盛山正仁文部科学大臣記者会見録(令和5年12月22日)

令和5年12月22日(金曜日)
教育、科学技術・学術、文化、その他

キーワード

宇宙開発戦略本部の開催、東北大学への訪問(ナノテラス等研究施設の視察)、地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)の採択結果、先端国際共同研究推進事業(ASPIRE)の採択結果、中学校における遠隔教育特例校制度の見直しについて、「AIと著作権に関する考え方」の素案について、札幌市立小・中学校のいじめ重大事態調査報告書、日本原子力機構東海再処理施設のガラス固化処理完了時期の見直し、「ヒューマングライコームプロジェクト」などの糖鎖研究への期待、閣僚就任と派閥離脱について、自民党役員人事について

盛山正仁文部科学大臣記者会見映像版

令和5年12月22日(金曜日)に行われた、盛山正仁文部科学大臣の記者会見の映像です。

令和5年12月22日盛山正仁文部科学大臣記者会見

令和5年12月22日盛山正仁文部科学大臣記者会見(※「YouTube」文部科学省動画チャンネルへリンク)

盛山正仁文部科学大臣記者会見テキスト版

大臣)
 今日は4件ございます。順次申し上げます。
 1件目です。本日、宇宙開発戦略本部が開催され、宇宙基本計画工程表の改訂が決定されました。会合の中で、私からは、改正JAXA法に基づき、関係府省とともにJAXAに基金を設置し、強力に推進していくこと、H3ロケットの次の打上げに向けて、全力で取組を進めていくこと、アルテミス計画について、2020年代後半の日本人宇宙飛行士の月面着陸の実現を目指し、有人与圧ローバに関する実施取決めの合意に向けてNASAと調整を進めていくこと、を申し上げ、岸田総理から、これらを含め、各府省連携して取組を進めていくよう指示がありました。文部科学省としては、関係府省と緊密に連携しつつ、工程表に記載の取組を着実に推進してまいります。
 次が2点目です。一昨日20日の水曜日に、東北大学を訪問し、ナノテラスなどの3つの研究施設を視察いたしました。ナノテラスでは、加速器や実験ホール内のビームラインを視察し、令和6年度の運用開始に向けた整備状況について伺い、研究現場や産業界の意気込みと期待を肌で感じてまいりました。また、国際集積エレクトロニクス研究開発センターにおいては、スピントロニクス技術を中核とした世界有数の施設を拝見し、我が国における半導体技術の推進の重要性を改めて認識いたしました。さらに、東北メディカル・メガバンク機構では、健康調査の現場やバイオバンクなどを拝見し、ゲノム医療の推進や地域の復興に貢献されていることを実感いたしました。今回の視察を通じて得られたことを踏まえ、引き続き、関連施策の充実に取り組んでまいります。
 次が3点目です。「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業J-PEAKS」について、令和5年度の採択大学が決定されましたので、御報告いたします。本事業は、大学の研究力の向上を実現するため、大学の強みや特色ある研究力を核とした戦略的な経営に基づく環境構築を支援するものです。今般、69大学の提案のうち12大学の採択が決定されました。今回採択された大学は、我が国の研究力を牽引する大学群の一翼を担うことになりますので、学長のリーダーシップの下、戦略の実現に向けた取組を確実に進めていかれることを期待しております。また、来年度も公募を行う予定としています。大学の研究力向上に向けた大胆かつ実効的な戦略及び計画が提案されることを期待しているところです。
 最後に4件目です。「先端国際共同研究推進事業ASPIRE」についても、令和5年度の採択結果が決定されました。本事業は、我が国の国際頭脳循環を推進するため、先端分野での欧米等科学技術先進国との国際共同研究を支援するものです。今回の公募では、195件の申請があり、52件の採択が決定されました。今回は、初回の公募となりますが、研究者からも高い関心をいただき、AI・情報、マテリアル、量子などの分野において、多くの優れた提案があったと伺っております。こちらの事業については、来年も公募を行う予定です。また次回も多くの提案を期待しているところです。文部科学省としては、本事業も活用しつつ、国際的ネットワークの構築と、次世代のトップ研究者の育成を進めてまいります。以上です。

記者)
 先日20日に開かれたデジタル行財政改革会議の中で、文科省としてオンライン教育の推進ということで、中学校の遠隔教育特例校制度の見直しを盛り込まれていたかと思います。この狙いと今後のスケジュール感について教えてください。

