サービス科学・工学の推進に関する検討会(第4回) 配付資料

1.日時

平成20年10月30日(木曜日) 16時~18時

2.場所

文部科学省 3F2特別会議室

3.議題

  1. 各論についての検討
  2. その他

4.配付資料

5.出席者

委員

 生駒座長、碓井委員、大澤委員、太田委員、加藤委員、儀我委員、北川委員、妹尾委員、高安委員、友田委員、長井委員、中島委員、日高委員

文部科学省

(科学技術・学術政策局)
 泉科学技術・学術政策局長、岩瀬科学技術・学術総括官、近藤調査調整課長、川端基盤政策課長、柿田計画官、坪田政策課企画官、堀田調査調整課課長補佐、渡邉計画官補佐

6.議事録

【生駒座長】
 時間が参りましたので始めさせていただきます。第4回のサービス科学・工学の推進に関する検討会でございます。
 まず、お手元の資料について事務局よりご確認ください。

【渡邉計画官補佐】
 議事次第に沿いまして資料の確認をさせていただきます。
 議事次第の次にあるものが座席表になっております。その次が資料1「サービス科学・工学の推進に関する検討の方向について(修正案)」。その次が参考資料1「サービス科学・工学の推進に関する検討会メンバー」。参考資料2「サービス科学・工学の推進に関する検討会の進め方」。参考資料3「サービス科学・工学実践の俯瞰図」。その次が参考資料4「研究システムイメージ」ということになってございます。落丁・不足等ございましたら事務局にお申しつけください。

【生駒座長】
 ありがとうございました。
 それでは次に議題に移りますけれども、今日は特にヒアリング等はなく、皆さんのフリートーキング・フリーディスカッションでございまして、時間がたっぷりあると思いますので、そのもとになる検討事項について事務局からお願いします。

【柿田計画官】
 それでは資料1をご覧いただきたいと思います。前回の検討会で検討の方向についてという同じ体裁の資料をご説明し、そしてご議論いただきまして、その後委員の皆様方から大変貴重、かつ、たくさんのご意見を頂戴いたしました。ご意見等を踏まえまして、今回の修正案という形で資料にまとめております。いただきましたコメントは非常にたくさんございます。ここにすべてについて書き切れてはおりませんが、いただいたコメントの趣旨等については可能な限り盛り込んだつもりでございます。
 それから、この後報告書という形でまとめていくわけですけれども、その過程におきましても、いただきましたコメントについては可能な限り盛り込ませていただきたいと考えております。
 それではご説明いたします。まず1ページですが、検討の対象とする「サービス」の概念というのを最初に項目として掲げました。この資料ですが、小さい字で丸があって、それで文章が始まっております。小さい文字で黒くなっているのが前回検討会の資料における記述でございます。それでいただきましたコメント等を踏まえながら、大きく、赤字で書いているものが今回の資料の中身ということで、要するに、黒字が赤字に置き換わると。箇所によっては、全く同じ文章がそのまま生きているものもございますけれども、いずれにしても、黒字は参考までに残しているということでありまして、赤くて太い字が資料の内容になるということで捉えていただきたいと思います。
 それで、対象とする「サービス」の概念ということで項目を起させていただきました。まずサービスの定義をやるということは、この検討会の最初でも深く議論するというよりもむしろどういう研究のアプローチであるとか、どういう分野について狙っていくのかとかいったことについての実際の議論をしたほうが有益であろうという御意見がありましたし、サービスについて定義するということは考えていないんですが、そもそもどういうものをこの検討会で対象にするのかというバウンダリーとして記述しております。
 読み上げる形になりますが、我が国において「サービス」は、サービス業における“商品”に相当するもの。これは当たり前でございますけれども、まず念頭に浮かぶのはそういうものであります。それから、また、対価を求めない行為、奉仕でありますとか、貢献等として捉えられる、いわゆるただで何かを行うというもののように捉えるのが一般的でありますが、本検討会においては、より広い意味で、「サービス」は、人と人、人とモノがかかわる場面において、価値を生み出すためのプロセスや、もたらされる効果と捉えてはどうかということでございます。
 それから、このため、「サービス」を高度化・効率化等し、あるいは新規に創出することによって、社会における課題の達成であるとか問題の解決といったことを図ることが期待されるのではないか。
 このことから、社会における課題や問題を、「サービス」の高度化等の視点で捉え、課題達成、問題解決を通じた価値の創出を図っていくための方法を検討する。
 例えば、製品設計・製造、物流等におけるプロセスの高度化・効率化、少子高齢化社会への適応、生活の質(QOL)の向上等の課題を「サービス」の観点から捉え直し、生産、物流、医療・福祉、防災等における「サービス」の高度化・効率化等により達成していくことである。低炭素、高い持続可能性等、今後の社会のあるべき姿に対応した適切な「サービス」を創出していくということ等が検討の対象として考えられる。
 ということで、前回の資料では第3次産業ということを記述しておりましたが、その産業、とりわけサービス産業といったもの、あるいは接客といった部分に焦点を置くというのではなくて、もちろんそういった分野を排除するものではございませんけれども、人と人、人とモノがかかわる場面のプロセス、もたらされる効果ということで広く捉えてはどうかということでございます。
 それでは2ページに参ります。サービスに関する今後の施策の視点ということでございます。社会に対して大きな影響を与え得るサービスについては、これまで必ずしも十分に科学的あるいは工学的な取り組みの対象とされてこなかったが、今後はそれらの対象として捉える。
 サービスにおいて、いわゆる「経験と勘」と言われておりますが、それと「科学的・工学的手法」を多様な関係で効果的に生かすための知を創出していく。
 サービスに科学的・工学的な手法を導入することにより、新たなサービスを創出すること及び既存のサービスの高度化・効率化・広範囲化の双方に大きく貢献する。
 ということで、サービスに科学的・工学的な手法を導入し、社会に対して価値を創出することは大きな意義を有することから、科学技術政策においてこれを「サービス科学・工学」として推進していくということであります。
 続きまして3ページをお願いいたします。そこで、「サービス科学・工学」とはということでして、サービスに科学的・工学的手法を導入して、新たなサービスの創出、既存サービスの高度化・効率化・広範囲化を図るための方法論を構築し、活用すること。
 そして、サービス科学・工学の推進に関する施策ということでございます。1つ目には、研究機関、例えば大学等でございます。サービス実施主体、ここは企業、公共機関、NPO等が考えられます。及びサービスの利用者、それらの間の協働を促進し、サービス科学・工学を推進するための研究システムを創設する。
 それから、多様性、地域性を確保しつつ、サービス科学・工学を推進する研究拠点網を形成する。
 3つ目ですが、多分野の研究者、企業、公共機関、NPOなどの社会のさまざまな関係者が、サービスの観点から社会における課題・問題を明らかにするとともに、その達成・解決のためのサービス科学・工学としてどのような取り組みが必要かについてコミュニケーションし、さらには協働して活動するための人的ネットワークを社会に形成することを支援する。
 それから、サービス実施主体が持つ研究の推進に必要なデータを研究機関が容易に利用でき、さらにその研究成果をサービス実施主体に還元するための仕組みの整備を支援するということです。
 人材の関係ですが、サービス科学・工学を推進する研究者、例えば、社会における課題・問題に対して社会のさまざまな関係者と協働して研究を行うことのできる人材や、自然科学と社会科学等、幅広い知識や専門性を有するいわゆるT型あるいはΠ型人材を育成する。
 広範なサービス実施主体の参画を推進するため、サービス科学・工学に関する、いわゆる普及活動といいましょうか、理解増進活動を支援するということでございます。
 4ページです。サービス科学・工学研究の意義です。2つ掲げておりまして、1つは、社会における課題の達成・問題の解決に向けて研究成果を創出し、経済・社会へ寄与していくことを通じた経済的・社会的意義がある。
 もう1つは、社会における課題の達成や問題の解決に関して高い目標を掲げて研究を行う過程で、学問上のブレークスルーが期待されるという科学的な意義があるというように整理いたしました。
 それから、サービス科学・工学のアプローチでございます。こちらはお配りしております参考資料3にも触れながら説明させていただきます。
 サービス科学・工学の実践に係る全体像をまず俯瞰するということが大事である。その上で、1つは、社会において達成すべき課題や解決すべき問題を明確化した上で、これを達成するために必要な手法や数学モデル等のモデルを、要素技術の抽出、発展、創出、さらにはすり合わせ等による最適統合を行いつつ開発する。もう1つは、サービスに関して基礎的な要素技術の抽出、発展、創出、さらには共通化を行うという2つのアプローチ。それから、これら両者を統合的に進めるアプローチが必要である。
 ということで、ここで参考資料3をご覧いただきたいんですが、まず、この俯瞰図というところで、上に課題・問題ということで、グリーンのところがございます。あくまでも例として4つほど上げておりますが、低炭素だとか生活の質、サービスの基礎的・共通的な課題であるとか、あるいは少子高齢化とかいろいろな課題・問題を明らかにする。そのもとで、また後で出て参りますが、研究すべき内容、どういうことについて研究するかということを設定して、そして公募という形で具体的な研究プロジェクトを募って研究を実施していくということになります。
 それで、2つのアプローチのうちまず最初でございますけれども、ここのグリーンのプロジェクトが4つ縦に置かれており、明確な課題に基づくプロジェクトを実施します。そこの研究の中ではまさにサービス科学・工学という要素になるわけですが、ここでも数理科学とかいろんな技術、大規模データ科学、心理学とかいろんな手法とか、このように、いろいろな要素技術で必要なものを抽出したり、あるいは既存のものについてさらに発展が必要だと考えられるものについては発展させる。新しくつくる必要があるというものについては要素技術の創出ということを行って、さらに最適統合等を行って社会に適用可能な、いわゆるサービスの向上等を行うための手法、あるいはモデルを開発していくというのが、この縦のプロジェクトの中で行われるものです。
 今申し上げたのは縦に点線で括ってあって、下に台形のピンク色の部分が描いてありますけれども、この個々のプロジェクトで行われる内容でございます。
 それからもう1つの、アプローチの2つ目ですけれども、今度は横軸で見たときにいろんな要素技術が必要だと。その中で、例えばこれは大規模データ科学というところに点線をして例示しておりますけれども、あるプロジェクトについて、大規模データ科学という要素技術が必要だと。ところが、これは他の研究テーマにおいても使えるものだと、あるいは使えるようにしていくんだということで、その要素技術をいわゆるサービスという観点で共通化していくというアプローチも必要ではないかと。そして、実際の研究ではこれら縦と横を、全体を俯瞰しながら、かつ統合しながらやっていくということが必要ではないかということでございます。
 それで、さっきの資料1の4ページにお戻りいただきたいんですけれども、もう1つの丸で、さらに、サービス科学・工学研究の推進に当たって、社会のさまざまな課題・問題について幅広く研究活動を実施し、具体的な取り組みを重ねることにより、サービス科学・工学研究の全体像を明らかにしていくということが肝要ではないかと考えます。
 あと、米印のところで要素技術としてはというように書いてありますが、ここのところも最終的な報告書の文章にきちっと落とす段階では、もう少し議論も深めながら、あるいはまたご意見等もいただきながら精緻化していきたいというように考えております。
 それから次、5ページでございます。目指すべき目標。1つ目が、社会の課題・問題に適用可能な手法やモデルを開発し、サービス実施主体による活用を通じ、さらなるサービスの高度化・効率化・広範囲化を目指す。
 それから、サービス科学・工学研究の実践を通じ、サービス科学・工学における共通基盤技術のようなものを創出していくことを目指すということとしてはどうかと考えます。
 それから6ページです。先ほど出て参りました施策の例の中の1つでございます研究システムのあり方について、やや深掘りしたところでございます。1つは、研究システムの概要ですが、サービス科学・工学により、社会の課題・問題に適用可能な手法やモデルの開発を行うため、研究プロジェクトの選定及び研究資金の配分等を行う研究システムを創設する。1つの研究制度と言ってもいいのかもしれませんが、そういったものをつくるということが概要でございます。
 (2)は、対象となる研究プロジェクト及び研究実施の方法ということです。まず研究プロジェクトとしましては、科学的・工学的手法の導入により、新たなサービスの創出、既存サービスの高度化・効率化・広範囲化が可能となり、課題の達成、問題の解決が期待されるもの。それからもう1つの条件としては、研究機関、企業、公共機関、NPOなどの社会のさまざまな関係者の密接な連携のもと、プロジェクトに応じいずれかが主導して取り組む。これは必ずしも研究機関が主導ということではなくて、テーマによっては産業界が主導するものもあるだろうという意味でございます。
 当面取り組むべき課題・問題として、医療、防災、運輸、流通、観光、教育等ということで、ここは前回と特に変えておりませんけれども、他にも考えられるものはあると思います。サービスに関する基礎的・共通的なものもあるのではないかということで、ここの部分を追加して記述しております。
 それから、研究プロジェクトの実施に当たっては、研究途上のモデルを実際の現場に適用し、その成果の確認を通じたモデルの精緻化を可能にする方法をとることが必要であるということで、ここは関係者が協働して行うという部分について、よりイメージを具体化するという意味で書いたものでございます。
 課題・問題に横断的な研究体制を構築し、相互に作用しながら研究を推進することも必要であるとしております。
 それから7ページです。続きになりますが、研究すべき内容の設定等のプロセスということで、今度こちらについては社会のさまざまな関係者へのインタビュー等を行うことにより、達成が期待される課題や解決すべき問題をまず抽出します。その後、抽出された内容をもとに、開かれたワークショップ等において議論を重ね、必要となる要素技術についての検討も加えながら、研究すべき具体的な内容を設定する。
 そして、研究すべき具体的な内容を示した上で、それに対応する個々の研究プロジェクトを公募するということであります。
 参考資料4が、今の部分を絵にしたものでございまして、まず楕円の中に課題・問題。これをインタビュー等通じて抽出していきます。そういったものの中から今度はワークショップ等を通じて、どういう要素技術が必要かという研究者サイドの意見等も交えながら、研究すべき内容といいましょうか、研究テーマといってもいいのでしょうか、ここはうまく言葉で表現できていないんですけども、研究すべき内容というものを設定し、今度はその研究すべき内容というものをもとに、個々の研究の課題、すなわち研究プロジェクトを公募するということで、その研究プロジェクトにおいては研究者でありますとか、サービスの実施機関、あるいはサービスの利用者といった関係者が協働して研究を実施するということでございます。
 8ページです。今度はこの研究システムのマネジメントですが、研究システム全体における企画運営にあたる責任者、及び専門的な助言を行い、責任者を補佐するアドバイザーを設置する。責任者とアドバイザーを設置するということです。それから、必要に応じ各要素技術に関して専門的な助言を行うアドバイザーを設置する。
 それから、責任者やアドバイザーには、ワークショップ等における検討内容を反映して、研究システムを運営できる人材を選定する。
 責任者及びアドバイザーが、問題探索と解決のための具体的提案を行う研究プロジェクトを公募する。新たな研究分野であるため、採択の審査においてはこれまでの実績にとらわれない評価基準のあり方に留意する。
 我が国や世界における社会的・経済的情勢やサービスの動向等を考慮し、事前評価及び中間評価を適切に実施し、研究の方向、予算配分等を適切かつ柔軟に変更できるようにする。
 責任者は、個々の研究プロジェクトの着実な実施はもとより、社会における重要な課題・問題について幅広く研究プロジェクトとして実施するとともに、サービス科学・工学を支える主要な要素技術を適切に整備することが可能となるよう、研究システムにおいて行われる研究全体を常に俯瞰しながらマネジメントを行うということであります。
 (5)は、研究ごとの研究期間・研究予算ということで、これはあくまでも今概算要求しているストーリー上の数字を記載しているものでありますが、研究プロジェクトごとに必要な研究期間・予算規模は異なることが想定されるが、当面1課題当たり3から5年の研究期間、年間2,500万から5,000万円程度で幅を持たせるということとしておりますが、これは今後の予算等の状況と連動していきます。
 9ページです。次の項目になりますが、関係者の連携と各々の役割ということで、まず、サービス科学・工学の推進に当たっては、関係者が各種のサービスに応じてその概念を明確化し、共通目的・共通認識を持って取り組むということが必要、大変重要だと考えます。
 関係者が密接に協働し、具体的な課題達成・問題解決のための明確な目的と意志を持ち取り組んでいくことが肝要である。
 関係者は、人々や社会のさまざまな課題・問題をより的確かつタイムリーに把握し、経済的・社会的価値の高いサービスを効果的・効率的に創出するために連携する。
 大学等の研究機関は、サービス実施主体及びサービス利用者と協働し、状況の分析、データの活用等とともに、サービス科学・工学に係る要素技術の発展・創出・統合等により、研究対象である具体的な課題・問題に適用可能な手法やモデルを開発する。
 研究機関、サービス実施主体は、研究の成果である手法やモデルを社会への適用による効果の確認を通じ、手法やモデルのさらなる磨き上げを行い、また、それらの普及活動に努める。
 10ページ、続きですが、サービス実施主体は、サービスの創出あるいは提供の現場における明確な課題・問題の抽出とともに、サービスの実施に伴う各種のデータを可能な限り提供することが、さらなるサービスの向上に役立つことに留意する。
 サービスの研究、実施に当たっては、サービス実施側と享受側だけではなく、これを取り巻くもの、例えば環境等を1つのシステムとして捉えることが重要である。
 関係者は、サービスがそのあり方によっては社会や地球環境等にも影響を与え得るということも認識し、持続可能な社会のために有用なサービスの創出や実施に努めるということでございます。
 ということで、たくさんのご意見をいただきまして、フレームワークを固めるという部分についてご意見を取り込ませていただきました。繰り返しになりますけれども、またこれから、今度さらに文章化するフェーズがございますので、そこでもいただいた意見は十分活用させていただきたいと思っております。
 以上でございます。

