資料第29-4号:クリアランスWGにおけるクリアランスレベルの設定に係る検討について

平成21年12月7日
放射線規制室

1. はじめに

 クリアランス技術検討ワーキンググループ(以下、「クリアランスWG」という。)においては、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(以下、「放射線障害防止法」という。)へのクリアランス制度の導入に向けた技術的な事項として、主にクリアランスレベルの算出について、第28回放射線安全規制検討会(7月30日)で承認された「放射線障害防止法に規定するクリアランスレベルの設定に係る基本方針(資料第28-5号)」に基づいた検討を進めてきた。
 クリアランスWGにおけるクリアランスレベルの算出に係る主な検討項目は、以下に示すとおりであり、本資料では、これらの項目に関する検討結果を紹介する。
 ○ クリアランス対象物の物量について
 ○ クリアランスレベルを算出する対象核種の選定について
 ○ クリアランスレベルの算出に係る評価経路について
 ○ クリアランスレベルの算出に係る計算モデルについて
 ○ クリアランスレベルの算出に用いる評価パラメータについて
 ○ クリアランスレベルの算出結果について
 ○ 国際的なクリアランスレベルとの比較

2. クリアランス対象物の物量について

 放射線障害防止法にクリアランス制度を導入した場合に、クリアランスの対象となるものは、以下の二つである。
 (1) 放射性同位元素(以下、「RI」という。)の使用等に伴って発生するRI汚染物(以下、「RI汚染物」という。)
 (2) 放射線発生装置の使用等に伴って発生するRI汚染物(放射化物)(以下、「放射化物」という。)
 これらの物量については、第8回のクリアランスWGにおいて、社団法人日本アイソトープ協会(以下、「RI協会」という。)及び独立行政法人日本原子力研究開発機構(以下、「原子力機構」という。)より、RIを使用する施設等から発生するRI汚染物の種類と物量についての考え方が示され、また、大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(以下、「高エネ研」という。)より、放射化物の種類と物量についての考え方が示された。

2.1 RIの使用等に伴って発生するRI汚染物

 クリアランスの対象と考えられるRI汚染物には、RIの使用等の許可・届出事業者(以下、「RI事業者」という。)(医療機関、研究機関、教育機関、民間企業等)のRI使用施設等から発生するもの、及びRI協会がこれまでに集荷し保管しているもの、並びに原子力機構におけるRIの使用等により発生するものがある。

2.1.1 クリアランス対象物の物量の考え方

 国内には、医療機関、研究機関、教育機関、民間企業等のRI事業者が管理するRI使用施設が全国各地に存在し、これらの各施設でRI汚染物が発生している。また、上述のように、これらのRI汚染物は、現状ではRI協会により集荷され、保管されている。このようなことを踏まえ、クリアランス制度の導入後のRI汚染物のクリアランスが以下に示す「一括クリアランス」及び「個別クリアランス」の形態で行われることを想定してクリアランス対象物の物量について算出を行った。

(1) 「一括クリアランス」を想定した場合のクリアランス対象物とその物量

 一括クリアランスについては、全国各地のRI使用施設等から1年間に発生し集荷されたRI汚染物、RI協会が既に保管しているRI汚染物、及び原子力機構から発生するRI汚染物がクリアランスされた後に、1箇所の処分場に埋設されるか、あるいは再利用等のために1箇所のリサイクル施設に運び込まれることを想定してクリアランス対象物の物量の算出を行った。
 RI協会及び原子力機構の調査結果に基づいた一括クリアランスを想定した場合のクリアランス対象物の物量の算出結果を表1に示す。まず、RI使用施設等から1年間に発生するクリアランス対象物の物量については、RI協会のここ5年間の集荷データをもとに算出を行った。RI協会の考え方では、集荷においてRI事業者より提出された「RI廃棄物記録票」に記載された収納容器ごとのRI汚染物の種類、核種、放射能量の数値をもとに核種の放射能濃度が算出され、さらに、IAEA RS-G-1.7(以下、「RS-G-1.7」という。)で示されたそれぞれの核種の放射能濃度との比較が行われ、RS-G-1.7で示された放射能濃度以下になるものの物量がクリアランス対象物の物量とされている。
 また、RI協会がすでに保管しているRI汚染物から発生するクリアランス対象物の物量については、現在保管されているRI汚染物の収納容器約13万本のうち、放射能濃度の高いRI汚染物を除いた10,650トンについて、約10年間かけてクリアランスが行われると想定して物量が算出されており、これに基づいて、1年間に発生するクリアランス対象物の物量とする。
 原子力機構では、ここ5年間に発生したRI汚染物について、RS-G-1.7に示されたそれぞれの核種の放射能濃度を参考にしてクリアランス対象物の物量が検討され、1年間の平均物量が算出されるとともに、過去からこれまでに発生したRI汚染物の保管物量を20年で平均化した物量が算出されており、これらの物量を合計して1年間に発生するクリアランス対象物の物量とする。

