著作権分科会 過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会(第10回)議事録・配付資料

1.日時

平成19年11月26日(月曜日)10時〜12時5分

2.場所

三田共用会議所 3階 大会議室

3.出席者

(委員)

上野、大渕、梶原、金、久保田、佐々木(隆)、椎名、渋谷、瀬尾、津田、常世田、都倉、中山、野原、野村、生野、三田の各委員

(文化庁)

吉田長官官房審議官,山下著作権課長 ほか関係者

4.議事次第

  1. 開会
  2. アーカイブ事業の円滑化方策について
  3. ワーキングチームの設置について
  4. 閉会

5.配付資料

資料1
  我が国におけるアーカイブ事業について
資料1参考 諸外国の国立国会図書館等におけるデジタルアーカイブへの対応
(第6回小委員会配付資料 資料2別紙1(PDF:204KB)(※(第6回)議事録・配付資料へリンク)別紙2(PDF:226KB)(※(第6回)議事録・配付資料へリンク)
資料2
  デジタル出版の現状とアーカイブについて(植村氏ご発表資料)
資料3
  NHKアーカイブスについて(PDF:651KB)
資料4
  レコードのアーカイブについて(PDF:732KB)
資料5
  図書館等における複製等に関する論点について
資料6
  ワーキングチームの設置について(案)
参考資料1
  第9回小委員会における主な意見
参考資料2
  第9回過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会議事録
(※(第9回)議事録・配付資料へリンク)

6.議事内容

【大渕主査】

 おはようございます。まだ若干お見えでない方もいらっしゃいますが、定刻となりましたので、ただいまから第10回過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会を開催いたします。本日も御多忙の中御出席いただきまして、まことにありがとうございます。
 本日の会議の公開につきましては、予定されております議事内容を参照いたしますと、特段非公開とする必要はないと思われますので、既に傍聴者の方々には御入場いただいているところですが、特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【大渕主査】

 それでは、本日の議事は公開ということで、傍聴者の方々にはそのまま傍聴いただくことといたします。
 まず、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

【著作権調査官】

 それでは、議事次第の下半分に配付資料一覧がございますので、そちらと見比べながら御確認をお願いいたします。
 本日は、資料1から資料6までの6点、それから参考資料1、参考資料2をお配りしております。なお、資料1と2の間に、資料1参考としまして第6回にお配りしました諸外国のデジタルアーカイブ関係の表がございますので、そちらも含めて欠落等あればあわせて御連絡いただければと思います。

【大渕主査】

 よろしいでしょうか。それでは、議事に入りたいと思います。
 本日は、前回に引き続きまして、これまでの論点整理に基づいて、利用の円滑化方策について、具体的な制度について議論したいと思います。
 本日は、アーカイブ事業の円滑化方策について議論したいと思います。
 第6回の小委員会で、アーカイブ事業の円滑化方策について議論した際には、アーカイブというものにつきまして具体的イメージが必ずしもよくつかめない部分があったかと思います。特に、収集いたしましたコンテンツをどこまで公開するのかという点で、単に情報収集だけのアーカイブを想定する委員から、収集したコンテンツを広く一般から利用できるようにすることを想定する委員まで、相当幅があったように思います。
 そこで、本日は、このアーカイブの制度のあり方や公開の範囲について、まず何名かの委員からお考えを御発表いただいて、その後にこれを踏まえて議論したいと思っております。
 まず書籍分野のアーカイブについて、常世田委員に御発表いただきまして、次に電子出版の現状等について、本日は、東京電機大学出版局局長の植村八潮様にお越しいただきましたので、御発表いただきます。
 引き続きまして、放送関係で梶原委員に、レコード関係で生野委員にもそれぞれ御意見を発表していただければと思っております。
 それでは、まず常世田委員からお願いいたします。

【常世田委員】

 今、お話いただいたように、基本的には図書館と書籍についてのお話をさせていただきたいと思うのですが、現行の図書館は既に本だけではなく、音声媒体、映像媒体、それからその他の例えばおもちゃなどというような現物に近いもの、海外においては小動物を貸し出すとか、絵画も貸すというようなことまで、かなり広くなっておりますので、図書館ではもう少し広い著作物を提供するという前提でお話をさせていただきたいと思います。
 それから、図書館ということですが、そのほかに生涯学習施設としては、視聴覚センターですとか、博物館、美術館、それから最近では自治体もかなりアーカイブ機能を持つようになってきておりますので、この辺についても図書館と関連した業務が既に存在しておりますので、その辺も少し踏み込んだ形でお話しさせていただきたいと思います。
 まず、各施設は各分野の現行法に基づいて、アーカイブの機能を既に持っているわけでありまして、印刷媒体、音声映像媒体、一次資料、現物などを収集、保存、提供しているわけであります。
 先ほどのごあいさつにもありましたように、収集だけでは意味がないということが現在の生涯学習施設一般の考え方でありまして、提供を前提にするための収集だということになっているということでございます。
 さらに、地方自治体ですとか文書館においては、非公開のものや灰色文献までを収集しておりますので、必ずしも一般的な意味での著作物だけではない、そこまでの広がりを持っているということになっております。
 対象についても、単に文化的なものということだけではなくて、科学技術、医療薬学、社会関係一般など、いってみれば人類の諸活動の全域に及ぶものが対象になっていると考えざるを得ないだろうと考えております。
 ここで問題になるのは、今の活動は現行法でとりあえずそこそこ対応しているわけでありますけれども、諸外国と比較した場合、フェアユースの概念などはありませんし、公衆送信などもかなり諸外国と比べた場合は実施がされていないというような、格差といっていいのでしょうか、そういうものが存在するということがあります。
 そして最も問題になっているのは、デジタルアーカイブであろうと考えるわけであります。ここについて2つほど申し上げたいことがあります。
 1つは、諸外国、特に先進国においては、社会政策的にこのアーカイブについての制度を設けている国が増えてきていることです。以前国会図書館に対するヒアリングの際に、国会図書館から提出された資料1、資料2、主に諸外国の国立図書館におけるデジタルアーカイブへの対応とデジタル系の出版物に対する収集、対応状況についての一覧表ですが、これを見ていただくとおわかりいただけるように、フェアユースの概念で対応しているところもありますし、あるいは韓国のようにかなり積極的な制度改革を行っているところもあります。
 後ほど事務局の方から御説明があると聞いておりますけれども、資料5の中にも韓国の著作権の状況についてはかなり細かい御説明があります。
 ここが、我が国と大きく違っているところであって、文化教養というレベルではなくて、先ほどお話ししましたように特許ですとか、科学技術ですとか医療ですとか、あるいは経済理論ですとか、各種統計ですとか、そういう経済の発展、あるいは国際競争力の向上など、要するに国力の増強だけでなく、国家の安全保障の問題としてとらえて、社会政策的な観点から制度整備を行っているというところが大きな差として存在していると思います。
 もう1つは、デジタルの技術が発展し、基本的なデータの容量が増え、処理スピード、送信速度が向上し、そしてコストが安くなっていくということは、従来かなり規模の大きい施設でしかアーカイブが行われなかった、つまり物理的な本ですとか、物理的なものを大量に保存しなければアーカイブはできませんでしたが、それがデジタル化することによって、場所をとらない、コストもかからないということになりますと、個人や小規模な図書館、機関でもアーカイブが可能になるということになりますので、この辺りについての制度設計というものが必要になってくるわけです。個人が行うアーカイビングが役に立たないということがないわけでありまして、これは非常に国家の役に立つ、国の国力増強に役に立つということが当然出てくるわけで、それを社会政策的にどう位置づけるかということが必要になってくるのではないかと思っております。
 したがいまして、実施主体としては、これまでの公共機関、それから公益的な組織、それから営利企業、営利企業も営利そのものの部分で行う場合と営利企業が付属している研究機関、図書館というようなものを行うという場合があるかと思います。
 それから、今お話ししたような個人が行うということが当然起こってくるだろうと想定されます。
 それから、対象となる資料については、印刷物、音声媒体、それから映像、一次資料、実物、メモなど、そしてこれをデジタル化した生成物ということになると思います。
 レジュメの次のページを見てください。その組織、機関、あるいは個人が行う行為ということになるわけですが、これは現行法での今までどおりの資料の収集、閲覧、上映、実演、貸与、媒体変換、複製というものと、さらに公衆送信ということが必要になってくるかと思います。
 これは、先ほどお話しした社会政策的な制度整備ということにおいて、既に先進諸外国においては図書館や博物館、美術館、あるいはデータベースというようなコンテンツを所有しているところを横断的に組織化して、従来は、それぞれの施設に出向かなければ利用できなかったものをどこかの施設に出向きさえすれば、横断的にその他の施設のコンテンツも利用できるように制度的に法律をつくり、対応し始めておりますので、そうなると公衆送信は当然必要になってくるだろうということになると思います。
 それから、二次的利用としては、資料の一部を用いて目録を作成する、あるいはこれまで問題になっておりますけれども、障害者向けの障害を持った方が利用できるようなものにするための著作物の加工、翻案、複製というようなものが必要になってくるだろうと思うわけであります。
 これらのことが、図書館を始めとする生涯学習施設において、現行の法律にもとに、従来の資料形態、サービスの手法に基づいてさらに大規模に行う必要があるということと同時に、それらのものをデジタル化したものが今お話ししたような行為の対象になるということも同時に進行していくだろうと、また社会政策的に必要があるだろうと思うわけであります。
 社会政策上でどういう問題が起きてくるかということですが、これは今まで、特に国会図書館のデジタル化などのところでも取り上げられましたけれども、まず3つに、対象となる著作物の状態を分けて考える必要があるかなと思うわけであります。
 著作権保護期間を越えたもの、これは実は一応越えたものとは書きましたけれども、アーカイブを生成するときに問題になるのは、越えているか越えていないかという確認が困難だということでありまして、これも国会図書館で大変な状況という御報告があったわけであります。これについては、裁定制度のあり方をもっと簡便化するという必要が出てくるのかなと思います。
 それから、著作権保護期間内のものについても、権利者の所在が不明である。これはもう何回も議論になっているところでありますが、これについては早急に確認システムの構築をして、運営をしなければならないということと同時に、漏れるところについては、裁定制度で対応するしかないだろうと思います。
 もう1つは、不許諾についてですが、これについてはもちろん文芸作品のように非常に創造性の高いというか、そういうものについては例外にするという必要があろうかと思いますが、社会政策上必要なもの、たとえば公共的に必要性の高い科学技術ですとか、そういう論文ですとか、そういうものについては、ある程度、不許諾であっても、社会のために使えるという方策も探るべきではないかなと考えるわけであります。もちろんその場合は、権利者の経済的な損失は、公的に補償されることが前提になると思います。
 それから、次が将来作成されるもの、これから作成されるものについては、そもそもデジタルデータとして作成されることが多いわけでありまして、現在ではそれを印刷物としたものをさらに印刷物からデジタルに変換するというは非常に無駄な、効率の悪いことをしておりますので、もともとのデジタルデータからコンテンツを収集するというシステムがアーカイブ構築という視点からは検討する必要があると考えます。これが図書館関係者で議論したときに出てきたことであります。具体的にどうするかというのは、これから議論する必要があるかと思います。
 それから、当然のことながら、社会政策的にアーカイブを行い、利用を促進するということであっても、権利者の経済的な補償というものは必要でありますので、この社会政策的にアーカイブをつくり、それを利用する、国民が利用する、それによって国が発達する、社会が栄えるという代わりに、権利者に対しては、保護、あるいは補償金というような制度をつくる必要があるだろうと思います。
 韓国などもそういう制度をつくっていると聞いております。
 知財立国、IT立国という以上は、情報の流通の促進ということが最も必要になるだろうと思われます。
 先日も自民党の知財戦略調査会でもコンテンツの流通をもっと盛んにする必要があるのではないかという意見が出ておりました。このバランスについての具体的な制度というものがどうしても必要だと考えます。
 繰り返しになりますけれども、諸外国においては、社会政策的にある制度をつくって、アーカイブ構築の促進を行って、その蓄積したものをただ保存するだけではなくて、流通させることによって社会の発展に寄与するということが政策的に法律を作成するという形で実現されています。
 それに比べて、我が国では、単に個別の契約等に任されていることでありまして、これでは他の諸国とのコンテンツ流通の格差が拡大していくということになって、それをそのままにしておいていいのかということであります。
 権利者と直接利用者との間で、たまたまある時点において商業的にペイするものだけを対象とした、しかも国内だけの議論だけで済ませてしまっていいのであろうかということであります。
 ある程度包括的な処理機構なり、システムなり、法制度を実現することによって、日本人が持っている知的な財産を活用して、社会全体を発展させていくという、そういう政策的な視点が必要だということを考えております。以上でございます。