【生駒座長】
 ありがとうございました。
 これからご意見を承りたいんですが、今日のこのスケルトンのようなものと皆様のご意見をもとに報告書のドラフトを作成してもらって、次回の検討会でそれを諮ります。ブラッシュアップしたものを、もう1回ご意見をいただいて最終的な報告書にします。ですから、これから文章作成に入っていただくにあたり、少しディテールのご意見でも結構ですから自由に意見を出していただきたいんですが、全部を一緒にやりますと後でまとめるのが大変ですので、一応ある程度の大分けをして、課題設定してご意見を伺いたいと思います。
 まず、1ページと2ページと3ページまでにかかわるもの。まずは概念的なものがあります。それから、推進するための施策のあり方1サービス工学意義とかアプローチとかいう4、5ページが次のセクションで、あとは進め方、研究システムの概要が6ページ以下と。その3セクションに分けましょうか。多分それがまとめやすいでしょうね。
 だから、まずはサービス科学・工学の一般について、1・2・3ページに関してのご意見を伺いたいと思います。できれば、ここのどこに関連するかをおっしゃっていただいて発言ください。それに関係なければご自由にご発言ください。

【北川委員】
 まず1ページのサービスの概念のあたりですけれども、ここで少しサービスの受容者側の立場というのを強調されてはいかがかなと思います。というのは、この1、2週間サービス関連の、医療サービスとか、それから教育の緊急ワークショップに意識的に出てみて、そこの印象として、やはりかなりのところが従来のサービスの問題を効率的にやるとかいう感じのことをやられている人がいて、ここでやるのはもう少し受容者側の立場に立って考えるという視点を入れたほうがいいんじゃないか。それを入れることによって、例えば、一人一人の情報をマクロからミクロへの立場の転換とかいうことが自然に出てくるんじゃないかと思います。

【碓井委員】
 全く同感でございます。私が書いた文章を読ませていただくと、ほとんど共通だと思いますけど、サービスに関するさまざまな施策や検討を行政やサービス・産業側からのアプローチや生産性向上策に留めない。生活者の領域は、分断された行政や企業の領域を超えて日常的に広がっている。これからのサービス検討は社会的サービス・生活者起点のサービスとして捉え直し、社会的生産性、社会全体のサービスイノベーションを推進する視座が必要であり、行政や産業の枠組みの革新も検討されるべきであるということを書かせていただきました。視座を変えるということとともに、ここに入れていませんけれども、クオリティーと生産性は政策課題でもありますので、ぜひこの言葉もどこかにうまく入れていって、具体的に、特にクオリティーをどう図る、生産性をどう図るか。これは非常に科学的・工学的な視点になりますので、先ほどサービスの定義とか、あるいはサービスレベルの評価・基準というものは触れないというお話があったんですが、非常に難しいとは思うんですけど、やはりそこも見ていく視点が必要ではないかというように感じております。

【中島委員】
 この前妹尾委員からお話があった、新しい研究の方法論をつくっていくんだということと関係しますが、自分たちがやっている研究もここでいうサービスの一部ではないかと思っていて、それが出せるといいなと考えていたんです。そのときに今の話と絡めると、ユーザーの視点というときの、ユーザーの中に我々が入らなきゃいけない。要するに、研究者もユーザーだということをうまく言えないかなと思っているんです。今までは研究する人がいて、あっち側にユーザーがいてという話で、これもそう読むと読めちゃうんですけど、そうじゃないようにしたい。だから、例えば公共機関というのが3ページ目に出ているんですけど、公共機関の中に私のイメージでは文科省が入っていて、文科省のサービスの中に我々の研究というのが入っているので、そういう図にできればいいかなと思っているんですが、具体的に、どこにどう書くんだと言われるとちょっと困ります。

【生駒座長】
 対象に公共サービスを入れるかどうかはどこかで議論してもらうとすごくいいんですけどもね。イギリスは公共サービスの研究機関を設けたと聞いておりましたけれどもね。公共サービスというと研究以上にもっと広がっている部分がありますけれども、そこはよく考えなくちゃいけませんね。

【妹尾委員】
 今の中島委員の話をやると、サービスの定義はもう少し一般化したほうがいいのかもしれない。どうなるかというと、この一番最初の丸の最後の部分を、享受者――すなわち先ほどの消費者という言葉もあるし、生活者という言葉もある――にとって価値あるとみなされ得るものやことを生み出す行為・プロセス。サービスは行為・プロセスというふうに言っていいのか。それから、価値あるとみなされ得ることだけに限るのか、ものを入れるのか。この辺でご議論があると思うんですが、享受者にとって価値あるとみなされ得るものやことを生み出す行為・プロセスというのが一般的にサービスなんです。そうすると、中島委員が言われたような公共も入るし、我々の研究行為も入るみたいなことにはなると思います。

