第4章 1公共図書館の状況



1 公共図書館の状況

 ここでは、今回実施したアンケート調査の対象校を抽出した21都市の公共図書館の活動状況について、「日本の図書館2004」のデータをもとに分析する。

図表4-1-1 アンケート調査の対象校を抽出した都市の図書館数
ブロック名

都市名

面積

人口

図書館数

BM、SP

北海道

登別市(北海道)

212.11平方キロメートル

55千人

1

BM1、SP4

東北

弘前市(青森県)

273.81平方キロメートル

175千人

1

BM1

名取市(宮城県)

100.06平方キロメートル

68千人

1

BM1、SP10

関東

市川市(千葉県)

56.39平方キロメートル

450千人

5

BM1、SP12

浦安市(千葉県)

16.98平方キロメートル

140千人

7

BM1、SP1

鉾田町(茨城県)

106.47平方キロメートル

29.2千人

1

世田谷区(東京都)

58.08平方キロメートル

794千人

15

SP8

秩父市(埼玉県)

577.69平方キロメートル

59千人

1

SP7

信越

村上市(新潟県)

142.12平方キロメートル

32千人

1

BM2

北陸

婦中町(富山県)

68.04平方キロメートル

35.3千人

1

東海

可児市(岐阜県)

84.99平方キロメートル

92千人

3

BM1

桑名市(三重県)

136.61平方キロメートル

109千人

1

近畿

福崎町(兵庫県)

45.82平方キロメートル

20千人

新宮市(和歌山県)

79.66平方キロメートル

33千人

1

BM1

草津市(滋賀県)

48.22平方キロメートル

112千人

2

BM1、SP1

中国

境港市(鳥取県)

28.75平方キロメートル

38千人

1

福山市(広島県)

461.23平方キロメートル

408千人

4

BM1、SP1

四国

阿波町(徳島県)

48.58平方キロメートル

14千人

1

BM1、SP1

九州・沖縄

北九州市小倉北区(福岡県)

39.27平方キロメートル

24千人

1

加治木町(鹿児島県)

47.5平方キロメートル

22.9千人

1

日南市(宮崎県)

294.46平方キロメートル

46千人

1

SP7

資料:「日本の図書館2004」

※兵庫県福崎町には図書館はないが、中央公民館に図書室が設置されている(平成17年3月31日閉鎖)。
※新潟県村上市には村上市および岩船郡の住民が利用できる岩船広域図書館が設置されている。
※BMイコール自動車図書館(Book Mobile)の略
※SPイコールサービスポイント(図書館以外の場所で図書館の本を借りたり返却できる場所)の略

(1) 図書館の設置密度(奉仕対象面積わる図書館数)
 図書館設置密度は、図書館1館あたりのサービス圏域を測る指標である。図書館設置密度が小さいほど、図書館にアクセスしやすいということを表している。ただし、自動車での移動が多い地域や自動車図書館の活動が活発な地域などでは、図書館設置密度が大きいからといって、必ずしも住民が図書館の本にアクセスしにくいとはいえない面もある。
 サービスポイントを含めた図書館設置密度が最も小さいのは、浦安市(2.1平方キロメートル)で、世田谷区(2.5平方キロメートル)、市川市(3.3平方キロメートル)などが続いている。

図表4-1-2 図書館設置密度
都市名

図書館数

自動車図書館数

サービスポイント数

図書館数+サービスポイント数

奉仕対象面積
平方キロメートル

設置密度(サービスポイント含む)
平方キロメートル

順位

浦安市(千葉県)

7

1

1

8

16.98

2.1

1

世田谷区(東京都)

15

0

8

23

58.08

2.5

2

市川市(千葉県)

5

1

12

17

56.39

3.3

3

名取市(宮城県)

1

1

10

11

100.06

9.1

4

草津市(滋賀県)

2

1

1

3

48.22

16.1

5

阿波町(徳島県)

1

1

1

2

48.58

24.3

6

可児市(岐阜県)

