放射線安全規制検討会航空機乗務員等の宇宙線被ばくに関する検討ワーキンググループ(第8回) 議事要旨

1.日時

平成17年7月6日(水曜日) 15時~17時

2.場所

経済産業省別館 944号会議室(9階)

3.議題

  1. 航空機乗務員等の宇宙線被ばくに関する論点整理
  2. その他

4.配付資料

  •  資料第8‐1号:第7回航空機乗務員等の宇宙線被ばくに関する検討ワーキンググループ議事要旨(案)
  •  資料第8‐2号:航空機乗務員等の宇宙線被ばくに関する論点整理
  •  参考資料1:ワーキンググループ委員名簿
  •  参考資料2:国際がん研究機関(IARC)公表のBrit.Med.J.論文「低線量電離放射線被ばく後のがんリスク‐15ヶ国における後向きコホート研究」について
  •  参考資料3:国際がん研究機関(IARC)公表のBMJ論文に対する放射線影響協会の見解(ホームページ公開資料)

5.出席者

委員

小佐古主査、飛鳥田委員、日下部委員、杉浦委員、津久井委員、東委員、藤高委員、米原委員

文部科学省

文部科学省 片山次長・原子力安全監、加藤原子力安全課長、小原放射線規制室長、依田放射線安全企画官 他 

オブザーバー

厚生労働省、国土交通省、放射線影響協会 巽放射線疫学調査センター長

6.議事要旨

 ○ 資料第8‐1号に基づき、第7回ワーキンググループの議事要旨(案)について確認が行われた。

 ○  資料第8‐2号に基づき、航空機乗務員等の宇宙線被ばくに関する論点整理について、事務局より説明がなされ、委員及び日本乗員組合連絡会議、定期航空協会からは以下の質問及び意見が述べられた。

《委員意見》4.2の諸外国の航空機乗務員等の宇宙線被ばくへの対応との比較に関する事実関係については、具体的な日本の方針を記載するべきではないか。

【事務局応答】具体的な日本の方針は、4.1.アに記載してある。

《委員意見》欧州諸国においては、航空機高度の違いを考慮した規制が行われている国もあるが、本ワーキンググループが検討すべき国際的整合性は、規制のレベルの整合性ではなく、防護のレベルの整合性であると思う。

《委員意見》我が国においては、従来から、防護が必要な放射線レベルには対策が必要であると考えられてきた経緯がある。一方、4.1.アには航空機乗務員等の宇宙線被ばくを規制する必要はないと記載されているが、航空機乗務員等については法的規制という形ではなく、別の何らかの対応が必要であることは明確にしたい。また、自主基準値は、超えてはいけないという制限値ではないので、自主基準値を超えた場合にどのような対応が必要なのかを示した報告書が出せると良い。欧州においては、6mSvを基準値としている国が多いが、我が国での5mSvという数値は、電離放射線障害防止規則の内容との整合性が図れているので、我が国だけで考えるのであれば、妥当な数値ではないか。

【主査応答】航空機乗務員等の宇宙線被ばく管理の基準値については、ICRPにおいても多く議論されてきたが、無理に諸外国の基準に合わせるのではなく、各国の法律の体系や歴史的背景に留意して設定することにより、十分な運用ができると思う。

《委員意見》4.1.アの記載は、航空機乗務員等がすべて介入の対象であるという記載よりも、職業被ばくとして行為の側面ももっていることも記載した方が良い。また、介入が必要かもしれないレベルには幅があるので、「10~100mSv/年」の方が良いのではないか。

《委員意見》4.1.オの健康管理については、新たに付加的な健康診断を行う必要はないと記載されているが、さらに、労働安全法等の有害業務に指定をする必要はない旨を付け加えた方が良いのではないか。

【委員応答】運航乗務員の健康診断は一般の健康診断と比較しても非常に厳しいものであるので、宇宙線被ばくに対する追加の健康診断は必要ないと思う。

《主査意見》国際的整合性について、ICRPにおける議論は、航空機乗務員等の宇宙線被ばくは現在の放射線防護のシステムによって十分管理可能であり、新たな防護のシステムを構築する必要はないという結論であるので、今後のISOにおける被ばく線量の評価方法の策定など、国際機関の動向に引き続き留意することが重要である。

《委員質問》4.1.イの航空機乗務員等への宇宙線被ばくに関する説明と教育について、「教育訓練」と記載されているが、宇宙線被ばくに関する教育に加えて、実際に宇宙線被ばく防護に関する訓練を行うという意味なのか。

