資料第10-2号:クリアランスレベルの試算に係る検討について(案)

平成21年9月15日
放射線規制室

1.はじめに

 前回(第9回)のクリアランス技術検討ワーキンググループ(以下、「クリアランスWG」という。)においては、「クリアランス対象物の物量に係る考え方」、「クリアランスレベルを算出する対象核種の選定に係る考え方」、「クリアランス対象物の埋設処分に関する評価経路及び計算モデルの考え方」について検討を行い、今後はこれらに基づいてクリアランスレベルの試算を行うことが確認された。
 今回(第10回)のクリアランスWGでは、今後、主な核種についてのクリアランスレベルの試算を行うために、先回に引き続き、以下の項目について、確認を行うこととしたい。
  (1)クリアランスレベルを算出する対象核種の選定に係る留意事項
  (2)クリアランス対象物の焼却処理に関する評価経路の考え方
  (3)クリアランス対象物の再利用に関する評価経路及び計算モデルの考え方
  (4)クリアランス対象物の埋設処分に関する評価経路及び計算モデルの考え方

2.クリアランスレベルを算出する対象核種の選定に係る留意事項

 ここでは、放射性同位元素を使用する施設等から発生する放射性同位元素で汚染された物(以下、「RI汚染物」という。)及び放射線発生装置の解体等に伴って発生するRI汚染物(以下、「放射化物」という。)に対するクリアランスレベル算出対象核種の選定に係る留意事項について示す。

(a)RI汚染物に対するクリアランスレベル算出対象核種
 対象核種については、前回のクリアランスWGにおいて、
 ・ 社団法人日本アイソトープ協会(以下、「RI協会」という。)から放射性同位元素(以下、「RI」という。)の使用者に供給されている主な核種
 ・ RI協会において保管されているRI汚染物に含まれる核種
 ・ 独立行政法人日本原子力研究開発機構(以下、「原子力機構」という。)におけるRI汚染物に含まれる核種に係る情報(資料第9-6号 添付資料2)に基づき、クリアランスレベルを算出する対象核種として53核種を選定することを確認した。

(b)放射化物に対するクリアランスレベル算出対象核種
 放射化物に対応する対象核種については、大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(以下、「高エネ研」という。)がとりまとめた情報(資料第9-6号 添付資料3-1)に基づき、放射化物のクリアランスレベルを算出する対象核種として34核種を選定することを確認した。
 これらの対象核種を資料第10-2号 添付資料1に示す。

 ただし、国内のRI使用施設では、上記の53核種以外の核種についてもこれまでに取り扱いが行われていること、及び今後新たな放射性同位元素の利用ニーズが想定されることを考慮するとともに、放射線発生装置については、可能性は低いが放射線発生装置本体及び周辺構造物の放射化により上記34核種以外の核種が発生することが考えられること、及び放射線発生装置等の高性能化に伴い使用されることが予想される新しい機器構造材料の放射化により上記以外の核種の発生の可能性があることを考慮して、最新の情報や知見を踏まえ、今後も必要に応じて、クリアランスレベル対象核種の法令への取り入れを視野に入れた検討を行うこととする。

3.焼却処理の評価経路に関するクリアランスレベルの試算について

3.1 クリアランスレベルの試算におけるクリアランス対象物とその物量の考え方
3.1.1 RI汚染物のクリアランス対象物とその物量
 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下、「原子炉等規制法」という。)において既に運用が行われている核燃料物質等で汚染されたもののクリアランスの対象物は、金属及びコンクリートである。これに対して、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(以下、「放射線障害防止法」という。)に導入するクリアランス制度では、金属及びコンクリートに加えて可燃物等についてもクリアランスの対象物に含める方針(第28回放射線安全規制検討会の資料第28-5号参照)としている。そこで、クリアランスレベルの試算を行うために、可燃物等の物量の考え方、及び原子炉等規制法で採用されている埋設処分、再利用等の評価経路に加えて、焼却処理の評価経路の考え方についても検討を行うこととする。
 先回のクリアランスWGの資料第9-6号添付資料1-1、1-3においてRI汚染物の一括クリアランス及び個別クリアランスにおけるクリアランス対象物の物量を取りまとめた。これらの資料に基づき、資料第10-2号 添付資料2にRI汚染物のクリアランス対象物のうち焼却処理の対象になるものとその物量を示す。
 当該RI汚染物のうち焼却処理等が可能と考えられる対象物と、これらを一括クリアランス又は個別クリアランスする場合のクリアランスレベルの試算に用いる予定の物量は、それぞれ、以下のとおりである。

可燃性RI汚染物については、
・ 紙・布・木片が、71(ton/year)及び0.03(ton/year)
・ プラスチック類が、341(ton/year)及び0.39(ton/year)
・ 動物の死体が、19(ton/year)及び0.003(ton/year)
・ HEPA/PREフィルタが、189(ton/year)及び0.45(ton/year)
となる。

また、不燃性RI汚染物については、
・ ガラス・薄肉金属等の物量が、382(ton/year)及び0.21(ton/year)
となる予定である。

以上のことから、焼却灰等の1年間の最大物量は、
・ 一括クリアランスの場合、1002(ton)
・ 個別クリアランスの場合、1.083(ton)
と設定することとする。

