めてまいりましたので、いろんなところでいろんな課題も見つかっているようでございますので、御議論させていただきたいと思います。
 最初に、文科省のほうから、基盤的研究・人材育成拠点の整備についてお話しいただきたいと思います。よろしくお願いします。

【山下室長】 
 それでは、お手元の配付資料の資料1をごらんいただければと思います。こちらのほうは、今、先生からもお話しいただきましたとおり、約1年、正確に申し上げれば、おととしの夏ぐらいから文部科学省、あるいはCRDSのほうではさらにその前から御検討されておられましたが、「政策のための科学」推進事業の全般的な動向でございます。
 ざっと羅列して、いろんなイベントでございますとか、会議でございますとか、シンポジウムとかを書いてございます。これらの活動が現時点までに、あるいは若干予定のものも書いてございますが、それらが今、進められているという形になってございます。
 続きまして、資料2でございますが、基盤的研究・人材育成拠点整備事業の進捗状況ということで御報告申し上げます。
 今年度はもう終わりますけれども、平成23年度におきましては、8月末から公募をさせていただきまして、9月6日に説明会、60名ぐらいの方々が御参加いただきましたけれども、公募を開始いたしました。約1か月半の公募期間を経まして、ほぼ年内に4回、推進委員会を非公開で議論させていただきまして、結果的に、今年の1月に5拠点を採択してございます。現時点におきましては、基盤的研究・人材育成拠点整備のための分科会、三つ目の丸でございますが、こちらのほうを開催しまして、5月をめどに、拠点の活動、拠点間の役割分担、あるいはそういう仕組み、連携の在り方などを取りまとめるというような予定になってございます。
 来年度以降につきましては、分科会で御議論いただきましたものを推進委員会でも御議論いただいて決定させていただくとともに、今年度内に具体的な拠点の活動自体をきちんと立ち上げていただくということで、三つ目の丸でございますけれども、24年度内に学生募集を開始して、25年度には人材育成プログラムを具体的に開始するということでさせていただいてございます。
 また、評価につきましても、26年度まで、2年後ぐらいになりますけれども、必要な方法とか基準に関して定めさせていただきますし、体制のほうもそれまでに考えていくということでございます。
 おめくりいただきまして、2ページでございますけれども、基盤的研究・人材育成拠点につきましては、おおむね15年間という長い実施期間でございますが、5年ごとに評価をやっていただこうかということを想定してございまして、27年度、32年度に中間評価、37年度の最終年度には事業開始15年目になりますけれども、事後評価ということを考えてございます。
 資料2-2は、今申し上げましたことも踏まえて、人材育成拠点の概要をポンチ絵にしているものでございます。
 以上でございます。

【黒田主査】 
 どうもありがとうございました。
 それでは、NISTEPのほうから、政策課題対応型の調査研究とデータの情報基盤整備という課題について、現在の進捗状況をお話ししていただきたいと思います。よろしくお願いします。

【桑原委員】 
 資料3の2枚紙で御説明いたします。
 最初のページが、プログラムの4本柱のうちの政策課題対応型調査研究、これは、政府投資の経済・社会効果をはかるということが要件になっておりますけれども、その状況が1枚目に書かれております。
 大きく分けまして、ミクロデータに関する分析とマクロモデルに関する分析、海外調査と、この3本立てになっております。
 上から順番に概観させていただきますと、まず、ミクロデータのまる1、これが無形資産に注目して、イノベーションとの関係、あるいは産業別にどうなっているか、時系列変化がどうなっているか、こういうものをまとめて分析していこうということでございまして、今年度実施したことは、そこに五つほど挙がっておりますけれども、こういう点の分析作業を進めております。
 2012年度中には、これらについて一定の取りまとめをしようというのが予定でございまして、このテーマについては、一橋大学、それからRIETIとの連携で進めております。
 まる2のイノベーション調査で、これは産業において、イノベーションが実際、どういうところでどのくらい起こってるのかということを計測するというもので、来年度、2012年度に、日本として3回目になる調査を実施するというのがメーンの内容でございます。今年度は、その前に実施しました第2回調査、これの様々な補正値を検討しました。
 それから、イノベーションという言葉自体、一応、OECDが定めた定義がございますけれども、定義の最後の部分では、「かなりの」というような形容詞が入ります。その辺の解釈が、国ごとにかなり違うのではないかということで、日本、アメリカ、ドイツでいろんな事例を示して、比較調査をいたしました。わかりましたことは、アメリカが、同じものでもイノベーションと思う率が高い。ドイツが中間で、日本が一番シビアで、かなり画期的なものじゃないとイノベーションと思わない。こういう差があるということがわかりました。いろいろな統計でも、日本の企業のイノベーション率はやや低目に出ていますが、そこにはそういうバイアスもある程度入っているということが見えてきたということでございます。
 それから3番目、これはフィージビリティスタディとしてやっていることですが、幾つかの分野や領域に着目して社会的な効果、あるいは経済的な効果を見ていこうということです。政策研が過去にいろいろな大学から主要な成果を出していただいておりまして、それが1,000以上のリストとなっています。それを少し違う観点で整理をしようということを初年度は進めました。ただこれは非常に難しくて、まだこれならいけるという方法論を確立するには至っておりませんので、もうしばらく予備的検討を続けさせていただきたいと思います。
 同様に、産業連関表を用いて特定の技術に注目して、様々な分析を行うことも進めています。これは早稲田大学との協力で進めておりますけれども、これについても、もう少し方法論を詰めたいということで、2012年度前半くらいはFSを継続したいと思っております。
 それから、4番目が、大学・企業間での知識の移転です。これまで直接、お役にたっていますかというような企業への質問票調査は行われておりましたけれども、特許に具体的に着目して、大学と企業の共同研究で生まれた特許、それが、それぞれの企業内でどのように波及していって、あるいはどのように発展していくのかとを、特許を追うことでみていこうとしています。そのベースを踏まえて、それにかかわった方々に実際に質問票調査をしようと、こういう設計で進めているものでございまして、特許についての基本的な集計、分析がほぼ完了し、アンケート調査の準備ができ上がったというところでございます。これは一橋大学との協力で進めております。
 それからもう一つ、ノウハウ・営業秘密という、特許以外の部分がどういう影響を持つかについて、これは、科学技術政策研究所の先行調査がございましたので、そのデータを使って一部分析いたしました。ノウハウをあまり重視しない会社、それから、とても重視する会社と比べると、ほどほどの会社でイノベーションがどうも高いらしいというような傾向等が見えておりまして、これは近くレポートをまとめて、一応完結させるということでございます。
 それから、次の(2)マクロ分析でございますが、まる1が、政策研が10年ほど前につくりましたマクロモデルに、分野の概念、例えばライフサイエンスに投資した場合とナノテクに投資した場合は同じではないだろう。さらに、分野ごとに知識の陳腐化率も変わってくる。こういった新しいパラメータを入れるという改良を今やっております。一部、三菱総研への委託で進めておりまして、来年度、引き続き実施するという予定でございます。
 それから、まる2は、もう少し将来を見越しまして、内閣府がつくっていらっしゃるようなマクロ経済モデル、ここに科学技術に関することを実装してもらうということが長期的には重要だと思っておりまして、そのための予備的検討をするということでございます。内閣府にもいろいろ相談させていただいていますけれども、すぐにどうこうという段階ではまだないだろうというのが内閣府側の問題意識でございまして、少しいろいろ詰めなくてはいけない。そのための作業を進めているということで、来年度は、結合をすると、こういうデータができるんですよということをお見せできるようなところへ持っていきたいと思っております。
 それから、まる3は動学一般均衡モデルについてのアプローチをしようということで、予備的検討を進めてまいりましたけれども、この中心の研究者がRISTEXの公募研究にも当選されまして、そちらとの調整が必要になってくるということが出てまいりました。不十分に重複研究することは意味がないということで、政策研のほうは、今年度の予備検討で終わらせまして、RISTEXの研究に専念していただくという整理にいたしました。
 それから、海外調査は、主にヨーロッパを中心に先行論文の調査等々を進めておりまして、重要論文20本ほど取り出しまして、その概要をつくったりしております。ヨーロッパで幾つかの訪問調査も行いまして、来年度は、続いてアメリカを中心に、もう少し調査をしたいと思っております。
 2ページ目をごらんいただきますと、もう一つの柱であるデータ情報基盤がございます。これも三つのサブパートから成っておりまして、一番上が全体の設計ですとか外部にデータ提供するためのウエブの設計準備といった作業でございまして、ここでは、三菱総研内に委員会を置きまして、いろいろ検討するとともに、具体的なコンテンツの整備ですとかウエブの設計を進めてきております。これは、本年6月ごろから、まずオペレーションを開始したい。その後、順次拡大していくことになります。
 それから、個別のデータ整備ということでは、最初が公的研究機関に関するデータ整備で、まる1が公的機関、大学ですとか政府研究機関、まる2が産業ですけれども、この二つは主に、様々な統計をつなげるときの機関名の名寄せをするということが中心でございます。それぞれ別のところに委託しておりますが、名寄せの辞書づくりが大分進んできております。2012年度中もそれぞれ継続いたしまして、一部は2012年度途中から一般にこの辞書を提供できるようになります。今まで幾つかの統計を複数使おうと思うと、この作業が非常に時間がかかるという部分でございましたので、いろんな研究者の方に効率的に研究に着手していただけるようになるだろうと考えております。
 それから、まる3が定点調査といっております、第4期科学技術基本計画の間に様々な指標がどう変化するかをみるものです。これは統計ではなかなか測れないものを主観調査で補足しようというものでございまして、どんな調査をするかという設計を大体終えて、既に初年度のサーベイを今実施中でございます。来年度早々には、初年度の結果をお出しするという予定で、これは、これから毎年1回実施していく予定です。
 まる4も新たに取り組む、博士課程を卒業した人々を追跡していこうとするものです。どういうところでどういう活動をされているのかということを追跡し、最終的には、どういう大学で、どういうプログラムで生み出された人々が一番活躍しているのかと、こういうことも将来的には見えるようになっていくだろうと期待しています。関係する大学の関係者、それから、既存の人材データベースであるReaD&Researchmapの関係者等々にも御参加いただきまして、予備的な議論を進めています。
 さらに、この分野でわりと進んでおりますのがアメリカとイギリスでございますので、それぞれがどうなっているかということを文献調査、それから、関係者にお越しいただいて議論するというような煮詰めをしてきております。
 ただ、英国も米国もよく調べますと、そう簡単にできているわけではなく、さらに、かなり限界があるんだという前提で運用しているということもわかってまいりましたので、そういうことを踏まえて、2012年度、幾つかの大学で試験的、実験的オペレーションに入れればと思っております。
 次の(3)、これは先ほどの1ページ目のプロジェクトから生み出された様々なデータを、可能なものをいろいろな場面で外部の方々に提供していくというものでございまして、まる1は無形資産関係のデータで、これは、産業別、それから都道府県別、こういった集計データが今年の6月ごろから一部提供できるようになるだろうということで、その準備をしております。
 それから、まる2、これが過去の様々な科学技術関係予算等のデータをさかのぼって電子化しようということでございまして、これも科学技術関係経費の分類については、かなり進みました。来年度は、それに引き続き、今度は政策マターのデータ化を進めるということを予定しております。
 あと、その他でございますけれども、SciSIPが始まった後、震災対応ということもやるべしと、この委員会でもそういう御議論がございましたので、政策研としては、そこにありますような、科学者、技術者がこれに対応してどう考えているかという質問票調査を行うということと、一般国民向けの意識で、これはたまたま震災の前、2年間ほど毎月調査を行っておりましたけれども、震災後もこれを1年間続けて、震災によって、どんな意識変化があったのかを見るということを進めております。
 最後、総合検討で、そこにありますような、先ほど幾つか御紹介いたしましたけれども、国際会議を開く。それから、マクロ経済モデルについては、様々なお立場の方々にお集まりいただいて活発な議論をする場をこれからつくっていこうということで、今週30日にその第1回目を開くということになっております。
 最後のページは、これは単に御参考ですが、私ども、委託プロジェクトもあるものですから、たくさん委員会が動いておりますけれども、構造的には、一番上にある文科省の黒田先生の委員会を受けて、政策研としては、全体を統括する助言委員会というものを置いております。その下にたくさんありますのは、それぞれの委託調査を円滑に実施するための御助言をいただく、あるいは意見交換をする場というもので幾つか設けられております。それぞれの活動状況はその下にあるとおりでございます。
 以上です。