【碓井委員】
 今のお話、中島委員がおっしゃったのも含めて、後の課題なのかもしれませんけど、現状分析というアプローチの視点があまり入っていないように感じるんです。我々は生活をしているわけですから、生活者の視点というのはまさに自分の生活を通して、自分の仕事としてある研究があったり、企業活動があるわけですけども、生活の場に必ず全員がいるわけですから、その視点も含めた現状の分析をきちんとする。現状の分析が生活者視点からできるということです。
 ですから、企業側からやるんじゃないというところに現状分析のやり方をうまく組み込んで、やはりヒアリングという話が後で出て参りますけど、だれにヒアリングするかの軸は、生活者起点の現状分析をひとつ押さえておく。そうすると、うまくいっている例、いっていない例の両面から見えてくるという見方が非常に重要じゃないかと感じております。

【儀我委員】
 先ほど生駒座長からイギリスの例が挙げられた公共サービスなのですが、研究のサービスもありまして、例えばeサイエンスとかeリサーチという分野は特にイギリスで盛んに研究されています。多分このサービス・サイエンスをすすめるのにはいろんな方が数学の情報にアクセスできるようにする必要があると思うのですけど、現状でそういうことはなかなか難しく、文献を見てもどれがどうつながっているかというのはわからないわけです。どれがどうつながっているか、あるいはどこがどう関係あるのかということを、ある程度IT技術を用いて行うという、eリサーチなどがあります。
 そういう部分も含めてというニュアンスがよくて、先ほどのご発言にもありましたけども、3ページ目の3の第1文のところで、研究機関、サービス実施主体とありますけど、サービス実施主体の中に公共機関もある。ここにはやっぱり大学とかも入ってくるわけではないでしょうか。結局大学も研究情報を外に出しているわけですけど、これを非常に上手に出しているか、下手に出しているかによって、生活者ではないけれど、研究で生活している研究者たちの研究がしやすくなるかが異なってきています。とりあえずサービス・サイエンスをやっていく上で一番必要なのは、おそらく数学の文献のネットワークだとか、表現は非常に難しいのですけど、数学のウィキペディアみたいなものでしょう。クリックするとこういう数学がこっちと関係があって、これが我々の役に立ちそうだということがわかると良いと思います。だから、どこかにそういうのができるような場所が欲しいと思っております。

【生駒座長】
 事務局は今の件何かありますか。大分範囲が拡大しつつありますが。

【岩瀬総括官】
 今しばらくの議論を伺って感じたのは、まずこういうレポートを書くときにできるだけ大事なことを広く書く、これはひとつ結構なことだと思います。そのときに次の問題として出てくるのは、サービス科学・工学という取り組みで、限られた予算でやるといったときに、どういうところからやるかという議論に、次の段階でやはりなると思います。よって、広い議論をしていただくことは結構だと思いますけど、そういうステップはいずれにしろ次の段階で考えなきゃいけないかなと思います。

【日高委員】
 言葉に絡むようなことなんですけども、3番目のブリットで、前半はサービスの高度化ということに随分重きを置かれているようなんですけども、確かに研究の話なので、研究者は高度な研究とか高度な技術を目指してやっているわけですけど、ただ、使うほうから見ると、高度化されるのがいいかというと、それはまた違うと思うんですね。だから、高度化という言葉の使い方に関してもう少しいろいろ掘ったほうがいいかなと思います。ユーザー視点と同じ議論だと思うんです。

【岩瀬総括官】
 より有用なものであるということが大事で、そのときにより高度であるのがいい場合もあるし、そうでない場合もということですね。

【中島委員】
 高度の定義に依りますよね。

【日高委員】
 高度の定義だと思うんです。やはり研究という観点では高度だと思うんですけども、もう少し表現上は違うのかなという気もします。

【碓井委員】
 今のお話、高度という言葉なんですけど、私は生活者の視点ということをずっと言っているんですが、ここでキーワードになるのは共創、共に創るという関係ですね。プッシュ型で与えられる、いわゆる供給者・受給者の関係じゃなくて、特にサービスは生活そのものですから、共に創る要素における高度化といいますか、多様性。この中には非常に高度なもの、高いサービスを、高い付加価値を上げたことに対してきちっと高い費用を払いますということもあるんですけど、私はそこまで要りません、それは過剰ですということで、サービス料を下げて、自分も足を運び、労力を提供することで安くするというやり方もあると思うんです。特に65歳以上の高齢者の8割は健康なわけですから、この労働力をもう一度社会に組み込んで、全体としてバランスを組み立てると。こういうことによってコストダウンを図る、生産性を上げていくと、これも高度化の1つだと思うんですね。ですから、その両面を組み込んでいくということは非常に重要だと感じております。

【友田委員】
 サービスを受ける人たちが払えるコストというのも1つの見方かなと思います。それともう1つは、すいません、文言で申しわけないんですけども、少子化と高齢化は多分違うような気がするので、少子高齢化と一遍に区切らないほうがいいんじゃないか。

【妹尾委員】
 今の高度化と効率化をどういうふうに見るんですかという話は、2つの観点で整理、どっちでやるかというのは別としてやれると思うんですね。要するに、1つはサービスモデルを変えるんですかというモデルチェンジの話と、今あるサービスをより磨き上げますかというサービスポリッシュメントという話。これをやっぱり整理しなくちゃいけなくて、どうも高度化といっているのはポリッシュメントの話をしている、モデルの磨き上げの話をされていると思う。
 そうすると、磨き上げと、それから生産性を上げるための効率化というのが、一緒で高度化・効率化というふうにセットになっている。だけど、一方でモデルを変えようとか、モデル自身が青虫からチョウチョウに変身するように、自己組織的に変わるという話を峻別しましょう、モデルチェンジのことをイノベーションというし、こっち側のモデルポリッシュメントをインプルーブメントと呼ぶわけだから、そこを整理しましょうという議論が1つある。
 もう1つは、価値を与える話なので、エフェクティブネスかエフィカシーかエフィシェンシーの3つのどれですかという話があるんです。エフィシェンシーは投入量に対して産出量が増えるという経済効率性の話になるので、効率性はわかる。で、高度化というのはおそらくエフィカシーの話をされているんじゃないかと思うんです。つまり効能性の話です。薬の効能というのと同じで、薬がどういう。だけども、エフェクティブネスというのは上位レイヤーにとって価値がありますかないかという話なので、エフェクティブネスとエフィカシーとエフィシェンシーの3つの話が多分ここでまじっているのかなという気がする。そこら辺はもう少しきれいに整理すると、多分わかりやすくなるかなという気がします。

【生駒座長】
 私の私見を言いますと、効率化は単純に生産性の構造ですから、安いコストで高度なサービスを提供すると、すごくはっきりしている。そこの高度なサービスというのは高さのことなので、サービスにおける高さをはかるメジャーは何ですかというのは多分研究対象じゃないですかね。要するに、人間の満足度をどうやってはかるかとか、個性化というものをどうやってはかるかとかいうのは、僕はサービス科学・工学の研究対象だとすごく思って、多分高度化という言葉を、曖昧性を持ってつけておいた上で、「じゃあ、何ですか」という議論が巻き起こるのが一番いいんじゃないかなと思って、僕はこの言葉をイエスと言ったわけです。
 もう1つ、事務局が後ろのほうで広範囲化という言葉を使ったでしょう。広範囲化とは何か。僕は、これはよく研究していないんだけど、その辺もやっぱりサービス科学・工学の研究対象の1つじゃないかと、これは私見ですけれども。

【妹尾委員】
 高度化のときに高度なサービスとサービス提供プロセスの高度化は分けなきゃいけない。これはプロセスイノベーションとサービスイノベーションの話ですね。
 それからもう1つは、今の高度なサービスは非常にきめ細かいですよねというプレミアムサービスの話と、このぐらいでいいよねというコモディティーサービスですね。だから、プレミアムサービスなのかコモディティーサービスなのか。すなわち能登の加賀屋のサービスをやろうねという話なのか、いやいや、こいつはマクドナルドでいいんだよねという話とあるわけで、だから、この辺は多分皆さん聞いている方の思惑で全然違う受け取り方をしちゃうので、ある程度の抽象レベルで整理したほうがいいのかもしれないですね。

【日高委員】
 先ほど私が言った背景というのは、自分のプロジェクトの反省でもあるんですけども、研究者は難しいことをやりたいんです。難しいことを入れれば、結果として高い価値を生んでいるかというと、それは別なものの気がするんです。ここで言っている高度化が我々研究する側のことだけ言っているのだと、それはちょっと違うと思う。そんな背景があってコメントしたんです。そこだけです。

【碓井委員】
 今の高度化は非常に難しいんですけども、いわゆるサービスの非常に大きな特徴というのは相対性だと思うんです。相手がいて相手とのやりとりで決まる。物の場合には絶対的価値がある程度評価し得るわけですけど、サービスは相手の満足度とかシチュエーションによっても違うと。一人十色の時代になってくるわけですから、そのマッチングにおいて価値が生まれるということで、必ずしも一般的高度と言われるものが、ある人にとっては要らないものかもしれないという要素があると。非常に動的に決まる要素ですね。ここを科学でしていかなきゃいけないと思うんです。ですから、それを1つのテーマとして考えていただければと思います。

【生駒座長】
 グーグルは相対性じゃないでしょう。そういう非常におもしろい形態のサービスが今あるわけですよ。

【碓井委員】
 ある種の共通インフラかもしれないですね。

【生駒座長】
 非常におもしろいですよ。だから、グーグルのようなものは相対性じゃなくて、求めないものも投げかけておいて、うまくサービスという概念で、今度いろんなところの立体図が出てくるというのを、あんなのはだれも相対していないけど、自分から投げかけておいて、使うほうが勝手に使ってすごく喜んでいるという、新しいサービスの形態なんですよね。

【妹尾委員】
 今生駒座長がおっしゃられたように、例えば通信サービスとか、それから警備サービス。警備サービスはほんとに人がこうやって警備するという場合と、セコムみたいに機械でやるというのもあるので、相対性という流通的なものだけではなくて、サービス自身が広がっている。そうすると何なのかというと、だれにでも同じだよねというユニバーサリティーの汎用サービスの話と、個別具体的に対面で対応するよねという個別具体的なホスピタリティーサービスみたいなものがあって、その2つを分けなきゃいけないというのが1つあります。
 それからもう1つは、マクドナルドは世界中どこへ行ったってできるよねというグローバルな意味と、ローカルな、ここだけでできるんだよねという話がある。だから、ユニバーサリティーとホスピタリティー、グローバリティーとローカリティーとか。それから、インターナショナルサービスとナショナルサービスだとか、さっき言ったプレミアムサービスとコモディティーサービスだとか、これらを整理すること自身も研究の課題におそらくなるはずであって、それは科学技術といってもむしろもう少し広い範囲での科学技術で言わないと今みたいな整理の研究ができない、調査結果ができない。私がよく申し上げるサービス学の俯瞰図を描くということになる。そうすると共通言語ができるので、今みたいな話はもう少しスムーズにできるかなという気がします。

