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資料3

第13回著作権分科会における著作権法改正要望に係る委員の発言
(第13回文化審議会著作権分科会(平成16年8月2日)議事録抜粋)


【三田委員】
   資料5の1ページの4番目のところに,ゲームソフト等の中古品流通のあり方ということが書かれてありまして,中古販売で従来から言われていることは,ゲームソフトや音楽CDの場合,デジタルでありますので,簡単にコピーができる。これはクロンコピーと呼ばれまして,もとのものと全く同じものがコピーされてしまう。そのことに対する著作者の権利を守らなければならないというような文脈で書かれることが多かったんですけれども,書籍の場合には,書籍をコピー機でコピーしましても,製本がうまくいきませんので,もとのものとは違うということで,デジタルなものと書籍のようなものとを区別して考える考え方があります。
 確かに手元に本を置きたいという欲望を私たちは持っております。ですから,従来は本を購入した人から,その譲渡に対して対価を求めるという形で著作権使用料をいただいていたわけでありますけれども,昨今は読書の事情も変わりまして,読者の多くは,本を所有するということにはあまり関心を持たないという状況があります。それから,漫画や推理小説なようなもの,推理小説は,読み終えて犯人がわかったら,もう二度と読まないというものが多いんですね。ですから,音楽CDのようにコピーをとって繰り返し聴くということがなくても,古本屋で本を買って推理小説を読んで犯人がわかってしまったら,もう物体としての書籍には価値がないということで,また古本屋に売りにいくということが起こります。読者の立場から考えますと,読者は,とにかく推理小説を読んで犯人がわかればいいわけです。そうしますと,新刊書を購入して本を保有している人も,古本を買って犯人がわかって,それをまた売った人も,同じように本を読むということを享受しております。
 これに対して,本を買った人は著作権使用料を払っているのに対して,古本を買って古本を売ってしまった人からは,古本屋にはお金を払っておりますけれども,読者は対価を払っていないという状況が起こっております。こういうことについて,書籍というものを楽しんだ人から平等に著作権使用料をいただくというのが,本を生産したり,著作物を書いたりする者の当たり前の考え方ではないかなと私は考えております。
 以上の論点から,中古品の流通に対して,デジタルと,それから一般の書籍とを区別するようなことなく,平等に検討していただきたいと思います。
 以上です。

(中略)

 私は,著作者の代表でありますので,著作権を守る立場でありますけれども,しかし,我々は,ただ我々の権利を守るというだけではなくて,例えば書籍の読者の立場に立って,読者の知る権利や読書権を守っていくということも考えていきたいと思っております。例えば視覚障害者の方たちや,それから,識字障害といいまして,脳梗塞などになりますと,話はできるんだけれども,本が読めないという人がおります。それから,学習障害児童というのがおりまして,これも本が読めない。しかし,録音図書,朗読テープのようなものを聞かせますと,一定の理解ができるというような人たちがおります。そういう人たちにとっては,録音図書というものは非常に重要なものでありますけれども,現在,図書館等で録音図書をつくるときには,著作者の許諾が必要であるということになっております。図書館のほうからは,これを権利制限の拡大の中に入れてほしいという要望が常に出ておりまして,私としては,著作者の権利を守りながら読者の読書権も保障していかないといけないと。
 この点については,難しい点もあるんですけれども,読者にとって本を読む権利というのは,基本的人権に属するものであろうと思われますので,私としても,著作権を守るだけではなくて,どういう形で読者の読書権を保障していきたいかということを考えていきたいと思っております。
 それから,録音図書については,点字図書館等の福祉施設に関しては権利制限の中に入っているんですけれども,現在,点字図書館は録音図書のインターネット配信ということを既に実施しております。ところが,これは公衆送信でありますので,従来の権利制限の中には含まれておりませんので,点字図書館に既にできている膨大な録音図書は,今のままですとインターネットでは配信できないということになっております。これについても,あるいは先ほどの一般の図書館における録音図書の作成についても,文芸家協会では,文芸家協会に登録している人については一括許諾を出すと。それもリストをお渡しして,そのリストに載っている人については,自由に録音図書をつくったり,インターネットで配信するのはオーケーですというふうに申し上げているんですけれども,文芸家協会で管理している著作者には限りがありますので,現在のところ,視覚障害者等,学習障害者,識字障害も含めて本来読書権を持っている人の読書環境が,著作権法があるために損なわれているという実情があります。この著作権の会議というのは,どうしても経済的なものに傾きがちでありますけれども,一般の読者の読者権をどうやって保障していくのかというようなことについても検討を続けていかなければならないのではないかと思います。
 以上です。

【角川委員】
    ブロードバンドの問題があります。著作権がブロードバンドの普及でどうなっていくかということ。それから,デジタル化の問題とブロードバンドというのは,まったく視点が違うところがあると思います。デジタル化されないとブロードバンドに流れないという問題はあるんですけれども,その場合に,ブロードバンドに熱心な学者,あるいは国会議員から,著作権法をもっと簡単にしろと,簡素化というふうな言葉も言われております。もっと極端な例では,著作権法でも報酬請求権を一本にしろとか,そういうような乱暴な意見が出ているんですけれども,そこら辺については,ここの審議会ではどういうふうに対応していったらいいのかを出していただきたいと思うんです。

【入江委員】
   毎回申し上げていることで大変恐縮なんですが,追及権の問題については,古くて新しい問題と言われておりまして,関係団体の協議を促してはいるんですが,さまざまな事情があってそれが実現していないわけで,これは早急に具体化する段階にはありませんけれども,課題としては,この委員会の課題として残しておいていただきたいと,そのように思います。よろしくお願いいたします。


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