3

1

0

3

84.99

28.3

7

境港市(鳥取県)

1

0

0

1

28.75

28.8

8

日南市(宮崎県)

1

0

7

8

294.46

36.8

9

北九州市小倉北区(福岡県)

1

0

0

1

39.27

39.3

10

登別市(北海道)

1

1

4

5

212.11

42.4

11

加治木町(鹿児島県)

1

0

0

1

47.5

47.5

12

婦中町(富山県)

1

0

0

1

68.04

68

13

秩父市(埼玉県)

1

0

7

8

577.69

72.2

14

新宮市(和歌山県)

1

1

0

1

79.66

79.7

15

福山市(広島県)

4

1

1

5

461.23

92.2

16

鉾田町(茨城県)

1

0

0

1

106.47

106.5

17

桑名市(三重県)

1

0

0

1

136.61

136.6

18

村上市(新潟県)

1

2

0

1

142.12

142.1

19

弘前市(青森県)

1

1

0

1

273.81

273.8

20

福崎町(兵庫県)

0

0

0

0

45.82

資料:「日本の図書館2004」

(2) 蔵書密度(蔵書冊数わる奉仕対象人口)
 蔵書密度は、住民ひとりあたりの蔵書冊数を測る指標である。
 蔵書密度が最も大きいのは浦安市(7冊)である。次いで阿波町(5.6冊)、可児市(5.4冊)などと続き、平均は3.1冊である。
図表4-1-3 蔵書密度

都市名

人口
(千人)

蔵書冊数
(千冊)

蔵書密度
(冊)

順位

浦安市(千葉県)

140

984

7

1

阿波町(徳島県)

14

78

5.6

2

可児市(岐阜県)

92

493

5.4

3

村上市(新潟県)

32

128

4

4

秩父市(埼玉県)

59

226

3.8

5

草津市(滋賀県)

112

405

3.6

6

境港市(鳥取県)

38

124

3.3

7

市川市(千葉県)

450

1,238

2.8

8

新宮市(和歌山県)

33

88

2.7

9

登別市(北海道)

55

146

2.7

10

名取市(宮城県)

68

179

2.6

11

弘前市(青森県)

175

452

2.6

12

世田谷区(東京都)

794

2,010

2.5

13

北九州市小倉北区(福岡県)

180

420

2.3

14

加治木町(鹿児島県)

22.9

51

2.2

15

婦中町(富山県)

35.3

74

2.1

16

日南市(宮崎県)

46

90

2

17

鉾田町(茨城県)

29.2

52

1.8

18

福山市(広島県)

408

636

1.6

19

桑名市(三重県)

109

128

1.2

20

福崎町(兵庫県)

20

平均(福崎町除く)

 

 

3.1

 

資料:「日本の図書館2004」

(3) 登録率(登録者数わる奉仕対象人口)
 登録率は、住民の何パーセントが図書館の館外貸出登録をしているかを測る指標で、図書館のサービスがどの程度住民に浸透しているかを知ることができる。
 対象とした都市の中で、阿波町と北九州市の登録率が突出している。北九州市については、在勤・在学者の登録率が在住者の登録率を上回っているためと見られる。また、阿波町については北九州市と同様の理由か、もしくは登録者の整理が進んでいないことも考えられる。

図表4-1-4 登録率
都市名

人口
(千人)

登録者数(千人)

登録率
パーセント

順位

阿波町(徳島県)

14

19.7

140.7

1

北九州市小倉北区(福岡県)

180

182.4

101.3

2

草津市(滋賀県)

112

93.9

83.8

3

村上市(新潟県)

32

22.2

69.4

4

秩父市(埼玉県)

59

32.3

54.7

5

桑名市(三重県)

109

52.8

48.4

6

弘前市(青森県)

175

74

42.3

7

可児市(岐阜県)

92

38.3

41.6

8

世田谷区(東京都)

794

328.6

41.4

9

市川市(千葉県)

