科学技術イノベーション政策のための科学推進委員会(第1回) 議事録

1.日時

平成23年5月16日(月曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省15F科学技術・学術政策局会議室1

3.議題

  1. 推進委員会について
  2. 事業の今後の推進について
  3. 個別のプログラムについて
  4. その他

4.出席者

委員

相澤委員、有本委員、笠木委員、黒田委員、桑原委員、郷委員、合田委員、小林委員、野間口委員 、森田委員

文部科学省

土屋官房長、田中政策評価審議官、常盤科学技術・学術総括官、阿蘇科学技術・学術政策局計画官、斉藤科学技術・学術政策局政策科学推進室長、奥科学技術・学術政策局計画官補佐

5.議事録

【斉藤室長】  
  お時間になりましたので、そろそろ始めさせていただきます。
 ただいまから、科学技術イノベーション政策のための科学推進委員会、第1回の会合を開催させていただきます。
 皆様には、御多忙中にもかかわらずお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 本日、国会がちょうど動いておりまして、その関係で事務局の幹部が少しおくれておりますが、後ほど適宜参ると思いますので、申しわけありませんが、よろしくお願いいたします。
 また、傍聴席のほうもたくさん来ていただいたのですが、ちょっと窮屈になっておりますけれども、よろしくお願いしたいと思います。
 私は、科学技術・学術政策局の政策科学推進室ということで、このプロジェクトのために新しくつくられた室の室長をしております斉藤と申します。よろしくお願いしたいと思います。
 事務局からのあいさつは後ほど局長の合田のほうが見えてからさせていただきたいというふうに思いますので、議事の中身のほうに入らせていただきたいというふうに思います。
 まず、資料のほうの確認でございますが、第1回の資料、議事次第ということで、1枚目の裏に資料1から資料12ということで資料番号を振ってございます。数が多いので一つ一つ確認はいたしませんけれども、もし抜けなどございましたら、事務局のほうに言っていただければというふうに思います。
 本日、第1回ということで、今までの経緯も含めて様々御説明させていただいて、ディスカッションをさせていただければと思っております。よろしくお願いいたします。
 まず、第1回ですので、この委員会の設置について、資料1のほうから入らせていただきたいと思います。資料1をごらんいただければと思います。
 科学技術イノベーション政策のための科学推進委員会の設置についてということで、本プロジェクトは23年度から新規に開始される事業でございます。後ほど内容については細かく御説明させていただきますけれども、客観的根拠(エビデンス)に基づいて合理的なプロセスによる政策形成を実現するということをプロジェクトの目的としておりまして、「政策のための科学」、関連する科学の部分の深化と、それを活用した政策形成プロセスの進化というものを車の両輪として進めていこうというプロジェクトでございまして、それを実施するに当たりましてこの委員会が設置されたというようなことでございます。
 本委員会でございますけれども、後ほど御説明させていただきます基本構想という全体のコンセプトに沿いまして本事業全体の推進方策を設計・統括していただいて、この下にぶら下がっています関連の事業について、適宜検討・助言をいただく会議ということになっております。
 検討事項としましては、今申し上げた基本的な事業の進め方ですとか、円滑な運営について、成果の活用の在り方等々、本プロジェクトに係る全体的な事項について取り扱っていただくという予定でございます。
 4.に行きまして、推進委員の構成については、別紙、1ページおめくりいただいたところにリストがございます。本日は、幸い多くの方に御出席をいただいております。一つ特徴といたしましては、文部科学省のほうの担当局長であります合田と、あと関連機関ということで、このプロジェクトの中で事業を実施いたします科学技術政策研究所とJSTの社会技術研究開発センターのセンター長にもそれぞれ一委員という形でお入りいただいて、ある程度、行政について意見を述べる機関というよりは、関係機関が対等な立場で委員ということで入っていただいて、皆さん中立な立場で御審議いただくということを意図しておりまして、このようなメンバー構成になっております。
 1ページ目にお戻りいただいて、推進委員会の構成ということで、委員会に主査を置きまして、委員の互選により選任するということです。その他、委員会を構成する委員の過半数を定足数とする、委員会の委員以外の方からも意見を求めることができる、必要に応じて分科会を設置することができるということで、通常の審議会のように進めていきたいと思っております。
 なお、庶務につきましては、当局、科学技術・学術政策局の計画官付、その下の政策科学推進室のほうで進めていきたいというふうに思っております。
 以下は、委員会の設置の紙でございます。
 この委員会の規定に沿いまして、第1回目でございますので、主査の選任をさせていただきたいと思います。委員の先生の御推薦なり、御意見なりいただければと思いますけれども、どなたか、ございますでしょうか。
 桑原所長、お願いします。

【桑原委員】
 お願いできましたら、ぜひ黒田先生に主査をお引き受けいただければと思いますが、いかがでございましょうか。
【斉藤室長】  よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)

【斉藤室長】 
 ありがとうございます。
 それでは、黒田先生のほうに主査をお願いするということで、よろしくお願いいたしたいと思います。
 それでは、今後の議事進行については、黒田先生のほうでよろしくお願いしたいと思います。

【黒田主査】 
 ただいま主査に選任いただきました黒田でございます。よろしくお願いします。
 今回が第1回目の推進委員会ということで、今までいろんな関係部署で議論をいただいてきたものをとりあえず御紹介して今後の進め方をいろいろ御検討いただくということでございますけれども、初回でございますので、私の科学技術イノベーションのための科学ということに対する思いみたいなものを一言二言、簡単に述べさせていただきたいと思います。
 科学技術イノベーション政策にかかわらず、いろんな政策の決定に少なからず関与はしてまいりましたけれども、いつももどかしく思いますのは、様々の日本の政策決定のプロセスにおいて、その審議の内容や決定の手続が、ある意味で科学的でないと申しますか、極めて直観と、諸外国のイミテーションと、それから省庁間の力学のようなもので決まるという思いがずっとしておりまして、その中でも、とりわけ、科学技術イノベーション政策というのは本来、科学の政策を語るわけですから最も科学的であるべきはずのものが、何となくそうではなくて、いろんなオーソリティーが審議会で議論はされるわけですけれども、なかなかそうなっていないように思えます。最後は、客観的なエビデンスを踏まえて、科学性という意味ではやっぱり、きちっとした説明責任を果すことが必要ですし、採用した政策についての実効性をきちっとフォローして次の段階につなげるということが重要だと考えているのですが、少し日本の政策決定のプロセスの中では、そうした配慮が欠けていたのではないかという思いを非常に強く、前から持っておりました。諸外国でも社会の状況がいろいろ変わる中で科学技術イノベーションの政策をより科学的にという思いが起こってきておるというふうに考えておりまして、そういう観点から我が国でも、これまたイミテーションでは困るわけですけれども、日本独自であるべき姿をきちっとつくっていくことが重要で、今回のこの委員会の役割だろうというふうに、私自身は思っております。そういう意味では、この委員会として科学技術イノベーション政策のための科学というのは一体、何を意味して、何を目標にして、どういう基本的な認識に基づいてこれから推進していくのかというコンセンサスをこの推進委員会のメンバーで共有することが非常に大事だと思っております。一足飛びにはなかなか、この課題自身が難しゅうございますので、そう簡単にはいかないと思いますけれども、その簡単にいかないことを含めていろんな議論をざっくばらんにさせていただきながら、一歩一歩前進していくというのが重要だろうというふうに思っております。
 もう一つ、最後の思いは、私は専門が経済学なものですからここにいらっしゃるほとんどの先生方のように自然科学の分野については素人でございますけれども、経済学であれ、人文・社会科学であれ、科学というものには必ず限界が存在するということをまず考えておくべきだろうと考えております。そういう意味で科学技術イノベーション政策の科学そのものも、当然のことながらある種の限界を持つと思っています。しかし、その限界を一歩でも乗り越えて先へ進めていくためには、やはり科学的な手法というのを必要とする、それが科学だろうと思っておりまして、そういう意味で、政策推進の形がこの委員会での統括のもとにできれば、これからの日本の科学技術イノベーション政策、そしてまた他の政策のいろいろな決定のプロセスにも影響を与えることができるのではないかと、私自身は思っています。そうした認識自体が、そう簡単なものではなく、甘いのではないかという御批判も多分あると思いますけれども、何とか試行錯誤を重ねながら、一歩前進しようというのが私の思いでございますので、ぜひいろんな形で御支援を賜ればと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、議事進行をさせていただきますが、初回でございますので、まず本事業の基本構想につきまして、事務局のほうより御説明いただきたいと思います。