(2) 「個別クリアランス」を想定した場合のクリアランス対象物とその物量

 個別クリアランスについては、クリアランス対象物が各RI事業者によってクリアランスされた後に、1箇所の処分場に埋設されるか、あるいは再利用等のために1箇所のリサイクル施設に運び込まれることを想定してクリアランス対象物の物量の算出を行った。その結果を表2に示す。
 RI協会では、上記(1)と同様の考え方で、まず、ここ5年間の集荷データをもとに、1年間に発生すると考えられる対象物の物量が算出されている。なお、参考資料2に示すように、RI協会のここ5年間の集荷量は、減少傾向にあり、上記のような考え方に基づいて1年間に発生する物量を算出することは、妥当であると考える。また、各RI事業者がRI協会へ排出する物量にばらつきがあることを考慮し、例えば、発生したRI汚染物を事業者が自らの施設で最長5年間保管した後に、RI協会へ排出すると想定して、1年間に発生することが考えられるクリアランス対象物の物量の5倍の値をクリアランス対象物の物量とすることとした。ただし、クリアランスの対象となっている土砂については、事業所の汚染土壌であること、廃止措置等で不定期に排出されること、年間の集荷量と関連が深くないことから、これまでの1事業所における最大発生量の2倍の値を物量とすることとした。

2.2 放射線発生装置の使用等に伴って発生する放射化物

 放射線発生装置は、RI使用施設等の場合と同様に、医療機関、研究機関、教育機関、民間企業等で使用されている。放射線発生装置のうち医療機関で使用されている加速エネルギーの小さな治療用電子リニアック(直線加速器)やPET核種製造用小型サイクロトロンは小規模施設で使用されており、教育機関、研究機関、民間企業等で使用されている加速エネルギーの大きなサイクロトロン、シンクロトロンは大規模施設で使用されている。これらの放射線発生装置では、使用する電子または粒子の加速エネルギーの大きさによって、施設の規模、構成機器、設備、収納室の構成部材の放射化の程度が異なる放射化物が発生することから、放射線発生装置の解体等に伴って発生するクリアランス対象物の物量も放射線発生装置の種類により大きく異なることが考えられる。

2.2.1 クリアランス対象物の物量の考え方

 上述のように、放射線発生装置の使用等に伴って発生するクリアランス対象物の物量は、装置の加速エネルギーの大きさによって異なるものと考えられる。そこで、表3に示す国内の代表的な医療機関、研究機関等の放射線発生装置使用施設から発生する廃棄物等の物量に関するアンケート調査の結果(高エネ研により大学等放射線施設協議会等の協力を得て行われた調査の結果)に基づき、表4に示すように加速エネルギーの種類や大きさに基づいて区別した場合に代表的な施設を対象として施設の解体等に伴って発生することが想定されるクリアランス対象物の物量を算出した。その結果、医療機関のような小規模施設で発生することが想定される物量と研究機関、教育機関のような大規模施設で発生することが想定される物量が大きく異なることから、クリアランスレベルの算出においては、大規模施設及び小規模施設のそれぞれに対して、クリアランス対象物等の物量の算出を行った。ここで、大規模施設については、表4のEからJの施設に係る調査結果を参考に、鉄、SUS、アルミ、銅、コンクリートの最大物量の合計をクリアランス対象物の物量とする。同様に、小規模施設については、表4のAからDの施設に係る調査結果を参考に、各物品の最大物量の合計を物量とする。なお、放射線安全規制検討会でとりまとめた「放射線障害防止法に規定するクリアランスレベルの設定に係る基本方針(案)」において、「クリアランスレベル設定において、対象物による有意な差が生じ、クリアランス判断時に実効性のある分類・判断が可能と考えられる場合、対象物の種類に応じてクリアランスレベルを設定することを必要に応じて考慮する。」としていることから、大規模施設及び小規模施設それぞれについて、金属の最大物量の合計及びコンクリートの最大物量についても今回の算出のための物量とする。