【大渕主査】

 ありがとうございました。
 ただいまの常世田委員からの御発表につきまして御質問ございますでしょうか。
 佐々木委員、どうぞ。

【佐々木(隆)委員】

 アーカイブ事業の構築と利用につきまして、公共的な立場でやるべきことと企業に任せる部分とあると思います。その辺のところを明確にした上で、制度設計というか、お考えいただいた方がいいのではないかと思います。
 具体的には、既に音楽に関して言えば、図書館向けの音楽配信サービスというのも行われておりまして、世界的な規模で公共図書館や大学図書館等に導入されているところです。
 それから、書籍等につきましても、既に民間で文芸作品やコミック等を中心に数万点のデジタル化されたコンテンツが既にございまして、これは現在かなり急速に数を増やしているとともに電子出版サービス市場も拡大しております。
 こういったビジネスモデルが成長しつつあり、作品も今後かなりたくさんデジタル化していくという状況の流れがありますから、こういったコンテンツを図書館においてもどのように利用するのかということを検討する必要があるのではないかと思います。また、民業との協調を考慮する必要があるのではないかと思います。

【大渕主査】

 常世田委員、どうぞ。

【常世田委員】

 今の御意見はもちろん当然のことで、諸外国の例を見ても、一般的に入手できるものは、対象外にするということは、これは当然のことであります。私が申し上げているのは、そうではない部分です。境界が曖昧な部分について、そのままにしておいて、単に個別の契約というものに任せるのではなくて、曖昧なものをある程度制度的に効率的に流通させるためのシステムをつくるという必要があるのではないかなということです。

【大渕主査】

 野原委員、どうぞ。

【野原委員】

 今回の議論と直接関係ないかもしれないのですが、ちょっと質問させていただきたいのですが、日本人のとか、国内のという言葉が御説明にありましたが、海外の著作物のアーカイブについては、どのように考えていらっしゃいますか。

【常世田委員】

 取り込みですか。

【野原委員】

 はい、そうです。

【常世田委員】

 基本的には、今回、図書館関係者で議論した単位は国内の著作物を中心に考えておりました。海外のコンテンツの取り込みについては、完全に対等な形で行うべきであろうと考えています。
 例えば、現在では、公衆送信などについては、外国から見た場合には非常に日本に対して不便だという話もありますし、平等な形にしていくという必要があるのではないかと思っています。

【野原委員】

 海外の事例というか、諸外国は、その国から見た海外の著作物に対して、何かアーカイブ事業するという動きはあるのでしょうか。

【常世田委員】

 例えば、韓国などは、私はまだそれほど詳しくはないのですが、発行されて5年もたちますと、補償金を払う必要はあるけれど自由にデジタル化できるという制度を実施していますが、これは海外の出版物を韓国の国内で自由に使えるということを意図しているのではないかというように聞いています。
 つまりいち早く海外の成果物を韓国内で利用して、韓国の社会を発展させていこうという政策的な意味合いがあるのではないかなと思います。そういう観点が日本でも必要ではないかなと思います。

【野原委員】

 ありがとうございました。

【大渕主査】

 よろしいでしょうか。
 それでは、引き続きまして、先ほど御紹介いたしました東京電機大学出版局局長の植村さんの方から御発表をお願いいたします。

【東京電機大学出版局 植村】

 東京電機大学出版局の植村です。
 出版の実務者という立場と出版研究の末席にいる者という立場から話させていただきます。
 お手元の資料、極めて雑駁なものですが準備しました。
 まず、デジタル出版という言葉なのですが、一応ここではアーカイブという概念の中でとらえていますので、主にインターネットや携帯電話などのネットワークを利用した電子書籍の販売、つまりデジタルコンテンツの頒布ということで考えたいと思います。
 といいますのは、電子出版や電子書籍といった言葉も使いますが、電子出版はCD−ROMの登場以来、捉えられている概念であり、当初は物理的なものの配付を意味したわけです。あるいは、非常に大きな成功例として日本では電子辞書という専用端末というものも電子出版に捉えられます。そこで、ここではデジタル出版を、あくまでもネットワークにおけるデジタルコンテンツ配信に限定して考えたいと思います。
 当然、そうなりますと従来の出版者以外の多様なプレーヤーというのでしょうか、コンテンツプロバイダーが参加していますので、分野も読者対象も印刷出版よりも幅広いという状況になっております。
 今一番の話題というのは、ケータイ小説やケータイコミック、つまり携帯電話によるコミック、小説の配信が、極めて若い女性や若者の間で広まっています。一説によると、ケータイ小説だけで作品件数が80万件、それを作品と呼んでいいのかどうか議論は別ですが、そういう膨大な作品が短期間に生まれています。
 最近の毎日新聞の読書調査によりますと10代の女性の読書率が久々にプラスに転じたようですが、このケータイ小説がきっかけになっているという指摘もあります。
 多くの方は、デジタル出版というと一般文芸書の電子書籍、デジタル化を考えられるかと思いますが、これは非常に少ない、小部数といいますか、小さなマーケットであります。
 一方で、主に海外での成功例ではありますが、STM(Scientific,Technical and Medical)と称される医学を含む自然科学系出版物の学術論文、学術データの販売というのは、これは巨大な市場になっております。そういった電子ジャーナルというのは、商業的にも成功している一方、議論もあるところです。
 日本では、科学技術振興機構のJ-STAGEで、学会論文誌を公開していくというような取組みもありますが、海外の大手学術商業出版社の主導により電子ジャーナルの値段が高騰していることの問題点がよく指摘されています。
 となると無料というようなことも含めて、ビジネスモデルというか、何らかの運営モデルが必要なわけです。これも極めて多様になってしまいます。マスマーケットを対象としたビジネスとしてとらえる商業出版もあります。日本国内ではまだまだこれからですが、欧米ではかなり成功した学術情報の商業出版がある一方において、それに対抗する意味で、公共的な学術情報というのは、オープンであるべきだという議論が常にずっと続いています。
 あるいは広告モデルによる無料配信もあります。最近コミックですら広告モデルで無料というものがあります。あるいは、電子図書館というか、図書館向けの電子的なサービスとして、専門書を図書館に限定的に買えるような形したBtoBモデルもあります。
 つまりデジタル出版というのは、何か一律にとらえて議論するととても難しいということなんですね。さまざまなやり方がありますので、論じるときにちょっと注意が必要ではないかなと思います。
 先ほどいいました携帯配信ということを考えますと、流れとしては明らかにデジタル出版であり、欧米ではボーンデジタルという言葉があります。つまり初めからデジタルとして書かれたコンテンツがデジタルとして回っていくという意味での、ボーンデジタル、それも明らかに作品と呼べるクオリティの高いものが生まれつつあります。その流れの中でビジネスプレーヤーとして主に活躍するのが通信キャリアとITベンダーとかで、従来型の出版社はどちらかというと紙の中にまだまだ留まっているという段階だと思います。
 先ほども言った電子ジャーナルといえども、日本では自然科学系出版がうまく成功しているかというと、まだ取組みとして極めて遅いということです。
 極めて雑駁ですが、今言ったことを図にしてみました。一般大衆というか広く広がるという方向と専門性という横軸と、あるいはそれを有料にする、商業行為とするということと、フリー、無料にするという縦軸に分けてみます。もちろんフリーというのは、パブリックドメインということではありません。
 そうしますと、日本の商業学術誌は、繰り返しますけれども、小さな取組みになっています。反対側にケータイ出版、ケータイ小説という膨大な市場がある中で、出版社による電子出版は、図としては位置的には当然商業行為の中でありますし、専門と一般の間にわたっております。取組みとしては、品切れになった本をデジタル化することによって、いつでも読めるようにすることから始まってきています。
 最近ではベストセラーも積極的に出ております。
 電子図書館向けとしては、従来から新聞とか雑誌が図書館で利用できていますが、最近、電子書籍のインフラができつつあります。これは、日本の出版社は経済的に小さな、零細出版社の集団ですので、自ら電子化してビジネスをするということは欧米のようにはいかないので、何らかのビジネスにしていく土俵としてのインフラは必要ではないかなと思っています。
 著作権処理に関しましては、当然のことながら個別の著作権者と契約をして、出版しているわけですので、従来の出版契約に加えて、電子化するための契約、あるいは公衆送信権等への許諾をとる形をとります。今ちょうど私どもも取り組んでいるのですが、既に出している出版物を読者の利用をよりよくするために電子化して図書館向けにサービスするということで、今一生懸命個別に契約を取り交わしているところです。
 DRMも含め何らかの技術的な方法は、特に一般に向けて出しているものは、すべてにあります。
 3枚目の最後に、参考として付けてありますが、もう1つの問題ですが、デジタル出版に関するファイル形式が非常に多いんですね。よく言えば多様です。つまりデファクトスタンダードになっているものがないといってよいでしょう。実は専用のファイル形式を専用のビューアー、つまり読むためのソフトをパソコンにインストールすることで、公開鍵暗号とかのDRM、著作権管理をする仕組みをつくっています。この結果、多様なファイルと多様なビューアーが存在しているのが、逆に言うとデジタル出版が普及するブレーキになっているのではないかと思ってます。標準化されていないということですね。
 デジタル出版における出版社の役割について、3にまとめておきました。出版社というのは、情報の著作権者とともに、もちろん雑誌等では出版社自らが著作権者となって情報の生成にかかわります。それを複製して、流通販売というサイクルを形成しています。この印刷複製技術と物流による流通配付というのを基盤とした上で、出版社は情報の生成加工において、信頼性の付与とか、当然読者が対価を投資するに見合ったコンテンツとするために編集という作業を行っているわけです。
 デジタル出版になると、デジタル複製技術、ネット流通ですから、よくローコストになったととらわれがちです。しかし、情報生成にかかるコストは変わらない、場合によっては、マルチメディア化することによって、より多くのコストがかかってしまいかねないということには気をつけていただきたいと思います。
 このサイクルにおいて、基本的に日本の出版界というのは、諸外国と比較しても、非常に小さな出版社が存在しています。また、原則的には、読者のコスト負担によって、情報流通にかかわっているわけです。
 一部の出版助成金というのがありますけれども、原則的には出版社、流通、出版界と読者によって自立的に情報流通システムを運営してきた、つまりにペーパーメディアを回してきたわけです。
 さまざまな歴史的な紆余曲折はあるんですけれども、やはり表現の自由ということを考えたときに、自立的な情報流通システムが国民によって運営されてきたということは誇りにしていいと思っています。
 上の図を見ていただくとわかるように、このグレーのところの矢印というのは、情報がぐるぐるサイクルとして回っているわけです。今も言いましたように、読者がお金を払ってくることが結果的に著作権者に対価が回るような仕組みを自立的に持っています。
 ここに図書館の仕事を入れて考えていきますと、読者に対してアーカイブする、蓄積することで従来的には読者の知る権利というのを担保してきたということがあります。
 デジタル出版になると、下の図になります。アーカイブという言葉は、単に蓄積のデジタル化と思えますけれども、実はそうではなくて、ネット上にアーカイブされているということは流通も兼ねてしまうということになると思います。
 出版社のした仕事をデジタルアーカイブにしていくと、それは当然のことながら流通も兼ねてしまいますので、いわゆる取引書店というのをスキップして、読者にいつでも手に入るようになります。これがサイクルになる場合ですが、どうやって運営していくか、外部運営費を持ち来なければいけなくなると思います。
 かつて80年代ころの、特に米国における科学情報というのは、大学とか大学出版に対するファンドとかから多くの金が入っていまして、それによって運営されていました。あるいは、研究者がテニアを取るために学術出版書を出版するのも大学出版によって出されていました。これが90年代に出版助成金が大いに削減された途端にショートして、学術情報の危機が叫ばれることになりました。これについては90年代に多くの指摘とか論文が出ています。
 外部運営費により運営していると、それが何らかの理由で小さくなった途端に、そのサイクルが回りにくくなったわけです。自然科学系におけるジャーナルクライシスとともに、人文社会学系の出版が極めてしにくくなったというのが、90年半ば以降、今でもその問題がずっと続いています。
 現状の出版社が自立的に出版物を回し、読者に届けているというサイクルをちゃんと担保しながら、アーカイブというのをとらえていかなければいけないのではないかと思います。
 ちょっと話を飛ばしてしまいましたけれども、デジタル技術になったことによって、従来型の印刷より安くデジタル出版物を出せますので、オンデマンドとか、あるいは品切れをデジタル出版として提供するということを積極的にやっているということは申し添えたいと思います。
 とりあえず私の方からは以上です。