【黒田主査】 
 どうもありがとうございました。
 局長、お見えになりましたが、引き続き、一わたり現在の状況を御説明いただくということでよろしいでしょうか。
 それでは、続きまして、RISTEXのほうから、公募型の研究開発プログラムの点について、斎藤さん、お願いします。

【斎藤(RISTEX)】 
 それでは、JST社会技術センターの斎藤から、資料4に基づいて、公募型プログラムの進捗について御報告申し上げます。前回推進委員会以降の動きを中心に御説明したいと思います。
 2月にプログラム会議を開催いたしまして、推進委員会の森田委員に研究総括をお願いしておりますが、総括及びアドバイザー等の参加のもとに、プロジェクトの進捗、次年度の公募方針等を検討いたしました。ちなみに、今回から新たにイノベーションにかかわる民間等の専門家2名に追加で新しくお入りいただいておりまして、前年度の採択結果の中で、やはりもう少し民間、あるいはイノベーション政策にかかわる取組を重視すべきではないかというJSTの中での議論もございまして、一応そういった面の取組をいかに強めるかということも意識をして、これから検討を進めていく予定にしております。
 次回のプログラム会議は、4月12日開催の予定にしてございます。
 続きまして、2番目の項目ですが、プログラムの全体会議、これは、各採択プロジェクト、それからFS(企画調査)のチームが2チームございますが、その代表者及び主要メンバー、総括アドバイザーの皆様、それと、今回は特に関係機関として、文部科学省、政策研、それとJSTのCRDS等々の関係機関から多くの参加をいただきまして、計60名弱の体制で2日間にわたり合宿形式で発表なり議論を行っております。
 主にこの種の全体会合のねらいとしては、プロジェクト間のシナジーといいますか、採択プロジェクトの関係者の中で意識を共有し、問題意識を深めながら、翌年度以降のさらなる募集なりプログラム運営に当たっての問題意識を共有していこうということが主眼でありますが、今回特に、この「政策のための科学」事業全体の方向性も踏まえまして、文科省あるいは政策研の関係者からも多くの御発言、問題提起、御示唆もいただきながら、資料に書いてございますが、単なるプロジェクトの進捗状況の報告、今後の計画についての発表、議論のみならず、プログラムの中で関係者がいかに協働していくか、さらにはそれぞれのプロジェクトの成果を中心に、プログラム全体の成果も含めて、これをいかに構造化し、政策の具体化に結びつけていくかという、いわゆる政策実装と申し上げればいいんでしょうか、それに関する討論も2日目にかけて、かなり密度濃く実施をいたしました。
 それから、翌年度の公募が間もなく始まる予定になってございますが、4月23日から2か月ほどの公募期間をとりまして、公募を開始する予定にしております。本プログラムでは計4回の公募を予定してございますが、今回はその2回目に当たります。
 募集の説明会を東京及び京都、2か所で行う予定にしておりまして、募集締め切り後、7月から8月にかけまして、いわゆる書面審査、それと面接選考を実施し、9月中には採択課題を決定し、10月から研究開始にこぎ着けたいと思ってございます。初年度は、これより2か月ほど遅れたスケジュールで、初年度の研究実施期間が4か月ほどになってしまいましたが、今年度はできるだけ通常どおりのスケジュールで進めたいと思ってございます。
 本日、推進委員会でいろいろいただいた御意見等も、次回のプログラム会議での検討に反映した上で、可能な部分について、公募の方針に反映していければと考えてございます。
 事務局のほうから説明すべき事項として、初年度の進捗を踏まえた今後の課題についても少し説明するようにという御指示がございましたので、若干、口頭で恐縮ですが申し上げさせていただきます。
 来年度の公募に向けた一つの方向としては、いよいよ人材育成拠点の顔ぶれが固まりましたので、今後はいろいろな意味で多様性を広げていく、すそ野を広げていくという部分については、かなりこの公募型のプログラムに期待される部分は大きいであろうということはそれなりに意識しております。幅広いセクターや分野を含めて、多様性をいかに確保するかという点も、選考に当たっては一つの視点になるものと考えています。
 特に、初年度は6プロジェクトプラス二つのFS課題、いずれも男性が代表者のチームでございましたので、男女共同参画という意味からは、女性からの御提案というものをぜひ説明会等の機会を通じて引き出していければと考えてございます。
 それと、プログラムの全体像をいかに作っていくか。これは、初年度、まだ6課題のみの採択でありますので、なかなか政策のための科学の全体プログラムに資するような大きなピクチャーが描けるまでには至っておりませんけれども、これを今後の公募に当たって、できるだけ政策実装といいますか、政策オプションの提示にもつながり得るような形で、提案なり採択したプロジェクトの成果を引き出していくということが重要と考えております。
 そのためにも、先ほど御紹介したようなプログラムの全体会議ですとか、各プロジェクトを中心にワークショップ等の機会も多数ございます。そういう機会に、これは通常ですと、研究者中心の会合になるんですけれども、このプログラムの場合には、文科省をはじめとした実際の政策当局の担当者、あるいはその経験者の皆様にも参加をいただいて政策につなげる、あるいは政策オプションの提示を引き出すには、どういうふうな検討、取組が必要かという点も絶えず議論を期待していきたいと思ってございます。
 あわせて、新規の募集においても、そういった方向性を、具体的な活用対象となる政策、それとその担い手、それから、原価あるいはコストを意識した実現可能性というものも視野に入れた提案を引き出していきたいと考えているところでございます。
 あわせて、成果の発信につきましては、国内への発信のみならず、国際的な視点から、アメリカ、ヨーロッパ等でもそれぞれ取組が進んでおりますので、シンポジウムはもちろんですけれども、もう少しインフォーマルな形でのサロンなども今後企画をしまして、政策当局の皆様、あるいは在京の大使館の方なども重要な関係者としていただくことは有意義かと思っておりますので、そういったいろいろな形での発信の機会を設けていきたいと思ってございます。
 このプログラムに関しては、森田先生に総括をお願いしておりますので、もしさらにつけ加えるべきことがございましたら、発言をお願いします。
 以上でございます。

【黒田主査】 
 何か今……。

【森田委員】 
 いや。特にございません。

【黒田主査】 
 後でまた、御議論ありましたら。
 それじゃ、もう一つの機関でありますCRDSのほうから、政策科学に関する科学構造化研究会について御報告いただきたいと思います。よろしくお願いします。

【小山田(CRDS)】 
 それでは、私のほうから、JST研究開発センター(CRDS)における、最近の「科学技術イノベーション政策の科学」に関連する主な取組及び、「科学技術イノベーション政策の科学」構造化研究会の状況について御報告させていただきます。資料5になります。
 私どもの科学技術振興機構研究開発戦略センターの中に「科学技術イノベーション政策の科学」グループというものを設置しておりますので、その活動について御報告させていただきます。
一つ目としましては、「科学技術イノベーション政策の科学」に関するふかん・構造化に向けた調査活動を行っております。具体的に言いますと、「科学技術イノベーション政策の科学」の深化に向けて明らかにすべき課題、我々はこれをScience Questionと呼んでおりますが、それをどのように設定すべきか。そしてもう一つ、政策の科学の成果や知見を政策形成に活用していくために何が必要かということについて関係者と意見交換を行い、また、国内外の関連する事例や先行例について調査活動を実施しております。
 その一環としまして、昨年8月、これは以前、この場で御報告させていただきまたけれども、「科学技術イノベーション政策の科学」の構造化に向けた検討準備会合というものを開催しまして、国内外の関係者約50名に参加していただいております。その場では、「科学技術イノベーション政策の科学」の構造化に向けた課題及び他の政策分野、教育政策、医療政策におけるイノベーションの政策形成に向けた取組の経験からの示唆、及び震災復興の取組への貢献の可能性について議論を行っていただきました。
 続いて、今年の2月13日に、科学技術政策研究所及び総合拠点であります政策研究大学院大学と共同で、「科学技術イノベーション政策の科学」構造化研究会の第1回会合を開催しております。こちらでは、先ほどの主催3機関及び文部科学省、RISTEXの公募型研究開発プログラム、さらに基盤的研究・人材育成拠点の関係者、また、これら以外の関係者の方々、約50名の方に参加していただきまして、以下の2点について意見交換をさせていただきました。
 まず一つは、「科学技術イノベーション政策の科学」としての深化を目指して~明らかにすべき課題になります。先ほど申しましたScience Questionというものをどういったふうに設定すべきかということについて議論していただきました。
 それからもう一つは「科学技術イノベーション政策の科学」における知見の政策形成の活用に向けて、どのような仕組みや課題があるかということに関して、議論及び検討をさせていただきました。
 詳細は、後ほどまた別途御報告させていただくことになるかと思いますが、特に「政策形成の活用に向けて」に関しては、研究者、政策担当者、その他利害関係者との間でのコミュニケーションを促進し、問題意識を共有すること。さらに、重点課題として具体的な課題を設定して、調査プロジェクトを行っていくことが必要ではないかというような意見がありました。この構造化研究会につきましては、今後も継続的に開催しまして、政策担当者及び研究者、さらにその他実務担当者等の意見交換の場として活用していく予定でおります。
 もう1点、私どもといたしましては、今年2月に開催されました、全米科学振興協会、こちら、科学雑誌「Science」を発行している世界最大の学術団体でありますけれども、その年次大会において、「政策の科学」に関するシンポジウムを開催しております。
 具体的には、カナダ・バンクーバーで2月17日に“Redesigning the Governance of Science,Technology,and Innovation After Japan's Earthquake”と題するシンポジウムを開催しまして、黒田先生はじめ、有本RISTEXセンター長、原山OECD科学技術産業局次長、また、米国からは、NSFのSciSIPのプログラムディレクターでありますジュリア・レーン氏、また、オランダから、科学技術政策の研究機関でありますラテナウ研究所から科学技術システム評価部長のファン・デル・ミューレン氏をお呼びしまして、震災後及び世界的な経済・財政危機を受けた科学技術イノベーション政策のガバナンスにおける課題とその再編に向けて「科学技術イノベーション政策の科学」が果たすべき役割について議論を行っていただきました。当日、会場には約60名の方が来場していただきました。
 こちら、後ほどまた報告書として公開させていただきますけれども、この場であった議論としましては、ハーバード大学ケネディスクールで科学技術政策の人材育成プログラムに長年携わってこられましたLewis Branscomb教授から、特に人材育成に関しましては、政策形成(Policy Analysis)に加えて政策の設計(Policy Design)ができる人材をどう育成するかということについて、非常に熱いお話をいただいたところであります。
 もう1点、「科学技術イノベーション政策の科学」のみならず、政策形成における科学と政府の役割及び責任に係る原則の確立に向けた検討というものを同時に行っております。こちらにつきましては、海外の動向も踏まえて、政策形成における科学と政府の役割及び責任に係る原則、及び科学的知見に基づく政策形成を支える基盤について検討を実施しておりまして、こちらについては、別途戦略提言として公表する予定でおります。
 さらに、最後になりますけれども、文部科学省より12月から科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」に関する委託調査を受けて、これに関する調査分析を実施しております。
 具体的には、「政策のための科学」推進事業に関する国内外の関連機関からのネットワーク構築及びコミュニティ形成等に向けた取組に関する調査分析、もう1点は、政策のための推進事業の成果の構造化・共有・活用に向けた予備的調査を実施しております。こちらにつきましては、推進事業関係者並びにRISTEXの公募プログラム等の課題実施者等々へのヒアリングを行うとともに、海外及び国内の関連機関の往訪調査及び国内外の重要文献等の調査分析を実施しておりまして、報告書として取りまとめる予定でおります。
 以上になります。

