萩生田光一文部科学大臣記者会見録(令和2年5月19日)

令和2年5月19日(火曜日)
教育、科学技術・学術、その他

キーワード

新型コロナウイルスの感染拡大と対策、学生支援緊急給付金、新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針の変更と学校教育活動の再開、こうのとり9号機の打ち上げ、HTV-Xの開発、9月入学・新学期制、新型コロナウイルスと学びの保障、大学による学生へのPCR検査受診の義務付け、複数年度における教育課程の編成を認める特例的措置

萩生田光一文部科学大臣記者会見映像版

令和2年5月19日(火曜日)に行われた、萩生田光一文部科学大臣の定例記者会見の映像です。

令和2年5月19日萩生田光一文部科学大臣記者会見

令和2年5月19日萩生田光一文部科学大臣記者会見(※「YouTube」文部科学省動画チャンネルへリンク)

萩生田光一文部科学大臣記者会見テキスト版

大臣)
 おはようございます。時間の変更をしてすみません。持ち回りの閣議が、最後終わらなくてですね。ちょっとその結果を待っていましたので、お待たせして申し訳ありませんでした。冒頭、私から二件です。
 先ほど終わりました閣議におきまして、アルバイト収入の激減等により困難に直面している学生の「学びの継続」のための「学生支援緊急給付金」を、予備費を活用して創設することを決定しましたので報告します。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、特に自らのアルバイトを主な収入として学業を支えてきた学生たちにおいては、大学等を中退せざるをえないような事態も想定されうるという懸念があります。そのような中、与野党からのご意見も伺った上で政府として検討を行い、この度、学生の「学びの継続」のための緊急給付金を創設することとしました。給付金の総額は約530億円になりますが、約43万人の学生等を対象に、特に厳しい状況にある住民税非課税世帯の学生等には20万円、それ以外の学生には10万円を支給したいと思います。給付の対象は、大学院生や留学生も含む国公立私立大学、短期大学、高等専門学校、専門学校の学生等で、加えて日本語教育機関も対象としております。また、給付の仕組みについては、スピード重視の観点から、国として対象となる学生等について一定の要件は示すものの、最終的には一番身近で学生等を見ている大学等において、学生の実情に沿って総合的に判断していただいたうえで、日本学生支援機構を活用した個人給付の仕組みといたします。私としては、今般の新型コロナウイルス感染症の影響で、大学生等が進学・修学を諦めることがないよう、しっかりと支えていくことが何よりも重要であると考えており、速やかに必要な学生に支援が行き渡るよう、早急に対応してまいりたいと思います。
 もう一点ですが、先週5月14日に「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」が変更されたことに伴い、今後、地域の感染状況に応じて段階的に学校教育活動が再開され、登下校も始まることが見込まれます。このため、5月15日午後、学校教育活動の再開時における登下校の安全確保について、都道府県教育委員会等に事務連絡を発出し、指導上特に留意していただきたい点について配慮をお願いしました。特に、通学に不慣れな小学校1年生の安全確保等について注意をしていただくよう求めています。また、登下校に際しては、交通安全や防犯の観点を踏まえた安全指導や、警察、各自治体の交通安全担当部署等と連携した見守り活動を行うことが重要です。このため、警察庁等の関係省庁に対しても、交通指導員などの配置について協力を依頼したところです。子供たちの安全確保は教育の大前提です。今後とも関係機関とも連携し、児童生徒の登下校時の安全確保に努めてまいりたいと思います。私からは以上です。

記者)
 幹事社から一問。宇宙関係なんですけれども、明後日21日の朝の2時半頃に、国際宇宙ステーション補給機「こうのとり9号機」を載せたH-ⅡBロケットを打ち上げます。H-ⅡB、「こうのとり」、これ最後となりますけれども、今までの振り返り、所感などあればというのと、今後のロケットや宇宙機の開発への期待など宇宙開発の期待を教えてください。よろしくお願いします。

