資料第29-6号:RI汚染物のクリアランス判断に係る技術的課題の整理(修正案)[第14回クリアランス技術検討WG資料第14-2-2号]

平成21年11月25日
放射線規制室

1. はじめに

 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(以下、「放射線障害防止法」という。)へのクリアランス制度の導入に係る検討を進めるうえで、第28回の放射線安全規制検討会(以下、「規制検討会」という。)でとりまとめた「クリアランス制度導入等に係る制度設計の基本方針(資料第28-3号)」において、「クリアランス対象物の判断方法については、放射性同位元素や放射線発生装置の使用状況、放射性同位元素によって汚染された物(以下、「RI汚染物」という。)や放射化物の発生実態等を踏まえ、原子炉等規制法における判断方法に加え、放射線障害防止法独自の判断方法も検討し、採用していくこととする。」ということを確認した。また、クリアランス判断方法に係る技術的検討については、同規制検討会において承認された「クリアランス判断方法の検討に関する基本方針(案)(資料第28-4号)」を踏まえてクリアランス技術検討ワーキンググループ(以下、「クリアランスWG」という。)において行うこととなっている。ただし、半減期の長い放射性核種を念頭においたクリアランス判断については、クリアランス制度として適用可能であるが、測定が困難な核種が含まれる場合、現実的な判断方法の現時点での確立は難しいと考えられることから、半減期の短い放射性核種を念頭においた減衰に基づくクリアランス判断に係る検討を優先することとしている。さらに、平成18年度に放射線安全規制検討会クリアランス技術検討ワーキンググループがとりまとめた「放射線障害防止法におけるクリアランス制度の整備に係る技術的検討について(中間報告)」(以下、「平成18年度中間報告書」という。)において、減衰保管廃棄の技術的な成立性を確認している。
 以上の内容を踏まえ、省令及び告示等を規定するまでに、今後検討を行わなければならない技術的課題を以下にとりまとめる。ただし、それぞれの技術的事項については、技術基準として省令・告示等に規定すべき事項、又は標準として関連学協会の規格等に定めるべき事項に区別して検討を行う必要があると考える。

2. クリアランス判断にあたって

 クリアランス判断にあたっては、当該事業者は、事前評価による対象物の分類、クリアランスレベル以下であることの判断、クリアランスレベル以下と判断した物への異物や汚染の混入を防止するための厳格な保管・管理、判断の妥当性を示す根拠の記録やその保存等を適切に行うとともに、これらが一連の業務として高い信頼性をもって機能するための管理体制(品質保証体制)を確立することが必要となると考えられる。
 また、原子力安全・保安院では、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下、「原子炉等規制法」という。)に基づき定められている「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第61条の2第4項に規定する製錬事業者等における工場等において用いた資材その他の物に含まれる放射性物質の放射能濃度についての確認等に関する規則」(以下、「放射能濃度確認規則」という。)の適用にあたって留意すべき事項として、「放射能濃度の分布の均一性」について触れられており、放射能濃度確認においては、「測定単位として測定されたそれぞれの測定単位ごとの放射能濃度に著しい偏りがないことを確認すること。」とされている。さらに、原子力安全委員会においてとりまとめられた「原子炉施設及び核燃料使用施設の解体等に伴って発生するもののうち放射性物質として取り扱う必要のないものの放射能濃度について(平成16年12月(平成17 年3 月17 日一部訂正及び修正))」(以下、「再評価報告書」という。)においても、「クリアランスレベルの制度化にあたっての留意事項」として、クリアランス対象物の平均放射能濃度及び放射能濃度のばらつきに係る考え方が示されている。これらの留意事項を踏まえ、RI汚染物の放射能濃度確認におけるクリアランス対象物の放射能濃度分布の取り扱いについても十分な検討を進める必要がある。

