環境放射能評価検討会(第6回) 議事要旨

1.日時

平成20年5月8日(木曜日)午前10時~午後0時10分

2.場所

文部科学省17F1会議室

3.議題

  1. 平成19年度海洋環境放射能総合評価事業の成果について
  2. その他

4.配付資料

  •   環境放射能評価検討会構成員
  •   資料6-1 第5回環境放射能評価検討会議事概要(案)
  •   資料6-2平成19年度海洋放射能総合評価事業成果報告書
           (核燃料サイクル施設沖合海域)の概要
  •  資料6-3 平成19年度委託事業成果報告書(財団法人海洋生物環境研究所)
  •  資料6-4 平成19年度委託事業成果報告書(財団法人日本分析センター)
  •  資料6-5 環境放射能測定法マニュアル策定専門家会合の開催状況について

5.出席者

委員

飯田主査、小佐古副主査、赤羽委員、浅野委員、長見委員、木村委員、津旨委員、東嶋委員、長岡委員、成田委員、橋本委員、久松委員、広瀬委員、皆川委員、宮原委員 、吉岡委員

文部科学省

原子力安全課 野家課長、防災環境対策室 木野室長 他

オブザーバー

財団法人海洋生物環境研究所(御園生研究参与 他)、
財団法人日本分析センター(北村調査役)

6.議事要旨

 

 

 

6. 議事概要

 ○ 飯田主査により議事進行がなされた。

 ○ 事務局から資料6-1により前回検討会の議事概要(案)について説明があり了承された。

 ○ 事務局から資料6-2により海洋環境放射能総合評価事業成果報告書(核燃料サイクル施設沖合海域)の概要について、財団法人海洋生物環境研究所から資料6-3により委託事業成果報告書について説明があり、質疑応答の後、資料6-2についての各委員からの指摘等を反映した修正を事務局が実施することとなった。

 ○ 財団法人日本分析センターから資料6-4により委託事業成果書について説明があり、質疑応答の後、了承された。

 ○ 事務局から資料6-5により本検討会のもとに設置された環境放射能測定法マニュアル策定専門家会合の開催状況について報告があった。

 ○ 議事終了の後、次回会合の開催日については今後日程調整することとし閉会した。

 

7. 主な質疑応答等

 <資料6-2、資料6-3関連>

 (宮原委員)資料6-2の1ページの1に「再処理施設から放出されたと思われる放射性物質(90Sr,137Cs,239+240Pu)」との記載があるが、これらの核種は再処理施設から放出されているのか。

 (久松委員)核種ごとの放出源情報は示されていないので「放出されたと思われる」という記載は適当でない。たとえば「試料中の放射性物質濃度に再処理施設からの影響が認められない」というような、放出の有無には触れないような記載が適当でないか。

 (宮原委員)再処理施設からの放射性物質の海洋への放出の有無は岩手県においても漁業関係者等の大きな関心事であり正確な記載が必要である。

 (木野室長)再処理施設からの放出の有無について調査したうえで記載を適正なものとする。

 (成田委員)再処理施設からのトリチウムの放出が4月24日から26日になされ採取日が5月5日から10日であるから、その期間の海洋での拡散を考えると、採取測点より再処理施設に近い地点では桁違いに大きな濃度分布となっている可能性があるのではないか。また、降雨後の河川水からのトリチウムの海洋への流入の影響は考えられないのか。

(海洋生物環境研究所)5月の調査においては海上では問題となるような降雨はなかった。河川については青森県八戸市に馬淵川の河口があるが流量が少ないので、その影響はないであろうと考えている。放出時期との相関でサンプリング時期のタイミングは測定結果の値に大きく影響するであろうと思われる。