【黒田主査】 
 どうもありがとうございました。
 ひとわたり人材育成プログラム、基盤研究のプログラム、政策課題対応型の調査研究、公募型の研究開発プログラム、それから、構造化にかかわる問題ということで、関係諸機関から、現在までの進捗の状況を御説明いただきました。この進捗は、昨年の5月16日に、この推進委員会で、これからこういうふうにやろうという合意を得て進めてきたことでございますけれども、約1年間たちましたので、現在の進捗の御説明を踏まえて、今後、これをさらに初期の目的に沿うような形で、どういう形で進めていけばいいかということを、今日は忌たんのない御意見をいろいろいただきたいと思っております。
 その議論の素材として、事務局のほうから、事業全体の目標につきまして、一度おさらいをいただきたいと思っていますが、よろしくお願いします。

【山下室長】 
 それでは、お手元のほうに、引き続きまして資料6-1をあけていただければと思います。
 今、黒田主査のほうから御紹介賜りましたように、ようやく今年の1月、基盤的研究・人材育成拠点の実施者が決まったということで、プレーヤーが一通りそろいまして、各プログラムが本格稼働に向けてもうスタートしているところもあれば、まさに今からスタートしようとしているといった状況でございます。他方、眺めてみますと、「政策のための科学」に携わってらっしゃる方々については、非常に多様な、特に研究者の方々のバックグラウンドもあろうということもございまして、それぞれの取組のよいところを伸ばしていきながら、事業全体の求心力をどのように保持していくのか、そのためには、きちんとした目標をやはりきちっと共有すべきであるし、ガバナンスについても考えていくべきだということで、一度立ちどまって考えていくためのたたき台の素案として、この資料を提示させていただいてございます。
 ポンチ絵に示しているとおり、この「政策のための科学」で特に重点的に推進すべき目標ということで、真ん中にございますけれども、政策オプションの立案というのを掲げさせていただいてございます。ここで言います政策オプションの立案といいますのは、三つの視点から成りますけれども、まず、とり得るべき政策についてきちんと考え、そのとり得るべき政策の経済的効果と社会的効果がきちんと説明できるような形で政策オプションの立案がなされるということで、この三つの白枠で囲っているものを3点セットで準備ができて初めて政策オプション後の立案ができるだろうと。これをしかるべく政策決定にきちんと提示していけるようになることが、この事業で特に重点的に掲げるべき目標ではないかということでございます。
 ただ、このとり得るべき政策、あるいは経済的効果、社会的効果を説明していく、あるいはこの関係をきちんと見ていくためには、幾つか足らない部分というか、必要なものがあるという認識でございまして、それが下のほうに四角囲いに書いています、政策とその効果の関係を明らかにするために必要なシステムということで、五つほど例示を書いてございます。
 一つが、社会が直面する問題の多面的把握であろうと。あるいは、客観的根拠となるデータや情報をきちんと整備していくことであろう。あるいは、それらから得られたデータや情報をきちんと構造化して、使い勝手がいいものにしていく。さらには、エビデンスの解析手法、社会受容性なども含むと考えてございますが、そういった手法を開発する。また、これらを担う人材もきちんと育成していくということで、今、具体的に御説明を各機関からもいただきましたけれども、四つのプログラムが走っているわけでございますが、これらがきちんと一つの政策オプションを立案していくという方向性に向かっていくということが、事業全体として必要ではないかという御提案でございます。
 さらに、右のほうに、これらの要素だけでは十分ではないのではないか。この時点でもう一度立ちどまって考えると、さらに必要な要素があるのではないかということで、取り組むべき視点として、二つほど例示を書いてございますけれども、その一つが、政策オプションを客観的根拠に基づいて立案するためのメカニズムをつくっていく。具体的には、政策と経済・社会効果を実際に練り上げていく場なり仕組みなりというのが必要ではないかという部分でございます。あるいは、そのメカニズム自体を解析することも、これは多分、単純な形でつくれるものではないと思いますので、そういうものを解析するような取組も必要ではないかということで、示してございます。
 1枚おめくりいただきまして、もう1点、本日御議論いただきたいという面がございます。本事業で、これまで政策の対象とするものを、どういう程度に置くかということを必ずしも明確にしていなかったという部分でございますが、この下の図にありますとおり、政策あるいは課題というものが幾つかランク、程度、大きさによって分けられるのではないかと。これは、総合科学技術会議がこういう整理の仕方ををしているわけでございますけれども、一番大上段には政策、科学技術基本計画ですとか、新成長戦略ですとか、非常に大きな政策なり計画がございますが、そういったもの。あるいはそれをブレークダウンした形で、グリーンイノベーション、ライフイノベーション、復興再生という、一つランクが落ちるもの。総合科学技術会議の中で「施策」と呼ばれていますが、そういったもの。あるいはそれを具体的に実現化していくためのプログラムや制度、仕組みといったもの。総合科学技術会議では、ここはアクションプランなどを書いてございまして、一番下の層に、各省がいろいろ研究開発で取り組むプロジェクト、研究開発というものを並べておりますが、これは非常に難しい分け方なのですが、主として、この真ん中の部分あたりが「政策のための科学」で取り組むべきものではないかと。
 ちょっとわかりにくいので、私なりに考えてみたんですが、例えば施策レベルですと、研究環境の改善といった、非常に大きなものがあるのかなと。その中に、プログラムの制度としては、例えば大型施設の許容促進といったものが当てはめられて、実際に個別の大型施設としてはいろいろございますけれども、スーパーコンピューターの事業ですとか、SPring-8ですとか、個別の大型プロジェクトがございますが、そういったものが一番下の階層に来るのかなと。これは一つのアイデアでございますけれども、ターゲットとしては、この真ん中あたりを見ていくのではないかなという一つの御提案でございます。
 これとあわせまして、資料6-2、縦長の本文ではなくて、横長の資料を用意しておりますので、こちらのほうもあわせてごらんいただければと思います。
 こちらのほうは、これまで御議論いただいて、あるいはこの推進委員会でおまとめいただいたものを事実関係として並べているものが専らでございます。
 まず1ページ目でございます。事業全体の目標についてとありますけれども、これは、昨年の5月6日、初回の推進委員会あるいは人材育成拠点を採択いただいた後の推進委員会でおまとめいただきましたけれども、事業全体の目指すべき姿という形で掲げさせていただいたものでございます。これは、四つのプログラムを体系的に進めていく上で、どういったことに留意していくべきか、ということで、七つの柱でまとめさせていただいております。
 先ほどの資料とも少しかぶるところもございますが、まる1には、問題の抽出、多面的な把握、まる2では、その抽出された問題をきちんと科学、技術あるいは社会イノベーションシステムという視点で同定する。三つ目が、そういうエビデンスを構造化・体系化し、オプションを提示する。四つ目が、国民を含めた、メディアも含めたステークホルダーの合意形成に役立てることとする。五つ目が、社会の共有財産として蓄積し、情報提供する。六つ目が、コミュニティの形成、構築に努めて、七つ目が科学の深化と政策形成プロセスの深化を両輪で進めるというものでございます。
 1ページおめくりいただきまして、これがCRDSのほうでまとめていただいている、吉川センター長がよくお使いいただいた構造ふかん図でございますが、先ほどの七つの視点が、この輪の中で、政策オプションをきちんとつくっていく中でつながっていくような要素になっているのではないかなという整理の中でもよく使われるものでございます。
 さらに、3ページ目には、これは5月におまとめいただきました、各プログラムを進めていく問題意識というか、趣旨をまとめているものでございまして、これは原文そのままでございますが、政策課題対応型調査研究、公募のプログラム、基盤的研究・人材育成拠点、データ・情報基盤、いずれもこういう設計理念と申しますか、趣旨で事業のほうを進めているというもので、こちらは御参考でございます。
 取り急ぎ、資料の説明は以上でございます。