【大渕主査】

 ありがとうございました。
 ただいまの御発表につきまして、御質問はありますでしょうか。久保田委員、どうぞ。

【久保田委員】

 DRMをかけることが多少情報の流通の阻害になっているということですが、権利者の方は、やはりDRMをかけてほしいというような方が多いのですか。

【東京電機大学出版局 植村】

 強く望んでいらっしゃいます。日本の出版社は先ほど言いましたように、いわゆる印刷技術とか技術的なものは従来外に任せていますので、デジタル出版に関してもメーカーさんとか、キャリアさんの提案の中でやっています。メーカーさんはさまざまなデジタルビジネスを知っていまして、もっとDRMを緩くしなければ駄目ですよと言うんですが、出版社と著作権者が「うん」と言わないというようなことがよく議論にはなります。
 アメリカにおいて、イーブックについて、去年から今年にまた専用端末におけるサービスが急に盛んになっています。アマゾンが先週に専用端末を発表しました。非常に利用のしやすいシステムになっているんだなというのが見えます。

【大渕主査】

 常世田委員、どうぞ。

【常世田委員】

 イーブックは、アメリカは恐らく数万タイトルぐらい図書館で流通していて、以前アメリカに行ったときに、エクセルの最新バージョンのマニュアル本などが図書館でイーブックで提供されていて、それで本が売れるんだろうかと思った経験があります。図書館がイーブックを大量に利用者に提供しているという状況は図書館関係者はわかるんですけれども、出版社から見たときに、その辺、どういう仕組みで動いていて、全体的にコストがちゃんと還元されているのか、御存じであればお聞きしたいのですが。

【東京電機大学出版局 植村】

 当然のことながら、出版社から見て、図書館というのは購入いただく顧客ですので、多く売れる本でしたら何冊かの複本がありますし、専門書というのもかなり図書館によって購入いただくことによって回っています。日本よりも欧米の方が、専門書は専門図書館によって購入することによって市場が成り立っているという指摘もあります。
 特に欧米、アメリカからですが、図書館に向けた何らかの、デジタル図書館のビジネスを行っているところがあって、そういうインフラがあるところに対して出版物を提供していくという形になります。
 新聞社とか雑誌は、自らが図書館に向けた新聞アーカイブの提供というシステムをつくっていますが、先ほど言ったように出版社はそこまで開発する経済体力、自分の社だけでシステムをつくることはできません。そこでデジタル図書館の会社があります。アメリカでは何社かありますが、日本でも間もなくサービスが始まる、始まったといってもいいのかもしれません。専門書出版社さんとの間で個別契約をしています。私どもはPDFになりますけれども、そこの会社に提供すると、そこが図書館と個別契約を結んで提供するというような枠組みになっています。こういう枠組みができなければ、日本ではとても無理だと思っています。
 大学で私どもの専門書を読んでいただくときには、1冊契約すれば、その1冊を読んでいる間は1人しか読めません。人気がある本でしたらデジタルデータとして何人も同時アクセスできる権利を得るという形、つまりデジタル複本という発想になります。1冊売った場合は、図書館で誰かが読んでいるときは、ほかの人が読めないというような仕組みを持っています。
 あとプリントアウトとか、幾つかの制限とかもあるようです。
 これがうまくいって欲しいんですね、私も。うまくいっていただかなければ、私ども、専門書出版社が、図書館に対して、電子書籍を提供できないというところがあります。そういうインフラはぜひできてほしいし、ビジネスになっていかなければいけないと思います。

【大渕主査】

 佐々木委員、どうぞ。

【佐々木(隆)委員】

 韓国の電子図書館は日本の現状からしますと相当進んでいるんですけれども、いつだかは忘れましたけれども、ニュースで日本の図書館が韓国の図書館の代理店になって、代理店というのが正しいかどうかわかりませんが、日本で読者を募集しているとのことでした。日本の図書館へ登録すると、家庭で韓国の電子図書が見られるということになっていまして、そういった部分が今後増えていくようだと、ある一定のルールがないと、電子図書館サービスが家庭などにいろいろな形で一般に広がることが懸念される状況があります。ここで先生もおっしゃっていたように、自立的コンテンツ流通システムとしての通常の出版事業活動が阻害される可能性があり、非常に大きな危険性があるのではないかと思うのですが、その辺はいかがですか。

【東京電機大学出版局 植村】

 簡単に、2つほど申し上げます。
 まず、図書館というのは運営モデルではBtoBtoCモデルです。図書館の利用者がただで借りられるという環境を持っていること、それを保障してあげていただいた上で、その裏側では当然、出版社に対価が支払われるという形が一番理想的だと思います。図書館の電子的な利用というのはそういう形であればよろしいと思っています。当然その図書館は大学図書館も最近は地域に開放という形もありますが、何らかの利用者が限定される図書館があってもおかしくないと思います。
 ですから、韓国の図書館と日本の図書館が個別契約をして、対価がちゃんと支払われる仕組みがあるならば、よいサービスかなとは思います。
 ただ、電子図書館の理解がこれからだということもあると思うのですが、ある大学院大学が積極的に電子図書館を進めたときに、私どもにもアプローチがありまして、既に購入した本を全部電子化したい。それはそこの大学の中で限るということでやったにもかかわらず、税金でやったんだから、地域に開放するという、所在地の市とかがやはり公開させてくださいと、後からかなり一方的に言ってきたということがありました。かつて随分問題になったことがあるんですね。
 制度運用、解釈をしっかりしていただかないと、契約するときは内部だけで、絶対に外に見せませんといいながら、その先が、やはり要望が強いという声のもとに動いていくことは懸念があるということであります。

【大渕主査】

 常世田委員、どうぞ。

【常世田委員】

 誤解があるといけないと思うので、一言お話ししたいのですが、電子図書館という言葉がありますが、特別な図書館があるわけではなくて、アメリカの場合も韓国の場合も公共図書館がそういうサービスをしているというのが実態ですので、その辺は実態を御理解いただきたいと思います。
 それから、対価を払うということが前提です。先ほど私がお話ししたのは、まさにその点で、ルールをつくるということです。単に個別の契約だけで進めていくのはコンテンツを積極的に流通させるためには、もうとても無理な話だろうと思います。やはり日本として日本の社会の中での制度設計をきちんとすべきではないかと考えます。

【大渕主査】

 久保田委員、どうぞ。

【久保田委員】

 事実の確認ですが、常世田さん、公共図書館なんですが、この間、韓国に行って、点字図書館に行ってきたんですが、普通のビルの3階にサーバーが1個置いてあるだけで、本が置いてあるというところではないんですよね。もう完全にデジタルで。あれも全部公共図書館の管理なんですか。