【生駒座長】
 カルフールはなぜ失敗したか、ウォルマートはなぜ失敗するであろうかという問題です。グローバルに共通なんだけど、日本だけサービスのシンギュラーポイントで失敗しているんですよね。

【長井委員】
 対象とするサービスの概念というところなんですけれども、サービスの概念はどういうものであろうかということについて記述されようとしていることはわかりますが、まず最初になぜこのサービスサイエンス、サービス工学をエンカレッジしなきゃいけないかと、一番もとのところを何か1つ書いて、それからこういう概念が述べられるべきではないかなという気がするんです。まず最初になぜサービスを対象とするのかということの記述が、赤のところで書けたかもしれないなという感じがしております。

【生駒座長】
 それは書き込みます。なぜ今サービス・サイエンスをやるかという、そこを書けということですよね。

【長井委員】
 はい。

【生駒座長】
 IBMが仕掛けたからというのが一番簡単なんだけど、それじゃだめなので、そこの部分は結構書き込まないと、後々出てくるサービスの定義との関連で、確かにそこは的確に指摘とらないといけないんだろうね。

【高安委員】
 なぜ今サービス科学かということにも関係するんですけれども、広い意味でサービスが何かという議論は多分30年前でもできたと思うんです。それで、なぜ今かといったら、やっぱり一番違うのは高度情報化でたくさん情報が入るようになってきたことで、それを使えば今までできなかったことができるというところがポイントだと私は思うので、その辺をもう少し皆さんに今日話していただければと思うんです。その辺もあったほうが、今サービス科学が出てきた理由はわかりやすいんじゃないかと思います。

【北川委員】
 4ページのところかなと思っていたんですが、今高安委員がせっかく言われたので、まさに私もそう思います。それで、もう少し具体的に言うと、ICTでセンサーがあって、かなり無意識的に情報がとれるようになっている。それから、インターネットではどこでもとれるし、さらにデータベースがあって大量のデータを利用できる。そういうふうに環境が大きく変わりつつある。
 それと、サイエンスとしては従来の自然科学というものに対する――認識科学に対してのサービスみたいな、人工物に対する設計科学みたいなということでしょうか――新しい方法論が必要になってきて、まさにそれの代表的な対象になっているんではないかと。そこではおそらく知識発展のプロセスをうまく構築していくというのが課題になってくる。それをやる題材として非常にいいものだと思っています。
 さらに、あとは実際にやっている過程でその辺を洗い出していけばいいという話だったんですけど、個人的にはやっぱり従来のマクロ的なものからミクロ的なもの、立場への転換、それからスタティックなものからダイナミックですね。その辺を押さえていくようなことが少なくとも必要じゃないかなと思っております。

【妹尾委員】
 今のなぜサービスかというのが必要だという議論を仮にされるんならば、3点で議論を、背景を描いたらいいかなと。これは私が今東大で教えている構成になるんですけども、1つは社会マクロの観点ですよね。だから、100年ごとに時代が変わってきているときに、すなわち物の時代・エネルギーの時代、それから情報の時代に移ってきている。ほかの言葉でいえば、土地が一番重要だった農地本位の時代から物・エネルギーが重要な工業の時代に来ている。それから、知というものが重要な知識社会・情報社会の時代になってきた。だから、当然そういうことになるという流れが1個できる。
 2つ目は産業ミドルの話なんです。その中で産業ミドル的に見ると何が起こったかというと、やっぱり一番衝撃的なのは2004年12月のパルミサーノ・レポート以降です。これは要するに、国家間の企業競争力の源泉は何かといったらプロイノベーションだということをアメリカが宣言して、なおかつ金融危機なんかが深まれば余計プロイノベーションは加速しますよね。イノベーションはいいことだ、ではなくて、イノベーションをやり続けることが重要なことだということをアメリカが宣言した。これで欧州が慌てて、日本が慌てたという経緯ですよね。
 そうすると、ものづくり、製造に関するイノベーションだけではなくて、サービスイノベーションも全部、先ほど生駒座長がおっしゃったようなグーグルみたいなもので全部世界が変わっちゃうよねというプロイノベーションの流れの中で、「どうやってサービスイノベーションを日本も頑張るの?」という話だろうと思うんですね。
 3番目の社会マクロ、それから産業ミドルに対して企業ミクロを見たときにどうなるかというと、これは明らかに企業のものづくりでもあり、サービス産業でも、両方において事・プロセスについての価値づけがものすごく重要になってきたということなんだろうと思うんです。ですので、仮に背景を書かれるならば、その辺を何か1つの参考にしていただければと思います。

【生駒座長】
 昔ソフトサイエンスを奨励するという答申を出したよね。泉さんは覚えておられる。若い人は知らない。あれはどうなりました?
 ソフトサイエンスというのは、ソフトウエアサイエンスじゃないんです。ソフトサイエンスという新しい言葉を使って、これからはソフトサイエンスをやるんだという。あの始末をつけておいたほうがいいかもしれない。あれは何年でしたか?

【泉局長】
 ソフト系科学技術については、科学技術政策研究所が立ち上がったころ少しフォローアップしようかということがあったんですけども、例えばそれをある種の科学技術の研究開発の対象として、一定の技術としてものにしようという動きにまでは至らずに、一方ここで議論になっているような、いわゆる情報化とか情報科学技術という概念が、ソフト・ハードあわせて出てきて、そういう中で新しい、最近でいうところの科学技術基本計画で言っている重点4分野の情報、ITの対象、研究課題的なところにシフトしていったというのが、私の持っているその後の印象です。関係になられた先生方で、もしその辺の違ったご認識なり印象をお持ちであれば何かおっしゃっていただければと思います。

【川端基盤政策課長】
 当時はソフト系科学技術という名前だったんですね。

【生駒座長】
 いや、ソフトサイエンスというのを出しているんです。ただ途中でチェンジしたんです。資源調査会で僕が委員をやったときに、天然資源じゃもう食っていけないから、ソフト資源という言葉を使った。そのときにソフトサイエンスという話と、それからソフトウエアに日本人が非常に弱くて、なぜかというのを私は調べたんです。そうしたら、ソフトサイエンスの中の1つにソフトウエアが入っているんだけども、そこを全然科学技術庁は振興してこなかったんです。私はチェックしたことがあるんだけど、さすがにこの中でソフトサイエンスを知っている人はいないでしょう。あれは第11号答申というのが出る前です。

【泉局長】
 昔話で恐縮なんですが、11号答申のときはちょうど私が事務局で、課長補佐として担当しておりました。科学技術の1つの流れとしてソフト化・ファイン化、それからもう1つは、人間との調和ということで、やや今日の重点4分野につながる、萌芽となるような科学技術の動向というのを、答申ですから最後そこの主張はそういう言葉ではなかったかもしれませんけども、科学技術のトレンドとしてソフト化ということが意識されていて、ソフト系科学技術というのを推進重点分野の1つとして掲げたと記憶しております。

【生駒座長】
 5号答申はその前なのにソフトサイエンスが入った。私はびっくりしたんだけど、ソフトサイエンスという言葉を使っていたよね。ソフトウエアサイエンスかと思って私が見たら、ソフトサイエンスにはいろんなものが、文理融合が入っているわけ。
 1回温故知新をやってみよう。どういうことが書いてあったか。我々はどれだけ進歩しているか。

【長井委員】
 それで、もしなぜ今サービス・サイエンスかということが、先ほど妹尾委員の言われたように整理されたとすれば、次に、このことから社会における課題や問題をというところの課題や問題もそういうカテゴリーで整理されるであろうと思われるし、またサービス科学・工学の推進に関する施策というところも、そういうもともとのなぜというところから、なぜこういう施策をとらなきゃいけないかということが整理されてくるんではないかと思います。

【碓井委員】
 科学・工学というよりもなぜサービスかの視点なんですが、読ませていただきますけども、私自身はこういうふうに文章を出させていただいて、経済・社会のサービス化とサービス領域・サービス産業の拡大に伴い、生産性や品質の向上、社会的課題に対するサービス改革や新サービス創出、技術革新の活用が求められている。この後が、ここまで視点を拡大したほうがいいと思うんですけど、製造拠点の集約や海外移転を考えると、人々の製造業への参画の道が限られている。これに対してサービスこそは生活密着であり老若男女の日常生活そのものである。サービスの組み立てを参加・交流型、共生・共有型に変えることによって生産性と品質の向上・コストダウンの可能性は非常に大きいと。つまりパラダイムシフトだということをできれば方針として、いわゆる生活者側からもう1回社会の構造を組み立て直す、1つのタイミングではないかという要素が大きな流れの中では考え得るんじゃないかと。
 それから、少子高齢化とか地域の活性化の問題、内需の拡大という視点からも、非常に広い概念ですけど、生活に一番密着したところのサービスというとらえ方が必要じゃないかと感じています。
 それから、ちょっと細かい1点なんですけど、この文章の一番上のところの「我が国において「サービス」は、サービス業における “商品”に相当するものとして、また、対価を求めない行為等として捉えられるのが一般的である」、そういう時代はとうに過ぎているんじゃないかと思います。サービスが7割を占める時代ですから、サービスは無償だという感覚ではもうすでにないと思いますので、ここは修正願えればと思います。

【生駒座長】
 事務局でうまい言葉を考えてください。
 それでは少し先へ進めまして4、5ページで、サービス科学・工学の意義とかアプローチ、目標という少し具体的な面でご意見はございますか。概念にまじっても結構ですけれども、もう少し深くしたところで。4ページ、5ページの文言に関してでも結構です。

【北川委員】
 5ページの最初の赤丸ですけれども、ここのところで妹尾委員が先ほどインプルーブメントとイノベーションの話をされて、生駒座長の話を聞けばわかるかと思うんですけれども、一般が見るとやはりこれは効率化のイメージが強いので、まずはサービスの創出ですよね。そこが本当は狙いなので、それを一言入れたほうがいいんじゃないかなと。

【生駒座長】
 サービスイノベーションという言葉をどこかに入れたほうがいいかもしれない。サービスイノベーションという言葉をあんまり使っていないよね。

【柿田計画官】
 実は前回イノベーションと黒い小さい字で結構いろんなところに入れていたんです。ある箇所にはサービスのイノベーションのための手法とかモデルを開発するということを書いていたんですけども、こういう手法であればイノベーションができるんだというものはなかなか難しいんではないかという個人的な印象があるものですから、イノベーションという言葉をあまり簡単に使わないほうがいいかと思って外しました。

【岩瀬総括官】
 今の時代ですからどこかにあったほうがいいかもしれないですね。

【生駒座長】
 そう。だから、新しいサービスの創造というのとパラレルぐらいに、サービスのイノベーションなんて入れたらいいんじゃないかと思います。こういうときには妹尾委員に聞いたらいいですよ。

【碓井委員】
 サービス科学・工学研究の意義のところなんですけども、先ほどちょっと触れましたけど、ここに1項、サービスの現状分析等、体系的・構造的な整理と、まず整理をしなきゃいけない。サービスはさまざまに発展して、私ども現場サイドから見るとは別に、経験と勘じゃなくて相当科学的・工学的な要素もございます。したがって、やはり現状分析して体系的に整理するということがプロセスとして重要だろう。そして、さっきも触れましたサービスの定義と評価基準の確立と。これは科学としてとらえるという視点では対象とすべきじゃないかと感じております。