【事務局応答】慣用句として教育訓練の用語を用いたが、具体的な訓練が想定されないのであれば、「訓練」を削除する。

《委員意見》宇宙線被ばくに関する教育については、航空機乗務員を教育することが第一であるが、航空事業者への教育も必要ではないか。

《委員質問》本ワーキンググループでは、職業として航空機を操縦する者(第1種)を対象に議論してきたが、自家用航空機を操縦する者(第2種)を議論の対象にする必要はないのか。

【主査応答】ICRPにおいても、航空機に職業上操縦する者の宇宙線被ばくを対象としており、レジャー目的等で操縦する者は対象にしていない。宇宙線被ばくの管理については、航空機乗務員及び添乗員等全てを1回で議論するのではなく、初めに母集団の大きい航空機乗務員へのガイドラインを示し、その運用の実効性を見極めながら、必要であれば、段階的に添乗員や自家用航空機の操縦者等について議論すれば良いのではないか。ただし、航空機乗務員以外にも、一般の乗客より宇宙線による被ばくを多く受ける者が存在し得ることの認識は重要である。

《委員意見》航空機乗務員等への宇宙線被ばくに関する教育や被ばく線量の評価・閲覧は重要であるので、報告書には航空事業者が理解できるように記載していただきたい。

【主査応答】報告書には、教育を行うべき項目について明記し、航空事業者が労働者を教育する際に参考となるような資料を付属書として準備できると良い。

《委員意見》ICRP Pub.60において、ジェット機の運航による宇宙線被ばくと自然起源の放射性物質(以下、NORMという。)による被ばくは、同じ職業被ばくとして勧告されているので、その対応も同様に行うことが、整合性を図る面で重要である。我が国において、NORMは、その利用形態によりカテゴリー分類しており、産業利用されるものは、行為としての放射線の取り扱いと概ね同等の基準を示しているが、航空機乗務員の宇宙線被ばくは、放射線業務従事者の被ばく線量限度まで被ばくすることは考えられず、航空機乗務を「行為」として位置づけ、放射線の取り扱いと同等の基準を設ける必要はない。従って、航空機乗務員の宇宙線被ばくの対応については、NORMのカテゴリー中の介入側の基準と整合性のとれたガイドラインを示すことが有効ではないか。

《日本乗員組合連絡会議意見》求めていたもののいくつかが形になりつつあり、感謝している。本年6月に米科学アカデミーから低線量放射線のLNT仮説に関する論文が公表されており、その中では、「100mSv以下の低線量被ばくにおいて、LNT仮説を裏付ける結果が得られた」と結論づけられている。このことは、低線量放射線被ばくでは健康影響の検出は困難であるというこれまでの議論との矛盾を感じる。

【主査応答】次回、米科学アカデミーの論文について、識者に説明をしていただく機会を設けたい。

《定期航空協会意見》自主基準としての5‐6mSv/年と、4.1.アの科学的知見において示されている数値や欧州、ICRPでの考え方、放射線業務従事者の被ばく線量限度との関係性、根拠、太陽フレアの仕組み及び知見を明示していただきたい。また、諸外国における航空機乗務員の宇宙線被ばくへの対応について、欧州全般の具体例を明示していただきたい。

【主査応答】ご意見を踏まえて、論点整理を修正した上で議論を深めたい。また、保健物理学会においても、航空機乗務員の宇宙線被ばく検討が進んでいるので、関係者に説明をしていただきたい。

 ○ 参考資料2に基づき、国際がん研究機関(IARC)公表のBrit.Med.J.論文「低線量電離放射線被ばく後のがんリスク‐15ヶ国における後向きコホート研究」について、放射線影響協会の巽放射線疫学調査センター長より説明がなされ、委員からは以下の質問が述べられた。

《委員質問》カナダ一国を除くと、結論が全く変わるとのことであるが、カナダのリスク評価の結果だけが他国よりも高いことの理由として何か考えられるものがあるか。

【説明者応答】現在、各国の生データなど客観的な根拠資料を公開していないので、正確な原因は不明である。この論文はショートペーパーにして結論のみを述べられているが、その結論の正当性を正しく評価するために必要な情報が全く読者には示されておらず、ある意味、著者にとって都合の良い結果だけを述べていることから、このように著しく公平性を欠く論文の結論を妥当と認めることはできない。

 ○ 小佐古主査によるとりまとめ
  資料第8‐2号の航空機乗務員等の宇宙線被ばくに関する論点整理については、今回のご意見を踏まえて事務局で修正していただき、次回の会合で議論を深めたい。
 米科学アカデミーの論文及び保健物理学会における航空機乗務員等の宇宙線被ばくに関する検討内容について、識者及び関係者に説明をしていただく。

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科学技術・学術政策局原子力安全課放射線規制室

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(科学技術・学術政策局原子力安全課放射線規制室)