審議会情報へ

文化審議会

2003年11月28日 議事録
文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第7回)議事要旨

文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第7回)議事要旨



1    日   時        平成15年11月28日(金)10:30〜13:00

場   所   文部科学省分館2階201・202特別会議室

出席者   (委員)
中山主査、石井、入江、上原、岡村、金原、上出、児玉、後藤、菅原、瀬尾、常世田、土肥、野村、生野、松田、山地の各委員、齊藤分科会長、小熊分科会委員
(文化庁)
素川文化庁次長、森口長官官房審議官、吉川著作権課長、俵著作権調査官ほか関係者

   配付資料

資料1    文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第6回)議事要旨
資料2 「日本販売禁止レコード」の還流防止措置
資料3 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会報告書(案)

   概   要

(1)    「日本販売禁止レコード」の還流防止措置について
   「輸入権」の創設に関し、本来の趣旨を性格に反映するため、「日本販売禁止レコード」の還流防止措置として名称を変更した。
   今回も前回に引き続き、著作権分科会委員である小熊竹彦日本生活協同組合連合会政策企画部部長が同席。
   最初に各委員から順に下記の質問事項から意見発表が行われた。
   
 
質問事項要旨
「現段階」でのレコードの還流防止措置の必要性
(必要/必要でない、またその理由)
  【必要であると考えた場合】
      ○どのような方法で還流防止措置を施すべきか
  【必要でないと考える場合】
      ○今後の対応をどうするべきか
消費者の利益についてどのように考えるか

:緊急避難的かつ暫定措置的な何らかの還流防止措置を設けることはやむを得ないと考えるが、消費者に不利益にならないよう配慮は必要。立法上は、現在の国際消尽の原則は維持しつつ、例えば「みなし侵害」として規定するのが適当ではないか。また、暫定措置として一定期間後は特に必要性が認められない限り、延長しないという措置が適当である。
   
:国内外の価格差があるため、還流による業界内に混乱を生じさせないためにも、ある程度の還流防止措置制度は必要なのではないか。立法上は恒久的ではなく暫定的な措置が必要と考える。
   
:アジア諸国からの還流実態を踏まえると、ある程度、還流防止措置の対応をする必要があると考えられる。産業政策的な問題であるため、著作権法ではなく、不正競争防止法の対応が望ましいと思われる。但し、GATTやWTOの関係で立法することが困難と聞いているので、著作権法で仮に何らかに対応するなら、国際消尽の原則を変えるのではなく、何らかの「みなし侵害」という形態で、限定して対応すべきである。例えば立法技術上可能か否かわからないが、「販売地を指定した又は販売地を明示的に除外した商業用レコードにおいては国際消尽しない」ということでできないか。
   
:原則として必要はない。発展途上国等で作成されたレコードは強制許諾で作成されたのではなく、権利者の許諾を得て作成されているため、権利者は相当程度、許諾契約時においてコントロールすることができるはずである。その理由から必要はないし、今後の対応も必要ではない。但し、他国において著作権法により還流防止制度がある状況があるならば、我が国だけがそのような措置をとらないのは望ましいことではないので、他国の還流防止制度がいつどのような目的で導入され、レコード製作者だけか、それともそれ以外の権利者全般なのか、著作権法にはどのような理屈で導入されたのかを把握し、導入後の現状、今後の対応を総合的に把握した上で具体的な方策を考えるべきではないか。
   
:アジア市場において日本文化の普及又は日本の音楽レコードの国際競争力を高める意味において、著作権法による還流防止を措置する必要はあると思われる。その措置としては当分の間とし、欧米のCDについても音楽文化の普及のためにアジアの特定国あるいは特定地域限定(当然日本は除外されている)でライセンス契約されているものがあると思われるので、それについても日本への輸入を内国民待遇の原則に従って禁止する措置が必要である。消費者利益に関しては、それぞれの国において産業の競争基盤が異なっているのは当然であるため、日本の競争市場とある特定国における競争市場は分けて考えるべき問題である。
   
:アジア地域では日本の70年代の楽曲のニーズが非常に高い。韓国においては来年1月から第4次文化開放により日本の音楽CDが全面解禁となるので、現地でのレコード販売が非常に重要なものとなる。それが結果として還流に結びつくと日本音楽レコードの海外進出を消極的にさせる恐れがあるので、何らかの還流防止措置は必要である。消費者とは実際にレコードを購入する、コンサートにいく等の正に音楽を愛する人たちのことであり、アジア地域への音楽マーケットの拡大はこのような音楽愛好家の利益に繋がることになると強く信じている。
   