【常世田委員】

 今、久保田さんがおっしゃったのは具体的にどの図書館かわかりませんが、一般的にアメリカでも韓国でも今の電子的なサービスを行うのは、公共図書館が行うことが多くて、通常の図書館の1つのサービスとして行っていると思います。

【久保田委員】

 ということは、法律的に何かバックボーンがあるからできるという、強制許諾に近いようなものでやっているという感じなんですか。

【常世田委員】

 そうだと思います。
 アメリカの場合、先ほどお話いただいたように、ベンダーがあって、出版物のデジタル化だけではなくて、いわゆるデータベースを公共図書館に提供するのも、データベースの会社が直接やるのではなくて、ディストリビューターが間に入って、100とか200とかいうデータベースを取りまとめて、そして図書館が税金で使用料を払って、市民にはただで使わせるパターンが通常です。
 最近では、図書館に登録をすることによって、図書カードの番号がキーワードになっていて、自分の家のパソコンでまず図書館のサーバーに入って、図書館のサーバーを経由して、データベースの会社のサーバーにアクセスすることによって、月に何万も個人で契約したらかかるようなデータベースをただで使うというサービスまで行っています。
 だから、それはもう単に個別契約だけではなくて、もう少し社会的な制度がバックにあるだろうと思います。制度ではないにしても、社会的なコンセンサスの存在を感じます。
 韓国の場合も、例えば発行後5年たったら、補償金なり何なりもちろん払わなければいけませんけれども、出版物をデジタル化することができるよという法律があったり、そういう法律が成立する社会的なバック、あるいは社会的なコンセンサスというものがあるのだと思います。

【大渕主査】

 金委員、どうぞ。

【金委員】

 後ほど話が出るかもしれないんですけれども、今韓国の例が出ましたので、韓国の図書館補償金制度について若干概要を申し上げたいと思います。
 韓国において、2000年度に著作権法が改正されて、その当時は、図書館同士でのデジタル情報の伝送については制限なしで、無料で行うということがありました。
 それに対して、権利者側から権利を制限しすぎるのではないかというようなことが提示されて、2003年7月に著作権法が改正されまして、図書館補償金制度というものが導入されました。
 その図書館補償金制度は2004年度7月に実施されることになっているのですが、その内容は、国会の公共の図書館、自分がデジタル化した情報については、自分の図書館の中で閲覧することについては無料でオーケーと。しかし、その他の公共図書館に対するデジタル情報の伝送については、図書館の補償金を伝送する側が払う。
 また、自分の図書館とその他の図書館内でのプリントアウト、出力についても図書館補償金をかける。しかし、公共図書館以外の伝送については、事前に利用許諾を得る必要があるということです。
 ただし、先ほど話があったように、販売をして発行された図書が5年以内のものについては、これは事前の利用許諾の対象であって、5年が経過した後は、これは図書館補償金ということで、権利制限を行った上で、図書館補償金ということで、保証するというような方策がとられております。以上です。

【大渕主査】

 ありがとうございました。
 それではまたすべての御発表が終わったところで、まとめて議論の機会を設けますので、またそのときには別の観点との関連も含めて、御議論いただければと思います。
 発表関係を進めてまいりたいと思いますが、次に、放送番組関係について梶原委員から御発表をお願いいたします。

【梶原委員】

 NHKアーカイブスについてお話をしたいと思います。
 これまでも資料等が幾つか出ておりましたので、若干重複する部分があるかと思いますけれども、現状等について御説明を申し上げたいと思います。
 この資料3のペーパーに沿ってお話ししたいと思います。
 NHKアーカイブスというのは、放送番組を保存し、基本的には放送のために活用するのが役割で、放送番組のために再放送したりとか、そういったことを中心に保存してきたわけですけれども、4年ちょっと前ですが、川口にNHKアーカイブスというのをつくりまして、そこからNHKアーカイブスの名称で、その役割を明確にして、実際に公開サービスなどの取組みにも力を入れ始めてまいりました。
 アーカイブスの役割と取組みということで、3つのキーワード、保存、活用、公開ということで行っているところであります。
 最初のキーワードであります保存について、これまで放送番組だけでいっても、60万番組ぐらい保存していて、毎年NHKの放送で、たくさんの番組が放送されていますけれども、毎年何を保存するかということを事前に決めて、それを保存しているということになります。
 例えば、購入番組とか、あるいは情報系の番組とか、契約で保存することが駄目だといったようなもの、あるいは今後、放送とかいろいろな面で、活用が予定されていない番組については保存しないけれども、総合テレビでいうと、ほとんどの番組が保存対象かと思います。年間約2万本前後の番組を保存しているということであります。
 次のページに、それを生かすということで、映像の活用ですけれども、映像をさまざまな媒体で保存していますが、昔のフィルムなどの媒体で保存されているものについては、デジタル化するとか、あるいは映像を修復して、映像の活用を図っているということであります。
 基本的な部分でいうと、保存された映像については、番組で活用していくということが基本的な部分であります。
 今、日曜の深夜ですけれども、NHKアーカイブスという番組で、過去の放送番組を放送していますけれども、そういった部分で活用しているということであります。
 ここの活用の部分でいうと、放送番組をNHKで活用する部分もございますし、あるいは第三者への番組の販売、例えば、CS事業者ですとか、海外の放送局への提供とかいった形で、この映像がビジネスベースでも活用されているということになります。
 それと次のページの3つ目ですけれども、公開ですが、番組公開ライブラリーということで、全国の放送局で端末を通じて、NHKの過去の放送番組が御覧いただけるということになっております。
 現在、テレビ番組でいうと5,400本、ラジオ番組だと約600本が閲覧できるということになります。
 ただ、60万の保存番組からすると、少ないなといったような印象があるかと思いますけれども、基本的には、経費的な問題があり、サーバーの能力の問題とか、番組数を増やせば、それだけサーバーの能力を増やさなければいけませんし、全国の各放送局で見るためには、回線をまた太くしなければいけないとか、さまざまな経費がかかってきます。
 さらに、これだけの数をやっていますけれども、大体御覧いただける番組は、アニメとか過去の歌番組とか、ドラマとか、そういったものが中心で、6,000本近く公開しているわけですけれども、ほとんど御覧いただけない番組も中にはあるということで、これ以上やることが費用対効果としてどうなのかなという部分があります。
 そういったことで、NHKとしては、この活用と公開の部分ですけれども、どこまで社会還元として無償でやっていったらいいのかといったところは、まだ議論の最中でして、今、6,000本近く各放送局に行けば見られるわけですけれども、それを無償でネットでやってしまうと、これまでのいろいろなビジネスを考えると、無償でやることがいいのかといったような議論もありますし、そういったところで、NHKとしてどこまで無償でやっていくのか、そのビジネスとの境目、線引きというのは、なかなか難しい部分があると思っています。
 例えば、フランスのINAthéqueは研究者向けには自由に閲覧できたりするようですけれども、そういったことをやるべきなのか、あるいは教育機関については、無償で提供していいのではないかといった議論もありますけれども、そういったビジネスとの線引きについては、なかなか難しい課題かと思っています。
 それと実際に公開するに当たって、いろいろ権利処理をやってきましたけれども、こういった公開ライブラリーの目的や、さらに施設も限定されているということもあって、著作権の処理については、大きな問題というのはあまりなかったのかなと思います。
 公開できなかった一番の理由というのは、人権とかプライバシーの面で、やはり公開を控えておいた方がいいといった部分でありまして、著作権的な部分というと、そんなに問題はなかったかと思います。
 一部、使用料とか、お金の面でなかなか合意できずに、公開できないといったケースはございますけれども、基本的には権利者団体の方とは包括的な許諾を得ることができましたので、そういった面では割と円滑に処理が進んだのかなと思っております。
 以上でございます。

【大渕主査】

 ありがとうございました。
 ただいまの御発表につきまして、御質問ございますでしょうか。
 中山委員、どうぞ。

【中山委員】

 権利処理についてお伺いしたいのですが、権利者団体との話は比較的順調に進んだからうまく行ったというお話ですが、映像の場合、いろいろな人の権利があるので、権利者団体に入ってない人の権利はどのようにして処理したのでしょうか。

【梶原委員】

 一応、個別に了解をとってまいりましたので、以前の資料にも書きましたが、権利処理の担当は6人ぐらいで、年間1,000本ぐらいの権利処理をやってきました。そういった個別の処理の中では、こういった目的なので、基本的には大体御理解いただいて、お金を支払うにしても、割と低額な金額で御了解をいただいたわけですけれども、中には、使用料の額の問題で、許諾がされないといったようなこともございました。
 ある大河ドラマの原作者の御遺族の方なんかそうなのですが、公開できてない番組があったりします。そういった部分もありましたけれども、個別に権利処理をしていけば、基本的には大部分が了解をいただくことができました。

【大渕主査】

 野原委員、どうぞ。

【野原委員】

 今の件にちょっと関連して質問ですが、現在制作している番組については、制作の段階からアーカイブを想定してという契約になっているのでしょうか。

【梶原委員】

 こちら側もなるべく事前に了解を得て、事後の権利処理でわざわざ許諾を取らなくていいように、制作現場に対しては、契約書や、簡単な承諾書なんかを取るといったようなことで、なるべくそういったことを進めています。
 ただ、日本人の特性なのかわからないのですが、なかなか放送以外の部分については、やはり改めて了解がほしいといったようなことを言われるケースが多々あって、必ずしも全部事前に了解を取ることができるわけではありません。

【野原委員】

 その比率はどれぐらいでしょうか。

【梶原委員】

 比率というのはなかなか難しいんですけれども、ただ先ほど申し上げたように、権利者団体に所属されている方については、その権利者団体との包括的な契約の中でやっていますので、そういった方については個別にやっていませんので、あとはいわゆる権利者団体に入っていらっしゃらない方ですけれども、それで言うと、なかなか数字としてはわかりません。番組にもよりますし、例えばドキュメンタリーなんかだとなかなか了解がその場では得られないというケースがありますし、そうではなく、例えば、料理番組とか、そういった番組について言うと、いいでしょうということになると思いますので、ちょっと数字的な割合は把握はしていませんけれども、そういった方向で努力はしているということは御理解いただければと思います。