【黒田主査】 
 どうもありがとうございました。
 ただいままでの状況と、初期に掲げた目標について、もう一度ざっと整理いただきました。1年間、各機関がいろんな形で動いてまいりまして、もう一度、初期の目的に根差して、体系がうまく稼働しているかどうかということを少しフリーに御議論いただくことにしたいと考えております。
 先日、先ほど御紹介のありましたAAASに行ってまいりました。それで、各国とも政策当局者、そして科学者含めて、Science of Science Policyというものの重要性ということについては一致した意見を持っているように思います。それは、最終的に、かなり各国ともこれまた共通にいろんなバジェットがきつくなっている状態の中で、政策当局が科学技術の政策を行うことについて、やはり効率的に、かつ目標に焦点がきちんと合った形の科学技術政策をやっていかなければいけない。そのことについての国民に対する説明責任というものもきちっと果たしていかなきゃいけないという要素が、皆さんあるんだろうと思いました。
 その上で、それじゃ、それを科学としてやるには、何をやればいいのか。これも皆さん共通に、今までの科学技術政策が、ある意味では比較的直観的な選択によってきたこと、それから、各国横並びでどこかのまねをしていれば、それでよかったという時代ではもうなくなってきたということも共通して認識されております。このSciSIPのプログラムが日本でもぜひやろうというふうに立ち上がった経緯は、我が国もまたそういうことを考えて、エビデンスを踏まえた科学技術政策をやらなきゃいけないということが発端になったんだろうと私自身は理解しているところです。
 もう1点は、科学技術政策が、ただ単に科学者の好奇心としての科学技術政策だけではなくて、その結果が社会的な価値を創造するという、ある種のイノベーションに結びつくということの形も、ぜひ政策として後押しをしたいというもう一つの課題があって、マーバーガー等が当初から話しているのは、科学技術政策とイノベーションというのを結びつけて、最終的には、科学技術の進歩がある種の社会的価値創造のためのインプリメントにつながるような格好に科学技術政策そのものをやりたいんだということが、もう一つの、これは各国共通した意識だろうというふうに考えております。
 そういう意味では、先ほど山下さんのほうから御説明いただいた6-1の図の真ん中に政策オプションの立案というのがあって、それをいかにやっていくのかというのがターゲットで、科学技術政策の効率化ということと同時に、国民に対する説明責任、そしてそれを実装するときのインプリメンテーションによって、イノベーションを喚起するという政策のオプションを提示するということが、この科学技術政策の最終目標になっているんだろうと私自身は考えているんです。それを達成するときに、科学として科学技術イノベーション政策をどうつくっていくのかということも、各国これまた非常に悩んでいる、また、試行錯誤を繰り返しているところだと思いますので、その科学をどう両立させていくかということの中で、まさに政策の実行が科学的なものになってほしいということが目標だろうと考えています。
 現在まで、文科省も入れて四つの機関、そして拠点大学、それから領域の大学含めて五つの大学によって動き出しつつある人材育成プログラムもあるわけですけれども、少し最初の目標に照らして、方向がいろんな方向に動き出しているという感じも私自身もしておりまして、これは15年の長丁場ですから、やはり今のところでどう固めていくかという御議論をここでしておくことは非常に重要だと思います。
 今日はまさにフリーディスカッションということで、自由に御意見を賜ればと考えております。どこからでも結構ですけれども、局長、何か、最初に想いを語っていただければとおもいますが、いかがでしょうか。

【土屋局長】 
 ありがとうございます。
 今、黒田先生から全体を整理していただいた認識は私も先生と同じなんですが、実は、この「政策のための科学」を予算要求してスタートさせていただくということで、いよいよ来年からは人材養成が各大学で行われるということで、先生方のお力で具体化しておりまして、大変ありがたく思っております。
 ただ、いろいろ見ていくと、実は当初、私はこの立ち上げに関与してて、その間、1年半ほど別のポストにいたもんですから、ちょっと中抜けで、またこの担当になって見ていると、今、黒田先生からお話があった6-1の絵を考えたときに、これに関係はするんだけども、関係が薄いものと、ぴったりストライクゾーンにびしっと入っているものと幾つかあって、黒田先生も最後おっしゃっておられましたが、方向感がいろいろ出てきていると。ちょっと言い方は悪いんですが、ばらばら感が少し出始めているので、この事業については、エビデンスに基づく合理的政策決定を科学し、そのための人材養成、いわゆる高度専門職業人養成を狙おうということを考えているわけで、それのストライクゾーンというか、構造をしっかり共通的に持って、個々にいろいろ行われている事業が、そのどこに入るかというのをよくよく見ておかないと、どんどん発散していって、結局、アウトカム、アウトプットが何だったかわかんなくなる可能性が強いんじゃないかということで、今日の推進委員会で、この構造は何であるか、ストライクゾーンは何であるかということをしっかり整理していただいて、ちょっと外れ加減であるようなものがあれば、軌道修正を図っていただくということが大事じゃないかなと思っております。
 そういう意味で、このピラミッドのほうで出ていますが、例えば科学技術関係投資が25兆円というのが第4期の基本計画で決まっていますが、25兆円投資したらどうなるかという、ざくっとした話は多分入らないんですね。グリーンイノベーションという固まりでどうかなという感じはしますが、もう少し、例えば国が太陽電池の開発を行うことが、こういう意味で意味があるんだと。国ですね。産業界が行うんじゃなくて、国が投資することがどう意味があるかという、これは、この事業にぴったりはまるんだろうと思うんですが、そこから上位レベルになってくると、なかなか難しい。
 また、下位というか、具体的な話になってくると、そこもどこまでやるのかというところがあると思うんです。
 それから、もう一つぜひお願いしたいなと思っていますのは、昨年の大地震等が起きて、その後の対応について、今、検証が随分いろいろ行われておりまして、文科省は非常に厳しい立場にあるんですが、そういうような危機が起きた際の緊急時対応研究というようなものも役に立つ、いわゆるコンティンジェンシーリサーチというかプランといったようなことも求められていますので、場合によっては、「政策のための科学」もうまく使えるかなという問題意識も持っております。
 私の発言自身、ばらばら感があって恐縮なんですが、そんなふうに思っておりますので、よろしくお願いします。

【黒田主査】 
 どうもありがとうございました。
 もう完全にオープン、フリーディスカッションにしたいと思いますので、御意見いただきたいと思います。
 じゃ、有信さんからどうぞ。

【有信委員】 
 サイエンスと言ってしまったら、ばらばらな方向に向かうのは当然なので、サイエンスというのは、もともとディシプリンの側でどんどん突き進みますから。ただし、ここでJSTがやっている構造化というような観点で全体的をふかん的に見ながら、本来の目的に合った形でそれぞれのサイエンスを構造化していって、位置付けをきちんとしていくという作業をやらないといけないと思うんです。
 ただ、その中で、もう一つ、CRDSがやっている中で、フリーディスカッションなので話が飛んで申しわけないんですが、資料6-2の吉川先生がつくったという説明がありましたこの絵、サイエンスがばらばらにならないために、実際にはニーズの側から個々必要な課題を抽出しながらサイエンスに結びつけるという絵になっている。現在、科学技術イノベーション「政策のための科学」の中でやられているのは、ここの部分というよりは、むしろ左側の現状分析のサイエンスというのが、それぞれやられているという状況だと思うんです。
 CRDSの説明の中に、Science Questionという言葉がありましたけれども、つまり、コンテンツとしての科学と言うとちょっと言葉は悪いんだけど、いわゆる本来の科学。いわゆるフィジカルサイエンスだとかケミカルサイエンスだとかいうサイエンスの中に、本来は社会的課題を解決するために非常に重要な研究があるということも問題意識としてあったわけです。例えば、随分昔にスタートされた環境のある一部分に対する研究。それ以外に、産業のイノベーションに結びついたようなサイエンスの研究も、発表されたときには、それはサイエンスであって、それが実際に実用化されるというほどの意識はなかった。つまり、ニーズそのものはまだ潜在的であったり、周りの技術的な環境が整っていなかったりということで、イノベーションにはすぐには結びつくとは認識されていなかったけれども、重要なサイエンスの研究があった。こういうものを、いわば長期的な視野の中で発掘していくという視点があったような気がするんです。
 これは、今回の事業に直接かかわらない話なんだけど、CRDSがこの絵をかいたときの一つの要素として埋め込まれてたような気がするので、そこの部分については、やはり何らかの形で意識しておく必要がある。例えば政策研がやってるようなミクロ経済の分析等々の中から、いわば潜在的なニーズが何らかの形で顕在化できるかというような科学的なエビデンスが出てくるかもしれないし、そういうことも含めて検討しながら、ある意味で、本来のコンテンツとしての科学を意識する必要がある。科学技術政策で言っている科学技術のところの科学、ここに対するパスを常に意識しておかないと、この絵かいてるうちに、ニーズ発掘手法など、完全に世の中で言われている当たり前のような話になってしまうので、そこはちょっと注意をしてほしい。

【黒田主査】 
 今、有信さんから御指摘いただいた点は、我々もCRDSがSciSIPのプロポーザルを出すときには、やはり最初に、そこが一つのキーだと。というのは、科学技術政策によって、社会のどういう問題に対してこたえることができるのかということに、やはり焦点を合わすことが、科学技術政策を効率的にやる一つのキーになるだろうと考えています。何となく漠然と社会的なニーズを把握するということだけではなくて、現在の科学の水準がどこにあって、何をどういう形で動かしていけば、科学技術政策としてそのニーズにどういう観点からこたえられるのかということをきちっと同定することがまず必要だろうというふうに我々も考えていました。
 そういう意味では、構造化プログラムの中の一つとしてCRDSが考えているのは、CRDSでつくっている各科学者の知見を集めた構造化ふかん図というのがありますが、あのふかん図と、そのふかん図の科学技術を進めたことによって、社会の何が解決できて、どういうメリットがあるのかという社会的ニーズとを結びつけることが非常に重要だろうという感覚は持っています。
 そのことによって、まさに科学技術政策が何をやるべきかどうかとか、それを先ほどおっしゃったように、国がやるべきなのか、民間がやるべきなのかも含めて、同定をすることもできるかもしれないというふうに思っていまして、それは非常に重要な課題になるんじゃないかと思っています。
 後からまた議論いただけると思いますが、何かほかにありますか。
 笠木さん、例のエネルギーの関係で、今多分、非常に結びつく話のような気がしますけど。

