資料6‐2 放射化物の扱いについて(案) (資料5‐4の改訂版)

1.現状

(1) 放射化物の現状

  現行の放射線障害防止法では、当初から使用等を予定する放射性同位元素と放射線発生装置、また放射性同位元素によって汚染されたものが規制対象になっており、放射線発生装置の使用により副次的に発生する放射化物については、明示的な規定がなされていない。
  国内の放射線発生装置の使用許可台数は、平成14年3月末で約1200台である(別紙1)(※下記参照)。そのうちの約7割は医療分野で使用されており、出力は比較的小さい。一方研究分野では出力の大きいものが多い。
  近年、放射線発生装置の性能の向上により、高エネルギーの放射線発生装置が使用されるようになり、その使用に伴い、機器等が放射化されるという問題が顕在化している。
  発生装置の構造体である鉄、銅、アルミニウム、ステンレス、並びに遮へい体であるコンクリート、鉄、鉛などが、放射化物として発生している。生成される代表的な核種は、アルミニウム材中のBe‐7、Na‐22、鉄材中のMn‐54、Fe‐55、Co‐56、コンクリート材中のH‐3、Na‐22などである(別紙2)(※下記参照)。放射化物には、表面密度4Bq/cm2、表面での線量率が3mSv/hを超えるものもある。
  通常発生する放射化物については、一部事業所において放射化した磁石、加速管等を点検し、再利用されている例もあるが、大部分は、放射線発生装置使用室内に保管されている。古い発生装置の解体によって発生した大量の放射化物についても、一部再利用されているものの、大部分は専用の使用施設を設置し保管されている状況である。   

(2)   法令上、放射化物が規定されていないことから、平成10年10月30日、当時の科学技術庁が、放射化物の取扱いについて、「放射線発生装置使用施設における放射化物の取扱いについて」(科学技術庁原子力安全局放射線安全課長通知)を取りまとめ、関係事業者に対して安全管理上の留意事項を周知、徹底している。この課長通知の概要は以下の通り。

1.適用範囲

  放射線発生装置使用施設において放射化した放射線発生装置等について適用する。核子当たりの最大加速エネルギーが2.5メガ電子ボルト未満のイオン加速器、最大加速エネルギーが6メガ電子ボルト未満の電子加速器等は放射化物がほとんど発生しないので対象外とする。

2.放射化物の定義

  放射線発生装置の使用に伴って、放射化させることを目的とせずに有意の放射能が認められるに至った放射線発生装置及び実験機器。(放射性同位元素の製造や材料検査を目的とした照射による放射化は、非密封線源としての規制を受けるので対象外)

3.放射化物の取扱い

  放射化物を以下の3つの区分に分け、管理する。

区分 表面の放射性同位元素の密度 表面から10cm離れた位置における1cm線量当量率 取扱いの要領
表面密度限度の10分の1以下 600nSv/時以下 運搬、廃棄、譲渡等についてはB,Cに準じた取扱い
表面密度限度の10分の1以下 600nSv/時を超える 穿孔、溶断等の加工を行う場合は非密封線源、それ以外は密封線源に準じた取扱い
表面密度限度の10分の1を超える
非密封線源に準じた取扱い
4.放射化物の使用

  放射化物の使用に当たって考慮すべき事項は以下の通り。

・定期的に放射化の状況を把握し、残留放射能による作業者の被ばく管理に十分配慮する。
・高度に放射化され、表面密度や線量率が高いものは、直接手で扱わず、遠隔操作装置などを用いて被ばく量の低減に努める。
・放射化物が管理区域からみだりに持ち出されないように、出入口等において持ち出す物のチェックを行う。
・放射化物に関する台帳を作成し、発生場所、測定日時、測定値等を記録すること。

5.放射化物の保管

  再使用するために一時的な保管をするに当たって考慮すべき事項は以下の通り。

管理区域内に専用の場所を確保し、注意事項等を掲示する。
過剰被ばくの危険がある放射化物を保管する場合は、遮へいを施すなどの対策をとる。
ターゲット部分など比放射能が高いものは、放射線障害防止法の保管の基準に準じて保管する。
電磁石など大型の物品を保管する場合は、専用の保管のための施設を設ける。施設は、廃棄施設の基準と同様であることが望ましい。