:ビデオ・DVD等と違い技術的に還流防止措置が施されていない音楽レコードについては緊急避難的な措置として時限立法する必要がある。日本のコンテンツ産業のGDPをアメリカ並みにすべきであり、そうであるなら、コンテンツの海外展開は当然のことである。立法としては国際消尽の特例規定を設けたらどうかと考える。消費者利益に関してはレコードの価格を下げるといったことは企業努力として必要であると思う。
   
:還流の一番の問題点は海賊版を生む土壌になるということだ。現段階において何らかの歯止めをする必要はあり、レコードのみでなく、映画等が入る形で「レコード等」としていただきたい。消費者の利益保護の観点においては、必ずしも安価なものが消費者利益に繋がるものではなく、良質で適正な価格で消費者に提供することが、消費者利益に繋がるのではないか。
   
:レコードの還流防止措置は必要である。日本の知財立国でのコンテンツ保護と活用を促進するためにも国際市場を考慮することは当然の話であり、その際何らかの障害があるのなら、それに対する対応策を講ずるのも当然だからである。具体的な措置として、他のしがらみを考慮しなければ、譲渡権の国際消尽の特例であり、暫定的な措置ということで必要がある。また、還流防止措置を講ずることで、アジアにマーケットが拡大することで、そこで生まれた果実は、当然に消費者に還元されるべきであり、そうなることは強く期待されるものである。
   
:急激な社会的な変化により、何らかの措置を柔軟に講ずることができなければ、一つの産業が壊滅的なことになること、現在、既に実害が出ているなど、経済的な問題も非常に多く含んでいること等から、契約上で解決する可能性はあるものの、知的財産戦略に基づきコンテンツ産業の育成という観点からも非常に時限的ではあるが、何らかの措置を講ずる必要はある。著作権法において弾力的な措置をすべきと考える。消費者の利益としては、長期的な視点で見ると、権利者が良質のものを創作できる環境を整えることは結局は消費者の利益になると思われる。一方的に安価なものを妨げるという点だけをもって、消費者の利益を考えるべきでない。
   
:この問題を著作権法で対応することは問題があるのではないか。これは一種の産業の保護政策としての国全体の問題であり、レコードだけに限定すること、他の分野へのバランスの問題もある。法規制により、この問題の解決を図ることは流通を阻害することにはならないか。経済的な支障があるので何らかの緊急的措置は必要かもしれないが、それが何故著作権法なのか。他法制による保護を検討すべきではないのか。また、そもそも契約で本当に還流を防止することがコントロールできないのか、別に海賊版ではないので、何らかのコントロールができるのではないかと思われる。アジア諸国でのレコードの適正価格の問題は外交政策上の問題であり、将来現在の日本とアジア諸国の経済バランスが逆転した場合にこの問題をどう考えるのかも必要である。再販制度と還流防止をすることは適正価格を維持するためとあるが、この適正価格とは何なのか。
   
:レコード還流の問題状況はそれなりに理解はしている。還流防止措置の保護対象は誰なのか。隣接権者のみなのか、それとも著作権者にも与えるのか。隣接権者に対してのみあれば、TRIPS協定違反にはならないが、著作権者に対して与えるとなると、内国民待遇上の問題が生じる。仮に隣接権者のみであっても、GATTの問題をクリアする必要があり、このような懸念される問題があるにも関わらず、十分な検討をしないで制度を導入し、途上国等の他国から提訴されることは我が国としては避けなければならない。邦盤レコードだけに限定した仕組みについて考えられているが、その場合、洋盤レコードの権利者が関税定率法の提訴をしたときにどう対処するのか等、問題点は多いので慎重に検討を進めていく必要があることから、輸入権のような仕組みを現段階で導入することは反対である。
   
:還流の問題は本来ライセンス契約で対処すべき問題である。レコード製品に対する内外格差は市場で調整されるのが本来であり、輸入権という形で還流を防止することは国内での価格を下げるというインセンティブは全く働かないことは消費者の利益にとって問題である。ただ、多くの国でこのような措置が取られ、日本だけが原理原則を貫くのも賢明ではないが、理論的な説明を行うことは非常に難しく、日本文化の普及という政策的な配慮があるにしても、どういった形でするのか、再販制度も含め、他の商品とは違いレコードだけにそのような措置をとることができる理論的な説明ができる検討が必要と考え、現段階でレコードだけに輸入権という形で措置することは賢明ではない。
   