大臣)
 「こうのとり」は1990年代に開発に着手し、これまで国内中小企業を含む約400社の参画を得ながら、国際宇宙ステーションへの物資輸送技術を獲得・蓄積してまいりました。これにより、国際宇宙ステーション(ISS)に限らず、今後の国際宇宙探査活動にも我が国が強みを持って参画できることは、「こうのとり」の大きな成果であったと考えております。また、2009年の初号機から、これまで8機全ての補給ミッションを成功させてきておりますが、このような安定的な運用は、我が国の宇宙開発における国際的なプレゼンスの向上にもつながったものと認識しております。文科省としましては、「こうのとり」の最終号機である9号機のミッション成功に向けて、JAXAと連携して取り組んでまいりたいと思いますが、後継機につきましては、HTV-Xというのを、今、「こうのとり」の後継機として開発を、これも国内の中小企業の皆さんの参画を引き続きいただいて、進めているところです。「こうのとり」の経験を生かして、開発・運用コストを削減しつつ、ISSへの輸送能力を向上させることにより、「こうのとり」に比べ、ISSの物資1トン当たりの輸送コストの半減を目指してまいります。また、ISSへの物資輸送を通じた技術実証を行い、月周回有人拠点(Gateway)への物資輸送に発展させていくことも見込んでおります。HTV-Xについても、「こうのとり」に引き続いて、我が国の国際的なプレゼンスの維持・向上や国内産業振興につながることを期待するとともに、技術実証を通じて、将来の宇宙探査に向けた更なる技術の獲得・高度化が図れることを期待をしております。予定通り、打ち上げができれば21日の深夜、午前2時半頃ということでございまして、これがH-ⅡBロケットとしては最後なので、本当は私も現場で発射を見送りたかったのですけれど、こういうコロナの状況なので私も行けませんし、全国のファンの皆さんも、この最終機をですね、直前で見たいという思いがあったようなのですけれども、大変申し訳ないのですけれども、島の方の医療体制もないことからお断りをしました。ちょっと残念ですけれど、ぜひ、映像で、皆さんでエールを送っていただければありがたいなとそんなふうに思っています。

記者)
 閣議決定のあった学生支援の関連でお伺いしたいんですけれども、今回ですね、大学への支援ではなく、直接学生に対する支援、給付するという形になると思うんですが、その部分の狙いと、あともう1点、昨日ですね、大学の3団体が要望に、学生支援について要望に来た際に、ぶら下がりで、長期的な支援を含めてですね、検討していきたいという発言が大臣からあったと。そのような趣旨の発言をしていたんですが、長期的な学生支援についてのお考えも併せてお願いします。

大臣)
 学生への直接支援というのは、あくまで学生の状況を知っているのは学校でありますので、私は常々、大学の皆さん、学校関係者の皆さんに伴走してほしいということを申し上げてきました。既に、学校独自の様々な支援策を講じている学校もある一方、なかなかですね、このコロナに対して不安を持っている学生の相談窓口すら連絡がつかないという学校もあって、そういったことの改善のお願いをしてきました。また、授業料の納付についての猶予については、ほぼ96%を超える学校が、既に対応を始めていただいておりますけれども、いまだこれの結論というか答えがない学校も中にはあるものですから、そういう中で今回の制度はですね、ぜひ学校にも、自分の学校に通う学生さんたちがどういう生活形態でどういう苦労をしているのかということをちゃんと共有していただこうと思いまして、学校を窓口にさせていただくという一つの選択肢を作りました。ただ、学校もいろいろコロナ対策でご苦労されている事務方の方もいらっしゃるので、あんまり様々なですね、書類を取り寄せないと申請ができないというのではなくて、ちゃんと学校側で状況を聞いて、ヒアリングしてあげて、学生と一緒に申請書類を1枚作っていただいて、それを支援機構に送っていただければ指定口座に振込みをして、その後は、学生がしっかり生活にも学業にも使っていただくというようなことを採らせていただきたいと思います。すなわち、学校と責任を共有しながらですね、学生のサポートをしていくという意味で、学校に募集と推薦をしていただき、個人に直接給付するという、こういう仕組みを作らせていただいたところでございます。昨日ですね、3団体の皆さんがお見えになりまして、今回の「学びの継続」のための緊急給付金やスピード重視の観点から個人給付の仕組みを作ることに対して、大学側の協力を、私からも改めてお願いをさせていただきました。大学との長期的な視点から、既存の制度との連携を進めていくことも重要だと思っております。具体的には、既に行っている修学支援新制度ですとか、既存の学生支援機構の貸与型の奨学金なども組み合わせて、学生の皆さんの「学びの継続」のための支援をしっかりしていきたいなと思っております。また、学校では、大学等ではですね、オンラインでの授業のための大規模な設備投資を行っておりまして、一次補正でも一定金額を積み上げて支援をしてまいりましたけれども、この点もですね、改めて、引き続きしっかりサポートさせていただきたいと思っておりまして、このコロナの後にですね、大学教育、特に高等教育機関の、言うならば授業の在り方というのが大きく変わっていく可能性も含めて、一番、学生にとっても将来の大学にとっても、いい方法というのを、お互いに模索していこうということの確認をさせていただいたところでございます。