【笠木委員】 
 机上配付資料1について若干御紹介をしたいと思いますが、ちょっとその前に、今の有信さんの御意見で、私も類似の印象を持っていて、この1年、私、素人ながらにここでいろいろ勉強させていただいて、ここで何かやろうとしているのはむしろエンジニアリングなんだと、つまり、ポリシーをエンジニアすることなんだと思うんですね。だから、要は科学的、論理的に、実行可能で極めて現実的な政策オプションをデザインするということなんでしょうか。ただし、政策の科学で、ここでサイエンスとおっしゃっているのは、学術会議がそうなんですけど、新しい知識を生み出す活動と、それを利活用することを、科学と広義で言っているんですね。そういう意味でサイエンスと言っておられるのかなと。
 ただし、私は当初から、サイエンスと言っているところには自分自身で何か理解ができないところがあって、1年間いろいろ伺っていて、結局それは何でしょう。経済学とか、行政学とか、政治学とか、工学とか、あるいは場合によっては理学とか、それらが何かうまい形で構造化されたり、インテグラルされたときに、その政策の科学としての基礎科学の部分が固まっていって、実はそこの部分の発展の可能性がないとおそらく将来ディシプリンとしては生き残れないんだと思うんですね。つまり、単に既存の知識だったら、これはカレッジでやればよくて、ユニバーシティーでやる必要はないんですね。だから、いつも研究が裏側にあって、その分野が進展していって、しかも現実の問題に対してエンジニアできるということがこの科学の非常に大きな特徴でもあるし、メリットであるような気がしています。有信さんの話を伺っていて、そう思いました。
 この資料ですが、これはCRDSの環境エネルギー分野の人たち、私もそうなんですが、既に2年ほど前から、国のエネルギー計画が必ずしも科学的に立案されてないという状況に危惧をいたしました。端的に言いますと、麻生政権のときにマイナス15%というのを打ち出したんですが、あのときも六つのオプションがあったんです。温暖化対策をやっていくと、そのときに経済はどうなるんだと。GDPが2020年で大きく増えるのか、減るのか。あるいは鳩山さんのときはマイナス25%と言いましたので、ほとんど帳尻りがつかなくなったと思いますが、ただし、そのときは経済分野の方々、個人とか、組織がいわば政治の側から駆り出されて、各モデルで一生懸命計算をしたんですね。ただ、出てきたものの結果だけが議論されて、どんなモデルが使われて、どんな前提でどういうふうに計算されたのかというのは一切ブラックボックスで、そういう暇もなかったと思いますが、常にそういう形でつまみ食いされているような形でエネルギー政策のための科学的なものが利用されている状況にあったということで、我々はそれを非常に危惧をいたしまして、どうすれば良いのかということで調査研究を続けてまいりました。過去1年、さらに専門家へのいろいろなヒアリングをやって、現在、印刷中ですが、「エネルギー政策のための科学、技術・経済モデルの研究開発」ということでまとめました。この場の科学技術イノベーション政策のための科学とうまく対応するかどうかわかりませんけれども、考え方としても似ていますし、具体的な事例としてはこういうことがあるんだということで御紹介したいと思います。
 1枚めくっていただきますとエグゼクティブサマリーがあります。この分野は、エネルギー政策をつくるためのいわばツールを研究開発するコミュニティをきちんと育てて、そこでの研究成果を実際の政策オプションを形成するために使っていきましょうという、まだ出発点にいるのですね。今現在エネルギー計画について、国を分けるような議論が行われていますけれども、今すぐ間に合わないけれども、日本が将来、繰り返しこういうことは作業としてやらなくちゃいけない。そのためのツールは必要であろうということで、要はエネルギーにかかわる技術の開発、あるいはそれが実際に市場に入っていく。どういう技術を推進するかというようなことによるわけですが、それが市場に入り、産業の構造が変わり、人の生活が変わり、あるいは対外的に言えば、どんなところからエネルギーの資源をとってくるかということで外交も変わっていくと思うんですね。それから、日本だけではなくて、日本、少なくとも東アジアでエネルギーの需給がどういうふうにバランスとれていくのかというようなこと、全てある種のモデルの中に組み込むということで、それには少なくとも技術的な側面と経済的な側面があるでしょうと。このような研究コミュニティがあるんですけれども、それぞれが小さいと同時に、分離した状態になっているということで、こういうことを中立、オープンで、自律性を保って研究できるコミュニティをまずはつくる必要があるということなんですね。
 通常、技術モデルというのは、新しい技術が入っていったときの影響等について定式化をする、あるいはエネルギーとか、物質のフローについても定量化をしていく。もちろん環境との関係が出てまいります。経済モデルでは一般均衡の概念とか、限定合理性等の経済学のフロンティアの知識を使っていろいろなモデル計算が行われます。こういうことがきちんとできてくると、エネルギー政策をつくるときに、科学的、客観的な根拠をきちんと出していける可能性があるということだと思います。
 現状は、工学系の方々、あるいは経済学系の方々の中にこういうことを専門にやっておられる方がおられるんですけれども、それらの方々はそれぞれの分野の片隅におられるんです。主流にはなっていないんです。しかもこの人たちはなかなか一緒に出会って仕事をすることがないという状況で、この点は非常に残念なことで、重大なミッションを担っているにもかかわらず、それが進んでいない。これは国としては大変重要ではないかと思っていて、つまり、エネルギー計画というのは単にエネルギーの需給の問題では多分ないんですね。これは先ほど申し上げたようないろいろな波及効果、人の生活から外交まで全部かかわるような、国のいわば総合計画なのです。ですから、そこの中の核になる部分としてのエネルギー計画をどう立てるか。そういう科学的な政策、科学的な根拠に基づいた政策形成のツールをつくるための研究開発推進、あるいはコミュニティの育成ということをやっていただけないかという提案を、来月には印刷公表する予定でございます。
 以上です。

【黒田主査】 
 どうもありがとうございます。私もずっとエネルギーの基本計画をつくってきたので、いろいろな形で反省点もあるんですけど、僕の経験では、一番厄介なのは、政策オプションをつくるときに科学技術のナレッジと、それから経済学者ないしは経済が考えている政策モデルとの接点が非常に結びつきにくいということです。特に原子力については貧しい基本計画で非常に反省しているのは、やっぱりリスクに対するオプションをきちんと科学的に出せなかったということが非常に悔いているところなんですけれども、そういうことまで含めてモデルをつくることの知見なり、オプションを政策提示する知見はきちんとした科学者が参加してやれば可能だと思うんですけれども、そういうことをやれる一つのいい事例じゃないかなというふうに思っています。これはまた特別の分野でございます。
 ほかに今回のSciSIPそのものについてのいろいろな御意見があると思いますが、どなたからでも、どうぞ。

【小林委員】 
 今のエネルギー問題は大変いいイグザンプルだと思うんですけれども、笠木先生のおっしゃったことから出発するとして、この事業でどこまで行けば……。

【黒田主査】 
 どこまで行けるか。

【小林委員】 
 アウトプットをどういうものだと想定すればよろしいんですか。そこがもう一つ。

【黒田主査】 
 私の経験でいきますと、僕、3回、基本計画に関与しているんです。そのうちの最初の1回はほとんどモデルなしに、モデルなしと言ったら失礼ですけど、マクロモデル程度のモデルでありました。2度目のモデルはかなり詳細なモデルを動かしました。一般均衡のモデルにして解くことをやったんです。それに約3年、モデルをつくるのにかかりました。これは今もうちの大学、慶應で動いていますけれども、かなり正確な科学技術情報が入る余地を持っていると思います。それが科学技術等の知恵をかりるといろいろなシミュレーションが経済効果としてできるような形になると思いますので、例えば政策のオプションとして、先ほど出た15%なのか、25%なのか、それを実現するときに炭素税なのか、排出権取引なのか、自主的行動計画であるのかというのは、いろいろなオプションがあると思います。そのオプションの結果がもちろんGDPをどういうふうに変化させる。1人当たり所得をどれくらい。それからエネルギーの価格をどう変化させることによって、人々にどれくらいのウエルフェアの変化があるのか。これまでは出せると思うんですね。そういうところに対して先ほど申し上げたように、リスクにかかわる問題は残念ながら、そのときは考えてませんでしたので入ってきてないんですが、やる可能性はあると思います。ただ、今後のエネルギー計画というのは、今までと大きく違うのは、分散型エネルギーということになってくると、社会のシステム、旧電力体制そのものを変えていかなきゃいけないという、そういう要素も出てまいりますので、そういう要素まで含めた何かシミュレーションができるモデルということになると、これは過去に事例が、データがないものですから、いろいろな形でデータの構造そのものからある種のオールタナティブをつくっていくという新しい作業が多分生まれますし、そういう社会構造をつくることのコストをどう評価するかというのは、これはものすごくいろいろな意味で考えなきゃいけない、違ったジャンルになってくるんじゃないかなという気はしますけれども、何かそういうものが常にブラッシュアップされながらできるような一種のツールを開発することが、一つのターゲットになると思います。

【笠木委員】 
 そうですね。

【黒田主査】 
 ツールを政策当局が常に持っているということは非常に重要だと思いますね。

【小林委員】 
 よくわかるんですけれども、この事業としては、そういう個別のことに対するある種の分析、答えまで行こうとするのか、もう少し一般的なツールを準備するところにウエートがあるのか。

【笠木委員】 
 このレポートをまとめるのに当たっては黒田先生とも御相談をして、これ自体も、これはエネルギーの側から来たものですが、どういうふうに進めたらいいかということを一番悩んだんですね。レポートはできましたけれども、どういうふうに進めたらいいかということは、我々としても未だはっきりしたイメージ持ってないんですね。ですから、これは今日、御参考までに出させていただきましたけれども、むしろこちら側から見て、例えばこれはある形でリンクすべきだとか、あるいはある程度別々のフォーカスがあるということなのか、そういうことを議論していただけるとありがたいということです。

【黒田主査】 
 もう僕ばっかりしゃべっていてあれですけど、小林先生の御質問に僕はこう考えているんですけれども、先ほど有信さんがおっしゃった社会の問題、そして、それに対して現代の科学が政治にどこまでこたえるレベルに行っているか。さらにこの部分を進めればこの問題が解決できるかもしれないという、まず技術と現代の社会の課題についてのマッチングというか、同定があって、そこから選ばれた課題について、どういうオプションの政策がとり得るかということにも対応するようにしなければいけないと思うんです。そういうオプションや課題というのはいっぱい多岐にわたるので、汎用モデルがあって全部ができるというものではおそらくないと思います。ただ、科学技術をどうとらえるかとか、それから、現在の社会問題をどうとらえるか含めて大枠、経済のメカニズムをこういうふうにとらえようというツールは多分できるんだろうと思うんですね。その中で例えばナノの技術ということであったら、どういう構造で技術の構造が社会にインストールされるかとか、ライフであれば、何を変えれば、何を見なきゃいかんのかということがわかると、モデルの構造を少しずつ変えていくという、そういう形にならざるを得ないんじゃないか。そういう何か、汎用的にはならないですが、ある種考え方を整理しておくというところのバックグラウンドにSciSIPの科学が要るんじゃないかというふうに思っているんですけれども、いかがでしょう。