【日高委員】
 前回出ていないので、もしかしたら議論があったかもしれないんですけども、サービスの研究というのは言い方を変えると、実はビジネスの研究でもあると思うんです。もちろん社会サービスとか公共サービスがありますけども、ビジネスの研究である。ビジネスの本質はやっぱり競い合うことなんです。資本主義の主体が、資本の中の、マーケットの中の主体が競い合う。そうすると、そういう環境の中で、みんなで一緒に共通に研究するというのはどういうポジションがあるのかというのを、私としてはどうとらえたらいいのかなと。
 それで、いわゆる自然科学とかいうものは、ある意味では知としての公共性が高いというところがあると思うので、大学でやるとか、研究という自然な立ち位置があったと思うんです。基本的には、例えば、なぜサービスの研究をするかというと、一人でも差別化して、いいサービスを創出するためにある経済主体が投資するとかは非常にわかりやすいんだけど、国を挙げて研究する場合に、その基盤をやっぱりつくるのか、そこだけにフォーカスするのか、あるいは公共でつくったものがその先どこにつながるのか、投資するためのポジションというんですか、その辺を少し明確にするほうがいいのかなと思うんです。もしかしたら前回ご議論があったかもしれないんですけど、いかがでしょう。

【岩瀬総括官】
 一般論としていえば、まさに資本主義社会ですから、企業が自分でビジネスの一環としてそもそもおやりになる話である。明確に理解されるものというのは、基本的に国は、ファンディングは普通しないものですよね。ただ、どうもそうはいってもサービス科学・工学として科学的に意味があると、重要性があると思うものをやってみて、それが実際おっしゃるように、企業間の競争にとっても非常に有効なものが生み出されることがあり得るんじゃないかというと、そこは確かにそうだと思うんです。
 したがって、そこは実際に課題を選ぶときにある程度厳しく見るというオペレーションにならざるを得ないのかなと直観的に思います。もちろんご議論いただければ、重要な点ですから。

【生駒座長】
 この問題は多分、元来スターティングポイントは、先ほど妹尾委員の言う企業ミクロの問題だろうと。ところが、企業ミクロの努力だけではどうしても効率化とか新しいサービスが起こせない状態に来たときに、企業が悲鳴を上げて何らかの社会的な整備、あるいは学術的な進歩をやってくれと言い出したのがIBMじゃないかと読んだわけです。
 そうすると、やはり企業ミクロの努力を超えて少し社会共通の基盤として、1つは学術的なプロモーション、と同時に、おっしゃるようにインフラの整備というものを、特に一番重要なのは人材だと僕は思っていて、結局は人材へ戻ってくるわけです。そういうものを社会的な共通のトレジャーとして国がファンドしていいという、そんな感じではないかなと日ごろは思っているんです。

【日高委員】
 人材に関してはまさにおっしゃるとおりで、そういうサービスイノベーションを起こせる人材を将来的にどの企業も欲しているんだと、それを大学で育ててよと、そこはメッセージとしては間違いなくあると思います。

【岩瀬総括官】
 今日ご議論いただくたたき台として、事務局案としてつくったものは、基本的なイメージとして経済的・社会的価値とは書いてありますけども、経済的価値であっても今まさに生駒座長がおっしゃったように、社会のベースとしてある程度共通的にやるものという広い意味で社会的・公共的価値があるものなので国としてファンディングしてもいいものというイメージで書いてあるんです。したがって、そこの問題はそういうふうに1つの前提を置いて書いてあります。まさに企業の競争でやるフェーズになるようなものは、そもそもファンディングするというイメージではないんです。

【高安委員】
 1つの事例ということになると思うんですけども、私より北川座長に話していただいたほうがいいと思うんですが、赤池情報量という非常に重要な概念。赤池先生が出されたわけですけど、新聞とかで読んだ限りだと5年ぐらいずっとセメント会社に通い詰めて、データ解析して、そこで重要になる問題を定式化して、数学的に解いて、それが赤池情報量という形になって、何にでも使えるものになったわけです。だから、ここでも科学として文科省が推すからには、具体的に何かサービスが上がったというよりは、出るかどうかわからないけれども、赤池情報量のような概念、あるいは手法が生まれてくることに期待しているというのが本筋じゃないかなと私は思います。

【生駒座長】
 赤池情報量とは何ですか。

【北川委員】
 モデルのよさを評価する基準で、最初は秩父セメントというところのプラントの制御のモデルをどういうふうに決めるかというところで出てきたんですが、それがあらゆる統計的なものに使える。

【高安委員】
 モデルはパラメーターをふやせば幾らでもデータに合わせられるんですけども、それじゃ、パラメーターをどれだけふやせばいいかというところが難しいわけですけど、それに対して一定の基準を与えたんですね。こういうデータの場合はパラメーターの数はここまでが8倍。

【生駒座長】
 赤池先生というのは大学の先生なんですか。

【北川委員】
 うちの2代目なんですよ。

【中島委員】
 具体的にするために固有名詞を挙げさせていただきますけども、碓井委員と日高委員のおっしゃっているサービスというのは、もちろんいわゆるサービスということの本筋・本流だとは思うんですが、私は少し狭いように感じるんです。それで、特にサービスというのは元来企業が競争してやるものだろうと言われると、そこから外れる話として、例えば、教育だとか医療だとかいうのがあって、そっちも当然ここでの議論の範囲に入るはずです。さっき研究というのも入るし、それから政府のやっていることも入ると言いましたけど、そういうのを全部含めて、それらが別に周辺じゃなくて中心にあるようなサービスの概念をつくっていきたいと思っているんです。
 そうすると、例えば医療でいうと、地域医療というのはもう経済ベースに乗らないというのが明らかになっていて、「じゃあ、どうするんだ?」という答えはないわけです。これに対して新しいシステムを考えるということは、国というか研究者がやっていくことだと思うので、今のAICに匹敵するような新しい何か、例えば、地域医療のあり方みたいな理論、地域医療のあり方の理論はちょっと狭いかな、経済活動の理論みたいなのが出てくると、あるいは、もっと言うと、資本主義じゃないシステムというのが生まれるといいなということを中心に書けないかなと思っているんですけども、外れていますか。

【日高委員】
 今のお答えで。そういう意味でパブリックサービスとか公共性が高いものに絞ってやるのは、逆にそれはそれでやりやすいと思うんです。この研究会の目指すプロポーザルとして書きやすいと思うんです。逆に民間のほうが書きにくいというか、その辺の位置づけが難しいかなという話でしたんですが。

【北川委員】
 6ページの赤丸の3つ目あたりで、今までの話と関連しているんですけども、具体例が書いてあります。それで、ここに書いてあるのは確かに非常に重要で、公共性も高いものが多いかと思うんですが、ここから先は個人的なイメージで、人と意見が違うかもしれませんけど、かえって誤解を及ぼしかねないと思うんです。
 例えば、医療のサービスのセミナーなんか見ると、そこで出てくる話というのは病院の最適資源配分とかいうふうにいっちゃう可能性が高いんです。私のイメージというのはテーラーメード医療とか創薬とかもっとITを、ゲノム情報等利用して今までできなかったようなことをやって、しかも、それがある意味で効率化につながるというのがいいんではないかと思います。
 それから、防災とかももちろん最重要課題だけども、ただ、あらゆるところに配置してしまえばいいということではなくて、やっぱりいろんなITを使って、しかも、それが自動的にやらないと、この間のたらい回しのように入れ忘れたとかいうことが起こるわけです。だから、そういうセンサーだとかいろんなのを使って自動的にそれが実現できる、ICTを使っていくということが大事だろうと思います。
 それから、観光ももちろん大事なんだけど、何となくこういう例を入れてしまうと、いわゆるサービスにあんまりにもこういうイメージが密着しているので、それをやるのがサービス・サイエンスだろうというイメージになってきて、やっぱりICTを使うとか、数理的な方法を使うとか、あるいは新しい科学的方法を使うということをイメージするような例を入れるのがいいんじゃないかと思います。

【妹尾委員】
 先ほどから出ているビジネスなんですか、パブリックなんですかみたいな議論なんですが、先ほど生駒座長が整理された話と別の観点もあると思うんです。というのは、先ほど申し上げたようにプロイノベーションですよね。イノベーションとは何ということをいうと、社会的価値を創出し、普及し、定着することをイノベーションというわけなので、もちろん普及・定着のところは誰が担うかという話と創出は誰が担うかという話があるんですが、よりよい社会をつくろうよね、それからよりよい世界に日本も貢献しようよね、この話で推し進めれば価値の創出はどの分野でもあるじゃんという話になると思います。だから、何もビジネスに限った話ではなくて、研究も教育も介護も何でもあるという話です。
 2番目には、そうしたときに、じゃあ、そのイノベーションリソースはどこに求めるんですかという話になるわけです。リソースを従来はみんなインソースでやりたかったわけです。大企業は自前主義で、ノット・インベンテッド・ヒアは絶対やりませんみたいな話をしていた。ところが、今全然それが変わってきて、インソースだけじゃないでしょう、アウトソースもあるよね、だから大学に頼むんだよ、ほかのベンチャーに頼むんだよというのはある。
 それから、クロスソースというのがあって、お互いに交換しながらやろうぜというのもあるし、4つ目に何があるかといったらコモンソースといって、コモン、共有知をつくってみんな両方織り込んでやろうねと、要するに、これが一種のフォーラム標準みたいな話になるわけです。で、まさにIBMさんが主導しているオープンイノベーションのオープンソースという考え方も出てきた。
 そうすると、ソーシングは何もそのときには産学官公民のどれがやったっていいはずでしょう。みんなが協働したっていいんでしょう。つまり、従来の1つだけがやるというんじゃなくて、ソーシングが多様化と組み合わせになってきたという社会的な動向があるわけだから、サービスについたってどこでもいいんだよねと、こんな話になります。
 3つ目は、今のご議論を聞いているとこの辺を整理したほうがいいだろうと思うのは、領域の話と担い手の話を区別したほうがいいと思うんです。だから、領域は、例えば医療の領域だって私の病院がやる場合もあるし、国の病院がやる場合もあるし、教育だって、私学だって国立だってある。つまり何かというと、観光・流通・運輸何とかいう領域の話は、産学官公民のどの人が担い手になったっていい世界になってきたんだよという話だと思います。
 だから、もとへ戻ると、サービスの話についてもとはビジネスだからというふうにする時代でもないだろう。ただし、先ほど総括官がおっしゃられたみたいに、そこまで一応整理は広げたけど、さあ、どこから始めましょうなんていう議論もあるので、やっぱり俯瞰図を描いておけばロードマップはつくりやすいから、その段階を整理しませんかという話だと思います。

