戻る
資料2


「アクセス権」の創設又は実質的保護

背景) 「知覚行為」の一部について、権利者による技術的コントロールが可能となり、知覚をコントロールする技術の回避等を行うことの拡大によって、ビジネスが脅かされるため、何らかの法的措置の必要が生じてきている。




   過去の議論の整理   

   1. 著作権審議会マルチメディア小委員会ワーキング・グループ(技術的保護手段・管理関係)報告書(抄)(平成10年12月)
第2章      技術的保護手段の回避への対応
第4節   回避に係る規制の対象とすべき技術的保護手段
1.著作物等の利用との関係
   技術的保護手段の回避に係る規制を行う趣旨は、既に述べたように、著作権者等の権利の実効性を確保し、またこれにより著作物等の適正な流通・活用が図られるようにするためであると考えられるので、回避に係る規制の対象となる技術的保護手段は第一義的には著作権として定められている著作者の複製権、著作隣接権として定められている実演家の録音権・録画権、レコード製作者の複製権等のように、支分権に関連するものとすることが適当であると考えられる。
   一方、既に技術的保護手段の実態の部分で述べたように、著作物等の使用や受信といった著作権等の支分権の対象外の行為を技術的に制限する手段もあるため、これらの取扱いをどう考えるかという問題がある。いわゆるアクセスコントロールの問題である。このことについては、使用や受信というような、従来著作物等の享受として捉え、著作権等の対象とされてこなかった行為について新たに著作権者等の権利を及ぼすべきか否かという問題に帰着し、単に技術的保護手段の回避のみに関わる問題ではなく、現行制度全体に影響を及ぼすことがらであること、流通に伴う対価の回収という面からは著作権者等のみでなく、流通関係者等にも関係する問題であり、更に幅広い観点から検討する必要があると考えられること、今後の著作物等の流通・活用形態の変化の動向を見極める必要もあること等の理由から、本ワーキング・グループとしては、現時点においては、現行の著作権者等の権利を前提とした技術的保護手段の回避に限定して規制の対象とすることが適当であると考えられる。
   但し、使用を技術的に制限する手段の回避については、特に今後はコンピュータ・ネットワークを通じた著作物等の流通におけるアクセスコントロールを保護することが不可欠になることからすれば、規制の対象とすべきであるという意見があり、米国の立法でもアクセスコントロールに係る規制が盛り込まれていることから、これらの国際的な動向にも留意する必要がある。


          この「報告書」を踏まえ、平成11年度に、著作権等の対象となる複製等の行為に係る「技術的保護手段」の回避に係る著作権法の改正を実施。(「知覚」を防止する技術的保護手段(アクセスコントロール)に係る規定は盛り込まれなかった)

        * 「知覚」を防止する技術の回避装置等の譲渡行為については、不正競争防止法により不正競争行為と位置づけられ、差止請求等ができることとされた。



   2. 文化審議会著作権分科会「審議経過の概要」(平成13年12月)(抄)
著作権法制に関する基本的課題について
   法制の基本に関わる検討を必要とする事項
アクセス権(著作物を「知覚」することに関する許諾権)の創設
   著作物は、視覚的・聴覚的な方法等により「知覚」されることによってその価値が発揮されるものであり、使用者が複製物の入手等に対価を支払うのも、通常は著作物を知覚するためである。しかし、個々の知覚行為に権利を及ぼしても実効性を確保することができない等の理由により、内外の著作権法制は、
   知覚の前段階である複製や公衆送信等について権利を及ぼしている。しかしながら、近年の情報技術の発達により、デジタル化されて流通する著作物について、知覚行為そのものをコントロールすることができるようになってきた。このため例えば、いわゆる「技術的手段」の回避を防止する制度に関し、複製等ではなく「知覚行為」をコントロールするための技術的手段を対象とするかどうかについて、国際的な論争も生じている。
   知覚行為をコントロールするための技術的手段の回避を制度的に防止することは、実質的に著作物へのアクセス(知覚)に関する新たな権利の創設に近い効果をもたらすが、そのような制度の新設や、全く新しい「アクセス権(知覚権)」の創設を含め、知覚行為を著作権の対象とすることの可否・必要性等について、検討する必要があるのではないか。

   3. 文化審議会著作権分科会「審議経過報告」(平成15年1月)(抄)
1   著作権法制全般に関する事項
(2)「アクセス権」の創設又は実質的保護

   著作物は,視覚的・聴覚的な方法等により「知覚」(例えば,本を「読む」こと,放送番組を「見る」こと,音楽を「聴く」ことなど)されることによってその価値が発揮されるものであり,使用者が複製物の入手等に対価を支払うのも,通常は著作物を知覚するためである。しかし,個々の知覚行為に権利を及ぼしても実効性を確保することができない等の理由により,内外の著作権法制は,知覚の前段階である複製や公衆送信等について権利を及ぼしてきた。
   しかしながら,近年の情報技術の発達により,デジタル化されて流通する著作物について,知覚行為そのものをコントロールすることができるようになってきた。このため例えば,いわゆる「技術的手段」の回避を防止する制度に関し,複製行為等ではなく「知覚行為」をコントロールするための技術的手段を対象とするかどうかについて,国際的な論争も生じている。
   このような「知覚行為」をコントロールする技術については,「データ全体の暗号化」や,データへの不正なアクセスを防ぐための「鍵」をかける技術など,様々な方法があり,また,法制度としても,1「アクセス権」の創設,2「デコーディング権(暗号解除権)」等の創設,3技術的保護手段に関する制度の拡大など,様々な方法があり得るので,技術や市場の動向を見極めつつ検討することが必要である。
   特に,「アクセス権」の創設は,著作権制度の根幹にかかわる問題でもあることから,その可否・必要性等については,WIPO(世界知的所有権機関)における「放送機関の保護に関する条約(仮称)」の検討も注視しつつ,引き続き検討することが必要である。



   諸外国の動き   

1.米国

       平成10年10月   「デジタルミレニアム著作権法」成立

     → 「知覚」を防止する技術的保護手段の回避行為等を禁止(許諾権を付与せず)


2.EU

       平成13年6月   ECディレクティブ成立

     → 「知覚」を防止する技術的手段の回避行為の禁止等を各国に義務付け(履行期限:2002年12月)

   ○ EU各国等の動き

    ・ 既に実施している国 ギリシャ(2002年10月)、デンマーク(2002年12月)
イタリア(2003年4月)、オーストリア(2003年6月)
    の4ヶ国



   最近の動向   

1. 放送機関に関する新条約(平成17年の外交会議を予定)

  スクランブル放送等の暗号解除(「知覚」を防止する技術的保護手段)の回避の取扱いが検討事項とされている。

○具体的措置
1 「暗号解除権」の付与
2 「知覚」を防止する技術的保護手段の回避行為等を禁止

2. 「知覚」を防止する技術的保護手段を回避するプログラム等の流通の拡大
 
1「アクセス権」の付与、2「暗号解除権」の付与、3知覚を防止する技術的保護手段の「回避行為」の禁止等の措置について検討が必要




ページの先頭へ