【桑原委員】 
 少し違う観点かもしれないんですけど、このプロジェクト、最初の1年間はとにかくチームをつくるということで、大学チームが決まったのもついこの間ですし、ようやく5大学が顔を合わせて議論ができる環境になってから1か月たったかどうかぐらいですね。ですから、土屋局長おっしゃるように、ようやくスタートアップの体制ができた段階で、これからメンバーは少しまた増えたりするかもしれませんけれども、当面どこに関心があるんだということを、ある場合は文部科学省から、ある場合はこの委員会として、この全構成メンバーにメッセージを出していくということが今必要なタイミングだと思うんですね。
 ここでまず強く確認したいのは、この絵で四つ、拠点大学も含めてこういう政策オプションへの貢献を目指す、どういう貢献かというのはこの後、議論したいんですけれども、これが中心であると。ここを強く確認したいと思います。多分NISTEPは、こういうことをやるのは当然要求されていると我々も思っていますし、皆さんそうなんでしょうけど、例えばこの拠点大学は15年かかって人材をじっくり育てればいいんだと。そうすると、当面二、三年で何か政策オプションを出すなんていうことは、大学の方々は必ずしも考えていない可能性があると思います。まだそんな議論していませんから。いや、そうじゃないんだよということをちゃんと議論しなくてはならないし、RISTEXのファンドでいろいろ基礎的な、基盤的な研究をおやりになる大学の先生方等も、そういうことが一定の時間軸で求められるんだということを強く伝えるということがまず重要だと思うんですね。
 それが第一点です。次に、じゃ、何をやっていくかということで、今御議論があったようなエネルギー政策というのは非常にいい事例だと思うんですけれども、そういう構造的なことで、エネルギーはこうだ、環境はこうだ、保健、医療、健康の政策はこうだと。それはたくさんあるはずなんですけれども、そういったことについていろいろなことに取り組んでいくと。多分、今CRDSが一生懸命やっていただいているふかん的作業というのはまさにそれを浮かび上がらせようとする枠組みづくりで、私は枠組みづくりは非常に重要だと思うんですけれども、ただ、こういう帰納的アプローチはものすごく時間がかかるんです。1年、2年では多分皆さんが納得する、まずこれで行きましょうなんていう話にはなかなかならない。それは全体像を描こうとしますから、そうすると、どこかでまた詰まっていないところがいっぱいあって、これでオーケーということにはなかなかならない。どこが局長のおっしゃっているストライクゾーンなのかというのはあまり見えないままにどうしても進んでしまうおそれがあると、そんな気がするんですね。
 ただ、焦点を明確にすることは、私は絶対必要だと思いますから、これから考えるべきことは、まず当面この辺は少なくとも入ってほしいんだという、何かスタートアップ時点での要請みたいなものですね。それは決して全体像ではないし、それ以外のことをやることを排除するわけでもないけれども、これが関心事だということをスタートポイントで設定して、こっちから何か演繹的なアプローチでやっていく。入っているメンバーにもまずそこに貢献するということを意識していただく。議論の上で、主たる貢献者はだれで、じゃ、その人には一定の責任を持っていつまでに何かをやってもらいましょうと、こういう議論にすることが必要だと思います。それから、全体のアプローチとして、黒田先生もおっしゃいましたけど、確かにアメリカの物まねをしていれば済んだ時代は終わったので、じゃ、今何が必要かというと多分、求められるのは、日本社会が世界で最先端を進んでいる人口動態の変化、それに伴う新しい経済環境、ここなんですね。多分10年以内にヨーロッパの主要国はそういう状況になりますし、中国も少なくとも20年以内に必ずそうなる。後でみんな追いかけてくるわけです。だから、我々が先行していろいろやるべきことは、デモグラフィックチェンジに則した科学技術イノベーション政策とは一体何なんだと。多分ここが根本だと思うんですね。だから、演繹的方法、機能的方法もそこを少し意識したポイントを議論することが必要と思うんですね。
 あと、三つ目として、プラクティカルにそれを考えるときに重要なのは時間軸なんですね。大学の人たちも10年のうちには何か出そうと、多分そうお思いだと思うんですけれども、多分行政側は10年後に成果が出ますなんていうのでは耐えられない。来年度の概算要求というのは多分6月、7月ですから、今からあと3か月で、何かやってくれと言われても、発足したばかりの大学チームは多分とても対応できない。これも現実でしょう。そうすると時間軸が大切で、それから、誰が何をですね。何をするかも、非常に重要で、エネルギー政策のさっきの議論は限りなく、この1番上の政策に近いような感じもします。全てが入ってきますから。それで個別のプロジェクトの範囲までやると多分このSciSIPではとてもカバーし切れないので、このペーパーでこの真ん中辺に丸つけていただいたのはまさにそうなんだろうと思います。そうすると、私の提案は演繹的アプローチで、この施策とかプログラムに絡むようなティピカルな行政側のニーズというのはまずこういうものだと。それを多くのメンバーで議論して、あと3か月と言われても、多分皆さん呆然とするだけかもしれないんですけれども、例えば来年の概算要求、今から1年、それから、その次の年の概算要求、今から2年と、という時間軸で、一体何ができるのかと。こういうことをつめていけば、プラクティカルな話になってくると思うんですね。そのときに、ただ2年でやれることだけやっていたのでは、まさにさっきの御議論の極めて原始的なエンジニアリングのレベルで終わってしまうので、そうだけではない話も同時で並行で走らせることになります。ただ、プラクティカルな部分がないとやはりこういう政策に貢献するプロジェクトをやっていて、二、三年して幾つか目に見える果実が出てこないと何やっているんだという話になると思います。それから、ぜひお願いしたいのは、とりあえず出すテーマについては、どんどん増やすのはいいんですけれども、これはもういいとかということはあまり言わないでぜひいただきたいと。
 例えば政策研は政策課題対応型で、去年の今ごろは25兆円だけをやれと言われていたんです。私は、でも、それだけじゃ、ちょっとというんで、いろいろだまし、だましと言うと語弊がありますけれども、さっきのミクロデータの分析とか、ミクロ経済分析、このようなテーマを進めつつ、マクロももちろんやりますという構成でやっています。さっきおっしゃった大局観は、私個人としては全く同感なのですけれども、ただ、大学チームなどはそう急に軌道修正がきかないので、ある程度、例えば3年間ぐらいはまずこれをやろうと言ったら、少し付加するのはいいんですけれども、基本は継続的に進めるということでぜひやっていただく必要があるかなと思っています。
 以上です。

【野間口委員】 
 よろしいですか。

【黒田主査】 
 どうぞ。

【野間口委員】 
 先ほどストライクゾーンという話が出ましたけれども、この種の研究というのは、あまりストライクゾーンをはっきりと決め過ぎると、政策のための科学という領域の研究にそぐわないのではないかと思います。今までの科学技術の進展で、世界も、日本も非常に成長してきたわけですが、いろいろな課題も生み出しながら来たわけです。そのようなことの反省もあってしかるべきで、そういうのを予見できる科学でなければいけないというような気がします。第4期の科学技術基本政策でレギュラトリーサイエンスについて言及しておりますが、それは後からフィードバック的に出てきたニーズに対応しているので、このニーズ対応というよりも、科学と言うからには、先が読めるようなことがなければいけないのではないかと思います。そういう意味では、汎用化、普遍化はちょっと無理なんじゃないかと思うのである領域に区切ってもいいのではないでしょうか。環境エネルギーなんかは先ほどのお話を聞きますと、まさにいい取組で、これまでもこういう志を持ってスタートした研究はあったように思うのですが、経済環境とか、世界環境がちょっと変われば重要性ががらっと変わってしまいます。だから、長期的な視点で国の哲学としてやっていくのだという領域を決めて取り組んでいくことが非常に重要になります。この会議は、私が委員を務めている会議の中で一番難しい会議なんですが、こういうのをやっている意味があるのではないかなと私は思います。そういう意味では、この1ページのまとめ方というのはなかなかのものだなと。納得性の高いものに持っていく、いけるかというところが課題だと思います。

【黒田主査】 
 おっしゃるとおりで、科学の先端を知っているのは、科学者自身が一番よく知っているはずなので、その科学者が今の社会問題についてどうこたえることができるか、もしくは科学を進めるだけで新しい問題が生まれてくるかまで意識を持って問題を同定するというのは非常に重要なんだろうと思います。それができると、その問題解決も含めて、どういう科学をどう進めればいいかという目標がはっきりするので、そこで初めてオプションがつくれるんだろうという気がしているんですけど、森田先生、いかがでしょう、その社会科学的から。

【森田委員】 
 きょうは、局長が御意見をお持ちで、それを伺うというふうに聞いてきたものですから、先ほどからそうかなと思っていまして。

【土屋局長】 
 ちょっと……。

【森田委員】 
 私、社会科学といって、これは科学かどうかよくわからないんですけれども、多分厳密な意味からのサイエンスから言うと科学でないんですけれども、アメリカでは伝統的にポリシーサイエンスとか、ポリティカルサイエンスとか言っていまして、イギリス人はそんなのサイエンスじゃないと。何がサイエンスかをめぐってやっている世界ですけれども、こういう政策のための科学、ポリシーサイエンシーズというのは、第2次大戦後、そういうのを育てるべきであるということで、ずっとある程度研究は続けて、進んできておりますし、そのための人材育成もしてきていると思います。ただ、それがディシプリンとしてどういうものなのかといいますと、これは必ずしもはっきりしないところです。だから、最初にこういう科学をつくるべきだと言ったのはハロルド・ラズウェルというアメリカの政治学者ですけど、彼はポリシーサイエンシーズと複数をつけていて、様々なディシプリンのあれを応用することによって、少なくとも政策の質を高めていくべきであるという考え方をとっていたと思います。
 今回の場合も、まだそういうことをやっているのと言えばそうなんですけれども、まだそうやらざるを得ないという状況があるというふうに思っていまして、これは大変重要なことだと思います。その意味で言いますと、科学技術イノベーション政策における政策のための科学と長いんですけれども、最初の科学と最後の科学はちょっと意味が違っていると。最後の科学のほうは今申し上げましたように、それを純粋たる科学であるかどうかは知りません。でも、一つの社会において政策形成を合理化するための様々な知識の体系のようなものであるというふうに思っています。ただ、これ申し上げましたように、ディシプリンというものは必ずしもまだ確立されていませんので、今それをどうやってつくっていくかという段階だと思います。
 したがって、あらかじめ最初からストライクゾーンがあって、そこに入ったのはストライクで、それ以外はボールというよりも、いろいろなボールを投げてもらって、どのあたりにするのがゲームがおもしろいかという段階かなと思っていまして、今回のRISTEXの公募プログラムについて言いますと、そうしたメッセージの発信の仕方が少しこちらにもやや不明確なところがあったから弱かったのかもしれませんけれども、いろいろな球が飛んできたわけです。中には、これボールとぎりぎりの球も結構ありましたけれども、今のところはそういうものを合わせて一つのストライクゾーンになるのかなという形でやって、2年目は少し絞り込まなければいけないと思っています。本当は、ど真ん中のストライクを期待していたんですけれども、これは公募ですので、投げてこないとしようがないというところがあって、それはもう少し誘導するような形で今回は考えているところです。
 このプロジェクト全体についての私のイメージですけれども、そうした意味でのできたディシプリンというのも、いわゆる厳密な意味での科学ではなくて、その法則に従って、一定の方法に従ってエビデンスを集めれば論理的にベストの政策が出てくるとか、あるいはベストとは言いませんけれども、幾つかのオプションというものが出てきて、そこは最後は価値判断だと。そういう美しい形でいくというのは理想であるけど、かなり難しいと思うんです。そもそもこういうことが言われ出したのもそうですし、私自身もここで認識しておりますのは、現在の政策のつくり方は何なんだという問題があって、思いつきと勘かどうか知りませんけれども、少しその辺がやっている科学技術政策の割には政策の決め方というものが乱暴なんじゃないか。ただ、これを100%エビデンスに基づいた形でのかつての社会主義社会の計画経済のような、ああいう形でというところではなくて、少しでもそれに1歩でも近づけるために、少なくとも単なる思いつきではなしに、ある程度きちんとしたデータを出して、そのデータに基づいて、そこから議論しましょうと。そのデータの出し方と議論の仕方というのはかなり重要なところではないかなと。
 それをやることが必要ですし、この政策という場合には、次の話になりますけれども、我が国の科学者の思考というのはどうしても狭くてタコつぼ的なところがありまして、これをいかにしてふかん的な形で広げていくのかというのと、もう一つは、どうしても研究者の発想というのは内向きになって、研究者の世界の中でどういう形で議論するかということになってくる。ただ、多くの問題は、今度の原子力の問題もそうですし、薬の副作用の問題もそうですし、いろいろあるんですけれども、対社会的なコミュニケーションがまずくてオプションが制約受けるというケースがかなりあると思うんです。その意味で言えば、どう社会的にコミュニケーションを拡大していくか、上手にやっていくか。そういうことを考えていこうという仕組みですので、いろいろなことがあり得るのかなと思っています。
 私自身のやり方としては、これはちょっと抽象的に言って、こういう話をしてもなかなか理解できないときに、一つ、こういうのが我々が期待している政策のための科学ですよというモデルができないかなと思っていまして、一つは、先ほど笠木先生がおっしゃいましたエネルギーの話です。エネルギーというのは非常に重要だと思いますけれども、これは私の印象なんですけれども、これはなかなか経済モデルとくっつけていく場合には難しいところがあって、この間もIAEAの前の事務局長の田中さんと話していたんですけれども、要するに我が国のエネルギーはいろいろやったとしても、予想できない要因でもって変わる可能性がある。半年間で円が20円、30円変わるということもそうですし、ホルムズ海峡で何が起こるかわからないと。次の話にしても、イスラエルが誤った情報でイランを攻撃した場合に何が起こるか。そこまで読んで政策をつくれるかと言ったら、まず無理だと思うんです。その意味で言えば、ある程度の方針を示すという、その意味ですと少しの緩やかなものとして考えざるを得ないんじゃないか。
 先ほどおっしゃったコンティンジェンシーリサーチというのは、これはすごく重要だと思うんですけれども、もし考えるとしたときに、一つの思考実験としてやるとしたら、最悪のケースを考えていて、原子力発電所は発電が全部停止をしていて、そして、石油エネルギーがほぼ停止した状態で、そのとき、国民生活にどういう影響がありますかと。かなりある意味ですと厳しい影響があると思いますけれども、国民の皆さん、それに耐えられますかというような問いかけも含めて議論をしていかなくちゃいけないと思うんです。ちょっと今までのところは、そういうことは絶対ありませんという前提で、起こり得る事態を想定外として外していたのが今回のケースになっています。そういうことが言えると思いますし、もう一つ、例を挙げますと、バイオのほうで、RISTEXのほうの公募にもあったんですけれども、お薬の開発の場合には、日本には非常に先端的なあれがあるわけですけれども、それがなかなか要するに日本で病気で苦しんでいる人の救済のために市販されないわけです。そのために何が問題なのかと。一つは、企業が製品開発に乗り出さないということ。企業が製品として乗り出すためには、薬事承認を受けて、保険収載を受けなければいけないわけです。そのために大きなデバイスラグがあると。これはどうしていくかと。それを全部通して考えていくということが必要なんであって。
 長くなりましたけれども、最後に、人材について申し上げますと、先ほど言いましたように、広く見るという人と、社会とのコミュニケーションができるような人材を。ただ、これ今の日本は育てて、そういう人が1人もいない世界ですので、どうやって育てていくかということなんですけど、ただ、そのイメージはかなり共有して持っていくということが必要ではないかなと思っていまして、私も東大で公共政策大学院をつくって、ずっとかかわってきましたけれども、海外で同じようなところをやっているのは、そういう意味での政策がわかるスーパーエリートの養成にいろいろなところが力を出し始めていて、ぜひそういう意味で言いますと、いろいろ申し上げましたけれども、実際にどういう形で使える政策ができるのか。それも思いつきレベルからかなり高いレベルです。それをきちんとやり、あえて言えば、政治家であるとか、いろいろな人たちは、エビデンスと言いながら自分たちに都合のいいデータを出してくる可能性があるわけです。そういう人ときちんと議論して確定できるような、そうした能力を持った人を育てていくのが必要ではないかなと思っていまして、結論になりますけれども、もう少し緩やかに少しずつ絞っていくという形で、これを進めていければと思っております。