【斉藤室長】 
 御説明させていただきます。資料2と資料3を使って、説明いたします。
 まず、資料3につきましては、23年度の新規予算ということで、昨年来、文科省のほうで予算要求をしてまいりましたけれども、その際に使っておりました資料でございます。資料全体の概略図になっておりますので、これを見ながら、これから御説明します基本構想のほうを聞いていただければと思います。
 下の図にありますとおり、全体としましては、この事業全体を統括するという意味で文部科学省に推進委員会の創設というのが真ん中にございまして、それを補佐する政策科学推進室ができております。その下に4本のプログラムを走らせたいと思っておりまして、この下にある四つの大きな柱がございます。これを含めまして、このプロジェクト、「科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」」というものを始めるに当たって、過去様々行われてきました検討を踏まえまして、今現在、文部科学省のほうで考えておりますこの事業の意義ですとか、基本的な方向性について、まず御説明をさせていただければと思います。
 資料2でございます。資料2の1.意義と目的というふうにございます。まる1で、経済・社会を取り巻く状況が大きく変化しておりますと。そのような中で、社会的問題を解決するために、科学技術イノベーションへの期待は高まっているのではないかと認識しております。
 まる2といたしまして、そのためには、経済・社会の状況ですとか、社会の課題ですとか、その解決に必要な科学技術について多面的な把握・分析が必要で、それらに基づいて、エビデンスに基づいて合理的な政策形成を進める必要があるのではないかと思っております。これが本プログラムの第一義的な目的ということになっております。
 科学技術イノベーション政策については、不確実性が伴いますし、長期的な視野が必要でございますが、経済・社会の影響ですとかを客観的・定量的に把握していくことが必要だと思っております。
 まる4といたしまして、さらに社会との対話などを進めていくと。そのためには、経済・社会への影響を包括的に可視化して分析するとともに、政策形成の実践の場で活用されるような取組、政策形成の在り方を改善していくと。さらに、透明性の確保、国民への説明責任を果たしていく必要があるのではないかと思っております。
 さらに、このプロジェクトを通じて得られました客観的根拠ですとか成果などについては、今後の社会の共有資産としまして、国民の政策形成への参加の基盤となっていくようなものを想定しております。
 まる6といたしまして、3月に発生しました東日本大震災につきましては甚大な被害がでておりますけれども、安全・安心な社会を実現していく、エネルギーの安定供給や再生エネルギーの政策など、今後様々な政策の見直しが進められるというふうに思っております。
 さらに、科学技術につきましては今回の様々な影響について国民の不安や不信を招いたという御指摘もございますし、先ほど黒田先生からございましたけれども、科学技術の限界を認識して、真摯な姿勢で過去の活動を振り返って検証していく必要があるのかと思っております。一方で、そのような今後の災害対応ですとか復興、持続的成長、様々な問題の解決ということを考えていくときに、科学技術が貢献すべき内容、期待される役割も極めて大きいのではないかというふうに認識しておりまして、政策の見直しなどを検討すべき今こそ、このプロジェクトの目的であります客観的・多面的に事象を分析しまして、根拠に基づいて政策形成を進めるというものが求められているのではないかというふうに思っております。
 この下線で斜字になっている部分は、今回の震災に対応した記述になっております。震災の部分については、後ほど震災だけを取り出して別途御議論いただく時間がございますので、わかりやすいように震災の部分を抜き出して、下線にしてございます。
 2.設計理念と推進の指針ということで、本プロジェクトを進めるに当たりまして、設計理念ということで以下の六つが書いてございます。一つは、科学への社会的期待をいかに発見していくかということで、社会が直面する課題について、自然科学のみならず、人文・社会科学も含めて、幅広い研究領域を超えた融合によって社会的な期待を発見していく必要がある。2番目については、客観的根拠に基づいて効果的な政策を追求していくということ。3番目は、政策決定プロセスにおける科学的合理性を追求していくということ。4番目は、政策プロセスの透明性と国民への説明責任を徹底していくということ。5番目は、関連する行政であったり、科学者であったり、市民のそれぞれが、信頼関係のもと、役割と責任を分担していくということ。さらに、知見の公共性、政策決定への国民参加を進めていくということを基本理念としたいと思っております。
 その基本理念に基づいて、推進の指針ということでございますが、3ページのまる1でございますけれども、本プログラムは、「政策のための科学」という科学の部分を深化していくということと、客観的根拠に基づいて政策形成のプロセスを進化していくということを車の両輪として推進していきたいと思っております。科学の部分に関しましては、学際的な学問分野、新たな学際的な分野をつくっていくことを考えておりまして、その場合、単なる科学で終わるものではなくて、その成果が政策形成に生かされていくようなものを目指したいと思っております。政策形成のプロセスの進化のほうに関しましては、冒頭、黒田先生からも問題点の御指摘がございましたけれども、科学技術行政システム全体にかかわる問題であるということで、関係者の意識の改革ですとか、後ほど出てまいりますが、人材養成というようなことまで踏み込んで進めていきたいと思っております。さらに、まる4としまして、政府と研究コミュニティーが双方の信頼、役割分担をしていく必要がある。5番目といたしまして、成果の共有化を進めていく。国際的にも開かれたものを目指していく。6番目としましては、それら活動の基盤といたしまして、人材育成ですとか、基盤となるデータ・情報などをしっかり進めていくというようなことを考えております。
 3.といたしまして、推進の基本的方向性ということでございます。4ページに行っていただくと、まず全体といたしましては、本プロジェクトが政策形成というものに焦点を絞って進めていくものということで、まさに政策形成を担っている文部科学省、事務局といたしましては、本事業のマネジメントに通常の研究開発、純粋なる研究開発と少し違ったマネジメントをしていく必要があると思っております。成果を積極的に活用していくのも、文科省の仕事と思っております。さらに、まる2といたしまして、政府と研究コミュニティーとの連携・協働が本質的に不可欠なプロジェクトであると。さらに、産業界、市民といった幅広い関係者のネットワークをつくっていく必要があるというふうに思っています。さらに、まる4ですけれども、成果につきまして、それが次なる議論なり展開につながるために成果を集約化・構造化して、積極的に提供していく必要があると思っております。
 真ん中、包括的なマネジメントについてですが、事業全体を統括する司令塔として本委員会が設置されております。先ほど申しましたとおり、基本的な方針を策定いただいたり、後ほど御説明させていただきます基盤的研究・人材育成拠点については、主体としまして具体的な設置方針や推進を担っていただきたいと思っております。さらに、関係者の利害からの中立というのも、うたわれております。事務局体制、これも先ほど申し上げましたが、科学技術・学術政策局に政策科学推進室という事務局の部署ができておりますし、文部科学省の中でも得られた成果を活用して政策の形成などの努力をしていきたいと思っております。さらに、国内外の動向の把握や情報発信、ネットワークも進めていきたいと思っております。
 本事業が対象とする研究開発プログラムでございますが、本プログラムの目標が合理的な政策形成の実現ということですので、それに沿った中身になると思っております。具体的な研究の対象につきましては、この推進委員会で今後御議論いただくものというふうに認識しております。5ページのまる3としまして、大震災の影響についても配慮していくということでございます。
 (2)各プログラムの推進ということで、ここから先は、先ほどの図にございました四つの柱それぞれについて、基本的な方向性が書かれております。一つ目、政策課題対応型調査研究については、短期・中期の政策形成への活用を目指しまして、科学技術政策研究所が中心になって進めていただきたいと思っております。外部のコミュニティーの参画を得ながら行政との連携をして進めていただくということで、当面は、政府の研究開発投資の経済的・社会的波及効果に関する総合的な調査研究を行うとともに、今般の大震災を受けまして本委員会が中心となって御検討いただいた内容についても、将来的に取り組んでいきたいというふうに思っております。
 6ページ、公募型のプログラムですけれども、こちらは中長期に寄与することを目的としまして、新たな解析手法やモデル分析、ツール、指標などの開発を進めていただくと。さらに、従来かかわりのあった学問分野だけではなくて学際的な新たな層を開いていきたいということで、研究者の層を広げるためにも公募型で進めていただく。さらに、社会への発信とかネットワークの拡大というのを目指していただきたいと思っております。さらに、研究成果といたしましては、政策提言ですとか、問題の提起みたいなものを重視していただきたいと思っております。実施主体につきましては、このような分野で過去に経験・知見がございますJSTの社会技術研究開発センター(RISTEX)のほうで公募型プログラムを設定していただきたいと思っております。また、震災についても配慮するということでございます。
 (2-3)基盤的研究・人材育成拠点ですが、こちらはさらに長期的な視野に立ちまして、政策形成に携わる人材ですとか、新たな学問分野の担い手、さらに政策と研究をつなぐ人材を育てるということで、人材育成のコースをつくっていきたいと思っております。人文・社会と自然科学の枠を超えた新たな学際的学問分野を発展させるべく、体系化されたカリキュラムによる人材育成コースを設定したいと思っております。まる3といたしまして、修士・博士の体系的なコース設定、社会におけるキャリアパスなどもあわせて考えていきたいというふうに思っております。
 7ページに行っていただきまして、まる5ですけれども、それらの拠点としまして、総合的な科学技術イノベーション政策を専門とする者の育成を目的とした総合政策研究・人材育成中核拠点、ちょっと長いですが、仮称ですけれども、それを1拠点と、特定の専門分野を軸にしつつ、科学技術イノベーション政策に関する専門的知識をあわせ持つ人材を育成する領域横断研究・人材育成拠点というものを複数拠点構築していきたいと思います。なお、予算の積算上はあわせて3拠点ということになっております。まる6といたしまして、本拠点については、人材育成という業務の性格上、長期的な視野が必要であるということで、支援の終了後も拠点となった大学等の中で自立的に継続していくということを確認の上、文科省としても比較的長期の支援を行っていきたいと思っております。もちろんその際には、適切な中間評価なども行ってまいります。
 (2-4)データ・情報基盤ですけれども、こちらは文科省と科学技術政策研究所を中心に、必要なデータや情報を体系的・継続的に蓄積し、公開していくということを目指しております。研究・分析の対象となる一次データ、論文、予算などの一次データだけではなくて、それらを分析した論文ですとか政策提言、行政の審議会報告書など、政策形成にかかわる幅広い情報について体系的・継続的に整備して公開していくということを前提に考えております。その際、まる4ですけれども、可能な限り公開にしたいということと、データの国際比較性についても配慮する。さらに、まる5ですが、政府のほうで進んでいます各省庁の競争的資金のデータなどとも連携をしながら、幅広いデータベースの構築を進めていきたいというふうに思っております。
 一番最後、参考ということでついておりますが、こちらは、昨年の年末に基本計画に向けてということで総合科学技術会議でまとめられた報告書にも、本プロジェクトの趣旨でございますエビデンスに基づく政策立案の重要性というものを記述しておりますので、参考でつけてございます。
 御説明は、以上でございます。

【黒田主査】 
 どうもありがとうございました。
 ただいま御説明のあったこの事業に関する基本構想ですけれども、ざっくばらんに、初回でございますので、いろんな御意見があろうかと思いますので、御意見いただくことにしたいと思いますが、どなたからでも、いかがでしょうか。
 基本構想の全体を推進・統括する役割をこの推進委員会が仰せつかって、全体のポンチ絵でいきますと、その機能を統括しながら政策課題対応型の調査研究をやり、公募型研究をやり、かつ基盤的研究と人材育成拠点の形成を行い、それらから得られた視点を構造化してデータの基盤を構築していくということまで含めて推進委員会が全体を見ていくという構想になっておりますが、全体として何かございましたら。

【笠木委員】 
 1点確認です。この事業自身が何年続くのかということと、今御説明いただいた人材育成拠点のことについては、比較的長期、10~15年という言葉も出てくるのですが、その時間的な計画をお教えいただけませんか。

【斉藤室長】 
 今考えておりますのは、まず研究の面で言いますと、新たな研究分野をつくって進めていきたいと。政策のほうに関しましては、我々の政策形成のプロセスそのものを改めていきたいというような中身ですので、非常に息の長い取組であるというふうに思っております。なので、5年、10年とかで切ってというものではなくて、ある程度長期的に続くものかなと思っております。だからこそ文科省としましては、担当の室もつくりまして、長期的な取組としてやっていきたいというふうに思っています。
 ただ、今、10~15年と申し上げましたのは、財政的な財務省との関係とか、そういうのもありまして、新たに始める予算措置についてはある程度年限を切っていく必要があるということで書いてございますけれども、この事業全体といいますか、このような取組ということについては、非常に息の長いものであるというふうに認識しております。

【黒田主査】 
 よろしゅうございますか。

【笠木委員】 
 はい、ありがとうございました。

【黒田主査】 
 ほかに何かございますでしょうか。どうぞ、相澤先生。

【相澤委員】 
 この基本構想に書かれている、まず目的のところは、説得性のあるものだと思います。「政策のための科学」を確立していかなければいけないと、この部分については全く同意できるのですが、なぜこれが文部科学省の中に設置されて、あたかもすべての政策に対して科学的な根拠を持って推進していくというところに位置付けられるのかというところは、もう少し客観性のある位置付けが必要ではなかろうかと思います。書き出しの部分から、だんだん何となく文部科学省の施策推進のために科学的根拠に基づいてというトーンに変わってきているように受け取れるんですね。ここは十分に位置付けを明確にしなければいけないのではないかなというふうに思います。
 ただ、人材育成のところが強調されている。これは文部科学省がしかるべき形で推進するものであり、また、今回の基本構想の最も特徴とするところだと思います。ここはそういう意味では十分な位置付けがなされているとは思います。ただ、先ほど申しましたように、全体構想を文科省が中心となって進めるに当たっては、それなりの位置付けが必要だと。ということは、今後こういうようなことが具体的に実施される形態を考えた場合に、果たして一つの省につながったところに、政策ベースの強い助言を行ったり、あるいは提言を行っていく母体があるということは、中立性という意味でいささか問題ではなかろうかなというふうに思います。私、疑問形だけを話しておりますが、これからの基本にかかわることなので、率直に思ったところを申し上げました。

【黒田主査】 
 何か、文科省側からありますか。

【斉藤室長】 
 もちろん、このプログラムを検討の段階でも先生御指摘のような御意見をいただいておりまして、いろいろ考えてきておりますが、まさに先生御指摘の人材育成と、長期的な視点に立ちましてこのように考えながら政策をつくっていく、もしくは「政策のための科学」を推進していくという人材育成というところが非常に重要だということをまず認識しております。さらに、御説明で申し上げました文系・理系と分野を融合したような新たな学際的な分野をつくって、その部分の研究なりコミュニティーの育成なりということもあわせて進めていきたいというふうに思っておりまして、人材と新たな研究コミュニティーの育成という意味では、まずは文部科学省としてやれることもあるのかなということで書かせていただいております。このような活動で我田引水的に議論が進みますと、それこそこの事業で改革を目指している今までのやり方といいますか、そういうことではよくないのでより客観的になる必要があるということを問題提起しておりますので、我田引水にならないように一生懸命考えて書いたつもりではあるんですけれども、ぜひそのような方向で考えていきたいと思っております。

