資料第13-8号: RI汚染物のクリアランス判断に係る技術的課題の整理(案)

平成21年11月6日
放射線規制室

1.はじめに

 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(以下、「放射線障害防止法」という。)へのクリアランス制度の導入に係る検討を進めるうえで、第28回の放射線安全規制検討会(以下、「規制検討会」という。)でとりまとめた「クリアランス制度導入等に係る制度設計の基本方針(資料第28-3号)」において、「クリアランス対象物の判断方法については、放射性同位元素や放射線発生装置の使用状況、放射性同位元素によって汚染された物(以下、「RI汚染物」という。)の発生実態等を踏まえ、原子炉等規制法における判断方法に加え、放射線障害防止法独自の判断方法も検討し、採用していくこととする。」を確認した。また、クリアランス判断方法に係る技術的検討については、同規制検討会において承認された「クリアランス判断方法の検討に関する基本方針(案)(資料第28-4号)」を踏まえてクリアランス技術検討ワーキンググル-プ(以下、「クリアランスWG」という。)において行うこととなっている。ただし、半減期の長い放射性核種を念頭においたクリアランス判断については、クリアランス制度として適用可能であるが、測定が困難な核種が含まれる場合、現実的な判断方法の現時点での確立は難しいと考えられることから、半減期の短い放射性核種を念頭においた減衰に基づくクリアランス判断に係る検討を優先することとしている。さらに、平成18年度に放射線安全規制検討会クリアランス技術検討ワーキンググループがとりまとめた「放射線障害防止法におけるクリアランス制度の整備に係る技術的検討について(中間報告)」(以下、「平成18年度中間報告書」という。)において、減衰保管廃棄の技術的な成立性を確認している。
 以上の内容を踏まえ、ここでは、放射線障害防止法の改正作業に資するためにとりまとめる報告書にとりまとめる内容として、法律改正以後に省令及び告示等を規定するまでに解決しなければならない技術的課題について確認を行う。

2.クリアランス判断にあたって

 クリアランス判断にあたっては、当該事業者は、事前評価による対象物の分類、クリアランスレベル以下であることの判断、クリアランスレベル以下と判断した物への異物や汚染の混入を防止するための厳格な保管・管理、判断の妥当性を示す根拠の記録やその保存等を適切に行うとともに、これらが一連の業務として高い信頼性をもって機能するための管理体制(品質保証体制)を確立することが必要となると考えられる。
 また、原子力安全・保安院では、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下、「原子炉等規制法」という。)に基づき定められている「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第61条の2第4項に規定する製錬事業者等における工場等において用いた資材その他の物に含まれる放射性物質の放射能濃度についての確認等に関する規則」(以下、「放射能濃度確認規則」という。)の適用にあたって留意すべき事項として、「放射能濃度の分布の均一性」について触れており、放射能濃度確認においては、「測定単位として測定されたそれぞれの測定単位ごとの放射能濃度に著しい偏りがないことを確認すること。」としている。

3.解決しなければならない技術的課題

3.1 RI汚染物の放射能濃度確認によるクリアランス判断
 各種放射能濃度測定装置を用いたRI汚染物の放射能濃度確認は、放射線発生装置の使用等に伴い生ずる放射化物の放射能濃度確認と同様に、原則として、原子炉等規制法の下で運用されている放射能濃度確認の手順に準ずるものと考える。しかしながら、RI汚染物の放射能濃度確認においては、放射能濃度の分布の均一性の確保、及び放射化物の放射能濃度評価に用いられる核種組成比を考慮した主要核種測定法の適用が困難であるなど、解決しなければならない技術的課題が多い。今後、省令及び告示等の規定に向けて、以下に示すような技術的課題を解決する必要があると考える。

・放射能濃度の測定方法
 - RI汚染物に特有の測定方法の必要性
・放射能濃度の評価単位
・放射能濃度の測定対象物(放射能濃度の分布の均一性の確保)
 - 可燃物の測定
 - 焼却灰の測定
・核種の含有比(?)を考慮した主要核種測定法
・その他

3.2 放射性核種の減衰に基づくRI汚染物のクリアランス判断
 平成18年度中間報告書において、半減期の短い放射性核種のみによって汚染されたRI汚染物については、一定期間保管し、かつ、半減期の短い核種以外の核種の混入を防止するように適切に管理すれば、RI汚染物に含まれる半減期の短い核種の放射能が減衰し、放射性物質として扱う必要のないレベルになるとの検討結果がとりまとめられた。すなわち、クリアランスの対象となるRI汚染物に含まれる放射性核種が限定でき、保管を開始する時点におけるRI汚染物の放射能濃度を確実に管理することができれば、RI汚染物をある期間保管することにより限定された放射性核種が減衰し、告示等に規定することとなるクリアランスレベル以下になったことが判断できれば、これらのRI汚染物は放射性物質によって汚染された物でないものとして扱うことが可能となる。しかしながら、半減期に基づきこの判断を適用できる放射性核種の選定、及び他の核種の混入を防止する管理体制の確立など解決しなければならない技術的課題が多い。今後、省令及び告示等の規定に向けて、以下に示すような技術的課題を解決する必要があると考える。

・半減期に基づきこの手法を適用する対象核種の選定
 - 選定する核種の半減期(上限を設けるか)
 - 子孫核種の半減期が長い場合の取り扱い 
・クリアランス対象として選定した放射性核種がクリアランスレベル以下になるために必要な減衰期間
 - それぞれの核種に保管期間を設定
 - 核種の半減期に応じた一定期間ごとの区分
    (例えば、半減期30日未満は1年、60日未満は2年:平成18年度中間報告書参照)
・放射性核種の使用実態を踏まえ、他核種との混在を防ぐための適切な管理体制 

(ハード面)
・半減期の短い核種のみの許可事業者
 - 半減期の短い核種、長い核種それぞれを使用する施設の分類
 - 半減期の短い核種を使用する専用施設の設置
 - 半減期の短い核種を使用する専用の作業室の設置

(ソフト面)
 -予防規定の整備 等

・その他

4.まとめ

 上記の論点を基に、省令及び告示等の規定に向けて解決しなければならない技術的課題について、今後中間報告においてとりまとめを行う。

以上

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