平成21年4月21日
放射線規制室
放射線安全規制検討会では、平成16年10月から放射線障害防止法へのクリアランス制度の導入に向けた検討を開始し基礎的な調査を行ってきた。その後、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下、「原子炉等規制法」という。)へクリアランス制度が導入されたことを受け、より具体的な検討を進めるためクリアランス制度化に係る技術的な検討の充実を図る目的から、平成17年8月に放射線安全規制検討会の下にクリアランスWGを設置した。放射線安全規制検討会では「クリアランス制度の枠組みに係る事項」、クリアランスWGでは「クリアランス制度化に係る技術的事項」を取り扱うこととして、表1のとおり各項目を区分して検討を進め、平成18年6月に平成18年度中間報告書をとりまとめている。
今回、法改正に向けた検討を開始するにあたり、各項目を次のように整理し、これまでの検討状況及び今後の検討方針をそれぞれ示す。
クリアランス制度の概念については、平成18年度中間報告書までに別添1のとおり整理されている。
今後は、概念を改めて検討することはしないが、実際に適用する判断方法等の具体的な内容について、それぞれの項目において検討する。
検討対象物の範囲については、平成18年度中間報告書までの検討では、制度上の枠組みにおいてクリアランス対象物をあらかじめ制限することはしないが、当面、クリアランス適用が技術的に可能なものとして、次のものを対象として判断方法等の技術的事項について検討している。なお、放射性同位元素によって汚染された物と放射線発生装置の使用に伴い生じた放射線を放出する同位元素によって汚染された物を、以下「RI汚染物」という。
(1)放射線発生装置の解体等に伴って発生するRI汚染物
(2)短半減期核種の使用に伴って発生するRI汚染物(平成18年度中間報告書では、具体的な検討を行うために半減期90日未満の核種を短半減期核種と仮に区分している)
今回の検討にあたっても、法制度上は、固体状のRI汚染物に対するクリアランス適用について、対象物に関する制限を設けない方針としたい。但し、現在の状況を踏まえて実際にクリアランス適用が可能な物について整理を行い、整理したRI汚染物の種類に応じて順次、その判断方法の確立を図っていくこととする(資料第25-5号参照)。
クリアランスを実施する者の要件については、平成18年度中間報告書までの検討では、クリアランスレベル以下であることの判断方法を定めるために必要な技術的能力、高価な測定装置の準備、判断のための品質保証体制の確立等の満足すべき要件の整理を行っている。
クリアランス判断に係る業務は、第1種放射線取扱主任者の監督の下で行われることになり、判断方法の認可時には、原子炉等規制法と同様に品質保証に関する確認を行うことを省令に規定する方針であり、クリアランス判断に必要とされる技術的要件等は確認できる。したがって、クリアランスを実施する者について、制度上、事業者を限定的とする必要はないと考えている。なお、事業者に求める具体的な品質保証の内容は、5.に示す制度設計において検討することとする。
放射線障害防止法に規定するクリアランスレベルについては、平成18年度中間報告書までは、原子力安全委員会における検討結果を踏まえて、原子炉等規制法、国際原子力機関(IAEA)安全シリーズNo.115「電離放射線に対する防護と放射線源の安全のための国際基本安全基準」(1996年。以下、「BSS」という。)に示された値との整合等を考慮しながら、制度化するクリアランスレベルについて検討することとしていた。
今後は、次の基本方針の下で、法制度に取り入れるためのクリアランスレベルの検討を進めたい。
(1)文部科学省において、関係機関の協力を得て新たに導出する。
(2)導出にあたっては、原子炉施設と異なるRI汚染物の特徴・実態や将来の クリアランス適用可能性等を考慮して、評価対象物及び評価シナリオとも網羅的に設定することとする。
・評価対象物については、医療関係法令によって規制された施設におけるRI汚染物や現状では実際にクリアランス判断が困難であることが予想される短半減期核種以外の核種を含むRI汚染物も考慮する。また、原子炉施設において対象としていない可燃物等も考慮する。
・評価シナリオについては、可燃物の焼却シナリオ等も考慮し、再生利用・再使用及び処分を幅広く含める。
(3)導出した値について、原子炉等規制法、IAEA安全指針RS-G-1.7「規制除外、規制免除及びクリアランス概念の適用」(2004年)、BSS等に示された値と比較しながら、放射線障害防止法に基準化すべきクリアランスレベルを決定する。