:アジア諸国における日本音楽文化の普及、国際競争力の強化といった点から制度的な措置を是非お願いしたい。来年1月からアジアでは日本に次ぐ音楽マーケットをもつ韓国で日本音楽CDの全面解禁があり、早急な対応が必要である。具体的な措置方法としては、「みなし侵害」、「国際消尽の特例」等があるが、実現性の高い方策で詰めていただきたい。これまでの日本1億3千万人のマーケットからアジア30億人を対象としたマーケットに拡大することで、そこで得た利益については消費者還元することは不可欠のことであり、またそうなることを強く信じている。
   
:還流措置の必要はないと考える。現段階において必要を「是」とする議論が十分になされていない。日本の国際競争力をいかなる方法で形成すべきかという高度な総合的な判断を要する事項であり、著作権の法制面の専門家だけでなく、経済法、経済政策、アジアにおける日本製品の市場形成に関し検討し得る専門家を加えて議論すべきものである。現に日本で国際競争力を得ている企業はこれまで著作権法や特許法による、関税以外の還流防止措置をとることが不可能ではなかったにも関わらず、世界市場を築いた実績がある。レコードのみに法制上還流防止の措置をすることはアジア全域で承認し得るのか不安を残している。
     今後の対応としては、両論を併記し、主査一任の上、パブリックコメントによる意見集約が必要と考える。これは他省庁の意見も踏まえ、その後、早急に小委員会を開催し議論すべきと思われる。消費者の利益については、競争のある市場において消費者が選択権を持つことが消費者の利益であることを確信している。競争ある市場において消費者が選択権を持つのであれば、どの商品をいくらで買うのかは市場が決めることである。
   
:還流防止措置は、問題となっている音楽CDに対象を限定した上での必要性は認める。但し、いくら対象を限定したとしても、他の著作物に輸入権の問題が波及することの懸念は払拭できない。仮に具体的な措置をするとすれば、立法上は「みなし侵害」での対応になると思われ、時限立法的なものが適当であり、附則で一定期間後の廃止を含めた規定にすべきと思われる。消費者の利益については、再販制度もあり、かつ、輸入権で国際市場分割をするので、当然大きな影響はあり、再販制度の見直しは必要である。洋盤の並行輸入は止めないという話だが、内外無差別の原則から仮にアメリカの5大レーベルから輸入禁止の表示をさせないという運用が行われたら、日本では公正取引委員会が問題にし、アメリカでは5大レーベルの株主による株主代表訴訟の問題もあり得るので、並行輸入についてはきっと止まると確信している。是非、公正取引委員会の意見も踏まえ判断すべきである。
   
:「再販制度」がある中でのレコード輸入権の導入は明確に消費者利益に反するものであり、絶対に反対する。仮に暫定的な措置を講ずるなら、「再販制度」も暫定的な品目からの除外もセットで提案していただきたい。世界で輸入権のような還流防止制度を導入している国で再販制度を維持している国は一カ国もないことを踏まえる必要がある。競争が全く働かない中で、消費者利益への還元で音楽CDレコードの価格を下げるといった話は何の保証もないことであり、到底信じることはできない。本当に下げることができるならば、データ等できっちりと示していただきたい。
     関係者間協議はまだ消費者団体及び公正取引委員会との合意が得られていないので、概ね成立しているとは言えない。また、名称が以前の「輸入権」の創設から、「日本販売禁止レコード」の還流防止措置に変更されているのが大変奇異に感じる。小委員会として何らかの説明責任があるのではないか。そもそもこの法制問題小委員会に消費者代表が入っていないことが問題であり、特にレコード輸入権については、「知的財産推進計画」に消費者利益の観点も含めて審議することになっているので、この小委員会で結論を得ることは考えられない。
   
:還流防止措置は暫定的に何らかの措置は必要であると思われる。近年の著作権の国際的な条約に関する議論においても産業政策的な視点が強く出てきている部分がある。以前、条約上の会議で日本は「輸入権」反対の立場をとっていたが、昨今の状況の変化による事情が産業政策の側面がかなり強くなってきており、いつまでも理想主義で原理原則でいくのではなく、自国の産業政策上の観点から必要性を認めてもよいのではないか。

   以上、各委員から「日本販売禁止レコード」の還流防止措置についての意見が終了し、事務局の補足説明等、若干の意見交換が行われた。
      (委員:○、事務局:●)
:関係者間協議の当事者とは、昨年の分科会審議経過報告にある協議に関する表に記載されている関係当事者であって、この「輸入権」の創設に関しては、要望としている(社)日本レコード協会と反対を表明している(社)日本経済団体連合会が協議を行い、11月に漸く双方の合意が得られたものである。消費者利益に関しては、本小委員会において1つの論点として議論されており、消費者団体に所属されている委員からもヒアリングを行っていただいたところである。従って、この時点で、消費者団体を関係者間の当事者として組み入れ、協議が終わるまで審議会として議論を待つという必要はないと考える。
   