450

127.9

28.4

10

婦中町(富山県)

35.3

9.5

26.9

11

福山市(広島県)

408

103.1

25.3

12

日南市(宮崎県)

46

9.4

20.4

13

名取市(宮城県)

68

12.3

18.1

14

登別市(北海道)

55

9

16.4

15

新宮市(和歌山県)

33

3.5

10.6

16

鉾田町(茨城県)

29.2

2.8

9.6

17

加治木町(鹿児島県)

22.9

2

8.7

18

境港市(鳥取県)

38

2.9

7.6

19

浦安市(千葉県)

140

福崎町(兵庫県)

20

※浦安市は「日本の図書館2004」に登録者数のデータが掲載されておらず、登録率が算出できなかったため「-」と表示している。
資料:「日本の図書館2004」

(4) 貸出密度(貸出冊数わる奉仕対象人口)
 貸出密度は、住民ひとりあたりの年間貸出冊数を測る指標で、貸出密度が高いほど、住民に活発に利用されていることを示している。
 北九州市小倉北区(14.8冊)の貸出密度が高いのは、在住・在勤者も含めて登録者数が多いことも要因のひとつと考えられる。それ以外の都市では、浦安市(12.7冊)、草津市(12.3冊)、可児市(10.4冊)などの貸出密度が高い。
 図書館を設置していない福崎町を除く20都市の貸出密度の平均は、5.7冊である。

図表4-1-5 貸出密度
都市名

貸出冊数(千点)

奉仕対象
人口

貸出密度

順位

貸出密度平均より高い

北九州市小倉北区(福岡県)

2,659

180

14.8

1

浦安市(千葉県)

1,776

140

12.7

2

草津市(滋賀県)

1,374

112

12.3

3

可児市(岐阜県)

960

92

10.4

4

阿波町(徳島県)

114

14

8.1

5

世田谷区(東京都)

6,463

794

8.1

6

市川市(千葉県)

2,873

450

6.4

7

貸出密度平均より低い

村上市(新潟県)

177

32

5.5

8

福山市(広島県)

2,256

408

5.5

9

登別市(北海道)

237

55

4.3

10

婦中町(富山県)

131

35.3

3.7

11

秩父市(埼玉県)

190

59

3.2

12

名取市(宮城県)

214

68

3.1

13

日南市(宮崎県)

131

46

2.8

14

加治木町(鹿児島県)

64

22.9

2.8

15

新宮市(和歌山県)

92

33

2.8

16

桑名市(三重県)

248

109

2.3

17

弘前市(青森県)

395

175

2.3

18

鉾田町(茨城県)

56

29.2

1.9

19

境港市(鳥取県)

69

38

1.8

20

福崎町(兵庫県)

20

 

平均(福崎町除く)

 

 

5.7

 

資料:「日本の図書館2004」

(5) 児童サービスおよびヤングアダルトサービスの実施状況
 各都市における児童サービスおよびヤングアダルト(中高生)サービスの状況は、以下のとおりである。
 21都市中18都市の図書館が児童室を設置している。そのうち、5都市では児童用のカウンターを設置している。職員数は、1館あたりおよそ2~3名程度である。
 全蔵書に占める児童書の割合は、21都市の平均は24.8パーセントであるが、鉾田町、婦中町、加治木町では、児童書が占める割合が30パーセントを超えている。
 中高生を対象としたヤングアダルト(YA)サービスについては、21都市中13都市で実施されている。児童サービスに比べると、ヤングアダルトサービスを実施している図書館は少ない。市川市、世田谷区では1館あたり3名程度の職員が配置され、児童サービスと同時にヤングアダルトサービスにも力を入れていることがうかがえる。

図表4-1-6 児童サービスおよびヤングアダルトサービスの実施状況

都市名

図書館数

児童室の設置館数

児童カウンターの設置館数

児童サービス職員数(人)

児童書の冊数(千冊)

うち絵本・紙芝居(冊)

受け入れ冊数(冊)