(長岡委員)再処理施設から放出されたトリチウムの放射能量はどのくらいのレベルなのか。

(海洋生物環境研究所)10の13乗 Bqのオーダーである。

(小佐古委員)事業活動により放射能が放出されており環境放射能調査を実施すれば検出されるのは当然なことであるから本調査の目的をここで再確認しておく必要がある。海産生物の生活圏は広く、その放射能濃度はバラツキが大きいので、ある採取測点でのデータのみから評価をするのは無理がある。前回の検討会でも言及したがデータ収集、総合的判断、普及啓発の三つの段階を経るべきである。資料6-2の1ページの1については、すでに議論があったように確たる根拠もなく「思われる」と記載するのは不適切である。

 (久松委員)岩手県沖での採取測点で高い濃度が測定されたのは再処理施設起源によるトリチウムであると推定する根拠が示されていない。資料6-2の1ページの3の被ばく線量評価についてはバックグランドレベルを差し引いた結果であることがこの記載からは理解し難い。

(海洋生物環境研究所)再処理施設由来の因果関係については資料6-3にヨウ素との相関関係による説明を記載している。報告書には記載してないが簡単な海流計算を実施している。

(木野室長)久松委員から指摘された資料6-2の1ページの3の記載については計算結果からバックグランドレベルの線量を差し引いていることが理解できるような記載ぶりにしたい。

(久松委員)ヨウ素との相関関係についての説明を願う。

(海洋生物環境研究所)4月24日から26日に再処理施設からトリチウムとともにヨウ素

  129が放出されており5月5日、6日、9日、10日に採取した試料ではトリチウムとヨウ素129の濃度が正の相関を示している。ヨウ素129の発生源は再処理施設に限られるのでトリチウムは再処理施設由来であろうと考えた。

(久松委員)バックグランドのトリチウムとヨウ素の相関と比較してレシオの値が違うのか。放出側のソースタームのレシオの値とは一致するのか。

(海洋生物環境研究所)バックグランドのレシオの値とは異なるがソースタームのレシオの値とは一致していない。

(久松委員)レシオの値が一致しないのであれば再処理施設由来の根拠にはならないのではないか。比較的短かい距離、期間でトリチウムとヨウ素が異なる挙動をするという知見があるのか。

(海洋生物環境研究所)そのような知見は承知していない。ご指摘のように仮定が過ぎているかもしれない。

(成田委員)線量に換算しないで濃度で評価する方法としては、例えば、安全審査で事前に予想された濃度と比較するという方法、資料6-2に引用されているような水道水での濃度と比較するという方法なども考えられる。

(小佐古委員)今回測定された濃度の値が自然界のバラツキのあるレベルと比較して有意に高い値であるとはいえないのではないか。また、資料6-3の211ページ以降には流線解析についての記載もあるが再処理施設との因果関係を説明できる十分なものではない。資料6-2のまとめかたは資料6-3で記載されている事実関係からの飛躍があるように思う。

(廣瀬委員)最大値の0.46 Bq/L という値でも従来の測定値の倍のオーダーであり、また、トリチウムの放出源はいろいろと考えられるので今回の測定値から放出源を特定するには慎重な議論が必要である。資料6-2では算出した被ばく線量の数値まで記載されているが記載方法の一例として「被ばく線量は限度値(たとえば100分の1 mSv)以下であった」とすることも考えられる。

(小佐古委員)記載方法についての廣瀬委員の発言内容に賛成である。極めて低い濃度レベルでの被ばく線量の数値を示す意味はないのではないかと考える。

(長岡委員)再処理の事業に関する安全審査で認められたレベルのさらに何桁も低いレベルでの数値に係る詳細な議論をする必要はないのではないかと考える。

(久松委員)被ばく線量を数値で示すのであれば正確に算出するべきであるが、数値を示さないのであれば、ご議論のような、あるレベル以下であるという説明が適当であろう。そもそも被ばく評価が必要なのかどうかというご議論もあったが今回のデータが公表されたときに過去の変動の範囲からは高いレベルであることに対する公衆の懸念に対して答えるための説明資料として概要版である資料6-2は役立つであろう。