【碓井委員】
 先ほどの中島委員のお話にもあったんですけど、私自身はサービス、先ほどパラダイムシフトの時代だということで、生活者の起点とかいうことをずっと強調しているんですけど、やっぱりこれがそのままうまく、何もしなかったらうまくはいかないんです。ですから、それをコーディネートしていくとか、サポートしていくような役割は公的な役割として新たにつくっていく。そうなってくると、じゃあ、サービスを通して地域活性化に取り組もう、大学と企業が産学連携だと。これは経産省と文科省が一緒にやってもらわなきゃいけない。こういうところを束ねる視点というものが必要になってくると思うんです。
 ですから、この後に推進拠点という話もありますけど、やはり具体的に、より革新的にパラダイムが変わるような取り組みをするためにはどうすんだという、これ自身もすぐには答えが出ないと思うんですけど、これも研究の1つの対象、どう推進していくかというですね。ですから、イノベーションを生むということと展開するという両方を、新しいやり方でどうやっていくんだという視点の取り組みが必要かと思います。
 それから、先ほどお話の中でいろいろありましたけど、私はサービスの1つの領域・範囲と深さという両方でとらえる。それから、もう1つは対象。物なのか人なのか情報なのか金なのか、こういういろんな形のセグメントで整理をしないと、生駒座長が先ほどおっしゃったように、どこの話をしているかわけがわからなくなるというのは、いろんな議論をしていても、いつもはまるところなんです。ですから、そういう整理をしていく。
 先ほど言いましたフレームワークづくりというのも研究の対象になると思いますし、新たな取り組みとしては、先ほどお話の中で医療だ、防災だ、そう限っちゃうといけないというのはまさにそのとおりで、医療と介護、それから福祉、あるいは社会保障というのは総額で88兆円ございますそうですけど、これをある程度連携してワンストップで組み立てるというアプローチで、相当な無駄が改善されてサービスレベルが上がると思います。
 ですから、そういう領域をとらえるときに今の枠組みを少し広げてとらえていく。実質的にそういう医療に取り組んでいるところも地方なんかで少し出てきているんです。そういうところも取り上げつつということができればなと感じております。

【生駒座長】
 ありがとうございました。
 いろいろご議論いただいたことを1つ具体にいうと、5ページ目の目指すべき目標に研究を通じての人材育成を入れておく。やっぱりゴールはソフトだから人材でしょう。だから、研究を通しての人材育成は目指すべき目標の1つに入れたら。
 4、5ページ、よろしゅうございますか。もちろん戻っていけます。
 それじゃ、6ページです。どうぞ。

【儀我委員】
 今の人材育成のお話と関係あるんですけど、先ほどからいろいろお話を聞いて感じるのですけども、人的ネットワークも必要だと思うのです。人材育成かつ人的ネットワーク。こういう問題が来たら数学のだれだれ、あるいは工学のだれだれの人が答えるというのが、日本全体でぱっとわかると全然違うと思うのです。だから、個々の成果も大事ですけど、人材と人材ネットワークができるということが、今文科省レベルでは一番大事な気が私はしますけど、どうでしょうか。

【生駒座長】
 異分野人材のネットワークをつくるということですよね。
 そうしましたら、もう少し具体的な6以降の議論で、これは結構皆さんご意見があるのではないかと思うんですけども、まずは北川委員からご指摘いただいたように、例示は大事だよということで、その辺もご意見をいただきたい。例示に、さっきの過去のサービス科学に最も貢献した例が幾つか並んでいたほうがいいかもしれない。こういうのをやってくれと。赤池モデルをつくれとか。そういうケースはあるんですか。サービス科学を目覚めさせたような過去の例というのを挙げて、こういうのをつくってくれというとよりわかりやすいんじゃない?

【北川委員】
 生駒座長がよく言われているように、グーグルもそうですし、それから社会的に、長期的にどうかはともかくコンビニだとか、それから、宅急便みたいなシステムは社会的な影響が非常に大きかったんじゃないかと思います。

【生駒座長】
 そうですね。宅急便のもとになるアイデア・数学を出した人とかいう事例が幾つかあれば、なるほど、こういうのをやんなくちゃいけないんだと。

【北川委員】
 それから、アメリカの航空会社だとハブをつくって。

【生駒座長】
 ハブをつくるね。フェデックスを創設した人が学生のころにやったという有名な話があるんだけれども。

【日高委員】
 あとインターネットも基盤という意味ではそのものですよね。

【生駒座長】
 インターネットそのものもね。

【日高委員】
 それはある程度ブレークスルーがありましたので。

【生駒座長】
 そういうものが例示されるといいかもしれない。

【泉局長】
 今北川委員のおっしゃったところは、最初医療とか防災とか運輸とかいうことしか書いてなかったんですけども、事務局で議論したときに、まさに今ご議論に上っているような赤池情報などの分野共通的な、メタな、前のページに、サービス工学における共通基盤技術を創出するということが書いてありましたけども、それがねらっている領域としてかなりあるんだということをもう少しうまく書けないかということをやって、それで、このドラフトではサービスに関する基礎的・共通的なものが考えられるということを入れたんです。先般CRDSの金子さんからレポートしていただいた中で、NSFのSESの百三十幾つの課題の中に大分類でその他と書いてあるもの。それ以外のものは医療だとか物流だとか書いてあって、こういう研究課題だと書いてあります。その他と書いてあるものが、必ずしも全部がそうではないかもしれないですけども、基礎的・共通的なものないし、前のページでいうところの共通基盤技術というものに当たるテーマが結構あるなという印象を持ったんです。そういうものをより包絡かつ単純に、基礎的・共通的じゃなくて、もう少し具体的なイメージがわかるようなものをここに入れられればいいなという印象を持っておりまして、もちろん具体的な分野を書くということも必要だと思いますけども、そういう印象を持っております。

【日高委員】
 今のに対する質問です。今の世の中の一番問題なサービスシステムの1つに金融サービスシステムがあると思うんです。そこは対象にしないというメッセージがあると思っていいですか。

【泉局長】
 全くそういうメッセージはありません。

【日高委員】
 それでは、公募などによって金融の話が出てきたらどうするんですか。そこをカバーすると、これは大変なことになると思うんです。そこをどう考えるかというのは。

【泉局長】
 ここにそういうことを書いて、ただ、あくまでも、じゃあ、金融システムは、今国際的な金融動向を取り巻く中でどうあるべきかというのは、なかなかこういうところでカバーできないと思うんですけども、例えば、それを材料にして、よりサービス・サイエンスとして、あるいは、サービス・エンジニアリングとしての知見が期待できるような研究というのは、もしかしたらあるかもしれない。そういうものはこの対象にはなり得ると思うんです。

【生駒座長】
 金融に関して私の私見ですけど、1回懺悔をしてから応募していただきたいと。金融工学・デリバティブを発明した人は、やっぱり世間を騒がすようなものをつくったことに対しての懺悔が必要なんです。

【高安委員】
 私も専門でいろいろ勉強しているんですけど、金融に関して一番の問題は、物質の場合にはいろんなチェックがあって、その上で商品化されるのに、金融の場合は数式でつくったらそれをもうすぐ商品にしちゃっているところで、データはたくさんあってチェックしようと思えばできるのに、それを全然事前にしようとしていなかったというか、民間の格付会社をそのまま信じていたわけです。そういうところは、もっと公的なところが本当は過去のデータに合わせて、例えば、アメリカのサブプライム関係だって、日本のバブルとほとんど同じ道を歩んでいたわけだから、日本のデータを当てはめたらこういう結果になるというのはわかったわけなんですけど、それを全然やっていなかったか、伏せていたか、ともかく金融に関しては悪意を持って金融商品をつくって売っている人がいるのは確かなんです。物質の場合には100万個に1個でも、例えば、電池が火を噴いたら大問題になるのに、金融商品の場合は軒並みアウトでもしようがないやと思っているところ自体すごく問題で、でも、今の時代はデータがきちんとあるんだから、少なくともこういうデータでチェックしたら、このぐらいの結果だったということはちゃんと評価できるはずで、それは科学になるものだと思うんです。

【碓井委員】
 今の金融の例で1つ。バブルの後私どもの会社で融資支援システムを銀行と一緒に開発しました。非常に俗人的に判断していたものを全部ワークフローにして、ルールでチェックしてデータ確認して、本店・支店の状況が全部チェックできるようにしたという仕組みです。これはまさに科学でありまして、そういうことは重要ですし、非常に広がり過ぎかもしれませんけど、やっぱり理念がないという部分です。だから、サービスを考えるときに理念というところからスタートして、理念は形としてプロセスでありルールに落ちてくるわけですから、そういう視点での考え方の整理というのは非常に重要だと思います。
 それと、先ほどの議論で金融まで全部やるんですかということですけど、私自身はやはりフレームワークの中でどういう領域のどういう研究をすると、しかし、実態に突っ込んで具体的にやるのはこの領域ですということで十分だと思うんです。ですから、分母間としては全部載せておかなきゃいけない。全部が一遍にできるわけがありませんから、ここだけのことを言っているよということじゃなくて、フレームワークはきちっと分母間を整理して、突っ込んでやるべきテーマはまずこれだということで十分だと考えております。

【生駒座長】
 金融に関してはリスクマネジメントとか、それから、ネガティブインパクトのアナリシスとかと一緒に出してもらうということがきわめて基本でしょう。だから、そういう面ではやっていいと思うんだけど、単なる金融をやりなさいというわけには、僕は現時点ではやっぱり言えないという意識があって。

【岩瀬総括官】
 要するに、政策科学一般とサービス科学・工学は何が違うんだという議論があると思うんです。世の中の重要ないろんな問題はシステムの問題だから、全部これでやるのかというと、私ははっきり違うと思っているんですけども、他方範囲については、今おっしゃったようにある程度広くとらえておいて、本当に何が必要かということもありますし、サービス科学・工学で我々がやろうと思って、このアプローチで意味があることを本当にできるんですかという各論をやっていただくというのが次のステップで必要だと思っています。そのステップに向けて、ここでは提言を出しておいていただくと深まっていくんじゃないかということを期待しています。

【生駒座長】
 さっきのを1回まとめますと、5ページ目のサービス科学・工学における共通基盤技術を創出していくというところに、共通基盤となる数学・科学・技術とか、あるいは数学モデルをどこまで絞ったらいいかというふうに入れたほうがいいでしょう。それで、場合によって脚注して、例えば、赤池情報モデルだとかなんとかかんとかというのが入れば少しいいだろうね。

【北川委員】
 細かいんですけども、モデルというよりモデリングと言っていただきたいんです。モデルというのは何となくでき上がったギブンのものですが、それをつくっていくプロセスが大事だと思うので。

【生駒座長】
 マセマティカルモデリング。

【長井委員】
 タイミングを逸したんですけども、金融のことに関しましては、アカデミックなレベルではリスクマネジメントというか、リスクの計測と制御というのが非常に大きな問題になって研究はされていたわけですけど、それは全然現場には反映されていないという事情があります。本当は今こそやらなければいけないことだと思います。現場の人のことを悪く言うのは申しわけないですけれども、利益を上げるということで非常におごりがあったと私も思います。

【生駒座長】
 私が懺悔と申し上げたのはまさにその点なんです。実際基礎としてやっているのに、インプリメンテーションというよりは利益を獲得するだけでやったという話はやっぱりクリアにしないと、あれによって銀行が悪いという印象を逆に持っちゃいますから。

