第2章 科学技術の戦略的重点化

第2節■政策課題対応型研究開発における重点化

[分野別推進戦略の策定及び戦略重点科学技術の選定]

4 ナノテクノロジー・材料分野

 ナノテクノロジー・材料分野はライフサイエンス、情報通信、環境、エネルギー、ものづくり技術、社会基盤、フロンティアなどの分野における科学技術の進歩や課題解決に貢献し、産業の振興や人間の豊かな暮らし、安全・安心で快適な社会などを実現する重要な技術シーズである。

(1)ナノエレクトロニクス領域

 文部科学省では、シリコンデバイスの限界を打ち破る論理演算デバイスや、従来の100倍以上の記録密度を持つ情報メモリの開発、ナノテクノロジーを活用した新しい原理のデバイス開発等を実施している。また、物質・材料研究機構において、ナノテク活用情報通信材料の開発を行っている。
 経済産業省では、次世代半導体やディスプレイ、メモリ・ストレージ及びネットワークデバイス等の高機能化・省エネルギー化を実現するナノエレクトロニクス技術の開発を行っている。

(2)ナノバイオテクノロジー・生体材料領域

 文部科学省では、世界に開かれたバイオナノテクノロジー研究拠点の形成を行うとともに、人工骨、人工肝臓などの生体適合材料の開発を実施している。また、物質・材料研究機構において、ナノテク活用バイオ材料の開発を行っている。
 農林水産省では、生物機能の情報を活用し、ナノレベルでの構造制御による画期的な新機能素材の開発、革新的な生物機能の活用技術の開発、マイクロバイオリアクターの構築を推進している。
 経済産業省では、平成17年度から細胞の機能変化をとらえ、がんの超早期発見に資する分子イメージング機器やがん細胞のみをピンポイントに治療する機器の開発を行っている。
 環境省では、バイオナノ協調体による有害化学物質の高感度・迅速検出技術の開発等を実施した。

(3)材料領域

 総務省消防庁では、戦略重点科学技術として消防防護服にナノテクノロジー素材等を活用するための要素開発を行うとともに、耐熱性等の性能機能の評価方法について研究を行っている。
 文部科学省では、ナノスケールで構造設計・制御された革新的な触媒や、組織制御に基づく高機能な高比強度構造体等の研究開発を推進している。また、物質・材料研究機構において、環境・エネルギー材料の高度化のための研究開発、高信頼性・高安全性材料の研究開発等を推進している。
 経済産業省では、高機能・省エネルギーな次世代半導体やディスプレイ、メモリ・ストレージ及びネットワークデバイス等の情報通信機器に必須の基幹部材を実現するために必要な基盤技術の開発を行っている。
 環境省では、ナノテクノロジーによる小型化・高機能化のメリットを活かした環境技術の開発等を実施した。

(4)ナノテクノロジー・材料分野推進基盤領域

 文部科学省では、物質の一原子レベルの超微細構造や化学反応の超高速動態・変化を瞬時に計測・分析することを可能とする「X線自由電子レーザーの開発利用」を推進している。また、「ナノテクノロジー総合支援プロジェクト」により、大型・特殊な施設・設備の外部研究者への利用機会の提供のほか、関連情報の収集・発信、シンポジウムの開催、若手研究者国際交流等の人材育成等を通じて、研究機関・分野を超えた横断的かつ総合的な支援を実施している。このほか、科学技術振興機構における戦略的創造研究推進事業「ナノテクノロジー分野別バーチャルラボ」により、研究者の緊密な連携の下に中長期的展望に立った研究開発を実施している。
 経済産業省では、我が国産業の技術力及び国際競争力向上のために川上産業と川下産業との連携を強化する「ナノテク・先端部材実用化研究開発プロジェクト」を実施している。


C60ナノチューブの透過電子顕微鏡(TEM)像

フラーレンナノチューブを簡単な器具を用いて、常温で合成することに成功。フラーレンナノチューブは、有機半導体、各種電池電極材料、触媒材料、複合材料素材などとして、多様な用途が期待されている。
写真提供:物質・材料研究機構

(5)ナノサイエンス・物質科学領域

 文部科学省では、理化学研究所において、ナノレベルの物性・機能計測、制御等に関する次世代ナノサイエンス・テクノロジー研究や新しい情報処理デバイス等の開発、自ら変化・反応する材料、時間とともに変化する材料の創製、光を用いたナノスケールの構造観察等をはじめとした基礎的・基盤的な研究を実施している。このほか、大学、独立行政法人等において広範な分野にわたり基礎的な研究を実施している。

 なお、平成18年度に実施されたナノテクノロジー・材料分野の主な研究課題は第3-2-4表に示すとおりである。

第3-2-4表 ナノテクノロジー・材料分野の主な研究課題(平成18年度)

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