第6章 外国における私的複製の取扱いと私的録音録画補償金制度の現状について

第3節 フランス

1 沿革

 フランスでは、1976年に、録音用機器に販売価格の4パーセントを課税し、この税収から芸術家の育成援助などに支出することを目的とする法律案が提案された。しかし、権利者へ分配がなされないという問題から財政法の分野では限界があったため、著作権制度の枠内で解決を図ることとなり、1985年に補償金制度を導入した。
 その後、EU理事会指令2001を受けた2006年改正では、私的複製や補償金制度と著作権保護技術との関係の調整規定等を新たに整備した。

2 私的複製の取り扱い

 著作者は、公表された著作物の私的使用を目的とした複写又は複製であって、集団的使用が意図されない場合、当該行為を禁止できないこととされている(第122-5条1項)。

 なお、2006年改正により、著作物の通常の利用を妨げるものであってはならず、かつ、著作者の正当な利益を不当に害するものであってはならないとする、いわゆるスリー・ステップ・テストの要件が追加規定された。これは、違法なソースからの複製など、私的複製の範囲から除外すべきものを念頭に置いて規定されたものと考えられている。

3 補償金制度の対象

 対象行為は、私的録音・録画(アナログ・デジタルの区別なし)である。補償金請求権は、レコード又はビデオグラムに固定された著作物の著作者、実演家、レコード製作者、ビデオグラム製作者に認められており、記録媒体の製造業者等に対し行われる(第311-1条)。

4 支払義務者

 記録媒体の製造業者又は輸入業者に補償金の支払義務が課せられている(第311-4条)。

5 対象記録媒体の範囲

 補償金の対象とされる記録媒体の範囲は、国の代表を委員長とし、補償金請求権団体代表(2分の1)、製造業者・輸入業者団体代表(4分の1)、消費者団体代表(4分の1)で構成される私的複製委員会において多数決により決定される(第311-5条)。

 具体的には、機器から取り外しが可能な記録媒体だけでなく、機器に内蔵された記録媒体も補償金の対象とされている。
 ハードディスク内蔵型の携帯オーディオ・レコーダーについては、2002年に補償金の支払いが義務付けられた。外付けのハードディスク及びフラッシュメモリについては、私的複製委員会で補償金の対象とするかどうか検討がなされていたが、2007年7月に補償金の対象とすることが決定された。

 なお、パソコンに内蔵されているハードディスクについては対象とされていない。

6 補償金額の決定方法

 補償金額についても、前述の私的複製委員会で決定される。具体的には、記録媒体の種類及びその記録可能時間に応じて決定されるが、2006年法において、著作権保護技術の使用の程度及びそれらの影響を考慮に入れて補償金額を決定すること及び既に契約等により対価を得ている利用形態については補償金を徴収できないことが新たに規定された(第331-4条)。

7 補償金の徴収・分配方法

 法律により、補償金の徴収は徴収分配団体によって行われることが定められており(第311-6条)、徴収分配協会であるSORECOP(私的録音報酬徴収分配協会)及びCOPIEFRANCE(私的録画報酬徴収分配協会)が徴収分配業務を行っている。
 ただし、両協会とも、SDRM(音楽録音権管理団体)へ事務を委託し、SDRMはSACEM(音楽演奏権管理団体)に事務を再委託している。

<徴収額の推移>

徴収額(単位:万ユーロ) 徴収額(単位:百万円)
2006 約15,600 約24,492
2005 約15,500 約21,700
2004 約16,800 約23,352

8 報酬の返還制度

 フランスでは、業務目的や福祉目的に記録媒体を使用又は取得する場合には、補償金が返還されることとされている(第311-8条)。

9 共通目的事業

 法律により、補償金の25パーセントは、創作援助活動、生の興行の普及及び芸術家養成活動に使用しなければならないこととされており、SACEMやSACD等の権利者団体によって文化目的事業に支出されている。

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