大臣)
 一昨日20日の第3回のデジタル行財政改革会議では、私から、子供たちと教師の力を最大限に引き出すためのデジタルを活用した教育の充実に関して、一人一台端末の共同調達の推進、校務のデジタル化・標準化など教育DXの推進、そしてオンライン教育の推進等について説明を行い、こうした内容が中間とりまとめに盛り込まれました。今後、中間とりまとめも踏まえつつ、端末の共同調達について、最低スペックの基準やガイドラインの提示、校務DXに関するガイドラインの策定や、学校における名簿情報の手入力による負担軽減等のための通知の発出、中学校における遠隔教育特例校制度の見直し、高校における遠隔授業配信センターの設置促進や受信側教師の配置要件の弾力化などに取り組むこととしています。引き続き、児童生徒と教師、児童生徒同士が直接触れ合うことの重要性を踏まえつつ、教育の質の向上を図る観点から、デジタルの力の活用を進めてまいります。そして今御質問の中学校の「遠隔教育特例校制度の見直し」についてでございますけれども、これについてでございますが、現行の遠隔教育特例校制度については、文部科学大臣の指定を受けるための申請手続が負担であること、年度途中に急遽実施する場合等において、制度を柔軟に活用できないこと、これらの課題が指摘されております。制度の十分な活用が十分に進んでいないなという状況でございますので、今般、本制度について、文部科学大臣による指定を不要とするための制度改正を行うこととし、令和6年度からの施行を目指して準備を進めることとしております。こうした取組を通じて、質の高い教育と児童生徒の安全・安心の保障を前提に、学校現場の創意工夫によるオンライン教育の実施を後押ししていきたいと考えています。

記者)
 20日に開かれた文化審議会著作権分科会に関してお伺いします。20日に開かれたこの分科会の法制度小委員会でAIと著作権に関する考え方についてという素案が文化庁から事務方より示されました。生成AIの学習段階や利用段階において、現行の著作権法での解釈を叩き台として示しています。生成AI開発のためのデータ学習については、著作権法第30条の4に基づいて著作権者の許諾が原則必要ないとされておりますが、現状にはクリエイターをはじめ各業界から懸念の声も上がっているところです。今回の素案で示された内容は、生成AI事業者にとって事実上歯止めとなるのではないかという評価が、小委員会の委員の方や有識者の方から示されております。今回の素案内容の背景と狙いについて、大臣から御説明いただければと思います。また、EUをはじめとする世界的な生成AIへの規制動向と今回の素案作成の関係についても御説明いただければ幸いです。よろしくお願いします。

大臣)
 我が国の著作権制度は、著作権の保護と利用円滑化のバランスを踏まえたものとしております。今回示した素案は、関係団体やクリエイターの懸念の払拭や、AIの利活用に係る著作権侵害リスクの最小化に向けて、現時点における著作権法の考え方を整理したものであります。来年1月以降にパブリックコメントを実施しつつ、今年度末までに一定の取りまとめを得られるよう、引き続き、文化審議会において、議論を進めてまいります。その上で、AIと著作権については、現在、EUやアメリカにおいても議論がなされているところでもあります。今後も、国際的な動向や技術の進展等も踏まえ、必要に応じて検討を重ねてまいるつもりです。

記者)
 札幌市教育委員会が昨日、2021年に自殺した女子生徒に関する重大事態調査報告書を公表しました。報告書では、アンケートで教員らがいじめを把握していながら適切に対応しなかったことですとか、校内の組織的対応がなかったことや、小中学校からの引き継ぎがなかったことなども報告されています。この問題についての大臣の受け止めと今後の対策などがあればお願いします。

大臣)
 令和3年10月に札幌市内の女子中学生が自殺したということは、大変痛ましい事件であるとまず感じております。そしてこれについて、昨日、札幌市教育委員会がいじめの重大事態調査報告書を公表したということも承知しております。当該報告書においては、女子生徒が在籍していた小中学校において、いじめ防止対策推進法に基づく学校内での情報共有や組織的対応等が行われていなかったことが指摘されており、いじめによって尊い命が失われてしまったということは、大変遺憾であると考えております。このような痛ましい事案を二度と繰り返さないため、札幌市教育委員会においては、調査報告書で指摘された再発防止策を確実に実施していただきたいと考えております。また、文部科学省においても、いじめ重大事態の国への報告を通じた実態把握、札幌市から提供のあった報告書を含む重大事態調査報告書の分析、ガイドライン改訂等による全国的対策の強化に全力で取り組んでいくつもりです。

記者)
 この件で学校側の対応が、会議を開かないですとか、そういう組織的な対応がなかったということはいじめ防止対策推進法の違反には当たらないのかということと、この点で市教委に指導をしたり通知を出すような考えはありますか。

大臣)
 まだそれ以上詳しいやり取りについてはまだ私は聞いておりません。昨日こういう報告があったということでございますので、今後担当部局のほうとやり取りをしていくことになるのではないかと考えております。

記者
 原子力関連でお伺いしたいのですが、先日20日に原子力規制委員会で日本原子力研究開発機構が茨城県東海村にあります再処理施設にある高放射性廃液の処理の終了を計画よりも10年後ろ倒すということを示したと思います。原子力機構が廃止措置すべき施設というのはいくつか持っているかと思いますが、今回の件に関して大臣の見解というのを改めて教えていただけますでしょうか。お願いします。