(小佐古委員)宮原委員から岩手県での懸念についてのご発言があったが広報活動による理解の進展状況については広報活動の課題としてとらえる必要がある。

(赤羽委員)内部被ばくの計算法、実効線量係数等の精度を考えると nSv レベルの数値にはあまり意味はない。また、2.4 mSv、240万分の1という数値を記載することで、それだけの量の被ばくを実際に受けるとの誤解が生じるおそれがある。資料6-2の1ページの3に被ばく線量の数値を記載するのであれば計算上の結果に対する解釈を記載し数値の意味が正確に理解されるようにすべきである。

(宮原委員)岩手県では再処理事業に反対する立場の出版物の影響もあるのか、漁業関係者の一部には反対運動の動きもある。そのような懸念が払拭できるような記載ぶりが望ましいと考える。

(野家課長)資料6-2を作成した目的は、調査の結果として得られたバックグランドの2倍強という数値の意味を明確にして正確に伝えることであり、検出されたトリチウムが再処理施設由来であることを確定することが目的ではない。放射能の専門家ではない一般のかたがたには nSv のレベルの濃度が人体に影響を与えるものではないということがなかなか理解され難いと思うし「 2倍 」という数値だけがひとり歩きするのも避けたいと考えている。

    平成19年度の調査では再処理施設がアクティブ試験を実施しているなかで新たに岩手県沖合を調査対象に加え、そこで最大で従来の濃度レベルの2倍強の濃度のトリチウムが検出された。その意味をわかりやすくまとめたのが資料6-2であり本資料は記者発表をするような性格のものではなく報告書の資料6-3とともに、その概要として文部科学省のホームページに掲載するかたちで公開し対外的な説明が求められたときに活用していきたいと考えている。

    資料6-2の1ページの3において被ばく線量を自然放射線との比較で示したのは一般のかたがたには目に見えるかたちで示したほうが理解されやすいのではないかと考えたからであり、資料6-2の1ページの2において検出値を水道水中に含まれるトリチウム濃度と比較したのは海水中で生育した海産生物による内部被ばくの過程については一般のかたがたの理解を得るのは難しいと考え毎日飲用している水道水のレベルとの比較をしたものである。検出されたトリチウムが再処理施設由来であると断定する根拠に関する検討が甘いというご意見に対しては、ご趣旨を踏まえて記載の修正を図ることとしたい。

(小佐古委員)海水中と水道水中のトリチウム濃度を比較するのは適当でないと考える。

(野家課長)ご指摘を踏まえて資料6-2の記載方法を検討したい。

(東嶋委員)資料6-3のトリチウムの濃度変動の経年変動状況のグラフによると変動幅がありバックグランドが約0.2 Bq/L であるといえるのかどうか。バックグランドの変動幅からのずれの大きさを示すことが重要であり資料6-2、資料6-3からではそこが読み取れない。

(小佐古委員)資料6-2の第1回採取のトリチウム濃度の分布図によると濃度の値は0.093 Bq/L から0.46 Bq/L までの幅がありバックグランドの変動幅のなかでの評価が必要である。

(津旨委員)資料6-3の139ページの核燃海域の表層水トリチウム濃度の変動状況のグラフによると調査開始の平成3年度から濃度が減少しているが平成19年度の濃度が従来のレベルから高く飛び出ていて、それは再処理施設由来であろうとして被ばく線量の計算をしたのは適当である。平成19年度の測定結果は、再処理施設から瞬間的に放出されたトリチウムをたまたま観測したものであろうが今後の再処理施設の稼働により岩手県沖合においても、さらに高い濃度の測定結果が得られるであろう。数値モデルによる濃度分布計算をしておいて今後の予想をするというアプローチもある。

