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資料2


「日本販売禁止レコード」の還流防止措置


○検討結果

   積極的な国際展開を実施し、市場が拡大することによって得た利益を日本の消費者にも還元することが可能となることや、60ヶ国以上の国において、「みなし侵害」、「国内・域内消尽の頒布権」、「輸入権」など著作権法により何らかの方法で還流防止措置を講じている現状をみると、還流の実態のある音楽について、我が国だけが国際競争力を持ち得ないということになってしまうといった指摘がなされた。また、正規品の適正価格の流通により、現地のライセンシーの協力も得られ、海賊版対策に役立つこと、還流レコードにより国際展開を控えなければならない状況を解消できるとすれば、著作者等の創作のインセンティブにも寄与することとなることなど、日本の音楽レコードの還流を防止する措置を導入すべきとの意見が示された。
   また、ライセンシーに対する契約により対応できるのではないかとの意見があったが、現在でもライセンシーに対して、許諾地域外への販売禁止や許諾地域外流通商品に関する調査義務を課すなど、契約による還流防止対策を講じているが、契約は当該当事者間にしか効力が及ばないため、二次卸や小売店からの流出を制限することは困難であるとの意見があった。

   他方、消費者への利益還元のための最もよい手段は「競争」であり、音楽レコードの還流防止措置が導入されると、再販制度という独占禁止法の極めて例外的な規定により、国内市場での競争がない上に、さらに海外から輸入されるレコードとの価格競争がなくなり、レコードの価格が高止まることが懸念され、また、価格が高止まれば、一部の消費者にしか購入されなくなることにより、かえって国内の市場が縮小してしまうという可能性もあるとの意見もあった。さらに、音楽レコードに対する再販制度の問題も含めて、公正な市場を形成するという視点を踏まえた議論を行うべきとの意見もあった。
   また、著作者等の創作のインセンティブを確保することは重要であるが、還流防止措置を導入しないと創作インセンティブを確保できないとは思えないとの指摘があった。

   消費者の利益を考慮し、輸入を含めた商品の流通の自由を最大限尊重するとの観点から、市場分割につながる一般的な輸入禁止措置の導入には慎重であるべきであると考えられ、一般の著作物等を対象として、還流防止措置を実施することは適当ではない。ただし、1還流の実態の存在、2国外における需要が高く、積極的に国際展開が可能、3還流の障壁となる言語の問題がない、4リージョナルコードによる対応など還流を防止する技術的手段がない、といった現在の我が国の音楽レコード特有の実態から、実際にみられる還流問題の影響の大きさや、海外からの日本の音楽の需要に応え市場の拡大による音楽産業の国際競争力を高める必要性にかんがみ、日本における販売を禁止したレコードについては、あくまで特例的な措置として、還流防止措置が(必要であるという意見も示された。)←(28日の議論を踏まえて適宜修正)

   還流防止措置を講ずることとした場合には、内国民待遇の原則から、法制上は、日本の音楽レコードと欧米諸国等の音楽レコードに係る保護の取扱いを異にすることはできないことから、日本の音楽レコードの還流のみならず、欧米諸国等の音楽レコードの当該国からの輸入にも影響を与えることとなるという問題がある。この問題については、例えば、還流防止措置の対象を日本における販売を禁止することを条件にライセンスされ、かつその旨が表示されている音楽レコードに限定するなどして、実質的に影響を与えないようにすることも考えられるとの意見もあった。


         (結論については、28日の議論を踏まえて追記)

(還流防止措置を設けるべきとの結論に至った場合)

   なお、「日本販売禁止レコード」の還流防止措置が実施された場合には、日本のレコード製作者は、日本の消費者に対する利益の還元という観点から、日本の音楽レコードの価格の引き下げ、再販制度の一層の弾力運用、国内商品の付加価値の向上など、積極的な国際展開によって得た利益を消費者に還元する様々な努力を継続していくことが必要である。
   また、日本のレコード製作者が積極的に国際展開することにより、日本の音楽産業の拡大が図られ、我が国の国富の増大を実現するためには、「日本販売禁止レコード」の還流防止措置が実施された後もその効果を検証する必要がある。例えば、海外へのライセンスレコードの供給の増加状況、日本の市場におけるレコードの価格の推移、日本の消費者に対する利益の還元の実態など、「日本販売禁止レコード」の還流防止措置の実施後もその効果を常に注視し、必要な見直しを図るべきである。



1   なお、レコードの還流問題解決のために、輸入を制限する最小限度の著作権法上の措置を講ずることはやむを得ないと表明した日本経団連は、「権利の対象」は、音楽CDとそれに類する製品に限定すべきこと、「権利の内容」は、みなし侵害として捉え、また、洋楽レコードや個人輸入に影響が出ないようにすべきこと、「権利の期間」は、輸入権は一定期間経過後に消滅させることとし、継続の是非については、その時点で改めて検討すべきであることを提案している。



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