資料4 放射線安全規制の現状

1.我が国の原子力安全規制等の法体系について

○ 我が国における原子力の安全の確保や平和利用のための規制は、基本的には原子炉等規制法と放射線障害防止法との二本立てで行われている。

我が国の原子力安全規制等の法体系について 図

2.放射線障害防止法による安全規制について

2‐1 放射線の利用形態について

 放射性同位元素等(放射性同位元素(RI)及び放射線発生装置)から発生する放射線は、医療、工業、農業、環境、生活等の分野で幅広く利用されている。

[医療分野](診断・治療)

・X線 X線透視、レントゲン撮影、X線CT検査
・テクネチウム‐99m
(モリブデン‐99) 血液の流れや臓器(肝臓、肺など)の診断(人体に投与)
・ヨウ素‐123、131 甲状腺の診断(人体に投与)
・ヨウ素‐125 採血した血液中の甲状腺刺激ホルモンの定量
・リン‐32等各種RI 新薬開発
・硫黄‐35 遺伝子工学におけるDNA塩基配列の解析
(農業分野等でも利用)
・コバルト‐60 人工臓器、医療用具(注射針等)、実験動物用飼料の滅菌
・コバルト‐60、セシウム‐137、
イリジウム‐192、直線加速装置
がん等の放射線治療

[工業分野](工業計測、放射線照射)

・イリジウム‐192非破壊検査(ジェットエンジンのタービン等の検査)
・セシウム‐137、クリプトン‐85 厚さ計(鉄板、紙、ゴム等の厚さ管理など)
・コバルト‐60、セシウム‐137液面計、レベル計(タンク内の原料の定量)
・アメリシウム‐241硫黄計(重油や石油製品中の硫黄含有量の測定)
・電子線 電線被服材の耐熱性向上、タイヤの成形加工

[農業分野](品種改良、病害虫防除)

・コバルト‐60 品種改良(イネ「レイメイ」、ダイズ「ライデン」)
・コバルト‐60 ウリミバエの根絶(サナギに照射し不妊化)
・コバルト‐60 食品照射(じゃがいもの発芽防止)

[環境分野](環境分析)

・ニッケル‐63 水中や大気中の微量有害物質(PCB、有機水銀など)の測定(ガスクロマトグラフィ)

[生活分野、その他]

・クリプトン‐85、プロメチウム‐147 蛍光灯のグロー放電管
・アメリシウム‐241 煙感知器
・炭素‐14 年代測定

2‐2.放射性同位元素等の規制の概要

放射線障害防止法は、作業従事者及び事業所外の一般公衆の放射線障害を防止するため、次のとおり規制を行っている。

放射性同位元素等の規制の概要

○放射線障害防止法の対象事業所数(平成14年3月末現在)

区分 使用事業所 販売事業所 賃貸事業所 廃棄事業所 合計
許可 届出 合計
事業所数 2,475 2,314 4,789 152 2 11 4,954

○上記使用事業所の内訳(平成14年3月末現在)

区分 教育機関 研究機関 医療機関 民間機関 その他 合計
事業所数 492 677 797 1,925 898 4,789

3.放射線障害防止法の施行状況

3‐1 放射性同位元素等取扱事業所の状況

(1) 放射性同位元素等取扱事業所数の推移 ・ 放射性同位元素等取扱事業所数は、平成14年3月31日現在、4,954であり、このうち、使用事業所は4,789、販売事業所は152、貸賃事業所は2、廃棄事業所は11となっている。

また、使用事業所のうち、許可事業所は2,474、届出事業所は2,315である。

(2) 機関別使用事業所数の推移 ・ 使用事業所について機関別にみると、平成14年3月31日現在、医療機関が797、研究機関が677、教育機関が492、民間機関が1,925、その他の機関(地方自治体の公害センター、保健所、水道局、公益法人等)が898となっている。(表2、図1)

(3) 使用事業所の地域分布 ・ 都道府県別では、使用事業所の多い順に、東京都418、大阪府356、神奈川県336、愛知県250、茨城県236、兵庫県219、千葉県212、静岡県195、北海道193、埼玉県192となっており、これらで総数の約55%を占めている。(表3)