3. クリアランスレベルを算出する対象核種

3.1 RIの使用等に伴って発生するRI汚染物に係る対象核種の選定の考え方

 クリアランスレベルを算出する対象核種の選定については、参考資料3に示された情報を基本として考え方を取りまとめた。選定においては、RI使用施設等において使用されている核種や保管されているRI汚染物に含まれている核種を網羅的に対象とすることが適切であるため、RI協会からRI使用者等に供給されている主な放射性核種、RI協会において現在保管されているRI汚染物に含まれている放射性核種、原子力機構において使用・保管されている放射性核種の中から、クリアランスレベルを算出する対象核種を選定した。なお、RS-G-1.7に示された全ての核種のクリアランスレベル(Bq/g)の最大値と最小値の間に6桁の差があることを参照して、選定においては、RI協会から供給されている放射能量又はRI汚染物中に含まれる放射能量が最大となる核種の放射能量を1として、他の核種の放射能量の相対比を規格化した場合に、6桁下までの核種を対象核種として選定することとした。また、クリアランスの対象としているRI汚染物はRI使用施設等から発生する固体状廃棄物であるため、希ガスである放射性核種については選定の対象としないこととした。

3.1.1 RI協会からRI使用者に供給されている主な核種

 まず、平成16年度から平成20年度にRI協会からRI使用者等に供給された非密封のRI及び放射性医薬品核種で、「アイソトープ等流通統計(2009)」に核種名が記載されているRI33核種及び放射性医薬品核種14核種について、放射能量が最大となる核種の放射能量を1として、他の核種の放射能量の相対比を評価した。その結果、選定した核種のうち、RIではH-3の放射能量が、また、放射性医薬品ではTc-99mの放射能量が最大となり、これを除いた32核種と13核種の全てが相対比6桁以内に含まれることから、クリアランスレベルを算出する対象核種として、参考資料3に示すように、非密封のRIで33核種及び放射性医薬品核種で14核種を選定することとした。なお、ここで選定する33核種と14核種は、RI協会から国内のRI使用者等に供給されている核種の総放射能量を概ね包含している。

3.1.2 RI協会において保管されているRI汚染物に含まれる核種

 次に、平成20年度現在の記録に基づいて、RI協会において全国のRI使用施設等から集荷され、保管されているRI汚染物に含まれる放射性核種166種について、放射能量が最大となるC-14の放射能量を1として、他の核種の放射能量の総対比が評価されており、この評価結果に基づき、放射能量の相対比が6桁以内となる核種のうち、その核種によって汚染されたものを納めている容器が100個以下の核種については、対象核種から除外し、33核種を評価対象として選定することとした。
 なお、保管記録から半減期が1日未満の核種については対象から除外する。

3.1.3 原子力機構において使用及び保管されているRI汚染物に含まれる核種

 原子力機構のRI使用施設等において平成16年度から平成20年度に使用及び保管されているRI汚染物等に含まれる放射性核種146種について、放射能量が最大となるIr-192の放射能量を1として、他の核種の放射能量の総対比を評価されており、この評価結果に基づき、相対比が6桁以内となる核種として23核種を評価対象として選定することとした。
 なお、3.1.2と同様に、保管記録から半減期が1日未満の核種については対象から除外する。

3.2 放射線発生装置の使用等に伴って発生する放射化物に係る対象核種の選定の考え方

 クリアランスレベルを算出する対象核種の選定については、参考資料4に示された情報を基本として考え方を取りまとめた。さらに、選定においては、クリアランスWGが平成18年6月に取りまとめた「放射線障害防止法におけるクリアランス制度の整備に係る技術的検討について(中間報告)」(以下、「平成18年度中間報告」という。)、及び「平成17年度 放射線発生装置、放射性同位元素使用施設及びウラン取扱施設等から発生する廃棄物のクリアランスレベル設定に係る基礎調査」(平成18年3月、日本原子力研究開発機構)(以下、「基礎調査報告書」という。)の計算結果も参考にした。

3.2.1 放射線発生装置の使用に伴う装置本体や周辺機器・構造物の放射化の考え方

 平成18年度中間報告の中で、放射線発生装置の使用に伴う装置本体及びその周辺機器や構造物の放射化のメカニズムについて考察している。放射線発生装置の運転に伴って生じる本体や周辺構造物の放射化は、加速する荷電粒子と加速器本体を構成する物質との相互作用によって生じる放射化(一次粒子による放射化)と、この相互作用の結果で発生する二次粒子(中性子)と加速器本体や周辺機器、遮へいコンクリート、建家構造物等との相互作用によって生じる放射化(中性子による放射化)に分けることができる。このため、基本的には原子炉施設のクリアランスレベルの算出に係る核種の選定手順を参考にすることができるものと考える。ただし、高エネルギーの放射線発生装置の場合、発生する中性子のエネルギーが高く、原子炉で見られる熱中性子捕獲反応のみならず、速中性子反応も考慮に入れておく必要があるため、それぞれの材料毎に数核種の追加を行うこととした。
 また、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下、「原子炉等規制法」という。)で原子炉施設に係るクリアランスレベルとして既に規定されている核種の中からも今回のクリアランスレベルの算出を行う対象核種として選定する必要があるものについて検討を行った。