【大渕主査】

 三田委員、どうぞ。

【三田委員】

 今のNHKさんのお話ですけれども、最初に文芸家協会にお話があった時点では、まだ埼玉に行かないと見られないという状況だったわけですけれども、次第に各NHKの地方の局でも見られるようになると、利用者が拡大していくわけですね。それが今後、例えばネット配信等でできるようになるのかとか、未知の部分がたくさんあるわけです。
 それから、今、地デジの2チャンネル、教育放送のあれは3つの領域に分けられていまして、裏番組が見られるようになっております。この裏番組で流すための契約というようなものもありますけれども、これも地デジが見られるテレビの普及とか、それから実際には裏番組を見ている人はそんなにないだろうと思います。
 ところが、これも普及しますと、あるいは常に1つのチャンネルで3つぐらい同時に放送がされているということも考えられるわけで、将来にわたって、利用状況がどう変わっていくのかいうことは、全く未知であります。放送している側もわからないし、原作者、権利者にもわからないという状況なので、今御質問にあったような、一番最初の番組をつくるときに将来にわたってすべての権利をそこで契約してしまうということは事実上不可能だと思います。
 それから、現在、一応契約をしているわけですけれども、それも利用状況が変わったときに、またどういう契約をし直すかということも非常に未知の段階であると思うので、アーカイブといっても、利用状況によって違うということは皆さんに御理解いただきたいと思います。以上です。

【大渕主査】

 よろしいでしょうか。
 続きまして、次に、レコード関係について生野委員から御発表をお願いいたします。

【生野委員】

 それでは、レコードのアーカイブに関しまして、御説明いたします。
 資料4を御参照ください。
 著作物等のアーカイブにつきまして、文化的所産を後世に継承していく事業といたしまして、これは積極的に推進すべきだと考えております。
 レコードにつきましては、CDの二世代前のSP盤ですとか金属原盤等が散逸、劣化によって、時代の世相や歴史の生きた証言などを伝える非常に貴重な音源が消失の危機にさらされているというのが実情でございます。
 このため日本レコード協会では、関係5団体、具体的にはNHKさん、JASRAC(ジャスラック)さん、芸団協さん、日本伝統文化振興財団さん、それから映像産業振興機構さん、これらの団体と協力し、今年4月に歴史的音盤アーカイブ推進協議会を設立いたしまして、SP盤等の音源を電子化して保存するプロジェクトの検討を開始したところでございます。
 具体的には、1900年初頭から1950年ごろまでに国内で製造されたSP盤、それから金属原盤に収録された音源、数にして約7万曲程度と見込んでおりますが、こういったものを対象に収録技術、音声フォーマット等の技術検討とその公開方法を現在検討しておるところでございます。
 平成20年度以降、アーカイブ作業とメタデータ整備などを進めた上で、平成23年度の運用開始を目指しているところでございます。
 アーカイブ作業及び音源の公開に関する権利処理につきましても、本協議会で現在検討中でございます。最終的には、関係者間の合意によるルール形成で対応可能だと考えておりまして、権利制限等の制度対応が特に必要だとは考えておりません。
 関係者間合意によってルールを形成するとした場合、その検討につきましては、通常の商用ビジネスと競合しない範囲での事業の実施、それから文化資産の安定的な継承といったこの2つの視点を軸に内容を次のような方向性でいきたいと考えております。
 まず、対象とするコンテンツの範囲につきましては、現在市販商品の入手が困難なコンテンツを中心に考えております。
 2点目に、アーカイブの事業主体でございますが、長期的な事業運営が期待できる非営利事業者、一定の公共施設等を考えております。具体的な内容につきましては、これからの検討でございます。
 3点目として、公開方法でございますが、有料、無料の区別といたしましては、無料公開を考えておりまして、アクセス方法については、施設内での視聴ですとか、複数施設間でのコンテンツ提供、ウェブ公開等といろいろ利用としては考えられるわけでございますが、中身については先ほど申しましたとおり、商用ビジネスとの競合を生じないような形で、慎重な検討が必要であると考えております。
 それから、コンテンツの公開部分に関しましては、フルでやるのか、一定の時間内に制限するのか、そこら辺も含めて今後検討を行います。それから、複製物の提供に関しましては、これは行わないという方向で検討すべきと考えております。
 概要は、以上でございます。

【大渕主査】

 ありがとうございました。ただいまの御発表について御質問ありますでしょうか。

【都倉委員】

 この1900年から1950年という年代の区切りというのは、これは技術的な金属音盤とかSPみたいなものがその辺までだったからということなのか、あるいはこれが10年たったら、これが1900年から1960年まで、このように時代とともにアーカイブがどんどん追っかけてくるのか。そういうのも50年で切ってしまうのかというところはいかがでしょうか。

【生野委員】

 現時点では、特にSP原盤や金属原盤のように、散逸したり、破損・劣化が進み、技術的にもなかなかこれを維持できないという状態のものを対象に考えておりますので、これからアナログレコード、CDも含めて云々ということは現時点で考えておりません。今、お話しした内容のもので考えております。

【大渕主査】

 ほかにいかがですか。
 それでは、最後に事務局から資料について御説明をお願いいたします。

【著作権調査官】

 それでは、資料5の方を御覧いただけますでしょうか。
 アーカイブにどういう機能を持たせるべきかについてそれぞれ今御発表をいただきまして、コンテンツ事業者自らが行うアーカイブも含めて、いろいろな構想があるということを御発表いただいたところですので、事務局の方からは制度変更に絡む部分だけ資料を御用意させていただきました。
 1.は、これまでの委員会の中で提案された主な制度的事項を抜粋したものです。
 収集・保存に関する意見としましては、いくつかございましたが、特に大きなものとしましては、劣化した資料の保存、パッケージ系電子出版物の再生方式の変更に対応するための図書館施設での複製について措置が必要ではないか、書籍が劣化して変色し、後々データ化するのは難しいのであらかじめ対応をとっておくべきではないか、といった御意見がありました。
 それから、利用方法に関する意見としましては、出版物については、アーカイブ化されると出版物として世に出る機会が少なくなるので、保護期間が経過したものに限るべきではないかというご意見、音楽配信についても同様な御意見があったところですが、一方で、エンドユーザーにとって手軽に触れられる機会を増やすべきだというような御意見もあったところでございます。
 こういったところを現状の規定でどこまでできるのかということで、2ページ以降に整理しております。
 まず、再生方式の変更に対応するための複製については、関係する規定として、現状では第31条第2号がございます。「図書館資料の保存のため必要がある場合」には、図書館資料を用いて複製することができるという規定でございます。
 この規定につきましては、過去の著作権分科会の議論がございまして、2ページの下の方の枠囲いのところに記載しておりますが、新しい形式の複製物が存在する場合は除くとか、入手困難性の判断基準を明確にする必要があるというような御意見、あるいは現行規定で読めるのではないかというような、両方の御意見がございまして、そういった判断基準とか、そういったものについて必要に応じて今後検討することが適当ということで、一昨年の議論はそういう形で終わっております。
 では現行規定はどういう趣旨だったのかということで、3ページに現行の規定が立案されたときの趣旨を列挙させていただきました。
 3ページの上のところですが、第31条第2号では、所蔵スペースの関係で縮小複製して保存する場合とか、貴重な資料を損傷・紛失を予防するためにコピーをとっておくとか、汚損箇所を補完するといったことなどが現行では想定されていたようでございます。再生手段の関係について言及は特にございませんでした。
 これに関して、どのようにこれを解釈するかということで、関係の学説でございますけれども、まず再生手段の関係について書いてないというようなことをもって、厳格に解釈すべきではないか、という見解も一方でございます。
 他方で、こちら幾つか記載させていただきましたが、この規定によって、複製を認めてもいいのではないか、というような見解も幾つかございます。詳しくは省略いたしますけれども、再生手段の入手が困難である図書館資料の保存は、現行31条第2号との関係で、どのように解するべきなのかという点が御議論のポイントになろうかと思います。
 なお、9ページを御覧いただきますと、諸外国の立法例を幾つか掲げておりますけれども、アメリカですとかカナダでは図書館関係の複製について相当詳細な規定を置いておりまして、今の著作物が収録されて形式が古くなっているというようなものについて、明文の規定を置いております。そのほか、ヨーロッパ諸国では、図書館関係の規定はあるけれども、再生関係のものは規定を置いてない国というのもたくさんあるようでございます。
 4ページに戻っていただきまして、電子化されたアーカイブがあるという場合に、その利用方法に関しての議論でございます。
 まず、館内での閲覧をどう考えるかということですけれども、電子化された図書を館内の端末機で利用する場合というのは、第38条に非営利・無料・無報酬の「上映」に関する規定がございますので、まずこれで館内の端末機器で、ディスプレイに表示させることは可能ではないかと考えられるわけでございまして、何か特段御議論があればということで書かせていただいております。
 特に議論があるのは、2)のネットワークを通じた閲覧、これをどうしようかという点ではないかと思っております。ネットワークを通じて、閲覧できる、複製はできないけれども、ネットワークを通じて見ることができる。そういった技術的な手段を用いてということだと思いますけれども、そういったものについては、どこまで認めていくべきなのかということで、論点が幾つかあるかと思います。
 先ほども御発表がありましたけれども、電子出版などのビジネスへの影響をどう考えるか、それから、著作物の種類ごとによってまた状況が違うのかどうか。仮に、認めていくとするのであれば、どのような範囲なのか。技術的な方式、保護手段などをどのように考えていくべきなのかというようなことが、御議論になるかと思います。
 なお、こちらの件につきましては、次の次のページで、ネットワークを通じた複写サービスというのが出てきますので、それと合わせて考えていただいてもよいかもしれません。
 次の5ページですが、同じく電子化されたアーカイブがあったとしまして、そこからの複写サービスについての論点でございます。
 現状の規定がどうなっているかと申しますと、利用者の調査研究の用に供するために著作物を複製することができるという規定がございまして、これは電子化された図書を複製する場合であっても、図書館の保管資料であれば通常の図書と同様であると考えられるのではないかと思っております。下に現行規定の趣旨がございますけれども、ペーパーメディアによるものほか、レコード、CD、録音テープ、ビデオテープなどの視聴覚資料などが図書館資料としてあるわけでございますので、こういったものの複製も現状では考えられるということで、電子化された図書の場合でも同じではないのかなとは思っております。
 (3)2)のところですけれども、ほかの図書館を通じた複写サービスということで、ほかの図書館の依頼によって電子化された図書を複製することについてということで、図書館間で、先ほど韓国の例なども出されておりましたけれども、ファックス送付やメール送付等によって電子化された図書をやりとりすることについてどのように考えるか。
 現状の規定では、第31条第3号で、他の図書館等の求めに応じて、一般に入手することが困難な図書館資料の複製物を提供するということはできるということになっております。
 ただ、後ほど御紹介しますけれども、現行規定では、特にネットワークを利用した複製物の提供は想定されていないと言われているようでございます。
 続きまして、6ページでございますけれども、図書館間のネットワークではなく、ネットワークを通じて、利用者に対して、直接電子化された図書の複製をサービスすることについてどのように考えるかという点でございます。先ほどのネットワークを通じた閲覧と同じように、電子出版のビジネスへの影響をどう考えるのかといったような論点があろうかと思います。
 これに関しまして、7ページにまいりまして、現行規定の考え方はどうなっているのかという御紹介でございます。
 まず、現行規定の趣旨につきましては、平成7年の著作権審議会で御議論があったようでございまして、そのときには図書館資料のデジタル化、通信ネットワークを利用した送信や複製物の提供などは想定されていない、というように現行規定を分析しております。
 一方で、関係の学説は、どのようになっているかと申しますと、現行規定の解釈論かもしくは立法論としてやるべきなのかという見解、どちらもあるようですが、中には、ファックス送付について肯定的な見解も幾つかあるようでございます。その場合にも一般の情報サービス業との競合に言及しているものもありますが、以下では肯定的な見解の部分を抜粋しております。詳細の御紹介は省略しますけれども、御覧いただければと思います。
 なお、先ほどから話題になりました韓国の規定の抜粋を10ページに掲載しております。
 今申し上げましたネットワーク関連で申しますと、第28条の(3)のところですが、他の図書館で閲覧することができるように保管されている図書等を複製し、または伝送することができる。これは、いってみれば図書館間のネットワークでございますけれども、こういったことについてはできるという規定が用意されております。また、先にも御紹介があったように、(5)のところでこういった図書館間の伝送については補償金の支払いが義務付けられているということでございます。また、(4)のところで、もう1つ条件がございまして、図書等がデジタル形態で販売されている場合には、デジタル形態で複製することができない。というような条件もありまして、なかなか詳細な規定をおいてあるようでございます。
 以上のような点を踏まえまして、電子化された資料の利用につきまして、どこまで無許諾でできるようにしておけばいいのか、先ほど、ビジネス関係でBtoBが成り立つ分野もあるという御紹介もありましたけれども、この規定は無許諾でできるようにするという範囲ということでして、これについて、御議論をいただければと思っております。
 以上でございます。よろしくお願いいたします。