【黒田主査】 
 どうぞ。

【有本委員】 
 今、相澤先生は、非常に大事な御指摘をされました。この委員会は将来は文部科学省分科会ぐらいになればいい。オールジャパンのものがあった上で、それぐらいの大きなスコープを持っておかないといけない。相澤先生には総合科学技術会議として、第4期科学技術基本計画案で強く科学技術政策のための科学をしっかりやろうということをまとめていただいた。あれは明らかにオールジャパンとして大事だというメッセージが強く出ていると思う。
 それからもう一つ。役所は本来的に縦割りのところがあるものですから、それを補完するためには、いろんな学会活動を通じて連通していく。大学の拠点整備のときには各省にもいろいろオープンにするというような、多層的な、オープンな構造を作るという――現実的アプローチが大事じゃないかと思います。

【黒田主査】 
 ありがとうございました。
 ほかに御意見ございますか。どうぞ。

【野間口委員】 
 私も、相澤先生の御指摘、もっともだなと思います。ぜひ、今、有本さんがおっしゃったように、そういうふうに持っていくためのきっかけをだれもつくらないので、ここでまずきっかけをつくったのだと思います。オールジャパンで考えるべきという視点が要るのではないかなと思います。
 それからもう一つ、今回の震災もそうですけど、私、企業に長いこといていつも思っていたのですが、エビデンスベースでやりますときに、何が正しい根拠だったのかと、あるいはソリューションだったのかと考えますと、1~2年で考えた解と、5~10年で考えた解と、50~100年で考えた解は、違ってくるのではないかと思います。そういう視点を、ぜひ国のレベルでやるのも取り入れるべきじゃないかなと思います。例えば、街とか地域をつくるのは、本当に10年、20年、30年の視点でつくっていいのかというのもありますでしょうし、原子力のような扱いにくい技術を扱うときの対応をどのぐらいのタイムスパンで考えるべきかということが忘れられて、目に見える現世利益をもとにした評価をやってしまうので、思想的な仕分けの理論になり、より本質的な取組というのは忘れられる傾向があります。ですから、そういうことに対して、課題によってはそれを忘れちゃいけないということを打ち出す形に持っていくべきではないかという思いがいたします。
 それからもう一つ、ちょっと長くなりますけど、今、世界のイノベーションだと言っている国々とつき合っていますと、イノベーション自体が、景気対策といいますか、活性化対策、そういう形に位置付けられているのではないかなと思います。科学技術とかイノベーションへの投資というのはコストだと、目に見える成果が早く出なきゃ意味がないという評価を近年やり過ぎてきたのではないかと思います。科学技術イノベーションへの投資とその評価というのはあまりにも時間的な差があり過ぎて、文科省をはじめとして、経済産業省もそうですけれども、本当の意味の成果というのを見失って、投資効果の評価というのを過小評価しているのではないかなという思いがしてなりません。ですから、科学技術イノベーションへの投資というのはこのような形で幅広い影響を与えるんだというような出口のところの評価も行い、多様な評価をすべきじゃないかと思います。その辺はぜひ織り込んでいただきたい。

【黒田主査】 
 ありがとうございました。二つ御指摘いただいたと思いますが、二つとも非常に重要な観点だと思いますし、まさにずっと考えてきた、僕はまだ確定した結論を決して得ているわけではないんですが、科学技術政策における科学というときのエビデンスとは一体何だということ自身が一つの大きな研究課題になっていて、それを政策に生かしたときのPDCAサイクルみたいなもののホライズンをどういう形でとるかということと、それ自身がやはり科学的な発想で、ある種の整理をしておかないと役に立たないものを繰り返すことになってしまうというのが一番の思いでございまして、ぜひそういう形でと思っております。
 ほかにいかがでしょうか。

【森田委員】 
 私が申し上げたかったことは既に皆さんから御発言あったことですが、私自身は社会科学専攻で、公共政策とか行政を研究してきた者なんですが、今回の場合、先ほど相澤先生がおっしゃいましたけれども、「政策のための科学」は、歴史的には、名称そのものは随分前からあると思います。ただ、実際になかなか応用されてこなかったのが我が国だと思いますけれども、その話と、ここにおける、今もございましたが、「科学技術イノベーション政策における」と、ある程度限定されているところがございますね。それは将来的には今もお話がございましたように拡大をしていくという方向を目指すべきであると思いますが、当面のところ、科学技術イノベーション政策というのが、今の野間口先生のお話にもございましたけれども、長期的なことを考えているのか、今言われているのは、世界的にはもう少し投資に対する効果が見えるような形の射程で考えるべきなのか、さらにそれは、分野がいわゆる限定された科学技術の話なのか、広く社会的な政策に及ぶのか、その辺につきましての科学技術イノベーション政策というキーワードをもう少し鮮明にしていく必要があるのではないかなと思っております。

【黒田主査】 
 ありがとうございました。
 どうぞ、笠木先生。

【笠木委員】 
 今、森田先生が言われたことと関係しますが、ここ数年、OECDの科学技術政策委員会でも議論が随分行われてきましたが、いわゆるイノベーションと言ったときに、上流側から下流側までの流れがあり、過去の反省から、下流側にもかなりフォーカスしないといけないという議論があったようです。ところが、昨年秋の委員会では実はそれに対する逆の反省があって、あまりにも下流側に視点が寄り過ぎたと。もう一つは、当然のことながら、一方通行ではなくて、上流・下流側がインタラクティブに動くプロセスなので、そういう中で一体何を本質として見極めるかという議論があって、改めて上流というか、基礎研究とか、そういうところにむしろフォーカスをすべきだという向きに変わっています。
 そこで、今回のこの科学技術イノベーション政策といったときに、先ほど、これは文科省でやるのかという話もありましたけれども、イノベーションの切り口でどこまで重みを置くのか、あるいはもう少し上流側の話にフォーカスしていくのか、この点で理解を共通にしていただけるとありがたいと思いました。OECDの経験は、全部一緒くたにやったがために実はいろんな分析とかエビデンスとかがあいまいになって、アメリカでは特に基礎研究の方向にフォーカスしていると思いますが、この辺りは大事じゃないかなと思うんですが。

【黒田主査】
 初回ですので、私も意見を言わせていただいてよろしいでしょうか。
 今、笠木先生がおっしゃったことは非常に重要だし、スタンスの決め方で最初に合意をつくっておかなきゃいけないと思うんですが、僕は、あえて科学技術イノベーションという形でつなげて政策を論じなければいけないというのは欧米と日本の事情が若干違うのかなという気がしていまして、基礎科学としての科学の進歩というのが、それを最大限に生かした技術に結びつかない、また、その技術が社会的な価値創造に結びつかないという、そういう縦割り構造そのものに日本は大きな問題があったのではないかという反省を非常にしていまして、そういう意味で推進委員会の役割は、それらを全部見通しながら、どっちに重きを置くではなくて、足りない部分を補っていくような指針が示せるということが一番重要なんじゃないかなという気がしているんですけど、これは僕の全く私見ですので。

【森田委員】 
 笠木先生の問題提起ですが、私、OECDの動向というのは詳しくは存じませんけれども、基本的に政策科学というのが歴史的に目指してきたのは何かといいますと、限られた資源を何のためにどういう形で効率的に投資するかという発想なわけですから、そのときの投資による効果をどのような形で事前に測定するか、というのが、一つのこの科学のポイントになるかと思います。その場合に、長期的な基礎的な部分に投資するのか、あるいは短期的な部分を重視するのか、そこのところはむしろ評価基準をどう立てるかという話にもなってくるわけでして、今、まさに黒田先生がおっしゃいましたように、問題になっているのは、今までは基礎の部分と応用の部分が切り離されていたために、両方ともその効果が見えにくかった。その両者のマッチングをもう少しきちんと踏まえ、取り入れた上で評価をすべきだというのが、今、日本の場合、言われているところではないかなと思います。ただ、いかんせん限られた資源をどう配分するかですから、重点的にきちんとそれを評価して配分しませんと有効に使えないということと、もう一つ、その場合の一つのポイントは、資源が限られている以上、優先順位をつけた場合に、劣位の順位のものについてはある意味で、後回しといいましょうか、その場合に配分できないということになるわけで、そこのところをきちんとした形で決断できるかどうか、これはまさに政策決定の一番のポイントになるところだと思います。それをいかにエビデンスでもって合理的に証明していくかという話になると思います。

【黒田主査】 
 ありがとうございました。
 ほかに、何か御意見ありますでしょうか。小林先生、どうぞ。

【小林委員】 
 問題意識はよくわかるんですけれども、そもそも「政策のための科学」という言葉がその内容をよくあらわしているのかというのが多少気になります。この言葉は、科学と政策のミスマッチの原因はどちらかといえば科学側にあって、科学のほうを何とかしようというような印象を与えるのではないかと思うんですが、かなりの部分は行政の体質とかそういうものによるところが多いのではないかと。そういうところにどのくらい切り込むのかというのが今のお話の中にあまり出てこなかったのではないかなと、ちょっとそれが気になる。

【黒田主査】 
 これまた全くの私見ですのであれですけど、「政策のための科学」ということをあえて政策に対して言わなきゃいけないというのは逆に科学の重みだろうと私は思っていまして、そこに科学性がなかったために政策がぐちゃぐちゃになったし、政策の決定プロセスが非常にあやふやになってしまったというのが、今、大きな反省なんじゃなかろうかと。だから、あえてその科学をやろうということじゃないかと、私自身は思っているんですけど。

【有本委員】 
 今、小林先生がおっしゃった関連で具体的なものは、予算にサポートされた科学の推進、教育拠点の整備、人材養成というところばかり見えるのです。政策側、政治も行政も変わらないといけない。ここのところをよほど注意して、車の両輪としてバランスをとりながら進める必要がある。

【黒田主査】 
 どうぞ。

【相澤委員】 
 私の問題意識もそこにあるわけでありまして、「政策のための科学」という学問分野があるのかどうかということなんです。先ほど私が人材育成については文科省の役割でしょうねと申し上げたところのもう一つの視点としては、果たしてそういう分野をやる人材というのはどういう人材を目標としてやっていくのかということが、大きな疑問点です。人材育成は確かに必要だけれども、そのことと「政策のための科学」ということとは、まだまだ一体感があって進んでいる状況でもないと思います。私の理解としては、「政策のための科学」ということが重要なツールとなる可能性があるので今まで関連の方々がいろいろとその状況を検討されてきて、エビデンスに基づいてやったならばこの政策がもっと強化されたであろうとか、あるいはこの方向性をこういう方向に行かないところで矯正できたのではないかとか、そういうことはあると思います。ただ、最初からそういうことを目的に一つの分野とし、そして、そういうバックで強い教育を受けた人たちが果たして政策形成に本当に強力に働いていかれるのだろうか。これはそう簡単な構図ではなかろうかというふうには思います。