3.2.2 クリアランスレベルの算出の対象として選定する核種について

 放射線発生装置及びその使用施設を構成する主要な材質は、鉄、ステンレス、銅、アルミニウム、鉛及びコンクリートであることから、これらの材質に含まれる成分(元素)を基に、放射線発生装置の使用に伴い生成する核種の種類と放射能について検討が行われている。なお、施設の解体を行った場合の放射化物のクリアランスレベルの評価過程を考慮して冷却期間は1年、半減期は1月を超える核種を対象として検討が行われている。
 評価対象核種の選定に当たっては、核種の生成量(D)及びRS-G-1.7の値(C)をもとに、主要核種のD/Cに対し、その核種のD/C値の比[(D/C)/(D/C)max]をとる。その結果、コンクリートについては中間報告の表6に示された核種のうち、KEK陽子加速器では[(D/C) /((D/C)max]値が4桁目まで、その他の発生装置では3桁目までに含まれる核種を評価対象として選定されている。その他の材質については、基礎調査報告書の計算結果を参考にし、[(D/C)/(D/C)max]値が4桁目までの核種を評価対象として選定されている。
 上述の考え方に基づいて、放射線発生装置の解体等に伴って発生するRI汚染物(放射化物)に係るクリアランスレベルの算出を行う対象核種として参考資料4の表2に示した核種を評価対象として選定することした。ここで、資料の▲印の核種は、高エネルギー粒子で照射された場合に検出される可能性があると考えられることから、評価対象の核種として追加することとした。

3.3 クリアランスレベルを算出する対象核種についての選定結果

 上述の検討結果を踏まえ、表5に示すとおり、放射線障害防止法でクリアランスレベルを算出する核種として、RI汚染物に関連しては53核種、放射化物に関連しては34核種を選定することとした。
 ただし、国内のRI使用施設では上記の53核種以外の核種がこれまでに取り扱われていること及び今後新たなRIの利用ニーズが想定されることを考慮するとともに、また、放射線発生装置の高性能化に伴い新しい機器構造材料を導入した放射線発生装置本体及び周辺構造物の放射化により上記の34核種以外の核種の発生が考えられることを考慮し、対象核種の選定に係る留意事項として、今後も最新の情報や知見を踏まえ、必要に応じて、クリアランスレベルを設定する対象核種の法令への取り入れを視野に入れた検討を行うこととする。

4. クリアランスレベルの算出について

4.1 クリアランスレベルの算出におけるクリアランス対象物とその物量の考え方

4.1.1 RI汚染物に係るクリアランス対象物とその物量

 RI汚染物のクリアランス対象物に係る埋設処分、再利用・再使用、焼却処理の対象になるものとその物量を表6に示す。
 まず、現在行われている産業廃棄物の処分において、プラスチック類、フィルタ材料、コンクリート、金属塊についても埋設処分の対象となっていることから、一括クリアランスについては、埋設処分の評価経路に係るクリアランス対象物量が1,428.8トン/年であり、算出に用いる物量を1,500トン/年とすることとした。また、個別クリアランスについては、クリアランス対象物量が9.298トン/年であり、算出に用いる物量を10トン/年とすることとした。
 次に、焼却処理の評価経路に係るクリアランス対象物については、一括クリアランスにおいて、1,001.53トン/年であり、算出に用いる物量を1,000トン/年とすることとした。また、個別クリアランスにおいて、1.083トン/年であり、1.1トン/年とすることとした。

