資料第27-4号:クリアランス判断方法の検討に関する基本方針(案)

平成21年6月22日
放射線規制室

 放射線安全規制検討会では、クリアランス判断方法に係ることとして、次の事項についてクリアランスWGを中心とした検討を行い、「放射線障害防止法におけるクリアランス制度の整備に係る技術的検討について(中間報告書)」(平成18年6月。以下、「平成18年度中間報告書」という。)をまとめている。
 1)放射線発生装置の解体等に伴って発生するRI汚染物に対するクリアランスレベル以下であることの測定・判断方法
 2)短半減期核種のみによって汚染されたRI汚染物に対する減衰保管廃棄の考え方
 今回、放射線障害防止法にクリアランス制度を導入するにあたって、クリアランス判断を実際に行うことが可能と考えられる当面の対象物を整理して、具体化を進める必要があり、判断方法に係る検討の基本方針を次のとおりとする。なお、放射線障害防止法におけるクリアランス制度の基本的概念としては対象物を限定的とはしないこととする。
 ところで、クリアランス判断にあたっては、当該事業者は、事前評価による対象物の分類、クリアランスレベル以下であることの判断、クリアランスレベル以下と判断した物への異物や汚染の混入を防止するための厳格な保管・管理、判断の妥当性を示す根拠の記録やその保存等を適切に行うとともに、これらが一連の業務として高い信頼性をもって機能するための管理体制(品質保証体制)を確立することが必要となると考えられる。その管理体制に関する検討の基本的考え方を別添に示す。

1.放射線発生装置の解体等に伴って発生するRI汚染物

 平成18年度中間報告書に示された課題等に基づき、次のように検討する。

(1)検討内容
 1)合理的なクリアランスの判断を行うため、まず放射化物の生成範囲に着目した放射線発生装置の分類を行う。
 2)放射化の程度が小さい装置(医療用電子直線加速器等)について、装置及び施設構造物が放射化していないことやクリアランス適用可能であることが明らかであると判断できる技術基準の成立性を評価する。なお、技術基準の成立性は、個別の評価(特に実測)を伴わずに装置や施設の仕様に基づき一括して判断可能かどうか等を検討する。
 3)2)の対象とならない比較的放射化の程度が大きい装置については、施設毎に放射化状況が異なるため、クリアランス判断が必要とされる際に個別に評価されるものと考えられるが、必要に応じて汎用性のある事前評価から測定・判断に至るまでの方法の標準化等の検討を行う。

(2)検討の進め方
 1),2):当面の検討対象とし、技術的事項であることからクリアランスWGにおいて検討を進める。本年12月頃までに法改正作業に資するためのとりまとめを行い、さらに平成22年11月頃までに省令・告示等整備に資するためのとりまとめを行う。
 3)   :高エネルギー加速器研究機構等の比較的大きな加速器施設における解体計画の具体化等により、事業者からデータ提供を受けられる状況となることを前提として、必要に応じて技術的検討を行う。

2.放射性同位元素の使用等に伴って発生するRI汚染物
2.1 短半減期核種のみによって汚染されたRI汚染物の減衰保管廃棄
 平成18年度中間報告書において減衰保管廃棄の技術的な成立性を確認しており、ニーズ調査の結果を踏まえて実際に制度化するための検討を次のとおり行う。

(1)検討内容
 1) 減衰保管廃棄
 平成18年度中間報告書に示された減衰保管廃棄の考え方について、次の点に着目してより具体的な検討を進める。
 ・  対象核種の半減期、最大使用数量、必要な減衰期間
 ・  短半減期核種のみによって汚染された廃棄物とする要件
 ・  長半減期核種等との混在可能性に応じた管理体制(品質保証体制)
 ・  減衰保管廃棄と「陽電子断層撮影に伴い発生する半減期の極めて短いRI汚染物を、一定期間減衰させることにより放射能を消滅させる制度(以下、区別を容易にするため「減衰消滅制度」と仮称する。)の整合性確保及び両制度の選択肢の提供

 2) 減衰消滅制度
 短半減期核種のみの使用許可等、長半減期核種と混在しないことが明らかなRI汚染物については、1)に示す減衰保管廃棄の検討を踏まえながら、平成16年3月に省令等に規定した「減衰消滅制度」の適用も考慮することとし、次のことを検討する
 ・陽電子断層撮影以外で発生するRI汚染物への適用核種の拡大
 ・適用核種を拡大した場合の保管期間や判断のあり方

(2)検討の進め方
 当面の検討対象とし、技術的事項であることからクリアランスWGにおいて検討する。本年12月頃までに法改正作業に資するためのとりまとめを行い、さらに平成22年11月頃までに省令・告示等整備に資するためのとりまとめを行う。

2.2 減衰保管廃棄以外の方法によるクリアランス判断
 クリアランス制度は適用可能であるが、測定が困難な核種が含まれる場合、現実的な判断方法の現時点での確立は難しいと考えられることから、2.1の検討を優先しながら、適用可能な判断方法(例えば、RI汚染物を発生する施設の種別分類等に基づき放射性核種間の相関関係を得て代表核種の測定により放射能濃度を決定する方法等)について適宜検討を進める。

別添

クリアランス判断に係る管理体制に関する検討の基本的考え方

1.原子炉等規制法での状況
 原子炉等規制法下でクリアランスを実施する事業者は、工業標準化法に基づく「JIS Q9001(2000,2008) 品質マネジメントシステム-要求事項」及び「JEAC4111-2003,2009 原子力発電所における安全のための品質保証規程」等を参考にして、管理体制としてクリアランス判断の一連の業務に係る品質マネジメントシステムを確立している。それらは、文書化されたうえで、実施され、かつ維持されるとともに、その品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善することで、一連の業務に関する事業者としての説明責任を果たし信頼性を確保している。想定されている品質マネジメント項目の例を次に示す。

(1)クリアランス判断の責任者
 クリアランス判断及び対象物の取扱いに関する業務を統一的に管理する者の責任と義務

(2)教育・訓練
 クリアランス判断及び対象物の取扱いに関する業務に必要な知識・技術に関する定期的な教育・訓練等

(3)放射線測定装置の点検・校正
 各種放射線測定装置の点検・校正

(4)誤差の取扱い
 測定値や放射化計算に伴う誤差要因、放射性核種の濃度の決定に伴う保守的な設定の妥当性

(5)保管・管理
 解体工事、運搬、保管の際の異物や汚染の混入等の防止

(6)記録
 クリアランス判断の妥当性を示す根拠に関する記録や保存

2.放射線障害防止法における検討の考え方
 放射線障害防止法における他の規定との整合に十分配慮し、原子炉等規制法におけるクリアランス判断における実施例等も参考にしながら、クリアランスWGにおけるクリアランス判断に係る検討のなかで管理体制(品質保証体制)に関する基本的な整理を行うこととしたい。検討の際には、極めて小さい放射化しか生じない放射線発生装置使用施設が多数存在することや短半減期核種の減衰保管廃棄における長半減期核種との混在可能性等を考慮して施設状況に応じた適切な管理体制のあり方を考える必要がある。

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科学技術・学術政策局 原子力安全課 放射線規制室

(科学技術・学術政策局 原子力安全課 放射線規制室)