資料7-3 国際基本安全基準(BSS)規制免除レベルの法令への取入れについて中間報告書要約版(案)

(括弧)内は検討会での資料番号

第1章   国際基本安全基準免除レベルの法令への取入れ

1.1 国際基本安全基準免除レベル取り入れの基本方針

1.1.1 国際基本安全基準免除レベルの概要 (1‐5)

・ 国際基本安全基準免除レベルは、通常時では実効線量を年間10μSv、事故時では実効線量を年間1mSvとする線量基準を定めた上で、核種毎の違いや一定の被ばくシナリオに基づく被ばく計算により設定された規制を免除する核種毎の放射能(Bq)、放射能濃度(Bq/g)の具体的数値基準である。

1.1.2 国際基本安全基準免除レベルの法令取入れの目的、必要性 (2‐5)

・ 国際基本安全基準(BSS)に示されている免除レベルは、国際機関により科学的根拠に基づいて設定されたものであり、核種の特性を反映して、個々に計算されたものである。
・ BSS免除レベルを取り入れることより、我が国の放射性同位元素に対する安全規制の体系がより科学的かつ合理的なものとなり、放射性同位元素の貿易や国際輸送の円滑化、安全性の向上が図られることから、世界共通の基準を取り入れることが必要である。

1.1.3 核種の取上げ方(核種数) (2‐6)

(放射線障害防止法における現状)
・ 現行法の放射性物質の定義数量は、

非密封: 核種を4群に分類 3.7KBq~3.7MBq
密   封: 核種に関わらず一律 3.7MBq である。

なお濃度については、密封、非密封に関わらず、一律74Bq/g(自然に存在する放射性物質で固体状のものについては370Bq/g)とされている。

 (国際的に免除レベルが検討された核種)
・ IAEAのBSSは295核種、英国放射線防護庁(NRPB)は765核種について、免除レベルを定めており、放射線審議会基本部会は国内法令への取入れについて、両者ともに妥当であるとの結論を出している。

(国内法令取入れの核種の取上げ方)
・ NRPBの免除レベルの765核種には、我が国で利用されている主要核種の全てが含まれており、今回の法令取入れにあたっては、NRPBの765核種を採用することが適当であると考えられる。

1.2 密封線源の規制の現状と国際基本安全基準免除レベル取入れ後の規制

1.2.1 規制の現状  (4‐2)(4‐3)

(密封線源の利用例)
・ 規制対象事業所数は、約4,000事業所である。  

(現行の安全規制の内容)
・ 密封線源は、数量については、核種に関わらず一律3.7MBqを超え、3.7GBq以下のものの使用については届出、3.7GBqを超えるものの使用については許可を要するものとしている。
・ 表示付放射性同位元素装備機器については、測定や主任者の選任等について規制緩和されている。
・ 特に密封であることを考慮したものとして、使用施設について自動表示灯及びインターロックの設置、貯蔵施設における耐火性容器での貯蔵などが定められている。

1.2.2 国際基本安全基準免除レベル取入れ後の基本的枠組み (4‐2)

(密封線源の規制対象範囲)
 ・ 今回のBSS免除レベルの取入れにより、密封線源、放射性同位元素装備機器については、総体的に規制対象範囲が広がることになる。

(許可と届出の枠組み)
・ BSS免除レベルを導入した場合、放射性同位元素の使用等の安全確保のために、基本的には現行規制のとおり、

1.施設規制
2.行為規制
3.廃止等規制

の3つの種類の規制が必要である。

・ 各核種のBSS免除レベルの一定倍数(1000倍)を許可と届出の区別のレベルとすることが適当であると考えられる。

1.2.3 許可の規制

・ 許可の規制については、現行規制と変わらず施設規制、行為規制及び廃止等規制を厳格に適用することが必要である。
・ 事業所によっては、現行法令と同様に施設建設時及び変更時の施設検査や、定期的に施設等が健全な状況であることを確認する定期検査が必要であり、施設検査と定期検査の規制を課す区別のレベルについては、別途検討が必要である。(第7回検討会の議論を踏まえて記入)  

1.2.4 届出の規制

(新届出)
・ 施設規制や行為規制の合理化を適宜図りつつ、廃止等規制と合わせて一般の使用の届出(以下「新届出」という。)として規制することが適当であると考えられる。

(設計承認)
・ 線源を組み込んだ装備機器としてその外部への放射線の漏えいがほとんどなく、通常の使用状況では、特別の放射線防護の対応が必要でないものについては、設計上の安全性が十分確認できるものに限り、施設規制と行為規制を新届出よりも適宜合理化した規制とすることが適当であると考えられる。

(型式承認)
・ Am‐241を組み込んだイオン化式煙感知器等の機器(一般消費装備機器)については、製造者の行う設計等について、申請により安全性が確認できれば、居住者、船舶の所有者等の使用者に対して施設規制や行為規制を課すことは必要とは考えられず、製造者に対して廃止の際の要件等の確保を求めておくことによって安全確保上は対応可能であると考えられる。