(4)上記方針に基づき、クリアランスレベルの具体的な検討をクリアランスWGにおいて行う。本年12月頃を目標としてまず試算値をとりまとめ、さらに平成22年11月頃までに省令・告示等整備に資するためのとりまとめを行う。
クリアランス制度設計については、その前提としてクリアランスWGにおいて技術的事項の検討を進め、平成18年度中間報告書をとりまとめてきたところである。
今回のクリアランス制度導入に係る制度設計の基本方針として、次のような方針を考えている(資料第25-4号参照)。
(1)原子炉等規制法に準じたクリアランス制度の導入
(2)陽電子断層撮影に伴い発生する半減期の極めて短いRI汚染物を、RI汚染物でないとする制度とクリアランス制度の併用 (3)放射化物に対する安全規制の導入
(4)廃止措置計画の届出化 等
この基本方針に基づき、放射線障害防止法改正の準備を進め、さらに政省令・告示等に定めるべき事項に関する具体的な検討を、クリアランスWGにおける技術的検討と併行しながら進めることとしたい。
クリアランス判断方法等の技術的事項については、5.に示すようにクリアランスWGにおいて検討を進め、平成18年度中間報告書をとりまとめている。平成18年度中間報告書における主な検討事項は、次のとおりであり、その具体的な内容は別添2のとおりである。
(1)放射線発生装置の解体等に伴って発生するRI汚染物に対するクリアランスレベル以下であることの測定・判断方法
(2)短半減期核種のみによって汚染されたRI汚染物のクリアランス制度における減衰保管廃棄の考え方
平成18年度中間報告書を踏まえて、現在までにクリアランス判断方法等の技術的事項については、次のような検討を行っている。なお、今後のクリアランス制度導入に向けた具体的な検討にあたり、判断方法等の技術的事項に関する方針は、資料第25-5号のとおりである。
(1)放射線発生装置の解体等に伴って発生するRI汚染物
平成18年度中間報告書では、今後の課題として放射化していない箇所と区別することにより合理的なクリアランス判断を行うため、まず放射化物の生成範囲に着目した放射線発生装置の分類を行うことが必要であるとしている。そのうえで、原子炉施設における判断方法をそのまま適用することが難しい装置について、必要に応じて汎用性のある事前評価から測定・判断に至るまでの方法の標準化等の検討を進めるとしている。
そこで、文部科学省では、関係事業者の協力を得ながら、放射化の程度が低い装置を主な対象として放射化状況の調査を進めており、特に国内設置台数の多い医療用電子直線加速器の施設構造物の放射化の有無等について確認しているところである。
(2)放射性同位元素の使用等に伴って発生するRI汚染物
平成18年度中間報告書では、短半減期核種のみによって汚染されたRI汚染物のクリアランス制度における減衰保管廃棄については、技術的成立性はあるものの、事業者のニーズを確認し、制度としての成立性を含めた検討が必要であるとされた。そこで、非密封放射性同位元素の使用者等を対象としたクリアランス制度に関するニーズ調査を行った。ニーズ調査の要点は、次のとおり。
・ 対象者:放射線障害防止法下の非密封放射性同位元素の使用者及び廃棄業者
・ 実施時期:平成20年12月~平成21年2月
・ 回答者数:866/902[96%](使用者855/891[96%]、廃棄業者11/11[100%])
・ 回答者の使用等区分:
短半減期核種と長半減期核種の両方:69%
短半減期核種のみ:20%
長半減期核種のみ:6%
未回答:
5%
・ 短半減期核種のみによって汚染されたRI汚染物のクリアランス制度における減衰保管廃棄については、平成18年度中間報告書に則り、長半減期核種の混入防止措置等において高い信頼性を持った品質保証がハード及びソフト両面において求められることを前提としたうえで、ニーズを確認した。その結果、短半減期核種と長半減期核種の両方の使用許可を受けている事業者が多いなか、減衰保管廃棄の適用に前向きな回答が約50%であった。
・ 長半減期核種について、個々の事業者自ら測定・判断を行い、クリアランス制度を適用することは、現段階では約80%の事業者が困難と回答した。
(第18回放射線安全規制検討会資料18-4-1 別添2より引用)
放射線安全規制検討会 |
クリアランスWG |
クリアランス制度の枠組みに係る事項 |
クリアランス制度に必要な技術的検討事項 |
a. クリアランス制度の概念の整理 |
g. 検認に係る技術的要件について
|
(※) クリアランスレベルは、原子力安全委員会が検討予定。
科学技術・学術政策局 原子力安全課 放射線規制室