(海洋生物環境研究所)津旨委員のご指摘のとおり従来はトリチウムの濃度が経年的に減少していたところ再処理施設でのアクティブ試験開始後の平成19年度の調査結果は従来の傾向から外れている。平成18年度までの濃度は0.2±0.037 Bq/Lであり3σの範囲外のデータは5個であった。これらのデータの濃度レベルは平成3年度のレベルと同程度ではあり被ばく線量評価を実施する必要性がないことは承知している。ただし、立地県から離れたところの関係者のかたがたに安全性を理解していただくためには具体的な数字を示す必要があると考えている。

(吉岡委員)低い濃度レベルであっても科学的に被ばく線量評価をするのは意味がある。また、再処理施設の放出情報の把握は解析に有用である。

(木村委員)先月開催した青森県原子力施設環境放射線等監視評価会議評価委員会における平成19年度第3四半期分の環境放射線調査結果の審議において海水試料のトリチウム測定結果として再処理施設からの影響と考えられる3 Bq/L、4 Bq/L の濃度値が報告されている。今後、おそらく、さらに高い濃度が検出される可能性があると考えている。科学的に再処理施設からの影響が考えられるのであれば低いレベルであることを示すためにも線量で評価するという資料6-2のアプローチは適当であると考える。ただし資料6-2では比較する数値としてUNSCEAR(国連科学委員会)の2.4 mSv を採用しているが再処理施設寄与と考えるのであれば周辺監視区域外の線量限度の1 mSvと比較するのが適当でないか。

(小佐古委員)自然界のレベルとの比較では2.4 mSvであり人工寄与の場合は1 mSvである。

(飯田主査)線量評価の数字を記載するかどうかは議論が分かれたが記載するとして久松委員からご指摘のあったバックグランドの差し引きについての記載方法はどうするのか。

(野家課長)久松委員のご指摘はごもっともであり資料6-2の1ページの3の記載はバックグランドからの増分である旨に修正したい。

(吉岡委員)2.4 mSvはバックグランド込みの数字であり1 mSvはバックグランドを差し引いた数字であることに留意すること。

(小佐古委員)再処理施設の近傍にある東通原子力発電所からの寄与は考察したのか。

(木村委員)東通原子力発電所は BWR でありトリチウムの発生量が再処理施設や PWR とくらべて少なく、また、循環水で希釈して放出しているので影響はかなり小さいであろう。

(小佐古委員)最大濃度でなく平均濃度で評価するべきでないか。

(吉岡委員)原子力安全委員会の線量評価指針では放射性物質の年間放出量を年間の冷却水量で除した量を排水口の濃度とすることとしている。

(吉岡委員)最大値で評価するかどうかについては今後の検討課題であろう。

(小佐古委員)最大濃度による被ばく評価は極端であり現実的でなく合理的な評価が求められる。

(飯田主査)海洋生物環境研究所が実施した事業成果については資料6-3の22ページに記載されている「まとめ」の前半部分の「発電所海域及び核燃海域の主要な漁場において実施した海洋放射能調査の結果は、核燃海域で採取した海水試料(表層水)のトリチウムの一部を除き、海産生物、海底土及び海水の放射性核種濃度はいずれも、過去5年間の測定値と同程度であったこと」は確認したこととする。トリチウムの測定結果の評価については各委員からのご意見等を反映したとりまとめを事務局にお願いすることとする。

 <資料6-4関連>

(飯田主査)本事業の放射能分析は従来から日本分析センターで一環して実施してきたのか。

(日本分析センター)昭和49年度からは日本分析センターが実施し、それ以前は放射線医学総合研究所が実施していた。

(飯田主査)日本分析センターの実施した事業成果については「温排水で飼育した海産生物等の平成19年度の放射能濃度範囲は過去5年間の濃度範囲と比較すると同程度であったこと。また、昭和47年度から温水養魚開発協会が実施した放射能調査等の結果についてはデータベース値と同程度であったこと」が確認されたこととする。

 <資料6-5関連>

(飯田主査)事務局からの報告内容を了承するとともに今後の専門家会合の開催状況、マニュアルの整備状況については適宜その結果を本検討会に報告していただきたい。

 

 

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