放射線安全規制検討会(第24回) 議事録

1.日時

平成20年9月8日(月曜日)14時~16時

2.場所

経済産業省 別館1028会議室(10階)

3.議題

  1. 研究RI廃棄物のトレンチ処分に係る放射能濃度上限値等について
  2. その他

4.配付資料

  • 資料第24‐1号 第23回放射線安全規制検討会議事録
  • 資料第24‐2号 研究RI廃棄物のトレンチ処分に係る放射能濃度上限値等について
  • 参考資料1 放射線安全規制検討会委員名簿

5.出席者

委員

小佐古座長、近藤座長代理、木村委員、日下部委員、田中委員、 
反保委員、蜂谷委員、東委員、古川委員、山口委員、山本幸佳委員、
山本英明委員、米原委員 

文部科学省

文部科学省 科学技術・学術政策局 
中原次長・原子力安全監、黒木原子力安全課長、中矢放射線規制室長、 
桐生放射線安全企画官、服部放射線規制室長補佐 他 

6.議事進行

○ 資料第24‐1号に基づき、第23回放射線安全規制検討会の議事録の報告が行われた。

○ 資料第24‐2号に基づき、事務局より研究RI廃棄物のトレンチ処分に係る放射能濃度上限値等についての説明がなされた。その後、質疑応答が行われ、研究RI廃棄物のトレンチ処分に係る放射能濃度上限値について放射線安全規制検討会の検討結果として了承された。

○ 今後の予定として、研究RI廃棄物のトレンチ処分に係る放射能濃度上限値は、選定した放射性核種と数値を放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行規則に取り入れるにあたり、意見公募を行った上で定めていく旨が伝えられた。また、廃棄物埋設地における線量基準については、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(以下、「放射線障害防止法」という。)の技術的基準に該当することから放射線審議会に諮問を行い、その答申を得たうえで、意見公募を行い告示に定めていく旨が伝えられた。

7.主な質疑応答

<資料第24‐2号関係>
(放射能濃度上限値について)

1.発生装置廃棄物における評価対象放射性核種について

【近藤座長代理】 最近の放射線発生装置ではターゲット等に多様な材質が使われているが、それらの放射化により生成する放射性核種(以下、「核種」という。)も考慮しているのか。

【事務局(岸本)】 放射能濃度上限値の性質を考えて、放射線発生装置の代表的な構造物の放射化核種を評価している。

【中矢放射線規制室長】 埋設の対象としない廃棄物である放射線発生装置のターゲット等は評価対象にしないという前提で計算しており、今回の評価対象核種が代表核種として適切であると考えている。

2.放射能濃度上限値の位置付けについて

【田中委員】 4ページに放射能濃度上限値は「個々の埋設施設・埋設計画の安全確保に直接、関わるものでない」とあるが、代表的な数値でこの数値以下であれば問題ないという数値を設定していると思うので、「安全確保に直接、関わるものではない」では一般の方々にはわかりにくいと思う。

【中矢放射線規制室長】 放射能濃度上限値は、この数値以下であればいかなる場合も、安全上問題ないという値ではない。廃棄物埋設を行う廃棄の業の許可申請の際には、実際に埋設する廃棄物に含まれる核種を全て網羅した安全評価を行い、公衆の被ばくが10μSv/年以下(管理期間終了後の通常時の場合)となることを事業者は示さなければならない。放射能濃度上限値は、放射線障害防止法においてこれまでトレンチ処分を行うことができる廃棄物の範囲を示す目安値がなかったため、あくまでもその目安値として定めるものである。

【田中委員】 核種が多くある場合は、それぞれの放射能濃度上限値より小さな数値を適用しなければ廃棄物埋設が許されないのか。

【中矢放射線規制室長】 その可能性が高い。

【小佐古座長】 放射能濃度上限値はそれぞれの核種において10μSv/年(管理期間終了後の場合)の被ばくとなる濃度として計算したものであり、実際の許可申請時には、埋設する廃棄物に含まれる全ての核種を考慮して全体で10μSv/年以下等の被ばくとなるよう核種ごとに割り振りすることになる。

3.実際にトレンチ処分可能な廃棄物について

【反保委員】 15ページのRI使用廃棄物の評価では、H‐3、C‐14の相対重要度が1を超えており、個別の廃棄物ごとに評価を行っても、多くのものはトレンチ処分ができないのではないか。

