参考資料2

ベータマックス事件の概要

1.事案の概要

 テレビ番組について著作権を有するUniversal City Studios, Inc(ユニバーサル)が、Sony Corp. of America(ソニー)に対し、ソニー製のVTRを使用してテレビ番組の録画をしている消費者の行為は著作権侵害であり、また、当該VTRを製造して一般に販売している点でソニーも著作権侵害の責めを負うものであるとして、差し止め、損害賠償などを求めた事案。
 家庭内の録画はフェアユースに該当し、著作権侵害にならないとした第一審の地方裁判所の判決は、第二審である控訴裁判所により逆転されたが、最高裁判所は控訴裁判所の判決をさらに逆転し、5対4の僅差でソニーの侵害を認めなかった。

2.タイムシフトとは

 最高裁判決では、タイムシフトを「後で一度観るために番組を録画し、その後消去する方法」と定義している。

3.各裁判所の判決の概要

(1)地方裁判所

 素材が一般公衆に無料で放送されている事実、利用の非営利性及びその全てが家庭の内部で行われる行為の私的な性質を強調し、著作権のある著作物の全体が録画されたときでも、「“原告のオリジナルな作品”の市場の減少を伴うものではない」として、この複製をフェアユースとみなした。
 また、仮にVTRのホームユースが侵害にあたる利用であるとしても、ソニーは、そのような利用を行うベータマックスの購入者とは直接の関係がなく、寄与侵害の責任を負わないとした。

(2)控訴裁判所

 地方裁判所の判決を破棄。VTRのホームユースは「生産的利用」ではないので、フェアユースにはあたらないと結論。VTRによって可能になった大量複製の累積的効果がユニバーサルの著作物の潜在的市場を減少させる傾向にあることが明らかになったと考えられると述べている。
 また、著作権のある素材の複製はVTRの「最も顕著な利用方法」であり、「主要な利用方法」でもあるから、ソニーは、家庭での所有者の侵害行為を知っていることについて責任があるとした。

(3)最高裁判所

 地方裁判所の判決を支持。著作物の無料放送に許諾を与える著作権者の大多数は、視聴者が私的な範囲で放送をタイムシフトすることに対して異議を申し立てない可能性が高いことをソニーが立証したこと、また、タイムシフトがその著作権のある著作物の潜在的市場又は価格に少なくない損害を与える可能性があることをユニバーサルが立証しなかったことをもって、ソニーのVTRは侵害でない利用が相当程度に可能であり、ソニーによる一般公衆へのこのような機器の販売は、ユニバーサルの著作権の寄与侵害にはならないと判断した。
 判決では、フェアユース及び寄与侵害について、以下のような考えが述べられている。

 なお、Bluckmun裁判官は次のような少数意見を述べ、3名の裁判官がこれに同意している。

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