:いわゆる「輸入権」の創設という言葉を「日本販売禁止レコード」の還流防止措置と変更したのは、「輸入権」という言葉が、支分権としての「輸入権」と受け取られる恐れが強いことから、実際の審議事項を一般の方に正しく理解していただく必要があると考えたためである。今までの議論においても、「輸入権」という支分権に賛成する委員もなく、日本レコード協会からの提案も支分権ではない。従って、本来の議論を忠実に反映する名称として、「日本販売禁止レコード」の還流防止措置についてとしたものである。
   
:関係者間協議は、法的根拠はなく、事務局側で作成された特に審議会で決定したものではないことを確認した。「知的財産推進計画」によれば消費者利益の観点等を含めて議論すべきとあるのに、7月以降、私の方から事務局に説明を求めた10月下旬まで何らの意見聴取もなかった。本来であれば、消費者団体に対し何らかの呼びかけを行うべきではなかったのか。この場で意見を言ったからいいという問題ではない。また、著作権分科会でも「知的財産推進計画」でもテーマは「レコード輸入権」であり、突然名称が変えられる意図がわからない。
   
:「日本販売禁止レコード」の還流防止措置に関する主査個人の意見も聞かせていただきたいのだが。
   
:知的財産の一学者として、本小委員会の一委員として意見を述べる。まず、アジアに進出するため、海外展開するために還流防止措置が必要という状況については理解しているが、必要があるだけでは法律にはならない、条文に書けるものでないといけない。法律上は、「みなし侵害」であろうが、国際消尽の特例であろうが、内外人平等で外国を差別することはできない。洋盤を止めることはできる条文にせざるを得ない。仮に運用で行うにしても、WTOの精神に反することを運用で行うことは非常に難しい。しかし、日本の現在のコンセンサスが洋盤まで止めることについてあるのか否か、ないのなら条文としても書きようがない。
   再販制度との問題もある。再販制度より国内価格競争をしない、輸入権等により海外価格競争をしないことになり、そのような例はほとんどないわけであるから、知的財産の専門家だけでなく、競争法の専門家の意見も十分に聞く必要がある。また、他の著作物等への影響も十分に考える必要がある。現時点では個人的にきちんとした条文ができるのかは疑問に感じる。ただ、政治的な状況等の諸処の状況があるので、どのようにこの問題を扱うかは別の問題はあるにせよ、法的においてもう少し議論を詰める必要がある。
   
:商業用レコードに限定するとなると、ローマ条約の内国民待遇になるが、このあたりの措置をどうするのか。
   
:条約に規定されていない、いわゆる輸入権の問題について、国内のレコード製作者だけに限定した規定を設けることは、ローマ条約との関係であっても、TRIPSの関係であっても可能であると思われる。ただWTOそのものの問題はあり得るが、その点については現時点ではどうなのかはわからない。ローマ条約とTRIPSとの関係でいえば、隣接権者に絞った形の権利であれば、日本のレコード製作者に限定した規定は条約違反にはならない。
   
:現実問題として日本は先進国であり、アメリカ等から日本がそのような内外国差別をするのはよくないという圧力がかかることは当然予想されることである。
   
:日本レコード協会としては、基本的には内外国無差別で提案している。洋盤の並行輸入については、これまでのビジネススキームを維持するという話であり、あくまでも権利者の意思で行う話である。また、消費者利益に反する、洋盤の運用部分で問題が生じる等が出てきたら、当然のことながら、制度を一定期間経過後に廃止を含めて見直しを行うことについては全く異論はない。再販制度に関しては、期限も永久ということではなく、2年間の時限再販から、最近では6ヶ月間に向けて短縮してきている。今後もレコード業界としては再販制度の弾力的運用を引き続き行っていきたい。
   
:「再販制度」の趣旨は価格が拘束はされることになるが、それ以上のメリットが消費者にあるという判断である。再販制度の意義というものは単に価格拘束される部分だけではないことを理解いただきたい。
   
:アジア諸国に日本の音楽CDを広く普及させるためにも、還流が生じない措置は必要であり、緊急措置あるいは何らかの措置をお願いしたい。
   
:「商業用レコード」にせよ「レコード」にせよ、対象範囲が非常に広すぎるので、業界として非常に懸念をもっている。携帯電話等、音を付けたものは現在世界中に流通しているので、そういうものに対しても輸入権がはたらくことはとんでもないことであるので、是非限定した表現にしていただきたい。経団連の意見については、「附則において一定期間後に廃止を含めて見直しこと」を正確に明記していただきたい。
   