蔵書冊数(千冊)

蔵書冊数に占める児童書の割合(パーセント)

登録児童数(千人)

児童サービス貸出冊数(千冊)

YAサービス実施館数

YAコーナーの設置館数

YAサービス職員数(人)

登別市

1

1

1

2

34.1

12,073

1,890

126

27.1

1.8

78.7

1

 

 

弘前市

1

1

 

2

72.9

18,696

3,650

431

16.9

107.5

 

 

 

名取市

1

 

 

 

37.5

14,031

1,884

154

24.4

0.7

68.5

 

 

 

市川市

5

3

2

18

169.3

67,450

6,232

1,045

16.2

10

577.3

4

4

12

浦安市

7

1

1

15

201

86,455

8,708

984

20.4

387.9

 

 

 

鉾田町

1

1

 

1

15.7

131

238

52

30.2

0.7

21.5

 

 

 

世田谷区

15

15

 

50

417.7

86,573

25,574

1,836

22.8

42.4

1,236.6

14

6

45

秩父市

1

1

 

1

43.7

10,947

2,658

210

20.8

0.4

72.3

 

 

 

村上市

1

1

 

 

29.6

11,856

1,200

125

23.7

0.4

45.8

 

 

 

婦中町

1

1

 

1

23.1

6,491

1,404

74

31.2

2.1

48.2

1

 

1

可児市

3

3

 

0

62.6

25,382

3,105

245

25.6

6.1

111.1

3

1

0

桑名市

1

1

 

 

27.1

8,386

1,418

128

21.2

75.8

1

1

 

福崎町

0

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新宮市

1

 

 

 

18.7

7,938

1,333

81

23.1

1.1

23.4

1

 

 

草津市

2

2

 

6

98.6

42,548

6,248

405

24.3

1.1

244.4

 

 

2

境港市

1

1

 

1

28.1

5,788

1,669

124

22.7

1.1

1

 

1

福山市

4

4

3

7

130.7

29,905

10,494

569

23

22.7

491.1

4

4

2

阿波町

1

1

 

1

 

 

 

78

 

 

 

1

1

 

北九州市
小倉北区

2

1

0

1

39.4

0

2,883

464

8.5

4

65.3

1

1

0

加治木町

1

1

 

 

28.4

11,260

445

51

55.7

0.7

23.8

1

1

 

日南市

1

1

 

 

24.4

8,000

1,761

85

28.7

3.2

51.1

1

1

 

資料:「日本の図書館2004」

(6) 読書活動の推進に関する催し物、情報提供などの事例
 各都市の図書館では、読書活動の推進に関するさまざまな催し物、情報提供が行われている。図書館ホームページに掲載されている催し物から、いくつかの事例を紹介する。

「親子で楽しむ絵本講座」・「赤ちゃんと楽しむわらべうたの会」(浦安市立図書館)

 「親子で楽しむ絵本講座」は、児童担当職員が講師となり、前半は親子でわらべうたとよみきかせを楽しみ、後半は、子どもは 別室で保育、親は講義を受講するという内容である。
 「赤ちゃんと楽しむわらべうたの会」は、乳幼児とその保護者を対象に、年齢に応じたわらべうた遊びや絵本のよみきかせ、絵本の選び方のアドバイスなどを実施している。

「読み聞かせの会」(桑名市立中央図書館)

 ボランティアによる「読み聞かせの会」を実施している。平成17年4月からは、ほぼ毎日、午前・午後1回ずつ実施する。
 図書館の児童サービスとして、「読み聞かせ」はよく行われているが、桑名市立中央図書館では開催頻度が非常に多い。

「ヤングアダルトベストリーダー」(世田谷区立図書館)

 若年利用者によく読まれた図書をホームページで紹介している。12のジャンル別に、月間単位で貸出の多かった順に集計した結果を検索できる。
 タイトル別のリストは、書誌情報とリンクしており、本の内容の抄録、著者紹介など、本の内容について詳しく知ることができる。

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