3. 検討しなければならない技術的課題

3.1 RI汚染物の放射能濃度確認

 各種測定機器を用いたRI汚染物の放射能濃度確認は、原則としてその考え方は、原子炉等規制法の下で運用されている放射能濃度確認の手順に準ずるものと考える。
 ただし、放射線発生装置の使用等に伴い生ずる放射化物の放射能濃度確認が原子炉等規制法の放射能濃度確認と同様の考え方を適用できる一方で、放射性同位元素の使用等に伴って発生するRI汚染物の放射能濃度確認においては、測定単位ごとの放射能濃度の分布の均一性の確保、及び放射化物の放射能濃度評価の際に用いることのできる核種組成比を考慮した主要核種測定法の適用が困難であるなど、検討を行わなければならない技術的課題が多い。そのため、今後、省令及び告示等の規定に向けて、以下に示すような技術的課題について検討を行う必要があると考える。
 ○放射能濃度の測定対象物の性状に対する考慮
 ・クリアランス対象物の性状に応じた測定方法、評価単位の検討
  (コンクリート、金属、可燃物、焼却灰)
 ○放射能濃度の測定方法に係る検討
 ・RI汚染物、放射化物の特徴を考慮した測定方法
 ・サンプリング[標本抽出・抜き取り]の考え方・基準の整備
  (国内外の基準等を参照)
 ・測定方法の規格化・標準化
 ・測定項目の設定(総量、濃度、線量)
 ・クリアランスレベルに応じた測定のあり方の検討
 ・RI汚染物の特徴を考慮した測定機器の選択
  (使用する測定機器の測定下限値・精度、測定機器の校正、放射性核種に応じた測定機器の選択)
 ・実測によらない放射能濃度評価の可能性の検討
  (使用や保管の記録からの計算で検認することができるか検討。)
 ○放射能濃度の評価単位に係る検討
 ・クリアランス対象物の性状、クリアランス対象施設の規模に応じた評価単位の設定
 ・測定下限量とクリアランスレベルの関係を踏まえた評価単位の設定
 ○放射能濃度分布の均一性の確保に係る検討
 ・放射能濃度分布の均一性に係る考え方の検討
 ・分布の均一性確保の必要性を要求する評価単位の区分
  (クリアランス対象物の申請物量が少量の場合に「均一性」を要求する必要があるかどうか検討)
 ○測定対象核種の選定方法に係る検討
 ・RI使用施設の特徴に応じた区分のモデル化
 ・測定における重要放射性核種の抽出
 ・使用履歴に基づく測定対象核種の選定
 ・放射性発生装置の仕様、同使用施設の規模に応じた測定対象核種の選定
 ○測定の記録
 ・記録項目、記録の保存期間に関する規定

3.2 放射性核種の減衰に基づく放射性同位元素の使用等に伴って発生するRI汚染物のクリアランス判断

 平成18年度中間報告書において、放射性同位元素の使用等に伴って発生するRI汚染物のうち、半減期の短い放射性核種のみによって汚染されたRI汚染物については、一定期間保管し、かつ、半減期の短い核種以外の核種の混入を防止するように適切に管理すれば、RI汚染物に含まれる半減期の短い核種の放射能が減衰し、放射性物質として扱う必要のないレベルになるとの検討結果がとりまとめられた。すなわち、クリアランスの対象となるRI汚染物に含まれる放射性核種が限定でき、告示等に規定することとなるクリアランスレベル以下になるように、保管を開始する時点におけるRI汚染物の放射能濃度を一定濃度以下に確実に管理することができ、一定期間保管させることができれば、これらのRI汚染物は一定期間保管された後に放射性物質によって汚染された物でないものとして扱うことが可能となる。しかしながら、半減期に基づきこの判断を適用できる放射性核種の選定、及び他の核種の混入を防止する管理体制の確立など検討を行わなければならない事項は多い。今後、省令及び告示等の規定に向けて、以下に示すような技術的課題について検討を行う必要があると考える。
 ○この手法を適用する対象核種の選定の考え方
 ・選定する核種の半減期の上限の設定
 (平成18年度中間報告書における議論に基づき、半減期が30日以下、60日以下または90日以下の条件を選択)
 ・放射性核種の使用(流通)の実態を考慮した設定
 ○クリアランス対象として選定した放射性核種がクリアランスレベル以下になるために必要な減衰期間の設定
 ・それぞれの核種の測定の容易さ等と保管期間の兼ね合いから保管期間を設定
 ○評価対象物の放射能濃度がクリアランスレベル以下になっていることを担保するための放射能濃度測定
 ・保管開始時点におけるクリアランス対象物の放射能濃度測定
 ・クリアランス判断時における抜取りによる測定
 ・実測によらない放射能濃度評価
 (使用や保管の記録からの計算による検認の可能性について検討)
 ○放射性核種の使用実態を踏まえ、他核種との混在を防ぐための適切な管理体制
  【ハード面】
 ・半減期の短い核種のみの許可事業者
 ・半減期の短い核種、長い核種それぞれを使用する施設の分類
 ・半減期の短い核種を使用する専用施設の設置
 ・半減期の短い核種を使用する専用の作業室の設置 等
  【ソフト面】
 ・クリアランスを念頭においた使用記録の手法と保管
 ・予防規程の整備 等 
 ○クリアランス判断に係る審査、確認の項目
 ・クリアランス対象となる放射性核種、その保管期間に係る情報
 (放射性核種の使用記録等に基づく)
 ・クリアランスレベル以下であることを検認する方法
 ・検認する方法に従った検認が実施されたことを証明する記録

4. まとめ

 上記の論点を基に、省令及び告示等の規定に向けて検討を行わなければならない技術的課題について、今後、クリアランスWGの報告書においてとりまとめを行う。

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