大臣)
 原子力機構の東海再処理施設では、令和10年度の完了を目標に高放射性廃液のガラス固化処理を進めてきたところですが、今般、作業機器の故障等の影響で完了時期が遅れることが確実となったため、計画の見直し案が示されたものと承知しております。今回の見直し案では、これまでの運転実績に基づいた1運転期間当たりのガラス固化体の製造本数の見直し、高経年化対策のための運転停止期間の確保を行った結果、令和20年度末の処理完了を目指しつつ、可能な限り工程を前倒しすることとされたものと承知しております。今回の会合においては、計画の見直しについて、今後も総合的に検討した上で改めて報告することが求められたところであり、引続き原子力機構において検討が行われるものと承知しています。当省としては、安全を最優先に作業が進められるよう、引き続き、原子力機構に対し、必要な指導・監督を行ってまいります。

記者)
 ヒトゲノム解析計画ですとか、タンパク質解析の計画がこれまで進んできました。今第三の生命科学基盤解析として、糖鎖を網羅的に解析するヒューマングライコームプロジェクトが日本主導で進んでいますけれども、これについて大臣の期待をお願いします。

大臣)
 「糖鎖」は、ゲノム、タンパク質とともに「第3の生命鎖」と呼ばれ、数多くの生命現象や疾患に関与するとされているものであります。その全容はまだ未解明ですけれども、糖鎖関連の遺伝子の6割は日本人研究者によって同定・解析され、現在使用されている多くの糖鎖解析技術は日本発であるなど、我が国はこれまで世界の糖鎖研究をリードしてまいりました。このような糖鎖研究のさらなる発展を、東海国立大学機構を中心とする「ヒューマングライコームプロジェクト」が先導し、生命科学の革新などの大きな成果を上げることを期待しているところです。文部科学省としては、「ヒューマングライコームプロジェクト」を含む、人類未踏の研究課題に挑み世界の学術研究を先導する大型プロジェクトの支援に努めてまいるつもりです。

記者)
 2点まとめてお伺いしますが、小泉法務大臣が二階派を退会されまして、一部では閣僚は派閥を離れるべきだという意見があるのですけれども、大臣はこれについてどのようにお考えかということと、あと自民党の政調会長に元文部科学大臣の渡海氏が内定されているのですけれども、大臣と同じ兵庫選出の議員で文科大臣経験者ということで長年文教族として活躍しておられた議員なのですけれども、これについて大臣の所感があればお聞かせください。

大臣)
 まず、派閥の離脱云々ということですが、派閥の離脱云々の前にこれだけ今大きな問題になっておりますので、政治と資金そして特に処理だと思いますけれども、そういう扱いについてしっかりと膿を出し切って、そしてそれに対してどう対処していくのか、これがまず1番大事なことではないでしょうか。派閥を離脱する、離脱しないの問題はそういった問題の中でまたお話も出てくるでしょうから、そういったところで検討していくということになるのではないかなと思います。
 それから、渡海政調会長についてということでございますけれども、今お話があったように兵庫県の第10区選出でございまして、私が初当選したときも県連会長でもあり、いろいろ御指導を賜ってまいりました。特に渡海先生は、俺は文科以外はやらんけれども文科だけはやるからというふうに何年も前から言っておられるぐらいで、文部科学行政については大変詳しい、そして思い入れのある、いろいろ御議論も、教育についても科学技術その他についてもやっておられる先生でございます。新聞なんかの評判にもいろいろ書いてありますけれども、地味だあるいは最近要職から離れていた、それは確かにそういう表現のとおりだろうなと正直私も同感するところでございますけれども、何て言うんですかね、いい先生と言うか、立派な先生です。清廉潔白という言葉がいいかどうかは分かりませんですけれども、俺が俺がという形で人を押しのけて前に出ていくというタイプの方ではありません。しかしながら、着実に自分がやると決めたところはなさる、そういう先生でございます。そういう方が政調会長にということで、いろいろこれは新聞の報道を私も見ているわけでございますけれども、無派閥の重視ということ、あるいはいろいろ人事の関係があるのでしょう。そういう点で、無派閥の方であり、なおかつ政治改革に取り組むといったようなことも含めて適任の方ということで、多分それが渡海先生に白羽の矢が当たったということではないかなと、これは文部科学大臣としてではなく盛山一議員としての私見でそんなふうに思います。しっかりいい結果をきっと渡海政調会長がですね、報道にも出ていましたけれども、リクルート事件なんかのときにですね、当時本当の若手議員として言いたいことを俺は言ってやってきたんだと、そういうようなことを今はどうやって今回自分が政調会長になってやるのか、ちょっと考えていかんとあかんのだけれどもなかなか当時と環境が違うので難しいな、というふうに御本人も言っておられましたけれども、自分自身に与えられた課題というのを十二分に御認識されていて、しっかり取り組まれるのではないかなと、そんなふうに感じます。

記者)
 確認なのですけれども、大臣御自身は今のところ派閥を離脱されるお考えはないということですか。

大臣)
 今のところありません。それよりもまず、政治資金の扱いですとかね、それを考えるほうがまず1番大事なところだと思います。

(了)

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