【大渕主査】

 ありがとうございました。
 それでは、各分野のアーカイブについて御説明をいただきまして、最後事務局から御説明をいただきましたけれども、これを踏まえまして、それぞれの制度のあり方について御議論を深めていただきたいと思いますので、本日のテーマ全般につきまして、どの点でも結構でございますので御自由に御発言をお願いいたします。

【佐々木(隆)委員】

 図書館の複写サービスについては、かなり厳格な規定を誰でもわかる形で明確にする必要があるのではないかなと思います。
 たしか長崎の方の図書館ですが、楽譜を所蔵しているのですが、それをコピーして利用者に渡しているというサービスの実例がありまして、やはりそこまで図書館がサービスをしてやるべきなのかというのがございます。
 当然、コーラスとか合奏とか、吹奏楽とかそういった楽譜が対象でございますので、そういった出版物を出版する楽譜出版社というのは非常に零細な出版社が多いわけですから、できる限り買っていただかない経営上問題があります。その様な楽譜が図書館に行くと無料で複写ができるということは多少やり過ぎではないかという事例もございますので、こういった複写については、学術調査研究という部分については明確ですが、そこを逸脱する部分については、やはりはっきりと規制すべきではないかなと思います。

【大渕主査】

 三田委員、どうぞ。

【三田委員】

 今言われた楽譜のコピーというのは、楽譜というのは1ページで1つの曲が全部入っているわけですから、作品の丸ごとのコピーですから違法だと思います。だから、楽譜とか地図とか、1ページ単位で1つのものになっているものというのは駄目だろうと思います。
 それから、今、事務局の方から御報告があった図書館のコピーというのも作品の丸ごとは駄目だということでありますから、今、図書館との間に我々は議論しているところですけれども、丸ごとは駄目だというと、どの程度までいいのかというと、一部ならいいということになっているんですけれども、その一部というのが現行の図書館の慣例では半分以下ということになっておりまして、するとこれは2回行くと丸ごととれてしまうと。国会図書館は、同じ人が2回来たら駄目だということをチェックしておりますけれども、2人で行けばとれてしまうというのが現行でありますので、これもいかがなものかと思っております。
 それとは別に今私が発言をしたいのは、今お話を伺っていて、これから実際に制度を考える上で、一番重要なポイントというのは、世の中に出ておりますさまざまな作品のほとんどはできるだけ多くの人に読んでいただきたいという趣旨で出されているものだろうと思います。
 大学で発行されております紀要とか研究論文の類でも、特に、理科系のものというのは、できるだけ多くの研究者に読んでいただいて、それが別の研究者の論文に引用されておりますと、それがポイントとなって大学の中でのその人、その研究者の評価が高まっていくようなこともありますから、ほとんど無償で提供するというようなことでいいわけです。
 文化系の研究論文についても一部の人気の評論家が大学の先生を兼ねているような場合は別として、多くの研究者はできるだけ読んでいただきたいという思いでいっぱいだろうと思います。
 それから、一般に書籍として売られているものでも、最近では、自費出版というものが非常に盛んでありまして、自費出版というのは書いた人がお金を払うわけですね。逆にプロの作家の出す、書いた人にお金をくれるものもありますし、その中間としてただで本を出してくれると。原稿料は払わないけれども、自費出版のように何部買えというような責任もないと。そういう出版の状況でも、違うわけですね。
 ですから、出版というものは必ずすべて著作者が営利目的でやっているかというと、そういうことではありません。著作者が営利を求めているものというのは、全体の出版物の中のほんの一握りに過ぎないだろうと思われます。
 ですから、そういうものに関しては、アーカイブされて、例えばネットで配信されても著作者にとって、それは大変ありがたいことであるといっていいだろうと思いますし、例えば青空文庫みたいなものになるのも、別に著作権保護期間が切れているとかいないということにかかわらず、これはうれしいことであると言っていいだろうと思います。
 しかし、一方で、ほんの一握りでありますけれども、いわゆる文豪と言われるような作家の作品は、著作権が切れていてもまだ全集が本屋で売られているというような状況にあるわけでありますので、そういう今もなおかつ営利として出版が成り立っているようなものをチェックして、例えば登録制度にするとか、発行後、一定期間たったものについて登録をする、それも特許権のような面倒な登録ではなくて、データベースにこれはまだ本が売れているのだというようなことを書いておくと。それを一覧すればそれがもう今現在売れているかと、あるいはむしろアーカイブした方がいいのかということがわかるようなことにしておいて、それでアーカイブすることによって、営利目的の出版社とあるいは著作者、御遺族等の利益を損なうことがないということがすぐにわかるような状況にしておいて、その限りにおいて、積極的にアーカイブをしたり、それからネット配信するということは、既存の作品を恒久的に社会に残して行き、また利用者がそれに自由にアクセスできるようにする。そのことによって、また新たな研究とか、あるいは創作につながっていくわけですから、そういうものは積極的にやるべきだと思います。
 ですから、その区分け、要するに著作者や出版社の権利を損なわないかどうかということの線引きをしっかりする限りにおいては、なるべく自由にできるようにすべきであろうと思います。
 ただ一言申し上げたいのは、アメリカではフェアユースという言葉で、かなり自由にできるようになっているわけですけれども、その背景としては、アメリカは裁判というものが多くの人々にとって非常に身近なものになっておりまして、一般の人でも陪審員という形で裁判にかかわるということもあるわけですし、弁護士の数も非常に多いので、何か問題があれば裁判に訴えるということになります。
 ですから、利用者の側がこれがフェアユースだと判断して、使っても、訴えられる恐れはあるわけです。そうしますと、使う側も本当にフェアユースなのかという形で慎重になるので、そこで一定の歯止めがかかるということになります。
 日本には、こういう裁判の民衆への浸透度というものがまだアメリカほどではありませんので、というか一般の人々はなかなか裁判というものには馴染んでおりませんので、日本の著作権法というのは裁判しなくてもいいように、非常に細かい規定が書かれているわけです。ですから、一部の方々は、日本にもフェアユースという概念を導入しろと言われておりますけれども、裁判制度そのものの状況が全く違っている状態の中で、一挙にフェアユースという概念を導入しますと、大変混乱が起こるということが予想されますので、ある程度しっかりと今言った線引き、自由に利用していいものと、権利者の権利を侵害するものとの線引きというものを何らかの形で文言としてみんなで考えて、ボーダーラインをつくっていく必要があるのではないかなと考えます。以上です。

【大渕主査】

 野原委員、どうぞ。

【野原委員】

 今日の議題は、アーカイブ事業の円滑化方策についてということで、アーカイブ事業の主な目的は「収集」「保存」「提供」の3つということですから、「提供」をスムーズに効果的に行うために、データベースとして機能することが必要だと思います。
 著作者、タイトル、制作年といった基本的項目で検索できることはもちろん、表紙や目次、本文のワードで検索できるとか、画像であればサムメイルを一覧できるとか、被写体名でも検索できるというように、データベースとして使いやすくする、データベースとしてのレベルがある程度高くする必要があると思います。
 デジタル化してあるものやないものが混じるとか、デジタル化の様式が多岐に渡るために検索の状態で表示させるものやされないものがあるというのでは、「提供」という目的が十分に果たせないのではないでしょうか。
 私としての意見としては、収集、保存の際にはできるだけデジタル化し、再生方式やファイル形式の変化に対しても柔軟に対応できるようにし、データベースとして十分なものにするということにも力点を置くべきだと思います。