記者)
 大きく分けて二点あるんですが、一点目が9月入学について、学年の機会について、3つの案でシミュレーションされていると思いますが、現段階の検討状況と大臣の見解を教えてください。併せて、緊急事態宣言の一部解除で、再開しているところとそうでないところの格差がさらに懸念されると思うんですが、その現状と対策についてお聞かせください。

大臣)
 先週、与党の検討会議にお示しした資料のことであろうと思いますけれども、この資料は、仮に秋季入学に移行して、学年の始期を9月とする際のパターンの例として、来年度以降の新入生となる児童生徒の範囲及び移行期間の長さによる3案を示したものでありまして、とりあえずこの3案を示したということで、3案しか手元にないわけじゃなくて、もっといろいろ提案はあるのですけれども、その会議の中でそれを活用していただいたということでございます。学校休業が、それぞれ再開の時期が違いますし、また、この休校期間中に家庭での学習の取組あるいはサポート、これ学校や自治体によって、やっぱり中身が若干違うと思います。そういう意味では、家庭にいながらも十分な学びができた児童生徒さんもいる一方で、なかなか自分だけでは勉強が前に進まなかったという子もいらっしゃると思いますので、今後、再開後はですね、児童生徒の状況に応じた学校によるきめ細かな対応をですね、設置者や学校関係者にお願いをしてまいりたいと思います。具体的には、登校できない児童生徒に対して、児童生徒や家庭の事情を踏まえつつ、紙の教材、テレビ放送、オンライン教材などを活用し、学校が指導計画等を踏まえた適切な家庭学習を課すとともに、電話や電子メール等の様々な手段を通じて教師が学習状況を把握し、きめ細かく学習支援を行うことを、通知を既にしております。感染症対策を徹底した上で分散登校を実施し、段階的に教育活動を再開することや、学校再開後には時間割り編成の工夫や長期休業期間の短縮、土曜日の活用等により学校における教育活動を充実すること、学習の定着が不十分な児童生徒に対しては補習を行うことなどを依頼をしているところでございます。文科省としても、臨時休業期間中の学習機会の確保のため、ICT環境整備の加速や、自宅等で活用できる教材の動画等を紹介する「子供の学び応援サイト」の開設・充実を行うとともに、教員の加配や学習指導員、スクールカウンセラー等を退職教員等の協力も得つつ追加配置をし、各自治体・学校の取組を、支援をしていきたいと思っております。いずれにしましても、関係自治体と緊密に連携しながら、児童生徒の学習の機会を保障するためにあらゆる手段を講じて全力で支援に努めてまいりたいと思います。

記者)
 もう一点だけごめんなさい。東京女子医大が6月の登校再開に備えて、1000人の全学生に対してPCR検査を実施しているんですが、学生や保護者からは、6月時点の陰性の証明にはならないとか、県をまたいでの移動自粛が求められている中で往復するのはちょっと不安というような声も上がっているんですが、大学が授業再開にあたって全員のPCR検査を行うことについて、文科省としてどのようにお考えかお聞かせください。

大臣)
 私も報道で見ましたけれど、東京女子医科大学において、対面による授業の再開にあたり、全ての学生についてPCR検査を受けることを条件としているという報道で承知をしています。対面による授業を再開するにあたって、学生にPCR検査を義務付けることについては、その必要性も含めて各大学において判断いただくべきことであると考えております。たまたまこの大学はですね、医学部に隣接して、すぐに大学病院が設置をされており、患者の皆様や医療従事者の皆様への影響を考えてのことだと思われますが、そのような事情も踏まえて、各大学において判断していただきたいと思っております。

