研究開発評価推進検討会(第45回) 議事要旨

1.日時

平成30年1月23日(火曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省15階 科学技術・学術政策局会議室1

3.議題

  1. 平成29年度研究開発評価シンポジウムについて(案)
  2. 研究開発評価実務者の資質・能力向上のための活動の方向性(案)
  3. その他

4.出席者

委員

林座長,小湊座長代理,安藤委員,伊地知委員,遠藤委員,栗本委員,嶌田委員,高橋委員,花田委員,丸山委員

文部科学省

松岡企画評価課長,國分企画評価課課長補佐,菊池企画評価課評価主任

5.議事要旨

議題1 平成29年度研究開発評価シンポジウムについて(案)

 事務局から資料1に基づき説明が行われた。各委員からの主な発言は以下のとおり。


【林座長】
  若手研究者の研究者評価、業績評価というのは、各組織の長が責任を持って構築すべきものだが、ノウハウや仕組みの共有はほとんどされていない。シンポジウムの目的としては、聴講者である大学や研究開発法人・独立行政法人の方々に若手の研究活動を促進するための評価の仕組みを考えるための材料にしてもらうこと。また、「国の研究開発評価に関する大綱的指針」や「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」を改定するときにインプットできるようなことをシンポジウムから導き出したい。

【遠藤委員】
  シンポジウムのテーマの一つに科研費も考えられる。しかし、制度について理解いただくとともにその背景を説明することはできるかもしれないが、各組織の若手研究者の評価に係る制度設計の話については科研費助成事業を実施する学振の範囲ではなく、大学側の問題と考えられる。

【伊地知委員】
 シンポジウムのテーマとして、若手研究者の育成・支援といったときに考えられるのが、研究者そのもの、例えばフェローシップ、特別研究員といった制度に係る研究評価という点が一つ。次に若手研究者の研究活動を支援するような活動、例えば海外派遣、研修といった制度に係る研究評価という点が一つ。そして規模が大きいプロジェクトの中で若手研究者がプロジェクトに参加するとき、若手研究者の育成という観点をそのプロジェクトの評価の中にどのように含めて考えるべきかという点が一つ。大きく分ければ3つぐらいに分類できる。

【高橋委員】
 伊地知先生のおっしゃった区分によって話すのはクリアだと思う。シンポジウムでは、制度を踏まえて研究開発評価がどうあるべきかという話をするのか、それとも、挑戦的(チャレンジング)な研究開発を、と言いながら単視眼的に研究の論文数等を問うてしまうような抜本的・構造的な問題についてどうしていくのかという話をするのか。定性的なものをなるべく定量化してすくいあげるような取組をしている大学もある。

【栗本委員】
 いつも通りの若手研究者の育成・支援だけではなくて、チャレンジングな研究開発における若手研究者の評価といった、イノベーションにつながるようなものを、シンポジウムのテーマに設定しないと単なる若手支援の話で終わってしまいかねない。また、評価の形式化や形骸化、評価負担増大に対する改善、というテーマも重要。

【林座長】
 講演者は大学から2つ、それ以外から1つというくらいでいいのではないか。プロジェクトの中での若手研究者の在り方という視点までシンポジウムに入れるか。余りテーマの範囲を拡大していくと収拾がつかなくなる恐れがある。

【伊地知委員】
 むしろ、その視点を共有するのが重要ではないか。若手研究者として、研究者等の業績評価だけで評価されるかというと必ずしもそうではない。例えば教員であれば、採用、昇進あるいはテニュアになるということは研究の側面だけではない。若手研究者について、教育という観点を取ってしまうと研究評価を超えてしまうのではないか。

【小湊座長代理】
 現在、若手研究者や、その前段階の大学院生が置かれている状況は多様性があって、若手研究者を育成するといったときに、どこに焦点を当てるかによって議論の中身は相当違う。TA(Teaching Assistant)にもなかなか就けないような大学院生はキャリア形成において、研究だけで評価されるだけではやっていけないという意識があると感じられる。

【安藤委員】
 科学技術振興機構では、戦略的創造研究推進事業の一つとして「さきがけ」がある。「さきがけ」は、若手の登竜門と言われており、若手の中で競争がなされている。しかし、このシンポジウムのテーマである、若手育成のための評価をどうしたらいいか、大型プロジェクトの中で若手をどう評価したらいいか、という観点とは少し異なるのではないか。

【小湊座長代理】
 若手研究者の評価という観点はあるものの、若手がおかれている環境、研究グループやプロジェクトといった全体のマネジメントにより大きく左右される。海外ではプロジェクトを率いる人が若手研究者をどう育成して、それに対してどうリーダーシップを発揮しているのかという視点での評価があり、そういう日本にないものを紹介するのもよいのではないか。

【伊地知委員】
 特定の大学の限られた範囲のグッドプラクティスをシンポジウムで話したとして、どこまで日本中の多くの若手研究者にまで影響を及ぼし得るのか。単に若手研究者の育成・支援ではなく、次には自立的に主導していくようなPI(Principal Investigator)になれるようにするかという観点が重要である。

【嶌田委員】
 若手研究者の育成を中期目標計画に掲げている大学は多いが、具体的にはどうしようかというところがあるので、政策的な流れがそのようになっているから、こういうようにやってみよう、というようなハウトゥー(How to)が見えるシンポジウムになれば有り難い。