【黒田主査】 
 郷先生、いかがでしょうか。

【郷委員】 
 ありがとうございます。15年というのは長いようで、でも、結構短いのかなという気もいたします。というのは、10年前に私、ライフサイエンス委員会で何を議論していたかということをたまたま資料を捨てようと思って見ていましたら、今やっていることとあまり変わらないんですね。この10年、何やっていたのかとがく然としたということがありまして。課題が解決されていないというのは、何かが問題だったんだろうと思うんですね。
 これから15年先にあるべきことを考えるとき、非常に厳しい反省になるかと思うんですけど、過去、例えば15年間にやってきたことというのは何だったのかと振り返る必要があります。これはデータベースに一番深くかかわってきます。それをきちんと振り返らないと次の本当にやるべきことというのは見えないのではないかと。そこを隠しておいて、次に何があったらいいでしょうねという話にはならないだろうと思います。
 最先端の科学イノベーションがどうやったらできるのかということも含めて、できなかったんだったら何かが悪かったわけですから、それを乗り越えることが大事じゃないかなということと、それから、データベースというのがこの図の中で五つの項目の二つに書いてありますけれども、先生方が思っていらっしゃるよりも、実際はものすごく大変な作業と人手が要るし、時間も要ることは間違いないので、どこかに頼めばいいという話ではないと思います。本当にこれからの政策を決定するために使えるデータというのは非常に少ないです。ばらばらにはあるんですけれども、全体を一望できる、つなげて見られる、データシステム構造が非常に欠けておりますので、ここに書いてあるほど簡単じゃないと、一番気になるところです。
 人口動態は、明らかに前からわかっていたことなのに、どうしてこれが早く手がつかなかったか。まさに政策が足りなかった。エビデンスに基づくことがやれたはずなんですけど、それができなかったという、非常に大きな問題です。子供が減り高齢者が増える、社会全体としてそれをどう迎えていくのか。もちろん科学技術と非常にかかわっているわけですけれども、先ほどこの公募には女性の応募がなくて、採れなかったとおっしゃったんですけど、男女共同参画というのは例えば文部科学省でもいろいろ進めているのに、実際には、政策の場に効いてこない。予算を女性研究者の支援のために使っても、新しいプロジェクトを進めるときに、反映させていきましょうと、表れていない。それはデータを見れば明らかなんです。15年は結構短いですから、話題に焦点を合わせていかないといけないと思います。

【笠木委員】 
 先ほど森田先生が言われていた人材育成にかかわる点なんですけど、多分ここに特に大学でかかわる若い人たちには、理工系も人文社会学系もおられて、さっきのエネルギー問題と一緒なんですが、それぞれのまず主専攻というか、ディシプリンのところがあって、それをいわば境界を超えて一生懸命勉強したり、研究したりするわけです。これは結構大変な作業だと私は思います、研究を、勉強をそうやって広げていくのは。
 私は、この事業の中で拠点大学等がある種の標準カリキュラムというのか、何かこういうことは必修で勉強すべきだというものをきちんと骨格としてつくり上げる必要があると。もう一つ、今この事業のフォーカスが少し揺れているところがあったり、ぼやっとしているということなんですが、ここに巻き込まれた若い人が被害者にならないためには、こういう勉強をした人に資格として何らか認めることを将来つくることを今の拠点大学の方々に考えておいてほしいと思っているんです。そうでないと結局は、経済なら経済の人は、結局は経済の人間で大学を出ていくでしょうし、工学部の人は工学部のある学科の人として外へ出ていくわけです。少しあちらも勉強しましたよという程度になってしまって、このディシプリンをバックボーンに仕事をしようと本気で考える人は、非常に少なくなってしまうんじゃないかと。だから、何らかのサーティフィケート程度ではちょっと弱いと私は思うんですけれども、ある種の資格のようなものができて、それで行政もそういう人を積極的に採用する。そういう形ができてくると、これが本当に生きてくるような気がするんです。

【黒田主査】 
 有信先生、どうぞ。

【有信委員】 
 郷先生の話を聞きながら考えていたんですけど、例えばエネルギー政策のようなものを具体例にするのもいいし、ただエネルギー政策というのはどちらかというと目的志向なので、例えばライフサイエンスのような科学を対象としたことで、これに対する政策がどうあるかということも重要。そういう流れの中で今、産業サイドで議論していて、一番重要なものの一つはコンピューターサイエンスなんです。コンピューターサイエンスについて言うと、もう20年近く前に、アメリカではUCバークレーにも、スタンフォード大学にも専用の新しい建物ができ、それ以前からものすごい勢いで学生は増え、そういう事実があったにもかかわらず、日本の情報科学とか情報工学の定員はずっと40人ぐらいのままずっと来ているわけです。この状況が例えば今の日本の産業の在り方に大きく影響しているかもしれないというのがあって、ライフサイエンスも同じようなことが多分あると思うんです。逆に言うと、そういう問題意識のある部分についての検証を踏まえて、相互に比較できるわけです。ライフサイエンスだと、アメリカでは膨大な資金が延々と投入され続けてきている。そういう意味での政策的な差異はもう明白。そういうアプローチもあるかもしれないなと思っていて、ぜひ具体的なアプローチとしてはそんなものも頭に入れておいてもらえると良い。特にコンピューターサイエンスは、我々は焦眉の急だと実は思っているんですけど。

【黒田主査】 
 ありがとうございました。先生方から一わたり御意見をいただいたんですけれども、大体先生方の御意見、私も同意するところが多いんですけれども、まず最初に、ストライクゾーンというのを決めるということ自身は非常に、これ自身は中身を考えるとどんどん、どんどん動いていくものです。ただし、こういうやり方で政策を立案するやり方を科学的にしようじゃないかというところの焦点は多分動かない。そこのストライクゾーンはきちんとはめておかなきゃいけないという気がします。
 今やられているプログラム全て見ると、僕がちょっと疑問に思うのは、政策オプションの立案というのがストライクゾーンだと言いながら、ここをやる部署がどこもないです。はっきり担ってないです。みんな周りはいろいろ考えているわけですけれども、だから、それを今あるプログラムを最終的にストライクゾーンの目標にどうつなげていくかということを推進するやり方をもうちょっとはっきり考えた方がいいと思います。
 もう一つ、ストライクゾーンを今度アナリティカルにブラッシュアップしていくときに、何か課題を一つ、エネルギーにしろ、ライフにしろ、何かを選ぶということは多分非常にやりやすい方法なので、それはぜひやったほうがいいんじゃないかという気がしますし、そのとき、社会科学者、経済学者とかだけじゃなくて、自然科学の方にもぜひそこに議論に参加していただいてやっていくというのが一つの大きな課題になるんだろうと思います。
 それから、郷先生のおっしゃったデータベースというのは、非常に僕も重要だと思っていますし、僕はずっと携わってきたわけですが、経済のデータというのは、経済現象が構造的に動くものですから、なかなか正確に捕まえられないんです。ただ、今NISTEPでいろいろつくっていただいているデータベース、これはものすごく貴重だと思いますし、生きると思うんですが、もう一つNISTEPといろいろ議論させていただいて、ストライクゾーンのどこにデータがどういう形で提供できるのか。そのデータが見つかったら何がわかるのかという目標を、それも動きますけれども、議論させていただいた方が多分意味のあるデータができるんだろうとおもいます。データというのは、社会科学の場合、特に実験できないので、逆に現実がどう動いているかというモデルがないとデータはつくれませんので、そういう意味での、これも大きなチャレンジじゃないかなと思います。
 それから、もう森田先生のおっしゃったことは、社会システムそのものが変わっていくわけですね、どんどん。その変えること自身が政策でなきゃいけないので、それは科学技術だけでとどまる問題ではないので、ものすごく大きな課題だと思いますけど、そこは今視野に入れながら、他の分野とどのようにコラボレートし、どうやっていくかという政策当局全体の仕組みの問題になるんじゃないかなという気がしています。あまりまとまりにはならないんですけど、そんなことを目指して全体的に今から動かしていくということで、本日、いただいた課題はもう少し一つ一つブラッシュアップしてやっていくということにしたらどうかなと思いますが。