:輸入権を暫定的な措置として規定するなら、再販制度も暫定的な措置として見直すことを検討することを改めて意見する。資料2の事務局案については結論がよくわからないので、きちんと整理していただきたい。
   
:「知的財産推進計画」にいうレコード輸入権というのは、「海外企業との正規ライセンス締結を促進するため、音楽CD等の日本への還流を止める『レコード輸入権』」のことであり、内容的には現在議論している「日本販売禁止レコード」の還流防止措置と全く同様であることを確認する。
   
:報告書の扱いは先ほど言ったのだが、報告書のこの部分を両論併記にして、パブリックコメントにより他省庁の意見も集約し、もう1回この問題を議論すべき場を設けるべきである。緊急やむを得ない措置は著作権法の立法趣旨としてはないはずである。
   
:パブリックコメントを得てから再度議論すべき場を設けることについて日程的にはどうなのか。
   
:パブリックコメントは1ヶ月ほどの時間をとるのが通常である。仮に現在の分科会のスケジュールを勘案すると、分科会終了後、パブリックコメントを行い、来年の1月か2月に再度分科会を開催し、小委員会で議論することになる。この場合難点となるのは、来年の通常国会にこの内容も含め法案を提出することにするのなら、スケジュール的に与党内協議、関係府省の協議、内閣法制局との法案審査等が迫っており、それを2月以降に行うことは実際上無理と言わざるを得ない。提案としては理にかなっていると思うが、来年の通常国会に提出することを想定するなら難しい状況である。
   
:還流防止措置は来年1月からの韓国における日本音楽CDの全面解禁にもあるように、緊急性はある。自由競争という話があったが、そもそも内外の価格差がかなりある状態でとても同じ土俵で勝負することは不可能と考える。
   
:消費者の観点からすると緊急性は感じていない。
   
  本日の議論を踏まえ、次回の小委員会までにまとめることになった。

   
(2) 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会報告書(案)について
資料につき、事務局により説明があった後、以下のような意見交換が行われた。
      (委員:○、事務局:●)

:生番組の著作物性の明定の検討結果の「著作物性を明らかにする必然性はないのではないか」を「著作物性を明定する必然性はないのではないか」にする方がよい。
   
:単純に生番組の著作物性があれば、著作物の定義によって著作物として保護されるのだから、著作物として著作権法上明らかに書く必要はないという趣旨に書き換えていただきたい。
   
:表現ぶりを直すことを検討するという意見と、前回の議論の中で、生番組に著作物性があれば、著作物性を明定する必然性はないという結論を書けるという意見があると整理できるのだが。
   
:異論が無ければ、検討経過をそのままいただいたらよい。
   
:まとめ方としては検討経過をそのまま記載する方法でいいと思われる。また、考え方としては、「著作物性があれば著作物であるので明定する必然性がない」ことが妥当と思われる。障害者に関する部分では、突き放したような表現になっているので、障害者・高齢者に対する部分は注意をしてまとめた方がいい。
   
:この問題は、放送という行為のはずが、放送の内容まで放送という行為に入る形になり得る。放送という行為が何なのか、その辺の整理はできているのか。
   
:著作隣接権とあくまで要望している生放送の著作物性のものは分けているつもりで、生番組でその撮影をやっても著作物性が無いのではないかという意見が非常に多かったので、その部分を明確に小委員会の中で議論することを期待したものである。
   
:障害者に関する部分は、ある特定のものについて、障害者に対して何か措置をするということを外す趣旨ではない。一般に誤解がないようにしたい。
   
:「アクセス権」に関する部分で、17ぺージの上から3行目のところのなお書きの部分で、CSSがコピーコントロールとして機能しているという問題提起から、もう少し突っ込んで、そういう実態から、その回避が規制できないかという問題提起をしたつもりだったので、その辺をまとめて表現していただきたい。
   
:規制できないかというのは、規制すべきであるという趣旨まであらわしてほしいという趣旨か。
   
:議論の結果としてまとめてほしい。
   
:文章表現の問題で、10ページの冒頭ですが、著作権法第113条第1項第1号は、一般に報告書としてもう少し工夫して国民に分かりやすい表現の文章に書いていただきたい。
   
:これは条文なので迂闊にいじると意味が少し変わるが、検討する。

   閉会
   事務局から今後の日程について説明があった後、閉会となった。



ページの先頭へ