3.2 クリアランスレベルの試算における評価経路の考え方
 焼却処理の評価経路については、第8回クリアランスWGの資料第8-4号の中で示した評価経路について見直しを行い、資料第10-2号 添付資料3「放射性同位元素の使用等に伴い発生するRI汚染物のクリアランスレベルの算出に係る焼却処理の評価経路」及び添付資料4「放射性同位元素の使用等に伴い発生するRI汚染物のクリアランスに係る焼却処理の評価経路の選定について」に基づき、焼却処理の評価経路の考え方について検討を行うこととする。
 ただし、可燃性のRI汚染物については、汚染物等を収納する容器において核種の混在、放射線源の局在化、内容物の材質の不均一により、クリアランスレベル以下であることの検認の判断において、測定方法の開発、管理体制の確立等に課題があることから、可燃性のRI汚染物がそれぞれの事業所で焼却処理されるものとし、その後の焼却灰をクリアランスの対象として検認を行うことも念頭においた検討を行うこととする。
 また、今回のクリアランス制度では、RI汚染物の保管期間中の減衰に基づくクリアランス判断(半減期の長い核種については、長期間の管理体制の必要性及び相関のない核種が混在した場合の測定技術の面で課題があり、現実的な判断方法の確立に時間を要すると考えられることから、半減期の短い核種についての検討を優先する。)を行うことも基本方針(第28回放射線安全規制検討会の資料第28-4号参照)としていることから、減衰に基づくクリアランスが成立する保管期間の設定において、ここで示す焼却処理のクリアランスレベルの算出結果を参照することとしたい。

4.評価経路にうち再利用経路に関するクリアランスレベルの試算について

4.1 クリアランスレベルの試算おけるクリアランス対象物とその物量の考え方
4.1.1 RI汚染物のクリアランス対象物とその物量
 3.1.1と同様に、先回のクリアランスWGの資料第9-6号添付資料1-1、1-3に基づき、資料第10-2号 添付資料5にRI汚染物の一括及び個別クリアランスに係る評価経路のうち、再利用経路に関するクリアランスレベルの試算を行う場合の物量を示す。
 当該RI汚染物でクリアランス後に再利用が考えられる対象物は、コンクリート及び金属塊であり、これらの対象物の一括クリアランス及び個別クリアランスの試算に用いる物量は、
・ コンクリートが166(ton/year)及び0.06(ton/year)
・ 金属塊が173(ton/year)及び0.05(ton/year)
とする。
4.1.2 放射化物のクリアランス対象物とその物量
 先回のクリアランスWGの資料第9-6添付資料1-4において放射化物のうちクリアランス対象物の物量を取りまとめた。この資料に基づき、資料第10-2号 添付資料6に放射化物のクリアランス対象物のうち再利用、再使用の対象になるものとその物量を示す。クリアランス対象物の再利用については、金属及びコンクリートの全てを評価対象とし、放射線発生装置の使用の許可を得ている施設において使用されていた関連機器等が使用の許可を得ていない施設において使用されるような再使用については、真空ポンプのみを評価対象とする。
 ただし、金属のうち鉄及びコンクリートのクリアランス対象物の物量については、前回のクリアランスWGの中で研究機関のシンクロトロン及びサイクロトロンの解体等に伴って生じる物量について一部見直しの必要性が提案されたことから、現在、具体的な見直しを進めており、その結果については次回以降のクリアランスWGにおいて確認することとする。

4.2 クリアランスレベルの試算における評価経路の考え方
 RI汚染物及び放射化物のクリアランスレベルの試算に係る再利用、再使用の評価経路については、原子力安全委員会が平成11年に取りまとめた「主な原子炉施設におけるクリアランスレベルについて」(以下、「原子炉クリアランス報告書」という。)で示された評価経路及びその選定の考え方を参照し、資料第10-2号 添付資料7及び添付資料8に示すような評価経路及び選定の考え方とすることとする。なお、原子力安全委員会が「原子炉施設及び核燃料使用施設の解体等に伴って発生するもののうち放射性物質として取り扱う必要のないものの放射能濃度について 平成16年12月9日(平成17年3月10日一部訂正及び修正)」(以下、「再評価報告書」という。)の取りまとめにおいて、他の評価経路に比べて線量が十分小さいと判断された評価経路については、検討の対象としなかったことを踏まえて、今回のクリアランスレベルの試算においても検討の対象としないこととする。
 また、放射化物のクリアランスレベルの試算に係る再使用の評価経路については、真空ポンプのみを再使用される対象物とすることとする。 

4.3 クリアランスレベルの試算に用いる評価モデルの考え方
 RI汚染物及び放射化物のクリアランスレベルの試算において、再利用、再使用の評価経路に用いる評価モデルは、埋設処分の評価経路と同様に、原子炉クリアランス報告書におけるクリアランスレベルの算出に使用した評価モデルに係る被ばく線量評価式を用いることを基本とし、さらに、評価式の変更や被ばく形態の追加も考慮したうえで再評価報告書において使用された被ばく線量評価式を用いて試算を行うこととし、今回の試算には添付資料9に示す被ばく線量評価式を用いることとする。 

5.埋設処分の評価経路に関するクリアランスレベルの試算について

 RI汚染物及び放射化物に係るクリアランスレベルの試算における埋設処分の評価経路については、資料第10-2号 参考資料1のとおりである。また、今回のクリアランスWGでは、原子炉クリアランス報告書を参照して埋設処分の評価経路の選定についての考え方の詳細を資料第10-2号 参考資料2に示す。更に、先回のクリアランスWGにおいて示したクリアランスレベルの試算に用いる埋設処分に係る被ばく線量評価式について再整理したものを資料第10-2号 参考資料3に示す。

 

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