【小湊座長代理】
 ラボラトリー・マネジメントという観点もある。研究者が研究室を持ったときに、それをどのようにマネジメントしていかなければならないのかという育成プログラムが、試行的かもしれないが、ヨーロッパの科学領域の学会で行われている事例もある。

【伊地知委員】
PIとしてどう育てていくかどうかは、評価というプロセスを通じてもできるのではないか。戦略的創造研究推進事業の「さきがけ」は単体の事業ではあるが「さきがけ」という一つのプログラムを経験させることによってPIになる訓練を積ませるというような意味合いも持つ。

【安藤委員】
 「評価」の考え方をマネジメントの範囲までひろげるのかというところは整理が必要だろう。シンポジウムの聴講者の多くは恐らく、いわゆる「評価」のみのイメージを持っているのではないか。マネジメントは評価の連続という考え方があるが、そのような感覚を持って日々のモニタリングやマネジメントも含めて評価を捉えていない場合も少ないように思う。

【遠藤委員】
 例えば科研費の若手研究者の採択件数はヨーロッパの同種の事業と比較するとはるかに多く、若手がPIとして自立する機会を非常に多く与えている。一方、金額は小さく自立のためには十分でない面もある。このような比較をすることも考えられるが、むしろシンポジウムとしては、科研費において若手研究であれば学術的に優れているかどうか、あるいは業績というよりも優れた発想かどうかであることをピアレビューで見る、ということを大学・研発法人等としていい形で使ってもらえるものにできるかもしれない。

【丸山委員】
 若手研究者の評価というのは、もっと年齢層の高い人と比べてどう違うのかという観点が一つ。昨今の、若手研究者の良好ではないといわれる状況をどのように改善していくかという観点が一つある。

【栗本委員】
 現場で良く用いられている若手研究者評価は、科研費をどの種目で、どれだけ獲得したか、論文をどのジャーナルに何報、採択されたか、外部資金をどれだけ獲得したか等にとどまっていることが多い。そのため、シンポジウムの聴講者は、それ以外に何かあるのかという点を聴きにくるというような、参加者の視点が重要ではないか。新しい分野や学理を切りひらく、新領域を担う若手研究者を育み、積極的に評価するというような要素がないと、結局、若手研究者の評価も、そうでない研究者の評価も皆、同じというような受け止め方をされかねない。

【高橋委員】
 研究開発法人の研究者は研究で評価されるが、大学の研究者は研究だけでなく教育経験でも評価される。それがいいのかという議論や若手研究者の採用はどうあるべきかという観点から研究開発評価を議論できないか。  研究開発法人において若手研究者が置かれている評価の状況と、大学で若手研究者が置かれている評価の状況を全体的にみえている人に、自らの組織の若手研究者の評価の概要やトライアルについて講演してもらうことができればいい。

【安藤委員】
 ファンディングの研究者育成機能は昔から言われていることだが、それをどのように扱うか。例えば、文部科学省の評価指針を受け、若手研究者の評価をもう少し制度に組み込んで欲しいというメッセージを込めてファンディング機関に講演をお願いするのか。あるいはパネルディスカッションに登壇いただぎ、議論するというやり方もあるのではないか。  

【林座長】
 これまでの議論では、概念整理がまだクリアでないので、私と事務局でシンポジウムの方向性や論点を整理した上で講演者の方にお願いしていく。引き続き個別に御相談しながら継続して検討する。  

議題2 研究開発評価実務者の資質・能力向上のための活動の方向性

 事務局から資料2に基づき説明が行われた。各委員からの主な発言は以下のとおり。

【栗本委員】
 実務者の資質・能力向上という観点では、先駆的にどこかの大学がURAのスキル標準のようなものを作っていたと記憶しているが、その後もうまく活用されているか。

【高橋委員】
 活用されている。どの部分までが評価の範囲かどいうことを決め、実務者がどこに散在しているかが相互に見えないという段階からコミュニティを作り、スキルを標準化していくのは大変なこと。しかし、スキル標準が若干現実にアジャストされていなかったとしても自分の実績を一つの単語ですっと表せるというのは大切なことで、研究開発評価の実務者を育成したり、コミュニティを形成したりして評価を定着させるためには重要。

【花田委員】
 この研究開発評価実務者の資質・能力向上のための活動を実施するに当たっては、意見交換・ヒアリング調査を通じて各機関の不満を察知し共通事項を掘り下げることや、この活動に参加する方々が現場に何を持って帰りたいのか、現場で何を困っているのかといことを把握することが重要。評価の方法は機関ごとに異なるが、例えばアウトカムをどう設定したらいいのか、という悩みはどの機関も同じで、そういう共通事項でお互いの知見を持ち寄ることで有効な相互研鑽(けんさん)の活動となる。


【林座長】
 特定のテーマについて、相互研鑽(けんさん)の場という形で活動を行っていく。テーマについては、現場の課題を察知しながら来年度決めていくこととしたい。

議題3 その他

 事務局から参考資料1~3に基づき「平成29年度評価活動の成果普及・評価に関する状況調査等(機関ヒアリング調査)」、「平成29年度研究開発評価人材育成研修(初級)アンケート集計結果」、「平成30年度研究開発評価推進調査委託事業」について、それぞれ説明が行われた。

お問合せ先

科学技術・学術政策局 企画評価課 評価・研究開発法人支援室

(科学技術・学術政策局 企画評価課 評価・研究開発法人支援室)