【大渕主査】

 瀬尾委員どうぞ。

【瀬尾委員】

 今日の話の中ではアーカイブということですけれども、大きく2つの話をしたいと思います。
 まず、1つ目は、図書館についての議論が今日たくさん出てきて、私も非常に図書館という機能については、大変重要なものであると私個人では思っております。
 ただ、図書館というものの機能が今までのように、本、リアルなメディアを蓄積して、それを貸し出すというような機能を図書館と呼ぶものではもう既にないということは、これまでのいろいろな議論の中でわかってきております。
 とすると、図書館とは地域においてどういう機能を持っているのかという、そもそも論については、やはり一回きちんとお話をしなければいけないのではないかと思います。
 例えば、音楽は扱えるようになってきた時点で、先ほどペットの貸し出しまであるというお話も伺いました。要は、生涯教育という言葉も出てきておりますし、今までとは違った機能と内容を持ったところに変わってきているのだとしたら、いろいろな権利制限規定を適用できるかできないかだけで考えるのではなくて、そもそも図書館という、著作権上どうとらえるのかという部分は、やはり一度議論が必要なのかなと私は考えております。
 さらに、もう少し今回のアーカイブの議論の根本を考えますと、結局、今まで我々が扱った著作物というものが、基本的にアナログであったのが確実にデータになってきた。例えば、音楽にしても、CDになったときにはもうデジタルデータにはなっていたわけですけれども、実際の利用において、データとして流通し始めたというのは、iPodのような、そこで初めてデータとして利用が普及してきた。
 例えば、文書にしても、電子図書がまさにそういったものでしょうし、携帯の文庫もそうでしょう。つまり我々はアナログのメディアからデジタルのデータの普及に段階に直面していて、それをどうするかという議論が根底にあるのではないかと私はそういう視点を持って、今のお話を聞いていました。
 そう考えると、図書館もそういうアナログメディアからデジタルデータの流通に行く途中で、その役割を拡大するのか変えるのか発展するのか、いろいろなことを考えた上で、ちゃんと把握していかないと、1個ずつの事象をやっていくと、または法制度を1個ずつ対応させていっても結局きりがないのかなという感じがいたします。
 ですので、図書館の役割については、1つずつのことも大事ですけれども、そもそも図書館が今後どういう役割をするかという部分について、やはり1度議論をしてから、部分的な対応を考えていく。つまり、法律と社会制度、いろいろなものを総合で図書館について対応するような議論が必要ではないかと思います。
 アーカイブに関しましては今のような時代状況を前提に考えると、やはり利用も違うし、みて便利になるのですが、先ほどの図書館の問題でも出ましたけれども、商業利用と公共と、先ほどのようにお金が回らなくなって、権利者に回らなくなっては、これはそもそもなくなってしまう。かといってどんどん利用を制限かけていくと、先ほどのフォーマットの林立というのは、大変な不便をかけているのではないかと思います。ただ、致し方ないところもあるのではないかと思います。
 ですから、そういうことについて、やはり商業的なきちんとしたサイクルを新しく考えてつくるためのシステム、それがインフラとして必要とされている。そのインフラをつくるためのアーカイブであったり、そのアーカイブを支援する法制度だったりするのではではないかなと思います。
 ですので、単発的な1つずつのお話というのは、アーカイブについて語るときにはどんどん細かなところに入っていってしまうので、このアーカイブという議論については、今の図書館の問題も含めて、もうちょっと根本的な議論からしていかなければいけないのではないかと、非常にそういう部分、ここでやるのかどうか、それはちょっと私にもわかりません。著作権に関することではないものも入ってくるので、わかりませんが、そういうふうな議論なしにこの著作権法上の話だけを進めていくことについてはどうなのかという疑問を持っているというふうなことです。
 ちょっと長くなりまして、申しわけありません。

【大渕主査】

 生野委員、どうぞ。

【生野委員】

 アーカイブに関する円滑化方策、これは当然進めていかなければいけないと思うのですが、ただアーカイブのために制度的な措置をとるというのは、これはなかなか難しいのかなと思います。
 何をもってアーカイブとするのか。その線引きですね。そこら辺がなかなか難しいのではないでしょうか。むしろ、著作者不明の場合、裁定制度をもっと生きたものにする。それが実現した場合、アーカイブの利用も促進されるといったメリットが生じるということで、後づけの話ではないかと。このアーカイブのために制度云々というのは、これはなかなか立法的にも難しいのではないかと思います。
 それと図書館関係についてですが、常世田委員としてもどんどんサービスを多様化して、民業を圧迫するようなことは本来の趣旨ではないと思いますので、特にビジネスとの競合の観点を踏まえた上で、検討しなければいけないと思います。
 図書館において、特にネットワークを通じた利用をどうするのか。一般の利用者に対して、サービスの提供をどうするのかということを検討するに際しては、現行法自体が複製サービスにしても、調査研究が目的という限定がつけられて、かつその著作物も全部ではなくて一部という形になっているわけですね。
 音楽、特にレコードにつきましては、調査研究目的というのは少ない、ほとんどが鑑賞ですとか、娯楽、そういった目的で利用されるわけなので、現在の権利制限規定との関係も考えて、これをネットまで範囲を広げるというのは、慎重でなければならない。ビジネスに非常に大きな影響を与えるのではないかと考えます。
 仮に、ネットまで広げた場合、ベルヌ条約等のスリー・ステップ・テストのうちの、通常の利用を妨げるというところに引っかかってくると思います。ネットワークを通じた利用に関しましては、慎重に検討することが必要だと思います。以上です。

【大渕主査】

 椎名委員、どうぞ。

【椎名委員】

 お話を伺っての感想ということになるんですが、先ほど瀬尾委員からも出ていた話なんですが、過去の著作物の保護と利用ということで、利用の円滑化を考える上でどういう課題があるのかということで、アーカイブについて検討したと思うんですが、やはりいわゆる権利処理上の問題といわれるもののほかに、いろいろなレイヤーで行われているサービス事業間の産業間調整といいますか…図書館を産業といってしまっては申しわけないのかもしれないのですが…サービス同士の調整の部分の課題というのが、権利処理の話よりは先にあるのではないかなという気がしました。
 そこら辺があるにもかかわらず、ややもすると権利処理の話にすぐ行ってしまって、権利制限云々という話になってしまうわけですが、その前に、そういった部分を解決しないと、利用の円滑化は果たせないのではないかなという印象を持ちました。別に、権利処理を円滑化すること自体に権利者はネガティブになっているわけではなくて、そういう産業間のレイヤーの調整なりということをやっていかないで権利処理ばかりに光を当てても、円滑化は達成はできないのではないかなという印象を持ちました。
 それから、常世田委員の2枚目のところに、社会政策上の課題ということで、不許諾になったものについて、これをある種強制許諾みたいな、科学、学術にかかる情報等というおっしゃり方だったのですが、これは一体誰が判断していくのか。どういう基準で判断するのかというのが非常に難しいのではないかなと思って聞いておりました。以上でございます。

【大渕主査】

 金委員、どうぞ。

【金委員】

 私なりに問題を整理してみたので、ちょっとそれを申し上げたいと思います。
 図書館において、デジタル化をしたり、またはデジタル化された情報を利用したりという、デジタル化とデジタル化利用の場合に、2つの観点から物事が考えられるかと思います。
 1つは、許諾が必要かどうか。もう1つは、モニタリングが可能かどうか。課金が可能かどうかというのを閲覧と伝送と出力、コピーという観点から考えられるのではないかと思います。
 まず、1番目の閲覧については、その図書館内における閲覧については、権利許諾は必要ではない。これはモニターすべきでもなく、課金すべきでもないというのは、異論のないところだと思います。
 次に、伝送についてでありますが、許諾が必要かどうかというのは、その対象によって違ってくるとのかなと思います。
 一般ユーザーに対して図書館がデジタル情報を伝送するということについては、恐らく許諾が必要だろうと思います。
 もう1つの場合、公共図書館がその他の公共図書館に対してデジタル情報を伝送する場合において、権利者の許諾が必要かどうか。韓国の場合は、事前許諾をなくしました。補償金制度を導入することで、その権利制限を補完したわけであります。
 この場合は、他の図書館に対して、伝送する場合は、その伝送の情報をモニターすることができるので、それに対して課金をすることができる。補償金という形で課金をすることができるということであります。
 3つ目で、出力でありますが、出力というのは、デジタル情報をアナログの紙の形に、コピーをするということであります。その出力を他の図書館がまたは自分の図書館内における出力において権利許諾が必要なのかどうか。韓国の場合は、権利制限をして事前許諾は必要でないと。
 しかし、それには条件がありまして、その図書館の中のPCに対して、いわゆるコピーカードリーダー、それを設置することを義務づけて、図書館を使うユーザーはコピーカードを購入して、それをPCから出力をする際に、それを差し込んで、出力をする際に、その中にいろいろな料金情報が提示をされます。そこには、補償金の金額であったり、カードの残高で、または用紙の代、そして利用するときの料金の合計と利用後のカードの残高といった形で、きちんと課金ができる。モニタリングができて、最終的にこれをある特定の補償金を管理するセンターというのを韓国政府はつくりましたので、その管理センター全体の補償金の回収と権利者への分配という機能を集中的に行っているというような現状があります。以上です。

【大渕主査】

 三田委員、どうぞ。

【三田委員】

 金さんに質問ですが、翻訳の本というのはどういう状況になっているのでしょうか。

【金委員】

 多分、翻訳した出版社にいくのか、詳細はわかりません。

【大渕主査】

 上野委員、どうぞ。

【上野委員】

 権利制限規定の見直しは難しいという御意見もあるかもしれませんけれども、現状の権利制限規定を見ましても、かなり細かく条件を定めたり、追加的な義務を課したりなど、詳細に規定されておりますので、今後もきめ細かく権利制限規定を見直していくことが可能なのではないかと思います。
 例えば、権利制限の対象となる「主体」に関しましても、現状の著作権法31条は、「図書館等」が主体となる場合に限定されると解釈されていますが、そのような限定をするのか、それともその他の主体も含めるのか、含めるとしてもどういう主体を含めるのか、といったことはどのようにでも定めることが可能であろうと思います。
 また、権利制限の対象となる「行為」に関しましても、複製できるとか、公衆送信できるとか、どのようにでも定めることができます。行為の相手方についても、例えば、図書館等について公衆送信することを許すとしても、その相手方は他の図書館等に限定されるのか、それとも通常の利用者も含むとかということも、自由に定めることができようかと思います。
 あるいは、権利制限の対象となる「客体」についても、著作物一般を対象とするとか、隣接権の対象をすべて含めるとか、発行後5年の著作物に限定するとか、絶版になってから5年後の著作物に限定するとか、あるいはウェブサイトの著作物に限定するとか、そのように客体を限定した規定をつくることもできます。
 また、「目的」に関しましても、例えば、非営利かつ無料の場合に限定するとか、研究目的に限定するとか、あるいは複製物の維持保存のために限定するとか、そういった目的を限定することもできようかと思います。
 さらには、排他権としての著作権は制限するけれども、追加的な義務を負わせるということもあります。例えば、一定の補償金を支払う義務を課すとか、外国の公貸権にあるように国が一定の金銭を支払うよう定めるとか、あるいは利用はできるけれどもDRMをかけなければならない義務を課すとか、どのようにでも定めることはできようかと思います。
 以上のように、権利制限規定を見直す際には、さまざまな観点からきめ細かく条件を定めて規定をつくることができるわけですから、最終的には、そのような内容の規定でコンセンサスが得られるかどうかの問題につきるのではないかと思います。
 現状では、先ほどのようなアーカイブも、ライセンスを得ることが困難なものもあるとはいえ、許諾を得ずにやれば著作権侵害になってしまうのだろうと思います。また、今日御紹介あった中でも、例えばアメリカの「Wayback Machine」というサイト、これはウェブサイトを定期的に保存しているアーカイブですが、ここでは特定の時点のウェブサイトを見ることができまして、私なども非常に重宝しており大変有用だと思うわけですけれども、現状の日本法によれば確実に著作権侵害になってしまうと思うわけです。
 しかし、そうしたものがもし社会にとって本当に有用だというのであれば、これは何らか形で著作権侵害にならないようにすべきだという議論もあろうかと思います。そうであれば、先ほど見たようなさまざまな観点からの詳細な条件づけを行うことができるわけですから、これによっていい落としどころが見つかるのであれば、既存の権利制限規定を見直していくということもやはり円滑化方策としては検討していっていいのではないかと考えます。