【黒田主査】 
 いかがでしょうか。どうぞ。

【郷委員】 
 今の相澤先生の話と非常に似ているんですが、例えば、過去、ポスドク1万人計画で、ポスドクはたくさん生まれたけれども、将来、そういう人たちがどういう職につけるのかということはあまりきちんと考えられないで、今でも、どんどんポスドクが生まれている。どうしてそういうことになったのかと。非常にローカルなところだけを考えて、日本はバイオ系は弱いとか、それで大きなお金を投入してどんどんやりましょうということで研究費が出れば、そこでポスドクを雇って研究をする。そこはいいんですけれども、そういう人たちが、今、大学は前のように膨張しておりませんから、明らかに大学のポストなんて、10年に1人、研究室から1人、例えば講座の教員になった、そういうことしかできなかった。この話を伺ったときに、これが問題なんだと思いました。そうすると、それは明らかに文科省だけの問題じゃない。それから、人材養成といっても、ポスドクに給料を払えばいいかといったら、そうじゃないわけですね。やっぱり日本の中では今まで何が問題だったかと考えると、いろんな例があると思うんですね。そうすると、将来、日本はどうするのかという、ちょっと飛躍しますけれども、日本の在り方というものがあって、それに向かっていくことなしに、5年、10年で人材養成しますといったって、その後どうなるのかわからないのに、人は来ません。大学院をつくるのかどうか知りませんけど、今のお話を伺いながら、また同じことをやるような気がしています。ここだけの話では済まないようなことが問題意識としてあるのに、でも、やれることは非常に限られた、人材養成といっても、おそらく過去にやったような、どこかの大学院に何かコースをつくる、そのための競争的資金を出してというようなことになって、また同じことじゃないかと。もっと大きな、日本はどうするのか、どういう国になっていくのか、世界の中でどういう位置を占めるのか。あるいは、人口が減ってきますから、もしかするとどんどん外へ出ていっちゃうかもしれないとか、そういう問題設定は非常に重要だと思うんですけれども、小さくまとまっちゃったら、科学どころじゃないんではないかと、それを私も一生懸命考えたいと思って、問題はわかりますということです。

【黒田主査】 
 どうぞ。

【桑原委員】 
 今御議論されている論点は大変重要だと思っておりまして、科学技術政策研究所は実施部隊の一翼を担うということで、実際何をすべきかということを考えると、今、皆さんがおっしゃっているような論点で、どうしたらいいか非常に困っているというのが実情でございまして、先ほど斉藤室長から御紹介いただいた、今回のこれは、全体は非常にロングレンジなものだと。ただ、この中で幾つかの柱が立っていて、私どもが担うことになっている政策課題対応型の調査研究、これは5ページに明定されているんですけど、短中期の効果を見ろと。ですから、これがコンファームされる限りにおいては、今いろいろ御議論が出た長期的な話というのは、ここの直接的ミッションでは出てこないんですね。ですから、それもやるとすれば、どういう枠組みでやるのか。あるいは、ここが本当に短中期フォーカスのみでよいのかと。そこをこの委員会として方向を定めていただかないと、実施部隊とするとこの文章に基づいてやらざるを得ないものですから、今、非常に重要なところが議論されていると思いますので、ぜひお願いしたいと思います。

【黒田主査】 
 ありがとうございました。非常に貴重な御意見をたくさんいただきました。今日だけではおそらく結論が出ない課題だろうと思います。僕は自然科学のことはよくわからないので少しとんちんかんなお話になるのかもしれませんが、相澤先生、郷先生、皆さんがおっしゃった日本の科学技術政策のある種縦割りの構造、これは行政も含めて非常に難しい構造ということに対してのはっきりした批判を社会科学者も含めて科学のコミュニティーがちゃんと言っていかなかったということが一番大きな問題で、むしろそういうことをこういうことをきっかけにしてどんどん言っていくような社会構造をつくっていかないと科学者としての責任が果たせないということだろうと僕は思っていまして、始めるのは非常に限られたリソースなものですから全部が一足飛びにできるわけではないと思いますけど、少しずつそんな方向に皆様の思いを持っていけたら一番このプログラムの趣旨にかなうのかなあという気がしております。
 ちょっと時間が、まだまだたくさんやらなきゃいけないことがありまして、基本構想に続きまして基本方針というのがありますので、今の議論と相当かぶって議論される部分があると思いますが、御説明いただけますでしょうか。

【斉藤室長】 
 資料4に基づきまして、基本方針について御説明させていただきます。こちらは、先ほどの基本構想に基づいて、もう少しブレークダウンをした、具体化をしたようなものという位置付けでございます。本日、これを決定いただくとか、議論はきょうで終了ということでは全くございませんで、今後の方針とか進め方に向けた議論のたたき台として御用意させていただいているものでございます。ただ、後半、どのような研究領域を目指すかというものについて議論がございますが、こちらについては、先ほども少し御説明しました公募型のプログラムを今年度始めるに当たりまして、文科省のほうでこういう方針で公募をしてくださいということを示す必要があるんですけれども、その際にこういうことを目指すべきだというふうに国のほうで指針を出すための参考というか、そういうことで御議論いただきたいという趣旨になっております。
 資料に基づいて、まず1.推進方策でございますが、こちらについては、基本構想とかなり内容的にはダブっておりますけれども、まる2のあたりで推進委員会が本方針に基づき全体を統括すると。文科省はその方針のもと事業を推進するということ。成果の集約と構造化につきましては、文科省が中心になって、政策研究所、JSTなどと協力をしながら進めていくということなどが書いてございます。
 2ページ目に行っていただきまして、各プログラムについてですけれども、こちらも基本構想のほうで書いてある方向性に沿いまして、例えば(1)の推進方法のところでございますと、まる1ということで、これは先ほど桑原所長からもちょっと御指摘ございましたが、この部分は短中期的な政策への反映を目指しておりますので、当面3年間ということで考えております。ですので、現在検討されています4期の基本計画ですとか、5期の基本計画の策定などに当面は貢献すべく進めていくことを想定しております。まる3としまして、推進委員会には適宜報告を受け、指示を受けということで進めたいと思っています。
 (2)の公募型につきましては、推進方法のまる1のところで、23年度に公募を新規に開始しまして、当面、4期の基本計画中の4年度にわたって公募を継続して進めていくということを考えております。こちらは中長期を視野に入れまして、新たな手法ですとか、新たなツールですとか、そういうものを公募で対象にするということを考えております。
 3ページの(3)ですが、基盤的研究・人材育成拠点につきましては、今後、具体的な推進体制、拠点の構成などを本推進委員会で御議論いただきたいと思っております。人材育成拠点ですので、体系的なカリキュラムを構築する。その際には、教員の相互派遣ですとか、単位互換ですとか、人的資源を効率的に活用するための体制を構築していく必要があると思っております。実施のスケジュール感といたしましては、24年度中に学生を募集して、早期に授業が開始できるように、23年度中に拠点は決定して進めていきたいというふうなスケジュールで考えております。本件につきましては、推進委員会のほうで深くコミットしていただくということでございます。
 (4)データ・情報基盤につきましては、文科省と政策研究所を中心に、関連機関の協力を得ながら、データの蓄積や公開を進めていきたいというふうに思っております。
 4ページ、2.本事業で取り組むべき研究領域についてです。こちちは、客観的根拠に基づく合理的なプロセスによる政策形成を目指すということでございますので、それに関連する領域として、科学技術とイノベーションの関係ですとか、経済・社会への影響ですとか、政策形成に関する合意形成みたいなものですとか、幅広い研究課題が含まれると思っております。将来の科学技術政策の政策目標などに対応したものである必要があるというふうに認識しております。このような考え方のもとに現在までに文科省及び関係機関で検討をしてきておりまして、それに基づいて、一応、現段階でこの四つの研究領域というのを想定して考えております。過去の検討についてはこの後御説明が別途ございますが、4ページの一番下ですが、領域1から4に分けて考えたいと思っております。一つ目は政策形成のフレームワークについて、2番目は投資の社会経済的影響について、3番目は推進システムについて、4番目は政策形成における社会との対話についてという中身です。
 5ページ、(2)各研究領域の説明ということで、今申し上げた領域1につきましては、政策全体の戦略性を高めるためにどうしたらいいのか。政策の概念化・構造化、社会的課題の抽出、戦略の立案というようなものを目指しまして、目指すべき国の姿はどういうものかというようなことも含めて検討をしていく領域です。
 領域2につきましては、政府の研究開発投資が社会・経済へ及ぼす影響をなるべく定量的に把握したいということで進める領域でして、研究開発目標、投資の目標をどの程度設定するかというようなことを明確化するためのエビデンスの蓄積というようなことを考えております。
 領域3、推進システムの構築というところですが、こちらは非常に幅広い中身でして、制度の在り方ですとか、人材資源の在り方、研究インフラについて、研究ネットワークについてなどなど、幅広いマネジメントに関するものです。
 領域4といたしましては、社会との対話ということで、政策形成時における社会の参画を促進するですとか、社会との対話を通じて課題を抽出する、合意を形成する、社会とのかかわりの在り方、倫理的・法的・社会的課題の在り方のようなものを対象にする領域です。
 御説明は、以上でございます。

【黒田主査】 
 どうもありがとうございました。
 引き続きまして、今、斉藤室長のほうからお話が若干出ましたが、この内容については、JSTの研究開発戦略センターでいろいろ御議論をいただいて、プロポーザルの形でまとめていただいておりますので、それについて簡単に御説明をいただきたいと思います。

【長野(CRDS)】 
 JST/CRDSの長野でございます。説明申し上げます。
 きょうは、机上に冊子を2冊配付させていただいております。傍聴席には、部数の関係上、1冊が配付できておりませんけれども、それとは別に、パワーポイント資料を配らせていただいております。一つ目が、「エビデンスに基づく政策形成のための『科学技術イノベーション政策の科学』の構築」という、私どもがまとめました戦略提言の冊子でございます。それから、こういった科学技術イノベーション政策の科学を構築する上で、政策形成における科学の健全性の確保と行動規範というのが非常に重要だろうということで、私どものほうで調査報告書として、海外諸国の状況についてまとめたものを配付させていただいております。
 私ども、これまで2年間ほどにわたりまして検討を続けておりましたけれども、そういったことを踏まえまして今般提言をまとめて、その内容につきましては十分に文部科学省の事業でも基本的な考え方や制度設計に御反映いただいたと理解しておりますので、その中身につきましては今回御説明申し上げませんけれども、これまでの検討の経緯や内容について、概略を御紹介します。
 資料5につきまして、日本の状況を見ましても、これまでの基本構想などに書かれておるのと同様ですが、科学技術が対応すべき社会における課題をとらえて、科学的合理性のある政策を形成することの必要性の高まりですとか、政策形成過程の合理性と透明性、それから国民への説明責任が必要であるといったようなニーズが高まっている中で、エビデンスに基づく政策形成を目指していくために科学技術イノベーション政策の科学を構築・発展させるということを、検討してまいりました。
 各国もそれぞれ独自の問題意識を持ちながら、独自の取組をしております。アメリカでは、NSFが中心になってSciSIPプログラムという研究助成のプログラムを2005年にマーバーガー前大統領補佐官のイニシアチブのもと始めており、それと同時に、アメリカでは省庁連携タスクフォースをつくり、省庁連携をしておりながら取り組んでいます。もう一つ特徴的な取組は、STAR METRICSという政府の投資の経済・社会への影響を説明するためのデータベースづくりや、省庁連携での測定があります。それ以外にも、イギリスやOECDの議論、EUでの取組など、それぞれの国や地域での独自の取組がなされている状況でございます。
 私どもCRDSではこれまでワークショップ等いろんな取組をして参りまして、最近では、2月14日にありましたワークショップでは、幅広い分野のアカデミアの方々、それから政府関係者の方々の参画を得ながら、RISTEXや文部科学省の科学技術政策研究所と共催して、議論をしました。その中では、プロジェクトの全体構想に加えて、先ほど斉藤室長のほうからお話ありましたように、科学技術イノベーション政策の科学における研究領域重点の考え方について、このワークショップでも集中的に議論をいたしました。
 その中での考え方でございますけれども、先ほど基本方針で挙げられましたけれども、4領域を設定するということ、それから、その中で具体的にどういった研究を重点的にやっていくべきかということを考えるには、政策側から見ると、政策課題・ニーズをまず抽出すること。それから、研究側から見て、適用可能な科学的方法の抽出をしていくこと、それらをあわせながら、明らかにすべき課題を抽出していく作業が必要です。今回の検討の中では、政策側の体系化は、科学技術基本計画をもとに構造化していく試みをしました。構造化して、その中で領域のカテゴリーをつくって、さらに具体的な重点課題を抽出していくという作業をして、その結果、四つの領域にまとめられます。政策形成全体にかかわるものとして、一つめが政策形成のフレームワーク、二つめに社会との対話としてまとめました。政策の構成要素として、その中で特に資金面として研究開発投資の影響と、それ以外の人材面や体制とインフラ面等も含めたイノベーションの推進システムの構築全体という、この二つに分けて構造を見ております。
 それから、政策のレベルは当然、基本計画以外にも分野別の政策や個別プログラムのマネジメントの政策といったようにいろんなレベルの政策があるという認識のもとに、どういった研究課題があるかということで、各領域ごとに抽出を試みています。
 ここまでがこれまでの検討の状況についてですけれども、最後、今後の活動予定を挙げさせていただいておりますが、私どもとしては、引き続きふかん的視野で科学技術イノベーション政策の科学の分野について体系化する方法論を検討していく予定です。後ほど詳細に御紹介あるかと思いますけれども、6月22日には公開フォーラムということで文科省をはじめとした関係機関と御共催で、また公開の場でのさらなる議論を続けていくことも考えています。
 以上でございます。