【中矢放射線規制室長】 廃棄物の埋設のための処理(溶融、焼却等)が進んでいない現時点では一概には言えないが、それらの処理後に実際にどういう濃度になるかによって、埋設事業の全体計画のなかで事業者が判断することになる。

【古川委員】 日本アイソトープ協会では、平成19年度末までに保有している全ての廃棄物を廃棄体換算して、その放射能量を全重量で割ることにより、RI使用廃棄物の放射能濃度(D)を今回算出した。算出に当たっては、処理過程で熱がかかることにより大気に移行することが考えられるH‐3、C‐14が廃棄体中に全て残留するといったかなり保守的な評価を行っており、相対重要度が1を超える核種が出ているのはそういったことも要因である。なお、発生装置廃棄物のような生成核種の相関関係がないことから、放射能濃度上限値を設定した核種の代表性を確認するため、RIの頒布やRI廃棄物の集荷に係る実績との突き合わせを行い、それらに関するデータも提供した。

4.放射能濃度上限値の最大値見込係数について

【東委員】 11ページの最大値見込係数10は、原子力安全委員会で決められた数値であるが、評価基準線量相当濃度を平均の放射能濃度で算出し、そこから上限値という最大値を決めるに当たってそのばらつきを考慮して10という数字を掛けることとしたと聞いているが、その意味合いで良いか。

【中矢放射線規制室長】 そのとおり。

5.廃棄物埋設地における管理の状況について

【山本(幸)委員】 廃棄物埋設地の標識及び立入は、どうなるのか。

【中矢放射線規制室長】 管理期間中の廃棄物埋設地は、標識をし、縄張りにより立入禁止にする。管理期間終了後は管理を行わず、廃棄物埋設地における行為は自由となる。

6.潜在被ばくの評価について

【米原委員】 トレンチ処分の場合、ICRP(国際放射線防護委員会)で提案されている潜在被ばくを考慮すると、1mSv/年だけで線量基準を考えて良いのか。

【中矢放射線規制室長】 潜在被ばくについては、今後原子力安全委員会等で検討されると思うが、被ばくの評価シナリオにおいて発生頻度が小さい事象も考慮されていることから潜在的な被ばくのような考え方についてもある程度考慮されていると考える。

7.放射能濃度上限値の規定の考え方について

【小佐古座長】 24ページに示している原子力安全委員会におけるトレンチ処分の評価シナリオでは、埋設する200リットルドラム缶を100万本と仮定しているが、研究施設等廃棄物の想定埋設本数が約50万本であることなどから、評価基準線量相当濃度をもう少し大きく設定する余地があり、埋設する廃棄物に応じて複数の評価基準線量相当濃度、即ち放射能濃度上限値を規定するという考えがありうる。しかし、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下、「原子炉等規制法」という。)との整合を考えると放射能濃度上限値は1つの方が良いという考え方もある。

【木村委員】 研究用RI廃棄物に係るトレンチ処分の評価シナリオに用いるにしては、処分場の想定が大きいため、C‐14の放射能濃度上限値が一番厳しくなっている。

(線量基準値について)

【小佐古座長】 廃棄物埋設地における線量基準は、放射線障害防止法においても、原子炉等規制法下で採用されている原子力安全委員会の決定に基づく基準を採用し、今後改定された場合も、それに従う方針と聞いている。管理期間終了後の通常時の線量基準は、世界的には100~300μSv/年の値が採用される傾向のなかで、日本ではかなり保守的な10μSv/年を基準としていること等について意見を伺いたいと思う。

【山本(英)委員】 低レベル廃棄物の処分場について、埋設地の選定において最終的に管理をしなくてよいとする仕組みを構築しておくために10μSv/年という管理期間終了後の線量基準が導入されたように記憶している。ただし、この基準が今度も妥当かは、原子力安全委員会で検討が進められると考えている。

【小佐古座長】 一般公衆は、自然界からの放射線で世界平均2,400μSv/年、土の中からだけでも1,200μSv/年の被ばくを受けており、これに対して廃棄物埋設地からの被ばくが10μSv/年以下であることを評価することは現実的ではなく、基準値として何の意味があるのかということになる。しかし、一般公衆がどのような線量で合意するかは科学の理屈だけでないため、議論が必要になってくるところであると思われる。

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科学技術・学術政策局 原子力安全課 放射線規制室

(科学技術・学術政策局 原子力安全課 放射線規制室)