資料3

共有著作権関連規定の見直しに関する論点について

1.提案された主な意見の内容

【参照条文】著作権法(抄)

(定義)

第2条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
  • 十二 共同著作物 二人以上の者が共同して創作した著作物であつて、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないものをいう。

(共有著作権の行使)

第65条  共同著作物の著作権その他共有に係る著作権(以下この条において「共有著作権」という。)については、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡し、又は質権の目的とすることができない。
2  共有著作権は、その共有者全員の合意によらなければ、行使することができない。
3  前二項の場合において、各共有者は、正当な理由がない限り、第一項の同意を拒み、又は前項の合意の成立を妨げることができない。
4  前条第三項及び第四項の規定は、共有著作権の行使について準用する。

2.過去の著作権分科会における検討

第2節 共有著作権に係る制度の整備について

3.主な議論のポイント

1 合意の成立を拒むことができる「正当な理由」をどのように考えるか。

(出典;加戸守行『著作権法逐条講義第5訂新版』)

◆「正当な理由」が認められた裁判例

◆「正当な理由」が認められなかった裁判例

  • 「正当な理由」の判断基準について何らかの指針を示すことは可能か。
  • 可能であるとすれば、どのような内容になるか。

2 共に著作物を創作することによって成立した共有関係と、相続などによって生じた共有関係とで、ルールに違いは生じるのか。

3 一つのコンテンツに対して複数の権利(歌詞、楽曲、脚本、映像等)が存在している場合にも、共有著作権規定と同様のルールを適用することについてどのように考えるか。

【参考1】現行著作権法における共有に係る規定

 共有著作物の創作意図及び共有著作物の著作権の一体的行使の観点、一般財産との対比における著作物利用の性質の特殊性等を考慮して、著作権法には、民法の共有に関する規定の特例規定が設けられている。

◆民法の規定との比較

  著作権法 民法
人格権の行使 全員の合意が必要(第64条)
  • 信義に反して、合意の成立を妨げることができない。
 
共有持分の割合の推定 (注9) 各共有者の持分は相等しいものと推定(第250条)
持分の譲渡又は質権の設定 全員の同意が必要(第65条第1項)
  • 正当な理由がない限り、同意の成立を妨げることができない。
(持分の譲渡は自由とされている。)
持分の放棄及び共有者の死亡 (注9) 当該持分は他の共有者に帰属(第255条)
権利の行使 全員の合意が必要(第65条第2項)
  • 正当な理由がない限り、合意の成立を妨げることができない。
【管理】持分の価格に従い、その過半数で決する。(第252条)
共有物の分割 (注9) 各共有者はいつでも請求できる。(第256条)
差止請求 単独請求可(第117条) 単独請求可(第252条但書)
損害賠償 持分に応じて単独請求可(第117条) 持分に応じて単独請求可

【参考2】個別規定の趣旨

●共同著作物の著作者人格権の行使(第64条)
●共有著作権の行使(第65条)
●同意・合意を得られない場合

 訴訟を提起し、被告の意思表示を命ずる判決を得ることによって同意又は合意の効果を得ることができる(民事執行法174条)。

【参考3】共同著作物の成立要件

1創作的関与(注10)

(出典;加戸守行『著作権法逐条講義第5訂新版』)

2共同性

 共同関係の内容としては、客観的要素(創作という行為が共同して行われたこと)によって判断する見解や主観的要素(創作行為が共同意思のもとになされたこと)によって判断する見解に別れている。

3分離利用不可能性

 各人の分担部分を切り離してそれぞれに利用することができないもの

(出典;加戸守行『著作権法逐条講義第5訂新版』)