【黒田主査】 
 どうもありがとうございました。
 それでは、最初に御説明いただいた基本方針並びにCRDSで検討されてきた戦略プロポーザルの内容を含めて、御質問、御意見ございましたら……。

【有本委員】 
 ちょっと補足をしておきます。私は研究開発戦略センター副センター長も兼ねておりまして、今、お手元にある二つの報告書の作成プロセスに関与したものですから、特に強調しておきたい。お手元にある「政策形成における科学の健全性の確保と行動規範について」という、ちょっと特異的な表題の報告書です。なぜこれをつくったか、ちょうど1年前に「政策のための科学」がかなり具体化しそうだというときに、サイエンティストなりサイエンスのコミュニティーが政治とか行政にかなり接近していくことになる。その際の両者の行動規範の確立、特に、自然科学、工学の分野はどうもあまりそこら辺が十分意識がないのではないかとの心配です。そこで、世界的に動向を調べたわけです。これは、自然科学の人と話をすると、ミスコンダクトの話だと、すぐに了解するんですね。それとは違う。科学研究の活動の中のことじゃなくて、科学と社会とのつき合い方、政治とか行政も含めて。だから、モード2といいましょうか、その中での行動規範という、まずそこのところを、日本の科学、自然科学、工学のコミュニティーはきちっとわかってもらわないといけない。ちょっと長くなりますけれども、15ページを開いていただきたい。たまたま科学技術政策のための科学の推進に当たってこれをつくったんですが、後ほどあると思いますけれども、これはイギリスのビジネス・イノベーション・技術省が昨年3月に政府に科学のアドバイスをする場合の原則というものを、特に科学者あるいは科学コミュニティーの原則というものを、BSEの20年にわたるいろんな経験、議論を踏まえてつくったものであります。15ページの図は、3.11の大震災以来、いろんなところで通用出来そうです。右側に、科学の助言者がいる、科学者がいる。左側は政治とか行政がいる。科学者は当然、学問の自由、専門家としての立場、専門的知識、その独立性で助言する。しかし、ここが大事です。左の中段に書いてあると思いますが、民主主義の政策形成過程というのは科学だけの根拠で形成されるわけではない。いろんなファクターを入れた上での最終的な決定になる。行政、政治も、それから科学者の側も、双方、この構造を了解しておかないといろんな問題が起こる。イギリス、それから、最近ではドイツ、20~21ページに、ドイツ流で非常に緻密に各国の動向を調べてガイドラインを出しております。これは行動規範といいながら、サイエンスのコミュニティーの文化にまで波及する問題と思います。研究開発戦略センターでは、これを踏まえてさらに科学のコミュニティーに浸透するように、マニュアルのようなものを検討していきたいと思っている。
 以上です。

【黒田主査】 
 どうもありがとうございました。
 それでは、何か御意見、御質問ございますでしょうか。どうぞ。

【笠木委員】 
 基本方針では、これは後で議論されるのかもしれませんが、今回の震災を受けて、最初の基本構想の中では斜字で表された新しい事項があったんですが、基本方針のほうには特に触れられてないと思うんですけれども、まさしく今、エビデンスベースドで政策立案をする一番重要な局面に来ているような気がするんですね、例えばエネルギー問題であるとか。そういうこととの関係はどういうふうにお考えなのでしょうか。

【黒田主査】 
 できましたら、資料6に改めて震災対応の視点がありますので、そこで議論をさせていただくということでよろしいでしょうか?

【笠木委員】
 後ほどで結構です。

【斉藤室長】 
 1点補足させていただきますと、研究領域という四つの領域との関係で申しますと、我々の中で議論をした際には、この四つの領域にプラスして震災という領域が立つイメージではなくて、それぞれの領域それぞれに震災にかかわる部分がかかわってきますので、これはこれで四つの領域を立てた上で、震災は震災で、後で出てきます資料も含めて、全体的な問題として議論をしたいというふうに思っております。

【笠木委員】 
 わかりました。ありがとうございました。

【黒田主査】 
 ほかに何かございますか。

【森田委員】 
 ちょっとコメントをよろしいですか。

【黒田主査】 
 はい、どうぞ。

【森田委員】 
 先ほどのテーマと関連しておりまして、相澤先生がおっしゃったことに大いに触発されたんですが、ここで言っております科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」というのは、政策科学を論じるときに議論するんですけれども、最初の科学技術の「科学」と「政策のための科学」というときの「科学」は意味が違っていると思います。「政策のための科学」というのは、いわゆる厳密な意味での自然科学のような科学ではなくて、むしろ合理的な方法という程度の意味と言うと、これまた語弊がありますけれども、それに近いものだと思います。現状が、政策の対象が科学技術であるにもかかわらず、あまりにも非合理的なといいましょうか、そうした形での物の決め方をしているのではないか。こうした議論は、それに対する反省から出てきたものだと思いますし、そもそもいわゆる純粋な自然科学のような意味での科学というのは成り立つかというと、それについてはかなりの人は疑問に思っているところだと思います。ただ、できるだけ合理化していくために何が必要かを議論している。
 そのためにもう1点申し上げますと、エビデンスという言葉も注意が必要です。確かに、今までは思いつきとでっち上げでいろいろ政策をつくっていたところがあると思うんですけれども、厳密な意味でのエビデンスというのは何かということについては議論があるところでして、要するに、政策を推進したい人が自分に都合のいいようなデータを持ってくるというのは、エビデンスではない。あくまでも客観的なエビデンス、データがあって、それから何が出てくるかという、そうした発想に切りかえなければいけないというのが、もう一つのポイントだと思います。
 そのためには、3点目、ちょっと長くなって恐縮ですけれども、先ほど出ました人材という場合に、なかなか難しいところなんですが、現在、アメリカなどで優秀な人たちがそういう形で育てられているし、進みつつあるというのは何かといいますと、理系でもって博士号を持っている人がビジネススクールに行ってもう一度学位を取るとか、そういう一種の理系・文系のダブルメジャーのような形での能力をもった人材というものが育てられつつあるし、育ってきていると思っておりまして、それがこれからあるべき一つのイメージではないかと思っております。

【黒田主査】 
 どうもありがとうございました。
 ほかに、何か御意見ございますでしょうか。
 それじゃあ、少し議論を先へ進めさせていただいて、全体の基本方針にかかわることはまた適宜御議論をしていただきたいと思います。
 それでは、先ほど出ました震災対応ということで、資料6にメモ書きを用意していただいておりますので、それについて斉藤さんのほうから御説明をいただきたいと思います。

【斉藤室長】 
 資料6に沿って、簡単に御紹介いたします。震災の対応につきましては、政策の見直しなどを含めて非常に重要な、ある程度時間をかけてじっくり議論をすべき内容だと思っております。この委員会で引き続き御検討いただく内容だと思っておりますが、とりあえず「政策のための科学」という視点でどういうことが考えられるかというもののたたき台をつくらせていただきました。
 まず、基本認識といたしまして、一番上のぽつは、5月2日に科学技術政策担当大臣とここにいらっしゃる相澤先生を中心にした総合科学技術会議の有識者議員のペーパーということで出てきたものの引用でございますけれども、震災を踏まえまして、科学技術の限界を再認識し、原発をはじめとするマネジメントに関し、重大な反省をすると。さらに、専門にとらわれないふかん的な視点を持って、真摯な姿勢で向き合って検証する必要があると。その上で、一丸となって、復興・再生、新たな成長に向けて貢献していくべきであるというようなことが、政府の見解としてこのように出てきております。
 さらに、本件に関しましては御意見がいろんなところからもございますけれども、例えば、震災前の日本も国際競争力が落ちているのではないかと、いろいろな問題が指摘されていましたし、莫大な公的債務があったという中で、単に震災前に戻るというだけではなくて、古くなった構造を変えて新しい日本を再生していくというような視点が必要ではないかという御指摘もございます。
 さらに、海外の動向とかを踏まえつつも、今回の未曾有の災害を克服するという取組を通じて、日本モデルのようなもの、新しい日本を構築していくようなことを考えるためにはどうすればいいのかと。その際に、科学技術として何をなし得るのか、社会が科学技術に期待するものは何なのか、過去の反省点は何なのかというような視点が重要かと思っております。
 今回、震災を受けまして、持続的な安全・安心というものに対する願望が国民の中で非常に明確になったのではないか。そのような震災の影響を多面的に把握・分析した上で政策を形成する必要があるという、今こそ「政策のための科学」のような取組が重要ではないかというようなのが、基本認識として書かれております。
 裏に行きまして、「政策のための科学」として対応していくための実施内容のイメージとして、過去実施してきました科学技術・科学技術政策が今回の震災においていかに役立ったのか、役立たなかったのか、今後の復興の検討についてどの程度役立つのか、国民の期待は何かというようなことにつきまして、科学的・定量的に分析・説明していくことが必要ではないかと思っております。そのためには、幅広い分野における事例の調査ですとか、必要に応じて事例ごとの深掘り調査も必要ですし、過去重点投資されてきた研究開発について、今回の震災の減災とか復興とかという観点でどの程度貢献できたのか、できなかったのかというようなことをある程度指標化していくようなことも考えられるのかなと思います。
 中長期的には、今回の震災を受けて、人材の流出ですとか、生産性の低下、論文の減少なども想定されますけれども、これらに対する悪影響に関するバックデータの収集や分析なども可能かと思っておりますし、さらに、今回の震災を受けまして、科学技術に対する意識がどのように変わったのか、期待がどのように変わったのかという国民側の目線も重要ですし、科学技術が貢献し得る社会的課題にはどのようなものがあるのかというようなことを改めて見直す必要もあるのではないか。さらに、それらの活動を通じて、新たにエビデンスに基づいて政策を提言していくような仕組みというものも考えられるのではないかと思っております。
 具体的にどのように実施していくのか、案が次でございますけれども、まず、早急に対応が必要で、実施可能な内容とございますが、これは、今後の補正予算の検討ですとか、来年度予算に向けた検討ですとかというのは待ったなしでどんどん進んでいっているわけでございますので、今現在、下にございます、例えば科学技術政策研究所ですとかJSTのCRDS(研究開発戦略センター)ですとかが過去様々な政策に関する分析なり活動を行っておりますけれども、そういうものの延長線上として早急に対応が必要で実施可能なものについては対応していくべきではないかというふうに考えています。具体的には、例えば政策研で申しますと、動向センターのようなところが幅広い研究者から例えばアンケート調査などで知見を集約するとか、国民の科学なり科学技術に対する意識や期待の調査などを行っておりますので、そういうものを再度、震災後どのようになったかというのを急ぎ分析していただくとか、そのようなものが考えられるのかと思っております。さらに、中長期的にはもちろん、先ほど申しました、この委員会におきまして引き続きどのような観点で臨んでいくべきかというのを御議論いただきたいと思います。その際には、最初に申しました早急に対応した内容などもベースにいたしまして、いろいろ御議論いただけるのではないかなと思っております。
 御説明は、以上でございます。