1.2.5 全般的事項

・ 国際基本安全基準免除レベル以下の線源は、貯蔵能力に加算しない。
・ 設計承認機器及び一般消費装備機器(煙感知器等)の線源は、貯蔵能力に加算しない。
・ 新届出対象の線源は、貯蔵能力に加算する。
・ 新たな規制区分の構築に当たり、「密封された放射性同位元素の定義」や「密封性の担保に係る一般的な基準」について、的確な定義がなされるようにすることが必要である。

1.3 非密封線源の規制の現状と国際基本安全基準免除レベル取入れ後の規制

1.3.1 規制の現状  (2‐7)

(非密封線源の利用例)
・ 規制対象事業所数は、約900事業所である。

(現行の安全規制の内容)
・ 定義数量(免除レベル)は4群に分かれており、それを超える場合のの使用等については許可の対象としている。
・ 規制の対象となる複数核種を使用する事業所は、使用する全ての核種の数量の免除レベルに対する割合の和が1を超える場合である。
・ 使用施設等に汚染検査室、貯蔵施設、排気排水設備等の要求事項がある。

1.3.2 国際基本安全基準免除レベル取入れ後の基本的枠組み (2‐7)

(国際基本安全基準免除レベルの取入れ方針)
・ 数量、濃度ともにBSS免除レベルを導入する。
・ 定義数量(免除レベル)を超える場合の使用等については許可の対象とする。
・ 許認可の必要性、施設検査や定期検査の適用等の現行の規制の仕組みは、基本的には変更する必要はない。
・ 施設検査、定期検査を適用する数量のレベルについては、核種毎の免除レベルの一定の倍数のレベルとする。

第2章   国際基本安全基準免除レベル取入れに関連する事項 2.1 主任者制度

2.1.1 現状  (4‐4)

・ 放射線取扱主任者には、第1種放射線取扱主任者と第2種放射線取扱主任者(一般)とがあり、取り扱う放射性同位元素等の形態、数量など放射線影響の可能性の程度を勘案して、選任の区分が法令上定められている。

2.1.2 国際基本安全基準免除レベル取入れに伴う放射線取扱主任者の選任のあり方

・ 新届出対象の密封線源のみを使用する事業所を対象とした第3種放射線取扱主任者を新設する。

2.1.3 医療機関における放射線取扱主任者の選任の取扱い

・ 従来までの医師等を無条件に放射線取扱主任者に選任できる制度を廃止し、第1種放射線取扱主任者免状の試験や講習のうち科目を限定して義務付ける(新設する第1種医療用主任者)。

2.1.4 新たな放射線取扱主任者制度の概要  

2.1.5 放射線取扱主任者の技術的能力の維持

・ 放射線取扱主任者の技術的能力の維持のため、施設の主任者の選任されている者に対し、一定期間毎の定期的な講習による再教育を義務づける。

2.2 放射線障害防止法に基づく検査 (4‐5)

2.2.1 事業所に対する検査の現状

・ 放射線障害防止法における事業所に対する検査には、国が直接行う立入検査(法第43条の2)、指定機関が行う施設検査(法第12条の8)及び同じく指定機関が行う定期検査(法第12条の9)がある。

2.2.2 新たな検査のあり方

・ 定期検査に放射線障害予防規定の遵守状況などの使用等にかかる遵守状況を検査するなどの行為基準に関連する検査を追加する。
・ 立入検査は、抜打ち検査や事故時の対応等に重点化する。

2.3 放射線発生装置の規制の現状と新たな管理のあり方

2.3.1 管理区域の一時的な設定、解除について  (4‐6)(6‐2)

・ 機器の点検時等に、電源を切り、運転を停止した状態でも管理区域を解除できないため工事作業者等は従事者登録が必要。
・ 安全性の確保(放射化による影響評価、誤動作による発生装置の入電の管理等)を条件に管理区域の解除、再設定を可能とする。
・ 許可申請の段階で具体的な解除、再設定の手順、責任者の明確化等について審査する。

2.3.2 使用開始時における放射線障害予防規定の届出と放射線取扱主任者の選任について

・ 施設検査前の調整運転時には、放射線障害予防規定がなく、放射線取扱主任者がいない状況があり得るが、指導で対処している。
・ 放射性同位元素又は放射線発生装置を使用(調整運転を含む)する前に放射線障害予防規定の届出と放射線取扱主任者の選任を行うよう法令に記述する。

2.3.3 放射化物  (6‐2)

(放射化物の現状)
・ 現行の法令では、放射線発生装置の使用により副次的に発生する放射化物については、明示的な規定がなされていない。

(放射化物の取扱いに係る課長通知について)
・ 放射化物については課長通知(平成10年10月30日)で安全な取扱い担保。

(今後の対応)
・ 放射化物を、「放射線発生装置の運転に伴い、加速粒子あるいは中性子などの二次放射線により、放射性に転換した元素及びこれを含む物質で、発生装置や遮へい等構造物から取り外され、発生装置使用室から持ち出されるもので、一定の基準値を超えるもの」と定義。
・ RIの製造や材料検査を目的として放射化したものは対象外とする。
・ 発生装置使用室以外に持ち出された放射化物について個別管理を行う。
・ 個数、線量、代表核種で管理する。
・ 穿孔、溶断、研磨等の汚染のおそれがある作業を行う場合、又は表面密度限度を超える場合には非密封線源に準じた規制をする。