【日高委員】
 そうすると、銀行というサービスのプロセスの問題点の話になってくるので、逆にこの対象になってくると思うんです。

【生駒座長】
 そうですね。

【妹尾委員】
 ちょうどきのう夜遅くまで某日本の最大手の銀行の福社長さんたちとこの議論をやっていて、彼らはアメリカでそうなるとは予測していなかった。なぜならば、対数法則で動くやつだからサブプライムは何割何割で行けば必ずつぶれるのが出るのは、リスクマネジメントは押さえています。ところが、運用のところで、日本では信じられないようなことを彼らがやっていたということになるので、金融工学そのものではなくて、金融運用工学というべきか、金融工学を運用する工学みたいなものが欠けていたというところだと思うので、おっしゃるとおりで、そうなると、そこはサービスの話になるんです。
 ただ、それをやるんですかといったら、これは大変な話になっちゃうので、優先順位はどうなのかというのが違うだろうと思います。

【生駒座長】
 レポートには入れておかなくちゃいけないんでしょう。実際にファンディングできるかどうかはまだまだ非常にクエスチョンマーク。

【日高委員】
 問題認識として大事であるというのは見えていると思います。

【妹尾委員】
 生駒座長にいつも食いついて恐縮なんですけども、数学というふうに入れていただくのはいいんですか、一方で概念モデルみたいな、セマンティカルな、定性的なモデリングも、日本は、実はものすごくプアなんです。なので、数式的なやつだけではなくて、非常にセマンティカルな、概念的なモデリングも排除しないでいただければなというのだけ、ぜひお願いいたします。

【生駒座長】
 当然ですね。

【北川委員】
 今の数学モデルの話のついでで、やはり数学といったときにぜひ広い意味でとらえていただきたいと思うんです。金融工学の問題も、モデルを本当に科学的にやるのであれば、データをちゃんと見てやっていくはずなんですけど、そこはやっぱり欠けていた部分があると思うんです。相関なんかもちゃんと見ていくとかいう立場に問題があったんではないかと個人的に思うので、今まさにデータに基づく推論というのができるようになっているので、そこまでやれば金融工学も、というか、ファイナンスの問題もやっていいんではないかと思います。

【生駒座長】
 ほかに何か6ページ以下、具体的な研究のシステムに関してのご意見はございますか。

【北川委員】
 先ほどの例示の問題に戻りますけども、個人的な印象として、問題として医療何々に関連するものと書いてありますが、対象が問題ではないと思うんです。いかにアプローチするか。そこで、こういう問題であっても、従来できなかったようなことを新しい技術とかITとか数理的方法を使ってやっていくというところが大事で、対象も大事だけど、やっぱりそこを強調すべきではないかなと。そこをうまくやっていけば、これは非常に重要な問題で、21世紀向けの科学的な方法論の確立につながっていく可能性があると思うんです。個人的にはリスクも興味があるんですけど、リスク科学とかサービス科学というのは、それの題材として非常にいいところだと思いますので、その辺志を高く持っていただければいいかなと思います。

【碓井委員】
 先ほども出ておるんですが、情報共有とか人材ネットワークの件なんですけど、これはやっぱりきちっと整理して盛り込んでいただきたいと思っております。ですから、情報共有、それから、データベース化をきちっとして、公的にデータベースとしていろんなサポートができるようにする。例えば、先進的なサービス事例とか、あるいは、どこでどういう研究が行われているとか、ばらばらにやっている。これをやはり見えるようにしていくとか。あるいは、実証実験が後の話に出てまいりますけども、これの進行とか評価とかいう部分、それから、新たな技術革新とかビジネスモデルだったりさまざまあろうかと思いますけども、データベース、情報共有サービスという形でどう組み立てるんだということ自身も研究して、ぜひ共通基盤を持ってこの検討が進むようになればと思っております。

【生駒座長】
 これは研究のやり方が普通のと違って、CRESTに近い、あるいは社会技術で、JSTの社会技術センターで行われているのに近いので、少し図式をしてもらったんですけれども、責任者があって、そこにアドバイザーグループがあって、それで、それぞれの課題を設定してプロジェクトを募集するという形式をとろうということです。その前に、課題抽出のためにワークショップをやったり、インタビューをしたりという新しいモデルなんです。これについてはいかがですか。

【儀我委員】
 現在の日本の場合ですと、このサービス・サイエンスというのはいろんなところでちょこちょこと研究されていると思うんですけど、まだ大きな基盤がないわけです。特にワークショップをここに書かれているレベルではなくてもうちょっと大きなレベルで開催して、どういう課題があって、それにどのように立ち向かっているかをいろんな分野の人がある程度共有しておかないと、これからやろうにも大変ではないかと思っています。3ページにも少し書いてあります。戻って申しわけありませんけど、多くの分野の研究者、企業、公共機関、NPOなどの社会のさまざまな関係者がというところに、このような記述があります。これを具体的にどうするかはなかなか難しいかと思いますけど、そういうのが必要で、今いきなり研究を募集しても、必要な人は集まらないだろうという感想を私は持っております。

【碓井委員】
 私も同感でして、募集して、こういったプロジェクトが起きてくるのかという気持ちもあるんです。やっぱり率先しなきゃいけない面が幾つかあるんじゃないかと。

【中島委員】
 評価というのが結構大事かなと思うんです。新しい研究システムのあり方に付随して新しい評価システムをつくらないといけないと思うんですが、日本は多分今まで一番評価が苦手というか下手だと思うので、評価工学というんですか、サービス工学の一部としてそういうこともやったほうがいいのかなという気がするんです。特に国のプロジェクトは成功が前提になっていたりするので、それから、失敗しちゃいかんというのがありますよね。それで、例えば、AICに当たるようなものをつくろうといったら、これは成功率1割かもしれないということで、失敗してもいいような評価システムというのを、具体案はないんですけど、つくるべきじゃないか。それを多分どこかに書いておかないといけないんじゃないかと思います。

【生駒座長】
 どうですか。岩瀬さんは経験がおありじゃないですか。失敗例。

【岩瀬総括官】
 私がすごく大事だと思っていますのは、今ご発言がありましたように、ちゃんとステークホルダーと専門家が徹底的に議論して、そこでネットワーキングを組む、マッチングするぐらいのことをやらないと、ろくなテーマは出てこないです。これはファンディングにかかわった人みんなの経験だと思います。そこは絶対必要だと思います。
 あともう1つ。結構分野だとか課題だとか事務局案に書いてある心の1つは、同じようなことを前に言ったかもしれませんけど、チャレンジングなものをやる必要があるかというので、例えば、数理科学の先端をやろうというふうになると結局、私の経験からすると、研究者の人が非常にサイエンスとしておもしろいことをやって終わってしまう。
 したがって、そういう意味で課題とか問題とかいうことはしつこく言っておいたほうがいいのかなという問題意識があって書いています。
 他方、大事なのは研究ですから、実際工夫してやればできる程度のことをやってもいけないので、そこなんですよね、一番の兼ね合いといいましょうか、そこをうまく設計することが大事じゃないかということで、この案はできているという理解です。

【生駒座長】
 評価の件はどうですか。

【岩瀬総括官】
 評価ですか。また自分の経験から言わせていただくと、やっぱり何か目標を掲げて、あるいは、課題を掲げてやるという立場に立つと、確かにチャレンジングなことをやると、ある程度失敗する確率があると認めなければいけない。基本的にはアグリーするんですけれども、他方、目的を明確に設定すると、それに対して一番合理的な計画になっているかとかいうところは厳しく評価するということもあわせて必要だと思うんです。非常にチャレンジングだから、とにかく新しいことをやってみたらいいんだとなってはいけないなと。本当にこの問題を解くのであれば、サイエンティフィックにこれとこれが一番、一番というと言い過ぎかもしれませんけど、非常によく考えた合理的なアプローチだとかいうところはちゃんと評価することも必要じゃないかなと。

【中島委員】
 そういう評価システムをもちろんつくらなきゃいけないという発言なんですけど、現存していないんです。だから、多分全く新しい評価システムを構築しないと、今おっしゃったようなことはできないと思うんです。

【北川委員】
 今の話で、前に情報科学技術委員会のプロジェクトのときに議論になったことがあるんですけど、やはり個々のプロジェクトを頑張ってもらわないといけないという評価があるし、全体としてのマネジメントというか、そこでの評価があると思うんです。全体のレベルになると、全部が目標どおりうまくいったというのはだめで、半分とか3分の1とか、そのぐらいがうまくいって「よし」という心構えがないとだめだと思うんです。それをなかなか文部科学省としては認めづらいかもしれないけど、そうしないとほんとにいいものが出てこないんじゃないかと思います。

【中島委員】
 もうちょっと具体的にいうと、従来の評価というのは第三者評価ということでやるわけですけども、例えば、こういう新しいことをやって、碓井委員がおっしゃったように、わかっている人たちが自分たちで、要するに、公募じゃなくてチームを組んだときに第三者は何になるかというと、やっている人たちより知識が劣る人にしかならないわけです。そういう人たちが評価するというのはあり得ない話だと思ったときに、じゃあ、自分たちの評価でいいかというとそうでもない。だから、ある意味ジレンマなんです。どうしても自分たちが自己評価するということをベースにしたシステムでないとだめだろうというのが、まず第1点かなと思っているんです。

【碓井委員】
 確かに自分たちよりよく知っている人のやっていることを評価するのは難しいんですけど、だから、フレームワークが要ると思うんです。そこには評価の視点も入ってくると。ですから、生産性なり社会的価値とか品質とか、こういうサービスについてはこういうクオリティーだという整理の分母を持って、その尺度から評価をするということはできると思います。それもやはり先ほどおっしゃられたように評価の仕方の1つだと思うんです。それを組み立てながらやらないと、単独のプロジェクトがそれぞれ起きているだけということになってしまう危険があると思います。
 ここをちょっと読ませていただいて、私が混乱しているだけかもしれないですけど、責任者というのはプロジェクトの責任者なのか、プロジェクトを管理・統括する責任者なのか。そこが一緒くたになっている側面があると思います。

【岩瀬総括官】
 今ご発言があったところで、この事務局案はどういう考え方でできているかといいますと、いろんなワークショップ等をやって、こういうことが必要だという議論を徹底的に、1年なら1年オールジャパンでやったとして、こういうことが必要だというイメージができて、それで、プログラムを発足するというイメージだったんです。そうすると、この議論を通じてこういうことを達成しなければいけないという議論をした中心になる人の何人かは、お金をもらう側ではなくて、日本中のいい人を使ってこれを達成するという、人を使って達成する立場に立ってほしい、それを責任者といっているんです。
 そのときにトップダウンで、では、あなたにこれというふうにお金を渡すのではなくて、議論してある程度こんなことが必要だと、議論を深めた上で出したら、それに対して具体的なプロジェクトは公募するようにしたほうがいいのではないか。そのときに推進する側の人はそれを責任持って選ぶし、お金をつけた後もちゃんとフォローすると。全体の工程管理をする、そんな考え方でどうだろうかという哲学で書かれていますので、この責任者はプロジェクトをやる人ではなくて、お金を持っていて、公募してお金をつけて、全体を俯瞰しながら工程管理をする人。今JSTの社会技術のシステムがそうなっていまして、それを1つのモデルとして書いてみたということで、別にこれでなければならないと思っていなくて、1つの今あるモデル、最新のモデルで書いてみたということです。