【黒田主査】 
 どうもありがとうございました。
 震災対応ということで、特に「政策のための科学」という観点から、今回の様々な課題、反省を踏まえて、早急に取り組むべき課題が幾つか提示されたと思いますけれども、これにつきましても自由に御発言をいただければというふうに思いますので、よろしくお願いします。
 笠木先生、何かありますか。先ほどのお話の続き。

【笠木委員】 
 今御説明いただいた2ページ目の実施内容のイメージのところですが、やや傍観者的というか、つまり、今回の震災で科学技術が役に立ったか、役に立たなかったかというよりは、まだ現在進行中であって、役に立てないといけないのだと思うんですね。そのためには何をするべきかというような政策の科学というのが求められているのではないのかと。ただ、具体的に何をすればいいかということは直ぐにわからないんですけれども、この一連の表現はやや受け身のような感じがしていて、これでよろしいかどうか、若干そういう懸念を持ちました。

【黒田主査】 
 どうぞ。

【野間口委員】 
 今回の大震災はいろんなことを気づかせてくれたのではないかなと思うのですが、先ほど申しました、我々がとる施策を中長期的に考えるべきか、短期的に見るべきか、そういう問題も非常に痛切に感じさせられたわけです。ついでに言いますと、説明や資料の中の政策に反映するところで短中期とありますけど、これは大賛成です。やはり早く反映してもらわないと話にならないと思うからです。すみません、脱線しました。
 この資料で言いますと、1ページのほうに日本の国際競争力が落ちたと出ておりますけれども、何をもって落ちたとするのかというのはなくて、携帯電話のシェアがちょっと落ちたとか、薄型テレビが中国に抜かれたとか、太陽電池がどうだというので言っているのではないかなと思います。本当にそれだけでメジャーとして足り得るのかと思いますので、スイスのIMDが出しているような、一度、日本というのはどれだけの実力があるんだというのをはかるような、我々なりの指標というか、哲学というのを整理したらどうかなという思いがします。
 なぜそういうことを言うかといいますと、震災1か月後ぐらいに東北地方に行きまして、東北大学の話や、私どもの産総研の東北での拠点を見ますと、海外の研究者や留学生がたくさんいました。特に東北大学に来ていたわけです。海外から見ても相当存在感のある地域であったのじゃないかなと思います。それから、東北地方での産業といいますと、日本のGNPに占める割合はほんのわずかですね。ところが、あの地域の工場が一つか二つ止まっただけで、世界の生産計画とか需要計画、世界中に影響を及ぼしているのです。これだけの影響力があったのかと私どもも初めて気がついたのですけれども、IMD的な評価で日本よりはるかに上のところの10分の1か、あるいは半分でも止まったとしても、世界の産業という面では痛くもかゆくもないところはいっぱいありますよね。というのは、評価の仕方がちょっとあさっての方向を向いているのではないかなと思います。やはり科学技術立国日本らしい評価軸というのを考えるのも必要じゃないかと思います。私も産総研に来て初めて知ったのですが、インパクトファクターという、論文のリファレンスでどれだけ活用されるかというが一つの指標になるらしいですが、そのような影響力をどれだけ持つかという評価については、ちょっと日本では情報の発信が足らないのではないかなと思います。これは、震災対応というよりも、ぜひ全体的な場でとらえていただいて、そういう日本としての発信力を持ちたいものだなと思います。

【黒田主査】 
 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【相澤委員】 
 資料6のこの内容は、私は相当慎重に進めなければならないのではないかと思います。と申しますのは、冒頭に総合科学技術会議の有識者議員等のペーパーを引用されているんですが、ここには私どもが非常に重い思いをつづりました。どこにつづったかと申しますと、最初の3行であります。つまり、総合科学技術会議は科学技術政策全体を総括していくという立場にあって、それぞれ個別の科学技術政策についてはそれぞれの担当するところと同時に各省があるんですけれども、その全体の総括において、いろいろなところに反省すべきところがあると。そこをまず、みずからの位置を明確にして、その上でいろいろな検証を進めなければいけないという、こういう流れなんです。
 そこで、先ほど笠木委員からもありましたが、2ページの実施内容のイメージはいかにも主体性がないというふうに言わざるを得ないのではないかと思います。どういう立場でこういうことを検証していくのか。文部科学省が文部科学省の中の問題をこれで検証するというようなことなのか、もっと中立的なところで進めていくのかという立場が明確でないと思います。これでは、たとえJST等に調査の委託をしても、今回の「政策のための科学」を高く掲げて進めるところの根本が違うのではないかというふうに思います。それ以上言うと進めること自体の大きな障害になるかもしれませんが、基本的にその姿勢を明確にしておかないと、本来の基本方針で志向することが、結局は今までのやり方と同じじゃないかということになってしまうのではないかなと思います。

【斉藤室長】 
 すみません、ちょっと補足をさせていただきます。先生がおっしゃるとおりなんですけれども、文部科学省としての反省ですとか、文部科学省としてどう考えるかという意味ですと、例えば科学技術・学術審議会ですとか、文部科学省として正式に政策を議論する審議会がございますので、そういうところで今後検討されていくと認識しております。
 今回、「政策のための科学」という観点で何ができるのかという話と、文科省の政策のという話は少し違うのかなと思っておりまして、そういう観点で、先生おっしゃった文部科学省としての政策を真摯に反省するということは文科省の設置委員会のほうにお任せして、少し中立な立場で全体をレビューするなり、客観的にその意識がどう変わったのかとか、それこそエビデンスとしてそういう議論に提供していくようなものを集めるというイメージで書かせていただいておりますので、そういう意味ですと、御指摘のとおり主体性がないというのは、そういう観点で書かせていただいているせいもあるのかなと思っております。

【黒田主査】 
 いかがでしょうか。今の点、何か御意見ありますか。
 相澤先生がおっしゃいましたように、非常にこの課題というのは重くて、かつ、慎重にと申しますか、我々が考えている政策科学としての科学ということを打ち出す限りは、まさに中立性だったり、その深み・重みというのは非常に重要になってくる部分だと思います。何か、ものすごく外から今回のことを見ていて、例えばエネルギー政策に関しては、経済産業省で基本計画をすぐつくり直すみたいなことが動き出します。それをまた今までどおりの繰り返しでやってしまうと非常に問題が大きい部分もあるでしょうし、そこに自然科学の方々がどう関与して、どういう形になるかというのは、エネルギーの問題一つとっても政策決定プロセス全部が変わらないとおそらく同じことの繰り返しになってしまいそうな気がするんですけど、そういうことに対して今できたばかりのこの推進委員会が抜本的かつ中立的に何か物が言えるような研究ができるかというのは、確かにそう簡単なことではないんだろうという気はします。
 いかがでしょうか。どうぞ。

【野間口委員】 
 私は先生のおっしゃるのは正論だとは思うのですが、現実は待ってくれないわけで、エネルギー政策はやはり、今の知見をフル活用して、次にどういう戦略を立てるかというのを早くやってもらわないといけないですね。そういう活動をどんどんやりながら、だけど、待てよと、今までの方法論だけでいいのかねということを一度考えてみようということでこれはスタートしたんだろうと思います。先ほど来出ておりますように、ここで非常にいい議論ができたとしたら、それを次のステップでどう省庁に広げようかとか、国として広げようとか、あるいは総合科学技術会議で取り上げてもらおうとか、そういうふうに位置付けたらいいのではないかなと、途中から思っていました。

【黒田主査】 
 ありがとうございました。
 ほかに、何か御意見ございますでしょうか。

【有本委員】 
 今の御議論を聞いていまして、この2枚紙は政策科学推進室の守備範囲に限って書かれているのであって、文部科学省も、いろんな学会もいろんなことをいっぱいやっている。さらに科学技術の在り方まで学術会議などで議論をしないといけない。それらはまさしく「政策のための科学」にもリンクしていく話であります。そういう意味で、これが唐突にここに出ているというのは、皆さん、ちょっと違和感があったのではないかという気がします。上手に再整理をしていただければ良いのではないかと思います。

【黒田主査】 
 多分、皆さんの思いは言われたお立場のとおりなので、きょう何かすぐ結論を出すということじゃありませんので、御意見がありましたら、事務局にメールでも……。

【相澤委員】 
 ちょっとそういう点で。

【黒田主査】 
 どうぞ。

【相澤委員】 
 私、先ほどちょっと厳し目に言いましたのは、2ページに書いてあるような、こういう具体的なことになってしまうと、落差が大き過ぎると。だから、ここはいかがなものかということを言ったわけなんです。むしろ、科学技術が大震災に役に立ったか、立たないかというのは、ここの役目じゃないのではないかと、私は思うんです。そうではなくて、科学技術政策のシステム上の誤びゅうとまではいかないまでも、問題点、こういうものが、特にこういうような大きな危機に直面したときに現れてくるわけですよ。それが何だったのかということを突くならば、私は今の時期において極めて重要な調査になるのではないかなと思うんです。ここで科学技術が役立ったか役立たないかというのはそう簡単にできることではないし、これは「政策のための科学」ということが目指すところでもないのではないかなと思うんです。私ども総合科学技術会議が一番の問題点としているところは、今の政策の推進体制のどこに問題があったかとか、あるいは、体制はあるのに、そこのプロセスでいろいろな方向性の判断のところに問題点があったのではないかとか、そういうことをしっかりととどめておくと。それがこれからの政策展開の教訓になるのであろうというふうに思っているわけです。

【黒田主査】 
 どうもありがとうございました。この課題に関しては、相澤先生の御指摘、そのとおりだと思いますので、事務局含めて検討をさせていただいて、またお諮りするというふうにさせていただきたいと思います。
 次でございますけれども、基本構想に幾つかプログラムが提示されておりました。政策課題対応型の調査研究とか、公募型の研究開発であるとか、基盤的研究・人材育成拠点とか、幾つかのプログラムが一応構想の中にありましたので、それについて簡単にそれぞれ御説明をいただいた上で、何かコメントがありましたらいただくということにしたいと思います。
 それでは、政策課題対応型及びデータ・情報の基盤をつくるということにつきまして、政策研のほうから御説明をお願いいたします。