6.放射化物の運搬

  事業所内運搬、他事業所への運搬とも、放射線障害防止法の運搬の基準に従う。

7.放射化物の廃棄

  放射化物を廃棄する場合は、放射性同位元素によって汚染されたものとして放射線障害防止法の廃棄の基準に従う。

8.放射線障害予防規定

  放射化物の取扱い及びそれに付随する安全管理業務について、必要な事項を放射線障害予防規定に記載し、放射線業務従事者等に徹底を図ることが望まれる。

2.今後の対応

(1) 基本方針

  放射線発生装置使用施設における放射化物の取扱いについては、前述の通り、現在は、科学技術庁原子力安全局放射線安全課長通知に基づき、実態的に安全性は確保されていると考えられる。

  しかしながら、課長通知は、基本的に放射化物の安全な保管管理を求めるもので、放射化物の取扱いや使用についてまで安全確保のあり方を示しているものではなく、今回の法令改正の際に放射化物に係る安全確保について所要の法令整備を行うことが適当であると考えられる。

(2) 具体的な法令整備の内容案

  課長通知の内容を適宜見直し、次のような方向で具体的な法令整備の内容案を検討することが適当であると考えられる。。     

1. 放射化物の定義

(イ)
  放射化物として、「放射線発生装置の運転に伴い、加速粒子あるいは中性子などの二次放射線により、放射性に転換した元素及びこれを含む物質で、発生装置や遮へい等構造物から取り外され、発生装置使用室から持ち出されるもので、一定の基準値を超えるもの」と定義する。
  発生装置使用室は、元来、運転やそれに伴う放射化によって線量が高くなることを想定した場所であり、人が常時立ち入ることのない管理区域内の場所である。同室内にある放射化された物のうち、発生装置本体から取り外された物だけに着目して管理を求めるのは合理的でなく、放射線発生装置と一体のものとして同室の的確な管理(施錠管理や入退室管理)を求めることが適当であると考えられる。放射化された物は、大きさや重量が様々でその表面線量は通常、発生装置本体による場の線量に比べて小さいものである。

(ロ)
発生装置使用室から同室以外の管理区域へ持ち出された放射化された物のうち、表面汚染密度と線量があるレベルを超えるものを放射化物として個別管理を求めることとする。具体的には、装置から取り外された部品、消耗品、周辺構造物・遮へい材から取り外された他の装置、機器、壁、天井などの発生装置使用室から持ち出されたもののうち、表面の放射性同位元素の密度が管理区域の表面密度限度を超え、又は表面から一定の位置において一定の線量を超えたものを放射化物として、発生装置使用室以外の管理区域内で個別管理を行うことを求める。

(ハ)
放射化物を管理する上で、核種と放射能による定量的で厳密な管理は困難であるが、放射化物からの放射線の測定結果と、発生装置の種類、エネルギー、放射化物となるものの材料などに応じて、放射線障害防止の観点から重要な放射性核種、放射能を推定し、核種ごとの免除レベルを基準とした密封線源に準じた管理をする必要があると考えられる。このことから、各放射化物について、表面密度に加え、線量の測定結果に基づく主要核種及び放射能を把握し、その上でそれらの放射化物の個数を把握することにより管理することとする。(別紙3) (※下記参照)

(ニ)
なお、放射性同位元素の製造や材料検査を目的として放射化されたものについては、放射線源としての規制がかかるため、放射化物としての規制を課す必要はない。

2. 放射化物の取扱い、再使用

  定義された放射化物は、原則として、穿孔、溶断、研磨等の汚染のおそれがある作業を行う場合には非密封線源に準じた規制(放射化物作業室の設置等)、それ以外は密封線源に準じた規制とすることが適当である。また、表面密度限度を超える放射化物は非密封線源に準じた規制とする(ただし、表面汚染を除去すれば、密封線源に準じて扱うことは可能)。

3.放射化物の保管

  放射化物は、管理区域の設定等の観点から、発生装置の付近で使用や保管されているのが実態である。そのため、長期間保管する場合は、発生装置の管理区域内に放射化物貯蔵場所を設定するか、あるいは専用の放射化物貯蔵施設を設けて保管するのが適当である。

  また、汚染のおそれのある場合は、養生するなど汚染の広がらない措置を求める。

お問合せ先

科学技術・学術政策局原子力安全課放射線規制室

担当:斉藤、溝田
電話番号:03‐6734‐4044
ファクシミリ番号:03‐6734‐4048
メールアドレス:genhosya@mext.go.jp

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(科学技術・学術政策局原子力安全課放射線規制室)