4.1.2 放射化物に係るクリアランス対象物とその物量

 現在行われている産業廃棄物の処分において、埋設処分の対象となっている材料に係る情報を参考に、鉄、SUS、アルミ、銅、コンクリートが埋設処分されるものとして対象物の物量を算出する。なお、2.2.1で述べたとおり、放射線発生装置使用施設は、医療機関のような小規模施設と研究・教育機関のような大規模施設で発生することが予想されるクリアランス対象物の物量が大きく異なることから、クリアランスレベルの算出においては、大規模施設及び小規模施設それぞれに対して物量を算出する。
 以上のことから、表7に示すように、大規模施設については、表4のEからJの施設に係る調査結果を参考に、鉄、SUS、アルミ、銅、コンクリートの最大物量の合計が41,724.5トン/年となることから、クリアランスレベルの算出に用いる物量を42,000トン/年とすることとした。また、小規模施設については、表4のAからDの施設に係る調査結果を参考に、各物品の最大物量の合計が259.31トン/年となることから、クリアランスレベルの算出に用いる物量を300トン/年とすることとした。

4.2 クリアランスレベルの算出における評価経路の考え方

 RI汚染物及び放射化物の埋設処分及び再利用・再使用に係る評価経路については、原子力安全委員会において平成11年に取りまとめられた「主な原子炉施設におけるクリアランスレベルについて」(以下、「原子炉クリアランス報告書」という。)で示された評価経路及びその選定の考え方を参考にすることとした。なお、原子力安全委員会における「原子炉施設及び核燃料使用施設の解体等に伴って発生するもののうち放射性物質として取り扱う必要のないものの放射能濃度について 平成16年12月9日(平成17年3月10日一部訂正及び修正)」(以下、「再評価報告書」という。)の取りまとめにおいて、他の評価経路に比べて線量が十分小さいと判断された評価経路については、検討の対象とされなかったことを踏まえ、今回のクリアランスレベルの算出においても検討の対象としないこととした。

(1)埋設処分

 埋設処分に係る評価経路を図1に示すとともに、その選定の考え方を表8に示す。クリアランスレベルを算出する対象となる評価経路は、網羅的に選定された125経路のうち、27経路とした。

(2)再利用・再使用

 再利用・再使用に係る評価経路を図2に示すとともに、その選定の考え方を表9に示す。クリアランスレベルを算出する対象となる評価経路は、網羅的に選定された78経路のうち、28経路とした。また、放射化物のクリアランスレベルの算出に係る再使用の評価経路については、真空ポンプ、電源、ケーブルを再使用される対象物とすることとした。

(3)焼却処理

 放射線障害防止法で規定するクリアランスレベルの算出では、原子炉等規制法で採用されている埋設処分、再利用・再使用に係る評価経路に加えて、新たにRI汚染物の焼却処理に係る評価経路について検討を行うため、RI汚染物の焼却処理に係る評価経路について検討をおこなった。その結果を図3に示すとともに、その選定の考え方を表10に示す。クリアランスレベルを算出する対象となる評価経路は、網羅的に選定された73経路のうち、31経路とした。
 ただし、可燃性のRI汚染物については、汚染物等を収納する容器において核種の混在、放射線源の局在化、内容物の材質の不均一により、クリアランスレベル以下であることの検認の判断において、測定方法の開発、管理体制の確立等に課題があることから、可燃性のRI汚染物がそれぞれの事業所で焼却処理されることを想定し、その後の焼却灰をクリアランスの対象として検認を行うことも念頭においた検討を行うこととする。

4.3 クリアランスレベルの算出に用いる計算モデルの考え方

 RI汚染物及び放射化物の埋設処分及び再利用・再使用の評価経路に係るクリアランスレベルの算出に用いる計算モデルは、原子炉クリアランス報告書におけるクリアランスレベルの算出に使用された計算モデルに係る被ばく線量評価式を用いることを基本とし、さらに、再評価報告書において変更のうえ使用された被ばく線量評価式を用いるとともに、追加された被ばく形態も考慮してクリアランスレベルの算出を行う。今回、埋設処分の評価経路に係るクリアランスレベルの算出に用いる被ばく線量評価式を資料第29-4号添付資料1に示し、再利用・再使用の評価経路に係るクリアランスレベルの算出に用いる被ばく線量評価式を資料第29-4号添付資料2に示す。
 また、今回新たに検討を行ったRI汚染物の焼却処理の評価経路に係るクリアランスレベルの算出に用いる被ばく線量評価式を資料第29-4添付資料3に示す。焼却処理の評価経路に係るクリアランスレベルの算出に用いる計算モデルは、上述の埋設処分及び再利用・再使用の計算モデルに係る被ばく線量評価式を参考にするとともに、原子炉クリアランス報告書及び再評価報告書では検討されていない焼却処理及び溶融固化処理に係る被ばく線量評価式を新たに設定した。