表1 放射性同位元素等取扱事業所数の推移

表1  放射性同位元素等取扱事業所数の推移

表2 機関別使用事業所数の推移

表2  機関別使用事業所数の推移

図1 使用許可・届出事業所数の推移

図1  使用許可・届出事業所数の推移

表3 使用事業所の地域分布(都道府県別、機関別、許可・届出別)
(平成14年3月31日現在)

表3  使用事業所の地域分布(都道府県別、機関別、許可・届出別)

4.放射線管理の不備について

4‐1 事故の発生状況

 放射線障害防止法に基づき文部科学省(旧科学技術庁)あてに報告のあった放射性同位元素等に係る事故(いわゆる法令報告事故)については、同法が施行された昭和33年から平成14年度上半期(平成14年9月30日)までに131件発生している。
 事故の型別では、紛失61件、被ばく26件、汚染15件、その他29件であり、事業所別では、医療機関51件、民間企業34件、研究機関24件、教育機関25件、その他7件であった。(表4)

表4最近の事故の発生状況

(※平成14年9月30日現在)

平成
型別
平成
6年度

7年度

8年度

9年度

10年度

11年度

12年度

13年度
〃 ※
14年度

合計
紛失 1

1

  2 3 2   1 1 61
被ばく         2   1 1   26
汚染             3     15
その他           5 2 2   29
1 1 0 2 5 7 6 4 1 131
4‐2 事故事例(平成13年度及び14年度)

平成13年度及び14年度上半期(平成14年9月30日まで)に発表した法令報告 事故の概要は以下のとおり。

(平成14年9月30日現在)
発生年月日 態様 事業所名 概要
2001. 6.14
(発生)
その他 立命館大学理工学研究所
(滋賀県)
理工学部において、放射性の廃棄物を収納したステンレス缶を物理実験室(管理区域外)に保管していたことが判明。缶の内容物は、90Sr、137Cs汚染物等大小26点であった。平成6年に現キャンパスへ移転した際に管理区域外に保管されるようになった。
2001. 12.4
(判明)
紛失 大阪市立大学医学部
(大阪府)
医学部において、同大学に搬入された33Pを紛失していたことが判明。管理委託業者社員が搬入時に搬入数量を誤ったことが原因。紛失した33Pは、一般ゴミとして搬出され、市内のゴミ処理場で焼却処分されたものと推測される。(少量であったため、周辺住民等に対する影響はないと考えられる。)
2001. 12.21
(判明)
被ばく 国立大蔵病院
(東京都)
同院敷地内の新棟のリニアックCT室において、東芝メディカル(株)が納入した医療用放射線発生装置据付調整中、天井裏に作業員が入っていることに気付かず放射線の照射テストを行ったため、作業員が被ばくした。放医研の線量測定により、最大でも200mSvと評価された。なお、被ばくした作業員には、特段の症状は見られなかった。また、同院の病院長等は、平成14年4月、RI法違反(使用の基準等)の容疑で書類送検された。
2002. 3.7
(判明)
その他 愛知医科大学
(愛知県)
医学部付属動物実験センター(管理区域外)において、研究用のトリチウムのバイアル1本を発見。また、当省の指示を受けて全学の調査を行ったところ、研究棟の実験室(管理区域外)にも同様のトリチウムのバイアル2本を発見した。後者については、昭和50年代に同大学の職員が管理区域から持ち出して使用していたことが判明。
2002.5. 28
(判明)
紛失 国立札幌病院
(北海道)
平成14年1月に購入した192Ir線源30本を廃止することとし、RI協会が5月24日に引き取ったところ、20mmシンワイヤー1本が紛失していることが判明。調査の結果、管理区域内外での汚染はなかったが、線源は発見できなかった。

お問合せ先

科学技術・学術政策局原子力安全課放射線規制室

担当:斉藤、溝田
電話番号:03‐6734‐4044
ファクシミリ番号:03‐6734‐4048
メールアドレス:genhosya@mext.go.jp

(科学技術・学術政策局原子力安全課放射線規制室)