記者)
 9月入学と、先週、文科省がお示しになった、2つの通知の関連をちょっと伺いたいと思います。大臣は、9月入学につきましては、常に目的は「学びの保障」にあるということをおっしゃっていますけれども、先週、金曜日に出しました通知ですと、3年間かけて遅れた勉強は取り戻していけばいい、ということでありますと、最終学年を除きましては、これで基本的に「学びの保障」はできるのではないかという考え方があるかと思います。同時にもう一つ通知出されておりまして、それは高校入試に関する通知でございまして、そちらの方では、ちゃんと最終学年の中学3年生のことを考えて、内申書、調査書とか試験の範囲とかをちゃんと考慮した上で高校受験の入試選抜を行うということになると思います。伺いたいのはですね、その「学びの保障」ができるのであれば、少なくとも義務教育に係る小学校と中学校につきましては、今の段階で9月入学を議論する必要性というのがだいぶ薄れた、若しくはなくなったのではないかというふうに思って、思うことも考えられるかと思うんですけれど、大臣のお考え、特に、義務教育の小学校中学校については、もう今の措置で「学びの保障」は十分なのか、それともまだ小学校中学校につきましても、9月入学を考えるべきなのか、そのあたりの見解を伺えないでしょうか。

大臣)
 先週14日に「新型コロナウイルス感染症対策の基本的な対処方針」の改定が行われたことを踏まえ、翌15日に感染症対策を講じながら最大限子供たちの健やかな学びを保障することを目指す基本的な考え方と取組の方向性をまとめた通知を発出をしました。本通知は、新型コロナウイルス感染症の影響がある中において、子供たちの「学びの保障」に努めることが必要であることから、そのための最大限の努力を行うためのものであり、複数年度で教育課程編成の特例もそのために考えられる対応策の一つとして位置づけられるものです。一方、「秋季入学・新学期制」についても、学校の臨時休業が長期化する事態を想定した際の対応案の選択肢の一つとして声が上がっているものと承知しています。文部科学省としては、まずは、早期の収束に向けての感染拡大防止の取組を徹底した上で、子供の学習の保障のための取組を一層しっかりと進めていくことが重要であると考えております。その上で、私としては、教育行政の責任者として、子供たちのための最高の選択肢は何かということを第一に対応を考え、あらゆることを想定しながら対応する必要があると認識しており、秋季入学も学校の臨時休業が長期化する場合の選択肢の一つとして、現時点で必要がないと判断したわけではありません。今後、今、感染者数の拡大がやや抑えられておりますけれど、現段階で言うならば、抗ウイルス剤が明確に存在しているわけでもありませんし、また今後、第二波と言われるようなものや第三波というものが出てくるかもしれない。そういう中で、あらかじめ、学校現場としては少し幅広にこの「学びの保障」を考えておいていただきたいという一つの指針としてお示しをしたまででありまして、最終的にその方針が、1本じゃなくて、今、ハイブリッドで動いていかなきゃなりません。既に、6年生と1年生だけ先に学校再開してくれというのは、まさに義務教育の観点から考えればややイレギュラーのことだと思うのですけれど、しかし、残された3月までの時間の中で6年生の学びをしっかり保障するとすれば、まずは、6年生は先に学びの再開をしてもらなきゃならないということで、様々なことを考えながら今行っておりますので、こういう通知が出てきたからこっちはもう必要ないのだとか、こういう通知を出したことでこっちは否定されるのかというとそうではなくてですね、これは、本当に一緒に、自治体と幅広に考えていただかないとしっかりとした「学びの保障」ができないと思いますので、かつて朝令暮改もありましたけれど、この感染状況をしっかり見極めながら、未知のウイルスの戦いを進めながらですね、何が子供たちにとってベストかということを常に考えながら、その都度ですね、自治体の皆さんともしっかり意思疎通を図っていきたい、そういう意味での通知でございます。

(了)

お問合せ先

大臣官房総務課広報室