2.4 移動使用の規制 (4‐3)

2.4.1 許可対象の密封線源の移動使用について

・ 現行法令では、使用の場所の一時的変更として、370GBq以下の密封線源を非破壊検査等に用いるときに限って、事前届出により認められている。
・ BSS免除レベル取入れのための法令改正においては、原則としてはこの制度を踏襲するが、以下の点を検討。

(1) 一時的な移動使用というのではなく、専ら移動使用に用いることを明示的に認めることや、移動使用を業とする事業者に対する合理的な規制のあり方を検討する。
(2) 技術の進歩等を勘案した新しい移動使用の使用目的の取入れを検討する。

2.4.2 届出対象の密封線源の移動使用について

・ 届出対象の密封線源の移動使用は、

(1) 新届出対象の密封線源の移動使用  
(2) 設計承認対象の密封線源の移動使用

に区分しそれぞれ合理的な規制を実施する。

2.5 その他の検討事項

2.5.1 医療分野における規制  (5‐5)

・ 医療用具、永久刺入線源、廃棄物等一部の医療分野における放射線利用については、RI法と医療法・薬事法による二重規制を受けている。
・ 現在PETはRI法で規制している。
・ 医療分野における放射線利用に対する規制は、厚生労働省と連携を取りつつ、以下の方針で取り組む。

1. 対応の可能性の高い部分から段階的に取り組む
2.二重規制の改善等に取り組む
3. 短半減期核種の固体廃棄物の取扱いに取り組む

2.5.2 放射性固体廃棄物の埋設処分 (6‐4)

(放射性同位元素を含む放射性固体廃棄物に係る現行の規制)
・ 施行規則第19条では、固体状の放射性同位元素等については、焼却炉において焼却するか、又は保管廃棄設備において、保管廃棄することとされている。
・ 廃棄業者は、他の事業者から収集した固体廃棄物を含めて、廃棄物貯蔵施設で貯蔵することまで認められているが、それらを最終的に埋設処分するところまでは現行の法令上は認められていない。

(放射性同位元素を含む放射性固体廃棄物の発生・保管の状況)
・ 放射線障害防止法及び医療関連法令の規制下の事業所において、放射性同位元素で汚染した試験管等のプラスチック又はガラス器具、ペーパータオル、排気フィルタ等や使用済みの放射性同位元素がRI廃棄物として発生している。

(RI・研究所等廃棄物の処分対策の現状)
・ 原研、核燃料サイクル開発機構及びRI協会は、(財)原子力研究バックエンド推進センター(RANDEC)との協力体制の下で、廃棄物の処分事業の具体化に向けた活動を行っている。

(RI・研究所等廃棄物埋設処分の安全性に係る検討の状況)
・ 現行法令にRI廃棄物の埋設処分に係る規定がないことから、今後、RI廃棄物及び二重規制廃棄物の埋設処分を行うに当たり、放射線障害防止法の整備が強く望まれている。

(今後の対応)
・ 原子炉等規制法と整合性を確保しながらRI廃棄物の埋設に関する適切な法整備を検討することが必要である。
・ RI廃棄物等の安全かつ合理的な規制のため、原子炉等規制法や医療法等との規制内容の整合化、適用除外や新法等を検討する。

第3章   国際基本安全基準免除レベル取入れに係るその他の共通検討事項

3.1 国以外の機関が実施する業務 (5‐3)

3.1.1 現状

・ 現行の放射線障害防止法では、法律関係業務の一部を国以外の機関で実施するため、指定法人の規定がある。具体的には、以下の業務が指定法人の業務となっている。

1.指定機構確認機関(法律第39条第1項)  
2. 指定検査機関(法律第41条の9第1項)  
3. 指定運搬物確認機関(法律第41条の10第1項)
4. 指定運搬方法確認機関(法律第41条の11第1項)(国土交通省所管)
5.指定試験機関(法律第41条の12第1項)
6. 指定講習機関(法律第41条の19第1項)

3.1.2 改正の方向

・ BSS免除レベルの取入れにより、規制対象となる機器数が大幅に増えるため、規制関係業務量の増大が見込まれる。国以外の機関の活用の検討が必要。
・ 新規: 規制代行業務(簡易な届出等を処理) 申請方法、申請書内容への指導、助言
・ 廃止: 機構確認

3.2 新規制の遡及 (5‐2)

3.2.1 新規制遡及の基本方針

・ 遡及適用する。  

3.2.2 遡及適用の進め方

・ 移行期間を十分にとり、その間に届出や許可申請等を促す。
・ 法律改正の趣旨、内容等を周知徹底するため、関連ホームページの拡充、関係団体への説明会等の実施。

お問合せ先

科学技術・学術政策局原子力安全課放射線規制室

担当:斉藤、溝田
電話番号:03‐6734‐4044
ファクシミリ番号:03‐6734‐4048
メールアドレス:genhosya@mext.go.jp

(科学技術・学術政策局原子力安全課放射線規制室)