【碓井委員】
 そうすると、プロデューサー的なイメージを感じたんですけど、お金の権限も持ってと。私はそれの上といっちゃあれなんですけども、それを今度は客観的に、利害関係なしに見ていくようなチームがまたいるんじゃないかと思っているんです。

【岩瀬総括官】
 社会技術の場合はその評価委員長が生駒座長になっているということです。

【生駒座長】
 だから、私は日本にない評価をやったものですから。意味をおわかりでしょうか。日本にない評価をやったんです。で、岩瀬君が後始末に困ったということになっていますので。

【妹尾委員】
 評価の話自身は細かくなると思うんですけども、1点目は事前評価と課中評価と事後評価をどうするかという区別ですね。それから、2つ目は結果、アウトプットと成果、アウトカムをどういうふうに見るか。3番目が一番欠けているんですけども、要するに、失敗をしてもいいという話ではないんだけど、失敗をしたらそこの失敗から何を学んだんですかという評価が日本にすごく少ないんです。だから、僕もいろんな省庁の政策評価をやらせていただいていますけども、それが無謬性とぶつかるとおかしな話になっちゃいます。失敗は失敗、どこで失敗というかまた別なんだけども、要するに、このプロジェクトから何を学んで何を知として蓄積できるんだという評価軸がすごくないので、こういうチャレンジングなやつは、ぜひそれを中心に入れてほしいなという感じがするんです。
 わからない部分がありますよね。クラゲの研究をやったら、本人はわからなかったわけです。でも、何十年後かにはちゃんとノーベル賞になるわけで、そのときにあのプロジェクトは成功したのか失敗したのか、失敗はしていないけど、成功はそれほど評価されていなかったわけですし、そういうことがあるんだろうなというのが1点です。
 それから、もう1つ、先ほど碓井委員が言われたとおりで、これは一種のプロデューサーシステムですよね。プロデューサーはディレクターほど映画が撮れなくても構わないわけです。歌を歌えなくてもいいわけで。だから、プロデューサーはどういうディレクターとどういう主演とどういう音楽家を使って、どの時期に何をやれば当たりますということが言えればいいわけで、そのプロデューサーは文科省というスポンサーからお金をいただいてやるという、これなんです。だから、プロデューサーシステムとしての評価システムは、ディレクターの評価システムとはまた別に形成しないといけないのかなという感じがあります。

【生駒座長】
 私の経験を言いますと、私は昔から評価の持論がございまして、ピアレビューによる専門家同士によるその分野での貢献度、学術をどれだけプロモートしたかというものを専門家集団でやっていただく。これは多分その分野の同等レベルのナレッジがある人を集めてやるんです。その上にアカウンタビリティーの評価というのをやって、国家がこれだけお金を出した分に見合う結果が得られたかという、大変難しい定性的評価を実際にやったんです。そのアカウンタビリティーの評価のところでチャレンジング度と失敗を容認するようなことをやる。それが定性的にアカウンタブルなんです。これだけチャレンジングなことを、難しいことをやって、これだけの結果を得たのは、国の税金を使ってナショナライズされるかどうかということを、アカウンタビリティー評価委員の見識においてやってくれといったわけです。ですから、レファレンス何もなしで、何遍パブリッシュしたかとかいうのは要らないと。これが一番いい方法だと私は思っています。現にそこでやってみたんです。結構うまくいったな、あれは。

【岩瀬総括官】
 と思っています。

【生駒座長】
 それをやってみるといいんですが、アカウンタビリティーのところでチャレンジング度と失敗度がちゃんとかみ合うようなことができる人を選ぶわけ。

【中島委員】
 それが難しい。

【生駒座長】
 それが難しい。ピアレビューはいいんですよ、適当なことをいうから。
 で、結構厳しい評価をしました。そうすると、結果わかった。僕は中間評価と事後評価をやったんだけど、なぜこのテーマとこの人を選んだのというところの評価になるんです。審査委員会の評価も入ってきちゃうわけ。これは大変おもしろい。自分がやってもいいんだけど、アメリカなんかはどっちかというと自分でやるわけです。自分で選んでおいて、もう一段上の人が評価するんだけども、この責任者全体が評価されちゃうんだけどもね。だから、なぜこの人を選んだのというところまで評価されるということなんです。これは非常におもしろい。
 ただ、僕らはやりませんでした。選んだ人が偉い人だったから、僕はそこまでやらなかったんだけど。
 ご議論はほかに何かございますか。少しご発言いただいていない方、全体を通して何でも結構ですからご発言ください。

【太田委員】
 実際に私は地域でいろいろ取り組みをやってきているわけなんですけども、医療という領域は非常に難しいというのをわかっていただけると思いますけども、医者をまとめるという、医療機関をまとめるというのは本当にもう難しいんです。とりあえず一つ一つ行って説明をして、頭を下げてやっていただかないと事業が進まないという感じがするので。これから事業するにはこれが一番難しいかなという感じがしております。
 それから、今医療だけじゃなしに、これからやっていく事業としまして医療・介護、必ずこの2つを組み合わせていかないといけないですし、それにプラス、ある程度高齢者の方を見ていく場合は、それに対してその生活をサポートしてあげるというところまで考えていく必要があるんじゃないかと思っております。
 その辺あわせてやっていきますと、例えば、補助金を申請して、新しいことをやるとなりますと、今まで医療に対しては、これに対しては出すけども、ほかのことは問題があるという結構難しい面がありますので、とにかくこの場合のサービスとしてやるんだったら、全体でやるようなことを考えさせていただけたらと。そうしないと、やっぱり事業としては進んでこないんじゃないかなという気がしますので、その辺も考えていただけたらと思っております。

【加藤委員】
 私は今お話を伺って、どちらかというと、人と人とのサービスでございますから、やはりいろいろサービスを考え、また商品もそうだと思いますけど、我々はどうしても売ることが目的になってしまう。しかし、買う側は、それは手段であって目的はほかにあるわけでございますから、となれば、我々提供する側はいかにその目的に近づくところに行かなきゃならないんだろう。そういうことになりますと、絶えず私どもはそういうことを感じるんですが、今回この概念から、3ページぐらいのところに書かれている1つのプロセスから見ていきながら、そういうところに、どのようにサービス・サイエンスとしてアプローチをしていくかという、ここがしっかりとなされていけば、大変1つの形としてはできると思います。
 ただ、反面、某先生も言われたとおりに、それがどうとらえられるかという人の質の問題が絶えず裏側についているわけでございます。特に人との接点の場合には、そこでどうとらえて感じとれるかというものがあります。ただ、それは時々その人の持っている力量だといわれるんですが、そうではなくて、やはり正しいことをやることの習慣性によって身についてくるものだろうと私は思いますから、それはこういった1つのアプローチの方法に身を置きながら磨き上げられていくという、これが大切だと思います。こういう方向で行かれることはよろしいんじゃないかと感じて、今お話を伺っておりました。
 以上でございます。

【高安委員】
 評価の点に関する私見なんですけども、1つの可能性として公開コンペのような形で、一般の人が聞きに来られる場で、それぞれのチームが研究のプロジェクトを発表したのを一般の聴衆、納税者たちも見られる形で。それをどういう形で盛り込むかは別にして、ただ見るだけでもいいし、投票権も与えてもいいかもしれないですけど、ともかく選ぶ過程、普通は専門家だけが密室の中で決めているわけですけど、そこを公開するようなことも、だれもが興味を持てるようなトピックだと可能じゃないかなということを一言検討課題として。

【生駒座長】
 それは社会技術でやったんです。シンポジウムを東大でやったのかな。一応みんなができるような格好の成果報告。そこへ審査員が行って評価をした。彼らは事後評価にそれを使ったんですけども、それがだめだということが証明されたんです。なぜかというと、そこではいいことばっかり発表できるんです。ですから、みんな聞いていて、いいと言うんです。本人たちもよかったと言って、いいという評価をした。ただ、実際に、ターゲット設定に対してどれだけそこに行ったかという評価をやるとだめなんです。ターゲットが違っておもしろいことだけを並べて、仲よしクラブの発表会になっちゃったんです。それで、私はその方法はだめという結論を今持っております。仲よしクラブで楽しいことをやって、よかったと言って、本まで出しているんです。

【高安委員】
 事後じゃなくて事前の、どのプロジェクトをやるか。

【生駒座長】
 事前はあるかもしれません。事後は、それで僕はがっかりしたわけでございます。

【妹尾委員】
 座長、そういうのを学級新聞とよくいうんです。

【生駒座長】
 学級新聞でね。余談ですけど、結構日本のプロジェクトで、お金をたくさん渡すものでも、自分だけの成果報告書を出すというのはたくさんあるでしょう。学級新聞をたくさん出して、こんなになりますよね。だれも読まない。これが今大きな弊害になっていまして、何とかしなくちゃいけないですね。私どもへこんなに送られてくるんですけども、見たことがない。見るといいことが書いてあるんですけど、時々は。余分なことを申し上げましたが、友田委員はさらに何かご発言ございますか。

【友田委員】
 この研究システムのイメージで、研究プロジェクトで終わっているんですけども、これは実施イメージがあるんですよね。どういうふうにしてサービスが実施されるのかということは。

【柿田計画官】
 研究成果としてその手法やモデルをつくるわけなんですけど、例えば、9ページの一番下の丸のところですけども、まさにその成果として手法やモデルを開発します。それから、きちんと社会というかサービスの現場に適用して、そして、その効果を確認して、より磨き上げという、よりいいモデルにしていくということですので、社会というか、現場に適用してみるというところまではやはり研究の対象として入るのかなと思っています。そこをしっかり最初から念頭に置いて研究をしないといいものにならないのかなという考え方です。

【岩瀬総括官】
 社会実験するところまででいいのか、本当にルーチンで使えるところまでやらないといけないのかと、考え方としては2つ分かれると思うんですけれど、社会実験で、現場で実験するところまででいいという案になっているんです。この案は実際に実用のところまでやらないといけないということにはなっていないです。

【友田委員】
 いやいや、そこでだれが責任を持つのかというのが、多分に大きく違うのかなという気がするものですから。

【岩瀬総括官】
 社会実験をやるためには、社会実験を実際にやる現場のステークホルダーが当事者として入っていないとプロジェクトとしては成り立たないという構造だと思います。

【生駒座長】
 この辺一番難しいところでございまして、さらに議論が必要かと思います。
 大分時間も超過いたしましたんですけれども、この辺でご議論を閉じたいと思います。大変有意義なご意見をたくさんいただきましてありがとうございました。この後は、先ほど申し上げましたように、報告書を実際に事務局でつくり、残り2回の検討会でさらに詳細な議論をいただいて、つくり上げていただく予定でございます。
 それでは、事務局からご連絡をお願いいたします。

【渡邉計画官補佐】
 次回の第5回検討会は11月20日木曜日、時間は今までと変わりまして午前の10時から12時となってございます。場所は文部科学省16階特別会議室を予定しております。議題と詳細については後日またご連絡させていただきます。
 以上でございます。

【生駒座長】
 長時間どうもありがとうございました。

お問合せ先

科学技術・学術政策局計画官付

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(科学技術・学術政策局計画官付)