【藤田(NISTEP)】 
 政策研の藤田と申します。資料7と資料8に基づきまして、順番に御説明させていただきます。
 まず、資料7の政策課題対応型調査研究につきましては、短中期の政策の活用を目指した研究として、研究開発投資の経済的・社会的波及効果に関する調査研究と、先ほど御議論いただきました大震災に対応した研究がございます。
 研究開発投資効果に関する研究につきましては、当研究所におきましてどのような調査研究を行うかを検討してまいりました。1番のミクロデータを活用した分析は、ミクロデータを用いて個別の効果について分析するというアプローチですが、ここでは、政府の研究開発投資が無形資産として資産価値を形成し、それが生産性の向上を通じて経済にどのような波及効果を及ぼすのかについての分析などを計画しています。また、国から大学へ研究開発投資が行われ、大学で知識を生み出してそれが産学連携などを通じて産業界に波及する場合の知識移転に関する研究として、特許分析による研究や、必ずしも特許を介さない知識移転につきまして、アンケート調査などによる研究を計画しています。さらに、(3)として、分野や技術領域等を特定した事例研究を行うこととしています。
 2番のマクロ経済的効果の分析は、マクロデータを用いて経済モデルを構築し、政府研究開発投資が将来のGDPなどの成長にどのような効果を及ぼすかを数値解析するというアプローチでございます。(1)では、当研究所において以前に開発したマクロ経済モデルを改良すること、(2)では、動学的一般均衡モデルなどの新たなマクロ経済モデルを構築することを計画しています。また、このようなアプローチにおきましては、経済や社会の状態をある程度合理的な仮定を置きながら簡略化してモデル化するということになりますが、(3)にありますように、このようなマクロ経済的効果分析における利点や欠点、あるいは導き出された結果の利用に当たり注意する点などを、有識者の方々をメンバーとする検討会を設置して、様々な角度から検討していくこともあわせて実施することとしています。
 3番は、社会的な効果、すなわち非経済的効果についての分析手法の開発で、ここでは、事例研究などにより、社会的効果をいかにして定量的に測るかについての指標の開発を行うことを計画しています。
 さらに4番では、企業を対象としたイノベーション調査や、研究開発投資効果に関して諸外国でどのような調査研究が行われているかについての動向分析を行ってまいります。
 また、大震災に関する研究につきましては、今後、具体的な研究内容を検討し、実施していきたいと考えています。
 引き続きまして、資料8のデータ・情報基盤整備事業について、御説明いたします。
 この事業の基本的コンセプトは、1番にありますように、政策研究における方法論の強化や多様な研究者の参入促進を実現すること、また、合理的な政策形成に資する客観的根拠となるデータ情報基盤を整備すること、さらに、国民に対する説明責任を果たすべく、行政情報やデータの公開を推進すること、を基本コンセプトとしています。
 2番の事業の概要につきましては、(1)といたしまして、統計・調査の個票データの収集・格納、名寄せや複数データ間のリンクの整備などを行い、それらを中核的なデータベースとして構築し、(2)といたしまして、参加される研究者に対するデータの提供や必要なサポートなどを行います。また、(3)といたしまして、一般利用者や国民に公開可能な資料やデータをウェブサイトで公開していきます。さらに、(4)といたしまして、内外の研究、すなわち大学などの研究者が行うデータ整備活動などと連携し、「政策のための科学」の研究プロジェクトにより生み出されたデータを集約していきます。
 3番では、想定する研究課題の体系と対応するデータ整備として、ⅠからⅤまでの研究課題について、それぞれ対応するデータ基盤を示しています。例えば、Ⅰの政府及び公的研究開発システムでは、大学の構造分析や政府予算で実施されている研究開発のパフォーマンスなどの研究課題につきまして、科学技術研究調査のデータやe-Radのデータ、論文や特許のデータベースなどが基盤となり得るということを示しています。以下、ⅡからⅤまで、同様に対応関係を示していますが、それぞれの研究課題に資するよう、これらのデータ基盤の整備に努めてまいりたいと考えています。
 4番では、当面のスケジュールといたしまして、今年度上期から検討の開始や総務省との協議などを開始して、今年度下期以降にデータの整備や提供を開始してまいりたいと考えています。
 御説明は、以上でございます。

【黒田主査】 
 どうもありがとうございました。
 ただいま、政策課題対応型の研究及びデータ基盤の内容につきまして、政策研のほうから御説明いただきました。何か御質問等ございますでしょうか。

【有本委員】 
 ちょっとお願いをしておきたいのは、投資効果とか、あるいは社会へのインパクト、例えば、内閣府の経済社会総合研究所にしても、あるいは経産省の研究所にしても、いっぱいアセットもあるし、それから人もいるので、さっき冒頭に相澤先生がおっしゃった、こういう階層のところでもできるだけオープンにして一緒にやるというようなことを考えていただけたらどうかなと思いますけど、多分お考えなんでしょう。回答は要りません。よろしく。
 以上です。

【黒田主査】 
 ありがとうございます。
 どうぞ。

【森田委員】 
 最後のデータの部分ですけれども、私は今、内閣官房で、国民番号制度とか、いろいろとそちらのほうにかかわっているんですが、少なくとも「政策のための科学」をやるためには、個人情報を含めて、大量に正確なデータをきちんと集めておくことが必要だと思いますけれども、現在の個人情報保護の考え方だと、非常にそれが難しい、制約になりかねないと思います。このときの政策のためのベースになるデータというのは個人情報よりも匿名化されたデータですけれども、それについても収集そのものが制限されてしまいますとそもそもデータが集まらないので、その辺についてはまさに、「政策のための科学」というか、科学的に政策をつくるために絶対的に必要な条件だというので、ぜひこちらのほうでも頑張っていただきたい。

【黒田主査】 
 ありがとうございました。政策研はかなり今までやられてきた蓄積がございますので、それを生かしてより拡張に持っていくということで、森田先生のおっしゃった件は、統計委員会とのかかわりが相当出てくると思いますので、そこでまた御審議をいただきたいというふうに思います。
 そうしたら、時間の制約もありますので、次の公募型の研究につきまして、これはRISTEXのほうから御説明をいただきたいと思います。

【斎藤(RISTEX)】 
 JSTの社会技術研究開発センター(RISTEX)の斎藤でございます。資料9に則して、公募型の研究開発プログラムの検討状況、方向性につきまして、ごく簡単に御説明申し上げます。
 昨年以来、様々なワーキングチームとかワークショップを重ね、文科省、科学技術政策研究所、それからJST戦略センターともタイアップしまして、この公募プログラムの具体的な内容・方向性について検討を重ねてまいりました。その状況が1ページ目の下段に出ておりますけれども、目標といたしましては、先ほど基本構想・基本方針で示されたような、エビデンスに基づく政策形成に向けた、人文・社会科学と自然科学による横断的なアプローチのもとに、メカニズム、あるいは効果的・効率的な政策形成に寄与する手法、モデル、ツール等の開発を進めるという、中長期的な目標を踏まえたプログラムを念頭に置いております。その際、こうした取組が研究者や関与者のすそ野を広げる、あるいは連携やネットワーク構築に資するようなプログラムの運営に留意していくという方向を念頭に置いております。
 設置期間といたしましては、第4期科学技術基本計画のもとで実装していくことを念頭に、差し当たり4年間にわたり新規の課題を採択していき、プログラムの実施期間としては、次のページに出ておりますが、3年以内ということですので、合わせて7年間のプログラムを想定しておりまして、各年度、予算の状況も踏まえ数件から10件程度の採択を行い、一定期間実施したところで評価を行うということを念頭に置いております。
 プログラムの概要の2番目ですが、このプログラムを進めるに当たっては、あくまで現実の政策形成での活用という実践的なアプローチを重視するということで、先ほど申し上げました自然科学と人文・社会科学の分野横断的なアプローチと同時に、研究者と対象となる課題の関与者――これは、あるときは行政部局の関係者でもございますし、あるいはその行政の対象となるような研究コミュニティー等々も含まれてくると考えております。あわせて、国際的な動向にも留意しつつということで、先ほど少し御意見がありましたOECDにおけるいろいろな検討とも連携を考慮していくということでございます。
 マネジメントにつきましては、研究総括を御指名いただきまして、そのもとでアドバイザーを産学官等のバランスも考慮して選任いたしまして、社会的な状況、国際的動向にも留意しながら、重点化、柔軟な対応ということを心がけると同時に、外部関与者とのネットワーク構築という視点にも留意していくということでございます。
 公募プログラムの具体的な内容については、参考1の3.研究開発プロジェクトの「要素イメージ」というところにございますが、これにつきましては、「政策のための科学」全体の事業の領域の柱といたしまして、先ほどからも出ておりますが、政策形成のフレームワーク、経済・社会への影響、イノベーションの推進システム、さらにはRISTEXにおいて従来から重点を置いて取り組んできた政策形成と社会との関係、こういったテーマにつきまして、それぞれある程度具体的な研究テーマのイメージも持ちながら公募をしていくということを今検討しております。
 具体的な公募のイメージについては、参考2のところについておりますが、昨年末から今年にかけて、いわば提案募集といいますか、アイデアを募集いたしまして、それぞれについて簡単な肉づけの調査を実施いたしました。合わせて15課題の提案が出てきております。これが一つの、今後、公募を進めていく上での一つのよりどころ、手がかりになるというふうに考えてございます。
 今後のプロセスですが、1ページ目に戻っていただき、この推進委員会で本日御議論いただいたような基本方針、あるいは震災対応の観点も踏まえて、文科省から方針を提示いただければ、これを受けまして、資料9の一番最後のページに横長の図が出ておりますが、これは実は昨年の事業仕分けの結果を踏まえまして文科省主管のJSTのCREST・さきがけ等の競争的研究資金の運営の方式をそのまま踏襲するという形を考えてございまして、具体的には、「社会技術研究開発主監会議」というものを設けまして、そこで、いただいた方針を踏まえて、プログラム総括、いわゆる研究総括の指名をいたします。あわせて、この主監会議において、今後の公募プログラムの具体的な方向づけですとか、プログラムが進んでいく過程においては課題の中間・事後評価の確認ということも行ってまいりまして、全体としては方針を踏まえたきちんとしたガバナンスが進められるように留意をしていくつもりでございます。
 今後のスケジュールの見通しですが、資料9の1ページ目に戻っていただきまして、この方針を踏まえた総括の指名、アドバイザーの人選を受けて、おそらく公募の開始時期としては6月下旬から7月ごろのスタートという予定を見込んでおります。2か月ほどの公募を経まして、おそらく秋以降に採択をしたプロジェクトの開始という段階に至るものと考えてございます。
 最後に、震災対応について若干補足いたしますと、RISTEXでも他の公募プログラムをやっておりますが、一つは、すぐに使える研究開発成果の実装という点におきましては、先週までに緊急の公募をいたしまして、これについては別途6件の課題を採択し、プレス発表をしたところでございます。これは超短期の対応ということでございますが、これに加えて「政策のための科学」の中で、先ほども御議論のあったような震災対応の視点でどのような公募の際の採択があり得るかという点については、例えば総括からのメッセージを公募の際に発するというようなことも含めまして、今後、総括あるいはアドバイザーによるプログラム会議の中で、この推進委員会の御議論も踏まえて、しっかり検討をしてまいりたいと考えております。
 説明は、以上でございます。

【黒田主査】 
 どうもありがとうございます。
 RISTEXのほうから、これからやっていくプログラム、公募型研究について御説明いただきましたが、何か御質問等ございますでしょうか。
 進行の過程の中で推進委員会のほうに適宜御説明をいただくということになると思いますので、とりあえずスタート、6月ぐらいから公募をし出すということになりますが、よろしゅうございますでしょうか。
 それでは、もう1点、基盤的研究と人材育成拠点、これは文科省のほうから御説明をいただきたいと思います。