4.4 クリアランスレベルの算出に用いる評価パラメータについて

 放射線障害防止法に規定するクリアランスレベルの算出に用いる評価パラメータは、原子力安全委員会がとりまとめた原子炉クリアランス報告書における評価パラメータの選定の基本的考え方、「評価パラメータは、現実的に起こりえると想定されるシナリオを対象とすることとし、社会環境、日常生活の態様等を考慮して標準的である人を対象として現実的と考えられる値を評価パラメータとして選定することとした。」に基づき選定した。また、今回のクリアランスレベルの算出においても基本的には、原子炉クリアランス報告書及び再評価報告書等で使用された評価パラメータを用いており、
 ○埋設処分の評価経路に係る核種に依存しないパラメータを資料第29-4号添付資料4
 ○再利用・再使用の評価経路に係る核種に依存しない評価パラメータを資料第29-4号添付資料5
 ○元素依存の評価パラメータを資料第29-4号添付資料6
 ○核種依存の評価パラメータを資料第29-4号添付資料7
に示す。ただし、これらのパラメータの中で、クリアランス対象物の物量に係る評価パラメータについては、今回のRI汚染物や放射化物に係るデータをもとに新たに設定した。また、焼却処理に係る評価パラメータは、核種に依存しないパラメータ、核種に依存するパラメータ及び元素に依存するパラメータについては、今回新たに設定した評価パラメータが多く、それらを資料第29-4号添付資料8及び資料第29-4添付資料9に示す。
 なお、クリアランスレベルの算出に用いる評価パラメータについては、クリアランスWGにおいて、最新の知見を考慮した新たな評価パラメータに係る調査を行うよう指摘があったことを踏まえ、現在評価パラメータの再調査をしており、それらの調査結果を踏まえて、報告書にとりまとめるクリアランスレベルの算出を行うこととしている。

4.5 クリアランスレベルの算出結果及び国際的なクリアランスレベルとの比較

 上述の評価経路、計算モデル及び評価パラメータに係る検討結果を踏まえて行った大規模及び小規模の放射線発生装置使用施設の解体等に伴い発生する放射化物の埋設処分、再使用・再利用に係るクリアランスレベルの算出の結果のうち、既にクリアランスWGで検討を行った結果について表11及び表12に示す。ただし、小規模の放射線発生装置使用施設では、Ti-44及びAu-195の核種を含んだ放射化物が発生しないことから、これらの核種についての算出結果を含めないこととした。
 大規模施設に係るクリアランスレベルと小規模施設に係るクリアランスレベルの算出結果を比較したところ、選定した全ての核種において、大規模施設に係るクリアランスレベルが小規模施設に係るクリアランスレベルに対して保守的であることを確認した。
 また、算出したクリアランスレベルについては、RS-G-1.7に示された大量の個体状物質に対する規制除外、規制免除及びクリアランスを判断するための放射能濃度基準の算出根拠を示したIAEA-SRS-No.44で示されている値との比較を行ったところ、大規模の放射線発生装置使用施設から発生する放射化物を対象として算出した全ての放射性核種のクリアランスレベルは、比率が0.1から10の範囲に入った。一方で、小規模の放射線発生装置使用施設から発生する放射化物を対象として算出した放射性核種のクリアランスレベルは、比率が10を超える核種があった。今後、IAEA-SRS-No.44との比較結果について、考察を行うことを考えている。

5.まとめ

 クリアランスWGでは、これまでに、原子力安全委員会がとりまとめた原子炉クリアランス報告書及び再評価報告書を参考に、放射線障害防止法に規定するクリアランスレベルの算出に係る検討を行い、現実的起こりえると想定されるシナリオを対象として、現実的と考えられる値を評価パラメータとして選定し、RI汚染物及び放射化物をクリアランスした後に埋設処分、再利用・再使用、焼却処理する場合を考慮したクリアランスレベルの算出を行ってきた。現在、クリアランスWGにおける評価パラメータ、特に今回新たに評価経路として導入したRI汚染物の焼却処理に係るパラメータについて新知見を反映する必要性等について指摘を受けたため、再調査を行い、これを踏まえたRI汚染物に係るクリアランスレベルの算出を進めていることから、本日、RI汚染物に係るクリアランスレベルの紹介には至らなかったが、次回のクリアランスWGでRI汚染物に係るクリアランスレベルの算出結果について検討を行ったうえで、報告書(案)をとりまとめ、次回の放射線安全規制検討会で報告する。

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科学技術・学術政策局原子力安全課放射線規制室

(科学技術・学術政策局原子力安全課放射線規制室)