【大渕主査】

 都倉委員、どうぞ。

【都倉委員】

 先ほどのNHKのアーカイブスの話の中で、やはり大河ドラマで遺族の同意が得られなくて、アーカイブとして円滑利用ができないというお話があって、どなたかからそれは契約で、できるのかできないのかという、今現状つくっているもの、これはすべての番組、私は、これは絶対、ある程度契約社会ではない日本にしても、将来的なことを考えると、ある程度契約関係というものを確立しておくというものが必要だと思います。
 それともう1つは、やはり我々ドラマの音楽をやると、契約書にサインをしたことはない、こういう社会なのですが、円滑利用ということを考えると、やはりそういうことをクリアにしておかなければならないと思います。
 やはりNHKと同時に民放連も含めて、民放連というのは全然違うところでお相撲をとっているみたいなところがあるので、これはやはりアーカイブという、先ほどいただいた資料の中にも文化遺産として、あるいは貴重な歴史的なものとして、アーカイブとして保存しなければいけないということが書いてあるので、それはもう最低限の担保として、そういうものを契約というものを統一して、しかもそれを実行していくというのが僕は1つの手ではないかと思います。

【大渕主査】

 佐々木委員、どうぞ。

【佐々木(隆)委員】

 アーカイブの問題を図書館における機能の非常に重要な部分として、認識しております。拡大解釈するといろいろと問題が出てきます。機能としては非常にベーシックに考えていただきたいと思います。それと最近は、公共図書館も地域住民の要望に応じて、非常にサービスを多様化しているので、一度アーカイブされたコンテンツは非常に幅広く使われていくという可能性が将来的にはあるわけですね。
 そうなりますと1つは、出版物に関していうと、出版社の権利という部分について、ある程度は言及せざるを得ない状況になってくるのではないかなという気がいたします。
 先ほどの楽譜の場合もそうなのですが、もちろん一般の人に楽譜を複写サービスしているということに関して、出版社単独では現状なかなかクレームをつけにくくて、JASRAC(ジャスラック)さんと一緒にということになると思うのですけれども、やはり図書館の複写サービスや閲覧サービスがデジタル化により多様化するということは、出版社の出版の機能や権利に対していろいろな形で影響を与えることになりますので、やはり出版社への権利問題が重要になります。出版社はどういう権利(隣接権)を持つことがいいのかということも検討すべき課題かなと個人的には思います。

【大渕主査】

 常世田委員、どうぞ。

【常世田委員】

 図書館におけるアーカイブという話になってしまっているのですが、今日、私は最初にお話ししましたように、アーカイブという行為そのものは恐らく技術が向上しコストが安くなるということになると、誰でもすることになるだろうとお話ししたわけで、図書館だけではなくて、日本全体、日本の社会がアーカイビングという行為をどのように認めて、それによって社会はどのように豊かに発展させていくかという議論が必要ではないかと考えます。
 また、図書館対権利者という議論になりがちですが、私はちょっと違うだろうと思います。
 本来は、利用者たる国民一般と権利者という関係で考えないと本質を見失うと思います。図書館は、図書館本来の機能を守ると同時に、利用者の声の代弁をしているのです。直接の要望もありますし、各自治体の議会を通じた要請もあります。もちろん法律上は、コピーなどの主体は図書館になってはいますが、原理的には、日本の社会で著作物をどのように活用するかということに対して、図書館というシステムをいかに利用するかということを国民の意見が反映される形で、最終的には、国民と権利者という形で考えないと、おかしなことになってしまうのではないかと思っています。もっとも一方では、図書館の現場では、権利者の権利を守ることも重要な業務として行なっています。
 それから、先ほどの楽譜の件ですけれども、私が今日お話ししたいと思っているのは、まさにそこでありまして、現行の法律が邪魔になって流通を妨げているというのはちょっと語弊があるかもしれませんけれども、コンテンツの円滑な利用を担保するシステムをつくろうではありませんかという話を私はさせていただいているつもりです。今日のレジメにもわざわざ補償金という言葉を使ったり、それから一括的な処理機構をぜひ立ち上げる必要があるのではないかというお話をしましたのは、椎名委員がおっしゃったように、いろいろなレイヤーでの対応をきちんと個別に図っていく必要があると思うからです。
 最後にまた繰り返しになりますけれども、当事者だけで、国内での議論だけをやっているうちに、諸外国がどんどん制度整備を進めていって、技術的、科学的なコンテンツなどの活用によって国家の活力に大きな格差が生じてしまうことについて、誰が責任を取るのか、というお話をさせていただいたつもりです。

【大渕主査】

 三田委員、どうぞ。

【三田委員】

 この委員会の流れでいきますと、最初に保護期間の延長ということに関してヒアリングをやって、そこで図書館の人が出てきて、今50年で切れているので、その切れたものについてアーカイブをやっていると。これが70年になると、困りますということでありましたので、アーカイブの問題を例えば裁定制度を簡略化することによって、50年の保護期間が70年になっても簡単にできるようにしたらどうかというようなことで、この話が始まったと思うのですけれども、もしもその裁定制度がうまくできたら、例えば本来は許諾が要るわけですけれども、例えばさまざまな文芸家協会等のデータベースに登録されていない、つまり著作者不明のものについては、裁定制度で自由に利用できるようにするということになりますと、そこには一種の権利制限的なものが含まれるかなということも考えられるわけですけれども、そうしますと、これは50年以降のものに限らず、30年にしてもいいわけですし、韓国のように5年というのは、私はいささか短すぎると思うんですけれども、例えば25年とか、それ以上たったものについてデータベース等に登録されていないものについては、なるべく自由に利用できるというようなことを考えていきますと、これは権利制限の拡大というよりは、裁定制度の改革ということだけでもクリアできるのではないかなと思いますけれども、それは今後の皆さんの議論にしたがってまた考えていきたいと思います。
 それから、もう1つ指摘しておきたいのは、今、アーカイブということと、デジタル化ということが盛んに言われているのですが、ひと昔前は、デジタル化というと、それはテキスト文書化するということだったのですが、現在では、ブロードバンド環境になっておりますので、本のページを電子写真にとって、それをデータにするということでも十分に対応できるわけです。
 そうしますと、これは非常に簡単でありまして、テキスト文書化したものを表示するためにいろいろ関門をつくって、ファイルが流出しないようにということをやっているわけですけれども、イメージ文書というのは、非常に簡単に見ることができる。それはストリーミングのような形で、利用者のパソコンにコピーが残らないようなこともできるようになっておりますので、普通の本をパソコン上で開いてみるという形で見るということは可能なのですね。
 ただ、問題なのは、図書館にあるすべての本をある言語で検索をするということになりますと、検索するためにはテキスト文書化してなければならないのです。グーグルとかアマゾンの検索システムは全部どこかでテキスト化されているから、検索が可能なわけであります。そうしますと、裏でテキスト文書化していないと検索は不可能でありますので、そういう問題もあると思いますので、デジタル化というものに関して、一括して議論するのではなくて、イメージなのかテキストなのかということも区分けして考えていく必要があるのではないかなと思います。以上です。

【大渕主査】

 ありがとうございました。
 それでは、時間も迫っておりますけれども、本日、大体の方向性についてはいろいろな方向性から、アーカイブの問題に御議論いただきましたが、このアーカイブ、特に公開範囲につきましては事業者側の意見も含めまして、より細かな議論というか、あるいは調整というものが必要かと思われますので、関係者等で一定の整理をいただいた後に、その上で、改めて本小委員会で御議論していただいた方が効率的なように思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【大渕主査】

 特に、御異論ないようですので、それでは、前回の小委員会で決定されました共有の規定と共同実演に関するワーキングチームの設置と合わせて、この小委員会に2つのワーキンググループを設置することとしたいと思います。詳細については、事務局から簡単に御説明をお願いいたします。

【著作権調査官】

 資料6の方を御覧いただければと思います。
 前回、共有について、専門的にまず整理すべきとされましたけれども、今回のアーカイブ関係を含めて、きちんとワーキングチームでどういう形でやるのかを整理しておこうということで、資料を御用意させていただきました。
 ワーキングチームの設置としましては、12、共有とアーカイブとそれぞれ御議論いただいたとおりでございます。
 中身でございますが、構成は法制問題小委員会の下においてありますワーキングチームにならってございます。ワーキングチームには座長を置きまして、小委員会の委員のうちから主査の指名、それから、各座長は小委員会の委員のみならず、そのほかのワーキングチーム員として必要な方を若干名指名して、文化庁から協力を依頼する。
 検討方法としましては、必ずしも会議の開催という検討方法に限定せず、メーリングリストの活用などによって機動的な検討も可能とするように柔軟に検討を行う。その場合、会議は非公開ですが議事要旨を作成して公開する。
 このように、法制問題小委員会と同じような形にしてはどうかと考えております。よろしくお願いいたします。

【大渕主査】

 ありがとうございました。
 ただいまの御説明のとおり、ワーキングチームの設置については、御異議ございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【大渕主査】

 それでは、ワーキングの設置につきまして、小委員会の決定といたしたいと思います。
 人選につきましては、また改めてこの小委員会で御報告いたします。
 時間が過ぎておりますので、ほかに特段ございませんでしたら、本日は、このぐらいにしたいと思います。
 なお、今期の小委員会も日程を考えますと、残り1回ぐらいの開催かと思いますから、事務局から連絡事項がございましたら、お願いいたします。

【著作権調査官】

 本日は、ありがとうございました。
 次回の小委員会の日程はまだ決まっておりませんので、決まり次第また御連絡させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。以上です。

【大渕主査】

 それでは、本日は、これで文化審議会著作権分科会の第10回過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会を終わらせていただきます。
 本日も、熱心な御議論ありがとうございました。

(文化庁著作権課)