【森田委員】 
 ちょっと補足的によろしいですか。

【黒田主査】 
 どうぞ。

【森田委員】 
 先ほど笠木先生、有信先生がおっしゃったことは非常に重要だと思うんですけれども、これから人材育成するときにどういう人材を育成するかというイメージが必ずしもなくて、現在のままやっていると狭い専攻でトップに行く人材が育ってしまう。副専攻だとか、そうしたものについてはどうしても、よほどそちらが評価されないか、そちらへ行く学生はちょっと変わったやつか、ドロップアウトした、そういうイメージでとらえられるというのは非常に不幸なことだと思うんです。
 海外の場合には今どういうあれがというのは、海外だから私もよく知りませんけれども、例えばお医者さんであるとか、あるいはかなりの工学系でPh.Dを持っている人がマネジメントスクールへ行ってビジネスの世界に入っていくとか、それがかなり多くなってきているわけです。日本でも、だから、お医者さんでありながら向こうのマネジメントスクールを出て、戻ってきて医療政策をやろうという人が出てきていますけれども、そうした形での管理科学といいましょうか、マネジメントのほうについての教育をどうしていくか。日本にもビジネススクールがないわけではないんですけれども、ちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、しっかりとしたマネジメントというのを、誰がどうやって何を教えるかというのは難しいところでして、拠点校をつくる場合も、ちょっと見ておりましたら、理系の先生のプロジェクトが多いものですから、その意味できちんとした形でのマネジメント教育というのはどういうものなのかということも一度、議論していただいて、そして、拠点校の中でその議論をしながら、どういう人材を育てていくかということを特に科目とか、そういうものについて、どういう知識が必要だということについてよく御議論いただきたいと思いますし、私たちも発言していきたいと思います。
 その一例がまさに情報関係で、今私も内閣官房のIT戦略本部というのにかかわっているんですけれども、日本の例えばeガバメントとか、それというのは、世界の最先端の国から言うと1周遅れとか、2周遅れに近くなってきています。これはなぜかというと、行政の中の専門家ではITがきちんとわかる人がいないのと、今入れているのは外からITのわかる人を入れていますけど、彼らはあまり行政のことを知らないんです。アメリカなんかどうしたかというと、20年ぐらい前からビジネススクールとか、そちらのほうできちんとした、かなり高度の情報を教育していたわけです。そこで差がついてしまった。なぜ日本であの時点であれだけ情報が言われながら、そういう人たちを育ててこなかったのか。そこの検証から始めていく必要があると思います。今からちょっと遅いぐらいなんですけど。

【桑原委員】 
 今のお話に関連して、日ごろ思っているんですけど、これからまだライフとか、エネルギーでも、情報でも、あるいはコンピューターサイエンスでも、何かそういうことを少し念頭に置きながら、いろいろなことをやっていくと、これは非常にいいアプローチだと思うんですけど、重要なのは、今のようなライフだ、情報だ、これは、私は縦割り政策と呼ぶんですけれども、もう一つ、人材だ、あるいは産学連携だ、知財の扱いだと、横割りの話があるんですね。これは省庁縦割りの問題のみでなくて、同じ文科省内で起こっています。例えばライフで求められる人材とコンピューターサイエンスで求められる人材はイコールじゃないのは明らかなんです。それから、何が足りないかというのも、共通部分もありますけれども、全然違う部分もある。知財の扱いだって全く同じではないと。
 ところが、今、政策は縦割りと横割りが分断されていて、ポスドク増やすなら中身はライフだろうと何だろうといいと。縦割りのところは、コントロールできるのは投入する研究費だけなので、横割りの政策でライフ特有のどうこう、コンピューターサイエンス特有のどうこうに対応していくというのはなかなかできないんです。全くできていないとはもちろん言いませんけど、多分そこにまだまだ多くの課題が残っているんで、そういうところで問題点を浮き彫りにし、どういうオプションをとればよくなるのかを検討すること、私は焦眉の急だと思っています。

【黒田主査】 
 ありがとうございました。局長、何か。

【土屋局長】 
 きょうは、ありがとうございました。非常に先生方の御指摘、ごもっともというか、全くそのとおりだと思います。森田先生がおっしゃっておられた社会的な側面もです。今回の政策オプションの立案は、いずれにしても、このポンチ絵の黄色い部分を、今はわからないから雲みたいにしていますが、ここを具体的に書いていきつつ、先ほど御指摘がありましたような実例を幾つか置きながら、ここを詰めていくと。その際に一つポイントは、社会的効果が今回あるわけで、例えば国際社会における日本の立ち位置というか、インド、中国と体張って同じような競争をやるわけじゃないといったようなことも含めて、あるいはQOLというか、ライフスタイルみたいなことまで含めてどういうオプションがあり得るかということをやらせていきたいと思います。また改めて推進委員会、早めに恐縮ですが、開かせていただいて御相談をさせていただきたいと思います。それと同時に、笠木先生と森田先生のほうから御定義ありました来年から実際に学生にいろいろなことを教える、こういう人材育成のところですが、ここは笠木先生がさっきおっしゃられたように、何らかのサーティフィケートを出し、これを終了した段階では、例えば私が勝手に言うわけにはいかないですが、文科省は採用のときにすごく配慮するというか、そうしないと世の中は変わっていかないわけで、そのためにやるということなので、その辺はいろいろな形のコミットをどんどんしていかないといけないだろうとは思っています。私が非常に気になるのは、森田先生のも含めて五つの大学が共通的に標準カリキュラムとさっき笠木先生はおっしゃられた、コアカリみたいな、そういうものを持ち、もちろんコアですから、それ以外のものがあったっていいと思うんですが、そこを共通のイメージを持っておかないと、来年の春とはいえ、学生を募集したり、実際に選抜したり、あるいはこの道を目指す学生にここを勉強するとこういうことなるんだと、こういう知識が身につく、能力が身につく、スキルが身につくということを言ってあげないといけないです。ということで、そのあたりを少し早めに整理しないといけないのではないかなと思っているんですが、その辺いかがでしょうか。

【黒田主査】 
 僕の感じでは、各拠点校にもう一度、直接話をして、彼らが今までの提案のプログラムの中でどんな人材をつくろうとしているのかというのを1回、ヒアリングというか、会って話をたっぷりすると。それと同時に、この推進委員会でこのプログラムをやるについては、どんな人材が欲しいのかというニーズをはっきりさせるというマッチングみたいなことを1回、早いうちにやったほうがいいだろうと思っていまして、僕のイメージでは、今、いきなり、何か拠点校共通の標準テキストブックみたいのはなかなかつくりにくいんじゃないかなと、この課題に関して。ハンドブックみたいなものはできると思うんですけれども、ハンドブックをつくって、だんだんつくり上げていくというのに1年か2年はかかるんじゃないかなという気がするんですけど、範囲がものすごく広いので、まだテキストブックまでは行かないのかなという感じは僕自身持っています。だけど、各拠点と1回、議論してみて、彼らがどういう意識を持ってどんな人材をつくろうとしているのか。そこで我々が考えている人材と明らかに違うとすれば修正をお願いしなきゃいけないかもしれないし。

【笠木委員】 
 私は拠点のほうで考えて育てたい人とニーズが擦れ違っちゃう可能性を非常に懸念するんです。やっぱりここの委員会でも私はないと思うんです、受け入れるのは。行政とか、自治体とか、産業界とか、そこでこういう知識を生かして働く人に何を求めるかという調査を、何らかの形ですべきなんでしょうか。

【黒田主査】 
 それもそうかもしれないですね。それも必要でしょう。

【笠木委員】 
 それと大学側とをマッチングさせていかないと。大学は自分の勝手にそう考えてしまいますから、大抵それで間違うんだと思うんです。

【黒田主査】 
 そうですね。それはあるでしょう。

【森田委員】 
 まさにおっしゃるとおりで、どちらかというと大学にかかわる政策というのは、サプライサイドからだけ物を見て、いい製品をつくれば売れるはずだと言うんですけれども、マーケットのリサーチが非常に不十分なところがあって、いろいろな例があると思いますけれども、その意味で言うと、実際にマーケットはどうなのかというのと、マーケットも今回のケースを見ると潜在的なマーケットだと思うんです。皆さんあまりこういう人材が欲しいという具体的なイメージがなくて、こういう人材があったら、なるほどそういうのがあればぜひというふうに思ってもらえるかどうかのところだと。そこが一段難しいところだと思います。そういう意味で言いますと、そうした意味でのマーケットの潜在的なニーズの発掘というのをどうするか。先行例として、文科省でもどちらでも結構ですけれども、優秀な人を雇ってもらって、私も大学院をつくりましたけれども、大体評価するのは5年ぐらいたたないと、ここでいい教育をしているという評価が始まりません。それまで我慢できるかどうかです。
 もう一つは、供給する大学のほうの拠点校ですけれども、この間、皆さんが集まった会議に出て、ちょっと気付いたのですが、カリキュラムの中で皆さん科学技術イノベーション概論という科目を置いていらっしゃるんですけど、中身はどうですかという話になると、どうしようかということになる。これは教育プログラムですから、そこが非常に重要だと思うんです。その場合に、それぞれの大学で個性もありますし、それぞれの大学で、こう申し上げては何ですけれども、教えることのできる先生も限られているわけです。そうしますと、それに合わせてカリキュラムをつくる可能性があるわけで、それ超えた部分についてはせっかくこの連携でネットワークをつくるわけですから、ほかの大学の優秀な先生を使って教えてもらう。それをどうするか。それがなかなか大学の枠を突破してできるかどうかというのが一つの鍵になると思います。それはこの委員会もそうですし、文科省もそうですけど、そこをかなり強力にアドバイスしていかないと、それぞれのところでそれぞれのよくわからない科学の教育が行われてしまいますと、これはまずいことになるのかなという気がします。

【土屋局長】 
 今の話に関連なんですが、この五つの大学のどこかはわかりませんが、私は今、人事当局と調整中なんですが、文部科学省の若手の役人をここへ出したいということで、そこで文部科学省の行政の現場とここの政策のための科学のリンクをそこでもとるというようなことで、その人間がいればいろいろ考える際も、モルモットと言ったらちょっとあれかもしれないですけど、そういうことも今考えていまして、人事当局と調整させていただいております。

【森田委員】 
 いずれにしましても、この予算規模でこういうのですごい人材が育てば、ものすごく効率的な政策だと思います。

【黒田主査】 
 そうですね。無駄にしないようにせいぜい頑張って。
 よろしいでしょうか。大分長時間になりましたが、いろいろお話しいただいて、次回以降の予定については何か、事務局から。

【山下室長】 
 先ほどお話ありましたとおり、本日の議論も踏まえてもう一度整理しまして、できるだけ早めのタイミングで開けるようにということで、また別途御相談したいと思います。

【黒田主査】 
 それでは、本日はよろしゅうございますか。どうもありがとうございました。

 

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(科学技術・学術政策局計画官付)