【奥補佐】 
 計画官付の奥と申します。よろしくお願いします。基盤的研究・人材育成拠点の構想について、御説明をいたします。
 先ほど御説明あったように、いろいろな研究プログラム、あるいはデータ基盤整備等、他のプログラムがありますけれども、それらとともに人材育成の拠点というのも並行して検討するということで、かなりユニークなプログラムになっているのではないかと思います。何度も御説明ありましたように、政策プロセスの改変ということと、あと科学技術イノベーション政策のための科学という新しい研究分野というのを両方進めていくためには、それの双方を担う人材がやはり必要であろうということで、基本的考え方のところにありますが、まる1として主に政策形成を担う政策担当者、まる2にありますように新しい研究領域の発展の担い手となるような研究者、この双方を育成するための拠点というのを形成していく必要があるということを考えております。この分野は、特定の研究領域というよりは、かなり幅広い学際的な研究領域として構成することが必要だということで、学際的なコースワークやカリキュラムを設定するということも、ここで書かせていただいております。
 推進体制のところになりますが、主として科学技術イノベーション政策を専門とする者の育成を目指すような、総合政策研究・人材育成中核拠点というのを1拠点、それと、特定の専門分野に加えて、科学技術イノベーション政策についてもかなりの専門的な知識を持つ者、研究者を養成するものとして、領域横断研究・人材育成拠点を複数拠点形成するとしています。冒頭、笠木先生のほうから質問がありましたが、この人材拠点についてはかなり長期的な取組が必要だということで、10~15年にわたる支援というのを検討しているということになっております。
 次のページに行っていただいて、両拠点で育成すべき人材像としてどういう人がいるかということで、上のほう、中核拠点になりますけれども、主として、科学技術イノベーション政策の企画立案・推進等を担うような行政官、大学等でマネジメント等に携わるような職員、「政策のための科学」を専門とするような研究者、この3者を一応念頭に置いておりまして、対象としては、既存の人文科学・社会科学系の学部等を卒業して修士課程も修了した者が新しく中核拠点で設けるような博士課程コースに入学する、そういう学生、あるいは、社会人として関係省庁あるいは大学等に所属したまま、「政策のための科学」を専門的に学ぶために入学する社会人、この二つのタイプを一応念頭に置いています。
 もう一つのほう、領域横断のほうですけれども、これは、1ぽつ目が人・社系、2ぽつ目が自然科学系になりますが、こういう既存の学部・修士課程等に在籍していて、これを新しいサブのコースとして学ぶような、学んで専門とする研究として発展していくような研究者、大学等に所属しているような職員というのを育成すべき人材像として想定をしています。ということで、対象者については、既存の学部等に所属しつつ、これを横断的に学ぶような学生というのを対象に、念頭に置いています。
 両拠点に求められる特徴として、下にありますけれども、特に中核拠点のほうは科学技術イノベーション政策のための科学という新しい専攻コースを新設するということを念頭に置いています。それに加えて、社会人については、より短期に学べるように、短期的なコースというのも設けるというのを念頭に置いています。なので、前者の専攻に属する者については、修了者には学位を授与する。短期コースについては、サーティフィケートのようなものが授与できないかということを考えています。領域横断のところも、基本的にはサーティフィケートのコースというのを設けるということで、下のほうにイメージ図がありますけれども、中核拠点のほうはどちらかというと専攻で博士を授与する、領域横断のところは既存の学部に所属しながらこれをサブのコースとして学ぶというようなことを念頭に置いています。
 その次のページ、上のほうはそれを図示的にしたものですので、これは割愛させていただきます。
 下のほう、人材育成拠点の案まる4とありますけれども、留意すべき事項のところは、関係機関に協力を求めて講師派遣等を行っていただくということですとか、いろいろ書かれていますが、一番下のところ、特にこれについては、23年度中の拠点形成、25年度からの学生入学を目指してコースを開設することが求められるのではないかということで、今年度中に拠点形成を進めたいというふうに思っています。郷先生のほうから最初に質問がありましたが、毎年の学生規模としてどのくらいを想定するのかというのをある程度こちらとしても念頭に置いておいたほうが良いだろうということで、中核拠点については、新しい専攻のコースのところは5~10名、社会人の短期コースについては10~20名、この程度の規模感ではどうかということを念頭に置いています。領域横断のところは、5~10名とありますが、もう少し人数を増やしてもいいのかもしれないと思っています。
 次のページになりますが、中核1拠点と領域横断3拠点、複数拠点と言っていますが、例えばということで、これらが独立してばらばらにあってはいけないということで、中核拠点を中心に置きつつも、ほかの領域横断の拠点等々がかなり密接に結びついてこの取組を進めていく必要があるのではないかということで、上のほうの図を書いています。
 海外の主な研究機関の例として下のところにありますが、中核拠点として念頭に置いているのは科学技術政策研究という真ん中にあるところで、それ以外の領域横断のところは、いろんな他の研究分野、既存の研究分野から派生しているような研究拠点というのを一応念頭に置いています。
 次のまる6は省略させていただいて、では中核拠点あるいは領域横断拠点でどういうカリキュラムを念頭に置くのかということで、海外の研究機関と研究拠点等の例をもとに文科省として関係者といろいろ相談をして、想定される内容として記したものが、まる7のコアカリキュラムの案になります。政策形成のプロセス、政策分析のツール、あるいは科学技術イノベーション活動、最新の科学技術イノベーションの動向を知るためのものということ、あとは基礎的な能力ということで、主にこういう構成ではどうかということで、次のページのところに海外の研究機関の例ということで、SPRUとマンチェスターの例をつけさせていただいています。ここで、日本のほうのというか、今回念頭に置いているものでかなり特徴的なのは、海外の研究機関ですと、科学技術イノベーション活動の最新動向というところを必ずしも十分にやられていないということで、これは、既存のところ、ほかのところから持ってくればいいという考えからそうなっているのかもしれないですが、最新動向というのも、やはり現場と離れてこういうことをやってはいけないということで、新しく加えるべきではないかということで案をつくらせていただいているのが、まる7のページになっています。こういうカリキュラムの案をコアのカリキュラムとして、中核拠点のみならず領域横断の拠点のほうでもぜひとも導入をしていただきたいということを念頭に置いています。
 スケジュールとしては、これから推進委員会で何度か御議論いただいて、あと、拠点の候補となりそうな大学について、いろいろインタビューをしていきたいと思っています。11月中にでも拠点の案を選考してはどうかということで進めさせていただければと思っております。
 以上でございます。

【黒田主査】 
 どうもありがとうございます。
 御説明いただきました資料10でございますけれども、きょう御説明を一応伺って、これから相当議論を重ねないといけない部分だと思いますので、何か、きょう絶対聞いておきたいという御質問がありましたらお伺いをしたいと思いますが、いかがでしょうか。
 よろしゅうございますか。これは相当、中身は慎重かつ大胆にやらなきゃいけない部分で、先ほど郷先生がおっしゃったように、今までと同じものを作ってもしようがないので、実効性のあるものを作るということが大事だと思いますので、何回か時間をとって御議論をさせていただきたいと思いますが、きょうは、時間がもう超過しておりますので、よろしゅうございますでしょうか。
 それでは、今後のスケジュール等々の御説明ですが、官房長と局長がおいでになりましたので、一言ずつでもごあいさつを賜ればと思いますが。

【合田局長】 
 科学技術・学術政策局長の合田でございます。本日は、大変お忙しい中を御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 3月11日以降、災害対策に関わる中からいろいろと考えさせられることがございます。私どもとして物事を考えていくときに、科学的なエビデンスというものがいかに重要かということは、私どもの日常的な放射線量に関するモニタリングの一つ一つの数字が大変注目をされているといったようなことからも明らかなわけですけれども、しかし、そういうエビデンスが全てを決めてくれるわけではない、エビデンスを超えたところで物事を決めていかなきゃいけないという事態にも直面するわけでありまして、そういうときにその政策決定をいかに科学的に行うことができるのかということも同時に問われているということをつくづく感じているような次第でございます。
 私どもといたしましても今回のこのプロジェクトには大いに期待をいたしておりますので、ぜひ、大変御多用な中を恐縮でございますけれどもお力添えを賜りまして、新しい一つのいい提言を取りまとめていただければ大変ありがたいというふうに存じております。ひとつよろしくお願い申します。

【黒田主査】 
 どうもありがとうございました。
 土屋官房長。

【土屋官房長】 
 官房長の土屋でございます。直接担当ではないんですが、この活動をプロモートさせていただいていたことで発言の機会をいただきまして、ありがとうございました。
 これを考えたのは、科学技術活動をとにかく改変していこうということで考えておったところです。そうしたところで大震災があって、我々の価値観であるとか、在り方を大きく変えないといけないと、こういう事態になったわけですが、何というか、このプロジェクトの天命というか、まさしくこういうことを始めないといけないということなんだろうと思っております。私も一生懸命これを進めてまいりたいと思いますが、第1回の推進委員会を本日開いていただいたところですが、これから大変強力に御指導、御鞭撻をいただきましてしっかりとした成果を上げるように努力していきたいと思いますので、何とぞ、どうぞよろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。

【黒田主査】 
 どうもありがとうございました。
 それでは、事務局のほうから、これからのスケジュールのことをお願いします。

【斉藤室長】 
 資料11を御覧いただければと思います。今後の本事業のスケジュール(案)ということで示させていただいております。
 まず、本推進委員会につきましては、ここにございますとおり、2か月に1回ぐらいのペースで開かせていただきたいというふうに思っております。特に今年前半につきましては、スタートダッシュということで様々な検討が進みますので、少し頻繁に開かせていただきたいと思っております。次回は7月ごろの開催をイメージしております。
 その前の6月22日に、国際フォーラムというのが書いてございます。こちらは、3月15日に、震災の直後にもともと予定されていたものでございますが、震災の影響で延期をしておりましたものを開催します。フォーラムにつきましては、資料12に簡単な1枚紙を入れてございますけれども、推進委員会の先生も何人か御出席いただくことになっておりますが、基調講演及びパネルディスカッションなどを想定しております。その際、アメリカのほうで政策の科学のプログラムをNSFで推進しているプログラム・ディレクターや、OECDのほうで本件を一緒にやらせていただいています原山先生にも来日いただいて、講演いただく予定となっております。
 資料11に戻りまして、まず文科省につきましては、今御説明申し上げた人材拠点について集中的な議論が必要だということで、事務的に我々検討しまして、もちろん先生方はお忙しいので直接集まってというよりもメールベースなどになるかと思いますが、様々御指導をいただきながら、制度の設計に向けて進めていきたいというふうに思っております。
 政策研究所のほうでは、先ほど御説明あった情報基盤ですとか政策課題対応型の研究について、進めていただきたいと思っております。さらに、震災対応の関係で当面できることということで申し上げた、エビデンス集め、意識変化の調査などについて、進めたいと思っております。
 RISTEXにつきましては、これも先ほど御説明ありましたとおり、公募に向けて準備を進めていただきたいと思っております。
 それぞれ検討が進みましたら、要所要所で推進委員会を開かせていただいて、御報告、御指導をいただきながら進めていきたいというふうに思っております。
 以上でございます。

【黒田主査】 
 どうもありがとうございました。
 今後のスケジュールについて、何か御質問ございますでしょうか。よろしゅうございますか。
 じゃあ、長時間にわたりまして、ありがとうございました。第1回目、これで終了させていただきます。どうもありがとうございました。

 

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